JP4228185B2 - 帯電防止性ポリオレフィンフィルム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、液性が親水性の水系インキにおいて好適な印刷が可能で、経時によるブリード白化が少なく且つ透明性に優れた帯電防止性ポリオレフィンフィルムで、特に水系インキで印刷されてなるポリオレフィンフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィンフィルムは商品の包装等に広く使用され、商品の製造業者にとって非常に重要なものであり、フィルムの透明性を良くする事により内容物を見えやすくする等の商品価値を高める事が要求されている。
【0003】
かかる用途においては、通常その表面に印刷用インキによる印刷を施して用いられる場合がほとんどで、ポリオレフィンフィルム表面への印刷はスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷やグラビア印刷などの方法が用いられている。
【0004】
従来、ポリオレフィンフィルム表面への印刷は有機溶剤系のインキを用いて行われていたが、使用されている有機溶剤が一般に揮発性、可燃性である為引火、爆発の危険があり、又揮発物を吸引すれば人体に対する毒性も高く環境破壊につながる事から、近年インキ中の有機溶剤量が30重量%以下に調整された水系インキによる印刷が行われるようになってきた。
【0005】
通常、ポリオレフィンフィルムには、埃の付着防止やフィルム加工時の静電気発生を防止する為に帯電防止剤を予め添加しておく方法が一般に行われているが、帯電防止剤はフィルム表面にブリードしていなければ効果が得られず、ブリードした帯電防止剤は印刷インキとフィルムとの間に存在する為、印刷性を悪化させる原因や、ブリード過多によるフィルムの透明性を損なう原因となり品質上問題となる場合がある。
【0006】
かかる問題を解決する為に使用される帯電防止剤として飽和脂肪族アミン系帯電防止剤の添加が知られているが飽和脂肪族アミン系帯電防止剤は有機溶剤系インキの場合と異なり、水系インキとのなじみが悪く、インキとフィルム表面との接着性阻害、転移不良等の問題を生じ、鮮明に印刷する事は困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このポリオレフィンフィルムにおける水系インキとの印刷適性を改善する方法として特開平1−287157号公報、特開平6−345904号公報および特開平7−164608号公報には、アミド系帯電防止剤を用いる方法が開示されている。また、特開平10−235816号公報にはアミド系帯電防止剤と多価アルコール脂肪酸エステルの混合物を添加する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの従来技術からは必ずしもポリオレフィンフィルムに要求されている耐ブリード白化、帯電防止性能、水性インキに対する印刷適性のすべてに充分満足できる性能が得られているとは言えず、さらなる改良が求められていた。
【0009】
本発明の目的は、水系インキに対し好適な印刷が可能で、さらに帯電防止性に優れ、経時によるブリード白化が少なく且つ透明性に優れたポリオレフィンフィルムとそれを可能にする帯電防止剤を提供することであり、さらに、フィルムの少なくとも一方の表面が、水系インキで印刷されている帯電防止性ポリオレフィンフィルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、水系インキに対し、それらポリオレフィンフィルムへの密着性及び転移性等の印刷適性を付与する為に、ポリオレフィ
ンフィルムに対しポリオキシエチレンアルケニルアミンと脂肪酸とのアミンエステル化合物であって、且つ疎水基に少なくとも1つの不飽和結合を有する帯電防止剤を単独或いは他の帯電防止剤と適切な配合比率の混合物で使用したところ、疎水基に不飽和結合を持たないアミンエステル化合物と比較して、得られたフィルムは印刷適性において効果的な結果が得られ、さらに帯電防止性に優れ、経時によるブリード白化が少なく及び透明性にも優れたポリオレフィンフィルムが得られることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリオキシエチレンアルケニルアミンと脂肪酸とのアミンエステル化合物であって、且つ疎水基に少なくとも1つの不飽和結合を有する下記一般式(A)で表される帯電防止剤をポリオレフィンフィルムに対して0.05〜2.0重量%含有する、水系インキに好適な印刷が可能で、さらに帯電防止性に優れ、経時によるブリード白化が少なく、且つ透明性に優れたポリオレフィンフィルムに関する。
【0012】
【化2】
(R1は直鎖である炭素数18のアルケニル基を示し、R2は直鎖である炭素数11のアルキル基を示す。mとnはエチレンオキサイドの付加モル数を表し、m+n=2〜3の整数を示す。)で表される。
【0013】
以下、本発明の帯電防止剤について説明する。
本発明に帯電防止剤として使用されるアミンエステル化合物は、ポリオキシエチレンアルケニルアミンと脂肪酸とのアミンエステル化合物であって、且つ疎水基に少なくとも1つの不飽和結合を有する上記一般式(A)で表されるものである。
【0014】
本発明のアミンエステル化合物は、公知のエステル化反応により合成される。例えばポリオキシエチレンアルケニルアミン1モルと脂肪酸1モルとをエステル化した場合、本発明の一般式(A)に示されるアミンエステル化合物は、液体クロマトグラフィー分析で50%以上存在することが確認できる。
【0015】
一般式(A)におけるR 1 がアルケニル基であるとするのは、R1、R2が相方ともにアルキル基であるとインキが転移しにくく、インキのハジキが発生するからである。また、R1の炭素数が8より小さいとフィルムがブロッキングし易くなり、逆に22を超えると経時によるブリード白化が生じ、透明性を損なってしまうからである。また、R2の炭素数が7より小さいとフィルムがブロッキングし易くなり、逆に21を超えると経時によるブリード白化が生じ、透明性を損なってしまうからである。また、一般式(A)におけるmとnはエチレンオキサイドの付加モル数であって、m+nは2〜3の範囲であるとするのは、m+nが3を越えるとフィルムがブロッキングし易くなり、2より小さいと帯電防止性能を損なってしまうからである。
【0016】
アミンエステル化合物として具体的には、オレイルジエタノールアミンモノラウレートである。
【0017】
本発明のアミンエステル化合物に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要により本発明以外の公知の帯電防止剤を含有させてもよい。本発明以外の公知の帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルまたはアルケニルアミン、脂肪酸とジエタノールアミンによる縮合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0018】
具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノエルケート、ポリオキシエチレングリセリンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリプロピレングリコールモノオレート、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アルキルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、オレイルジエタノールアミド等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0019】
ポリオレフィンフィルムに対する本発明のアミンエステル化合物の添加量は0.05〜2.0重量%であるが、さらに好ましくは0.1〜1.5重量%である。添加量が0.05重量%以下では帯電防止性能が劣り、水系インキに対する印刷性が損なわれる。また、2.0重量%を越えると経時によるブリード白化が生じ、透明性を損なう。
【0020】
本発明のアミンエステル化合物の添加方法は、公知の方法で行われる。すなわち、高濃度のマスターバッチを別に作製し、これをフィルムを得るまでの任意の工程で混合しても良いし、ポリオレフィンパウダーとあらかじめ混合しても良い。
【0021】
本発明のポリオレフィンフィルムには、本発明の目的を損なわない範囲で酸化防止剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤や通常ポリオレフィンフィルムに用いられる各種添加剤や充填剤を付加成分として添加することができる。
【0022】
本発明のポリオレフィンは特に限定されず公知のものが用いられる。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体、前記α−オレフィン同士の共重合体、前記α−オレフィンと共重合可能なα−オレフィン以外の単量体とα−オレフィンとの共重合体、及びこれらの混合物等である。前記のα−オレフィンと共重合可能なα−オレフィン以外の単量体としては、酢酸ビニル、マレイン酸、ビニルアルコール、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等を挙げることが出来る。
【0023】
本発明のポリオレフィンフィルムは単層フィルムでも2種類以上の樹脂を積層した積層フィルムでもよい。
【0024】
本発明のポリオレフィンフィルムは、フィルムの少なくとも一方の表面が水系インキで印刷される。ポリオレフィンフィルム表面への印刷は通常使用されるスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷やグラビア印刷などの方法が用いることができる。
【0025】
また、本発明のポリオレフィンフィルムに印刷を行う場合、印刷に先立ちフィルム表面をコロナ放電処理等一般に用いられる方法で表面の活性化処理を行うとインキのなじみや接着性を向上できるため、何らかの方法で表面の活性化処理を行うことが望ましい。
【0026】
かくして本発明に係わるポリオキシエチレンアルケニルアミンと脂肪酸とのアミンエステル化合物であり、且つ疎水基に少なくとも1つの不飽和結合を有する帯電防止剤を使用すると、従来のポリオレフィンフィルムを遙かに上回る、水系インキとの印刷適性、すなわち定着性に優れ、さらに帯電防止性に優れ、経時によるブリード白化が少なく及び透明性にも優れる性能を発揮できることが判った。
【0027】
この効果発現の機構については明確に究明できてはいないが、疎水基に不飽和結合を有する本発明のアミンエステル化合物がポリオレフィンフィルム表面にブリード層を形成し、そのブリード層と水系インキとの親和性が、水系インキの印刷適性に大きく寄与しているものと推定しており、これが本発明の根幹を成すものである。
【0028】
【実施例】
<1>帯電防止剤の合成
アミンエステル化合物Aの合成
ガラス製オートクレーブにオレイルアミン1モルを仕込み、N2置換を行いエチレンオキサイド2.0モルを155℃、2時間を要し付加してオレイルジエタノールアミンを得た。その後、得られたオレイルジエタノールアミン1.0モルにオレイン酸を1.0モル仕込み、N2ガスを導入しつつ160℃に昇温し4時間エステル化を行ないオレイルジエタノールアミンモノオレートを合成した。得られたアミンエステル化合物Aを液体クロマトグラフィーにて分析した結果、下記一般式(1)で表されるアミンエステル化合物は60%含まれていることを確認した。
【化3】
(式中、pとqはエチレンオキサイドの付加モル数を表し、p+q=2〜4の整数を示す。)
【0029】
アミンエステル化合物B〜H及びアミンエステル化合物A'〜D'の合成
アミンエステル化合物Aの合成と同様にアミンエステル化合物B〜H及びアミンエステル化合物A'〜D'の合成を表1の如く実施し、液体クロマトグラフィーにて一般式(1)で表されるアミンエステル化合物の含有量を確認した。表1において「一般式(1)含有量」欄は、得られた核アミンエステル化合物中の、一般式(1)(式中、RaおよびRbが「Ra」欄及び「Rb」欄に示されたアルキル基又はアルケニル基を表す。)で表されるアミンエステル化合物の含有量(%)を示す。得られたアミンエステル化合物C、D及びアミンエステル化合物A'〜D'について、後記のテストに供する。
【0030】
【表1】
【0031】
本発明以外の帯電防止剤(1)の合成
ガラス製オートクレーブにオレイルアミンを1モル仕込み、N2置換を行いエチレンオキサイド2.0モルを155℃、2時間を要し付加してオレイルジエタノールアミンを合成した。得られた帯電防止剤(1)を後記のテストに供する。
【0032】
本発明以外の帯電防止剤(2)の合成
ガラス製オートクレーブにグリセリンを1モルと工業用ステアリン酸を1.3モル仕込み、N2ガスを導入しつつ塩基性触媒下200℃に昇温し5時間エステル化を行ないグリセリンステアリン酸エステルを得た。得られたグリセリンステアリン酸エステルを分子蒸留法によりジエステル分を除去し、モノエステル含有量が95%のグリセリンモノステアリン酸エステルを合成した。得られた帯電防止剤(2)を後記のテストに供する。
【0033】
<2>帯電防止剤の配合比
得られたアミンエステル化合物、及び本発明以外の帯電防止剤(1)または(2)を表2の如く配合し、実施例1及び2の帯電防止剤及び比較例1〜5の帯電防止剤を得た。得られた実施例1及び2の帯電防止剤及び比較例1〜5の帯電防止剤を後記のテストに供した。
【0034】
【表2】
【0035】
<3>評価フィルムの作製
メルトフローレート3.0g/10分、結晶化度97%の結晶性ポリプロピレンに実施例1及び2の帯電防止剤及び比較例1〜5の帯電防止剤を表3の添加量で配合し、さらにアンチブロッキング剤として粒径2.0μmのシリカを0.1重量%加えて溶解混合した。この樹脂をT−ダイより押し出し、テンター法二軸延伸機により厚さ20μmの延伸フィルムを得た。尚、表面には、常法に従いヌレ指数が40mN/mとなるようにコロナ放電処理を行った。得られたフィルムの評価結果を表3に表す。
【0036】
<4>評価方法
フィルムの評価は、下記の方法によって行った。
【0037】
1)ブリード白化、透明性評価
コロナ放電処理したフィルムから試験片を切り出し、温度23℃相対湿度50%の恒温恒湿条件下に14日間放置したのち、4枚を重ねHAZE測定装置(TC−HIIIDPK:東京電色製)にてHAZE値を測定した。
HAZE値は、6以下が目標である。
【0038】
2)帯電防止性評価
コロナ放電処理した印刷前のフィルムから所定の試験片を調整し、JIS−K−6911に準じ、試験片のコロナ放電処理面の表面固有抵抗値を測定した。
Log(表面固有抵抗値Ω)が13以下が目標である。
【0039】
3)印刷適性評価
フィルムのコロナ放電処理面にグラビア印刷機を用いて、水系インキを印刷しフィルム表面との転移性と接着性を評価した。
水系インキとして東洋インキ製造(株)製「アクワエコール」を専用の希釈溶剤を用いて固形分濃度20〜30重量%、アルコール濃度30%以下に希釈したものを使用した。
【0040】
転移性評価
転移性評価は印刷表面を光学顕微鏡にて観察し、ハジキ・インキの転移量を評価した。
評価基準
◎ : ハジキがまったく見られず、インキの転移量も多い
○ : 殆どハジキが見られず、多少インキの転写量も多い
△ : 多少ハジキが見られ、インキの転写量は普通
× : ハジキが多く、インキの転写量も少ない
××: 非常にハジキが多く、インキの転写量も少ない
【0041】
接着性評価
接着性評価はセロハンテープによる剥離試験で行った。
印刷面に1mmの幅に剃刀で切れ目を11本縦横直角に入れ1mm角の碁盤目を100個作る。その後、セロハンテープを碁盤目上に密着させた後剥離し、印刷面のインキ残存状態から接着性を評価した。
評価基準
◎ : インキの残存面積が95%以上
○ : インキの残存面積が90〜95%
△ : インキの残存面積が70〜90%
× : インキの残存面積が50〜70%
××: インキの残存面積が50%以下
【0042】
【表3】
【0043】
【発明の効果】
表3に示すように、本発明の実施例1及び2の帯電防止剤を添加したフィルムは、水系インキに対し好適な印刷が可能で、さらに帯電防止性に優れ、経時によるブリード白化が少なく且つ透明性に優れた性能を発揮することができる。
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