JP4227248B2 - 高周波電力増幅器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等に使用されるデュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器に関し、特に、バイアス回路の切り換えを行って電力増幅器の選択を行うバイアススイッチ回路を有した、HBT(heterojunction bipolar transistor)で構成される高周波電力増幅器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、移動体通信用の電力増幅器には、GaAsMESFET、GaAsHEMT、GaAs‐basedHBTを使用したMMICやモジュール(ハイブリッドICやマルチチップモジュール等)が広く使用されている。その中で、GaAs‐basedHBTは、従来のFETと比較して、負のゲートバイアス電圧を必要とせず、単一電源動作が可能であり、Si-MOSFETと同様にドレイン側にアナログスイッチがなくともON/OFF動作を行うことが可能であり、更に、出力電力密度が高く、規定の出力電力を得る場合、FET電力増幅器よりも小型化することができるという利点を有している。このため、今後の移動体通信用のパワー素子として期待されている。
【0003】
また、最近では、携帯電話機の急激な需要の増加に伴って、1つの携帯電話機で2つのシステムを利用する電話機の開発やサービスが開始されている。例えば、1つの携帯電話で、欧州では、現在最も広く使用されている900MHz帯の携帯電話システムである欧州のGSM(Global System for Mobile Communications)900と欧州の1800MHz帯の携帯電話システムであるDCS1800、国内では、900MHz帯の携帯電話方式であるPDC(Personal Digital Cellular)と1900MHz帯のディジタルコードレス電話システムであるPHS(Personal Handyphone System)といった2つのシステムを利用するといったものである。
【0004】
図10は、従来におけるデュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器の回路構成例を示した図である。図10において、GSM900用、すなわち900MHz帯増幅用のHBTであるトランジスタTrA1〜TrA3は、第1バイアス回路201によってバイアスが供給されている。また、GSM1800(DCS1800)用、すなわち1800MHz帯増幅用のHBTであるトランジスタTrB1〜TrB3は、第2バイアス回路202によってバイアスが供給されている。
【0005】
バイアススイッチ回路203は、Vmod端子に入力される信号Vmodの2値の信号レベルに応じて、第1バイアス回路201又は第2バイアス回路202のいずれかを排他的に選択して動作させる。また、バイアススイッチ回路203は、Vpc端子に入力される信号Vpcの信号レベルに応じた出力制御信号を第1バイアス回路201又は第2バイアス回路202に出力し、出力端子OUT1及びOUT2から出力される出力信号のレベル調整を行う。信号Vpcが0Vのときには、バイアススイッチ回路203は、信号Vmodに関係なくGSM900用電力増幅器及びGSM1800用電力増幅器の動作は共に停止させる。
【0006】
図11は、図10のバイアススイッチ回路203の従来例を示した概略の回路図である。図11において、バイアススイッチ回路203は、CMOS等のシリコン素子を使用したロジック回路210、及びシリコンを使用して形成されたnpnトランジスタTrC1〜TrC4からなる出力バッファ回路211で形成されている。ロジック回路210は、DAコンバータ(図示せず)から入力された信号Vpcを信号Vmodの信号レベルに応じて変換し、出力バッファ回路211を介して信号V900又はV1800のいずれかを出力する。更に、バイアススイッチ回路203は、信号V900又はV1800のいずれかを出力することによって選択された電力増幅器における出力信号の信号レベルを信号Vpcに応じて制御し、他方の電力増幅器の動作を信号Vpcに関係なく停止させる。
【0007】
一方、図10では第1バイアス回路201及び第2バイアス回路202をシリコン素子で形成した場合を示しているが、図12は、図10の第1バイアス回路201及び第2バイアス回路202をHBTで構成した場合の従来例を示した回路図である。図12において、トランジスタTrD1〜TrD3はHBTであり、図12(a)ではトランジスタTrD2によって、図12(b)ではトランジスタTrD2及びTrD3により、図10の電力増幅用のHBTの温度係数に応じてベース−エミッタ間電圧Vbeの変化を補償することができる。なお、図12(a)及び図12(b)において、Vin端子はバイアス回路の入力端子であり、図11の信号V900又はV1800のいずれかが入力される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、HBTは、FETと異なりベース電流を増幅して動作するため、GSMのように、2W〜4Wの高出力を得るためには数10〜100mA程度のベース電流を供給する必要がある。しかし、標準CMOSの特定の出力電圧を保証する出力電流値は数mA以下であることから、このような大きなベース電流を標準のSi−CMOSLSIから直接得ることは困難であった。このため、シリコン素子を使用したバイアススイッチ回路を使用すると、ロジック回路構成の汎用性から信号Vpc及び信号Vmodによる2つの電力増幅器の制御は容易であるが、HBT電力増幅器以外にシリコン素子を使用した専用の制御回路が必要であった。
【0009】
更に、バイアススイッチ回路及び各バイアス回路、又はバイアススイッチ回路をシリコン素子で形成した場合、これらの回路をHBTで構成されたMMIC上に集積化することができず、別途シリコンチップで形成する必要があり、量産時の歩留まりが低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、HBTで構成されたデュアルバンドシステム用の各高周波電力増幅器のバイアス回路と共にバイアススイッチ回路をHBTで形成することによって、HBTで構成されたMMICで集積化を行うことができるデュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る高周波電力増幅器は、少なくとも1つの電力増幅用HBTで構成された2つの電力増幅器と、HBTで構成され該各電力増幅器に対応して設けられた各バイアス回路と、外部からの信号に応じて該各バイアス回路に対する動作の切り換えを排他的に行うバイアススイッチ回路とを備えた、デュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器において、バイアススイッチ回路は、各バイアス回路の動作制御を行う外部からの信号Vpcにおける一方のバイアス回路への出力制御を行う、HBTで構成された第1スイッチング手段と、外部からの信号Vpcの他方のバイアス回路への出力制御を行う、HBTで構成された第2スイッチング手段と、外部から入力される第1スイッチング手段の動作制御を行うための制御信号Vmodに応じて第2スイッチング手段の動作制御を行い、第1及び第2スイッチング手段を排他的に選択して動作させる、HBTで構成された第3スイッチング手段とを備えるものである。
【0012】
また、この発明に係る高周波電力増幅器は、請求項1において、上記第1及び第2スイッチング手段は、信号Vpcの電圧を分圧するための複数の抵抗を直列に接続した抵抗直列回路と、該抵抗直列回路と接地との接続制御を行う接地接続用HBTとでそれぞれ形成され、該抵抗直列回路における所定の抵抗間の接続部から、対応するバイアス回路への制御信号を出力するものである。
【0013】
また、この発明に係る高周波電力増幅器は、請求項2において、上記第1及び第2スイッチング手段は、各電力増幅器が複数の電力増幅用HBTで増幅を行う多段電力増幅器を形成し、対応する各バイアス回路が各電力増幅用HBTごとにバイアスを供給する回路を有する場合、信号Vpcによる電流が、初段の電力増幅用HBTにバイアスを供給する回路から最終段の電力増幅用HBTにバイアスを供給する回路へ順に大きくなるように、対応するバイアス回路への制御信号を出力するものである。
【0014】
また、この発明に係る高周波電力増幅器は、請求項2又は請求項3のいずれかにおいて、上記第1及び第2スイッチング手段は、抵抗直列回路における所定の抵抗間の接続部、及び該抵抗直列回路と接地接続用HBTとの接続部の間に、対応するバイアス回路への制御信号の大きさを調整する調整用抵抗がそれぞれ並列に設けられるものである。
【0015】
この発明に係る高周波電力増幅器は、請求項2から請求項4のいずれかにおいて、上記第3スイッチング手段におけるHBTは、2値の信号Vmodに応じて、第2スイッチング手段におけるHBTのベースに対するバイアスの供給制御を行うものである。
【0016】
この発明に係る高周波電力増幅器は、請求項1から請求項5のいずれかにおいて、上記第1及び第2スイッチング手段は、信号Vpcが入力される入力端子に印加された過電圧から各バイアス回路を保護する保護回路がそれぞれ設けられるものである。
【0017】
この発明に係る高周波電力増幅器は、請求項6において、上記保護回路は、HBTで構成されたVbeマルチプライヤをなすものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるデュアルバンド用の高周波電力増幅器の例を示した概略の回路図である。なお、図1では、GSM900用及びGSM1800用の2つの1段電力増幅器を備えたデュアルバンド用の高周波電力増幅器を例にして説明する。
【0019】
図1において、高周波電力増幅器1は、GSM900用の電力増幅器である第1電力増幅器2と、該第1電力増幅器2にバイアスを供給する第1バイアス回路3と、GSM1800用の電力増幅器である第2電力増幅器4と、該第2電力増幅器4にバイアスを供給する第2バイアス回路5と、第1バイアス回路3及び第2バイアス回路5のいずれかを排他的に選択して動作させるバイアススイッチ回路6と、出力整合回路7,8と、コレクタバイアス回路9,10とで構成されている。
【0020】
第1電力増幅器2は、電力増幅用のHBT11及び入力整合回路12で形成されている。HBT11は、入力端子IN1から入力整合回路12を介して入力される高周波信号の電力増幅を行い、該増幅した高周波信号を出力整合回路7を介して出力端子OUT1から出力する。この際、HBT11のコレクタには、コレクタバイアス回路9からバイアスが供給され、HBT11のベースには第1バイアス回路3からバイアスが供給されている。
【0021】
同様に、第2電力増幅器4は、電力増幅用のHBT21及び入力整合回路22で形成されている。HBT21は、入力端子IN2から入力整合回路22を介して入力される高周波信号の電力増幅を行い、該増幅した高周波信号を出力整合回路8を介して出力端子OUT2から出力する。この際、HBT21コレクタには、出力整合回路8を介してバイアスが供給され、HBT21のベースには第2バイアス回路5からバイアスが供給されている。
【0022】
第1バイアス回路3及び第2バイアス回路5は、バイアススイッチ回路6によって動作制御が行われる。すなわち、バイアススイッチ回路6は、Vmod端子に外部から入力される信号Vmodの2値の信号レベル(例えば、3VをHighレベルとし、0VをLowレベルとする)に応じて、第1バイアス回路3に対する制御信号である信号V900又は第2バイアス回路5に対する制御信号である信号V1800を出力し、第1バイアス回路3又は第2バイアス回路5のいずれかを選択的に動作させる。
【0023】
また、バイアススイッチ回路6は、Vpc端子に外部から入力される信号Vpcの信号レベルに応じた信号V900又はV1800を出力し、出力端子OUT1及びOUT2から出力される信号のレベル調整を行う。例えば、信号Vpcの信号レベルを0〜3Vの範囲で可変することによって、出力端子OUT1又はOUT2から出力される信号レベルを−数十dBm〜34dBm前後の範囲で可変することができる。また、バイアススイッチ回路6は、信号Vpcが0Vのときには、信号Vmodに関係なく第1バイアス回路3及び第2バイアス回路5に対してバイアスの供給を停止させ、第1電力増幅器2及び第2電力増幅器4の動作は共に停止する。
【0024】
図2は、図1の第1バイアス回路3、第2バイアス回路5及びバイアススイッチ回路6の例を示した回路図である。
図2において、第1バイアス回路3は、HBT31,32及び抵抗33,34で形成されており、抵抗33はHBT31のベース抵抗を、抵抗34はHBT32のベース抵抗をそれぞれなしている。
【0025】
HBT31において、コレクタは、所定の直流電源電圧が印加される電源端子Vccに、エミッタはHBT32のコレクタにそれぞれ接続され、該接続部は、第1バイアス回路3の出力をなし、第1電力増幅器2のHBT11のベースに接続されている。更に、HBT31のベースは、抵抗33を介してバイアススイッチ回路6の出力端子であるV900端子に接続されて信号V900が入力される。また、HBT32において、ベースは抵抗34を介してコレクタに接続され、エミッタは接地されている。HBT32によって、第1電力増幅器2におけるHBT11の温度係数に応じてベース−エミッタ間電圧Vbeの変化を補償することができる。
【0026】
同様に、第2バイアス回路5は、HBT35,36及び抵抗37,38で形成されており、抵抗37はHBT35のベース抵抗を、抵抗38はHBT36のベース抵抗をそれぞれなしている。HBT35において、コレクタは、電源端子Vccに、エミッタはHBT36のコレクタにそれぞれ接続され、該接続部は、第2バイアス回路5の出力をなし、第2電力増幅器4のHBT21のベースに接続されている。更に、HBT35のベースは、抵抗37を介してバイアススイッチ回路6の出力端子であるV1800端子に接続されて信号V1800が入力される。また、HBT36において、ベースは抵抗38を介してコレクタに接続され、エミッタは接地されている。HBT36によって、第2電力増幅器4におけるHBT21の温度係数に応じてベース−エミッタ間電圧Vbeの変化を補償することができる。
【0027】
一方、バイアススイッチ回路6は、HBT41〜43及び抵抗45〜54で形成されている。Vpc端子は、抵抗45及び46の直列回路を介してHBT41のコレクタに接続され、抵抗45及び46の接続部は、バイアススイッチ回路6のV900端子に接続され、第1バイアス回路3の抵抗33を介してHBT31のベースに接続されている。HBT41において、ベースは抵抗47を介してHBT43のコレクタに接続され、エミッタは接地されている。
【0028】
同様に、Vpc端子は、抵抗48及び49の直列回路を介してHBT42のコレクタに接続され、抵抗48及び49の接続部は、バイアススイッチ回路6のV1800端子に接続され、第2バイアス回路5の抵抗37を介してHBT35のベースに接続されている。HBT42において、ベースは抵抗50と抵抗51の直列回路を介してVmod端子に接続され、エミッタは接地されている。Vmod端子は、抵抗53を介してHBT43のベースに接続され、抵抗54を介して接地されている。HBT43において、コレクタは抵抗52を介してVpc端子に接続され、エミッタは接地されている。
【0029】
このような構成において、例えばVpc端子に2.7Vの電圧が印加され、Vmod端子が3Vの電圧が印加されてHighレベルになると、HBT43がON状態になることから、HBT41はOFF状態になり、HBT42はON状態になる。HBT42がON状態になることによって、Vpc端子の電圧Vpcは、抵抗48及び49で分圧され、抵抗48の抵抗値をR48とし抵抗49の抵抗値をR49とすると、V1800端子の電圧は{Vpc×R49/(R48+R49)}に低下する。このことから、第2バイアス回路5のHBT35及び36はOFF状態となる。
【0030】
一方、HBT41がOFF状態であるため、第1バイアス回路3のHBT31のベースには、抵抗45及び抵抗33を介して電流が流れる。このことから、第1バイアス回路3の出力からは、電圧Vpcに応じたバイアスが第1電力増幅器2のHBT11のベースに供給され、第1電力増幅器2の出力OUT1から電圧Vpcに応じた出力電力を得ることができる。
【0031】
次に、例えばVpc端子に2.7Vの電圧が印加され、Vmod端子が0Vの電圧が印加されてLowレベルになると、HBT43がOFF状態になることから、HBT41はON状態になり、HBT42はOFF状態になる。HBT41がON状態になることによって、Vpc端子の電圧Vpcは、抵抗45及び46で分圧され、抵抗45の抵抗値をR45とし抵抗46の抵抗値をR46とすると、V900端子の電圧は{Vpc×R46/(R45+R46)}に低下する。このことから、第1バイアス回路3のHBT31及び32はOFF状態となる。
【0032】
また、HBT41がON状態であるため、第2バイアス回路5のHBT35のベースには、抵抗48及び抵抗37を介して電流が流れる。このことから、第2バイアス回路5の出力からは、電圧Vpcに応じたバイアスが第2電力増幅器4のHBT21のベースに供給され、第2電力増幅器4の出力OUT2から電圧Vpcに応じた出力電力を得ることができる。
【0033】
一方、電圧Vpcが0Vになると、Vmod端子の電圧に関係なく、すなわちHBT41及び42の動作状態に関係なく、第1バイアス回路3のHBT31及び第2バイアス回路5のHBT35はOFF状態になることから、第1電力増幅器2及び第2電力増幅器4は共に動作を停止する。このように、バイアススイッチ回路6をHBTで形成したことから、デュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器1を第1電力増幅器2と第1バイアス回路3からなるGSM900用と第2電力増幅器4と第2バイアス回路5からなるGSM1800用といった2つのチップで形成し、該2つのチップのいずれか一方にバイアススイッチ回路6を形成することができる。
【0034】
ここで、バイアススイッチ回路6のスイッチ動作に要する回路電流は、Vpc端子より供給されることから、Vpc端子から供給される電流が、従来におけるシリコン素子で形成したバイアススイッチ回路と比較して増加する。しかし、該増加分は、R45=R48=Raとし、R46=R49=Rbとすると、(Ra+Rb)とRaを最適化することによって抑制することができる。例えば、第1バイアス回路3が動作し、第2バイアス回路5が動作を停止している場合、抵抗45における電圧降下は抵抗45に流れる電流をI1とすると(I1×Ra)となり、抵抗48における電圧降下は{Vpc×Ra/(Ra+Rb)}となる。このことから、Ra及びRbを最適な値に選択することによって、Vpc端子から供給される電流を実用上問題のない範囲で最小化することができる。
【0035】
図3は、図2で示したバイアススイッチ回路6の動作例を示した特性図である。図3(a)はVmod=3Vのとき、図3(b)はVmod=0Vのときにおける、電圧Vpcに対するV900端子及びV1800端子の各電圧V900,V1800並びにVpc端子から供給される電流Ipcの関係を示した図であり、図3(c)は、Vpc=2.7Vのときの、電圧Vmodに対するV900端子及びV1800端子の各電圧V900,V1800、V900端子から出力される電流I900並びにV1800端子から出力される電流I1800の関係を示した図である。図3(a)〜図3(c)から、Vpcが2.7Vのとき、約3.5mAの電流Ipcで、第1電力増幅器2及び第2電力増幅器4への電流の切り換えが行われていることが分かる。
【0036】
図1及び図2では、1段電力増幅器の場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、多段電力増幅器においても適用することができる。図4は、本発明の実施の形態1におけるデュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器の他の例を示した概略の回路図である。なお、図4では、3段電力増幅器を備えたデュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器を例にして示しており、図1と同じものは同じ符号で示すと共に図1との相違点のみ説明する。
【0037】
図4における図1との相違点は、図1の第1電力増幅器2及び第2電力増幅器4をそれぞれ3段電力増幅器にし、これに伴って、図1の第1バイアス回路3及び第2バイアス回路5の回路構成を変えたことにあり、このことから、図1の第1電力増幅器2を第1電力増幅器2Aに、第1バイアス回路3を第1バイアス回路3Aに、第2電力増幅器4を第2電力増幅器4Aに、第2バイアス回路5を第2バイアス回路5Aにし、これに伴って図1の高周波電力増幅器1を高周波電力増幅器1Aにしたことにある。
【0038】
図4において、第1電力増幅器2Aは、電力増幅用のHBT11a〜11c、入力整合回路12及び段間整合回路61,62で形成されている。HBT11aは、入力端子IN1から入力整合回路12を介して入力される高周波信号の電力増幅を行い、HBT11bは、HBT11aで増幅され段間整合回路61を介して入力された高周波信号の増幅を行う。また、HBT11cは、HBT11bで増幅され段間整合回路62を介して入力された高周波信号の増幅を行い、該増幅された高周波信号は、出力整合回路7を介して出力端子OUT1から出力される。
【0039】
この際、HBT11a〜11cの各コレクタには、対応する各コレクタバイアス回路9a〜9cからそれぞれバイアスが供給される。また、HBT11a〜11cの各ベースには第1バイアス回路3Aからそれぞれバイアスが供給されている。
【0040】
同様に、第2電力増幅器4Aは、電力増幅用のHBT21a〜21c、入力整合回路22及び段間整合回路65,66で形成されている。HBT21aは、入力端子IN1から入力整合回路22を介して入力される高周波信号の電力増幅を行い、HBT21bは、HBT21aで増幅され段間整合回路65を介して入力された高周波信号の増幅を行う。また、HBT21cは、HBT21bで増幅され段間整合回路66を介して入力された高周波信号の増幅を行い、該増幅された高周波信号は、出力整合回路8を介して出力端子OUT2から出力される。
【0041】
この際、HBT21a〜21cのコレクタには、対応する各コレクタバイアス回路10a〜10cからそれぞれバイアスが供給される。また、HBT21a〜21cの各ベースには第2バイアス回路5Aからそれぞれバイアスが供給されている。
【0042】
図1及び図2と同様に、第1バイアス回路3A及び第2バイアス回路5Aは、バイアススイッチ回路6によって動作制御が行われる。すなわち、バイアススイッチ回路6は、信号Vmodの2値の信号レベルに応じて、第1バイアス回路3Aに対する制御信号である信号V900又は第2バイアス回路5Aに対する制御信号である信号V1800を出力し、第1バイアス回路3A又は第2バイアス回路5Aのいずれかを排他的に選択して動作させる。また、バイアススイッチ回路6は、図1及び図2と同様に、Vpc端子に外部から入力される信号Vpcの信号レベルに応じた信号V900又はV1800を出力し、出力端子OUT1及びOUT2から出力される出力信号のレベル調整を行う。
【0043】
図5は、図4の第1バイアス回路3A、第2バイアス回路5A及びバイアススイッチ回路6の例を示した回路図である。なお、図5では、図2と同じものは同じ符号で示しており、ここではその説明を省略すると共に図2との相違点のみ説明する。
図5における図2との相違点は、第1電力増幅器2AのHBT11a〜11cごとに図2の第1バイアス回路3と同じ回路構成のバイアス回路を設け、第2電力増幅器4AのHBT21a〜21cごとに図2の第2バイアス回路5と同じ回路構成のバイアス回路を設けたことにある。
【0044】
図5において、第1バイアス回路3Aは、HBT31a〜31c,32a〜32c及び抵抗33a〜33c,34a〜34cで形成されており、抵抗33a〜33cは対応するHBT31a〜31cのベース抵抗を、抵抗34a〜34cは対応するHBT32a〜32cのベース抵抗をそれぞれなしている。なお、HBT31a〜31cは図2のHBT31に、HBT32a〜32cは図2のHBT32に、抵抗33a〜33cは図2の抵抗33に、抵抗34a〜34cは図2の抵抗34にそれぞれ対応しており、その接続は図2の第1バイアス回路3と同じであるのでその説明を省略する。
【0045】
HBT31aのエミッタとHBT32aのコレクタとの接続部は、第1電力増幅器2AのHBT11aのベースに接続され、HBT31bのエミッタとHBT32bのコレクタとの接続部は、第1電力増幅器2AのHBT11bのベースに接続されている。同様に、HBT31cのエミッタとHBT32cのコレクタとの接続部は、第1電力増幅器2AのHBT11cのベースに接続されている。
【0046】
同様に、第2バイアス回路5Aは、HBT35a〜35c,36a〜36c及び抵抗37a〜37c,38a〜38cで形成されており、抵抗37a〜37cは対応するHBT35a〜35cのベース抵抗を、抵抗38a〜38cは対応するHBT36a〜36cのベース抵抗をそれぞれなしている。なお、HBT35a〜35cは図2のHBT35に、HBT36a〜36cは図2のHBT36に、抵抗37a〜37cは図2の抵抗37に、抵抗38a〜38cは図2の抵抗38にそれぞれ対応しており、その接続は図2の第2バイアス回路5と同じであるのでその説明を省略する。
【0047】
HBT35aのエミッタとHBT36aのコレクタとの接続部は、第2電力増幅器4AのHBT21aのベースに接続され、HBT35bのエミッタとHBT36bのコレクタとの接続部は、第2電力増幅器4AのHBT21bのベースに接続されている。同様に、HBT35cのエミッタとHBT36cのコレクタとの接続部は、第2電力増幅器4AのHBT21cのベースに接続されている。HBT31a〜31cの各ベースは、対応する抵抗33a〜33cを介してバイアススイッチ回路6のV900端子にそれぞれ接続され、HBT35a〜35cの各ベースは、対応する抵抗37a〜37cを介してバイアススイッチ回路6のV1800端子にそれぞれ接続されている。
【0048】
このような構成において、第1バイアス回路3Aの動作は図2の第1バイアス回路3と、第2バイアス回路5Aの動作は図2の第2バイアス回路5と同様であり、バイアススイッチ回路6における第1バイアス回路3A及び第2バイアス回路5Aに対する動作は図2と同様であるのでその説明を省略する。このように、デュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器1Aを第1電力増幅器2Aと第1バイアス回路3AからなるGSM900用と第2電力増幅器4Aと第2バイアス回路5AからなるGSM1800用といった2つのチップで形成し、該2つのチップのいずれか一方にバイアススイッチ回路6を形成することができる。
【0049】
図6は、図4で示した第1バイアス回路3A、第2バイアス回路5A及びバイアススイッチ回路6の他の例を示した回路図である。なお、図6では、図5と同じものは同じ符号で示しており、ここではその説明を省略すると共に、図5との相違点のみ説明する。
【0050】
図6における図5との相違点は、図5の第1バイアス回路3Aにおけるベース抵抗33a〜33c、及び図5の第2バイアス回路5Aにおけるベース抵抗37a〜37cをなくし、図5のバイアススイッチ回路6の抵抗45と46との間に抵抗71a〜71cの直列回路を挿入し、抵抗48と49との間に抵抗72a〜72cの直列回路を挿入したことにある。これらのことから、図5の抵抗45,46,48,49を抵抗45B,46B,48B,49Bとし、図5の第1バイアス回路3Aを第1バイアス回路3Bとし、図5の第2バイアス回路5Aを第2バイアス回路5Bとし、図5のバイアススイッチ回路6をバイアススイッチ回路6Bとした。
【0051】
図6において、バイアススイッチ回路6Bの抵抗45Bと抵抗46Bとの間に抵抗71a〜71cの直列回路が接続され、抵抗46Bと抵抗71aとの接続部は、バイアススイッチ回路6Bの出力端子であるV900a端子を介してHBT31aのベースに接続されている。また、抵抗71aと抵抗71bとの接続部は、バイアススイッチ回路6Bの出力端子であるV900b端子を介してHBT31bのベースに、抵抗71bと抵抗71cとの接続部は、バイアススイッチ回路6Bの出力端子であるV900c端子を介してHBT31cのベースにそれぞれ接続されている。
【0052】
同様に、バイアススイッチ回路6Bの抵抗48Bと抵抗49Bとの間に抵抗72a〜72cの直列回路が接続され、抵抗49Bと抵抗72aとの接続部は、バイアススイッチ回路6Bの出力端子であるV1800a端子を介してHBT35aのベースに、抵抗72aと抵抗72bとの接続部は、バイアススイッチ回路6Bの出力端子であるV1800b端子を介してHBT35bのベースに、抵抗72bと抵抗72cとの接続部は、バイアススイッチ回路6Bの出力端子であるV1800c端子を介してHBT35cのベースにそれぞれ接続されている。
【0053】
このようにすることによって、第1バイアス回路3Bが動作する際に最もベース電流が流れるHBT31c、及び第2バイアス回路5Bが動作する際に最も大きなベース電流が流れるHBT35cによるVpc端子からのベースバイアス電圧の電圧降下を最小にすることができる。このため、デュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器の各回路を同一チップ上で構成する場合に有効である。
【0054】
図7は、図4で示した第1バイアス回路3A、第2バイアス回路5A及びバイアススイッチ回路6の他の例を示した回路図である。なお、図7では、図5又は図6と同じものは同じ符号で示しており、ここではその説明を省略すると共に、図6との相違点のみ説明する。
【0055】
図7における図6との相違点は、図6のバイアススイッチ回路6Bにおいて、抵抗45B,46B,71a〜71cの代わりに抵抗74,75a〜75c,76a〜76cを設け、抵抗48B,49B,72a〜72cの代わりに抵抗77,78a〜78c,79a〜79cを設けたことにある。これらのことから、図6のバイアススイッチ回路6Bをバイアススイッチ回路6Cとした。
【0056】
図7において、バイアススイッチ回路6CのVpc端子とHBT41のコレクタとの間に抵抗74,75a〜75c,76aの直列回路が接続されている。抵抗75aと抵抗76aとの接続部は、バイアススイッチ回路6Cの出力端子であるV900a端子を介してHBT31aのベースに、抵抗75aと抵抗75bとの接続部は、バイアススイッチ回路6Cの出力端子であるV900b端子を介してHBT31bのベースに、抵抗75bと抵抗75cとの接続部は、バイアススイッチ回路6Cの出力端子であるV900c端子を介してHBT31cのベースにそれぞれ接続されている。更に、V900b端子とHBT41のコレクタとの間には抵抗76bが、V900c端子とHBT41のコレクタとの間には抵抗76cがそれぞれ接続されている。
【0057】
同様に、バイアススイッチ回路6CのVpc端子とHBT42のコレクタとの間に抵抗77,78a〜78c,79aの直列回路が接続されている。抵抗78aと抵抗79aとの接続部は、バイアススイッチ回路6Cの出力端子であるV1800a端子を介してHBT35aのベースに接続されている。また、抵抗78aと抵抗78bとの接続部は、バイアススイッチ回路6Cの出力端子であるV1800b端子を介してHBT35bのベースに、抵抗78bと抵抗78cとの接続部は、バイアススイッチ回路6Cの出力端子であるV1800c端子を介してHBT35cのベースにそれぞれ接続されている。更に、V1800b端子とHBT42のコレクタとの間には抵抗79bが、V1800c端子とHBT42のコレクタの間には抵抗79cがそれぞれ接続されている。
【0058】
このようにすることにより、第1バイアス回路3Cが動作する際に最もベース電流が流れるHBT31c、及び第2バイアス回路5Cが動作する際に最もベース電流が流れるHBT35cによるVpc端子からのベースバイアス電圧の電圧降下を最小にすることができる。このため、デュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器の各回路を同一チップ上で構成する場合に有効である。また、各HBT31a〜31c及びHBT35a〜35cのそれぞれのベースに供給する電流を抵抗の分割比で最適化することができ、電流Ipcの値を最小化することができる。
【0059】
このように、本実施の形態1における高周波電力増幅器は、HBTで構成された第1バイアス回路及び第2バイアス回路の切り換えを行うバイアススイッチ回路を、従来から広く使用されているAlGaAs又はGaAs系HBTで形成すると共に、該HBTを3つ以上直列に接続して各ベース−エミッタ間電圧Vbeの合計が3Vを超えないように形成した。このことから、ベース−エミッタ間電圧VbeのON電圧が例えば1.35Vと高いHBTを使用してデュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器を形成することができるため、3V系の低電源電圧においても確実に動作させることができる、HBTで構成されたMMICに集積化することができ、製造工程を簡素化できる。
【0060】
実施の形態2.
上記実施の形態1における各バイアススイッチ回路は、Vpc端子に過電圧が印加されると、第1及び第2バイアス回路においても過電圧が印加されるが、バイアススイッチ回路に保護回路を設け、Vpc端子に過電圧が印加されても第1及び第2バイアス回路に過電圧が印加されないようにしてもよく、このようにしたものを本発明の実施の形態2とする。
【0061】
図8は、本発明の実施の形態2におけるデュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器の第1バイアス回路、第2バイアス回路及びバイアススイッチ回路の例を示した回路図である。なお、本発明の実施の形態2における高周波電力増幅器の例を示した概略の回路図は、図1のバイアススイッチ回路の符号を変える以外は図1と同じであるので省略する。また、図8では、図2と同じものは同じ符号で示しており、ここではその説明を省略すると共に、図2との相違点のみ説明する。
図8における図2との相違点は、図2のバイアススイッチ回路6に保護回路81及び82を設けたことにある。これに伴って、図2のバイアススイッチ回路6をバイアススイッチ回路84としたことにある。
【0062】
図8において、バイアススイッチ回路84は、HBT41〜43、抵抗45〜54及び保護回路81,82で形成されている。保護回路81は、HBT91及び抵抗92,93で形成されており、Vbeマルチプライヤを形成している。抵抗92及び93は直列に接続され、該直列回路はVpc端子と接地との間に接続されている。HBT91において、コレクタは抵抗45と抵抗46との接続部、すなわちV900端子に接続され、ベースは抵抗92と抵抗93との接続部に接続され、エミッタは接地されている。
【0063】
同様に、保護回路82は、HBT95及び抵抗96,97で形成されており、Vbeマルチプライヤを形成している。抵抗96及び97は直列に接続され、該直列回路はVpc端子と接地との間に接続されている。HBT95において、コレクタは抵抗48と抵抗49との接続部、すなわちV1800端子に接続され、ベースは抵抗96と抵抗97との接続部に接続され、エミッタは接地されている。
【0064】
このような構成において、抵抗92及び93の抵抗値をそれぞれR92及びR93とすると、保護回路81におけるHBT91のON電圧は、{(R92+R93)/R93}倍される。例えば、HBT91のON電圧が約1.3Vであり、{(R92+R93)/R93}が2.3になるように抵抗値R92及びR93を設定すると、電圧Vpcが3VになるとHBT91はON状態となってHBT91にI4のコレクタ電流が流れる。このことから、抵抗45による電圧降下が発生するため、V900端子の電圧は3V以下に抑制され、Vpc端子に過電圧が印加された場合、該過電圧が直接第1バイアス回路3に印加されることを防止し、すなわち第1電力増幅器2に印加されることを防止する。
【0065】
同様に、抵抗96及び97の抵抗値をそれぞれR96及びR97とすると、保護回路82におけるHBT95のON電圧は、{(R96+R97)/R97}倍される。例えば、HBT95のON電圧が約1.3Vであり、{(R96+R97)/R97}が2.3になるように抵抗値R96及びR97を設定すると、電圧Vpcが3VになるとHBT95はON状態となってHBT95にI5のコレクタ電流が流れる。このことから、抵抗48による電圧降下が発生するため、V1800端子の電圧は3V以下に抑制され、Vpc端子に過電圧が印加された場合、該過電圧が直接第2バイアス回路5に印加されることを防止し、すなわち第2電力増幅器4に印加されることを防止する。
【0066】
図9は、図8で示したバイアススイッチ回路84の動作特性例を示した図である。図9から分かるように、V900端子の電圧は、電圧Vpc<3Vでは、電圧Vpcに比例して増大するが、電圧Vpc≧3Vでは3V以下に抑制されていることが分かる。
【0067】
なお、図8では、図2で示したバイアススイッチ回路6に保護回路81,82を設けた場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、図5、図6及び図7で示した各バイアススイッチ回路に適用してもよい。図5のバイアススイッチ回路の場合は図8と同じであるが、図6のバイアススイッチ回路6Bの場合、保護回路81を構成するHBT91のコレクタは抵抗45Bと抵抗71cとの接続部に接続され、保護回路82を構成するHBT95のコレクタは抵抗48Bと抵抗72cとの接続部に接続される。また、図7のバイアススイッチ回路6Cの場合、保護回路81を構成するHBT91のコレクタは抵抗74と抵抗75cとの接続部に接続され、保護回路82を構成するHBT95のコレクタは抵抗77と抵抗78cとの接続部に接続される。
【0068】
このように、本実施の形態2における高周波電力増幅器は、バイアススイッチ回路84にVbeマルチプライヤを形成する保護回路81及び82を設け、Vpc端子に過電圧が印加された場合にV900端子及びV1800端子に該過電圧が印加されないようにした。このことから、実施の形態1と同様の効果に加えて、GSM電話機のように電力増幅器の電源が直接バッテリの電源に接続して使用するようなシステムにおいて、何らかの原因でVpc端子がバッテリに直接接続されてしまうような故障が発生した場合においても、第1電力増幅器2及び第2電力増幅器4を熱暴走から保護することができ、高周波電力増幅器及び該高周波電力増幅器を使用した電話機本体の焼損を防止することができる。
【0069】
【発明の効果】
請求項1に係る高周波電力増幅器は、HBTで構成された各バイアス回路の動作の切り換えを行うバイアススイッチ回路を、一方のバイアス回路への出力制御を行う第1スイッチング手段と、他方のバイアス回路への出力制御を行う第2スイッチング手段と、第1及び第2スイッチング手段を排他的に選択して動作させる第3スイッチング手段とを備え、第1〜第3スイッチング手段を従来から広く使用されているAlGaAs又はGaAs系HBTで構成すると共に、該HBTを3つ以上直列に接続して各ベース−エミッタ間電圧Vbeの合計が3Vを超えないように形成した。このことから、3V系の低電源電圧においても確実に動作させることができるため、HBTで構成されたMMICに集積化することができ、製造工程を簡素化できる。
【0070】
請求項2に係る高周波電力増幅器は、請求項1において、具体的には、上記第1及び第2スイッチング手段は、信号Vpcの電圧を分圧するための抵抗直列回路と、該抵抗直列回路と接地との接続制御を行う接地接続用HBTとでそれぞれ形成され、該抵抗直列回路における所定の抵抗間の接続部から、対応するバイアス回路への制御信号を出力するようにした。このことから、バイアススイッチ回路を少数のHBTと抵抗によって形成することができ、MMICに集積化した際のチップサイズの増大を最小限にすることができる。
【0071】
請求項3に係る高周波電力増幅器は、請求項2において、具体的には、上記第1及び第2スイッチング手段は、多段電力増幅器における初段の電力増幅用HBTにバイアスを供給する回路から最終段の電力増幅用HBTにバイアスを供給する回路へ、信号Vpcによる電流が順に大きくなるように、対応するバイアス回路への制御信号を出力するようにした。このことから、信号Vpcによる最も大きな電流が流れる、各バイアス回路における最終段の電力増幅用HBTにバイアスを供給する回路に対する信号Vpcの電圧降下を最小にすることができる。
【0072】
請求項4に係る高周波電力増幅器は、請求項2又は請求項3のいずれかにおいて、具体的には、第1及び第2スイッチング手段における、抵抗直列回路における所定の抵抗間の接続部、及び該抵抗直列回路と接地接続用HBTとの接続部の間に、対応するバイアス回路への制御信号の大きさを調整する調整用抵抗をそれぞれ設けた。このことから、各バイアス回路に対する信号Vpcの電圧降下を最小にすることができ、信号Vpcによって各バイアス回路に流れる電流値を最小にすることができる。
【0073】
請求項5に係る高周波電力増幅器は、請求項2から請求項4のいずれかにおいて、具体的には、第3スイッチング手段におけるHBTは、2値の信号Vmodに応じて、第2スイッチング手段におけるHBTのベースに対するバイアスの供給制御を行うようにした。このことから、3V系電源においても動作可能なHBTで構成されたバイアススイッチ回路を形成することができ、HBTで構成されるMMICに集積化することができる。
【0074】
請求項6に係る高周波電力増幅器は、請求項1から請求項5のいずれかにおいて、第1及び第2スイッチング手段に、外部から印加される過電圧から各バイアス回路を保護する保護回路をそれぞれ設けた。このことから、外部からの過電圧による電力増幅器の熱暴走を防止して電力増幅器の焼損を防止することができる。
【0075】
請求項7に係る高周波電力増幅器は、請求項6において、具体的には、上記保護回路は、HBTで構成されたVbeマルチプライヤをなすものである。このことから、簡単な回路構成で外部からの過電圧による電力増幅器の熱暴走を防止して電力増幅器の焼損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1におけるデュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器の例を示した概略の回路図である。
【図2】 図1の第1バイアス回路3、第2バイアス回路5及びバイアススイッチ回路6の回路例を示した図である。
【図3】 図2で示したバイアススイッチ回路6の動作例を示した特性図である。
【図4】 本発明の実施の形態1におけるデュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器の他の例を示した概略の回路図である。
【図5】 図4の第1バイアス回路3A、第2バイアス回路5A及びバイアススイッチ回路6の回路例を示した図である。
【図6】 第1バイアス回路、第2バイアス回路及びバイアススイッチ回路の他の回路例を示した図である。
【図7】 第1バイアス回路、第2バイアス回路及びバイアススイッチ回路の他の回路例を示した図である。
【図8】 本発明の実施の形態2における第1バイアス回路、第2バイアス回路及びバイアススイッチ回路の回路例を示した図である。
【図9】 図8で示したバイアススイッチ回路84の動作特性例を示した図である。
【図10】 従来におけるデュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器の回路構成例を示した図である。
【図11】 図10のバイアススイッチ回路203の従来例を示した概略の回路図である。
【図12】 図10の各バイアス回路をHBTで構成した場合の従来例を示した回路図である。
【符号の説明】
1,1A 高周波電力増幅器、 2,2A 第1電力増幅器、 3,3A,3B 第1バイアス回路、 4,4A 第2電力増幅器、 5,5A,5B 第2バイアス回路、 6,6B,6C,84 バイアススイッチ回路、 81,82保護回路。
Claims (7)
- 少なくとも1つの電力増幅用HBTで構成された2つの電力増幅器と、HBTで構成され該各電力増幅器に対応して設けられた各バイアス回路と、外部からの信号に応じて該各バイアス回路に対する動作の切り換えを排他的に行うバイアススイッチ回路とを備えた、デュアルバンドシステム用の高周波電力増幅器において、
上記バイアススイッチ回路は、
上記各バイアス回路の動作制御を行う外部からの信号Vpcにおける一方のバイアス回路への出力制御を行う、HBTで構成された第1スイッチング手段と、
上記外部からの信号Vpcの他方のバイアス回路への出力制御を行う、HBTで構成された第2スイッチング手段と、
外部から入力される第1スイッチング手段の動作制御を行うための制御信号Vmodに応じて第2スイッチング手段の動作制御を行い、上記第1及び第2スイッチング手段を排他的に選択して動作させる、HBTで構成された第3スイッチング手段と、
を備えることを特徴とする高周波電力増幅器。 - 上記第1及び第2スイッチング手段は、上記信号Vpcの電圧を分圧するための複数の抵抗を直列に接続した抵抗直列回路と、該抵抗直列回路と接地との接続制御を行う接地接続用HBTとでそれぞれ形成され、該抵抗直列回路における所定の抵抗間の接続部から、対応するバイアス回路への制御信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の高周波電力増幅器。
- 上記第1及び第2スイッチング手段は、上記各電力増幅器が複数の電力増幅用HBTで増幅を行う多段電力増幅器を形成し、対応する各バイアス回路が各電力増幅用HBTごとにバイアスを供給する回路を有する場合、信号Vpcによる電流が、初段の電力増幅用HBTにバイアスを供給する回路から最終段の電力増幅用HBTにバイアスを供給する回路へ順に大きくなるように、対応するバイアス回路への制御信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の高周波電力増幅器。
- 上記第1及び第2スイッチング手段は、上記抵抗直列回路における所定の抵抗間の接続部、及び該抵抗直列回路と接地接続用HBTとの接続部の間に、対応するバイアス回路への制御信号の大きさを調整する調整用抵抗がそれぞれ並列に設けられることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の高周波電力増幅器。
- 上記第3スイッチング手段におけるHBTは、上記2値の信号Vmodに応じて、上記第2スイッチング手段におけるHBTのベースに対するバイアスの供給制御を行うことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の高周波電力増幅器。
- 上記第1及び第2スイッチング手段は、上記信号Vpcが入力される入力端子に印加された過電圧から上記各バイアス回路を保護する保護回路がそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の高周波電力増幅器。
- 上記保護回路は、HBTで構成されたVbeマルチプライヤをなすことを特徴とする請求項6に記載の高周波電力増幅器。
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