JP4226743B2 - 複層塗膜の補修塗装方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車補修塗装などの補修塗装における、多角度測色計を用いた複層塗膜の補修塗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来、自動車補修塗装においては、カラーベース塗膜、半透明反射塗膜及びクリヤ塗膜からなる複層塗膜を補修塗装する場合には、カラーベース塗膜及び半透明反射塗膜のそれぞれが光学特性を有しているため、色合わせを行うべき自動車車体の総合膜を多角度測色計にて測色しても、カラーベース塗料と半透明反射塗膜との配合をそれぞれ分割して、コンピュータにより算出させることは極めて困難であり、調色者が経験と勘で色合わせを行ってきた。そのため調色経験の少ない調色者は色を合わせることが困難であり、色を合わせるのに相当の時間を費やしたり、色合わせができないといった問題があった。
【0003】
本発明の目的は、自動車補修塗装において、調色経験が少ない調色者においても短時間で目標とする基準色に調色することができるシステムを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、多角度測色計を用いて2以上の角度条件における複層塗膜である基準色の測色値及び色番号の塗料配合、測色データなどから、コンピュータ調色によりカラーベース塗料の配合を求め、必要に応じて、鏡面反射軸と受光軸とのなす角度で15〜30度の角度条件での測色値から、半透明反射塗膜形成用塗料の塗装膜厚を決定する方法を用いることにより、目標とする基準色に調色することができ、複層塗膜の補修塗装を行うことができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、カラーベース塗膜の上に半透明反射塗膜が形成されており、該反射塗膜の上にクリヤ塗膜が形成されてなる複層塗膜を補修塗装する方法であって、予め複数の複層塗膜の登録色番号、該各登録色番号の複層塗膜を補修塗装するための、カラーベース塗料と半透明反射塗料とクリヤ塗料との組合せの少なくとも一組の登録塗料配合、各登録塗料配合に基く多角度測色計による登録測色データ及び原色塗料の光学特性値データが登録されたコンピュータを用いて複層塗膜の補修塗装を行う方法であり、下記の工程
(1)補修塗装において塗色を合せるべき複層塗膜の基準色を多角度測色計にて測色した測色データ、及び該基準色の色番号をコンピュータに入力し、該基準色と色番号が一致している上記登録色番号の少なくとも一組の登録塗料配合及び登録測色データを検索し、一組の登録塗料配合及び登録測色データを選定する工程、
(2)上記工程(1)で選定された一組の登録塗料配合、該登録塗料配合に基く複層塗膜の登録測色データ、工程(1)の基準色の測色データ、及び予め登録しておいた原色塗料の光学特性値データをもとにコンピュータ調色によりカラーベース塗料の第1候補配合を算出する工程、
(3)上記工程(2)で算出された第1候補配合に基づくカラーベース塗料によるカラーベース塗膜及び工程(1)で選定された登録塗料配合の半透明反射塗膜形成用塗料による半透明反射塗膜及び補修塗装用クリヤ塗料のクリヤ塗膜を順次形成した第1の調色経過塗装板を作成し、該第1の調色経過塗装板の色が合格か否かを判断する工程、を有し、上記工程(3)の次に、さらに下記の工程(4)及び(5)を行うことを特徴とする複層塗膜の補修塗装方法を提供するものである。
(4)上記第1の調色経過塗装板の鏡面反射軸と受光軸とのなす角度が15〜30度の範囲内となる角度条件における、基準色の明度と第1の調色経過塗装板の複層塗膜の明度との明度の差に基いて、半透明反射塗膜形成用塗料の塗装膜厚を決める工程、及び
(5)上記第1候補配合に基づくカラーベース塗膜、上記工程(4)で決定した塗装膜厚にて塗装した半透明反射塗膜及び上記クリヤ塗膜を形成した第2の調色経過塗装板を作成し、該第2の調色経過塗装板の色が合格か否かを判断する工程。
【0007】
さらに、本発明は、上記工程(5)の次に、さらに
(6)基準色の測色データ、第2の調色経過塗装板を作成した、カラーベース塗料、半透明反射塗膜形成用塗料及びクリヤ塗料の一組の塗料配合、第2の調色経過塗装板の多角度測色計による測色データ、及び原色塗料の光学特性値データをもとにコンピュータ調色によりカラーベース塗料の補正配合を算出する工程、及び
(7)上記工程(6)で算出した補正配合に基づくカラーベース塗膜、上記工程(4)で決定した塗装膜厚に基く半透明反射塗膜及び上記クリヤ塗膜を形成した第3の調色経過塗装板を作成し、該第3の調色経過塗装板の色が合格か否かを判断する工程、を有し、該第3の調色経過塗装板の色が不合格であれば、第2の調色経過塗装板のかわりに最新の調色経過塗装板を用いて上記工程(6)及び(7)と同様の工程を合格するまで繰り返すことを特徴とする上記補修塗装方法を提供するものである。
【0008】
以下、本発明の補修塗装方法について詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の補修塗装方法において、補修塗装を行う複層塗膜は、カラーベース塗膜、該カラーベース塗膜上の半透明反射塗膜、及び該半透明反射塗膜上のクリヤ塗膜からなる。
【0010】
カラーベース塗膜は、通常、硬化したバインダ樹脂及び着色顔料を含有する。
半透明反射塗膜は、通常、硬化したバインダ樹脂及び光輝材を含有するものであって、下層のカラーベース塗膜が透けて見え、カラーベース塗膜と半透明反射塗膜との両者が相俟って意匠性に優れた塗色を呈するものである。半透明反射塗膜に含有される光輝材としては、チタンや酸化鉄などでマイカ表面がコーティングされた光輝性マイカ粉、アルミニウム粉、光輝性グラファイト、金粉、銅粉などを挙げることができるが、なかでも光輝性マイカ粉を好適に使用することができる。半透明反射塗膜形成用塗料には、必要に応じて、塗膜中での光輝材の配向を制御するための配向性制御剤、シリカ粉末などを配合することができる。
【0011】
クリヤ塗膜は、塗膜の光沢向上、耐候性などの塗膜性能の向上などのために形成されてなる透明塗膜である。
【0012】
本発明の複層塗膜を補修する方法においては、予め、補修塗装される可能性のある塗装物品における複数の複層塗膜の登録色番号、該各登録色番号の複層塗膜を補修塗装するための少なくとも各一組の登録塗料配合(カラーベース塗料と半透明反射塗料と必要に応じてクリヤ塗料との組合せ)、各登録塗料配合に基く複層塗膜の多角度測色計による登録測色データ、及び原色塗料の光学特性値データが登録されたコンピュータを用いる。
【0013】
上記登録色番号は、通常、塗装物品の製造メーカー毎に指定された色コード番号であり、その色番号に応じて、補修塗装する際の、カラーベース塗料と半透明反射塗膜形成用塗料と必要に応じてクリヤ塗料との組合せの塗料配合が登録されている。この塗料配合は、一つの登録色番号について一組のみであることができるが、実績配合なども含まれることができ複数組の塗料配合が登録されていてもよい。これらの塗料配合の組合せ毎に、これらの組合せの塗料を順次形成した複層塗膜についての多角度測色計による測色データもコンピュータに予め登録されている。
【0014】
コンピュータに予め登録されている原色塗料の光学特性値データとしては、例えば、原色塗料のK値(光吸収係数)、S値(光散乱係数)などであることができる。上記K値及びS値は、例えば、原色塗料及び原色塗料のうすめ色の測色データを数値処理して得ることができる。
【0015】
本発明方法における各工程について以下に順次説明する。
工程(1)
補修塗装を行うにあたり、塗色を合せるべき複層塗膜の基準色を多角度測色計にて測定する。自動車補修などの補修塗装において、補修塗膜を形成した際、補修塗装部の塗膜と補修塗装部近傍の塗膜の色との差が目視で認められ難いことが必要であることから、上記基準色としては、通常、補修塗装部近傍の複層塗膜の色であることが好適である。
【0016】
基準色を多角度測色計によって測定するには、2以上の角度条件、すなわち、測定光の入射角が異なるか、又は鏡面反射軸と受光軸とのなす角度である受光角度が異なる2以上の条件で測定する。上記鏡面反射軸とは、入射角と反射角とが同じ角度であるときの反射角を形成する軸、例えば入射角が45度の場合、反射角が45度である軸である。
【0017】
受光角度を変化させる場合、その角度条件は特に限定されるものではないが、通常、角度条件が2の場合には、上記受光角度が15〜30度及び75〜110度の各角度範囲のうちの各1ずつであること、また、角度条件が3の場合には、上記受光角度が15〜30度、35〜60度及び75〜110度の各角度範囲のうちの各1ずつであること、さらに、角度条件が4の場合には、上記受光角度が15〜30度、35〜60度、70〜80度及び90〜110度の各角度範囲のうちの各1ずつであることが目視による色の判断との対応がとれやすいことから好適である。この角度条件は、予めコンピュータに登録しておく前記登録測色データの多角度測色計の角度条件と一致させておく。
【0018】
上記基準色を各角度条件によって測定した各測定値(角度基準測定値)は、明度、彩度、色相を表すか、計算できるなど、色を特定できるものであればよく、例えば、XYZ表色系(X、Y、Z)、L* a* b* 表色系(L* 、a* 、b* 値)、ハンターLab表色系(L、a、b値)、CIE(1994)に規定されるL* C* h表色系(L* 値、C* 値、h値)、マンセル表色系(H、V、C)などによって表すことができる。なかでも、L* a* b* 表色系又はL* C* h表色系による表示が自動車補修塗装分野を含む工業分野での色の表示において一般的である。
【0019】
工程(1)においては、上記基準色である複層塗膜の多角度測色計による測色データ及び色番号をコンピュータに入力するとともに、上記基準色と色番号が一致している前記予め登録した登録色番号の少なくとも一組の登録塗料配合及び登録測色データを検索し選定する。複数組の登録塗料配合が検索された場合には、その中から一組の登録塗料配合を、例えば、基準色との色整合の度合い、配合データなどを勘案するなどして最も合理的と思われるものを適宜選定することができる。この選定方法は特に限定されるものではない。
【0020】
工程(2)
工程(1)で選定された一組の登録塗料配合及び該登録塗料配合に基く複層塗膜の登録測色データ、工程(1)の基準色の多角度測色計による測色データ、及びカラーベース塗料の調色に使用する原色塗料の光学特性値データをもとに、複層塗膜の塗色を基準色により一層近づけるために、コンピュータ調色を行い、カラーベース塗料の第1候補配合を算出する。コンピュータ調色に際しては、コンピュータによる色合わせのための計算ロジックを用いることができる。
【0021】
工程(3)
上記工程(2)で算出された第1候補配合に基づくカラーベース塗料の塗膜及び工程(1)で選定された登録塗料配合の半透明反射塗膜形成用塗料に基く半透明反射塗膜及び補修塗装用クリヤ塗料のクリヤ塗膜をそれぞれ所定の標準膜厚となるように順次形成した第1の調色経過塗装板を作成し、該経過塗装板の色が合格か否かを判断する。この判断基準は、目視、多角度測定における基準色との色差(ΔE)値などによって総合的に決めることができる。
【0022】
上記工程(3)で第1の調色経過塗装板が不合格の場合には、さらに下記の工程(4)及び(5)を行う。
【0023】
工程(4)
上記工程(3)で得た第1の調色経過塗装板が不合格の場合、この工程(4)において、複層塗膜の明度を基準色の明度に合せるため、半透明反射塗膜の塗装膜厚を決める工程であり、第1の調色経過塗装板の鏡面反射軸と受光軸とのなす角度が15〜30度の範囲内となる角度条件における、基準色と調色経過塗装板との明度の差に基いて、半透明反射塗膜形成用塗料の塗装膜厚を決める。上記15〜30度の角度条件の測定値のみで、充分に目視とよく合った複層塗膜の明度の調整を行うことができる。本発明において、「膜厚」とは「乾燥膜厚」を意味するものとする。
【0024】
半透明反射塗膜は、膜厚が厚くなるに従って複層塗膜の明度を向上させるので、基準色に対して第1の調色経過塗装板の塗色の明度が高い場合には、半透明反射塗膜の膜厚を第1の調色経過塗装板における半透明反射塗膜の膜厚より薄くし、一方、基準色に対して第1の調色経過塗装板の塗色の明度が低い場合には、半透明反射塗膜の膜厚を第1の調色経過塗装板における半透明反射塗膜の膜厚より厚くすることによって明度を近づけることができる。
【0025】
明度差の値によって、どの程度膜厚を変化させればよいかは、使用する半透明反射塗膜形成用塗料の種類などによって異なり、一概に論ずることはできないが、明度差をΔL*値[(第1の調色経過塗装板L*値)−(基準色のL*値)]で表す場合には、通常、下記の目安で行うことができる。
ΔL*値が+3程度で、5μm程度薄くする、
ΔL*値が−3程度で、5μm程度厚くする。
【0026】
半透明反射塗膜形成用塗料を塗装する場合、通常に塗装すると、塗装回数1回で5μm程度の膜厚とすることができるので、その目安で塗装回数を変化させて膜厚を調整することができる。
【0027】
明度差の値によって、どの程度膜厚を変化させるかは、塗色ごとに半透明反射塗膜形成用塗料の膜厚と明度変化の検量線を作成して決定することもできる。
【0028】
工程(5)
工程(5)においては、第1の調色経過塗装板において、半透明反射塗膜の膜厚を工程(4)で決めた膜厚とする以外は同様にして第2の調色経過塗装板を作成する。すなわち、前記工程(2)で算出した第1の候補配合に基づくカラーベース塗膜、上記工程(4)で決定した塗装膜厚にて塗装した半透明反射塗膜及び上記クリヤ塗膜を形成した第2の調色経過塗装板を作成する。
【0029】
そして、作成した第2の調色経過塗装板の色が合格か否かを判断する。この判断基準は、目視、多角度測定における基準色との色差(ΔE)値などによって総合的に決めることができる。
【0030】
上記工程(5)で作成した第2の調色経過塗装板が不合格の場合には、さらに下記の工程(6)及び(7)を行う。
【0031】
工程(6)
工程(6)は、上記工程(5)で得た第2の調色経過塗装板が不合格の場合、複層塗膜の色を基準色に近づけるため、コンピュータ調色によりカラーベース塗料の補正配合を算出する工程である。すなわち、基準色の測色データ、第2の調色経過塗装板を作成した一組(カラーベース塗料、半透明反射塗膜形成用塗料及び必要に応じてクリヤ塗料)の塗料配合、第2の調色経過塗装板の多角度測色計による測色データ、及び原色塗料の光学特性値データをもとに、コンピュータ調色によりカラーベース塗料の補正配合を算出する。コンピュータ調色に際しては、コンピュータによる色合わせのための計算ロジックを用いることができる。
【0032】
工程(7)
工程(7)は、上記工程(6)で算出した補正配合に基づくカラーベース塗膜、上記工程(4)で決定した塗装膜厚に基く半透明反射塗膜及び上記クリヤ塗膜を形成した第3の調色経過塗装板を作成し、該第3の経過塗装板の色が合格か否かを判断する。
【0033】
第3の調色経過塗装板(最新の調色経過塗装板)の色が不合格の場合には、上記第2の調色経過塗装板のかわりに第3の調色経過塗装板(最新の調色経過塗装板)を用いる以外は同様にして上記工程(6)及び(7)を合格するまで繰り返し行う。
【0034】
調色経過塗装板が合格の場合には、その調色経過塗装板の作成に用いたと同じ塗料配合、膜厚にて、カラーベース塗料、半透明反射塗膜形成用塗料及びクリヤ塗料を用いて補修塗装を行うことができる。クリヤ塗料は色への影響が小さい場合には、種類を変更することが可能である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1
自動車車体における補修塗装部近傍の塗膜面の色である基準色と調色経過塗装板の塗色の測定は、関西ペイント(株)製の多角度測色計「Van−VanFAセンサー」にて行い、調色するカラーベース塗料の配合計算は、関西ペイント(株)製のコンピュータ・カラー・マッチング装置「Van−VanFAステーション」にて行った。上記「Van−VanFAセンサー」は、鏡面反射軸と受光軸のなす角度が25度、45度、75度の3角度条件で測定して測色値を得ることができるものである。コンピュータ・カラー・マッチング装置には、予め複数の複層塗膜(カラーベース塗膜−半透明反射塗膜−クリヤ塗膜の複層塗膜)の登録色番号、該各登録色番号の複層塗膜を補修塗装するための少なくとも各一組の登録塗料配合(カラーベース塗料と半透明反射塗料との組合せ)、各登録塗料配合に基く多角度測色計による登録測色データ及びカラーベース塗料用の原色塗料の光学特性値データが登録されている。また補修塗装用の塗料としては、関西ペイント(株)製、「レタンPG2K」を使用した。
【0037】
自動車車体の塗膜面の基準色は、色番号が「A−001」であり、この基準色を「Van−VanFAセンサー」にて上記25度、45度、75度の3角度条件にて測定した。その結果は下記表1のとおりであった。
【0038】
【表1】
表1
【0039】
また、登録色番号が「A−001」(仮称)の塗料配合(カラーベース塗料と半透明反射塗膜形成用塗料との組合せ)及びこの塗料配合のときの複層塗膜の3角度条件での測定データを「Van−VanFAステーション」から検索したところ、20件の塗料配合の組合せがあり、これらを色整合の度合を指数化した数値を用いて、色整合の度合の良いものから順に並べた。最も色整合の度合の良かった組合せ(「A−001CK05」)の塗料配合は特に高価なものではなく合理的なものであったので「A−001CK05」を選定した。「A−001CK05」における半透明反射塗膜形成用塗料は、顔料分として白色の光輝性マイカ粉を含有するパールベース塗料であった。
【0040】
この「A−001CK05」の登録塗料配合、この配合に基く複層塗膜の登録測色データをもとに、「Van−VanFAステーション」を用いてコンピュータ調色を行い、カラーベース塗料の第1候補配合を得た。第1候補配合は下記表2に示すとおりであった。
【0041】
【表2】
表2
【0042】
ついで、ブリキ板上に上記第1候補配合のカラーベース塗料を膜厚が約40μmとなるように塗装し、セッティング後、上記「A−001CK05」における半透明反射塗膜形成用塗料を膜厚が約15μmとなるように3回塗りした。さらにセッティング後、関西ペイント(株)製の補修用クリヤ塗料「レタンPG2Kクリヤー」を膜厚約50μmとなるように塗装した後、60℃で20分間焼付けて第1の調色経過塗装板を作成した。この塗装板の色を「Van−VanFAセンサー」を用いて前記3角度条件にて測色した。その測色結果は下記表3に示すとおりであった。
【0043】
【表3】
表3
【0044】
第1の調色経過塗装板の塗色は基準色とかなり離れており、不合格であった。
測定角度25度におけるL*値について、第1の調色経過塗装板を基準色と比較すると、ΔL*値は、約3.1であったので半透明反射塗膜の膜厚を小さくするため半透明反射塗膜用塗料の塗装回数を3回から2回に減らす以外は、第1の調色経過塗装板の作成と同様の操作を行い第2の調色経過塗装板を得た。この塗装板の色を「Van−VanFAセンサー」を用いて前記3角度条件にて測色した。その測色結果は下記表4に示すとおりであった。
【0045】
【表4】
表4
【0046】
第2の調色経過塗装板と基準色とのΔL*値の絶対値は小さくなっていたが、第2の調色経過塗装板の塗色は基準色とかなり離れており、不合格であった。
そこで、第2の調色経過塗装板の測色データを読み込ませ、「Van−VanFAステーション」を用いてコンピュータ調色を行い、カラーベース塗料の修正配合(1)を得た。この修正配合(1)は下記表5に示すとおりであった。
【0047】
【表5】
表5
【0048】
カラーベース塗料として修正配合(1)のものを使用する以外は、第2の調色経過塗装板の作成と同様の操作を行い第3の調色経過塗装板を得た。この塗装板の色を「Van−VanFAセンサー」を用いて前記3角度条件にて測色した。その測色結果は下記表6に示すとおりであった。
【0049】
【表6】
表6
【0050】
第3の調色経過塗装板の塗色は基準色とかなり離れており、不合格であった。
そこで、第3の調色経過塗装板の測色データを読み込ませ、「Van−VanFAステーション」を用いてコンピュータ調色を行い、カラーベース塗料の修正配合(2)を得た。この修正配合(2)は下記表7に示すとおりであった。
【0051】
【表7】
表7
【0052】
カラーベース塗料として修正配合(2)のものを使用する以外は、第3の調色経過塗装板の作成と同様の操作を行い第4の調色経過塗装板を得た。この塗装板の色を「Van−VanFAセンサー」を用いて前記3角度条件にて測色した。その測色結果は下記表8に示すとおりであった。表8には、各測定角度条件における基準色と第4の調色経過塗装板の色差(ΔE)も示した。
【0053】
【表8】
表8
【0054】
第4の調色経過塗装板の測色値は基準色の測色値に近く、また、目視評価においても良好であったので合格とした。第4の調色経過塗装板の作成と同様の塗料、操作にて補修塗装を行ったところ良好な補修塗装を行うことができた。
【0055】
実施例2
実施例1において、自動車車体における補修塗装部近傍の塗膜面の色である基準色を「B−002」(仮称)として調色を行っていく以外は実施例1と同様の装置、測定条件にて行った。
【0056】
自動車車体の補修塗装しようとする部位近傍の塗膜面の色である基準色「B−002」を「Van−VanFAセンサー」にて上記25度、45度、75度の3角度条件にて測定した。その結果は下記表9のとおりであった。
【0057】
【表9】
表9
【0058】
登録色番号が「B−002」の塗料配合(カラーベース塗料と半透明反射塗膜形成用塗料との組合せ)及びこの塗料配合のときの複層塗膜の3角度条件での測定データを「Van−VanFAステーション」から検索したところ、13件の塗料配合の組合せがあり、これらを色整合の度合を指数化した数値を用いて、色整合の度合の良いものから順に並べた。最も色整合の度合の良かった組合せ(「B−002CK28」)の塗料配合は特に高価なものではなく合理的なものであったので「B−002CK28」を選定した。「B−002CK28」における半透明反射塗膜形成用塗料は、顔料分として白色の光輝性マイカ粉及びシリカを含有するパールベース塗料であった。
【0059】
この「B−002CK28」の登録塗料配合、この配合に基く複層塗膜の登録測色データをもとに、「Van−VanFAステーション」を用いてコンピュータ調色を行い、カラーベース塗料の第1候補配合を得た。第1候補配合は下記表10に示すとおりであった。
【0060】
【表10】
表10
【0061】
ついで、ブリキ板上に上記第1候補配合のカラーベース塗料を膜厚が約40μmとなるように塗装し、セッティング後、上記「B−002CK28」における半透明反射塗膜形成用塗料を膜厚が約15μmとなるように3回塗りした。さらにセッティング後、関西ペイント(株)製の補修用クリヤ塗料「レタンPG2Kクリヤー」を膜厚約50μmとなるように塗装した後、60℃で20分間焼付けて第1の調色経過塗装板を作成した。この塗装板の色を「Van−VanFAセンサー」を用いて前記3角度条件にて測色した。その測色結果は下記表11に示すとおりであった。
【0062】
【表11】
表11
【0063】
第1の調色経過塗装板の塗色は基準色とかなり離れており、不合格であった。
測定角度25度におけるL*値について、第1の調色経過塗装板を基準色と比較すると、ΔL*値は、約−2.0であったので半透明反射塗膜の膜厚を大きくするため半透明反射塗膜用塗料の塗装回数を3回から4回に増やす以外は、第1の調色経過塗装板の作成と同様の操作を行い第2の調色経過塗装板を得た。この塗装板の色を「Van−VanFAセンサー」を用いて前記3角度条件にて測色した。その測色結果は下記表12に示すとおりであった。
【0064】
【表12】
表12
【0065】
第2の調色経過塗装板と基準色とのΔL*値の絶対値は小さくなっていたが、第2の調色経過塗装板の塗色は基準色とかなり離れており、不合格であった。
そこで、第2の調色経過塗装板の測色データを読み込ませ、「Van−VanFAステーション」を用いてコンピュータ調色を行い、カラーベース塗料の修正配合(1)を得た。この修正配合(1)は下記表13に示すとおりであった。
【0066】
【表13】
表13
【0067】
カラーベース塗料として修正配合(1)のものを使用する以外は、第2の調色経過塗装板の作成と同様の操作を行い第3の調色経過塗装板を得た。この塗装板の色を「Van−VanFAセンサー」を用いて前記3角度条件にて測色した。その測色結果は下記表14に示すとおりであった。
【0068】
【表14】
表14
【0069】
第3の調色経過塗装板の塗色は基準色とかなり離れており、不合格であった。
そこで、第3の調色経過塗装板の測色データを読み込ませ、「Van−VanFAステーション」を用いてコンピュータ調色を行い、カラーベース塗料の修正配合(2)を得た。この修正配合(2)は下記表15に示すとおりであった。
【0070】
【表15】
表15
【0071】
カラーベース塗料として修正配合(2)のものを使用する以外は、第3の調色経過塗装板の作成と同様の操作を行い第4の調色経過塗装板を得た。この塗装板の色を「Van−VanFAセンサー」を用いて前記3角度条件にて測色した。その測色結果は下記表16に示すとおりであった。表8には、各測定角度条件における基準色と第4の調色経過塗装板の色差(ΔE)も示した。
【0072】
【表16】
表16
【0073】
第4の調色経過塗装板の測色値は基準色の測色値に近く、いずれの角度条件においてもΔEは1.0以下であり、また、目視評価においても良好であったので合格とした。第4の調色経過塗装板の作成と同様の塗料、操作にて補修塗装を行ったところ良好な補修塗装を行うことができた。第4の調色経過塗装板の作成と同様の塗料、操作にて補修塗装を行ったところ良好な補修塗装を行うことができた。
【0074】
【発明の効果】
本発明方法によりカラーベース塗膜、半透明反射塗膜及びクリヤ塗膜からなる複層塗膜を効率よく補修塗装することができる。この方法により、3コートパール仕上げのような、従来、調色経験の少ない調色者には調色が困難であった複層塗膜においても容易に調色を行うことができる。
Claims (5)
- カラーベース塗膜の上に半透明反射塗膜が形成されており、該反射塗膜の上にクリヤ塗膜が形成されてなる複層塗膜を補修塗装する方法であって、予め複数の複層塗膜の登録色番号、該各登録色番号の複層塗膜を補修塗装するための、カラーベース塗料と半透明反射塗料とクリヤ塗料との組合せの少なくとも一組の登録塗料配合、各登録塗料配合に基く多角度測色計による登録測色データ及び原色塗料の光学特性値データが登録されたコンピュータを用いて複層塗膜の補修塗装を行う方法であり、下記の工程
(1)補修塗装において塗色を合せるべき複層塗膜の基準色を多角度測色計にて測色した測色データ、及び該基準色の色番号をコンピュータに入力し、該基準色と色番号が一致している上記登録色番号の少なくとも一組の登録塗料配合及び登録測色データを検索し、一組の登録塗料配合及び登録測色データを選定する工程、
(2)上記工程(1)で選定された一組の登録塗料配合、該登録塗料配合に基く複層塗膜の登録測色データ、工程(1)の基準色の測色データ、及び予め登録しておいた原色塗料の光学特性値データをもとにコンピュータ調色によりカラーベース塗料の第1候補配合を算出する工程、
(3)上記工程(2)で算出された第1候補配合に基づくカラーベース塗料によるカラーベース塗膜及び工程(1)で選定された登録塗料配合の半透明反射塗膜形成用塗料による半透明反射塗膜及び補修塗装用クリヤ塗料のクリヤ塗膜を順次形成した第1の調色経過塗装板を作成し、該第1の調色経過塗装板の色が合格か否かを判断する工程、を有し、上記工程(3)の次に、さらに下記の工程(4)及び(5)を行うことを特徴とする複層塗膜の補修塗装方法。
(4)上記第1の調色経過塗装板の鏡面反射軸と受光軸とのなす角度が15〜30度の範囲内となる角度条件における、基準色の明度と第1の調色経過塗装板の複層塗膜の明度との明度の差に基いて、半透明反射塗膜形成用塗料の塗装膜厚を決める工程、及び
(5)上記第1候補配合に基づくカラーベース塗膜、上記工程(4)で決定した塗装膜厚にて塗装した半透明反射塗膜及び上記クリヤ塗膜を形成した第2の調色経過塗装板を作成し、該第2の調色経過塗装板の色が合格か否かを判断する工程。 - 上記工程(5)の次に、さらに
(6)基準色の測色データ、第2の調色経過塗装板を作成した、カラーベース塗料、半透明反射塗膜形成用塗料及びクリヤ塗料の一組の塗料配合、第2の調色経過塗装板の多角度測色計による測色データ、及び原色塗料の光学特性値データをもとにコンピュータ調色によりカラーベース塗料の補正配合を算出する工程、及び
(7)上記工程(6)で算出した補正配合に基づくカラーベース塗膜、上記工程(4)で決定した塗装膜厚に基く半透明反射塗膜及び上記クリヤ塗膜を形成した第3の調色経過塗装板を作成し、該第3の調色経過塗装板の色が合格か否かを判断する工程、を有し、該第3の調色経過塗装板の色が不合格であれば、第2の調色経過塗装板のかわりに最新の調色経過塗装板を用いて上記工程(6)及び(7)と同様の工程を合格するまで繰り返すことを特徴とする請求項1記載の補修塗装方法。 - 半透明反射塗膜が、少なくとも1種の光輝性マイカ粉を含有するものである請求項1又は2に記載の補修塗装方法。
- 基準色が、補修方法を行う部位の近傍の複層塗膜の色である請求項1〜3のいずれか一項に記載の補修塗装方法。
- 多角度測色計にて測定する受光角度が、鏡面反射軸と受光軸とのなす角度で15〜30度、35〜60度及び75〜110度の各角度範囲内のうちの各1ずつである合計3の受光角度である請求項1〜4のいずれか一項に記載の補修塗装方法。
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