JP4224804B2 - 垂直磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、垂直磁気記録媒体及びその製造方法に関し、より詳細には、各種磁気記録装置に搭載される垂直磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録の高密度化を実現する技術として、従来の長手磁気記録方式に代えて、記録磁化が記録媒体の面内方向に垂直な垂直磁気記録方式が注目されつつある。垂直磁気記録媒体は主に、硬質磁性材料の磁気記録層と、この磁気記録層を目的の方向に配向させるための下地層と、磁気記録層の表面を保護する保護膜と、そしてこの磁気記録層への記録に用いられる磁気ヘッドが発生する磁束を集中させる役割を担う軟磁性材料の裏打ち層とから構成されている。
【0003】
軟磁性裏打ち層を有する方が媒体の性能は高くなるが、無くても記録は可能なため、除いた構成となる場合もある。このような軟磁性裏打ち層が無いものを単層垂直磁気記録媒体、あるものを二層垂直磁気記録媒体と呼んでいる。垂直磁気記録媒体においても、長手磁気記録媒体と同様、高記録密度化のためには、高熱安定性と低ノイズ化の両立が必須である。
【0004】
従来の長手磁気記録媒体では、これまでにさまざまな磁気記録層の組成、構造及び非磁性下地層の材料等が提案され実用化されている。磁気記録層は、CoCrからなる合金(以下、CoCrという)を用い、結晶粒界にCrを偏析させることにより、孤立した磁性粒子を得ている。その他の磁気記録層材料としては、グラニュラー磁気記録層と呼ばれる粒界相として、例えば、酸化物や窒化物などの非磁性非金属の物質を用いた磁性層が提案されている。
【0005】
CoCrでは成膜時の基板温度を200℃以上に上昇させることがCrの十分な偏析に必要不可欠なのに対し、グラニュラー磁気記録層の場合は加熱なしでの成膜においても、その非磁性非金属の物質は偏析を生じるという特徴を有する。前述したCoCrあるいはグラニュラー磁気記録層も、例えば、下地層により結晶配向を制御する方法等を用い、垂直異方性を出現させることにより、垂直磁気記録媒体にも適用することが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
発明者らのこれまでの検討においては、垂直磁気記録媒体の磁気記録層にグラニュラー磁気記録層を用いた場合は、前述したCoCrに比べ偏析構造を取り易く、その結果、粒間の磁気的相互作用が小さくなるため、低ノイズであることが判明している。
【0007】
また、グラニュラー磁気記録層の成膜前に、基体をO2或いはN2雰囲気中で暴露する手法を見出し、これにより磁気記録層の初期層から強磁性粒子の分離構造を形成し、さらなる媒体ノイズの低減とともに、磁気記録層の薄膜化が可能になった。
【0008】
この効果は、O2或いはN2が下地層表面の結晶粒界に付着し、そこを核として非磁性非金属が優先的に形成される作用によってもたらされる。従って、下地層の表面が極めて緻密な構造で、結晶粒界幅が小さい場合には、O2或いはN2が付着しにくく、その効果が現れにくい。
【0009】
一般に、このような結晶粒界幅の増加は、膜厚増加に伴う結晶成長によりもたらされ、通常膜厚数十nm以上から、表面に分離構造をとる。薄くても分離構造をとる手法として、成膜時のガス圧を高ガス圧にして成膜する手法があるが、結晶配向が悪化するため、本来の役割を果たさなくなってしまう。
【0010】
前述した軟磁性裏打ち層を備えた二層垂直磁気記録媒体では、磁気ヘッドと軟磁性層間の距離が小さいほどより急峻なヘッド磁界で記録できるため、磁性層膜厚とともに、磁性層と軟磁性層の間に設けられる非磁性下地層膜厚も、なるべく薄くすることが媒体の特性向上のために必要である。また、コスト面からも下地層の膜厚は薄い方が好ましく、これが高記録密度化及び低コスト化の課題となっていた。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、下地層の膜厚を薄くしても良好な磁気特性が得るようにするとともに、磁気ヘッドと軟磁性層間の距離を小さくし、より急峻なヘッド磁界で記録することを可能にした垂直磁気記録媒体及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、非磁性基体上に少なくとも下地層と磁気記録層と保護膜及び液体潤滑材層が順次積層されてなる垂直磁気記録媒体の製造方法において、前記磁気記録層は、強磁性を有する結晶粒とそれを取り巻く酸化物或いは窒化物の非磁性結晶粒界からなり、かつ前記下地層の形成時のガス圧を変化させ、表面層部分を初期層部分よりも高ガス圧で形成することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記下地層の初期層部分の形成時のガス圧が30mTorr以下であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、非磁性基体上に少なくとも下地層と磁気記録層と保護膜及び液体潤滑材層が順次積層されてなる垂直磁気記録媒体の製造方法において、前記磁気記録層は、強磁性を有する結晶粒とそれを取り巻く酸化物或いは窒化物の非磁性結晶粒界からなり、かつ前記下地層の形成時、少なくとも表面層である磁気記録層との界面層を希ガスにO2或いはN2を添加した混合ガスを用いて形成することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記下地層の成膜後、前記磁気記録層の成膜前に基体をO2或いはN2雰囲気か若しくは希ガスにO2或いはN2を添加した混合ガス雰囲気中に暴露した後に、前記磁気記録層を形成することを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記下地層が、Ru或いはRuW、RuTi、RuAl、RuCu、RuSi、RuC、RuB、RuCoCrなどの少なくともRuを含む合金であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記下地層の直下に、NiFe、NiFeNb、NiFeSi、NiFeB、NiFeNbB、NiFeCrなどのNi基合金であるシート層を設けることを特徴とする。
【0019】
このように本発明は、2つの解決手段を提案するものである。まず、1つ目は、分離構造を作り易い高ガス圧成膜を最初から用いず、表面層部分にのみ適用することにより、下地層が薄くとも結晶性を保ち、表面層のみ適度に粒間が分離している構造をつくる手段である。2つ目は、下地層の表面結晶粒界に微量のO2或いはN2を含ませることにより、表面が分離構造を取らなくとも、磁気記録層の非磁性非金属の形成サイトをつくる方法である。具体的には以下の2つの方法を用いている。
(1)下地層の成膜プロセスを段階的に行い、下地層の初期層部分は低ガス圧で形成し、表面部分は初期層部分よりも高いガス圧で成膜する方法を用いる。すなわち、初期層では緻密な構造で結晶性・配向性を確保し、表面層は初期層よりも疎な構造を作り、気体分子が吸着しやすくなるよう結晶粒界幅が大きい構造を作る。
(2)下地層の成膜を希ガスに微量のO2或いはN2を添加した雰囲気中で行うことにより、O2或いはN2を下地層の結晶粒界に偏析させ、磁気記録層の結晶粒界となる非磁性非金属の形成サイトとする。この場合は、下地層にO2或いはN2と反応性が小さく、結晶配向が悪化しないような材料を用いることが重要である。
【0020】
また、下地層の直下にシード層を設ける場合は、シード層にも同様にO2或いはN2と反応性の小さい材料を用いるのが好ましいが、シード層がO2或いはN2と反応性が大きい時、下地層のエピタキシャル成長が妨げられる場合がある。一方、O2或いはN2が結晶粒界に存在するのは磁気記録層との界面だけでよい。従って、下地層の初期層部分は希ガスのみを用いて成膜し、表面層部分の成膜時にO2或いはN2添加を行えば、シード層はO2或いはN2との反応性を考慮する必要がなく、材料選択の幅を広げることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の垂直磁気記録媒体の一実施例を示す断面模式図で、図中符号1は非磁性基体、2は下地層、2aは高ガス圧成膜、2bは低ガス圧成膜、3は磁気記録層、4は保護膜、5は液体潤滑材層を示している。この垂直磁気記録媒体は、非磁性基体1上に少なくとも、下地層2と磁気記録層3と及び保護膜4が順に形成された構造を有しており、さらにその上に液体潤滑材層5が形成されている。
【0022】
非磁性基体1としては、通常の磁気記録媒体用に用いられる、NiPメッキを施したAl合金や強化ガラス、結晶化ガラス等を用いることができる。また、基板加熱温度を100℃以内に抑える場合は、ポリカーボネイト、ポリオレフィン等の樹脂からなるプラスチック基板を用いることもできる。
【0023】
下地層2としては、例えば、六方細密充填構造をとる金属或いはその合金材料であるものか、若しくは、面心立方格子構造をとる金属或いはその合金材料が好ましく用いられる。前述した六方細密充填構造をとる金属としては、例えば、Ti、Zr、Ru、Zn、Tc、Re等、面心立方格子構造をとる金属としては、Cu、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Ni、Co等が例として挙げられる。後述する軟磁性裏打ち層を設ける場合は、磁気ヘッドと軟磁性層間の距離はなるべく小さくする必要があるため、下地層の膜厚はなるべく小さい方が好ましい。
【0024】
下地層2の形成方法としては、図1に示すように、初期層部分は低ガス圧で成膜し、表面層は初期層部分よりも高ガス圧で成膜する方法がある。圧力の大きさは、下地層材料や磁気記録層組成により最適値は異なるが、初期層成膜時のガス圧は30mTorr以下とすることが好ましい。
【0025】
保護膜4は、例えば、カーボンを主体とする薄膜が用いられる。また、液体潤滑材層5は、例えば、パーフルオロポリエーテル系の潤滑剤を用いることができる。
【0026】
図2は、本発明の垂直磁気記録媒体の他の実施例を示す断面模式図で、図中符号12は下地層、12aはO2或いはN2添加ガス成膜、12bはArガス成膜を示している。なお、図1と同じ機能を有する構成要素は同一の符号を付してある。
【0027】
この実施例における下地層12の形成方法は、図2に示すように、下地層を成膜する際、希ガスにO2或いはN2を含む混合ガスを用いる方法である。O2とN2は、磁気記録層の非磁性非金属に合わせて選択することが好ましい。下地層の直下にシード層を設ける場合で、シード層材料がO2或いはN2との反応性が大きいと、初期層から混合ガスで成膜した時にシード層表面がO2或いはN2と反応し、下地層のエピタキシャル成長が妨げられる場合がある。シード層材料の選択枝を広げるためには、下地層の初期層は希ガスのみで成膜し、表面層の成膜時にO2或いはN2を含む混合ガスを用いる方法を取ればよい。
【0028】
上述した2種類の下地層の形成方法においては、いずれも初期層と表面層の膜厚比は特に限定されないが、初期層では十分に結晶成長を行うことが重要であることから、この領域は2nm以上であることが好ましい。
【0029】
図3及び図4は、本発明の垂直磁気記録媒体のさらに他の実施例を示す断面模式図で、図中符号21は軟磁性裏打ち層、22はシード層を示している。なお、図1及び図2と同じ機能を有する構成要素は同一の符号を付してある。
【0030】
下地層2,12の配向性を向上させるために、下地層2,12の直下にシード層22を設けることができる。材料は下地層2,12で列挙したものと同様な材料を用いることができる。非磁性でもかまわないが、シード層は二層垂直媒体とする場合は、軟磁性層の一部としての働きを担うよう軟磁気特性を示すような材料が好ましい。軟磁気特性を示すシード層22の例としては、NiFe、NiFeNb、NiFeSi、NiFeB、NiFeCr、NiFeNbBなどのNi基合金が挙げられる。
【0031】
二層垂直磁気記録媒体とする場合には、下地層2,12より下層に、シード層22を設ける場合は、その下層に磁気ヘッドが発生する磁束を集中させる役割を担う軟磁性裏打ち層21を設けることができる。軟磁性裏打ち層21としては、例えば、結晶のNiFe合金、センダスト(FeSiAl)合金等、微結晶のFeTaCやCoTaZr、非晶質のCo合金であるCoZrNbなどを用いることができる。軟磁性裏打ち層21の膜厚は、記録に使用する磁気ヘッドの構造や特性によって最適値が変化するが、おおむね10nm以上500nm以下程度であることが、生産性との兼ね合いから望ましい。
【0032】
磁気記録層3は、強磁性を有する結晶粒とそれを取り巻く非磁性の粒界を持つ構造を取り、その非磁性粒界が非磁性金属であるグラニュラー磁気記録層を用いる。強磁性を有する結晶としては、例えば、CoPtやFePt合金、及びそれらにCr、Ni、Nb、Ta、B等の元素を添加した合金が好ましい。
【0033】
非磁性粒界の非磁性非金属としては、酸化物若しくは窒化物が好ましく、例えば、Cr、Co、Si、Al、Ti、Ta、Hf、Zr、Y、Ceの酸化物若しくは窒化物が好ましく用いられる。なお、垂直磁気記録媒体として用いるためには、強磁性の結晶粒は膜面に対して垂直異方性を持つことが必要である。
【0034】
さらなる特性向上のために、図3及び図4に示すように、上述した磁気記録層3の形成前の基体表面、すなわち下地層2の表面を、O2或いはN2雰囲気か、若しくは希ガスにO2或いはN2を添加した混合ガス雰囲気中に暴露する方法を用いることができる。その後、磁気記録層3を形成することにより、初期層から強磁性の結晶粒と非磁性非金属の粒界が形成され、良好な偏析構造をもつ磁気記録層を形成することができる。
【0035】
以下に本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明はそれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。
【0036】
[実施例1]
非磁性基体として表面が平滑な化学強化ガラス基板(例えば、HOYA社製N−5ガラス基板)を用い、これを洗浄後スパッタ装置内に導入し、非磁性のNi基合金であるNi58Fe15Cr27ターゲットを用い、Arガス圧5mTorr下でNiFeCrシード層を15nm成膜した。
【0037】
続いてRuターゲットを用い、Ru下地層を成膜するが、初期層5nmは、Arガス圧30mTorr下で成膜し、表面層5nmは、80mTorr下で成膜し、合計膜厚は10nmとした。その後、92(Co75Cr10Pt15)−8SiO2ターゲットを用いてCoCrPt−SiO2磁気記録層をArガス圧30mTorr下で20nm成膜した。
【0038】
最後にカーボンターゲットを用いてカーボンからなる保護膜6nmを成膜後、真空装置から取り出した。その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑材層2nmをデイップ法により形成して単層垂直磁気記録媒体とした。磁気記録層の成膜にはRFスパッタリングを用い、それ以外の各層は全てDCマグネトロンスパッタリング法により行った。
【0039】
[実施例2]
Ru下地層を成膜後、CoCrPt−SiO2磁気記録層成膜前に、Arに5%のO2を添加した雰囲気中で10sec暴露する以外は全て実施例1と同様にして単層垂直磁気記録媒体とした。このときのAr+O2の圧力は5mTorrで流量は60sccmとした。
【0040】
[実施例3]
Ru下地層を形成する際、初期層は、5nmはArガス30mTorr下で成膜し、表面層5nmは、Arに0.5%のO2を添加した混合ガスを用いてガス圧10mTorr下で成膜すること以外は全て実施例1と同様にして単層垂直磁気記録媒体とした。
【0041】
[実施例4]
Ru下地層を成膜後、CoCrPt−SiO2磁気記録層成膜前に、Arに5%のO2を添加した雰囲気中で10sec暴露する以外は全て実施例3と同様にして単層垂直磁気記録媒体とした。このときのAr+O2の圧力は5mTorrで流量は60sccmとした。
【0042】
[比較例1]
実施例1及び3の比較例として、Ru成膜時のArガス圧を30mTorr一定として成膜し、膜厚を10nm若しくは20nmとすること以外は全て実施例1と同様にして単層垂直磁気記録媒体を2種類作製した。
【0043】
[比較例2]
実施例2及び4の比較例として、Ru下地層を成膜後、CoCrPt−SiO2磁気記録層成膜前に、Arに5%のO2を添加した雰囲気中で10sec暴露する以外は全て比較例1と同様にして単層垂直磁気記録媒体を2種類作製した。このときのAr+O2の圧力は5mTorrで流量は60sccmとした。
【0044】
[実施例5]
非磁性基体として表面が平滑な化学強化ガラス基板(例えば、HOYA社製N−5ガラス基板)を用い、これを洗浄後スパッタ装置内に導入し、Co86Zr5Nb9ターゲットを用いてArガス圧5mTorr下でCoZrNbを300nm形成した後、軟磁性のNi基合金であるNi80Fe12Nb3B5ターゲットを用い、Arガス圧5mTorr下でNiFeNbB軟磁性シード層を30nm成膜した。
【0045】
さらにRuターゲットを用い、RuをArガス圧10mTorr下で初期層を6nm形成した後、Arガス圧80mTorr下で2nm表面層を形成することにより合計8nm成膜した。引き続いて、Arに5%のO2を添加した雰囲気中で10sec暴露した。このときのAr+O2の圧力は、5mTorrで流量は60sccmとした。その後、92(Co75Cr10Pt15)−8SiO2ターゲットを用いてCoCrPt−SiO2磁気記録層をArガス圧30mTorr下で12nm成膜した。
【0046】
最後にカーボンターゲットを用いてカーボンからなる保護膜6nmを成膜後、真空装置から取り出した。その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑材層2nmをディップ法により形成して二層垂直磁気記録媒体とした。磁気記録層の成膜にはRFスパッタリングを用い、それ以外の各層は全てDCマグネトロンスパッタ法により行った。
【0047】
[実施例6]
Ru下地層を形成する際、初期層6nmは、Arガス10mTorr下で成膜し、表面層2nmは、Arに0.5%のO2を添加したガスを用いてガス圧10mTorrで成膜すること以外は全て実施例5と同様にして二層垂直磁気記録媒体とした。
【0048】
[実施例7]
非磁性基体として表面が平滑な化学強化ガラス基板(例えば、HOYA社製N−5ガラス基板)を用い、これを洗浄後スパッタ装置内に導入し、Co92Ta3Zr5ターゲットを用いてArガス圧5mTorr下でCoTaZrを300nm形成した後、軟磁性のNi基合金であるNi80Fe12Nb8ターゲットを用い、Arガス圧5mTorr下でNiFeNbシード層を30nm成膜した。
【0049】
さらにRu75W25ターゲットを用い、RuW下地層をArガス圧10mTorr下で初期層を6nm形成した後、Arガス圧80mTorr下で2nm表面層を形成することにより合計8nm成膜した。引き続いて、3%のN2を添加したAr雰囲気中で10sec暴露した。このときのAr+N2の圧力は5mTorrで流量は60sccmとした。その後、92(Co73Cr10Pt17)−8SiNターゲットを用いてCoCrPt−SiN磁気記録層をArガス圧30mTorr下で、12nm成膜した。
【0050】
最後にカーボンターゲットを用いてカーボンからなる保護膜6nmを成膜後、真空装置から取り出した。その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑材層2nmをディップ法により形成して二層垂直磁気記録媒体とした。磁気記録層の成膜にはRFスパッタリングを用い、それ以外の各層は全てDCマグネトロンスパッタリング法により行った。
【0051】
[実施例8]
RuW下地層を形成する際、初期層6nmは、Arガス10mTorr下で成膜し、表面層2nmは、Arに0.5%のN2を添加した混合ガスを用いてガス圧10mTorr下で成膜すること以外は全て実施例7と同様にして二層垂直磁気記録媒体とした。
【0052】
[比較例3]
実施例5及び6の比較例として、Ru成膜時のArガス圧を30mTorr一定としてRu下地層を成膜すること以外は全て実施例5と同様にして二層垂直磁気記録媒体とした。この時、Ru膜厚を8nm、20nmとした2種類を作製した。
【0053】
[比較例4]
実施例7及び8の比較例として、RuW成膜時のArガス圧を30mTorr一定としてRuW下地層を成膜すること以外は全て実施例7と同様にして二層垂直磁気記録媒体とした。この時、RuW膜厚を8nm、20nmとした2種類を作製した。
【0054】
まず、本発明における実施例1〜4及び比較例1〜2について説明する。各実施例及び比較例について行った磁気特性測定結果を図5に示す。磁気特性評価はVSMを用いて行い、得られたM−Hループより保磁力Hc及び磁化曲線の傾きαを求めた。αは、H=Hcにおける(dM/dH)に4πを乗じた値で、この値が大きいほど磁気記録層の磁化反転単位は大きく、逆に、小さくなり1に近づくほど磁気記録層の磁化反転単位が小さいと考えてよい。磁化反転単位が小さいほど小さなビットが書き込めるようになるため、高密度化することができる。
【0055】
RuをArガス圧30mTorr一定で成膜した比較例1及び2の中で比べると、Ru膜厚が小さいと、Hcは小さくなり、αも大きい。また、Ru膜厚が大きいほどAr+O2暴露の効果、すなわち、Hcの増加及びαの低下が顕著に観られる。実施例1及び3を比較例1と比較すると、同じRu膜厚10nmで比較すると、Hcが大きくなり、αが低減しており、比較例1のRu膜厚20nmと比べても、実施例1ではほぼ同等の特性、実施例3ではそれを超える特性が得られている。
【0056】
Ar+O2暴露を行った実施例2及び4を比較例2と比較すると、同じRu膜厚10nmで比較すると、Hcが大きくなり、αが低減しており、比較例2のRu膜厚20nmと比べても、実施例2ではそれを超える特性が得られ、実施例4でもほぼ同等の特性が得られている。
【0057】
以上のことから、本発明による下地層の構造を用いれば、下地層の膜厚が薄くとも磁気記録層の偏析構造を促進することが可能で、Hcの増加と共にαの低減が実現される。
【0058】
次に、本発明における実施例5〜8及び実施例3〜4について説明する。各実施例及び比較例について行った磁気特性評価結果及び電磁変換特性評価結果を図6に示す。なお、保磁力Hcの値はKerr効果測定のヒステリシスループから求めた。
【0059】
電磁変換特性評価のSNR(信号対雑音比)は、スピンスタンドテスターにて、作成した磁気記録媒体を、磁気ヘッドに対する相対速度が、14m/secになるように回転させ、記録トラック幅が0.6μmの単磁極ヘッドで記録し、その記録信号を再生トラック幅0.4μmのGMRヘッドで再生して得た。なお、図6の表に示したSNRの値は、線記録密度400KFCIでの値である。
【0060】
実施例5及び6と比較例3は、磁気記録層の非磁性非金属をSiO2とし、磁気記録層成膜前にAr+O2暴露を行ったものであるが、これらを比べると、実施例5及び6は、比較例3に比してHc及びSNRが大きく、優れた特性を示した。比較例3でRu膜厚が8nmのものは、実施例5及び6に比べ、Hcが大幅に低下しているため、SNRも低下している。比較例3でRu膜厚を20nmとしたものは、Hcは実施例5及び6と同等であるが、SNRは小さい。これは、比較例3では、実施例5及び6に比べ、磁気ヘッドと軟磁性層間の距離が大きく、磁気ヘッドの磁界勾配が大きくなった分書き込まれたビット間の遷移幅が広がり、その結果ノイズが増加したためである。
【0061】
実施例7及び8と比較例4は、磁気記録層の非磁性非金属をSiNとし、磁気記録層成膜前にAr+N2暴露を行ったものであるが、これらを比べると実施例7及び8は比較例4に比してHc及びSNRが大きく、優れた特性を示した。比較例4でRu膜厚が8nmのものは、実施例7及び8に比べ、Hcが大幅に低下しているため、SNRも低下している。比較例4でRu膜厚を20nmとしたものは、Hcは実施例7及び8と同等であるが、SNRは小さい。これは、比較例4では、実施例7及び8に比べ、磁気ヘッドと軟磁性層間の距離が大きく、磁気ヘッドの磁界勾配が大きくなった分書き込まれたビット間の遷移幅が広がり、その結果ノイズが増加したためである。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、非磁性基体上に少なくとも下地層と磁気記録層と保護膜及び液体潤滑材層が順次積層されてなる垂直磁気記録媒体の製造方法において、磁気記録層は、強磁性を有する結晶粒とそれを取り巻く酸化物或いは窒化物の非磁性結晶粒界からなり、かつ下地層の形成時のガス圧を変化させ、表面層部分を初期層部分よりも高ガス圧で形成したので、下地層膜厚が薄くとも良好な磁気特性を得ることができる。下地層が薄膜化された結果、磁気ヘッドと軟磁性層間の距離が小さくなる。このため、より急峻なヘッド磁界で記録することが可能となり、ノイズが低減する。従って高SNRが得られ、垂直磁気記録媒体の高記録密度化が実現できる。また、下地層膜厚を薄くする分低コスト化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の垂直磁気記録媒体の一実施例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の垂直磁気記録媒体の他の実施例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の垂直磁気記録媒体のさらに他の実施例を示す断面模式図である。
【図4】本発明の垂直磁気記録媒体のさらに他の実施例を示す断面模式図である。
【図5】実施例1〜4及び比較例1〜2に係る、磁気特性評価より求めた保磁力Hc及び磁化曲線の傾きαについて示した図である。
【図6】実施例5〜8及び比較例3〜4に係る、磁気特性評価より求めた保磁力Hc及び電磁変換特性評価から求めたSNRについて示した図である。
【符号の説明】
1 非磁性基体
2 下地層
2a 高ガス圧成膜
2b 低ガス圧成膜
3 磁気記録層
4 保護膜
5 液体潤滑材層
12 下地層
12a O2或いはN2添加ガス成膜
12b Arガス成膜
21 軟磁性裏打ち層
22 シード層
Claims (6)
- 非磁性基体上に少なくとも下地層と磁気記録層と保護膜及び液体潤滑材層が順次積層されてなる垂直磁気記録媒体の製造方法において、前記磁気記録層は、強磁性を有する結晶粒とそれを取り巻く酸化物或いは窒化物の非磁性結晶粒界からなり、かつ前記下地層の形成時のガス圧を変化させ、表面層部分を初期層部分よりも高ガス圧で形成することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
- 前記下地層の初期層部分の形成時のガス圧が30mTorr以下であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
- 非磁性基体上に少なくとも下地層と磁気記録層と保護膜及び液体潤滑材層が順次積層されてなる垂直磁気記録媒体の製造方法において、前記磁気記録層は、強磁性を有する結晶粒とそれを取り巻く酸化物或いは窒化物の非磁性結晶粒界からなり、かつ前記下地層の形成時、少なくとも表面層である磁気記録層との界面層を希ガスにO2或いはN2を添加した混合ガスを用いて形成することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
- 前記下地層の成膜後、前記磁気記録層の成膜前に基体をO2或いはN2雰囲気か若しくは希ガスにO2或いはN2を添加した混合ガス雰囲気中に暴露した後に、前記磁気記録層を形成することを特徴とする請求項1,2又は3に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
- 前記下地層が、Ru或いはRuW、RuTi、RuAl、RuCu、RuSi、RuC、RuB、RuCoCrなどの少なくともRuを含む合金であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
- 前記下地層の直下に、NiFe、NiFeNb、NiFeSi、NiFeB、NiFeNbB、NiFeCrなどのNi基合金であるシート層を設けることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
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