JP4224316B2 - 可逆性感熱記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを制御する事により画像形成及び消去が可能な可逆性感熱記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録材料は一般に支持体上に電子供与性の無色ないし淡色の染料前駆体(以下、ロイコ染料ともいう)と電子受容性の顕色剤とを主成分とする感熱記録層を設けたものであり、熱ヘッド、熱ペン、レーザー光等で加熱する事により、染料前駆体と顕色剤とが瞬時に反応し記録画像が得られるものでる。(例えば、特許文献1〜2参照)
【0003】
一般にこのような感熱記録材料は、一度画像を形成するとその部分を消去して再び画像形成前の状態に戻す事は不可能であるため、更に情報を記録する場合には画像が未形成の部分に追記するしかなかった。このため感熱記録部分の面積が限られている場合には、記録可能な情報が制限され必要な情報を全て記録できないという問題が生じていた。
【0004】
近年、このような問題に対処するためロイコ染料と加熱によりロイコ染料を発色及び消色させる顕減色剤から構成される可逆性感熱記録媒体が提案されている(例えば、特許文献3〜4)。顕減色剤は、ロイコ染料を発色させる酸性基と、発色したロイコ染料を消色させる塩基性基を有する両性化合物で、熱エネルギーの制御により酸性基による発色作用または塩基性基による消色作用の一方を優先的に発生させ、発色と消色を行うものである。しかし、この方法では熱エネルギーの制御のみで完全に発色反応と消色反応を切り換える事は不可能で、両反応がある割合で同時に起こるため、十分な発色濃度が得られず、また、消色が完全には行えない。そのために十分な画像のコントラストが得られない。また、塩基性基の消色作用は常温で発色部にも作用するため、経時的に発色部の濃度が低下する現象が避けられない。
【0005】
また、電子受容性化合物として有機ホスホン酸化合物、α−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、脂肪酸ジカルボン酸及び炭素数12以上の脂肪族基を有するアルキルチオフェノール、アルキルオキシフェノール、アルキルカルバモイルフェノール、没食子酸アルキルエステルなどの特定のフェノール化合物を用い、加熱によりロイコ染料を発色及び消色させる可逆性感熱記録媒体が提案されている(例えば、特許文献5)。しかし、この記録媒体でもやはり発色濃度が低いか、または、消色が不完全という2つの問題を同時に解決する事は出来ず、また、その画像の経時的安定性においても実用上満足すべきものにない。
【0006】
更に、前述の可逆性感熱記録媒体の消去性を改良する消色促進剤として脂肪酸類、ワックス、高級アルコール、燐酸/安息香酸/フタル酸またはオキシ酸の各種エステル類、シリコーンオイル、液晶性化合物、界面活性剤及び炭素数10以上の脂肪酸飽和炭化水素等が提案されている(例えば、特許文献6)。しかし、その効果は小さいため、未だ消去時の画像濃度が高く実用的とは言えない。
【0007】
本出願人は、これまでに可逆性顕色剤として特定のフェノール化合物を用い、ロイコ染料と組み合わせる事によって、良好なコントラストでの画像の形成・消去を繰り返し行う事ができ、更に日常生活の環境下で経時的に安定な画像を保持する事が可能な実用性の高い可逆性感熱記録材料を提案した(例えば、特許文献7〜8)。しかしながら、可逆性感熱記録材料の利用分野が拡大する事によって、この記録材料の使用環境も過酷になりつつある。特に、高温・高湿条件下において、地肌部の着色、いわゆる地肌かぶりの問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特公昭43−4160号公報
【特許文献2】
特公昭45−14039号公報
【特許文献3】
特開平2−188293号公報
【特許文献4】
特開平2−188294号公報
【特許文献5】
特開平5−124360号公報
【特許文献6】
特開平5−294063号公報
【特許文献7】
特開平6−210954号公報
【特許文献8】
特開平7−179043号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、良好なコントラストで画像の形成・消去が可能で、日常生活の環境下で経時的に安定な画像を保持可能な可逆性感熱記録材料を提供する事である。より具体的には、消去性に優れ、地肌濃度が低く、また、高温・高湿条件下による地肌部の着色等が起こらない高い耐久性を有した可逆性感熱記録材料を提供する事を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、支持体上に無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱温度およ及びたは加熱後の冷却速度の違いにより該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる下記一般式(1)で表される可逆性顕色剤と、下記一般式(2)または(3)で表される化合物を少なくとも1種含有させる事を特徴とする可逆性感熱記録材料が提供される。
【0011】
【化4】
【0012】
式1中、nは1以上3以下の整数を、R1は炭素数1から18の二価の炭化水素基を表す。X1は−CONH−結合を少なくとも一つ以上持つ二価の基を表す。R2は炭素数1から24の炭化水素基を表す。
【0013】
【化5】
【0014】
式2中、A1は窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素芳香環を表す。R3は単結合または炭素数1から18の二価の炭化水素基を表し、R4は炭素数6から24の一価の炭化水素基を表す。X2はヘテロ原子を含む二価の基を表す。m及びqはそれぞれ1から4の整数を表し、m+qは3から8であるが、qが1のとき、A 1 に直接結合しないR 3 の少なくとも1つ以上は炭素数1から18の二価の炭化水素基である。
【0015】
【化6】
【0016】
式3中、A2及びA3は窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素芳香環を表す。R5及びR7は単結合または炭素数1から18の二価の炭化水素基を表し、R6は炭素数1から18の炭化水素基を表す。X3及びX4はヘテロ原子を含む二価の基を表す。rは0から3の整数を表す。
【0017】
【発明の実施の形態】
一般式(1)で表される可逆性顕色剤中、R1は炭素数1から18の二価の炭化水素基を表すが、好ましくは炭素数1から4の二価の炭化水素基である。R2は炭素数1から24の一価の炭化水素基である。更に、R1とR2との炭素数の和が11以上35以下である場合が特に好ましい。R1およびR2は具体的には主として、各々アルキレン基およびアルキル基を表すが、芳香環を含んでいてもよい。R1およびR2が脂肪族炭化水素基である場合、各々は直鎖でも分岐していてもよく、また不飽和結合を有していてもよい。一方、X1は−CONH−結合を少なくとも一つ以上持つ二価の基を表わすが、その具体例としては、アミド(−CONH−、−NHCO−)、尿素(−NHCONH−)、ウレタン(−NHCOO−、−OCONH−)、ジアシルアミン(−CONHCO−)、ジアシルヒドラジン(−CONHNHCO−)、しゅう酸ジアミド(−NHCOCONH−)、アシル尿素(−CONHCONH−、−NHCONHCO−)、セミカルバジド(−NHCONHNH−、−NHNHCONH−)、アシルセミカルバジド(−CONHNHCONH−、−NHCONHNHCO−)、ジアシルアミノメタン(−CONHCH2NHCO−)、1−アシルアミノ−1−ウレイドメタン(−CONHCH2NHCONH−、−NHCONHCH2 NHCO−)、マロンアミド(−NHCOCH2 CONH−)、3−アシルカルバジン酸エステル(−CONHNHCOO−、−OCONHNHCO−)等の基が挙げられるが、好ましくはジアシルヒドラジン、しゅう酸ジアミド、アシルセミカルバジドである。nは1から3の整数を表すが、好ましくは1である。
【0018】
一般式(1)で表される可逆性顕色剤の具体例としては、以下に表す化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0019】
N−n−デシル−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、N−n−オクタデシル−2−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−n−オクタデカンアミド、N−[6−(p−ヒドロキシフェニル)ヘキシル]−n−デカンアミド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−n−テトラデシル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−n−オクタデシル尿素、N−[2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチル]−N′−n−オクタデシル尿素、N−[6−(p−ヒドロキシフェニル)ヘキシル]−N′−n−デシル尿素、N−[10−(p−ヒドロキシフェニル)デシル]−N′−n−デシル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]カルバミン酸−n−オクタデシル、N−[6−(p−ヒドロキシフェニル)ヘキシル]カルバミン酸−n−テトラデシル、N−n−オクタデシルカルバミン酸−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]、N−n−デシルカルバミン酸−[11−(p−ヒドロキシフェニル)ウンデシル]、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]−N−n−オクタデカノイルアミン、N−[6−(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサノイル]−N−n−オクタデカノイルアミン、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセト]−N′−n−ドデカノヒドラジド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセト]−N′−n−オクタデカノヒドラジド、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−オクタデカノヒドラジド、N−[4−(p−ヒドロキシフェニル)ブタノ]−N′−n−ドコサノヒドラジド、N−[5−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタノ]−N′−n−ドコサノヒドラジド、N−[3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−オクタデカノヒドラジド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセト]−N′−n−ドコサノヒドラジド、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−ドコサノヒドラジド、N−[3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−ドコサノヒドラジド、N−[6−(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサノ]−N′−n−テトラデカノヒドラジド、N−[6−(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサノ]−N′−n−オクタデカノヒドラジド、N−[11−(p−ヒドロキシフェニル)ウンデカノ−N′−n−デカノヒドラジド、N−[11−(p−ヒドロキシフェニル)ウンデカノ−N′−n−テトラデカノヒドラジド、N−[11−(p−ヒドロキシフェニル)ウンデカノ−N′−n−オクタデカノヒドラジド、N−[11−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)ウンデカノ]−N′−n−オクタデカノヒドラジド、N−[p−(p−ヒドロキシフェニル)ベンゾ]−N′−n−オクタデカノヒドラジド、N−[p−(p−ヒドロキシフェニルメチル)ベンゾ]−N′−n−オクタデカノヒドラジド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−n−テトラデシルオキサミド、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピル]−N′−n−オクタデシルオキサミド、N−[3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロピル]−N′−n−オクタデシルオキサミド、N−[11−(p−ヒドロキシフェニル)ウンデカニル]−N′−n−デシルオキサミド、N−[p−(p−ヒドロキシフェニル)フェニル]−N′−n−オクタデシルオキサミド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセチル]−N′−n−ドデシル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセチル]−N′−n−オクタデシル尿素、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]−N′−n−オクタデシル尿素、N−[p−(p−ヒドロキシフェニル)ベンゾイル]−N′−n−オクタデシル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−n−ドデカノイル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−n−オクタデカノイル尿素、N−[p−(p−ヒドロキシフェニル)フェニル]−N′−n−オクタデカノイル尿素、4−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−1−n−テトラデシルセミカルバジド、4−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−1−n−オクタデシルセミカルバジド、4−[p−(p−ヒドロキシフェニル)フェニル]−1−n−テトラデシルセミカルバジド、1−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−n−テトラデシルセミカルバジド、1−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−n−オクタデシルセミカルバジド、1−[p−(p−ヒドロキシフェニル)フェニル]−4−n−テトラデシルセミカルバジド、1−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセチル]−4−n−テトラデシルセミカルバジド、1−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]−4−n−オクタデシルセミカルバジド、1−[11−(p−ヒドロキシフェニル)ウンデカノイル]−4−n−デシルセミカルバジド、1−[p−(p−ヒドロキシフェニル)ベンゾイル]−4−n−オクタデシルセミカルバジド、4−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−1−n−テトラデカノイルセミカルバジド、4−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−1−n−オクタデカノイルセミカルバジド、4−[p−(p−ヒドロキシフェニル)フェニル]−1−n−オクタデカノイルセミカルバジド、1−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド]−1−n−ドデカノイルアミノメタン、1−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド]−1−n−オクタデカノイルアミノメタン、1−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]−1−n−オクタデカノイルアミノメタン、1−[11−(p−ヒドロキシフェニル)ウンデカンアミド]−1−n−デカノイルアミノメタン、1−[p−(p−ヒドロキシフェニル)ベンズアミド]−1−n−オクタデカノイルアミノメタン、1−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド]−1−(3−n−ドデシルウレイド)メタン、1−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド]−1−(3−n−オクタデシルウレイド)メタン、1−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]−1−(3−n−オクタデシルウレイド)メタン、1−[11−(p−ヒドロキシフェニル)ウンデカンアミド]−1−(3−n−デシルウレイド)メタン、1−[p−(p−ヒドロキシフェニル)ベンズアミド]−1−(3−n−オクタデシルウレイド)メタン、1−{3−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ウレイド}−1−n−オクタデカノイルアミノメタン、1−{3−[p−(p−ヒドロキシフェニル)フェニル]ウレイド}−1−n−オクタデカノイルアミノメタン、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−n−オクタデシルマロンアミド、N−[p−(p−ヒドロキシフェニル)フェニル]−N′−n−オクタデシルマロンアミド、3−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセチル]カルバジド酸−n−オクタデシル、3−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピル]カルバジド酸−n−オクタデシル、3−[2−(p−ヒドロキシフェニル)アセチル]カルバジド酸−n−ヘキサデシル、3−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピル]カルバジド酸−n−ドデシル等が挙げられる。
【0020】
一般式(1)で表される可逆性顕色剤は、それぞれ1種または2種以上を混合して使用してもよく、無色ないし淡色の染料前駆体に対する本発明による可逆性顕色剤の使用量は、5〜5000質量%、好ましくは10〜3000質量%である。
【0021】
一般式(2)で表される化合物中、A1は窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素芳香環を表すが、例として、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、1,3,5−トリアジン環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環等が挙げられ、ピリジン環が特に好ましい。複素芳香環中の窒素原子はR3と直接結合していない。更に上記複素芳香環がアルキル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子等で置換基されていてもよい。R3は単結合または炭素数1から18の二価の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、これらの両方から構成される炭化水素基でもよい。脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、また不飽和結合を有していてもよく、更に環を形成していてもよい。R4は炭素数6から24の一価の炭化水素基を表し、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、これらの両方から構成される炭化水素基でもよい。脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、また不飽和結合を有していてもよく、更に環を形成していてもよい。X2はヘテロ原子を含む二価の基を表し、好ましくは酸素原子、硫黄原子、イミノ基(−NH−)、カルボルニル基(−CO−)、スルフィニル基(−SO−)、スルホニル基(−SO2−)のいずれかを少なくとも1個有する二価の基を表すが、尿素結合(−NHCONH−)が特に好ましい。m及びqはそれぞれ1から4の整数を表し、m+qは3から8であるが、qが1のとき、A 1 に直接結合しないR 3 の少なくとも1つ以上は炭素数1から18の二価の炭化水素基である。mまたはqが2以上の時、繰り返されるR3、R4、及びX2は同じでも異なっていてもよい。
【0022】
以下に、一般式(2)で表される好ましい化合物の具体例を化8、化9の例示化合物(4−19)及び(4−21)、並びに化10に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、一般式(2)において、m=q=1の場合の参考化合物を化7並びに化9の例示化合物(4−15)〜(4−18)、及び(4−20)に挙げる。
【0023】
【化7】
【0024】
【化8】
【0025】
【化9】
【0026】
【化10】
【0027】
一般式(3)で表される化合物中、A2及びA3は窒素原子を少なくとも1つ以上有する複素芳香環を表すが、例としては、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、1,3,5−トリアジン環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環等が挙げられ、ピリジン環が特に好ましい。複素芳香環中の窒素原子はR3と直接結合していない。更に上記複素芳香環がアルキル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子等で置換基されていてもよい。R5及びR7は単結合または炭素数1から18の二価の炭化水素基を表し、R6は炭素数1から18の炭化水素基を表す。炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、また不飽和結合を有していてもよく、更に環を形成していてもよい。X 3 及びX4はヘテロ原子を含む二価の基を表し、好ましくは酸素原子、硫黄原子、イミノ基(−NH−)、カルボルニル基(−CO−)、スルフィニル基(−SO−)、スルホニル基(−SO2−)のいずれかを少なくとも1個有する二価の基を表すが、尿素結合(−NHCONH−)が特に好ましい。rは0から3の整数を表し、rが2以上の時、繰り返されるR6及びX4は同じでも異なっていてもよい。
【0028】
以下に、一般式(3)で表される好ましい化合物の具体例を化11に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【化11】
【0030】
一般式(2)または(3)で表される化合物の好ましい添加量は、染料前駆体に対し0.5〜200質量%であり、より好ましくは2〜100質量%である。添加量が少なすぎると十分な消去促進効果及び耐地肌かぶり効果に乏しく、また、添加量が多すぎると発色濃度の低下や、保存時における画像安定性が悪化する。また、一般式(2)または(3)で表される化合物は、単独でも2種以上を併用し混合して用いる事ができる。
【0031】
本発明に用いられる無色ないし淡色の染料前駆体としては、一般に感圧記録紙や感熱記録紙等に用いられる公知な化合物に代表されるが、特に制限されるものではない。具体的な例としては、下記に挙げる化合物などがあるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
(1)トリアリールメタン系化合物
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,7−ジアザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−7−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−n−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−4−アザフタリド等。
【0033】
(2)ジフェニルメタン系化合物
4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等。
【0034】
(3)キサンテン系化合物
ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン等。
【0035】
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トルイジノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−フロロアニリノ)フルオラン、3−ジベンジルアミノ−7−(o−フロロアニリノ)フルオラン等。
【0036】
(4)チアジン系化合物
ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等。
【0037】
(5)スピロ系化合物
3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等。
【0038】
前記無色ないし淡色の染料前駆体は単独でも、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
本発明の可逆性感熱記録材料の製造方法の具体例としては、染料前駆体と可逆性顕色剤を主成分とし、これに本発明による化合物を添加し、支持体上に塗布して可逆性感熱記録層を形成する方法が挙げられる。
【0040】
染料前駆体と可逆性顕色剤及び本発明による化合物を可逆性感熱記録層に均質に含有させるための塗液作製方法としては、各々の化合物を単独で溶媒に溶解もしくは分散媒に分散してから混合する方法、各々の化合物を混ぜ合わせてから溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法、各々の化合物を加熱溶解し均一化した後冷却し、溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。分散時には必要なら分散剤を用いてもよい。水を分散媒として使う場合の分散剤としてはポリビニルアルコール等の水溶性高分子や各種の界面活性剤が利用できる。水系の分散の際は、エタノール等の水溶性有機溶媒を混合してもよい。この他に炭化水素類に代表される有機溶媒が分散媒の場合は、レシチンや燐酸エステル類等を分散剤に用いてもよい。
【0041】
また、可逆性感熱記録層の強度を向上する等の目的でバインダーを可逆性感熱記録層中に添加する事も可能である。バインダーの具体例としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のラテックス類が挙げられる。これらのバインダーの役割は、組成物の各素材が印字、消去の熱印加によって片寄る事なく均一に分散した状態を保つ事にある。従って、バインダー樹脂には耐熱性の高い樹脂を用いる事が好ましい。最近になって、プリペイドカード、ストアドカードといった付加価値の高い可逆性感熱記録材料が用いられる事が多くなり、それに伴い、耐熱性、耐水性、更には接着性といった高耐久品が要求されるようになってきている。このような要求に対しては、硬化性樹脂は特に好ましい。
【0042】
硬化性樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、紫外線硬化樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等の水酸基、カルボキシル基が架橋剤と反応し、硬化するものが挙げられる。この際の架橋剤としては、例えば、イソシアネート類、アミン類、フェノール類、エポキシ類等が挙げられる。
【0043】
電子線及び硬化線樹脂に用いられるモノマーとしては、アクリル系に代表される単官能性モノマー、二官能モノマー、多官能モノマー等が挙げられるが、特に紫外線架橋の際には光重合開始剤、光重合促進剤を用いる。
【0044】
また、可逆性感熱記録層の発色感度を調節するための添加剤として、熱可融性物質を可逆性感熱記録層中に含有させる事もできる。60℃〜200℃の融点を有するものが好ましく、特に80℃〜180℃の融点を有するものが好ましい。一般の感熱記録紙に用いられている増感剤を使用する事もできる。これらの化合物としては、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどのワックス類、2−ベンジルオキシナフタレン等のナフトール誘導体、p−ベンジルビフェニル、4−アリルオキシビフェニル等のビフェニル誘導体、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル等のポリエーテル化合物、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(p−メチルベンジル)エステル等の炭酸またはシュウ酸ジエステル誘導体等があげられ、2種以上併用して添加する事もできる。
【0045】
本発明の可逆性感熱記録材料に用いられる支持体としては、紙、各種不織布、織布、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂をラミネートした紙、合成紙、金属箔、ガラス等、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いる事ができるが、これらに限定されるものではなく、これらは不透明、半透明或いは透明のいずれであってもよい。地肌を白色その他の特定の色に見せるために、白色顔料や有色染顔料や気泡を支持体中又は表面に含有させてもよい。特にフィルム類等水性塗布を行なう場合で支持体の親水性が小さく可逆性感熱記録層の塗布困難な場合は、コロナ放電等による表面の親水化処理やバインダーに用いるのと同様の水溶性高分子類を、支持体表面に塗布するなどの易接着処理してもよい。
【0046】
本発明の可逆性感熱記録材料の層構成は、可逆性感熱記録層のみであってもよい。必要に応じて、可逆性感熱記録層上に保護層を設ける事も又、可逆性感熱記録層と支持体の間に水溶性高分子や白色ないし有色染顔料や中空粒子のいずれか一つ以上を含む中間層を設ける事もできる。この場合、保護層及び/または中間層は2層ないしは3層以上の複数の層から構成されていてもよい。可逆性感熱記録層も各成分を一層ずつに含有させたり層別に配合比率を変化させたりして2層以上の多層にしてもよい。更に、可逆性感熱記録層中及び/または他の層及び/または可逆性感熱記録層が設けられている面と反対側の面に、電気的、光学的、磁気的に情報が記録可能な材料を含んでもよい。また、可逆性感熱記録層が設けられている面と反対側の面にブロッキング防止、カール防止、帯電防止を目的としてバックコート層を設ける事もできる。
【0047】
なお、本発明における各層を支持体上に積層し、本発明の可逆性感熱記録材料を形成する方法は特に制限されるものではなく、従来の方法により形成する事ができる。例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、カーテンコーター等の塗抹装置、平版、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン、ホットメルト等の方式による各種印刷機等を用いる事が出来る。更に通常の乾燥工程の他、UV照射・EB照射により各層を保持させる事が出来る。これらの方法により。1層ずつ、あるいは多層同時に塗布、印刷する事ができる。
【0048】
可逆性感熱記録層は、各成分を微粉砕して得られる各々の分散液を混合し、支持体上に塗布乾燥する方法、各成分を溶媒に溶解して得られる各々の溶液を混合し、支持体上に塗布乾燥する方法などにより得る事ができる。乾燥条件は水等の分散媒ないし溶媒によっても異なる。この他に各成分を混合し加熱して可融分を溶融し熱時塗布する方法もある。
【0049】
また、可逆性感熱記録層及び/または保護層及び/または中間層には、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、尿素−ホルマリン樹脂等の顔料、その他に、ヘッド摩耗防止、スティッキング防止等の目的でステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、カスターワックス等のワックス類を、また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の分散剤、更に界面活性剤、蛍光染料、紫外線吸収剤などを含有させる事もできる。
【0050】
次に、本発明の可逆性感熱記録材料の発色及び消色方法について述べる。発色画像を形成するためには、加熱に引き続き急速な冷却が起こればよい。例えば、可逆性感熱記録材料を適当な方法で加熱した後、低温の金属ブロック等を押し当てるなどを行い急速に冷却する事により、発色画像を形成できる。また、サーマルヘッド、レーザー光等を用いて極めて短い時間だけ加熱すると、加熱終了後に直ちに冷却が起こるため、発色画像の保持が可能である。一方、発色画像を消去するためには、加熱後にゆっくり冷却すればよい。例えば、発色画像が形成された可逆性感熱記録材料をサーマルヘッド、レーザー光、熱ロール、熱スタンプ、高周波加熱、熱風、電熱ヒーター及びタングステンランプやハロゲンランプ等の光源などからの輻射熱、熱風等で比較的長い時間で加熱すると、可逆性感熱記録層だけでなく支持体等も加熱されるために、熱源を取り除いても冷却する速度が遅くなり発色画像は消去する。従って、同じ加熱温度及び/または同じ熱源を用いても、冷却速度を制御する事により、発色画像の形成及び消去を任意に行う事ができる。
【0051】
【作用】
本発明における可逆性感熱記録材料の画像形成及び消去原理は未だ明確ではないが、以下の様に考えられる。無色ないし淡色の染料前駆体は、フェノール化合物のような電子受容性化合物である可逆性顕色剤と共に加熱すると染料前駆体から可逆性顕色剤への電子移動が起こり発色する。この時、可逆性顕色剤分子は発色した染料分子の極めて近傍に存在していると考えられる。また、発色した染料分子から可逆性顕色剤分子を引き離すと、発色した染料分子は再び電子を受け取り、発色前の染料前駆体の状態となる。本発明は加熱により、可逆性顕色剤分子と染料分子との距離を変化させ発色及び消去を行うものと考えられる。
【0052】
更に詳しく述べるならば、これまでに可逆性顕色剤の多くは、その構造の中に脂肪鎖を持つため、染料前駆体分子及び発色した染料分子との相溶性が低く、凝固した状態では互いに殆ど溶け合わないと考えられる。また、加熱溶融状態の様に染料前駆体分子と可逆性顕色剤分子が自由に運動できる状態では、染料前駆体分子と可逆性顕色剤分子は互いにある割合で溶け合い、発色状態となる。それ故、発色している溶融状態の混合物をゆっくり冷却すると、降温するに従い可逆性顕色剤分子と染料分子は互いに溶け合わなくなり相分離し消色する。特に、本発明に好ましく使用される一般式(1)で表される可逆性顕色剤は分子内に、アミド結合等の水素結合能力を持つ二価の基を含有しているため、分子間水素結合により速やかに結晶化してしまうと考えられる。一方、急速に冷却を行うと、相分離する前、即ち発色状態のままで固化するため、発色状態が固定され固化後も発色状態が安定に保持される。
【0053】
本発明において用いられる一般式(2)または(3)で表される化合物の耐地肌かぶり性向上の理由は明確ではない。しかし、含窒素複素芳香環は弱い塩基性を示すことから、一般式(2)または(3)で表される化合物についても同様の性質を示すと考えられる。この塩基性が非常に適当であるため、一般式(1)で表される可逆性顕色剤と組み合わせることにより、消去性に優れ、地肌濃度が小さく、また、高温・高湿条件下においての地肌部の着色、いわゆる地肌かぶりが起こらないと推定される。また、一般式(2)または(3)で表される化合物は、可逆性顕色剤と同様に分子内にアミド結合等の水素結合能力を持つ基を併せ持つため、可逆性顕色剤及び発色混融体の中に取り込まれ易くする働きがあり、少量の添加でも効果が得られると推定される。
【0054】
次に、本発明において用いられる一般式(2)または(3)で表される化合物の具体的合成方法について、その一部を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
合成例1
例示化合物(4−4)の合成。
撹拌機、冷却器及び塩化カルシウム乾燥管を付けたフラスコ内に、ピコリン酸1.4g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール・1水和物1.8g、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド1.5g及びテトラヒドロフラン(以下、THF)80mlを仕込み、室温下で攪拌しながらステアリン酸ヒドラジド3.0gを粉体のまま投入した。投入終了後、還流下で1時間攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、析出した結晶を濾取した。2−プロパノールより再結晶を行い、目的物2.0gを得た。融点100℃。
【0056】
合成例2
例示化合物(4−15)の合成。
撹拌機、冷却器及び塩化カルシウム乾燥管を付けたフラスコ内に、3−ピコリルアミン3.2g、トリエチルアミン1.0g及びアセトン200mlを仕込み、室温下で攪拌しながらイソシアン酸ステアリル7.4gをゆっくり滴下した。滴下終了後、還流下で1時間攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、析出した結晶を濾取した。エタノールより再結晶を行い、目的物8.0gを得た。融点122℃。
【0057】
合成例3
例示化合物(4−25)の合成。
撹拌機、冷却器及び塩化カルシウム乾燥管を付けたフラスコ内に、2,6−ピリジンジカルボン酸3.3g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール・1水和物7.0g、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド5.8g及びTHF100mlを仕込み、室温下で攪拌しながらTHF50mlに溶解したステアリルアミン11.3gをゆっくり滴下した。滴下終了後、還流下で1時間攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、析出した結晶を濾取した。2−プロパノールより再結晶を行い、目的物10.0gを得た。融点97℃。
【0058】
【実施例】
以下の実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例中の部数や百分率は質量基準である。
【0059】
参考例1
(A)可逆性感熱塗液の作製
染料前駆体として3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン40部、可逆性顕色剤としてN−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−オクタデカノヒドラジド160部、例示化合物(4−1)30部、バインダー樹脂として塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(ユニオンカーバイド社製、商品名VYHH)16部及びTHF1600部と共にペイントコンディショナーで24時間粉砕して可逆性感熱塗液を作製した。
【0060】
(B)可逆性感熱記録層の塗工
(A)で作製した可逆性感熱塗液をポリエチレンテレフタレート(以下、PET)シートに、固形分塗抹量7.0g/m2となる様に塗工し、60℃で24時間乾燥して可逆性感熱記録材料を得た。
【0061】
参考例2
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、例示化合物(4−1)から例示化合物(4−4)に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0062】
参考例3
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、例示化合物(4−1)から例示化合物(4−5)に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0063】
実施例1
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、例示化合物(4−1)から例示化合物(4−8)に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0064】
参考例4
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、例示化合物(4−1)から例示化合物(4−15)に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0065】
実施例2
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、例示化合物(4−1)から例示化合物(4−22)に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0066】
実施例3
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、例示化合物(4−1)から例示化合物(4−25)に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0067】
実施例4
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、例示化合物(4−1)から例示化合物(5−1)に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0068】
実施例5
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、例示化合物(4−1)から例示化合物(5−6)に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0069】
参考例5
実施例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、可逆性顕色剤としてN−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−オクタデカノヒドラジドから1−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]−4−n−オクタデシルセミカルバジドに変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0070】
参考例6
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、可逆性顕色剤としてN−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−オクタデカノヒドラジドから1−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]−4−n−オクタデシルセミカルバジドに変更し、例示化合物(4−1)から例示化合物(4−16)に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0071】
参考例7
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、可逆性顕色剤としてN−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−オクタデカノヒドラジドから1−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]−4−n−オクタデシルセミカルバジドに変更し、例示化合物(4−1)から例示化合物(4−22)に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0072】
比較例1
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、例示化合物(4−1)を使用しなかった以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0073】
比較例2
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、可逆性顕色剤としてN−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−オクタデカノヒドラジドから1−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]−4−n−オクタデシルセミカルバジドに変更し、例示化合物(4−1)を使用しなかった以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0074】
比較例3
参考例1の(A)可逆性感熱塗液の作製において、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−ドコサノヒドラジドをN−(4−ヒドロキシフェニル)−N′−オクタデシル尿素に変更した以外は、参考例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0075】
試験1(画像の発色性及び消去性)
参考例1〜7、実施例1〜5、及び比較例1〜3で得た可逆性感熱記録材料を、京セラ製印字ヘッドKJT−256−8MGF1付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機TH−PMDを用いて印加パルス1.1ミリ秒で印加電圧26ボルトの条件で印字し、得られた発色画像の光学濃度を濃度計マクベスRD918を用いて各々測定した。次に、得られた発色画像を熱スタンプを用いて120℃で1秒間加熱し消去した。消去部の光学濃度を濃度計マクベスRD918を用いて各々測定した。
【0076】
試験2(画像安定性及び耐地肌かぶり性)
参考例1〜7、実施例1〜5、及び比較例1〜3で得た可逆性感熱記録材料を、京セラ製印字ヘッドKJT−256−8MGF1付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機TH−PMDを用いて、印加パルス1.1ミリ秒で印加電圧26ボルトの条件で印字し、得られた発色画像と地肌部の光学濃度を濃度計マクベスRD918を用いて各々測定した。続いて、得られた発色画像を温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下に24時間保存した後、濃度計マクベスRD918を用いて発色画像と地肌部の光学濃度を各々測定した。
【0077】
参考例1〜7、実施例1〜5、及び比較例1〜3の試験1〜2の結果を表1に表した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果から明らかなように、可逆性感熱記録材料中に下記一般式(2)または(3)で表される化合物を用いた場合、明瞭なコントラストで画像を形成するにも関わらず消去性を向上させ、また、地肌部の着色も少なく、高温・高温条件下での画像安定性を有し、更には耐地肌かぶり性も向上した。
【0080】
【発明の効果】
以上の結果から、支持体上に無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱温度及び/または加熱後の冷却速度の違いにより該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる可逆性顕色剤とを含有する可逆性感熱記録材料において、該記録材料中に一般式(1)で表される可逆性顕色剤と、一般式(2)または(3)で表される化合物を組み合わせて含有させる事により、明瞭なコントラストで画像の形成・消去が可能であり、高温・高湿条件下において経時的に安定な画像を保持可能な上に、地肌の着色が起こらない高い耐久性を有した可逆性感熱記録材料を得る事が出来た。
Claims (3)
- 支持体上に無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱温度及び/または加熱後の冷却速度の違いにより該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる下記一般式(1)で表される可逆性顕色剤とを含有する可逆性感熱記録材料において、該記録材料中に下記一般式(2)または(3)で表される化合物を少なくとも1種含有させる事を特徴とする可逆性感熱記録材料。
- 前記一般式(2)〜(3)で表される化合物のA1、A2、及びA3がピリジン環である事を特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録材料。
- 前記一般式(2)〜(3)で表される化合物のX2、X3、及びX4が尿素結合である事を特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の可逆性感熱記録材料。
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