JP4223307B2 - やに入り半田用フラックス及びそれを含有する鉛フリー半田 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、やに入り半田に用いられるフラックスに関するものであり、特に鉛フリー半田に好適に利用できるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子機器の実装や電子部品の半田付けには、鉛を含有した錫―鉛共晶半田(以下、鉛入り半田という。)が用いられ、その際使用されるフラックスには、やに入り半田のフラックスとして、ロジン(松脂)を主体とし、これに活性剤として、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸等を少量配合したものが使用されている。
【0003】
最近、環境汚染の問題から、従来の鉛入り半田から鉛を含まない鉛フリー半田へ転換が進んでいる。鉛フリー半田は、錫(Sn)を主成分としており、鉛入り半田より融点が高いのが一般的である。このため、やに入り半田で半田付け作業すると、融点の高くなった分、ロジンや活性剤が分解し易くガス圧が高くなり、半田溶融した途端に、フラックスと半田粒が多量に飛散する。
【0004】
飛散防止として、従来、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンワックス、ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレンワックスや特開平9―122975号公報にはエチレン−アクリル共重合体およびプロピレン−アクリル共重合体等を添加することが開示されている。しかし、飛散防止の為にこれらの添加物を添加するとぬれ広がり性が阻害されることになる。
また、特開2003−10996号公報には、鉛フリー半田のぬれ広がり性に対し、半田ペーストの活性剤の記載されている。(特許文献3参照)
【0005】
【特許文献1】
特開平8−281470号公報
【特許文献2】
特開平9−122975号公報
【特許文献3】
特開2003−10996号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
鉛フリー半田は、鉛入り半田より合金自体の表面張力が大きく、ぬれ広がり性が悪いので、飛散防止とぬれ広がり性の両立が困難であった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、鉛フリーやに入り半田を使用して、飛散防止を実現するとともに、ぬれ広がり性等の優れたフラックスを提供して、半田付け作業の作業性を向上するものである。
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のやに入り半田用フラックスは、密度が、0.97〜1.00g/cm 3 、酸価が10〜50mgKOH/gである高密度酸化型ポリエチレンを1質量%以上10質量%未満と、
フェノール型酸化防止剤を0.5質量%以上5質量%以下含有することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載のロジンおよび活性剤を含む鉛フリー半田用フラックス組成物は、密度が、0.97〜1.00g/cm 3 、酸価が10〜50mgKOH/gである高密度酸化型ポリエチレンを1質量%以上10質量%未満と、
フェノール型酸化防止剤を0.5質量%以上5質量%以下含有することを特徴としたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
本発明に係わるフラックスは、Snを主成分とした鉛フリー半田、たとえばSn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Ag−Bi−In系のやに入り半田のフラックスとして用いることができる。
【0012】
本発明のフラックスは、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン等をベースとし、高密度酸化型ポリエチレンを添加する。
【0013】
特に飛散防止用に添加する高密度酸化型ポリエチレン添加物の密度が0.97〜1.00g/cm3、溶融粘度(温度1500Cにて)が2000〜20000Pa・S、酸価が10〜50mgKOH/gが適している。たとえば、アライドシグナル社のA−Cポリエチレン、A−C395、A−C392、A−C330、A−C325、A−C316A、A−C316などがある。
【0014】
上述の高密度酸化型ポリエチレンを1%以上10%未満添加する。(単に「%」は質量%を示す。以下同様)好ましくは3%〜9%である。更に好適には5%〜8%である。1%未満では飛散防止の効果が得られず、10%以上では、粘度が上がりすぎ、半田のぬれ広がり性が悪くなる。
【0015】
次に、酸化を防止して良好なぬれ広がり性を確保するために添加するフェノール型酸化防止剤は、たとえば、2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャリー−ブチルフェノール)があり、0.5%〜5%添加する。好ましくは1%〜3%である。0.5%未満では、酸化分解防止に効果がなく、5%を超えるとフラックス粘度が下がり、効果が認められなくなる。
【0016】
さらに、本発明のフラックスは、活性剤として、シクロヘキシルアミン、1,3ジフェニルグアニジン、N,N’−ジエチルアニリン、ジエチルアミンなどのハロゲン化水素酸0〜1%の添加以外に、半田付け温度で臭化水素酸を発生する有機臭化物、たとえば、2,3ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4ブロモメチル)−1,3−プロパンジオールを0.5〜5%の併用が好ましい。0.5%未満ではぬれ広がりが悪く、5%を超えると多量のハロゲンがフラックスに残存し、腐食性、信頼性に問題が発生する可能性がある。
【0017】
本発明に係わるやに入り半田の形状は、フラックスを内蔵するものであれば特に限定されない。また半田に対するフラックス量は、1%〜7%とすることができる。手半田付け用は、2%〜4%、自動半田付け用は3〜6.5%が好ましい。
【0018】
(実施例1)
フラックス組成は、水素添加ロジン86.5%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C395)8.0%、酸化防止剤(n−オクタデシル3−(3,5―ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)2.0%、有機臭化物(2,3ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール)3.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量3.0%のやに入り半田を製造した。
【0019】
(実施例2)
フラックス組成は、水素添加ロジン90.0%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C330)7.0%、酸化防止剤(n−オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)2.0%、有機臭化物(1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン)1.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0%(添加せず)とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量6.0%のやに入り半田を製造した。
【0020】
(実施例3)
フラックス組成は、水素添加ロジン89.5%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C325)5.0%、酸化防止剤(n−オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)2.0%、有機臭化物(1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン)3.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量3.0%のやに入り半田を製造した。
【0021】
(実施例4)
フラックス組成は、水素添加ロジン89.5%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C316)5.0%、酸化防止剤(n−オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)2.0%、有機臭化物(トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート)3.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量6.0%のやに入り半田を製造した。
【0022】
(実施例5)
フラックス組成は、水素添加ロジン90.5%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C325)5.0%、酸化防止剤(n−オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)1.0%、有機臭化物(1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン)3.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量6.0%のやに入り半田を製造した。
【0023】
(実施例6)
フラックス組成は、水素添加ロジン88.5%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C325)5.0%、酸化防止剤(n−オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)3.0%、有機臭化物(1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン)3.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量6.0%のやに入り半田を製造した。
【0024】
(実施例7)
フラックス組成は、水素添加ロジン88.5%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C325)5.0%、酸化防止剤(n−オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)3.0%、有機臭化物(1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン)3.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(96.5%)−Ag(3.0%)−Cu(0.5%)でフラックス量6.0%のやに入り半田を製造した。
【0025】
(比較例1)
フラックス組成は、水素添加ロジン74.5%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C395)20.0%、酸化防止剤(n−オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)2.0%、有機臭化物(トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート)3.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量3.0%のやに入り半田を製造した。
【0026】
(比較例2)
フラックス組成は、水素添加ロジン91.5%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C330)5.0%、有機臭化物(1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン)3.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量3.0%のやに入り半田を製造した。
【0027】
(比較例3)
フラックス組成は、水素添加ロジン92.5%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C325)5.0%、酸化防止剤(n−オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)2.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量3.0%のやに入り半田を製造した。
【0028】
(比較例4)
フラックス組成は、水素添加ロジン81.5%、高密度酸化型ポリエチレン(A−C316)5.0%、酸化防止剤(n-オクタデシル3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)10.0%、有機臭化物(2,3ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール)3.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量3.0%のやに入り半田を製造した。
【0029】
(比較例5)
フラックス組成は、水素添加ロジン96.5%、有機臭化物(トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート)3.0%、ジエチルアミン臭化水素酸塩0.5%とする。半田合金はSn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)でフラックス量3.0%のやに入り半田を製造した。
【0030】
これらの実施例のサンプル1〜7、比較例サンプル1〜5のやに入り半田を評価するのに、広がり率、飛散率、半田付け性の試験を行った。広がり率、飛散率は線径0.8mm品でJIS−Z−3197に従った。半田付け性は、こてロボットで、1mmピッチ7ピンのコネクター、5個を引き半田で半田付けし、ブリッジの合計数を調べた(最大30個)。実施例1〜7の評価は(表1)に、示す。
【0031】
【表1】
【0032】
また、比較例1〜5の広がり率、飛散率、ブリッジ数の評価は(表2)に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表1には、高密度酸化型ポリエチレンを5質量%から8質量%、酸化防止剤を1質量%から3質量%含有する場合の実施例のフラックスを使用した場合のデータをのせており、表2の比較サンプルと比べ、広がり率、飛散率、ブリッジ数などの全体的に評価すると半田付け特性が、向上していることが分かる。
【0035】
実施例のサンプル2において、活性剤としてアミン臭化水素酸塩(ジエチルアミンHBr)を添加せず、且つ有機臭化物を1%とすると、若干、半田のぬれ広がり性が悪くなりブリッジ数が増加し、他の実施例サンプルと比較すると有機臭化物との併用の効果が認められる。
【0036】
比較サンプル1において、高密度酸化型ポリエチレン(A−C395)を20%と多く含ませると、飛散率は良好(飛散を防止する)だが、粘度が上がりすぎ、半田のぬれ広がり性の悪化とブリッジ数が増加する。
【0037】
比較サンプル5においては、飛散防止のための高密度酸化型ポリエチレン及び酸化防止剤を含ませないと、広がり率は良好だが、飛散率、ブリッジ数とも悪化する。ロジン自体にも、半田の流動性を良くし、酸化を防止する働きを有するのでロジンの含有率を96.5%と高めても、飛散率、ブリッジ数の特性が悪く高密度酸化型ポリエチレン及び酸化防止剤が有効であることが分かる。
【0038】
以上、上述したように、鉛フリー半田は、一般的には、鉛入り半田より融点が高く、やに入り半田の鉛フリー半田を使用すると、融点が高くなった分、高い融点での半田付け作業においては、ロジンや活性剤が分解し易くガス圧が高くなり、半田溶融した途端に、フラックスと半田粒が多量に飛散する。
【0039】
この飛散防止として、本発明のフラックスは、フラックスの溶融粘度を上げるために、高密度酸化型ポリエチレンを添加する。更に、ロジン類は活性剤の酸化分解によるガス発生を抑制するため、フェノール型酸化防止剤を併用することに特徴を有する。
【0040】
尚、本発明の鉛フリー半田合金は、Sn(93.5%)−Ag(3.0%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)とSn(96.5%)−Ag(3.0%)−Cu(0.5%)の2種類の半田合金の例を挙げているが、含有成分の比率は、これ以外の比率のものでもよく、また、他の鉛フリー半田合金でもほぼ同様な効果が得られる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明のフラックスを鉛フリーやに入り半田に使用すると、従来のフラックス使用に比べ飛散防止やぬれ広がり性に優れた半田付け作業が実現でき、信頼性の高いやに入り半田用フラックスを提供することができる。
Claims (13)
- 鉛フリー半田に使用する鉛フリー半田用フラックスにおいて、
密度が、0.97〜1.00g/cm 3 、酸価が10〜50mgKOH/gである高密度酸化型ポリエチレンを1質量%以上10質量%未満と、
フェノール型酸化防止剤を0.5質量%以上5質量%以下含有することを特徴とする半田付け用フラックス。 - ロジンおよび活性剤を含む鉛フリー半田用フラックスにおいて、
密度が、0.97〜1.00g/cm 3 、酸価が10〜50mgKOH/gである高密度酸化型ポリエチレンを1質量%以上10質量%未満と、
フェノール型酸化防止剤を0.5質量%以上5質量%以下含有することを特徴とする半田付け用フラックス。 - 高密度酸化型ポリエチレンを3質量%以上9質量%未満含有する請求項2に記載の半田付け用フラックス。
- 高密度酸化型ポリエチレンを5質量%以上8質量%以下含有する請求項2に記載の半田付け用フラックス。
- フェノール型酸化防止剤を1質量%以上から3質量%以下含有する請求項2に記載の半田付け用フラックス。
- やに入り半田に含有するフラックス量は、1質量%から7質量%の範囲とすることを特徴とする請求項2に記載の半田付け用フラックス。
- 活性剤として有機臭化物を含有することを特徴とする請求項2に記載の半田付け用フラックス。
- 有機臭化物を0.5質量%以上5%未満含有することを特徴とする請求項7に記載の半田付け用フラックス。
- 有機臭化物を約3質量%程度含有することを特徴とする請求項7に記載の半田付け用フラックス。
- 活性剤として更に、ハロゲン化水素酸塩を1%未満含有することを特徴とする請求項7に記載の半田付け用フラックス。
- ハロゲン化水素酸塩を約0.5%程度含有することを特徴とする請求項10に記載の半田付け用フラックス。
- ロジンが79質量%から98質量%含有することを特徴とする請求項10に記載の半田付け用フラックス。
- 請求項2に記載の半田付け用フラックスを含有する鉛フリー半田。
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