JP4223166B2 - 顕減色剤、これを用いた可逆性感熱記録材料および可逆性感熱記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顕減色剤および可逆性感熱記録材料ならびに可逆性感熱記録媒体に関し、特に印字/消去時の印加エネルギーの少ない顕減色剤および可逆性感熱記録材料ならびに可逆性感熱記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
サーマルヘッドなどの加熱手段で加熱することにより、文字、画像等の情報を記録することのできる可逆性感熱記録媒体が知られている。このような可逆性感熱記録媒体は、電子供与性化合物である染料前駆体と、電子受容性化合物である顕減色剤を成分として含む可逆性感熱記録材料を有しており、この可逆性感熱記録媒体は、前記したような加熱手段により、染料前駆体(ロイコ染料)と顕減色剤とを反応させて、前記文字等の情報を目視で確認可能に印字したり、印字された情報を再び消去できることを利用している。このような可逆性感熱記録媒体は、再加熱等することにより、再書き込み/再消去可能となっている。
【0003】
このような再書き込み/再消去可能な可逆性感熱記録材料に用いられる電子受容性化合物として、たとえば特開平5−124360号公報に可逆的熱発色性組成物の発明が知られている。この公報に記載された可逆的熱発色組成物に使用される電子受容性化合物として、下記式(a)で示されるようなフェノール化合物が用いられている。
【0004】
【化3】
【0005】
また、特開平7−179043号公報には、可逆性感熱記録材料の発明が開示されており、この公報には、下記式に示される電子受容性化合物が開示されている。
【0006】
【化4】
【0007】
式中、nは1以上3以下の整数を、R1は炭素数1から18の炭化水素基を、Xは−CONH−結合を少なくとも一つ以上持つ二価の基を表す。単なるアミド、尿素結合は除く。R2は炭素数1から24の炭化水素基を表す。
【0008】
さらに、特開平10−193800号公報には、可逆性感熱発色組成物及びそれを用いた可逆性記録媒体の発明が開示されている。
この公報には、水酸基を有するナフタレン環のα位に、−NHCO−、などの2価の基Xと置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基R1とからなる−X−R1基とが存在するナフトール系化合物が電子受容性化合物として使用されていることが開示されている。
【0009】
この公報には、消色させる場合の加熱方法として、熱ローラ、熱スタンプ、熱風などを用いてもよいし、サーマルヘッドを用いてもよいと記載されており、オーバーライトが可能である旨記載されている。
【0010】
上記したような従来の可逆性感熱記録媒体は、印字および消去の際にはサーマルヘッド等の加熱手段を用いるが、この際に比較的多量の熱量を必要とする。従来の可逆性感熱記録媒体は、このような加熱手段による圧力を加えながらの熱印加により、可逆性感熱記録媒体が熱変形しながら熱劣化現象を引き起こすことがあった。すなわち前記したような加熱手段による圧力を加えながらの熱印加の繰返しにより、その印字表面に凹凸が生じ、印字または消去しようとする文字、画像等の情報の一部に十分に熱が印加されず、コントラストの低下を生じたり、また、地肌濃度と、印字/消去とを繰返し行った部分の消去時の濃度とを比較すると、地肌濃度の倍以上の値となる、いわゆる色素が沈着したように消去部分の濃度が上昇する傾向が顕著となり、消去残りが初期の頃と比較して増大する傾向があった。
【0011】
また印字/消去を繰返すと印字面の凹凸が増大するため、、熱衝撃等の応力の他に、サーマルヘッドにこの増大した凹凸面上をなぞることによる振動応力も加わり、サーマルヘッドに余分な負担をかけてしまう虞も有る。
このように、従来の顕減色剤を用いた可逆性感熱記録媒体は、印加熱量が比較的大きいために、上記したような熱劣化現象を誘発する要因を含んでいる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであって、加熱手段であるサーマルヘッドを用いて消去・書込みする際に、印加エネルギーの少ない顕減色剤を提供することを目的としている。また本発明は、オーバーライト時の消去/書込みのエネルギーが少ない可逆性感熱記録材料を提供することを目的としている。
【0013】
さらに本発明は、このような優れた熱特性を有する可逆性感熱記録材料を用いた可逆性感熱記録媒体を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る顕減色剤は、加熱により染料前駆体に可逆的な色調の変化を生ぜしめる下記一般式[1]で示されるβ位にアミド基を有するナフトール化合物を1種以上含有することを特徴とする。:
【0015】
【化5】
【0016】
前記一般式[1]において、mは、1または2であり、nは、10以上の整数である。
【0017】
本発明に係る顕減色剤は、特に下記一般式[2−1]および/または[2−2]で示されるβ位にアミド基を有するナフトール化合物であることが好ましい。
【0018】
【化6】
【0019】
また本発明では、このような前記記載の可逆性感熱記録材料の提供ならびにこのような可逆性感熱記録材料を基材上に有する可逆性感熱記録媒体の提供がなされる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る顕減色剤等について、順に説明する。
【0021】
[顕減色剤]
β位にアミド基を有するナフトール化合物
本発明に係る顕減色剤は、下記一般式[1]で示される化合物が用いられる。
【0022】
【化7】
【0023】
上記一般式[1]において、mは、1または2であり、好ましくは1である。
またOH基は、ナフトール環を構成する2つの環のいずれにあってもよい。OH基が2個である場合も同様である。
nは、10以上の整数である。
【0024】
このようなβ位にアミド基を有するナフトール化合物としては、特に以下の化合物が好ましく選択される。
【0025】
【化8】
【0026】
前記式 [1] または[2−1]〜[2−2]中、nは、10以上の整数である。好ましくはnは、10〜32までの整数であり、より好ましくはnは、10〜20の整数を選択することができる。
本発明に係る顕減色剤は、前記したようなβ位にアミド基を有するナフトール化合物を1種用いることができ、また2種以上混合して用いることもできる。
このような本発明に係るβ位にアミド基を有するナフトール化合物は、たとえば下記式に示すβ−ナフチルアミンと、アシル化合物とを接触させ、脱ハロゲン化水素して、得ることができる。
【0027】
【化9】
なおアシル化合物のR基は、炭素数11以上の直鎖アキル基(R=−(CH2 )n −CH3 :nは前記同様)であり、nが20を越すと、β位にアミド基を有するナフトール化合物は、純品が得られにくくなる傾向がある。
【0028】
その他の電子受容性化合物
本発明においては、前述したβ位にアミド基を有するナフトール化合物を顕減色剤として使用することが好ましいが、本発明の趣旨を変更しない範囲で、他の公知の電子受容性化合物を添加して用いることもできる。
【0029】
[可逆性感熱記録材料]
次に、本発明に係る可逆性感熱記録材料について、説明する。
本発明に係る可逆性感熱記録材料は、前述したような顕減色剤と、染料前駆体を有する。
【0030】
染料前駆体
本発明に係る可逆性感熱記録材料に使用される染料前駆体としては、感圧記録紙、可逆性感熱記録紙、感光感圧紙、通電可逆性感熱記録紙、感熱転写紙等に用いられる染料前駆体が挙げられる。
本発明においては、特にこれらに制限されない。例えば、下記のものが挙げられる。
【0031】
(1)トリアリールメタン系化合物
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等。
【0032】
(2)ジフェニルメタン系化合物
4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等。
【0033】
(3)キサンテン系化合物
ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、ジアルコキシフルオランたとえば3,6−ジメトキシフルオランなど、
アミノフルオラン系化合物;たとえば3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオランなど、
3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオランなど、
【0034】
アニリノフルオラン系化合物;たとえば3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなど、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
【0035】
キシリジノフルオラン系化合物;たとえば3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオランなど、
ベンゾフルオラン系化合物;たとえば3−ジアルキルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン等、
アザフタリド系化合物;3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリドなど。
【0036】
(4)チアジン系化合物
ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等、
【0037】
(5)スピロ系化合物
3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等。
【0038】
前記通常無色ないし淡色の染料前駆体は、前述したような化合物の中から目的に応じて適宜選択することができる。また前記染料前駆体は2種以上混合して用いることもできる。
【0039】
その他
本発明においては、可逆性感熱記録材料として、上述した、染料前駆体と、顕減色剤が主として用いられるが、好適には、以下に示すバインダー樹脂等も用いられる。このような可逆性感熱記録材料は、塗膜状に形成することができる。
【0040】
バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダなどのポリアクリル酸金属塩、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のラテックスなどがあげられ、また、染料前駆体および電子受容性化合物の分散性にすぐれ、書き換え耐久性にすぐれた可逆性感熱記録層が得られるため、特に熱可塑性樹脂の分子内に二重結合を導入して、放射線(可視光、紫外線、γ線などの光照射、および電子線、コバルト線、重粒子線などの粒子線照射)硬化性とした樹脂が好ましく、たとえば塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体にアクリル酸またはメタクリル酸をエステル重合させた樹脂等が使用できる。
【0041】
上述したその他の成分には、上述したようなバインダー樹脂以外に、顕減色剤と染料前駆体とを主成分とする記録層に、必要に応じて、さらに、分散剤、フッ素系などの界面活性剤、導電剤、充填剤、シリコーンなどの滑剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、発色安定化剤、消色促進剤などを適宜使用することができる。
【0042】
上述したような可逆性感熱記録材料中に含まれる染料前駆体と、顕減色剤の量比は、使用する化合物の組合わせにより適宜選択されるが、染料前駆体1モルに対して、顕減色剤は0.5ないし20モルの範囲で、良好な発色濃度を得る点から、好ましくは1.0ないし10モルの量で用いられる。この範囲であれば、顕色および減色の際に良好な特性を有し、特に熱劣化することの少ない可逆性感熱記録材料が得られる。本発明に係る顕減色剤と、前記したような染料前駆体とを有する可逆性感熱記録材料は、印字/消去の際に、要するエネルギーが特に小さい。
【0043】
可逆性感熱記録材料において、発色を行うには加熱に引き続き急速な冷却を起こせば良く、消色を行うには、加熱後の冷却速度を遅くすれば良い。例えば、適当な熱源サーマルヘッド、レーザー光、熱ロール、熱スタンプ、高周波加熱、電熱ヒーターからの輻射熱、熱風等で比較的長い時間加熱すると、記録層だけでなく支持体等も加熱される為に冷却速度が遅くなり、相分離状態(消色状態)になる。一方、上記したような加熱手段等の適当な方法で加熱した後、加熱部分に低温の金属ブロックなどを押し当てる等して急冷することにより、発色状態を発現させることができる。
【0044】
サーマルヘッド、レーザー光等を用いて極めて短い時間だけ加熱すると、加熱終了後に直ちに冷却(固化)が始まるため、発色状態を発現させることもできる。
従って、同じ加熱温度および/または同じ熱源を用いても、冷却速度を制御することにより発色状態および消色状態を任意に発現させることができる。サーマルヘッドを用いる場合には、サーマルヘッドに印加される通電パルスの幅および間隔等を適宜調節して、印加熱量を調整して温度勾配を変化させ、徐冷または急冷させて、上記したような消色または発色を行うことができる。またサーマルヘッドの使用の可否は、顕減色剤と、染料前駆体との組み合わせに依存する。
【0045】
本発明に係る顕減色剤を用いた可逆性感熱記録材料は、熱源として、サーマルヘッドを使用することができる材料であり、サーマルヘッドによるオーバーライトも可能な材料である。このことは、本発明に係る顕減色剤を用いた可逆性感熱材料が、従来知られたものと何ら遜色なく、あるいは従来品のものよりも印字/消去における応答速度が速いことを意味している。しかも本発明に係る顕減色剤を用いた可逆性感熱記録材料は、この印字/消去の際の印加エネルギーが極めて小さくて済む。
【0046】
[可逆性感熱記録媒体]
次に、本発明に係る可逆性感熱記録媒体について説明する。
本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、上述した可逆性感熱記録材料を少なくとも基材上に有している。このような可逆性感熱記録媒体は、基材上に前記したような可逆性感熱記録材料を有していればよく、他に、可逆性感熱記録材料を保護する保護層などを適宜有することができる。また、基材上に可逆性感熱記録材料を含む記録層を直接あるいはアンカー層などの層を介して形成したり、剥離性基材上に可逆性感熱記録材料を含む記録層と接着層とを有して転写シート状に形成としたり、基材上に可逆性感熱記録材料を含む記録層を有し、前記基材の裏面に接着層を有する接着シート状に形成したり、あるいはこれらの転写シートまたは接着シートを他の基材に転写あるいは接着したり等、適宜積層可能である。
【0047】
基材
基材としては、特に制限されず用いられるが、たとえば紙(不織布などの合成紙を含む)、樹脂フィルム(たとえばポリエチレンフタレートフィルム、ポリブチレンフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のオレフィンフィルム、さらにアクリルフィルム、塩ビフィルム、フッ素樹脂フィルムなど)、金属フィルム、ガラス(繊維状も含む)等が挙げられる。またこれらの複合体なども用いられる。さらに基材は前記したような材料のものであればよく、透明、半透明および不透明のいずれであってもよい。なお本発明に使用される基材としては、上記した材料以外のフィルム状のものであってもよく、目的に応じて適宜選択される。
【0048】
保護層
保護層としては、紫外線硬化型樹脂で構成することができ、この保護層には、シリカ等が含有されていてもよい。なおこの保護層は可逆性感熱記録媒体の表面を保護するための層としてもよい。
【0049】
他の記録層
また本発明においては、必要に応じて他の記録層を設けてもよい。このような記録層として、電気的、磁気的あるいは光学的に情報を記録できる材料を用いて形成することができる。このような他の記録層は、基材に対して可逆性感熱記録層が設けられている面と同じ面に設けてもよく、さらに前記面の反対の面に設けられていてもよい。
【0050】
本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、印字および消去の際の印加エネルギーが少なくて済む。印字の際に要する印加エネルギーは、以下に示すようにして求められる。
【0051】
図1は、印字エネルギーと、光学濃度との関係を示す印字曲線の例を模式的に表した図であり、横軸は印字エネルギーを、縦軸は光学濃度( O.D.) を表す。図1に示すように、印字曲線は、上に凸の関係があり、この印字曲線の光学濃度が最大となるO.D.maxから0.05低いエネルギーの印字曲線の2つの値を、印字エネルギー幅とする。
【0052】
同様に、図2は、消去エネルギーと、光学濃度との関係を示す消去曲線の例を模式的に表した図であり、横軸は消去エネルギーを、縦軸は光学濃度( O.D.) を表している。
図2に示す消去曲線は、下に凸の関係があり、この消去曲線の光学濃度が最小となるO.D.minから0.05高いエネルギーの印字曲線状の2つの値を、印字エネルギー幅とする。
【0053】
前記した光学濃度は、マクベス社製光学反射濃度計RD918を用いて測定することができる。
本発明に係る顕減色剤を用いた可逆性感熱記録媒体は、前記したようにして測定した印字エネルギーおよび消去エネルギーの値のいずれも、従来公知のものと比較して小さい。
【0054】
【発明の効果】
本発明に係る顕減色剤を用いた可逆性感熱記録媒体は、書込み/消去の際に要するエネルギーが極めて低いので、熱劣化が起きにくく、耐久性が向上した可逆性感熱記録媒体が得られる。このため、本発明に係る顕減色剤を可逆性感熱記録媒体として用いれば、消去・印字する際に熱エネルギーを極力抑えることができるので、加熱機器の印字部分の劣化も同時に防止することができる。
【0055】
以下に、本発明を実施例によって、さらに詳細に説明するが、本発明は、このような実施例に制限されて解釈されるものではない。
【0056】
実施例1
(1)可逆性可逆性感熱記録層の形成
以下に示す組成比の可逆性感熱記録材料形成用樹脂を、2mmφのジルコニアビーズを加えてペイントシェーカーにより1時間分散して調製後、厚さ188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート:東レ(株)製 商品名ルミラーE−22)基材上に♯30ワイヤーバーにて塗工し、70℃にて3分間乾燥し、160W/cmの紫外線照射ランプ存在下に、30m/分の速度で1回パスにより照射して、乾燥膜厚8μmの塗膜の可逆性感熱記録層を形成した。
【0057】
【0058】
【化10】
【0059】
(2)保護層の形成
上記した可逆性感熱記録層を形成した面上全面に、下記の組成比で調製した保護層形成用樹脂を容器に入れ、2mmφのジルコニアビーズを加えてペイントシェーカーにより5分間分散して形成した後、♯7ワイヤーバーにて塗工し、70℃にて3分間乾燥し、160W/cmの紫外線照射ランプ下に30m/分の速度で1回パスにて照射して、乾燥膜厚3μmの塗膜の保護層を形成し、可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0060】
【0061】
実施例2
実施例1において、顕減色剤を下記式[2−2' ]に示す電子受容性化合物に変えた以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0062】
【化11】
【0063】
比較例
実施例1において、前記式[2−1' ]に示す顕減色剤を、下記式[3]に示すようなN−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N' −n−ドコサノヒドラジドに変更した以外は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。得られた可逆性感熱記録媒体は、サーマルヘッドによる印字/消去可能であり、オーバーライトも可能である。
【0064】
【化12】
【0065】
試験方法
上記した実施例1〜2および比較例により作製した可逆性感熱記録媒体を用いて、印字および消去を以下の方法で評価した。
(1)印字および消去評価方法
サーマルヘッド:8dot/mmを用い、可逆性感熱記録媒体の媒体速度を15.6mm/secにより書き込み・消去試験を行った。
印字エネルギー範囲は、電圧21V、1パルス/lineの条件で印字を行い(1lineは1/8 mm)、印字濃度が飽和印字濃度−0.05以内となる値から、エネルギー範囲を測定した。
また消去エネルギー範囲は、電圧21V、7パルス/lineの条件で消去を行い、消去濃度が消去濃度の下限値+0.05以内となるエネルギー範囲を測定して求めた。結果を表1に示す。
【0066】
(2)耐久性試験:オーバーライトを300回繰り返した。
(3)耐久性試験後の可逆性感熱記録媒体の表面粗さ試験:前記した耐久試験後の可逆性感熱記録媒体の表面粗さを、JIS B 0601に基づき算術平均粗さ(Ra値)を求めて熱劣化の程度を評価した。結果を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
印字および消去:8dot/mmサーマルヘッド使用。
可逆性感熱媒体の移動速度 15.6mm/sec
【0069】
【表2】
【0070】
表1に示すように、本発明に係る顕減色剤を用いて作成された可逆性感熱記録媒体は、消去エネルギーについては、実施例1および2は、それぞれ0.24〜0.31mJ/dotおよび0.25〜0.31mJ/dotであり、一方、比較例は、0.41〜0.48mJ/dotであった。比較例の消去エネルギーは、本発明のものと比較して、1.3〜2倍程度も高かった。
また印字エネルギーを比較すると、実施例1および2では、それぞれ0.40〜0.47mJ/dotおよび0.41〜0.48mJ/dotであり、一方、比較例では、0.62〜0.70mJ/dotであった。比較例の印字エネルギーは、本発明のものと比較して、1.29〜1.70倍も高かった。
耐久性試験前後の実施例1および実施例2では、地肌濃度と、消去濃度とを比較すると、それぞれ0.15、0.25であり、これらの濃度差は0.10であった。これに対し比較例では、それぞれ0.15、0.32であり、これらの濃度差は0.17であった。実施例と比較例とを比較すると、比較例のものが、消去残りが増大する傾向が見られた。
【0071】
また図2に示すように、耐久試験前後の表面粗さRa値から、実施例1、実施例2および比較例が0.32μmから、それぞれ、0.38μm、0.39μmおよび0.54μmであった。またこれらの値から、前記したようにして、変化率を求めたところ、実施例1および実施例2では、それぞれ18.8および21.9%と、本発明に係る実施例の値は20%程度であったが、比較例では68.8%となり、本実施例と比較して変化率が3倍以上も高くなることがわかった。
【0072】
また比較例について、実施例と同様の印字エネルギー範囲内となる0.44mJ/dotのエネルギーとした他は同様の条件で印字を行い、また実施例と同様の消去エネルギー範囲内となる0.28mJ/dotのエネルギーとした他は同様の条件で消去を行ったところ、初期特性は地肌濃度が0.15となり、印字濃度が0.69となり、消去濃度が0.57となり、消去がうまく行われず、消去残りが著しかった。このように初期特性の段階で消去残りが著しいため、この条件での比較例の耐久試験は意味がないので行わなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】印字エネルギーと、光学濃度との印字曲線の関係を模式的に表した図である。
【図2】消去エネルギーと、光学濃度との消去曲線の関係を模式的に表した図である。
Claims (4)
- 請求項1または2に記載の顕減色剤を含むことを特徴とする可逆性感熱記録材料。
- 少なくとも基材上に、請求項3に記載の可逆性感熱記録材料を有することを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
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JP35957199A JP4223166B2 (ja) | 1999-12-17 | 1999-12-17 | 顕減色剤、これを用いた可逆性感熱記録材料および可逆性感熱記録媒体 |
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JP35957199A JP4223166B2 (ja) | 1999-12-17 | 1999-12-17 | 顕減色剤、これを用いた可逆性感熱記録材料および可逆性感熱記録媒体 |
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