JP3722781B2 - 可逆性感熱記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを制御する事により色調が可逆的に変化する可逆性感熱記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、一時的な画像の形成が行なえ、不要となった時にはその画像の消去が出来るようにした可逆性感熱記録材料が注目されている。その代表的なものとしては、通常無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱によりこの染料前駆体を発色させ、これを再加熱して消色させる可逆顕色剤を用いた可逆性感熱記録材料が知られている。このような可逆性感熱記録材料としては、特開平6−210954号公報、特開平6−171225号公報、特開平7−68934号公報、特開平7−179043等に記載されたものを挙げることができる。
【0003】
一般に、このような可逆性感熱記録材料の画像を形成する方法としては、サーマルヘッドを用いる方法や、レーザ光線の熱変換を利用する方法が知られている。また画像を消去する方法としては、サーマルヘッドを用いて加熱消去する方法、熱ロールあるいは熱板を用いて加熱消去する方法、熱光源を用いる方法等がとられている。しかしながら、サーマルヘッドを用いて画像を消去する方法は、装置がコンパクトになる利点があるものの、画像消去時には可逆性感熱記録材料の画像のある部分だけではなく、記録層全面を加熱するため、サーマルヘッドの畜熱が大きくなり、サーマルヘッドが破損し易いという問題点がある。また、畜熱したサーマルヘッドが可逆性感熱記録材料に直接接触するため、スティッキングやカスの付着などの印字障害も生じ易い。熱ロールあるいは熱板を用いて画像を消去する方法は、記録層を均一に加熱し易いという利点があるものの、記録層成分が熱ロールあるいは熱板へ付着するなどのトラブルが発生しやすく、また、熱ロールや熱板自体を所定の温度へ引き上げるための昇温速度、冷却速度は一般に遅い為、装置のウォーミングアップの時間が長く、定常的に使用しない時には操作性が悪い。また、熱光源を用いる方法においては、十分な消去レベルを実現するために必要なエネルギーが大きく、長時間の光照射によって染料前駆体の分解が起きるという問題もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、熱的方法により画像の形成と消去を繰り返し行うことができる可逆性感熱記録材料において、高濃度の画像形成が可能であり、かつ低いエネルギーで、消去跡のない十分な消去レベルを実現できる可逆性感熱記録材料を提供することである。本発明の課題はさらに、印字消去を多数回繰り返しても、発色濃度の低下や消去跡の発生といった問題のない可逆性感熱記録材料を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、熱伝導率が0.5×10-4〜4×10-4 cal/cm・sec・℃である支持体の一方の面上に断熱層を設け、他方の面上に、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体および、加熱により該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる電子受容性化合物とを含有する可逆性感熱記録層を設けたことを特徴とする可逆性感熱記録材料、あるいはさらに、該可逆性感熱記録層中に、近赤外部に吸収を有する光熱変換材料を含有させるか、もしくは、該光熱変換材料を含有する光熱変換層を該可逆性感熱記録層に直接隣接して設けたことを特徴とする可逆性感熱記録材料によって、上記の課題が解決されることを見いだし、本発明に至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の可逆性感熱記録材料は、支持体の一方の面上に断熱層を設け、他方の面上に前記の可逆性感熱記録層を設けたものである。
【0007】
断熱層としては、発泡ポリウレタン、発泡塩化ビニル樹脂、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン等の発泡プラスチック、あるいは、中空体微粒子を樹脂層に分散させたものが用いられる。中空体微粒子としては、ガラス、セラミックス、プラスチックス等の種々の材質で形成された微小中空体の他、内部に低沸点溶剤を含有し、熱可塑物質を殻とする熱発泡性中空体微粒子がある。微小中空体の例としては、グラパーベル社製Microsel M、日本フェライト社製のFillite等があり、熱発泡性中空体微粒子の例としては、松本油脂社製のミクロスフィア、ケマノード社製のExpancel等がある。中空体微粒子を分散保持する樹脂としては特に限定はないが、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエンゴム、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、アクリル−マレイン酸樹脂、アクリル−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂等のエマルジョンタイプの合成樹脂、ポリビニルアルコール、スターチ、カゼイン等の水溶性高分子、カルボキシ・メチルセルローズ、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0008】
断熱層の厚みとしては0.1〜50μm程度が好ましく、特に0.2〜20μmが好ましい。
【0009】
本発明の可逆性感熱記録材料に用いられる支持体は、熱伝導率が0.5×10-4〜4×10-4 cal/cm・sec・℃のものである。熱伝導率が0.5×10-4cal/cm・sec・℃より低い場合には、記録時の熱が逃げ切れないために、カール、片伸び、クラック等の問題が生じる。一方、熱伝導率が4×10-4 cal/cm・sec・℃よりも高い場合には、断熱層を設けても消去が不十分となる。熱伝導率は例えば、迅速熱伝導率計QTM−D3(京都電子工業(株))等によって求めることができる。熱伝導率が0.5×10-4〜4×10-4 cal/cm・sec・℃となる具体的な支持体の例としては、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、軟質塩化ビニル樹脂、ポリエステル、白色ポリエステル等を挙げることができる。支持体の厚みは10〜500μm、好ましくは50〜250μmである。
【0010】
本発明に用いられる、加熱により染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる電子受容性化合物としては、公知のものを使用することができる。中でも下記一般式(1)で表されるものが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
【化2】
【0012】
一般式(1)において、Xa及びXbはそれぞれ同じであっても、異なってもよい酸素原子、硫黄原子または両末端に炭化水素原子団を含まない−CONH−結合を最小構成単位とする二価の基を表す。ここで−CONH−結合を最小構成単位とする二価の基の具体例としては、アミド(−CONH−、−NHCO−)、尿素(−NHCONH−)、ウレタン(−NHCOO−、−OCONH−)、ジアシルアミン(−CONHCO−)、ジアシルヒドラジン(−CONHNHCO−)、しゅう酸ジアミド(−NHCOCONH−)、アシル尿素(−CONHCONH−、−NHCONHCO−)、セミカルバジド(−NHCONHNH−、−NHNHCONH−)、アシルセミカルバジド(−CONHNHCONH−、−NHCONHNHCO−)、ジアシルアミノメタン(−CONHCH2NHCO−)、1−アシルアミノ−1−ウレイドメタン(−CONHCH2NHCONH−、−NHCONHCH2NHCO−)、マロンアミド(−NHCOCH2CONH−)等の基が挙げられる。R1は単結合または炭素数1から12の二価の炭化水素基を表す。R2は炭素数1から18の二価の炭化水素基を表す。好ましくは炭素数1から4の二価の炭化水素基である。R3は炭素数1から24の一価の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数6から24の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数8から24の炭化水素基である。更に、R1、R2及びR3の炭素数の和が11以上35以下である場合が特に好ましい。R1、R2及びR3は主として、各々アルキレン基及びアルキル基を表す。R1の場合は、芳香環を含んでいてもよい。nは0から4の整数を表し、nが2以上のとき繰り返されるR2及びXbは同一であっても異なっていてもよい。
【0013】
本発明に用いられる一般式(1)で示される電子受容性化合物において、nが0で、Xaが両末端に炭化水素原子団を含まない−CONH−結合を最小構成単位とする二価の基であるものが特に好ましい。
【0014】
以下に一般式(1)で表される具体的化合物を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
本発明に用いられる、一般式(1)で示される電子受容性化合物はそれぞれ1種または2種以上を混合して使用してもよく、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体に対する使用量は、5〜5000重量%、好ましくは10〜3000重量%である。
【0018】
本発明に用いられる、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体としては、一般に感圧記録紙や感熱記録紙等に用いられるものがよく知られている。具体的な例としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。またこれら染料前駆体は、それぞれ1種または2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
(1)トリアリールメタン系化合物
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−n−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジメチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等、
【0020】
(2)ジフェニルメタン系化合物
4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等、
【0021】
(3)キサンテン系化合物
ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−メチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル)トリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル)トリルアミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル)プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル)イソアミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル)シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル)テトラヒドロフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等、
【0022】
(4)チアジン系化合物
ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等、
【0023】
(5)スピロ系化合物
3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等が挙げられる。
【0024】
本発明で用いられる可逆性感熱記録層を得るために使用されるバインダーとしては例えば、ポリビニールアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、ゼラチン、カゼイン、澱粉、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル類、ポリスチレン、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のラテックス類、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等およびこれらの水酸基、カルボキシル基がイソシアネート類、アミン類、フェノール類、エポキシ類等の架橋剤と反応し、硬化するポリウレタン等の熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、紫外線硬化樹脂が挙げられている。これらの中で、特開平10−230680号公報や同11−58963号公報に記載の、ポリオール樹脂をイソシアネート化合物で架橋して得られるポリウレタンが好ましい。
【0025】
可逆性感熱記録層におけるバインダーの使用量としては、該可逆性感熱記録層全質量に対する該バインダー成分の質量百分率が35%以上65%以下の範囲内であることが好ましい。この範囲より大きくなると著しく発色濃度が低下し、逆にこの範囲より小さくなると、可逆性感熱記録層の耐熱性や機械的強度が低下し、層の変形や発色濃度の低下が起きる。可逆性感熱記録層における該バインダー成分の質量百分率は、40%以上60%以下がより好ましく、45%以上55%以下がなお一層好ましい。
【0026】
また、可逆性感熱記録層の発色感度および消色温度を調節するための添加剤として、熱可融性物質を可逆性感熱記録層中に含有させることができる。60℃〜200℃の融点を有するものが好ましく、特に80℃〜180℃の融点を有するものが好ましい。一般の感熱記録紙に用いられている増感剤を使用することもできる。例えば、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどのワックス類、2−ベンジルオキシナフタレン等のナフトール誘導体、p−ベンジルビフェニル、4−アリルオキシビフェニル等のビフェニル誘導体、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル等のポリエーテル化合物、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(p−メチルベンジル)エステル等の炭酸またはシュウ酸ジエステル誘導体等を併用して添加することができる。
【0027】
本発明の可逆性感熱記録層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、3〜15μmがより好ましい。
【0028】
本発明においては、電子供与性染料前駆体と特定構造の電子受容性化合物を含有する可逆性感熱記録層と、断熱層を組み合わせることにより、高濃度の画像形成が可能であり、かつ低いエネルギーで、消去跡のない十分な消去レベルを実現することができ、また、印字消去を多数回繰り返しても、発色濃度の低下や消去跡の発生といった問題がない。ここで、この可逆性感熱記録層中に、近赤外部に吸収を有する光熱変換材料を含有させるか、あるいは、該光熱変換材料を含有する光熱変換層を可逆性感熱記録層に直接隣接して設け、レーザー光による印字と熱光源による消去を行うと、非接触型の印字消去が可能となるため、可逆性感熱記録材料の形状に関する自由度が大幅に高まると同時に、サーマルヘッドや熱ロールを用いる場合に生じる機械的なストレスが全くなくなるために、さらに多数回の印字消去が可能になる。光熱変換材料の存在位置としては、印字や消去の感度の点から、可逆性感熱記録層中にあることがより好ましい。
【0029】
本発明に用いられる、近赤外部に吸収を有する光熱変換材料としては、たとえば白金、チタン、シリコン、クロム、ニッケル、ゲルマニウム、アルミニウムなどの金属または半金属の層、日本化薬製のIRG002(商品名)やIRG022(商品名)等のインモニウム化合物、金属錯体化合物、シアニン色素、スクワリリウム色素、ナフトキノン色素、フタロシアニン化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましい光熱変換材料としては、光熱変換効率、溶剤への溶解性、樹脂への分散性の点でフタロシアニン化合物及び金属錯体化合物が挙げられる。
【0030】
フタロシアニン化合物の例としては、ナフタロシアニン化合物、無金属フタロシアニン化合物、鉄フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン化合物、亜鉛フタロシアニン化合物、ニッケルフタロシアニン化合物、バナジルフタロシアニン化合物、塩化インジウムフタロシアニン化合物、塩化錫フタロシアニン化合物等が好ましく、より好ましくは銅フタロシアニン化合物、バナジルフタロシアニン化合物、亜鉛フタロシアニン化合物である。本発明に用いられるフタロシアニン化合物は吸収波長の調節、溶媒への溶解度の向上、耐光性の改良等の目的で、芳香環に置換基を有しても良い。置換基としては、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミド基、アミノ基、アルキルエステル基、アリールエステル基、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。芳香環に置換基が二つ以上ある場合に、置換基同士が環を形成しても良い。また金属錯体化合物としては、ニッケルジチオール錯体やインドアニリン金属錯体等が挙げられる。
【0031】
光熱変換材料は単独使用はもとより、2種類以上を混合して用いることができる。その添加量は1mg/m2から200mg/m2が適当であり、5mg/m2から50mg/m2が好ましい。この量より少ないと画像消去に必要なエネルギーを十分に低減できず、印字消去の繰り返し特性が劣化する。またこの量より多いと、光熱変換材料が若干なりとも有している可視部の吸収が大きくなりすぎて画像の視認性が低下する。
【0032】
印字に使用するレーザーとしては半導体レーザーやYAGレーザーを挙げることができるが、これらに限定されない。また、消去に用いる熱光源の例としては、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、赤外線ランプ等が挙げられるが、ハロゲンランプが好ましく用いられる。
【0033】
本発明の可逆性感熱記録材料を構成する各層を支持体上に形成する方法は特に制限されるものではなく、従来の方法により形成することができる。例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、カーテンコーター等の塗抹装置、平板、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン、ホットメルト等の方式による各種印刷機等を用いることができる。さらに通常の乾燥工程の他、UV照射・EB照射により各層を保持させることができる。これらの方法により、1層ずつあるいは多層同時に塗抹、印刷することができる。
【0034】
本発明の可逆性感熱記録材料は、加熱により画像の書き込みと消去を繰り返し行うものであるが、サーマルヘッド、熱ロール、熱バー、熱スタンプ、ガイドレール等の接触部材による機械的損傷を防止するため、保護層を設けてもよく、また、日常の環境下での光曝露による染料前駆体の劣化を防止するために紫外線吸収剤や酸化防止剤を含有する層や酸素バリア層を設けてもよく、設ける順序は可逆性感熱記録層上であればどちらが上でも構わない。この場合、これらの層は2層ないしは3層以上の複数の層から構成されていてもよい。また、基材との接着性や、各層間での層間接着強度を上げるために接着層をそれぞれ設けてもよい。さらに、可逆性感熱記録層が設けられている面または反対側の面に、電気的、磁気的、光学的に情報が記録可能な材料を含んでもよい。また、可逆性感熱記録層が設けられている面と反対側の面に、カール防止、帯電防止を目的としてバックコート層を設けてもよく、さらに粘着加工等を行ってもよい。
【0035】
また、可逆性感熱記録層や保護層等には、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、尿素−ホルマリン樹脂等の顔料、その他に、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、カスターワックス等のワックス類を、また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の分散剤、さらに界面活性剤、蛍光染料などを含有させることもできる。
【0036】
【実施例】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明する。なお実施例中の部数や百分率は質量基準である。
【0037】
実施例1
[可逆性感熱記録材料(1)の作製]
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−m−トリフルオロメチルフェニルアミノフルオラン(山田化学(株)製、BLACK 100)15部、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−n−ドコサノヒドラジド100部、ポリエステルポリオール(大日本インキ化学工業(株)製、バーノックD−293−70)50部、硬化剤(日本ポリウレタン(株)製、コロネートHL)50部、メチルエチルケトン300部、トルエン300部の混合物を、ガラスビーズと共にペイントシェーカーで5時間粉砕した。得られた分散液を、厚さ50μmの白色ポリエステルフィルム(熱伝導率1.2×10-4 cal/cm・sec・℃)のシート上に固形分5g/m2となる様に塗工した。この可逆性感熱記録層の上に、ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂(大日本インキ製C7−157)15部、メチルエチルケトン85部とをよく混合した上で塗工し、120℃で1分間乾燥した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して硬化させて、膜厚3μmの保護層を設けた。熱膨潤性微小中空粒子(松本油脂マイクロスフェアF−80)20部、ポリビニルブチラール20部、トルエン70部、イソプロピルアルコール30部の混合物を、ガラスビーズと共にペイントシェーカーで2時間粉砕し、得られた分散液を、上記シートの可逆性感熱記録層とは反対側の面に、固形分2g/m2となる様に塗工して断熱層を設け、可逆性感熱記録材料(1)を作製した。
【0038】
実施例2
支持体を厚さ50μmのポリエステルフィルム(熱伝導率3.8×10-4 cal/cm・sec・℃)に変更する以外は、実施例1と同様に操作して可逆性感熱記録材料(2)を作製した。
【0039】
比較例1
断熱層を設けない以外は、実施例1と同様に操作して可逆性感熱記録材料(3)を作製した。
【0040】
実施例3
可逆性感熱記録層の成分として、光熱変換材料(山本化学(株)製、YKR−3070)1部を追加する以外は、実施例1と同様に操作して可逆性感熱記録材料(4)を作製した。
【0041】
実施例4
支持体を厚さ50μmの白色ポリエステルフィルム(熱伝導率0.8×10-4cal/cm・sec・℃)に変更する以外は、実施例3と同様に操作して可逆性感熱記録材料(5)を作製した。
【0042】
比較例2
支持体を厚さ50μmのポリカーボネートフィルム(熱伝導率4.6×10-4cal/cm・sec・℃)に変更する以外は、実施例3と同様に操作して可逆性感熱記録材料(6)を作製した。
【0043】
試験1(画像の消去性)
実施例1〜2と比較例1で作製した可逆性感熱記録材料(1)〜(3)を、京セラ製印字ヘッドKJT−256−8MGF1付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機TH−PMDを用いて印加パルス1.0ミリ秒で印加電圧26ボルトの条件で印字した。濃度計マクベスRD918を用いて測定した、発色画像部の濃度はいずれも1.0以上であった。次にこれらの印字サンプルを厚さ1mmのポリエチレン板および鋼板にそれぞれ軽く圧着し、300Wのハロゲンランプから3cm離して設置し、15秒間照射したところ、可逆性感熱記録材料(1)と(2)では、ポリエチレン板および鋼板のいずれに貼り付けた試料においても、地肌と区別できないレベルまで消去したのに対して、(3)をポリエチレン板に貼り付けた試料では消去跡が見られ、(3)を鋼板に貼り付けた試料では全く消去が見られなかった。
【0044】
試験2(レーザーによる印字とランプ消去の繰り返し)
実施例3、4と比較例2で作製した可逆性感熱記録材料(4)〜(6)を厚さ1mmの鋼板に軽く圧着した。これらの試料に、830nmの波長の半導体レーザーを用いて、照射エネルギー2J/cm2のレーザー光を照射して印字し、次いで300Wのハロゲンランプから3cm離して設置し、5秒間照射して、消去を行った。この操作を500回繰り返したところ、500回後であっても、(4)では印字傷もなく良好な発色が得られ、消色部の消色跡も見られなかった。(5)においては、500回後の印字部に若干クラック状の傷は認められるものの、500回後であっても良好な発色が得られ、消色部の消色跡も見られなかった。これに対して(6)では500回後に消去跡が認められた。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、熱伝導率が0.5×10-4〜4×10-4 cal/cm・sec・℃である支持体の一方の面上に断熱層を設け、他方の面上に、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体および、加熱により該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる電子受容性化合物とを含有する可逆性感熱記録層を設けたことを特徴とする可逆性感熱記録材料、あるいはさらに、該可逆性感熱記録層中に、近赤外部に吸収を有する光熱変換材料を含有させるか、もしくは、該光熱変換材料を含有する光熱変換層を該可逆性感熱記録層に直接隣接して設けたことを特徴とする可逆性感熱記録材料によって、高濃度の画像形成が可能であり、かつ低いエネルギーで、消去跡のない十分な消去レベルを実現でき、さらに印字消去を多数回繰り返しても、発色濃度の低下や消去跡の発生といった問題のない可逆性感熱記録材料が得られる。
Claims (3)
- 熱伝導率が0.5×10-4〜4×10-4 cal/cm・sec・℃である支持体の一方の面上に発泡プラスチックあるいは中空体微粒子分散樹脂層からなる断熱層を設け、他方の面上に、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体および、加熱により該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる電子受容性化合物とを含有する可逆性感熱記録層を設け、熱光源による消去を行うことを特徴とする可逆性感熱記録材料。
- 可逆性感熱記録層中に、近赤外部に吸収を有する光熱変換材料を含有させた請求項1記載の可逆性感熱記録材料。
- 電子受容性化合物が下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1または2記載の可逆性感熱記録材料。
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