JP4580057B2 - 可逆性感熱記録材料および可逆性感熱記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可逆性感熱記録材料および可逆性感熱記録媒体に関し、特に印字/消去時の印字エネルギーおよび消去エネルギーが少ない可逆性感熱記録材料および可逆性感熱記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
サーマルヘッドなどの加熱手段で加熱することにより、文字、画像等の情報を記録することのできる可逆性感熱記録媒体が用いられている。このような可逆性感熱記録媒体は、電子供与性化合物である染料前駆体と、電子受容性化合物である顕減色剤を成分として含む可逆性感熱記録材料を有しており、この可逆性感熱記録媒体は、前記したような加熱手段により、電子供与性化合物のロイコ染料と、電子受容性化合物の顕減色剤とを反応させて、前記文字等の情報を目視で確認可能に印字したり、印字された情報を再び消去できることを利用している。このような可逆性感熱記録媒体は、再加熱等することにより、再書き込み/再消去可能となっている。
【0003】
また従来の可逆性感熱記録媒体は、印字および消去の際にはサーマルヘッド等の加熱手段を用いるが、この際に比較的多量の熱量を必要とする。従来の可逆性感熱記録媒体は、このような加熱手段による圧力を加えながらの熱印加により、可逆性感熱記録媒体が熱変形しながら熱劣化現象を引き起こすおそれがあった。
すなわち前記したような加熱手段による圧力を加えながらの熱印加の繰返しにより、その印字表面に凹凸が生じたり、印字または消去しようとする文字、画像等の情報の一部に十分に熱が印加されず、コントラストの低下を生じたり、また、地肌濃度と、印字/消去とを繰返し行った部分の消去時の濃度とを比較すると、地肌濃度の倍以上の値となる、いわゆる色素が沈着したように消去部分の濃度が上昇する傾向が顕著となり、消去残りが初期の頃と比較して増大する傾向がある。
【0004】
また熱により保護層が劣化し、サーマルヘッドと保護層が焼き付いたり、あるいは印字/消去を繰返すと印字面の凹凸が増大するため、熱衝撃等の応力の他に、サーマルヘッドにこの増大した凹凸面上をなぞることによる振動応力も加わり、サーマルヘッドに余分な負担をかけてしまうおそれもある。
このように、従来の顕減色剤を用いた可逆性感熱記録媒体は、印加熱量が比較的大きいために、上記したような熱劣化現象を誘発する要因を含んでいる。
【0005】
また再書き込み/再消去可能な可逆性感熱記録材料に用いられる電子受容性化合物として、たとえば特開平7−179043号公報に可逆的熱発色性組成物の発明が知られている。
この前記公報には、電子受容性化合物として、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N' −n−オクタデカノヒドラジドが記載されている。
【0006】
また特開平8−258424号公報には、消色性に優れた可逆性感熱記録材料の発明が記載され、電子供与性化合物として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオランが記載されている。
【0007】
さらに、特開平11−99749号公報には、電子供与性化合物として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアミノフルオランが用いられている。
【0008】
しかしながら上記したようないずれの公報にも、本発明に係るロイコ系色素および顕減色剤の特定の組み合わせからなる可逆性感熱記録媒体は記載されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであって、加熱手段であるサーマルヘッドを用いて消去・書込みする際に、印加エネルギーの少ない可逆性感熱記録材料を提供することを目的としている。さらに本発明は、このような可逆性感熱記録材料を有する可逆性感熱記録媒体を提供することを目的としている。
【0010】
さらに本発明は、このような優れた熱特性を有する可逆性感熱記録材料を用いた可逆性感熱記録媒体を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る可逆性感熱記録材料は、下記式[1−2]で示される電子供与性化合物と、下記式[2−4]で示される電子受容性化合物と、を有する。
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0014】
前記式[2−4]は、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N'−ドコサノイルヒドラジド)である。
【0015】
本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、少なくとも基材上に可逆性感熱記録層が設けられてなる可逆性感熱記録媒体であって、該可逆性感熱記録層は、請求項1に記載の可逆性感熱記録材料と、少なくともアクリル樹脂と紫外線硬化型樹脂とを含有するバインダー樹脂と、を有し、前記可逆性感熱記録層の上に、少なくとも顔料を含有する紫外線硬化型樹脂からなる保護層を形成したことを特徴としている。
【0016】
本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、特に、可逆性感熱記録層上にさらに保護層を設けることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る可逆性感熱記録材料および可逆性感熱記録媒体について、順に説明する。
【0018】
[可逆性感熱記録材料]
本発明に係る可逆性感熱記録材料は、下記式[1−1]および/または[ 1−2] で示される電子供与性化合物であるロイコ染料と、下記式[ 2−1] 〜[ 2−4] から選択される少なくとも1つの電子受容性化合物である顕減色剤と、を有する。
ロイコ染料
【0019】
【化5】
【0020】
なお本発明では、適宜、他の公知のロイコ染料を加えることもできる。
【0021】
顕減色剤
【0022】
【化6】
【0023】
上記式[2−1]〜[2−4]において、Rは、炭素数11以上の一価の基であり、好ましくは炭素数11以上、31以下の一価の基である。このようなRとしては、炭素数11以上の炭化水素基であり、好ましくは炭素数11以上のアルキル基であり、より好ましくは炭素数11〜31のアルキル基である。
このような前記式[2−1]〜[2−4]で表される電子受容性化合物(顕減色剤)としては、具体的には、以下のような化合物が含まれる。
【0024】
式[2−1]で表される化合物としては、3−ドデカノイルアミノ−2−ナフトール、3−トリデカノイルアミノ−2−ナフトール、3−テトラデカノイルアミノ−2−ナフトール、3−ペンタデカノイルアミノ−2−ナフトール、3−ヘキサデカノイルアミノ−2−ナフトール、3−ヘプタデカノイルアミノ−2−ナフトール、3−オクタデカノイルアミノ−2−ナフトール、3−ノナデカノイルアミノ−2−ナフトール、3−イコサノイルアミノ−2−ナフトール、3−ヘンイコサノイルアミノ−2−ナフトール、3−ドコサノイルアミノ−2−ナフトールなどが挙げられる。
【0025】
式[2−2]で表される化合物としては、6−ドデカノイルアミノ−2−ナフトール、6−トリデカノイルアミノ−2−ナフトール、6−テトラデカノイルアミノ−2−ナフトール、6−ペンタデカノイルアミノ−2−ナフトール、6−ヘキサデカノイルアミノ−2−ナフトール、6−ヘプタデカノイルアミノ−2−ナフトール、6−オクタデカノイルアミノ−2−ナフトール、6−ノナデカノイルアミノ−2−ナフトール、6−イコサノイルアミノ−2−ナフトール、6−ヘンイコサノイルアミノ−2−ナフトール、6−ドコサノイルアミノ−2−ナフトールなどが挙げられる。
【0026】
式[2−3]で表される化合物としては、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −ドデカノイルヒドラジド、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −トリデカノイルヒドラジド、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −テトラデカノイルヒドラジド、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −ペンタデカノイルヒドラジド、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −ヘキサデカノイルヒドラジド、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −ヘプタデカノイルヒドラジド、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −オクタデカノイルヒドラジド、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −ノナデカノイルヒドラジド、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −イコサノイルヒドラジド、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −ヘンイコサノイルヒドラジド、N−3−[6' −(2' −ヒドロキシナフチル)]プロピオノ−N' −ドコサノイルヒドラジドなどが挙げられる。
【0027】
式[2−4]で表される化合物としては、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −ドデカノイルヒドラジド、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −トリデカノイルヒドラジド、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −テトラデカノイルヒドラジド、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −ペンタデカノイルヒドラジド、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −ヘキサデカノイルヒドラジド、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −ヘプタデカノイルヒドラジド、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −オクタデカノイルヒドラジド、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −ノナデカノイルヒドラジド、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −イコサノイルヒドラジド、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −ヘンイコサノイルヒドラジド、N−3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ−N' −ドコサノイルヒドラジドなどが挙げられる。
このような前記顕減色剤は、単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0028】
その他の顕減色剤
本発明においては、前述したような電子受容性化合物から選択される少なくとも1種が用いられるが、本発明の主旨を変えない範囲で、公知の顕減色剤を添加して用いることもできる。
【0029】
その他の樹脂
本発明において、可逆性感熱記録材料として、上述した、電子供与性化合物であるロイコ染料と、電子受容性化合物である顕減色剤が主として用いられるが、好適には、以下に示すバインダー樹脂等も用いられる。
【0030】
バインダー樹脂としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダなどのポリアクリル酸金属塩、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のラテックスなどがあげられ、また、染料前駆体および電子受容性化合物の分散性にすぐれ、書き換え耐久性にすぐれた可逆性感熱記録層が得られるため、特に熱可塑性樹脂の分子内に二重結合を導入して、放射線(可視光、紫外線、γ線などの光照射、および電子線、コバルト線、重粒子線などの粒子線照射)硬化性とした樹脂が好ましく、たとえば塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体にアクリル酸またはメタクリル酸をエステル重合させた樹脂等が使用できる。
【0031】
上述したその他の成分には、上述したようなバインダー樹脂以外に、電子供与性化合物(ロイコ染料)と電子受容性化合物(顕減色剤)とを主成分とする可逆性感熱記録層に、必要に応じて、さらに、分散剤、フッ素系などの界面活性剤、導電剤、充填剤、シリコーンなどの滑剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、発色安定化剤、消色促進剤などを適宜使用することができる。
【0032】
上述したような可逆性感熱記録材料中に含まれる電子供与性化合物であるロイコ染料と、電子受容性化合物である顕減色剤の量比は、使用する化合物の組合わせにより適宜選択されるが、ロイコ染料1モルに対して、顕減色剤は0.5ないし20モルの範囲で用いることができ、また良好な発色濃度を得る点から、好ましくは1.0ないし10モルの量で用いられる。前記範囲であれば、顕色および減色の際に良好な特性を有し、特に熱劣化することの少ない可逆性感熱記録材料が得られる。本発明に係る可逆性感熱記録材料は、印字/消去の際に、要するエネルギーが特に小さい。
【0033】
可逆性感熱記録材料において、発色を行うには加熱に引き続き急速な冷却を起こせば良く、消色を行うには、加熱後の冷却速度を遅くすれば良い。例えば、適当な熱源サーマルヘッド、レーザー光、熱ロール、熱スタンプ、高周波加熱、電熱ヒーターからの輻射熱、熱風等で比較的長い時間加熱すると、可逆性感熱記録層だけでなく支持体等も加熱される為に冷却速度が遅くなり、相分離状態(消色状態)になる。一方、上記したような加熱手段等の適当な方法で加熱した後、加熱部分に低温の金属ブロックなどを押し当てる等して急冷することにより、発色状態を発現させることができる。
【0034】
サーマルヘッド、レーザー光等を用いて極めて短い時間だけ加熱すると、加熱終了後に直ちに冷却(固化)が始まるため、発色状態を発現させることもできる。
従って、同じ加熱温度および/または同じ熱源を用いても、冷却速度を制御することにより、発色状態および消色状態を任意に発現させることができる。サーマルヘッドを用いる場合には、サーマルヘッドに印加される電圧、通電パルスの幅および間隔等を適宜調節して、印加熱量を調整して温度勾配を変化させ、徐冷または急冷させて、上記したような消色または発色を行うことができる。
【0035】
本発明に係る可逆性感熱記録材料は、熱源として、サーマルヘッドを使用することができる材料であり、サーマルヘッドによるオーバーライトも可能な材料である。このことは、本発明に係る可逆性感熱材料が、従来知られたものと何ら遜色なく、あるいは従来品のものよりも印字/消去における応答速度が速いことを意味している。しかも本発明に係る可逆性感熱記録材料は、この印字/消去の際の印加エネルギーが極めて小さくて済む。
【0036】
[可逆性感熱記録媒体]
次に、本発明に係る可逆性感熱記録媒体について説明する。
本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、上述した可逆性感熱記録材料を有している。このような可逆性感熱記録媒体は、以下に述べるような基材の上に前記したような可逆性感熱記録材料を有することが好ましい。特に、可逆性感熱記録材料を基材上に設け、この可逆性感熱記録材料上を保護する保護層などを適宜有することもできる。また、基材上に可逆性感熱記録材料を含む可逆性感熱記録層を直接あるいはアンカー層などの層を介して形成したり、剥離性基材上に可逆性感熱記録材料を含む可逆性感熱記録層と接着層とを有して転写シート状に形成したり、基材上に可逆性感熱記録材料を含む可逆性感熱記録層を有し、前記基材の裏面に接着層を有する接着シート状に形成したり、あるいはこれらの転写シートまたは接着シートを他の基材に転写あるいは接着したり等、適宜積層可能である。
【0037】
基材
基材としては、特に制限されず用いられるが、たとえば紙(不織布などの合成紙を含む)、樹脂フィルム(たとえばポリエチレンフタレートフィルム、ポリブチレンフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、さらにアクリルフィルム、塩ビフィルム、フッ素樹脂フィルムなど)、金属フィルム、ガラス(繊維状も含む)等が挙げられる。またこれらの複合体なども用いられる。さらに基材は前記したような材料のものであればよく、透明、半透明および不透明のいずれであってもよい。なお本発明に使用される基材としては、上記した材料以外のフィルム状のものであってもよく、目的に応じて適宜選択される。
【0038】
保護層
本発明に係る可逆性感熱記録媒体では、保護層は設けられなくともよい。また加熱印加手段として、特にサーマルヘッド等の加熱印加手段を用いて可逆性感熱記録媒体上を直接接触させて消去および/または書き込みを複数回行うことを目的として可逆性感熱記録媒体が製造される場合には、保護層が設けられるのが好ましい。保護層としては、通常保護層として使用されているものであれば特に制限なく用いられるが、本発明では、紫外線硬化型樹脂で構成することができ、この保護層には、シリカ等が含有されていてもよく、また、必要に応じて、さらに、分散剤、フッ素系などの界面活性剤、導電剤、充填剤、シリコーンなどの滑剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、発色安定化剤、消色促進剤などを含んでいてもよい。
【0039】
他の記録層
本発明においては、必要に応じて他の記録層を設けてもよい。このような記録層として、電気的、磁気的あるいは光学的に情報を記録できる材料を用いて形成することができる。たとえば電子チップ等の記録媒体、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、透明白濁などの変化を生じる他の感熱記録媒体などを挙げることができ、これらの記録媒体は、基材に対して可逆性感熱記録層が設けられている面と同じ面に、または前記した面と反対の面の少なくとも1部に層状に設けることができる。
【0040】
本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、印字および消去の際の印加エネルギーが少なくて済む。
【0041】
以下に、本発明を実施例及び参考例によって、さらに詳細に説明するが、本発明は、このような実施例及び参考例に限定されて解釈されるものではない。
【0042】
参考例1〜7、実施例8
(1)可逆性感熱記録層の形成
表1(なお表1中の実施例1〜7は参考例1〜7と読み替えるものとする)に示すロイコ染料20重量部と顕減色剤60重量部からなる主材と、以下の組成比の可逆性感熱記録材料形成用樹脂とを、2mmφのジルコニアビーズを加えてペイントシェーカーにより60分間分散して調製後、厚さ188μmの白色PET(ポリエチレンテレフタレート:東レ(株)製 商品名ルミラーE−22)基材上に♯30ワイヤーバーにて塗工し、70℃にて3分間乾燥し、160W/cmの紫外線照射ランプ存在下に、30m/分の速度で1回パスにより照射して、乾燥膜厚6μmの塗膜の可逆性感熱記録層を形成した。
【0043】
【0044】
【表1】
【0045】
(2)保護層の形成
上記した可逆性感熱記録層を形成した面上全面に、下記の組成比で調製した保護層形成用樹脂を容器に入れ、2mmφのジルコニアビーズを加えてペイントシェーカーにより5分間分散して形成した後、♯7ワイヤーバーにて塗工し、70℃にて3分間乾燥し、160W/cmの紫外線照射ランプ下に30m/分の速度で1回パスにて照射して、乾燥膜厚3μmの塗膜の保護層を形成し、可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0046】
【0047】
前記したようにして、各実施例及び参考例に係る可逆性感熱記録媒体を作製した。作製した可逆性感熱記録媒体について、以下に示す試験により、各実施例及び参考例の可逆性感熱記録媒体の評価を行った。結果を表3および表4に示す。なお以下表3及び表4中の実施例1〜7は参考例1〜7と読み替えるものとする。
【0048】
試験方法
上記した参考例、実施例および比較例により作製した可逆性感熱記録媒体を用いて、印字および消去を以下の方法で評価した。なお評価で用いた濃度の測定には、マクベス社製光学反射濃度計RD918(ビジュアルフィルター使用)を使用して測定した。
【0049】
(1)印字および消去条件
印字条件:サーマルヘッド(8dot/mm)を用い、0.44mJ/dotにより行った。
消去条件:130℃、1kg/cm2の条件で1sec.熱板を圧着することにより行った。
(2)耐久性試験:印字および消去を50回ずつ繰り返した。
【0050】
比較例1〜4
参考例1において、ロイコ染料を下記式[1−3]に換え、顕減色剤をそれぞれ表2に示す化合物に変えた以外は、参考例1と同様にして、可逆性感熱記録媒体を作製し、参考例1と同様の試験方法にて評価を行った。結果を表3および表4に示す。
【0051】
【化7】
【0052】
【表2】
【0053】
比較例5
参考例1において、顕減色剤を下記式[3]に変更した以外は参考例1と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製し、参考例1と同様の試験方法にて評価を行った。結果を表3および表4に示す。なお下記式[3]の顕減色剤は、酸成分のビス(ヒドロキシフェニル)酢酸とアミン成分を水に溶かして形成させた塩を用いた。
【0054】
【化8】
【0055】
比較例6
参考例5において、顕減色剤を前記式[3]に変更した以外は参考例5と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製し、参考例1と同様の試験方法にて評価を行った。結果を表3および表4に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
表3および表4に示すように、比較例5及び6の初期の地肌濃度が0.3を超えた高い値となっており、いわゆる地肌がかぶった状態であり、比較例1〜4は地肌濃度が0.13〜0.15であった。また地肌がかぶった状態の比較例5および6の初期印字濃度が0.8を超えた以外は0.60〜0.65であり、耐久性試験後においては、印字濃度が0.59〜0.62であった。初期消去濃度は地肌がかぶった状態の比較例5および6で0.4を超えており、比較例1〜4は0.14〜0.15程度であり、初期コントラストが、比較例2を除く全ての比較例で、0.5を下回っていた。これに対し本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、参考例1〜7及び実施例8に示すように、初期印字濃度が0.68〜0.75であり、耐久性試験後の印字濃度が0.66〜0.72であり、地肌がかぶった状態以外の比較例と比較して、印字濃度がより高い値となっており、低い印字エネルギーの印加でも画像がより鮮明になる傾向が見られた。また実施例及び参考例の初期消去濃度が0.15〜0.20であり、初期コントラストが、0.51〜0.56と、0.50を超え、参考例1〜7及び実施例8に示す可逆性感熱記録媒体は、画像情報を比較例と対比してもより明確に認識できることがわかった。
【0059】
このように、本件発明に係る電子受容性化合物と電子供与性化合物の特定の組み合わせた可逆性感熱記録媒体は、地肌濃度と、初期特性および耐久試験後の特性の全てについて、全体的な特性のバランスのとれたものであることがわかった。また同じ顕減色剤を使用した比較例2と、参考例2および参考例6とを比較すると、初期特性については、印字濃度が比較例2よりも10%を超えて改善され、初期コントラストが、7%を超えて改善されていた。また耐久性試験後の印字濃度を比較すると、参考例2および参考例6は、比較例2よりも9%を超えて改善されており、耐久性試験後のコントラストについては、10%を超えて改善されていた。
【0060】
【発明の効果】
本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、書込み/消去の際に要するエネルギーを低くすることができるので、熱劣化が起きにくく、耐久性が向上した可逆性感熱記録媒体が得られる。このため、本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、消去・印字する際に熱エネルギーを極力抑えることができるので、加熱機器の印字部分の劣化も防止することができる。
さらに本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、地肌濃度と初期印字・消去特性、および耐久試験後の印字・消去特性のいずれの特性もバランスがよく、全体的な特性が優れている。
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