JP4220111B2 - 耐候性鋼の防食方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性鋼の新規な塗装方法に関し、更に詳しくは、耐候性鋼の流れ錆(赤錆)を防止し、環境に調和した様々な着色の付与を可能にし、更に省工程で、長期耐候性及び防錆性を付与する耐候性鋼の防食方法に関する。本発明は、また、上記塗装方法に使用される着色塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に鋼構造物は、そのコストが安いということもあって、炭素鋼を使用する場合が多い。しかしながら、炭素鋼は、空気中の水分(降雨、湿気等)や酸素が鋼材表面に接触して、短期間で赤錆が発生する。この赤錆発生を防止する方法としては、塗料を塗装する方法が一般的である。この方法では、塗装の塗替を極力減らすため、耐久性の良好な塗装を施すことが一般的である。例えば、無機ジンクリッチペイント塗装→エポキシ樹脂塗料ミストコート→エポキシ樹脂塗料下塗塗装(2回)→エポキシ樹脂塗料中塗塗装→ポリウレタン樹脂塗料上塗塗装は、耐久性15年以上有する代表的な鋼材の塗装システムである。この塗装システムは、環境と調和した色彩を付与した美観及び長期の防錆性が維持できる長所があるが、一方でこの塗装システムは膜厚が厚く、更に6回塗りが必要なので、完成までに時間とコストがかかる。そこで、最近では鋼構造物に耐食性の良い耐候性鋼を使用する場合が増加してきている。
【0003】
耐候性鋼は、一般的にP、Cu、Cr、Ni等の元素を添加した低合金鋼である。この鋼材は屋外に於て十数年で腐食に対して保護作用のある錆(以下、「保護錆」という。)を形成し、以後防錆処理作業を不要とする、いわゆるメンテナンスフリーになるといった特徴を有している。
この腐食に対して保護作用のある錆とはいわゆる錆をもって錆を制すものであって、結晶水を多量に含む無定型オキシ水酸化鉄が主体であり、これが緻密で密着性の良い保護錆の形成に寄与するものと考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、耐候性鋼の鋼材を無処理のままで使用すると保護錆が形成されるまでの期間中に、赤錆や黄錆等の浮き錆や流れ錆を生じてしまい、外見的又は審美的に好ましくないばかりでなく、周囲環境の汚染原因にもなると云う問題点を有していた。
また、従来例において、耐候性鋼の表面に保護錆を得るための塗装による表面処理法があるが、それでも保護錆が形成されるまでに数年間の長い期間を要し、この間に塗膜自体の白化、ふくれ、剥離といった問題点を引き起こしている。また、発生した錆を目立たなくするために、色調はさび色に統一されており、炭素鋼への塗装のように環境と調和した様々な色彩を付与する配慮が全くなされていなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、耐候性鋼表面に、耐候性の良好なバインダー樹脂、無公害防錆顔料、導電性樹脂及び着色剤を含む塗料を塗装することで、防錆性及び耐候性を長期維持し、更に任意の着色を可能にした、省工程の耐候性鋼の防食方法を完成したものである。
即ち、本発明は、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコーン樹脂及び湿気硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のバインダー樹脂と、無公害防錆顔料と、導電性樹脂とを含有し、かつ、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が80%以上の塗膜を形成する着色塗料を、耐候性鋼表面に塗装する耐候性鋼の防食方法に関する。また、本発明は、耐候性鋼の防食に使用される着色塗料であって、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコーン樹脂及び湿気硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のバインダー樹脂と、無公害防錆顔料と、導電性樹脂とを含有し、かつ、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が80%以上の塗膜を形成する塗料に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いる耐候性鋼は、SPA材、SMA材と言われ、JISに規定されているものであり、錆等が付着している場合は、前処理としてブラストや酸洗を行なったものが望ましい。
【0007】
次に、本発明で使用する塗料について説明する。
本発明で使用する塗料は、省工程のため1コートフィニッシュタイプが望ましく、しかも長期の防錆性及び耐候性を有し、更に希望に合致した任意の着色ができることである。従って、本発明で使用する塗料は、バインダー樹脂、無公害防錆顔料、導電性樹脂、着色剤及び必要に応じて配合されるバインダー樹脂用の硬化剤、硬化促進剤や、シランカツプリング剤、溶媒、中和剤、更には分散剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などの各種添加剤から構成される。塗料の形態は、有機溶剤系や、水系、無溶剤系を問わない。
【0008】
塗料を構成する結合剤であるバインダー樹脂は、耐候性の良好な樹脂を使用することが必要である。即ち、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が80%以上、好ましくは90%以上維持する塗膜を形成する樹脂である。光沢保持率が80%未満であると塗膜に白化、フクレ、剥離等が生じやすくなるので好ましくない。なお、本発明でいう、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーターとは、JIS K5400で規定されるサンシャインカーボンアーク灯式の、実際の屋外暴露と相関のある促進耐候性試験機であり、光沢保持率とは、JIS K5400で規定される60度鏡面光沢度から下記の式で計算された、光沢の残存の程度をいう。
【0009】
光沢保持率=A×100/B(%)
ここで、Aは、サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢である。また、Bは、初期光沢である。
このような耐候性の良好なバインダー樹脂の具体例としては、フッ素樹脂や、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂及びこれら樹脂に必要に応じて硬化剤や硬化促進剤を併用したものである。
これら樹脂は、前述の光沢保持率を有する塗膜を形成するものであれば、従来から常温硬化型塗料に通常使用されている公知の樹脂が特に制限なく利用可能である。
【0010】
具体的には、フッ素樹脂は、例えば、フルオロオレフィンに基づく含フッ素共重合体に、水酸基や、カルボン酸基、アミノ基、シリル基等の硬化反応性部位を含有させた樹脂であり、該樹脂は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等に代表されるポリイソシアネート硬化剤や、ジブチルチンジラウリレート、テトラプロピルチタネート、オクチル酸コバルト等に代表される硬化促進剤を必要に応じて併用して使用される。
このような樹脂としては、例えば、特開昭57−34107号や、特開昭63−196644号、特開平1−247448号、特開平2−75611号、特開平3−231906号、特開平11−71546号等の各種公報に記載されている。
【0011】
アクリル樹脂は、従来から通常使用されているアクリル系単量体混合物からなる共重合体に、水酸基や、カルボン酸基、アミノ基、エポキシ基等の硬化反応性部位を含有した樹脂であり、該樹脂は、前述の硬化剤や硬化促進剤を必要に応じて併用して使用される。
アクリルシリコーン樹脂は、前述のアクリル樹脂に、硬化反応性部位としてシリル基を含有させる以外は、アクリル樹脂と同様である。
ポリエステル樹脂は、従来から通常使用されているオイルフリーポリエステル樹脂及びアルキド樹脂のいずれをも包含するものであり、フタル酸や、コハク酸、トリメリット酸等の多塩基酸成分とエチレングリコールや、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等のポリオール成分を縮合重合させて得られる樹脂、もしくは、その油変性樹脂であり、該樹脂は、前述の硬化剤や硬化促進剤を必要に応じて併用して使用される。
【0012】
湿気硬化型ウレタン樹脂は、水酸基を有するフッ素樹脂や、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、キシレン樹脂等のポリオール樹脂と過剰量のポリイソシアネートとの混合物、もしくは両者の反応物であり、遊離のイソシアネート基を有し、空気中の水分と反応してウレア結合、ビュレット結合などを形成し、高分子化して硬化する樹脂である。こらの樹脂の水酸基価は、例えば、20〜500mgKOH/g、好ましくは、50〜300mgKOH/gが適当である。
塗料を構成する無害防錆顔料は、クロムフリー、鉛フリーの防錆顔料であり、具体的には、アルミニウム粉末や、亜鉛粉末の他、リン酸アルミニウムや、リン酸亜鉛、ポリリン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、シアナミド亜鉛、シアナミド亜鉛/カルシウム、ハイドロカルマイト、ハイドロカルマイト被覆の亜リン酸亜鉛やリン酸亜鉛等の防錆顔料が代表的なものとして挙げられ、これらは一種もしくは二種以上の混合物として用いられる。
【0013】
これら防錆顔料は、バインダー樹脂(及び硬化剤)100質量部に対して、例えば、1〜80質量部、好ましくは、5〜60質量部添加するのが良い。1質量部未満では、防錆性が不充分で、一方、80質量部を越えると、塗料の安定性が悪くなる傾向にある。
本発明の塗料に使用される導電性樹脂は、耐候性鋼表面を不動態化するとともに、均一な電位にすることで防錆効果を向上させるために配合するものである。このような効果を有する本発明でいう導電性樹脂とは、樹脂自身に導電性を有するものであり、表面抵抗値が、例えば、107Ω/cm2以下、好ましくは、106Ω/cm2以下の樹脂であり、具体的には、π−共役二重結合を有するアセチレンや、ピロール、チオフェン、ベンゼン、あるいはこれらの置換体の(共)重合物が代表的なものとして挙げられる。特に好ましい導電性樹脂としては、ポリアニリンや、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−P−フェニレンピニレンあるいはこれらの変性樹脂や混合物が挙げられる。なお、これら導電性樹脂は、通常無機酸や有機酸でドープされた状態で使用するが、ドープされていなくともよい。
【0014】
これら導線性樹脂は、バインダー樹脂(及び硬化剤)100質量部に対して、例えば、2〜50質量部、好ましくは、10〜35質量部添加するのが良い。
2質量部未満では、耐候性鋼表面を電位的に均一化することが困難で、防錆効果の向上が認められず、一方、50質量部を越えると、塗料の安定性が悪くなる傾向にある。
更に、本発明においては塗料構成成分として、樹脂−防錆顔料−耐候性鋼素材を複合化し、密着性を向上させるためにシランカップリング剤を配合するのが好ましい。
【0015】
該シランカップリング剤の具体例を挙げると、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシランや、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチル、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン等が代表的なものとして挙げられる。
シランカップリング剤は、バインダー樹脂(及び硬化剤)100質量部に対して、例えば、0.1〜8質量部、好ましくは、1〜5質量部添加することが適当である。0.1質量部未満の場合、複合化の効果は弱く、一方、8質量部越えると塗料の安定性が低下する傾向にある。
【0016】
塗料において、要望に合致した着色を施すための着色顔料としては、具体的には、二酸化チタンや、酸化亜鉛等の白色顔料、カーボンブラック、黒鉛等の黒色顔料、モリブデートオレンジ、パーマネントカーミン、キナクリドンレッド等の赤色顔料、キノフタレンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等の緑、青顔料等の、通常塗料用に使用されている各色の顔料が代表的なものとして挙げられる。更に、体質顔料も併用してもよい。着色顔料は、その種類によっても異なるが、バインダー樹脂(及び硬化剤)100重量部に対して、例えば、0.1〜70質量部添加するのが適当である。
次に耐候性鋼の塗装方法について述べる。ブラスト処理した、あるいは全く処理しない耐候性鋼に対して、上記塗料をハケや、スプレー、ローラー等の手段で乾燥膜厚が、例えば、30〜200μm、好ましくは、50〜90μmとなるように塗装し、例えば、自然乾燥もしくは100℃以下の温度で強制乾燥させる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明について、実施例により、更に詳細に説明する。
なお、実施例中「部」、「%」は質量基準で示す。
実施例1
平均表面粗さ30μmのアルミナブラスト処理を施した、3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)の表面に、下記フッ素樹脂塗料を乾燥膜厚60μmになるよう塗装し、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性評価結果を表1に示す。
<主剤成分>
フッ素樹脂溶液注 1) 154.0部
亜リン酸亜鉛 22.8部
γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 4.9部
導電性ポリアニリン粉末注 2) 30.0部
二酸化チタン 55.4部
キシレン 61.6部
注1)旭硝子社製商品名「LF936」(樹脂の水酸基価45mgKOH/g、数平均分子量7000;固形分65%)
注2)Allied-Signal社製商品名「VERSICON」(表面抵抗値106Ω/ cm2)
<硬化剤成分>
ヘキサメチレンジイソシアネート 17.8部
酢酸ブチル 53.6部
【0018】
実施例2
実施例1と同様のブラスト処理を施した耐候性鋼に、下記アクリル樹脂塗料を乾燥膜厚60μmになるよう塗装し、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性評価結果を表1に示す。
<主剤成分>
アクリル樹脂溶液注 3) 154.0部
トリポリリン酸アルミニウム 25.0部
導電性ポリピロール樹脂注 4) 45.0部
γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 4.9部
キナクリドンレッド 30.8部
キシレン 43.1部
注3)大日本インキ化学工業社製商品名「アクリディック55−129」(樹脂の水酸基価80mgKOH/g、数平均分子量
12000;固形分65%)
注4)Polarid Corp.社商品名「ICP117」(表面抵抗値106Ω/cm2)
<硬化剤成分>
ヘキサメチレンジイソシアネート 27.7部
酢酸ブチル 75.8部
【0019】
実施例3
実施例1と同様のブラスト処理を施した耐候性鋼に、下記アクリル樹脂塗料を乾燥膜厚60μmになるよう塗装し、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。
その塗装鋼の耐候性及び防食性評価結果を表1に示す。
<主剤成分>
アクリル樹脂溶液注 3) 154.0部
モリブデン酸亜鉛 27.5部
導電性ポリピロール樹脂注 5) 21.0部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 4.9部
キノフタレンイエロー 30.8部
キシレン 43.1部
注5)アキレス社製商品名「STポリ」(表面抵抗値104Ω/cm2)
<硬化剤成分>
ヘキサメチレンジイソシアネート 27.3部
酢酸ブチル 75.8部
【0020】
実施例4
実施例1と同様のブラスト処理を施した耐候性鋼に、下記アクリルシリコーン樹脂塗料を乾燥膜厚60μmになるよう塗装し、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性評価結果を表1に示す。
<主剤成分>
アクリルシリコーン樹脂溶液注 6) 200.0部
シアナミド亜鉛 54.4部
導電性ポリアニリン粉末注 2) 32.5部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 3.2部
キノフタレンイエロー 40.0部
キシレン 56.0部
注6)日本ユピカ社製商品名「ユピカコートAC3765」
(数平均分子量12000のアルコキシシリル基を含有するアクリル樹脂;固形分50%)
<硬化剤成分>
ジブチルチンジラウレート 12.8部
キシレン 80.0部
実施例5
実施例1と同様のブラスト処理を施した耐候性鋼に、下記湿気硬化型ウレタン樹脂塗料を乾燥膜厚70μmになるよう塗装し、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性評価結果を表1に示す。
キシレン樹脂注 7) 100.0部
芳香族ポリイソシアネート注 8) 310.0部
導電性ポリピロール樹脂注 5) 81.6部
ハイドロカルマイト被覆亜リン酸亜鉛 210.0部
脱水剤注 9) 16.0部
キシレン 290.0部
キナクリドンレッド 30.8部
注7)三菱瓦斯化学工業社製商品名「ニカノール3L」(キシレン/ホルムアルデヒド樹脂)
注8)住友バイエルウレタン社製商品名「スミジュールE21-1」
注9)住友バイエルウレタン社製商品名「アディティブT1」
【0021】
実施例6
実施例1と同様のブラスト処理を施した耐候性鋼に、下記ポリエステル樹脂塗料を乾燥膜厚が60μmになるよう塗装し、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性評価結果を表1に示す。
<主剤成分>
ポリエステル樹脂溶液 注 10) 200.0部
モリブデン酸アルミニウム 32.0部
γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 5.8部
導電性ポリアニリン粉末 注 2) 30.0部
二酸化チタン 56.4部
キシレン 68.4部
注10)大日本インキ化学工業社製商品名「バーノックD−220」
(樹脂の水酸基価200mgKOH/g、固形分100%)
<硬化剤成分>
ヘキサメチレンジイソシアネート 125.0部
酢酸ブチル 150.0部
【0022】
比較例1
実施例1と同様のブラスト処理を施した耐候性鋼を、全く塗装しない状態で、耐候性及び防食性評価結果を表1に示す。
比較例2
実施例1と同様のブラスト処理を施した耐候性鋼に、防錆顔料及びシランカップリング剤を除いたフッ素樹脂塗料を乾燥膜厚60μmになるよう塗装し、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性評価結果を表1に示す。
比較例3
実施例1と同様のブラスト処理を施した耐候性鋼に、導電性ポリアニリン粉末を除いたフッ素樹脂塗料を乾燥膜厚60μmになるよう塗装し、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性評価結果を表1に示す。
【0023】
比較例4
実施例1と同様のブラスト処理を施した耐候性鋼に、下記エポキシ樹脂塗料を乾燥膜厚60μmになるよう塗装し、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。その塗装鋼の耐候性及び防食性評価結果を表1に示す。
<主剤成分>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液 注 11) 290.0部
リンモリブデン酸アルミニウム 29.6部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 6.4部
二酸化チタン 72.0部
メチルエチルケトン 80.0部
注11)油化シェルエポキシ社製商品名「エピコート1001」
(樹脂のエポキシ当量450〜500g/eq;固形分50%)
<硬化剤成分>
ポリアミドアミン溶液注 12) 101.6部
キシレン 172.4部
注12)ヘンケル白水社製商品名「DSX1020」(ポリアミドアミンのアミン価75mgKOH/g;固形分65%)
【0024】
表1 耐候性、防食性評価結果及び色味、光沢保持率
【0025】
注13)サンシャインウエザーメーター300時間後の光沢保持率(%)
注14)屋外暴露試験500日
注15)塩水噴霧試験1500時間
表1からも明らかな通り、本発明の実施例においては、任意の色に着色でき、また優れた耐候性及び防食性を有していた。一方、無塗装の比較例1、防錆顔料を含有しない比較例2では、いずれも赤錆が発生した。また、導電性樹脂を含有しない比較例3では、若干赤点錆が発生した。また、バインダー樹脂としてエポキシ樹脂のみを使用した比較例3では、チョーキングが発生した。
【0026】
【発明の効果】
本発明の方法により、防錆性及び耐候性を長期間保持し、更に任意の着色を可能にした、省工程の耐候性鋼の防食が可能となる。
Claims (3)
- フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコーン樹脂及び湿気硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のバインダー樹脂と、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランと、無公害防錆顔料と、導電性樹脂とを含有し、かつ、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が80%以上の塗膜を形成する着色塗料を、耐候性鋼表面に塗装することを特徴とする耐候性鋼の防食方法。
- 前記塗料が、バインダー樹脂100質量部に対して、無公害防錆顔料を1〜80質量部、導電性樹脂を2〜50質量部含有する、請求項1の防食方法。
- 耐候性鋼用の着色塗料であって、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコーン樹脂及び湿気硬化型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種のバインダー樹脂と、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランと、無公害防錆顔料と、導電性樹脂とを含有し、かつ、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が80%以上の塗膜を形成することを特徴とする塗料。
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