JP4219751B2 - 型枠兼用断熱パネル及びそれを用いた施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート壁又はコンクリートスラブの施工時に用いる型枠兼用断熱パネルと該型枠兼用断熱パネルを用いた施工方法、及び型枠兼用断熱パネル用の断熱板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物の省エネルギー化の一手段としてコンクリート壁面に断熱施工を施すことが広く行われ、断熱施工における断熱板として、断熱性や軽量性に優れていることから発泡ポリスチレンのような合成樹脂発泡体が広く採用されている。また、施工を簡略化するために、合成樹脂発泡体である断熱板の一方の面に桟木を取り付けた型枠兼用断熱パネルが用いられようになっている。特許文献1(特開2002−201748号公報)には、そのような型枠兼用断熱パネルの一例に記載されている。
【0003】
図12に上記の型枠兼用断熱パネル20の正面図(図12a)と背面図(図12b)を、また、図13に図12のa−a線での断面図を示すように、この型枠兼用断熱パネル20は、一方の面に所要本数(図示の例では4本)の凹溝22を形成した例えば発泡ポリスチレン板である断熱板21と、その凹溝22に嵌め込まれる桟木30とで構成される。各凹溝22は断面矩形状であり、凹溝22の底部には凹溝22の溝幅と同じ溝幅を持つ所要数の凹陥部24が所定の間隔をおいて形成され、各凹陥部24の底面には、該底面の面積よりも狭い開口面積を持つ貫通孔25が、断熱板21の他方の面に抜けるようにして形成されている。桟木30は凹溝22と同じ断面形状であり、その厚さは凹溝22の深さよりも大きい。そして、断熱材21の凹溝22内に嵌め込んだときに該凹溝22に形成した貫通孔25に対向することとなる位置には、釘31のような突起体31が断熱板21の他方の面から突出しないようにして設けられている。
【0004】
この型枠兼用断熱パネル20を用いてコンクリートスラブを施工するには、立設した支柱を利用して桟木30側が室内側(下面側)となるようにして水平に建て込み、その上から所要の厚さにコンクリートを打設する。図14はコンクリート打設後の状態を示しており、現場打ちされたコンクリートCは、型枠兼用断熱パネル20における断熱板21に形成された貫通孔25から凹陥部24に流入し、そこで硬化する。支柱などを取り外すことにより、室内側に型枠兼用断熱パネル20を張り付けたコンクリートスラブ50が作られる。凹陥部24内に流入し硬化したコンクリート26は、断熱板21に対してはアンカーとして機能し、コンクリートスラブ50から断熱板21が不用意に剥離するのを防ぐ。また、凹溝22内に嵌め込まれた桟木30は、接着剤による固定力に加えて、凹陥部24の部分でのコンクリートCとの接着力が付加されることから、桟木30と断熱板21の一体化も一層安定する。桟木30に打ち込んだ釘31もアンカー材として機能し、断熱板21に対する桟木30の固定は一層確実となる。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−201748号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記した型枠兼用断熱パネルを用いて、コンクリートスラブあるいは建物側壁の施工を行ってきているが、施工現場の都合により、桟木30として幅の狭いものを用いることが必要となった場合に、桟木30と断熱板21との間の付着力を一層確実なものにすべきであることを経験した。また、厚みの薄い断熱板21を用いる場合に、凹溝22の深さが浅くなることから、接着剤による桟木30と凹溝21との間の付着力を一層確実なものにすべきであることを経験した。
【0007】
本発明はそのような事情に鑑みてなされたものであり、合成樹脂発泡体である断熱板に形成した凹溝内に桟木を挿入して形成される型枠兼用断熱パネルにおいて、断熱板と桟木との付着力を一層確実なものすることのできる改良された形態の型枠兼用断熱パネルを提供することを目的とする。また、該型枠兼用断熱パネルを用いた施工方法、及び型枠兼用断熱パネル用の断熱板を提供することも目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、コンクリート壁又はコンクリートスラブの施工時に用いる型枠兼用断熱パネルであって、合成樹脂発泡体である断熱板とその一方の面に配置される複数本の桟木とからなり、桟木は断熱板の該一方の面に形成された凹溝内に嵌め込まれており、該一部又は全部の凹溝には断熱板の他方の面に抜ける複数個の貫通孔が形成されており、一部又は全部の貫通孔が形成される部分の凹溝の溝幅は他の部分よりも広くされており、貫通孔は該幅広となった部分に連通していることを特徴とする型枠兼用断熱パネルを開示する。
【0009】
上記の型枠兼用断熱パネルは、凹溝内に桟木を嵌め込み接着剤で固定した状態で、上記従来の型枠兼用断熱パネルと同様に、桟木を取り付けた面がコンクリート流し込み側と反対の側となるようにして、すなちわ、コンクリート壁の場合には桟木側が室内側になるようにして、また、コンクリートスラブの場合には桟木側が天井面側になるようにして、建て込まれ、コンクリートが打設される。打設されたコンクリートは、断熱板に形成された貫通孔内に流れ込み、凹溝内に取り付けた桟木の上面と接触する。
【0010】
一部又は全部の貫通孔が形成される部分の凹溝の溝幅は他の部分よりも広くなっており、貫通孔内に流入したコンクリートはさらに桟木の側面と接触しながらその幅広となった部分にも流入し、断熱板の前記一方の面にまで達する。そのために、桟木とコンクリートとの接触面積は、従来の型枠兼用断熱パネルと比較して、前記桟木の側面と接触している分だけ広くなり、その面積分だけ、コンクリートが硬化したときの桟木と断熱板と接着力は大きくなる。結果として、桟木の幅が狭いものであっても、また、凹溝の深さが浅いものであっても、桟木と断熱板との間に所要の付着力を得ることができる。また、硬化したコンクリートは型枠兼用断熱パネルとコンクリートとの一体化にも有効に機能する。
【0011】
さらに、凹溝の溝幅が他の部分よりも広くなっている部分と貫通孔が連通していることにより、貫通孔内にコンクリートが入り込んできたときに、その溝幅が広くなった部分が空気抜きとしても作用し、コンクリートの充填性が良好となる。また、前記溝幅が広くなった部分を通ってコンクリート(ノロ)が一方の面にまで到達したことを作業者が目で確認することにより、コンクリートの充満完了を知ることができ、無駄にバイブレーションを行うようなことを回避することもできる。
【0012】
溝幅が広くなった部分の溝幅は、2〜4mm程度がよい。それより狭いとコンクリートが桟木の側面に完全に回り込まないおそれがあり、4mm以上だとコンクリート打設時の圧力に負けて断熱板から桟木が外れるおそれがある。また、あまり広いと、コンクリート(ノロ)が流れ出すぎて、表面を汚すこととなる。
【0013】
貫通孔の水平断面形状は任意であり、円や長円形でもよく、矩形状でもよい。また、断面積に変化のない形でもよく、前記他方の面に向けて断面積が狭くなる形状であってもよい。その際に、途中に段差を持つ形状としてもよい。断面積が狭くなる形状とすることにより、そこで硬化したコンクリートは断熱板に対してアンカーとしての機能を果たすようになり、打設コンクリートとの一体性は一層強固になる。
【0014】
型枠兼用断熱パネルの好ましい態様において、凹溝内に嵌め込まれた桟木は、凹溝の底面に形成した貫通孔に入り込むようにして、断熱板の他方の面からは突出しない長さの突起体を備えるようにする。この態様では、突起体がコンクリート内に埋め込まれた状態で一体化することから、突起体がアンカー材としての機能を果たすこととなり、断熱板に対する桟木の固定は一層確実になる。前記突起体は、コンクリートにより一体に把持されうるものであれば任意であり、通常の釘やビスでもよく、また、頭部にそれ用の特別の膨出部を形成したものであってもよい。
【0015】
本発明は、また、上記の型枠兼用断熱パネルを、桟木を取り付けた面がコンクリート流し込み側と反対の側となるようにして建て込み、桟木を取り付けていない面側にコンクリートを流し込み、コンクリートを硬化させることを特徴とする型枠兼用断熱パネルを用いたコンクリート壁又はコンクリートスラブの施工方法をも開示する。
【0016】
本発明は、さらに、上記した型枠兼用断熱パネル用の断熱板として、板状の合成樹脂発泡体からなり、一方の面に桟木を挿入するための凹溝が形成されており、一部又は全部の凹溝には断熱板の他方の面に抜ける複数個の貫通孔が形成されており、一部又は全部の貫通孔が形成される部分の凹溝の溝幅は他の部分よりも広くされており、貫通孔は該幅広となった部分に連通していることを特徴とする型枠兼用断熱パネル用断熱板も開示する。
【0017】
本発明において、断熱板の素材としての合成樹脂発泡体は、ポリスチレン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、硬質ウレタン発泡体、フェノール発泡体、イソシアネート発泡体、エポキシ発泡体などのものが挙げられる。発泡性樹脂粒子を成形型内に充填して加熱水蒸気などで加熱膨張させ互いに融着させてなる発泡ポリスチレン、その他の発泡体からなるビーズ型内発泡成形体が好適に用いられる。断熱板の厚さは特に限定されるものでなく、施工環境に応じ任意に選定しうる。
【0018】
桟木を構成する材料として特に制限はないが、止め具として用いられる釘やビスに対する保持力が安定していること、軽量であること、などの理由から木材あるいは合成木材、加工木質材のような木質材料が適している。他に、ポリスチレン、ポリプロピレン、ウレタンなどの低発泡樹脂材料、軟質プラスチック材料などであってもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る型枠兼用断熱パネル及びそれを用いた施工方法について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、前記図12〜図14に示した型枠兼用断熱パネル20における各部材と実質的に同じ機能を奏する部材には同じ符号を用いて説明する。図1は、本発明による型枠兼用断熱パネル20の一実施の形態を示す正面図(図1a)と背面図(図1b)であり、この例では、図2に示す900×2600×50(mm)程度の大きさの発泡ポリスチレン板である断熱板21と、図3に示す桟木30とで構成される。断熱板21はビーズ型内発泡などにより成形されるものであり、図示の例では、断熱板21の表面側に4周から所定の距離をおくようにして長手方向に延びる所要本数(図示の例では7本)の凹溝22が形成されている。
【0020】
図1aでのa−a線による断面図である図4、及び、図1aのb−b線による断面図である図5にも示すように、各凹溝22は断面矩形状であり、全長にわたり断熱板21の厚みの1/3〜1/2程度の深さとされる。そして、図2で最上段と最下段の凹溝22aの除く5本の凹溝22の底部23には、所定の間隔をおいて断熱板21の他方の面に抜ける所要数の貫通孔26が形成される。なお、図4の断面図では、比較する意味で、貫通孔26が形成されている部分の断面(図の左側)と形成されていない部分の断面(図の右側)との双方を同じ図面に示している。
【0021】
図示の例において、該貫通孔26は途中に段差部27を有し、段差部27より下方は平面視矩形状である第1領域26aとされ、段差部27より上方は円筒状の第2領域26bとされている。図4に示すように、第1領域26aの溝幅aは凹溝22の溝幅bよりも広い。そして、凹溝22の前記第1領域26aに繋がる部分は、その両側が(a−b)/2の幅だけ溝幅が広くされた部分29とされている。第2領域26bの直径は凹溝22の溝幅bとほぼ同じである。なお、最上段と最下段の凹溝22aに上記貫通孔26を設けないのは、断熱板21と桟木30との接着剤による接着強度をより強くして型枠兼用断熱パネル20の全体強度を上げるためであるが、貫通孔26を形成しても差し支えない。
【0022】
桟木30は、断熱材21の凹溝22内に嵌め込んで用いられる。桟木30は、通常矩形などの断面形状を持つ長尺部材であり、図2に示す断熱板21に図3に示す桟木30を取り付けることより、図1に示す型枠兼用断熱パネル20が得られる。図4及び図5に示す断面図からわかるように、この例では、桟木30は断熱板21の一方の表面からわずかに飛び出した状態となっているが、両者は同じ平面であってもよい。また、桟木30に打ち込んだ釘31の頭部膨出部32は前記貫通孔26内に位置した状態となる。なお、図4,図5では、図面を見やすくするに、釘31は省略している。
【0023】
図6は、本発明による型枠兼用断熱パネルの他の実施の形態を示す正面図(図6a)と背面図(図6b)であり、図1に相当している。また、図7は、図6aでのa−a線による断面図、図8は、図6aのb−b線による断面図であり、それぞれ図4,図5に相当している。この型枠兼用断熱パネル20Aは、断熱板21の4周にも凹溝が形成されている点で、上記した型枠兼用断熱パネル20と異なっている。断熱板21の内側部に形成される5本の凹溝22には同様な貫通孔26が形成されるが、4周の凹溝には貫通孔26は形成されない。そして、上下の側辺には釘などの突起体を有しない形状の桟木30aが取り付けられ、内側部に形成される5本の凹溝22には、図3に示したと同じ桟木30が取り付けられる。凹溝22に形成される溝幅が広くされた部分29などの構成は図1〜図5に示した型枠兼用断熱パネル20と同じであり、同じ機能を奏する部材には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0024】
上記の型枠兼用断熱パネルを用いてコンクリート壁あるいはコンクリートスラブを施工する場合の一例を説明する。上記した型枠兼用断熱パネル20,20Aを適宜使い分けながら、壁部のコンクリート型枠の建て込みと天井スラブの水平型枠の組み立てを行う。図9に示す例では、コンクリート壁40の建物側の型枠には型枠兼用断熱パネル20Aが用いられ、外側の型枠には従来のコンパネ材6を用いている。型枠兼用断熱パネル20Aは桟木30、30a側が室内側となるようにして建て込まれ、該型枠兼用断熱パネル20Aとコンパネ材6とにセパレータ9を所要本数装着した後、両外面部に端太材7,8を組み付けて安定させる。なお、図示の例では、型枠兼用断熱パネル20Aの桟木30に釘31を打ち付けたものを用いている。
【0025】
天井のコンクリートスラブ50に対しては、立設した支柱51に根太52を横架し、その上に、型枠兼用断熱パネル20を桟木30側が室内側(下面側)となるようにして水平に載置して組み立てる。壁側の型枠兼用断熱パネル20Aとスラブ側の型枠兼用断熱パネル20との端部同士の衝接部(コーナー部)は、断熱板21における桟木30の配置位置の違いから、図9に示されるように、互いの桟木同士が密接に衝接した状態で建て込むことができる。
【0026】
そのようにして側壁及び天井の型枠を作り上げた後、壁部を形成することとなる空間部にコンクリートCを流し込み、連続して天井部分にも所要の厚さにコンクリートCを打設する。必要な場合には、バイブレーションをかける。図10aに断面で、また図10bに一部を破断した斜視図で示すように、現場打ちされたコンクリートCは、型枠兼用断熱パネル20,20Aにおける断熱板21に形成した貫通孔26(第2領域26bから第1領域26a)内に流れ込み、凹溝22内に取り付けた桟木30の上面と接触する。さらに、そこから凹溝22に形成した溝幅が広くされた部分29内にも流れ込んで、断熱板21の桟木を嵌め込んだ面の表面にまで達する。そのために、桟木30とコンクリートCとの接触面積は、従来の型枠兼用断熱パネルと比較して、コンクリートCが前記桟木30の側面と接触している分だけ広くなり、その面積分だけ、コンクリートが硬化したときの桟木30と断熱板21と接着力は大きくなる。
【0027】
すなわち、凹溝22内に嵌め込まれた桟木30は、コンクリートCと広い面積で接触することとなり、接着剤による固定力に加えてコンクリートとの接着力も付加されることから、コンクリート硬化後の桟木30と断熱板21の一体化は一層安定する。特に、図示の例のように、桟木30が釘31のような突起体を有する場合には、貫通孔26内に流れ込んだコンクリートCは釘31をコンクリート内に包み込んだ状態で硬化することから、釘31がアンカー材として機能するようになり、断熱板21に対する桟木30の固定も一層確実となる。貫通孔26を構成する第1の領域26a内に流入して硬化したコンクリートは、断熱板21に対してアンカーとして機能し、コンクリート壁40あるいはコンクリートスラブ50から断熱板21が不用意に剥離するような事態を確実に回避する。
【0028】
貫通孔26及び溝幅が広くされた部分29の双方にコンクリートが充満したことを、例えば、溝幅が広くされた部分29の開放端を目視することにより確認した後、コンクリートの硬化を待つ。硬化後に、コンパネ材6とセパレータ9や端太材7,8、あるいは支柱51や根太材52を取り外す。それにより、一方の面(室内側)に型枠兼用断熱パネル20Aを張り付けたコンクリート壁40と室内側に型枠兼用断熱パネル20を張り付けたコンクリートスラブ50とが同時に作られる。
【0029】
本発明において、凹溝22と、貫通孔26と、凹溝の溝幅が広くされた部分29との相互の関係は、上記したもの以外に多くのものが存在する。図11はそのいくつかの例の一部分を、図1aに相当する正面図(図11での左側の図)と、図4に相当する断面図(図11での右側の図)とで示している。なお、図11dには、比較する意味で、前述した従来技術での型枠兼用断熱パネルにおける対応する図、すなわち、凹溝が溝幅が広くされた部分29を有しない場合の例を示しており、また、図11aは図1〜図10に示した場合のものを再び示している。
【0030】
図11bでは、前記凹溝の溝幅が広くされた部分29にさらに数ミリ程度の深さである上下方向の棒状の溝29pを設けている。このようにすることにより、さらにコンクリートとの付着強度が向上する。図11cでは、貫通孔26の第2領域26bの孔径が凹溝の溝幅よりも狭くされている。
【0031】
図11e〜図11gのものは、貫通孔26が断面積に変化のない形状、すなわち、段差部27を有しない形状の場合である。図11eは、貫通孔26の直径a1が凹溝22の溝幅bよりも大きな円筒形であり、該円筒形の形状がそのまま凹溝22の側壁にまで連続して形成されている。それにより、貫通孔26が位置する凹溝22の側壁部分には図11eに29aとして示すような「溝幅が広くされた部分」が形成され、そこに流入するコンクリートが桟木30の側面と一体となることにより、図1〜図10に示したものと同様に、桟木とコンクリートとの付着強度は向上する。
【0032】
図11fは貫通孔26の水平断面形状は矩形状であり、その横幅a2は凹溝22の溝幅bよりも広くされている。そして、その断面形状がそのまま凹溝22の側壁にまで連続形成されている。それにより、貫通孔26が位置する凹溝22の側壁部分には図11fに29bとして示すような「溝幅が広くされた部分」が同様に形成される。図11gは該側壁部分にさらに図11bに示した棒状の溝29pを設けている。いずれの場合も、図11eの場合と同様に、「溝幅が広くされた部分」に流入するコンクリートが桟木30の側面と一体となることにより、桟木30とコンクリートとの付着強度は向上する。
【0033】
なお、図1〜図10に示した例において、すべての貫通孔26に対応する凹溝22の部分に「溝幅が広くされた部分」25を形成したものを示したが、所要の付着強度が得られることを条件に、一部の貫通孔26に対応する凹溝22の部分にのみ「溝幅が広くされた部分」29を形成するようにしてもよい。また、貫通孔26を形成する凹溝22も同様に一部の凹溝のみであってもよい。
【0034】
【実施例と比較例】
本発明による型枠兼用断熱パネルの効果を検証する目的でいくつかの試験モデルを作り荷重テストを行った。以下に、それを説明する。試験モデルに使用した断熱板21はすべて同じものであり、寸法は140×140×42(mm)とした。中央に寸法が幅27×深さ20×長さ140(mm)である凹溝22を形成し、凹溝22の長手方向の中央部(断熱板21の中央部)に貫通孔26を形成した。貫通孔26の位置には幅の広くなった部分29を形成した。また、桟木30として合板を幅27×高さ27×長さ140(mm)に裁断したものを用い、それを凹溝22内に嵌め込み、接着剤で固定した。
【0035】
1.試験モデル1は図11aの態様となるように、断熱パネル21と桟木30を組み込んだ。
2.試験モデル2は桟木30にビス31を取り付けてアンカー機能を持たせた以外は、試験モデル1と同じとした。
3.試験モデル3は図11bの態様、すなわち上下方向の棒状の溝29pをさらに形成した以外は、試験モデル1と同じとした。
4.試験モデル4は図11cの態様、すなわち、貫通孔26の第2領域26bの孔径を凹溝22の溝幅よりも狭くして、段差部27でのアンカー機能をより大きくした以外は、試験モデル1と同じとした。
5.試験モデル5は図11fの態様、すなわち、貫通孔26が断面積に変化のない形状であり、貫通孔26の第2の領域26bを第1の領域26aの形状と同じ形状とした以外は、試験モデル1と同じとした。
6.試験モデル6は比較モデルであり、図11dの態様、すなわち、凹溝22が幅の広くなった部分29を有しない形態とした。
7.試験モデル7は比較モデルであり、桟木30にビス31を取り付けてアンカー機能を持たせた以外は、試験モデル6と同じとした。
【0036】
各試験モデルの断熱パネル21の上に、寸法85×85×50(mm)の枠を組み、貫通孔26および幅の広くなった部分29にまで流れ込むようにしてモルタルを打設した。モルタル打設後、7日間養生させた。
【0037】
得られた各試験モデルについて、モルタル側を固定し、桟木側に重りを吊り下げて2種類の荷重テストを行った。1つは短時間荷重テストであり、重りを10kg→20kg→30kg→40kgの順で吊していき、桟木30の断熱板21からの剥離で重りが落下しない荷重を把握した。テスト結果、すべての試験モデルで30kgまでは剥離することはなく、40kgですべてが剥離した。
【0038】
次に、荷重30kgでの長時間荷重テスト(クリープ試験)を行い、桟木30の剥離に起因して重りが落下するまでの日数Dmaxを測定した。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すように、本発明による試験モデル1〜4は、凹溝22が幅の広くなった部分29を有しない比較品(試験モデル6、7)と比較して、重り落下までの長さがほぼ2倍程度と長くなっている。本発明による試験モデル4(貫通孔26が段差部27を有しないもの)であっても、比較品(試験モデル6、貫通孔が段差部を持つ)と同じ日数となっており、断熱板21が薄く、成形の都合から段差部27を作れない場合でも、凹溝に溝幅が広くなった部分29を形成することにより、高い剥離強度が得られることを示している。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、合成樹脂発泡体である断熱板に形成した凹溝内に桟木を挿入して形成される型枠兼用断熱パネルにおいて、断熱板と桟木との付着力を一層確実なものとした型枠兼用断熱パネルが得られる。それにより、低いコストでのコンクリート壁又はコンクリートスラブの施工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による型枠兼用断熱パネルの一実施の形態を示す正面図(図1a)と背面図(図1b)。
【図2】断熱板の一形態を示す斜視図。
【図3】桟木の一形態を示す斜視図。
【図4】図1aのa−a線による断面図。
【図5】図1aのb−b線による断面図。
【図6】本発明による型枠兼用断熱パネルの他の実施の形態を示す正面図(図6a)と背面図(図6b)。
【図7】図6aのa−a線による断面図。
【図8】図6aのb−b線による断面図。
【図9】本発明による型枠兼用断熱パネルを用いてコンクリート壁あるいはコンクリートスラブを施工する場合の一例を説明するための図。
【図10】打設したコンクリートと本発明による型枠兼用断熱パネルとの関係を説明する図。
【図11】型枠兼用断熱パネルにおける、凹溝と、貫通孔と、凹溝の溝幅が広くされた部分との、異なった態様を説明する図。
【図12】従来の型枠兼用断熱パネルの一形態を示す正面図(図12a)と背面図(図12b)。
【図13】図12のa−a線による断面図。
【図14】図12に示す型枠兼用断熱パネルでの施工後にける打設したコンクリートと型枠兼用断熱パネルとの関係を説明する図。
【符号の説明】
20,20A…型枠兼用断熱パネル、21…断熱板、22…凹溝、23…凹溝の底面、26…貫通孔、27…貫通孔の段差部、29…凹溝の溝幅が広くされた部分、30…桟木、31…釘(突起体)、40…コンクリート壁、50…コンクリートスラブ、C…打設コンクリート
Claims (7)
- コンクリート壁又はコンクリートスラブの施工時に用いる型枠兼用断熱パネルであって、合成樹脂発泡体である断熱板とその一方の面に配置される複数本の桟木とからなり、桟木は断熱板の該一方の面に形成された凹溝内に嵌め込まれており、該一部又は全部の凹溝には断熱板の他方の面に抜ける複数個の貫通孔が形成されており、該貫通孔は凹溝の底面から前記他方の面側に向けて凹陥する段差部を有しており、一部又は全部の貫通孔が形成される部分の凹溝の溝幅は他の部分よりも広くされており、それにより、貫通孔は該幅広となった部分に連通していることを特徴とする型枠兼用断熱パネル。
- 前記貫通孔は前記他方の面に向けて断面積が狭くなっていることを特徴とする請求項1に記載の型枠兼用断熱パネル。
- コンクリート壁又はコンクリートスラブの施工時に用いる型枠兼用断熱パネルであって、合成樹脂発泡体である断熱板とその一方の面に配置される複数本の桟木とからなり、桟木は断熱板の該一方の面に形成された凹溝内に嵌め込まれており、該一部又は全部の凹溝には断熱板の他方の面に抜ける複数個の貫通孔が形成されており、該貫通孔は平面視で凹溝の溝幅よりも広くされた部分を有しており、一部又は全部の貫通孔が形成される部分の凹溝の溝幅は他の部分よりも広くされており、それにより、貫通孔は該幅広となった部分に連通していることを特徴とする型枠兼用断熱パネル。
- 凹溝内に嵌め込まれた桟木は、凹溝に形成した貫通孔に入り込むようにして、断熱板の他方の面から突出しない長さの突起体を備えていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の型枠兼用断熱パネル。
- 請求項1ないし4いずれか記載の型枠兼用断熱パネルを、桟木を取り付けた面がコンクリート流し込み側と反対の側となるようにして建て込み、桟木を取り付けていない面側にコンクリートを流し込み、コンクリートを硬化させることを特徴とする型枠兼用断熱パネルを用いたコンクリート壁又はコンクリートスラブの施工方法。
- コンクリート壁又はコンクリートスラブの施工時に用いる型枠兼用断熱パネル用の断熱板であって、板状の合成樹脂発泡体からなり、一方の面に桟木を挿入するための凹溝が形成されており、一部又は全部の凹溝には断熱板の他方の面に抜ける複数個の貫通孔が形成されており、該貫通孔は凹溝の底面から前記他方の面側に向けて凹陥する段差部を有しており、一部又は全部の貫通孔が形成される部分の凹溝の溝幅は他の部分よりも広くされており、それにより、貫通孔は該幅広となった部分に連通していることを特徴とする型枠兼用断熱パネル用断熱板。
- コンクリート壁又はコンクリートスラブの施工時に用いる型枠兼用断熱パネル用の断熱板であって、板状の合成樹脂発泡体からなり、一方の面に桟木を挿入するための凹溝が形成されており、一部又は全部の凹溝には断熱板の他方の面に抜ける複数個の貫通孔が形成されており、該貫通孔は平面視で凹溝の溝幅よりも広くされた部分を有しており、一部又は全部の貫通孔が形成される部分の凹溝の溝幅は他の部分よりも広くされており、それにより、貫通孔は該幅広となった部分に連通していることを特徴とする型枠兼用断熱パネル用断熱板。
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