JP4217454B2 - 液体収納容器 - Google Patents

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    • B41J2002/17516Inner structure comprising a collapsible ink holder, e.g. a flexible bag

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、記録部としてのペンあるいは記録ヘッドなどに、インクなどの液体を無駄なくかつ安定して供給するための液体収納容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液体使用装置、例えばインクジェット記録ヘッドを用いて記録媒体へと液体であるインクを付与することにより記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置には、記録媒体に対し記録ヘッドを移動させつつその過程でインク吐出を行うことにより画像形成を行うものや、これとは逆に固定した記録ヘッドに対し記録媒体を移動させつつその過程でインク吐出を行うことにより画像形成を行うもの等がある。
【0003】
かかるインクジェット記録装置に適用される記録ヘッドへのインクの供給方式としては、キャリッジ等に搭載されて往復移動(主走査)する記録ヘッドに一体不可分にまたは分離可能にインクタンクが取り付けられ、このインクタンクからインクを記録ヘッドに直接供給するようにしたオンキャリッジ方式と称されるものがある。また、キャリッジ上に搭載される記録ヘッドとは別体に、インクタンクを記録装置の他の部位に固定的に据え付け、可撓性チューブを介してインクタンクと記録ヘッドとを連結してインクを供給するチューブ供給方式と称されるものがあるが、ここにはインクタンク(メインタンク)と記録ヘッドとの中間タンク(サブタンク)として機能する第2のインクタンクが記録ヘッドないしキャリッジ上に搭載されて、この第2のインクタンクからインクを記録ヘッドに直接供給するようにした形態のものも含まれる。
【0004】
これら方式にあって、記録ヘッドに直接的にインクを供給するインクタンクには、記録ヘッドのインク吐出部に形成されるメニスカスの保持力と平衡してインク吐出部からのインク漏れを防止するに十分で、かつ記録ヘッドのインク吐出動作が可能な範囲にある適切な負圧を発生させる機構が設けられる。
【0005】
かかる負圧発生機構としては、インクを含浸保持するスポンジ等の多孔質部材をインクタンク内に収納し、そのインクの保持力によって適切な負圧を生じさせるものがある。
【0006】
また、弾性力をもち、容積を拡張する方向に張力を発生するゴム等の材料で形成させた袋状部材内にインクをそのまま充填し、この袋状部材が発生する張力によって内部のインクに負圧を作用するようにしたものもある。
【0007】
さらに、可撓性のフィルムで袋状部材を形成し、その内部または外部に、袋状部材が容積を拡張する方向にフィルムを付勢するばね等を接合することにより、負圧を発生させるようにしたものもある。
【0008】
しかしながら、上記いずれの機構においても、インクタンク内のインク残量が少なくなってくるに伴って負圧は強くなる傾向を持ち、その負圧レベルが所定値を超えると、記録ヘッドに対しインクを安定して供給することができなくなる。その結果、インクを完全に消費しきらない内にインクタンクが使用に耐えなくなってしまう問題がある。
【0009】
例えば、インクを直接収容しその収容量に応じて変形可能な可撓性の密閉袋状部材により構成され、この部材内にばね部材を設ける構成を開示する特許文献1がある。この公報のインクタンクでは、基本的に、ばね力と上記の負圧(と大気圧との差)による力が平衡するようにその負圧が定まるため、インク消費に伴う袋状部材の変形に伴ってばねが変形するほど袋状部材内部の負圧が高まる。この結果、記録ヘッドのインク吐出動作が可能な適性な負圧の範囲を越え、記録ヘッドのインク吐出部に適切なメニスカスを形成できなかったり、記録へッドに対して良好にインクを供給できないなどの問題を生じることがある。この場合には、また、インクの全てを使うことができないことにもなる。
【0010】
また、材質や形状を適切に選定した袋状部材にインクを収納し、袋状部材自体で負圧を発生する一方、インクを完全に消費しきった状態で内部に空間のない偏平な状態となるような構成のインクタンクもあるが、そのような袋状部材には形状の制約がある。従って、箱状の筐体に収容した形態としたインクタンクを構成する場合、インクを充填した状態でも袋状部材は筐体内に完全に嵌まり合う形状とはならず、インクタンク全体のスペースに対して容積効率が劣るものである。また、そのような袋状部材でも、インクを消費しきる際には負圧が高くなるので、記録ヘッドへのインク供給性能が低下したり、記録ヘッドのインク吐出動作が不安定となる問題がある。
【0011】
そこで、負圧レベルが所定の水準よりあまり大きくならないようにするために、次のような幾つかの機構が提案されている。
【0012】
例えば、特許文献2あるいは特許文献3では、タンクに疎水性膜と管状の通気口とを設け、さらにその管内に球体を配設することによって、内部の負圧が増大した際に、タンク内部に空気を取り込むようにした機構が開示されている。すなわち、これら公報においては、外部から容器内に連通する管状の通気口(ボス)を具備し、外径がボスの内径より小さい球体をボス内壁に設けた複数の突起リブに取り付けることで、球体とボスとで略環状のオリフィスを形成する構成が開示されている。かかるオリフィスは、インクの毛管現象が少量のインクを液体シールとしてオリフィス内に保持するような大きさに選定される。また、容器内負圧が記録ヘッドの動作範囲の限界に近づくときに、その負圧がインクの毛管現象に打ち勝ち、液体シールが無効とされるような形状とされている。
【0013】
また、特許文献4では、可撓性シートでなるインク袋内に穴付き板と突起付き板とを対向配置するとともにそれらの間にばね部材を配設し、インク残量が減ってインク袋が縮み、内部負圧が所定値を超えるところで突起が穴に挿入して、穴付き板と可撓性シートとを剥離させてタンク内部に空気を取り込むようにした機構が開示されている。そしてこの機構では、空気の取り込みが行われると穴付き板と可撓性シートとが密接し、その間のインクのメニスカス保持力、換言すれば液体シールによってインク漏洩を防止するものである。
【0014】
しかしながら、これらの方法においては、空気を取り込む部分に複数の部品を要し、その箇所における構造の複雑化を伴っていた。
【0015】
また、図1(a)に示すように、収納容器T内に中に空気がある程度導入された状態で環境変化(外気圧の低下や温度上昇など)によって容器内の圧力が極端に高くなった場合には、図1(b)に示すように、容器内からインクが押し出され、インクジェット記録ヘッドに適用する場合にあってはインク吐出口Nや通気口Aを通じてインクが漏れることがある。可撓性シートでなる袋状部材に液体を収納した場合には、空気の減圧膨張分を許容して内部圧力の上昇を緩和するためのある程度のバッファ効果は期待できるが、それにも限界がある。
【0016】
特許文献2あるいは特許文献3に開示された構成は、環状オリフィスの部分に形成されるインクのメニスカスによる力(液体シール)とばねによる負圧とのバランスによって密閉系を成立させているものであり、機械的構成は比較的簡単であるものの、密閉系を維持する上では安定性に欠けるものである。すなわち、容器内外の気圧差、インクの温度上昇による粘性の低下、単体でインクタンクを取り扱う際の衝撃や落下、また特にシリアル記録方式にあって主走査時に作用する加速度など、種々の条件により液体シールが破られ、収容するインクが漏出する不都合が生じる。また、液体シールは乾燥など湿度変化の影響を被り易く、これによって気泡の導入動作がばらつき、結果として記録ヘッドへのインク供給性能ひいては記録品位を低下せしめるものである。
【0017】
これらの不都合を防ぐために、上記公報では、オーバフロー容器として機能するとともに湿度勾配を保証するための入口迷路をボスに連続して設けた構成を開示しているものと考えられるが、その分構成が複雑化する。また迷路状の通路の他端が常に大気と連通しているので、ある程度のインク蒸発は免れ得ない。
【0018】
また、容器内のインクが消費され尽くす際には外気が一気に導入され、容器内の負圧が解消されることによって記録ヘッド部分に残っているインクが吐出口から漏出したり、メニスカスが形成されなくなった環状オリフィスから残留インクが漏出する恐れがある。
【0019】
さらに、これらの従来例では、インクタンクに直接に大気を導入する開口部を設けているために、その開口部の大きさや設置場所によっては、インクタンク内のインクがほとんど消費されてインクタンク内のインクがなくなる付近においては、相対的にタンク内の気体の量が多くなり、大気導入による負圧解消時にインク吐出口や開口部(通気口)におけるメニスカス維持が不完全となる場合があり、インク漏れや、これに伴う大気導入の不完全性につながる恐れがある。
【0020】
加えて、容器内外の気圧差、温度の上昇や下降、単体でインクタンクを取り扱う際の衝撃や落下、また特にシリアル記録方式にあって主走査時に作用する加速度など、種々の条件により液体シールが破られ、内部の圧力が所定値にならなくても空気が導入されてしまったり、逆にインクが漏出してしまう不都合が生じる。また、これらの条件は記録ヘッドやインクタンクの設計あるいはインクの物性等によって種々変わり得るものであり、また、使用する形態に合わせて開口部の形状や寸法、あるいは負圧発生機構の基本構成等に応じて、それぞれ設計の適正化が必要となるという問題もある。
【0021】
空気導入のため液体シールを用いる上記のインクタンクは、以上説明したような本来的に有している問題の他に、記録装置の設計上の自由度が低くなるなどの問題を派生させる。
【0022】
すなわち、この液体シール部をインクタンクに対して着脱可能とするなど、インクタンクとは別体のものとして構成することは容易ではない。仮にこの液体シール部を別体のものとした場合には、これをインクタンクに直接装着し、またはチューブ等を介して間接的に接続する際、インク内外の圧力差等を考慮して上記の環状部分に良好なメニスカスを形成するための複雑な処理もしくは装置構成が必要となる。
【0023】
また、チューブ等を介して液体シール部をインクタンクから離れた位置に設ける場合には、液体シール部のメニスカス形成のためこのチューブ内をインクで満たしている必要があるが、液体シール部を介した空気導入によってチューブ内のインクはインクタンク内に戻されてしまい、その後、チューブ内にインクを再充填することは上記と同様、複雑な処理もしくは構成を必要とすることになる。
【0024】
また、特許文献4に開示の技術では、薄い板状部材と可撓性シートとの微小な隙間から空気を導入する構造であるため、その隙間に液体が侵入した場合に生じる毛管力により上記剥離を行わせるための力が変化し、その結果、空気導入を行うときの負圧が安定しないという問題もあった。
【0025】
さらに、温度上昇等によって容器内部の気体(空気)の圧力が高まったときに、可撓性部材の変形により容器内の容積を実質的に増加させて、その内圧を緩和させるための可撓性部材としては、充分なバッファ機能を発揮するために、剛性が極めて低くて変形しやすいものが用いられている。
【0026】
しかしながら、そのような可撓性部材として用いられる剛性の低い材料は、一般に、厚みが薄くて気体透過度が高いために、気体の浸透圧によって容器内に気体を浸透させやすい。そのため、容器内に液体を長期保存した場合に、容器内の気体(空気)の膨張分を吸収するバッファ機能によっては対応できない量の気体が容器内に浸透し、バッファ機能が充分に発揮できなくなるおそれがあった。そのため、可撓性部材の材料としては、低剛性化と気体透過度の低下とを両立させるに、金属を蒸着したような極めて高コストの材料を用いなければならなかった。
【0027】
【特許文献1】
特公平3−24900号公報
【0028】
【特許文献2】
特開平7−125240号公報
【0029】
【特許文献3】
特開平7−125241号公報
【0030】
【特許文献4】
特開平6−183023号公報
【0031】
【特許文献5】
特開平9−267483号公報
【0032】
【特許文献6】
米国特許第6,186,620号公報
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
以上のことから、まず本発明者らは、液体収納容器内に空気を導入することによって容器内の負圧が全く解消される状態とすることは好ましくなく、所定の負圧値に戻すことが重要であるとの知見を得た。また、発明者らは、そのために空気の導入量も適切であるべきであると判断した。
【0034】
特に、液体収納容器をインクジェット記録ヘッドに直接インクを供給するためのインクタンクに適用する場合、記録の高速化かつ高画質化を図る上では、安定した流速および流量によるインクの供給が不可欠であり、そのためにはインクが流れる際のインク供給路内における抵抗がほぼ一定に保たれることが強く望ましい。従って、インクタンク内の負圧の安定化は重要な要素であり、さらにいうならば、負圧を所定範囲内に維持しておくことが重要である。そしてこのためには、空気を導入する部分が確実に動作することが必要となる。
【0035】
また、容器内への気体の浸透を低減すべく、それらの部材に気体の浸透圧が掛かる機会を減らして、液体を適正な状態に収納することができると共に、その収納した液体を安定的に供給することができるようにすることも重要である。
【0036】
本発明は、上述した諸問題点に鑑みてなされたものであり、本発明またはその種々の実施形態では、次の事項の少なくとも一つを達成することを目的とする。
【0037】
外部(記録ヘッドなど)に供給する液体(インクなど)の収納部に、所要の負圧を発生させる手段と、液体供給に伴う収納部内の負圧増大に応じて内部に空気を導入できるようにすることで負圧が適正な範囲に保たれるようにするための空気導入部とを有する構成にあって、いかなる使用環境および保存環境においても空気導入部から液体が漏出することがなく、かつ液体消費の段階によらず安定した負圧特性を維持できるようにすること。
【0038】
液体収納容器内の負圧を一定に保つための内部への外気の導入を確実かつ適切なタイミングで行わせることで、負圧の安定化に対してより高い信頼性が得られるとともに、急激な環境変化に対しても液体供給口からの液体漏れが起きないようになし、究極的には無駄な液体消費が生じないようにした液体収納容器(インクタンクなど)およびこの液体収納容器を用いた液体使用装置(インクジェット記録装置など)を提供すること。
【0039】
液体シールを用いる上記のインクタンクが本来的に有している問題を解決できるとともに、記録装置の設計上の自由度を向上させることが可能な負圧調整機構を具えたインクタンク、インクジェット記録ヘッド、該インクジェト記録ヘッドと前記インクタンクとを一体に備えたインクジェットカートリッジおよびインクジェト記録装置を提供すること。
【0040】
より簡単な構造にも拘らず、液体収納容器内負圧の液体消費に伴う変化を吸収し、負圧の安定化を図るとともに、急激な環境変化に対しても液体供給口からの液体漏れが起きないようにした安価に製造できる液体収納容器及びこの液体収納容器を用いた液体吐出記録装置を提供すること。
【0041】
液体収納容器の一部を可撓性部材や気体透過度の大きい部材によって構成した場合に、容器内への気体の浸透を低減すべく、それらの部材に気体の浸透圧が掛かる機会を減らして、液体を適正な状態に収納することができると共に、その収納した液体を安定的に供給することができる液体収納容器、および、それを用いた記録装置を提供すること。
【0042】
【課題を解決するための手段】
そのために、本発明では、インクを吐出する吐出部に対して供給されるインクを収納する液体収納容器であって、
大気連通口によって大気に開放された外装と、
該外装内でインクを収納するインクの収納空間を形成しインクの消費に伴って変形する可撓性部材と、
前記可撓性部材の形状を規制する板部材と、
前記インクの収納空間内に設けられ、前記板部材を介して前記可撓性部材に作用し、前記吐出部のインク吐出動作が可能な範囲にある負圧を発生させる弾性部材と、前記インクの収納空間を外部に開放する連通部と、を備えるとともに、
前記インクの収納空間内と連通する連通路と、大気開放用の開口、可動部材およびばね部材からなり、該ばね部材が前記可動部材を付勢するよう構成された一方向弁と、を備えた弁室が、前記連通管を前記インクの収納空間の連通部に位置づけて接続され、
インクの消費による前記インクの収納空間内の負圧上昇によって前記弁室内の空気が前記インクの収納空間に供給され、前記弁室内の負圧が一定圧以上となった時、前記一方向弁が開放されて外気が前記弁室に導入されることによって、前記インクの収納空間および前記弁室内の負圧を調整することを特徴とする。
【0064】
なお、本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する場合、または記録媒体の加工を行う場合を言うものとする。
【0065】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板等、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能な物も言うものとするが、以下では「用紙」または単に「紙」ともいうものとする。
【0066】
さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものであり、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色材の凝固または不溶化)に供される液体を言うものとする。
【0067】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0068】
なお、以下においては、本発明をインクジェット記録装置に適用した諸実施形態について説明する。すなわち、液体収納容器はインクジェット記録ヘッドに供給するインクを収納するものであり、よって以下の説明では「液体」を「インク」と表現することもある。特に、色材を含むインクに対して本発明は有効であり、顔料を成分に有するインクに対しては、一層優れたインク供給性を確保できるので、より好ましいものである。
【0069】
1.基本的構成例
1.1 基本的構成の第1例
図2から図6は、本発明の基本的構成の第1例を説明するための図である。
【0070】
図2において、10はインクを収容可能なカートリッジタイプのインクタンク(「インクカートリッジ」ともいう)、20は、インクタンク10から供給されるインクを吐出可能な記録ヘッドである。記録ヘッド20におけるインクの吐出方式は特定されず、例えば、インクを吐出するためのエネルギーとして、電気熱変換体から発生する熱エネルギーを利用するものであってもよい。その場合には、電気熱変換体の発熱によってインクに膜沸騰を生じさせ、そのときの発泡エネルギーによって、インク吐出口からインクを吐出することができる。本例のインクタンク10と記録ヘッド20は、分離可能または不能に結合することによって、インクジェット記録装置に対して着脱可能なインクジェットカートリッジを構成することができる。したがって、カートリッジタイプのインクタンク10、または記録ヘッド20を個別に交換したり、あるいはインクジェットカートリッジ全体を交換することができる。
【0071】
インクタンク10の内部には、可動部材11によってインクの収納空間Sが形成されている。インクタンク10内における可動部材11の上側空間は、大気連通口12によって大気に開放されて、大気圧と等しくされている。インクタンク10の外装13は、可動部材11を外力から保護するシェルとしての役割を果たす。本例の可動部材11は変形可能な可撓性膜(シート部材)によって形成されており、その中央部分は板14によって形状が規制されており、その周縁部分が変形可能となっている。そして、この可動部材11は、その中央部分が凸状とされていて、側面形状が台形となっている。この可動部材11は、後述するように、収納空間S内におけるインク量の変化や圧力変動に応じて変形する。その際に、可動部材11の周辺部分がバランスよく伸縮変形し、その可動部材11の中央部分がほぼ水平姿勢を保ったまま上下動する。このように可動部材11がスムーズに変形(移動)するため、その変形に伴なう衝撃の発生がなく、その衝撃に起因して収納空間S内に異常な圧力変動が生じることもない。
【0072】
また、インクの収納空間S内には、板14を介して可動部材11を外側に押し広げる力を作用することで、記録ヘッドのインク吐出部に形成されるメニスカスの保持力と平衡して記録ヘッドのインク吐出動作が可能な範囲にある負圧を発生させる圧縮ばね形態のばね部材40が設けられている。なお、図2の状態は、収納空間Sにほぼ完全にインクが充填された状態を示しているが、この状態でもばね部材40は圧縮された状態にあり、インクタンク内に適切な負圧が生じているものとする。
【0073】
記録ヘッド20側には、ゴム栓17,18を突き刺し可能な中空針21,22が備えられている。一方の中空針21は、ゴム栓17に突き刺さることによって、収納空間S内のインクを記録ヘッド20に供給するための供給路L1を形成する。その供給路L1中にはフィルタ23が備えられている。24は、ゴム栓17に密着するゴム等のシール部材である。他方の中空針22は、ゴム栓18に突き刺さることによって、収納空間S内を大気に開放する連通路L2を形成する。その連通路L2中には、図2中にて模式的に表す一方向弁30が備えられている。25は、ゴム栓18に密着するゴム等のシール部材である。ゴム栓17,18には、中空針21,22の突き刺しを容易とするために、予め、スリット17A,18Aを形成しておいてもよい。それらのスリット17A,18Aは、中空針21,22が突き刺されないときは、ゴム栓17,18自体の弾性力によって閉じられる。インクタンク10の下側には、インク供給口15と連通口16が形成されており、それらはゴム栓17,18によって閉じられている。したがって、インクの収納空間Sは、中空針21,22が突き刺されないときは完全に、また突き刺されているときはインク供給口15と連通口16を除いて実質的に、密閉空間となっている。
【0074】
なお、図示の如く模式的に表された一方向弁は、その機能を象徴的に示したものであり、図示の状態が弁の開放状態または閉塞状態をそのまま示しているのではない。このように象徴的に一方向弁が示されている他の図でも同様である。
【0075】
図3(a)および3(b)は、図2の構成に適用されるところの、本発明で言う一方向弁30の具体的な構成および動作を説明するための図である。この構成は、後述する他の例についても、その動作を行う上で同様に適用できることは勿論である。
【0076】
図3(a)において、一方向弁30は、インクタンク10に対して直接接続されて連通する中空針(管)22を介して接続されるものであり、本例では、ダイヤフラム31を用いたダイヤフラム弁として構成されている。すなわち、ダイヤフラム31には、筐体36に固定して配備されたシール部材32と対向する定位置に、開口部31Aが形成されている。通常は、開口部31Aは、シール部材32により密閉されている。ダイヤフラム31は、ばね部材33によって、後述する支持板34を介し図3(a)中の下方に付勢されている。ダイヤフラム31およびばね部材33を有してバルブ室Rを構成する筐体36には大気に連通している開口部36Aが設けられるとともに、開口部31Aと対向する部位にシール部材32が固定されている。図3(a)のように、開口部31Aがシール部材32に押し付けられることによって、その開口部31Aが閉じられて、バルブ室Rと大気との間の連通路L2が遮断される。支持板34は、ダイヤフラム31に密着するとともに、開口部31Aに対応した開口部34Aを有している。中空針22を通してインクタンク10内に連通されると、中空針22の端部もしくは中空部のいずこかの部分までインクタンク10中のインクが存在することになり、結果としてバルブ室Rはインクの収納空間Sと同じ内圧となる。
【0077】
インクタンク10から記録ヘッド20にインクが供給されて、収納空間S内のインク量が減少すると、収納空間S内の圧力(内圧)が低下(負圧が上昇)する。そして、その収納空間S内が所定圧以下(所定負圧以上)となったときに、図3(b)のように開口部31Aがシール部材32から離れ、開口部31Aは大気に連通する。すなわち、収納空間S内の減圧に伴なってバルブ室R内の空気が供給され、結果としてバルブ室R内の負圧も増大する。バルブ室R内の負圧が所定値に達したときに、ダイヤフラム31と支持板34は、バルブ室Rの内の圧力と大気(室外)の圧力との差が、ばね部材33の付勢力に優ることで、抗してバルブ室R側に移動し、開口部31Aがシール部材32から離間する。この結果、その開口部31Aが開いて、バルブ室R内よりも高圧の外気がバルブ室R内に導入される。このような外気の導入により、バルブ室R内および収納空間S内が緩和され、開口部31Aは、ばね部材33の付勢力によって再び閉じられる。このときまでバルブ室R内は大気圧近くまで昇圧するが、ばね33の付勢力によってダイヤフラム31がシール部材32に向けて変位し、これに密着して所定の負圧に保持される。従って、一方向弁30は、インクタンクに対しても、記録ヘッド20に対しても、負圧発生手段としての機能を果たすものである。
【0078】
このような一方向弁30の開閉機能により、バルブ室R内およびインクの収納空間S内が所定圧(大気圧より小の圧力)に保たれる。
【0079】
一方、バルブ室Rとインク収納空間Sとは、中空針22を介して連通しているが、中空針22先端の開口22Aはインクと接しており、開口22Aにはインク収納空間S側へ凸となるインクと気体との界面であるメニスカス22Bが形成される。
【0080】
そして、インクが記録ヘッド20に供給されることによって、収納空間S内の負圧が所定の値より大きくなると、まず収納空間S内とバルブ室Rとの間に圧力差が生じる。この圧力差がメニスカスの保持力を越えた瞬間にエアが収納空間S内に取り込まれて圧力差が解消される。次に、収納空間S内の圧力が減少し続けると、ダイヤフラム31がその圧力を受けて、ばね部材33を圧縮しつつ図3(a)および図3(b)において上方に変位することで、開口部31Aが開放され、エアがバルブ室R内に導入される。これによりバルブ室R内の負圧が緩和され、同時に収納空間S内とバルブ室Rとの間に圧力差が生じ、中空針22先端の開口22A先端のメニスカスを破ってエアが収納空間S内に取り込まれる。
【0081】
ここで、開口部31Aが開放され、エアが導入され始めた瞬間に気流に乱れが生じることがあるが、本例の場合はバルブ室Rとインク収納空間Sとを中空針22を介して連通させており、中空針22先端の開口22Aにはメニスカスが形成される構成であるので、大量のインクがバルブ室R側に流入してくることはない。
【0082】
また、環境の変化や運搬時の揺動などによりインクがバルブ室Rに侵入した場合があったとしても、インク収納空間S内の負圧調整のためのエア導入動作に伴ってインクが収納空間S側に戻るため、最終的にインクタンク10および一方向弁30は好ましい状態に戻ることになる。
【0083】
以上の動作を勘案すれば、中空針は、そこに形成される気液界面のメニスカスの保持力が開口部31Aが開放される力より小となるよう中空部の断面寸法が定められていることが好ましい。すなわち、図示の例では、中空針22先端の開口22Aは、バルブ室Rへの開口部31Aが開放される力よりメニスカス保持力が小さくなるように開口寸法aが定められていることが好ましく、インクの物性等にもよるが、例えば5mm以下の開口径を有する円形状、より好ましくは1mm以下の開口径を有する円形状とするのがよい。また、中空針22の長さLについても、上述した気流の乱れに起因するバルブ室R側へ向かうのインクの移動が生じた場合にも、バルブ室Rへは到達しにくい寸法とすることが好ましく、具体的には0.5mm以上、より好ましくは5mm以上とするのがよい。
【0084】
これらの構成は、実際の使用時以外の条件、例えば運搬時の揺動や環境変化に対しても極めて有効であり、一方向弁の動作や、記録ヘッドに対する負圧の安定性に関して非常に好ましい性能を提供するものである。
【0085】
図4(a)〜(c)は、記録ヘッド20と結合したインクタンク10のインク供給動作を説明するための図である。
【0086】
図4(a)は、収納空間S内にインクが満充填されたインクタンク10の初期状態(図2)から、そのインクが少し消費された状態を示す。図4(b)は、インクの消費に伴なって、可動部材11が下方(ばね部材40を圧縮する方向)に変位した状態を示す。この図4(b)の状態において可動部材11の下方への自由変位は最大となり、さらにインクが消費されたときは、可動部材11としての可撓性膜に張力が掛かり、さらにばね部材40による荷重が加わって、収納空間S内の負圧が増大する。その収納空間S内の負圧が所定のエアー導入圧力を越えたときに、上述したように一方向弁30が開いて、図4(c)のように収納空間S内に外気が導入される。したがって、収納空間S内の圧力は所定圧以下には減少せず、その収納空間Sが一定圧に維持される。この結果、記録ヘッド20にインクを安定供給して、所期とおりの記録動作を実行することができる。従って、本発明の効果をより適切なものとする上で、上記構成のインクタンクは好ましいものとなる。
【0087】
図5は本実施形態にかかるインクタンクを用いた場合のインク供給量と収納空間S内の圧力変化との関係を示す。上述した特許文献2あるいは特許文献3に開示されたものの如く、環状オリフィスの部分に形成されるインクのメニスカスによる力(液体シール)とばねによる負圧とのバランスによって密閉系を成立させている構成では、負圧増大に伴う空気導入の前後において液体シールを破り、また再形成する動作を伴うこと、またタンク内のレベルも不安定である等の理由で空気導入および遮断の応答性に劣り、タンク内圧力が大きく変動する。これに対して本実施形態では、空気導入(図4(c))と遮断(図4(b))が速やかにかつ安定して行われ、図5に示すように、インクが消費され尽くすまでの広い領域で、安定した負圧状態すなわち安定したインク供給が確保されることになる。収納空間S内にエアーが溜まっている状態において、外気圧の低下や環境温度の上昇によって、その収納空間S内のエアーが膨張した場合には、図6のように、可動部材11が上方に変位する。すなわち、可動部材11は、収納空間S内のエアーの膨張に応じて上方に変位することにより、そのエアーの膨張分の圧力変化を吸収する。さらに、ばね部材40が可動部材11を情報に付勢する方向に荷重を作用する。したがって、収納空間S内は、確実に一定圧に維持されることになる。この結果、記録ヘッド20にインクを安定供給して、所期とおりの記録動作を実行することができる。また、図6のように、収納空間S内のエアーが膨張した場合においても図3(a)に示したように一方向弁30は閉じたままとなり、インクタンク10内のインクが外部に漏出することはない。
【0088】
なお、収納空間S内に導入される空気の体積増加を許容できるよう、当該増加量(ΔVi)以上に、可動部材の変形(上方への変位)による容積増加量(Vs)が定められているのが望ましい。
【0089】
以上のように、一方向弁30を通して、インクタンク10内に外気を導入することにより、インクタンク10内のインクの消費量(インクの取り出し量)に応じて、インクタンク10内のインクの液面が低下するため、供給口15を通して、インクタンク10内のインクをほぼ完全に取り出すことができる。しかも、一方向弁30は、インクタンク10内から外部へのインクの導出を阻止するため、インクタンク10の使用時等における姿勢の如何に拘わらず、インクタンク10内のインクは連通口16から外部に漏出しない。したがって、インクタンク10の使用時等における姿勢は、特に制限を受けることがない。
【0090】
なお、一方向弁30は、本例のようなダイヤフラムを用いた構成のみに特定されず、例えば、ばね部材の付勢力によって弁体が弁座に押し付けられる一般的な逆止弁と同様の構成等、種々の構成のものを用いることもできる。つまり、一方向弁30は、インクタンク10内から外部へのインクや気体(流体)の導出を阻止し、かつ外部からインクタンク10内への空気(気体)やインク(流体)の導入を許容するものであればよい。仮に、インクタンク10の構成上、インクタンク10の外部における一方向弁30の外側(例えば、図3(b)におけるダイヤフラム31の下側)にインクが存在する場合には、一方向弁30によって、その外部のインクのインクタンク10内への導入が許容されることになる。
【0091】
また、インクタンク10における連通口16の位置は、インクタンク10の底部のみに特定されず任意である。例えば、収納空間S内に導入された空気が位置するインクタンク10内の上部や側部に位置するように、連通口16を設けてもよい。
【0092】
1.2 基本的構成の第2例
図7は、本発明の基本的構成の第2例を説明するための図である。図示の形態では、インクの収納空間Sの外側に、可動部材11を外側に押し広げる力を作用することで記録ヘッドのインク吐出部に形成されるメニスカスの保持力と平衡して記録ヘッドのインク吐出動作が可能な範囲にある負圧を発生させる引っ張りばね形態のばね部材42が設けられている。
【0093】
すなわち、このばね部材42の機能も上述の第1例に係るばね部材40の機能と実質的に同様である。しかし、本例ではばね部材42がインクと直接接触しない構成であるので、ばね部材自体の長期保存製および耐久性が向上するとともに、ばねおよびインクの材料の選定の自由度が増す。
【0094】
1.3 基本的構成の第3例
第1例においては、負圧発生のためにばね部材を設けた構成としたが、可動部材を構成する変形可能な可撓性膜自体をばね性を持ったもので形成し、ばね部材の配設を省くこともできる。すなわち、可撓性膜を収容空間Sの容積を増大する方向の変位習性を付与した部材とすることにより、可撓性膜自体を付勢手段としてのばね部材に兼用することができる。
【0095】
図8はその構成例を示すもので、適切なばね性を有する可撓性膜を用いて可動部材11’を形成し、第1実施形態に係るばね部材40と実質的に同様な機能を実現している。本実施形態は特別なばね部材が配設されないので、インクの収容効率が向上し、またインクタンクの製造コストを低廉化する効果がある。
【0096】
なお、そのような可撓性膜を有するインクタンクとしては、例えば特許文献5に開示されたもののように、インクタンク外壁と、この外壁から分離して変形可能なインク収容内壁とがダイレクトブロー成型により同時に一工程で形成されたものを用いてもよい。
【0097】
このようなインクタンクは、例えば、インクタンクと記録ヘッドとの位置関係による水頭差や記録ヘッドにおいて生じる負圧の大きさなどの関係から、記録へッドに対する負圧が有る程度適切な範囲に維持され、ばねを用いなくても記録へッドのインク吐出には支障がない場合に用いることができる。
【0098】
1.4 基本的構成の第4例
第1例においては、ばね部材をコイルばね形状のものとして説明したが、板ばね形状のものを用いて構成することもできる。
【0099】
図9はその構成に係るインク収納ユニットの一例を示す斜視図であり、四角枠状のフレーム115の上下の開口部に、上下のばね・シートユニット114を取付けた密閉構造となっている。ばね・シートユニット114は、後述するように、ばね107と圧力板109から成るばねユニット112と、可撓性のタンクシート(可撓性部材)106とによって構成される。フレーム115には、インク供給口15と連通口16とが形成されている。
【0100】
図10から図14は、このようなインクタンク127の製造方法を説明するための図である。
【0101】
まず、図10(a)、(b)および(c)は、可撓性のタンクシート106を凸型に成型する工程の説明図である。
【0102】
タンクシート106の成形素材としてのシート材料101は、原材料から大きなサイズのシート状に成型されたものであり、このシート材料101は、インクタンク性能の重要なファクターを占める。このシート材料101には、気体とインク成分の透過度が低く、かつ可撓性をもちつつ繰り返し変形に対する耐久性が要求される。その好適な材料としては、PP,PE,PVDC,EVOH、ナイロン等であり、また複合材として、アルミニウムやシリカを蒸着したものなどを用いることができ、さらに、これらを積層化して用いても良い。特に、耐薬品性に優れたPPやPEと、気体・水蒸気遮断性能に優れたPVDCを積層して用いることにより、優れたインクタンク性能を発揮することができる。また、このようなシート材料101の厚さは、柔軟性と耐久性に鑑みて、10μm〜100μm程度が適する。
【0103】
このようなシート材料101は、図10(a)のように、凸形状部103、バキューム孔104、および温度調整機構(図示せず)を有する成型金型102を用いて凸型に成型する。すなわち、シート材料101は、バキューム孔104に吸着され、成型金型102からの熱により凸形状部103に沿う凸型に成型される。シート材料101は、図10(b)のように凸型に成型されてから、図10(c)のように、タンクシート106として所定のサイズに切り出される。そのサイズは、次工程の製造装置に適したサイズであればよく、インクを収容するインクタンク127の容積などに応じて設定することができる。
【0104】
図11(a)は、インクタンク127の内部を負圧にするために用いられるばねユニット112の製造工程の説明図である。予め半円状に形成されたばね107をばね受け治具108に取り付けて、その上から、溶接電極111を用いたスポット溶接により圧力板109を取り付ける。圧力板109には、熱接着材110が付けられている。これらのばね107と圧力板109とによって、ばねユニット112が構成される。
【0105】
図11(b)は、ばねユニット112をタンクシート106に取り付ける工程の説明図である。受け治具(図示せず)の上に載置したタンクシート106の内面に、ばねユニット112を位置決めして配置する。そして、ヒートヘッド113を用いて熱接着材110を加熱することにより、ばねユニット112とタンクシート106とを接着して、ばね・シートユニット114を構成する。
【0106】
図12(a)は、ばね・シートユニット114をフレーム115に溶着する工程の説明図である。フレーム115は、フレーム受け治具116に固定される。フレーム115を取り囲むシート吸着治具117は、フレーム115が位置決め配置された後、ばね・シートユニット114をバキューム孔117Aに吸着して、そのユニット114とフレーム115とを相対的に位置ずれなく保持する。その後、ヒートヘッド118により、フレーム115の図中上側の周縁部と、ばね・シートユニット114のタンクシート106と、の環状の接合面同士を熱溶着する。シート吸着治具117が、フレーム115の図12(a)中上側の周縁部と、ばね・シートユニット114のタンクシート106の周縁部分とを均一に対面させることにより、それらの接合面は、極めて均一に熱溶着されてシールされることになる。ゆえに、シート吸着治具117は、均一なシール性を確保すべく熱溶着する上において重要である。
【0107】
図12(b)は、カッター(図示せず)によって、フレーム115の外側にはみ出たタンクシート106の部分を切り取る工程の説明図である。このように、フレーム115からはみ出たタンクシート106の部分を切り取ることにより、ばね・シート・フレームユニット119が完成する。
【0108】
図13および図14(a),(b)は、このようなばね・シート・フレームユニット119に、前述した工程により制作した他のばね・シートユニット114を熱溶着する工程の説明図である。
【0109】
図13のように、ばね・シート・フレームユニット119は受け治具(図示せず)に取り付けられ、その受け治具と相対的に位置が規定された吸着治具120によって、ばね・シート・フレームユニット119の外周部が囲まれる。その受け治具は、ばね・シート・フレームユニット119のタンクシート106における外面の平面部106Aに面接触して、その平面部106Aを図14(a),(b)のように保持する。他のばね・シートユニット114は、そのタンクシート106の外面の平面部106Aが押さえ治具121によって吸着保持され、この押さえ治具121が下降することによって、ばね・シートユニット114側のばね107の先端部107A,107Bと、ばね・シート・フレームユニット119側のばね107の先端部107A,107Bとがほぼ同時に嵌合する。すなわち、ばね107の一方の先端部107Aは凸状、他方の先端部107Bは凹状となっており、それぞれが自己アライメントにより嵌まり込むようになっており、それらのばね107は、一対のばね部材構成体として結合することにより1つのばね部材を構成する。
【0110】
さらに、押さえ治具121を下降させて、図14(a)のように、それら一対のばね107を圧縮させる。その際、押さえ治具121は、ばね・シートユニット114における図13中上側の平面部106A、つまり凸部に形成されたタンクシート106の上側のフラット領域を幅広く押さえ込む。これにより、タンクシート106の平面部106Aの位置が規制され、下側のユニット119や治具120に対して、ばね・シートユニット114が平行に保たれたまま接近する。したがって、図14(b)のように、ばね・シートユニット114のタンクシート106の周縁部分は、吸着治具120の面に接して、バキューム孔120Aに吸引保持される共に、フレーム115の溶着面(同図中上側の接合面)にも均一に対面することになる。そして、この状態において、ヒートヘッド122により、ばね・シート・フレームユニット119のフレーム115の図中上側の周縁部と、ばね・シートユニット114のタンクシート106と、の環状の接合面同士を熱溶着する。
【0111】
このように、上側のユニット114のタンクシート106の平面部106Aと、下側のユニット119のタンクシート106の平面部106Aとの平行度を維持しつつ、一対を成すばね107を圧縮させることにより、それら一対のタンクシート106の平面部106Aの平行度が高いインクタンク127を安定的に大量生産することができる。また、一対をなすばね107は、図14(a),(b)中において対称に圧縮変形されるため、ばね・シートユニット114を傾けるような力を生じることがなく、一対のタンクシート106の平面部106Aの平行度が高いインクタンク127をより安定的に生産することができる。さらに、インクタンク127内の容積変化に伴なって、一対をなすばね107が図14(a),(b)中において対称に圧縮変形されるため、一対のタンクシート106の平面部106Aは高い平行度を保ったまま対向間隔が変化することになり、この結果、インクを安定的に供給することができる。また、可撓性のタンクシート106の平面部106Aを斜めに傾けるような無理な力が作用しないため、インクタンク127のシール性、耐圧性、耐久性が向上することになる。
【0112】
その後、フレーム115の外側にはみ出たタンクシート106の部分を切り取ることによって、図7のインクタンク127が完成する。インクタンク127の内部は、インク供給口15と連通口16とによってのみ外部に連通する密閉構造となっている。
【0113】
図15は、以上の工程を経て製造されたインクタンクを備えたインク収納室の断面図である。
【0114】
インクタンク127の内部にはインクの貯蔵が可能であり、そのインクは、インクタンク127のインク供給口15からフィルタ137を介して供給路136へ供給され、さらにヘッドチップ133に供給される。本例のヘッドチップ133は、インクジェット記録ヘッド20を構成すべくヒータボード134が接着されており、このヒータボード134には、インク吐出流路とオリフィスが形成されていると共に、電気熱変換体(ヒータ)が備えられており、インクタンク127から供給されたインクの吐出が可能となっている。インクタンク127内には、上述の実施形態と同様、連通口16を介して空気を導入することが可能である。さらに、蓋132によって準密閉構造とされたインクタンク収納室130は、小孔の連通口12のみによって外部と連通している。
【0115】
なお、単一のインクタンクのみを収納するインクタンク収納室を構成することもできるし、複数のインクタンクを収容するインクタンク収納室を構成することもできる。
【0116】
図16はその構成例を示し、収容室130内にインクタンク127が複数個取り付けられる。インクタンク127は、取り付け部131に溶着や接着によって取り付けられる。その後、収容室130の開口部に蓋132を溶着や接着によって取り付けて、インクタンク収容室130内を準密閉空間とすることができる。
【0117】
1.5 インクジェット記録装置への適用例
図17は、本発明を適用可能な液体使用装置としてインクジェット記録装置の構成例を説明するための図である。
【0118】
本例の記録装置50はシリアルスキャン方式のインクジェット記録装置であり、ガイド軸51,52によって、キャリッジ53が矢印Aの主走査方向に移動自在にガイドされている。キャリッジ53は、キャリッジモータおよびその駆動力を伝達するベルト等の駆動力伝達機構により、主走査方向に往復動される。キャリッジ53には、記録ヘッド20(図17においては不図示)と、その記録ヘッド20にインクを供給するインクタンク10が搭載される。記録ヘッド20とインクタンク10は、上述した実施形態と同様に構成されており、インクジェットカートリッジを構成するものであってもよい。被記録媒体としての用紙Pは、装置の前端部に設けられた挿入口55から挿入された後、その搬送方向が反転されてから、送りローラ56によって矢印Bの副走査方向に搬送される。記録装置50は、記録ヘッド20を主走査方向に移動させつつ、プラテン57上の用紙Pの記録領域に向かってインクを吐出させる記録動作と、その記録幅に対応する距離だけ用紙Pを副走査方向に搬送する搬送動作と、を繰り返すことによって、用紙P上に順次画像を記録する。
【0119】
記録ヘッド20は、インクを吐出するためのエネルギーとして、電気熱変換体から発生する熱エネルギーを利用するものであってもよい。その場合には、電気熱変換体の発熱によってインクに膜沸騰を生じさせ、そのときの発泡エネルギーによって、インク吐出口からインクを吐出することができる。また、記録ヘッド20におけるインクの吐出方式は、このような電気熱変換体を用いた方式のみに限定されず、例えば、圧電素子を用いてインクを吐出する方式等であってもよい。
【0120】
キャリッジ53の移動領域における図17中の左端には、キャリッジ53に搭載された記録ヘッド20のインク吐出口の形成面と対向する回復系ユニット(回復処理手段)58が設けられている。回復系ユニット58には、記録ヘッド20のインク吐出口のキャッピングが可能なキャップと、そのキャップ内に負圧を導入可能な吸引ポンプなどが備えられており、インク吐出口を覆ったキャップ内に負圧を導入することにより、インク吐出口からインクを吸引排出させて、記録ヘッド20の良好なインク吐出状態を維持すべく回復処理(「吸引回復処理」ともいう)をする。また、キャップ内に向かって、インク吐出口からインクを吐出させることによって、記録ヘッド20の良好なインク吐出状態を維持すべく回復処理(「吐出回復処理」ともいう)をすることもできる。
【0121】
本例の記録装置においては、記録ヘッド20と共にキャリッジ53に搭載されたインクタンク10から、記録ヘッド20に対してインクが供給されることになる。
【0122】
1.6 変形例
インクタンク10における収納空間Sの内壁は、少なくとも一部を変形可能な可撓性膜などの可動部材11によって構成する他、全部をそのような部材で構成してもよい。この場合には、可動部材11を外装3に接合する工程を省略でき、部品点数を低減することが可能となり、製造コストを低廉化できるという効果がある。また、そのような変形可能な部材を設ける代わりに、収納空間Sの内容積に応じて変位する部材を一部に有したものでもよい。
【0123】
また、インクタンク10に、インク供給口15と連通口16の形成予定位置を設定しておいて、インクタンク10の使用時に、それらのインク供給口15と連通口16を形成するようにしてもよい。また、インクタンク10は、インクが収納可能であればよく、予めインクが収容されていなくてもよい。
【0124】
また、上例では記録ヘッドと分離不能に、または分離可能に一体化されて主走査されるインクタンクの構成について説明したが、記録ヘッドとは別体に設けられ、チューブ等を介して記録ヘッドに向けてインクを供給するとともに所要の負圧を発生する手段が設けられているインクタンクに対しても本発明を適用することができる。
【0125】
2.インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続の諸実施例
インクタンク10に対し記録ヘッド20および一方向弁30を互いに分離できないように結合することによって、インクジェット記録装置に対して着脱可能なインクジェットカートリッジを構成することもできるが、その双方または一方を分離可能な構成としてもよい。
【0126】
この項では、インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの結合態様のいくつかの例について説明する。
【0127】
2.1 インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの結合態様の第1例
図18は、インクタンク10と記録ヘッド20とを互いに分離できないように結合し、かつインクタンク10と一方向弁30とを分離可能に結合した構成である。本例の場合は、インクタンク10と記録ヘッド20の結合体の交換、一方向弁30のみの交換、またはインクジェットカートリッジ全体の交換ができる。
【0128】
この場合においては、各機能部材をそれぞれ交換できるため、長期間使用時に仮に機能低下を生じた場合でも、その部分のみを交換することで、メンテナンスコストを低廉化することができる。さらには、異なる記録ヘッドや異なる記録装置に同一のインクタンク10を装着する場合や、同一の記録ヘッドにおいても使用方法が異なる場合においては、記録ヘッドにかかる最適な負圧値が異なる場合があるが、同一のインクタンク10を用いても、一方向弁30だけを交換することで、負圧値を自由に設定することが可能となり、非常に汎用性のあるシステム構成となる。
【0129】
2.2 インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの結合態様の第2例
図19は、インクタンク10と一方向弁30とを互いに分離できないように結合し、かつインクタンク10と記録ヘッド20とを分離可能に結合した構成である。本例の場合は、インクタンク10と一方向弁20の結合体の交換、記録ヘッド20のみの交換、またはインクジェットカートリッジ全体の交換ができる。フィルタ23は、インクタンク10側に備えてもよい。
【0130】
この場合においては、インクタンク10と一方向弁30とを分離可能とするための構成部品が必要なく、全体として製造コストの低廉化に効果的である。
【0131】
また、インクタンク10と記録ヘッド20とを分離可能に結合し、かつインクタンク10と一方向弁30とを分離可能に結合することによって、インクタンク10のみの交換、記録ヘッド20のみの交換、および一方向弁30のみの交換が可能となる。その場合、フィルタ23はインクタンク10側に備えてもよい。
【0132】
インクタンク10を一方向弁30とを分離可能としたことにより、比較的精密な部品である一方向弁30の保護に意を払いながらインクタンク10を物流する必要がなく、より簡便なパッケージで物流することが可能となる。
【0133】
2.3 インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続態様の第3例
図20は、インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続態様の第3例を示す断面図である。
【0134】
本例では、図に示すように一方向弁30は記録ヘッドチップ(以下、単に記録ヘッドともいう)と一体に設けられる。そして、インクタンクは、この記録ヘッド20と一体に設けられた一方向弁30に対して着脱自在に装着されるものである。
【0135】
一方向弁30は、記録ヘッド20を保持するホルダ22の一部に設けられ、この弁にはその開閉する通路と連通する中空のジョイント針238が取り付けられる。一方向弁30は、先端にシール弾性体233を取り付けた可動部材231とこの可動部材231の動作を弁を閉める方向に付勢するばね232を主要な構成とするものである。すなわち、可動部材231はその両側(図の上下方向の両側)に作用する圧力差に応じて、ばね232により図中下方に付勢されと、そのシール弾性体233が大気連通孔を形成する孔の周囲に設けられた他方のシール弾性体234と当接し、弁を閉状態とする。一方、上記圧力差が可動部材231を図中上方に付勢するものであり、かつその力がばね232の付勢力より大きいときは、可動部材231は上方に動作して弁を開状態とする。
【0136】
なお、図では一方向弁としてニードル弁形態のものを例示するが、上述したようなダイアフラム弁を用いてもよいことは勿論である。このことは、インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続態様の第4例以降でも同様である。
【0137】
記録ヘッドのホルダ22には、インク供給用のジョイント針228も設けられる。そして、その中空の内部は記録ヘッド20のフィルタ225を具えたインク流路227に連通している。記録ヘッド20は、複数のインク吐出口(不図示)を具え、各吐出口に連通するインク路(不図示)には熱エネルギーを発生してインクに気泡を生じさせるための電気熱変換素子(不図示)が設けられ、これらのインク路に上記インク流路227を介してインクタンクからインクが供給される。
【0138】
インクタンク10は、概略、そのインク収納部の一部を形成する可撓性の可動部材11と、この可動部材11を図中上方に付勢するばね215を備えるものである。この構成により、図21(a)〜(c)にて後述されるように、記録ヘッド20のインク吐出口に適切なメニスカスを形成するための適正な範囲の負圧を発生することができる。詳しくは、インクタンク10内における可動部材11の上側空間は外装13によって覆われ、この外装13に大気連通口12が設けられることによって、可動部材11に対して大気圧を作用することができる。また、この外装13は可動部材11を外力から保護するシェルとしての役割を果たす。本実施形態の可動部材11は変形可能な可撓性膜(シート部材)によって形成されており、その中央部分は圧力板14によって形状が規制されており、その周縁部分が変形可能となっている。すなわち、この圧力板14によって比較的大きな面積の可撓性膜に対してばね215の付勢力を伝えることができる。可動部材11は、その中央部分が凸状とされていて、側方から見た形状が台形となっている。以上から明らかなように、この可動部材11はその収納空間のインク量の変化や圧力変動に応じて変形することができるものである。また、その際に、可動部材11の周辺部分がバランスよく伸縮変形し、その可動部材11の中央部分がほぼ水平姿勢を保ったまま上下動する。このように可動部材11がスムーズに変形(移動)するため、その変形に伴なう衝撃の発生がなく、その衝撃に起因して収納空間内に異常な圧力変動が生じることを防止できるものである。また、例えば外気の圧力や温度の比較的大きな変動があっても、上記の可動部材の変位によってそれを吸収することもできる。
【0139】
インクタンク10の下部には、一方向弁30のジョイント針238とインク供給用のジョイント針228とそれぞれ接続するゴム栓18、17が設けられている。これにより、インクタンクがホルダ22に装着されない、単独の状態にあるときにインク収納部を完全に密閉空間としてインクの漏れなどを生じないようにすることができる。また、インクタンク10をホルダ22に装着する動作は、まず、上記の各ジョイント針を対応するゴム栓に対して挿入することによって行なわれる。そして、この挿入により、各ジョイント針のジョイント針穴239、229を介して空気またはインクの流通が可能となる。
【0140】
以上のように、大気導入のために一方向弁を用いることにより、液体シールを用いる前述の従来例のように、容器内外の極端な気圧差やインクタンクを取り扱う際の衝撃や落下など、種々の条件により液体シールが破られ、収容するインクが漏出するなどの不都合を生じることなく、外部からの大気導入を良好に行なうことができる。また、従来例の液体シールにおいてメニスカスを適切に形成するには、これを用いるインクタンクの容量などの仕様に応じて環状オリフィスなどが設計される必要があり、このため、一種類の液体シールユニットを汎用的に種々のインクタンクに用いることは事実上不可能である。これに対し、一方向弁は、用いているばねの弾性係数などにもよるが、メニスカスを形成する必要がないためインクタンクの仕様に関して比較的広い範囲に適用できる。
【0141】
また、以上説明したように、一方向弁をインクタンクと別個に設けた場合でも、例えば、インクタンクと一方向弁とを接続する際、特にインクメニスカスを形成するなどの処理を行なわなくても、そのときの圧力に応じて多くの場合にはジョイント針の部分にインクメニスカスが形成され、その後の弁動作が適切に行なわれる。このように、一方向弁はインクタンクと別個に設けても特に支障を生ずることはないため、大気導入のための弁を設ける位置がインクタンクの位置によって制約されず、記録装置を設計する上での自由度が向上させることが可能となる。
【0142】
さらに、弁の配設位置に関する以上のような設計上の自由度により、記録ヘッド20と一方向弁30を備えたホルダ22は、図17に示したインクジェット記録装置のキャリッジに固定されもしくはキャリッジの一部をなすものとすることができるのである。すなわち、インクジェト記録装置は、装置の実質的な使用期間に関して十分耐久性のある記録ヘッドを用い、または、そのような期間記録ヘッドの性能を維持できるインクを用いることにより、インクタンクのみを交換可能とする構成とすることができる。これにより、用紙等の記録媒体を除けば、ランニングコストをほぼタンク交換のコストのみとすることができる。
【0143】
なお、新たに使用される初期状態のインクタンクは、インクが完全に充填され、ばね215は許される範囲で伸び切った状態となっており、この状態ではインク収納室内は負圧が最小の状態、もしくは逆にやや正圧の状態となっているのが通常であると考えられる。しかし、環境条件や運搬時の状態などに起因して、装着時において高い負圧状態となっていることも考えられる。その状態のインクタンク10が装着された場合、仮に記録ヘッド側20のジョイント針228が一方向弁30側のジョイント針238に先立って収納空間内に進入すると、一方向弁30から適正値の負圧を得るべく空気が導入される前に、記録ヘッドのインク吐出口に形成されるインクメニスカス保持力を越える過大な負圧が記録ヘッド20に作用し、記録ヘッド20側からインクを吸い上げてしまうことが考えられる。
【0144】
このような場合、インクタンクが完全に装着された後に、記録装置に設けられる吸引回復装置によって吐出口を介してインクを排出させるような動作を行うことも考えられるが、そのような処理を省き、またインクの消費量を抑える観点からは、一方向弁30側のジョイント針238が記録ヘッド側20のジョイント針228に先立って収納空間内に進入するよう構成することが好ましい。すなわち、ジョイント針穴239および229が、それぞれ、ジョイント針238および228先端に設けられるのであれば、一方向弁30側のジョイント針238を記録ヘッド側20のジョイント針228より長くしておくような構成である。そのような構成によれば、一方向弁30側のジョイント針238が収納空間内に進入することで、一方向弁30から空気が導入されて適正な負圧が得られてから記録ヘッド20への供給経路が形成されることになる。
【0145】
図21(a),(b),(c)は、特に、図20に示したインクタンク10におけるそのインク供給動作に伴うインクタンク内の負圧の調整を説明するための図である。
【0146】
図21(a)は、インク収納空間内にインクが満充填されたインクタンク10の初期状態から、そのインクが少し消費された状態を示している。このようなインク消費に伴い、収納空間では消費されたインクの体積分の空間に応じた圧力低下を生じ、これに応じて可動部材11は下方へ変位する。この可動部材11の変位は同時にばね215の変位を生じさせ、ばね215はその変位に応じた弾性力を生じて最終的に平衡状態に至る。そして、この平衡状態における収納空間の上記弾性力に応じた負圧がそのときインク量に対応した負圧となる。
【0147】
図21(b)は、さらにインクの消費に伴なって、可動部材11が下方に変位し可動部材11の下方への自由変位が最大となった状態を示している。すなわち、この状態からさらにインクが消費されると、可動部材11としての可撓性膜にその保持部との間で張力が作用し可動部材11の変位が阻止される。
【0148】
この状態からさらにインクが消費されると、上述したばね215の弾性力と上記の張力の和(このうち張力のみがインク量に応じて変化する)に応じた負圧が生じる。この過程で、予め定められた所定の負圧を越えると、図21(c)に示すように、一方向弁30の可動部材231は上記負圧と大気圧との関係によってばね232の弾性力に抗して上方に変位して弁を開状態とし、ジョイント針238の穴239を介して収納空間内に外気が導入される。これにより、負圧は適正な値に維持され、その後の記録ヘッドのインク吐出動作においてもその動作に応じて良好にインクを供給し、インクタンク10内のほぼ全てのインクを使い切ることができる。
【0149】
以上のように、収納空間内の圧力は所定の圧力以下にはならず、これにより、収納空間内の負圧を、常に一定の範囲内に維持することができ、記録ヘッド20にインクを安定供給して、所期の記録動作を実行することが可能となる。
【0150】
なお、収納空間内にエアーが溜まっている状態において、外気圧の低下や環境温度の上昇によって、その収納空間内のエアーが膨張した場合には、可動部材11が上方に変位する。すなわち、可動部材11は、収納空間内のエアーの膨張に応じて上方に変位することにより、そのエアーの膨張分の圧力変化を吸収する。したがって、収納空間内の圧力は所定圧以上には上昇せず、その収納空間内は、より確実に一定圧に維持されることになる。また、このように収納空間内のエアーが膨張した場合においても一方向弁30は閉じたままであり、インクタンク10内のインクが外部に漏出することはない。
【0151】
また、一方向弁30は、インクタンク10内から外部へのインクの導出を阻止するため、インクタンク10の使用時等における姿勢の如何に拘わらず、インクタンク10内のインクは連通口16から外部に漏出しない。したがって、インクタンク10の使用時等における姿勢は、特に制限を受けることもない。
【0152】
2.4 インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続態様の第4例
図22は、インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続態様の第4例を示す断面図である。
【0153】
本例は、インクタンク、記録ヘッドおよび一方向弁をそれぞれ別体のものとしたものである。同図に示すように、インクタンク10は記録ヘッド20を一体に設けたホルダ22Aによって保持され、また、この記録ヘッド20はホルダ22Aとともにインクジェット記録装置に設けられたキャリッジ22Bに装着される。この構成においても、上例と同様、インクタンク10が装着される際に一方向弁30のジョイント針238と記録ヘッド20へのインク供給用のジョイント針228が、インクタンク10のゴム栓18、17にそれぞれ挿入される。
【0154】
本例の一方向弁も、インクタンクと別個に設けられることにより、上例で説明した効果と同様の効果を得ることができることはもちろんであり、さらに、その配設位置について次のような利点を有するものである。これは、本例の一方向弁として、記録ヘッドの寿命に比べて長い寿命のものを用いる場合であり、これにより、記録ヘッドを交換してもこの弁をさらに用いることができ、実質的に記録装置の寿命と同様の期間用いることが可能となる。この結果、一方向弁の分についてランニングコストを低減することができる。
【0155】
2.5 インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続態様の第5例
図23は、インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続態様の第5例を示す断面図である。
【0156】
本例では、インクタンクと記録ヘッドが一体に形成され、これと一方向弁とをそれぞれ別体のものとしたものである。同図に示すように、インクタンク10と記録ヘッド20は一体に形成される。すなわち、インクタンク10と記録ヘッド20はフィルタ225を備えたインク流路227を介して接続されている。そして、このインクタンク10と記録ヘッド20一体のユニットは、ホルダ22Cに装着される。一方、一方向弁30はこのホルダ22Cに一体に設けられる。この構成では、インクタンク10が装着される際に一方向弁30のジョイント針238のみが、インクタンク10のゴム栓18に挿入されることになる。
【0157】
本例の一方向弁も、インクタンクと別個に設けられることにより、上例と同様の効果を得ることができることはもちろんであり、さらに、その配設位置について次のような利点を有している。例えば、記録ヘッドやインクタンクの耐久性の低下に影響を及ぼす特殊なインクを用いるような場合、インクがなくなりインクタンクを交換するときに記録ヘッドも同時に交換することが望まし。これに対し、一方向弁は、図20に係る例のホルダ22と同様、インクジェット記録装置のキャリッジに固定されもしくはキャリッジの一部をなすものである。すなわち、本実施形態の一方向弁として、記録ヘッドの寿命に比べて長い寿命のものを用いることにより、記録ヘッドを交換してもこの弁をさらに用いることができ、実質的に記録装置の寿命と同様の期間用いることが可能となる。この結果、一方向弁の分についてランニングコストを低減することができる。
【0158】
2.6 インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続態様の第6例
図24は、インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続態様の第6例を示す断面図である。
【0159】
図24に示すように、本実施形態は上述した三つの例と異なり、一方向弁30を記録装置の所定の箇所に固定的に設け、ジョイント針238と弁30とをチューブ235によって接続するとともに、ジョイント針238をキャリッジ状のホルダ22Dに固定したものである。一方、インクタンク10と記録ヘッド20は一体に形成され、この一体のユニットはホルダ22Dに装着される。そして、この装着の際、インクタンク10のゴム栓18に、ホルダ22Dに固定されたジョイント針238が挿入されることになる。
【0160】
本例の一方向弁も、インクタンクと別個に設けられることにより、図20に係る例で説明した効果と同様の効果を得ることができることはもちろんであり、さらに、その配設位置について次のような利点を有している。例えば、一方向弁について精度の高いものを用いそのためそのサイズが比較的大きくなる場合には、キャリッジ上に設けるとそのためのスペースによってキャリッジ自体も大きくなり記録装置が大型化するおそれがある。これに対し、一方向弁を装置のスペースを有効利用できる所定箇所に設けることにより、装置の大型化をもたらすことなく精度の高い弁を用いることが可能となる。
【0161】
なお、チューブを用いた本実施形態は、インクタンクと記録ヘッドが一体の例に関するものであるが、チューブの形態はこのような一体の場合にのみ適用されず、図20、図22に示したインクタンクと記録ヘッドが別体の形態であっても適用できることは以上の説明からも明らかである。
【0162】
2.7 インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの接続態様の第7例
図25は、図24に係る例の変形例を説明する図である。
【0163】
同図に示すように、一方向弁30とジョイント針238とを接続するチューブ35A、35Bの経路の途中にバッファタンク236を設ける。これは、インクタンクの環境の比較的大きな変動や装置に加わる衝撃などにより、ジョイント針238を介してチューブ内にインクが入り込んだ場合、これが一方向弁30に至ると弁動作に悪影響を及ぼしたりすることなどを未然に防止するためである。すなわち、仮に、ジョイント針238を介してインクがチューブ235A内に入り込んでも、そのインクはバッファタンク236に留まり、一方向弁30に直接接続するチューブ235Bに入り込むことは防止できる。なお、図25は、チューブ235Aの下端がバッファタンク236に貯留されたインク内に浸された状態を示しているが、このバッファタンク内のインクは一方向弁30を介して外気が導入される際、インクタンク10内外の圧力の関係に応じてインクタンク10内に戻される。
【0164】
なお、可動部材11は前述したように、インクタンク10の圧力が急激に増加した場合にその増加を吸収すべく変位できるよう構成されたものであるが、本実施形態のバッファ構成は、その変位によっても吸収できないような圧力変動やインク振動によってチューブ内にインクが入りこむような場合に対処したものである。
【0165】
2.8 インクタンクもしくは記録ヘッドの装着機構
図26(a)および26(b)は、以上説明したインクタンクもしくは記録ヘッドを装着するための構成を模式的に示す図である。
【0166】
図26(a)は、図20に示した形態のインクタンク10を装着し固定する構成を示しており、具体的には、ホルダ22の上端に設けられた爪23がインクタンク10の上端部に係合してそのインクタンクを固定するものである。
【0167】
一方、図26(b)は、図23に示した形態のインクタンク10を装着し固定する構成を示しており、ホルダ22Cの上端に設けられた爪23がインクタンク10の上端近傍に形成された溝10aに係合してそのインクタンクを固定するものである。
【0168】
2.9 変形例
なお、一方向弁を介してインクタンク外部から強制的に大気を導入して加圧するような構成としてもよく、これによってもインクタンク内部の圧力を適性な範囲に保つことが可能となる。
【0169】
さらにこれに関連して、インクタンクにおける収納空間の内壁は、少なくとも一部を可撓性膜などの可動部材によって構成する他、全部を可動しない剛性の部材によって構成してもよい。
【0170】
3.他の形態に係る一方向弁を用いたインクタンクの諸例
以上の諸例では、インクタンクの記録ヘッドと接続される側部に大気連通部ないし一方向弁が配設されるものとしたが、それらの配設位置はそれらの例に限られることなく、適宜の部位に設けることができる。以下では、大気連通部をインクタンクの可動部材に設けるとともに、一方向弁として機能する機構をインクタンクを収納する容器に配設した諸例を説明する。
【0171】
3.1 第1例
図27(a)〜(c)はその第1例を示す。本例に係るインクタンク127は、図9に示したものとほぼ同様の形態を有し、図16に示したものとほぼ同様の容器130内に収容されている。但し、本例のインクタンクは、フレーム115のインク供給口15と同じ側部に連通口16を設ける代わりに、タンクシート部106と圧力板109とを貫いて大気導入用開口2が設けられている点が図9の構成と異なっている。また、図示の例では、容器130は単一のインクタンクを収容するものとして示されており、収容空間内は大気連通口3を介して大気に開放されている。
【0172】
図27(a)は、インクタンク127内にインク7が満たされてインクタンク127が膨らんでいる状態を示す。ここでインク7は、フィルタ137を介して供給路136へ供給され、さらにインク使用部としてのヘッドチップ133に設置されている、ヒータボード134へと更に供給される。
【0173】
図27(a)において、インクタンク127を構成しているタンクシート部106と圧力板109の接合部に大気導入用開口2が形成されている。大気導入用開口2は、タンク収納室130の該大気導入用開口2に対応する位置に取り付けられた密閉部材として作用する密閉ゴム1で塞がれている。ここで、大気導入用開口2が密閉ゴム1で塞がれている時は、大気導入用開口2周囲の平面性が必要であり、また、インクタンク127の収縮や膨張で密閉ゴム1との相対的位置関係がずれないようにする必要があることなどを考慮すると、大気導入用開口2が設けられている可動部材としての圧力板109は、インクタンク127の収縮及び膨張によって変形しない剛性を持つ平板状部材であることが好ましい。本例においては、圧力板109はSUS304で構成した板状部材を用いている。
【0174】
なお、この大気導入用開口2は、上記したようにタンクシート106と圧力板109の接合体に貫通しインクタンク127内部と外部とを連通している穴であり、その大きさはインクがメニスカスをはることができ、密閉ゴム1から離間されたとき、即ち密閉状態が解放されたときに、更にこの部分から空気を取り込むことができる大きさであればよい。具体的には、直径0.01mm〜2mm程度の大きさが好ましい。使用するインクの表面張力・粘度等の物性やタンクシート106の剛性・弾性等を考慮して、適切な大きさを選べばよい。また、大気導入用開口2の形状としても円形に限定されるものではなく、同一面積の楕円形や多角形の形状でもかまわなく、特に形状を規定するものではない。また、大気導入用開口2に密着する密閉ゴム1としては、大気導入用開口2がこの部分に接触した際に、完全な密着を得ることが必要であるため、ゴム、エラストマ−又は弾性を有する樹脂等の部材を用いることが好ましい。ここで、密閉ゴム1は、インクタンク127が膨らんでいる状態の時には、その膨張によってある程度圧縮されている状態にある。すなわち、密閉ゴム1は、無負荷状態(圧縮されていない状態)における所定の大きさから押し込まれている状態にある。したがって、インクタンク127の膨張力と、密閉ゴム1の圧縮されていることからくる反発力で、大気導入用開口2の密閉を確実なものにしている。さらに、必要に応じ、密閉ゴム1とタンクシート106の密着する部分における大気導入用開口2の外周部に、耐インク性に優れたグリス等を塗布して密閉性を上げることも有効である。
【0175】
次にインクが消費されて、インクタンク127内のインク量が減少してきた場合の動作について説明する。図27(b)は、インクの消費に伴って、インクタンク127内の体積が減少して収縮する状態を示す。これはインクタンク内のインクの体積が減少することによって起こるものであって、これに伴って可動部材としての圧力板109が矢印A1及びA2方向に向かって移動する。この圧力板109の移動で、ばね107の部分も同一方向に押され、それに伴い、ばねの反発力がインクへの負圧となって現れる。従って、このインクタンク127の収縮が進んでいくと、インクへの負圧は徐々に強くなっていく。
【0176】
さらに、このようなインクタンク127の収縮動作が進むにつれ、密閉ゴム1は、圧縮される力が次第に弱まることにより、そのゴム弾性によって元の所定の大きさに戻っていく。図27(b)は、この過程における密閉ゴム1が最大に伸びた状態(元の所定の大きさに戻った状態)で大気導入用開口2と離間される直前の状態を示している。この状態は、密閉ゴム1が圧縮されていない状態で、密閉ゴム1に対するインクタンク127からの押圧力が発生し始める状態でもある。
【0177】
この後、更にインク消費が継続されていくと、更にインクタンク127が収縮しようとするため、密閉ゴム1に対するインクタンク127の押圧力がほぼ0になるとともに、瞬間的に図27(c)に示すように、密閉ゴム1が大気導入用開口2から離間される状態となる。この離間によって、大気導入用開口2よりインクタンク127内へ空気4が導入される。この空気4が導入されることによって、タンク内体積が増大し、それによってタンクシート106は再び外方、即ち矢印B1及びB2方向へ広がることで、大気導入用開口2は密閉ゴム1に再び当接し、瞬時に密閉され、再び図27(b)の状態に戻る。ただし、この状態では中に貯留されているインクの液面7aは図27(a)の状態よりも下がっていることはいうまでもない。この図27(b)と図27(c)との状態になる動作の繰り返しによって、インクの消費が進んでも、タンク内の負圧は、常に一定の範囲内を保つことが可能となる。また、インクジェットヘッドを介して消費されたインクと略同体積で、インクタンク内に空気が導入される。したがって、インクタンク内のインクを完全に該導入空気で置換し、ヘッド側に殆どのインクを供給することが可能となり、タンク内のインクを無駄なく消費できる。
【0178】
更に、密閉ゴム1を伸縮できるように設置しているため、インクタンク127周囲の温度上昇や外気圧減少等が発生してインクタンク127内の空気が膨張しても、その膨張分を、インクタンク127がそのばね107や可動部材109の作用により速やかに膨張して吸収するとともに、このインクタンク127の膨張分は密閉ゴム1の伸縮動作で吸収される。これによって、インクタンク127内の負圧はそのままに維持されるとともに、大気導入用開口2と密閉ゴム1との密閉性を高めるように作用するため、大気導入用開口2からインク漏れを起こすこともない。
【0179】
本例の構成においては、一方向弁として機能する機構をインクタンクを収納する容器内に配設したことにより、インクタンクおよび一方向弁全体のコンパクト化が図られただけでなく、インクタンクの可動部材を利用することで一方向弁の部品点数を低減し、製造コストを低廉化することができる。
【0180】
3.2 第2例
図28(a)〜(c)は、図27(a)〜(c)における密閉部材を別な形態で適用した実施例を示す。ここでは図27(a)〜(c)における密閉ゴム1の替わりに、インクタンク127の収縮の方向に移動可能な密閉部材311が設けられている。この密閉部材311は、図28(d)に示されるように、樹脂材料で成形された2つの円盤311A及び311C、並びにこれらをつなぐ軸311Bからなる。まず円盤311Aと軸311Bとをビス止めあるいは接着等で接合し、この接合体を、インク収容室130の壁に設けた穴9に内側から通す。この時、軸311Bの周囲に巻かれる形状のコイルばね8を円盤311Aとインク収容室130の壁との間に介在させる。この後、軸311Bと円盤311Cとをビス止めあるいは接着等で接合し、密閉部材311を形成するとともに、密閉部材311をインク収容室130の壁に取り付ける。ここでコイルばね8のばね定数はインクタンク内のばね107のばね定数よりも低い値として設定される。なお、密閉部材311は、本実施態様では樹脂材料で成形されているが、これに限られない。例えば、金属材料で形成してもよい。
【0181】
本例においては、密閉力を発生する部材としてコイルばね8を使用したので、図27(a)〜(c)のように密閉ゴムを用いて密閉性を確保する場合に比して、より精密な負圧調整が可能となり、耐久性も向上する。
【0182】
以上のような構成における本実施形態のインク供給装置の動作に関する説明を行う。
【0183】
図28(a)は、インクタンク127が膨らんでいる状態を示している。ここではインクタンク127の膨らみに伴う圧力板109による押圧力で、密閉部材311がインク収容室の外方へ押し出される。この時、コイルばね8は縮んだ状態になっている。
【0184】
続いて、インクが消費されていくと図28(b)の状態となっていく。図27(a)〜(c)での説明と同様にインクタンク127は収縮し、圧力板109は矢印A1及びA2の方向に移動していく。これと共に、コイルばね8のばね力により矢印A2方向に密閉部材311が圧力板109の動きに追随していく。この間大気導入用開口2は密閉部材311の円盤311Aで密閉されたままである。そして、この密閉部材311は、実質上硬質の成形部品であり、軸311Bの長さ分しか動けないため、ついには円盤311Cがインク収容室130の外壁面に突き当たる。この状態が図28(b)で示した状態である。この状態は、上例における図27(b)で示されている状態と実質的に同じである。
【0185】
さらに、インク消費が継続されていくと、密閉部材311と大気導入用開口2との間が離間されて大気導入用開口2の密閉が解除される。すると直ちに図28(c)のように大気導入用開口2より空気が導入され、タンク内体積が増大する。それによってタンクシート106は再び外方、即ち矢印B1及びB2方向へ広がっていき、大気導入用開口2は密閉部材311により瞬時に再び密閉され、図28(b)の状態に戻る。ただし、この状態では中に貯留されているインクの液面は図28(a)の状態よりも下がっていることはいうまでもない。この図28(b)と(c)の状態になる動作の繰り返しによって、インクの消費が進んでも、タンク内の負圧は一定の範囲内を保つことが可能となる。
【0186】
なお、大気導入用開口2と密閉部材311との間の密閉状態を高めるために、密閉部材11中の円盤11Aにおけるタンクシート106との接触面にゴムシートを貼付したり、あるいは大気導入用開口2に対応する箇所の周囲に耐インク性に優れたグリス等を塗布することも有効である。
【0187】
3.3 第3例
図29は、インクタンク127内に設置するばねを板ばね形状からコイルばねの形状に変更した実施態様であり、他の構成は図27(a)と同様である。この例においても、コイルばね5によって、インクタンク127の収縮・膨張が前述の実施例1と同様に起こり、密閉ゴム1も同様に動作し、インクタンク127内の負圧を所定の範囲内に維持させることができる。
【0188】
本例においては、インクタンク127内のばねにコイルばねを使用したことにより、圧力板109の傾き方向の変位に追従し易い。これにより、密閉ゴム1の密閉面と圧力板109とが平行状態でない場合でも、圧力板109が密閉ゴム1の密閉面にならいやすくなり、密閉性をより高めることができる。
【0189】
3.4 第4例
図30は、タンクシートの一部をタンク収納室130の内壁に接着し、収縮・膨張を起こす部分を一面だけにしたタンクシート206でインクタンク227を構成させた例である。したがって、本実施例において可動部材として作用する圧力板109は1枚である。更にここではインクタンク内部に設置するばねを円錐状のコイルばね6としている。このような形態であっても、インクの消費に伴ってタンクシート206はタンクの内側、即ち矢印C方向に向かって収縮し、これと同時に圧力板109がタンクの内側に向かって移動することで可動部材として作用する。これによって大気導入用開口2が密閉ゴム1から離間し、実施例1で説明したことと同様に大気導入用開口2より空気を導入する。この空気の導入によって、再びタンクは外側、即ち矢印D方向へ膨張し、これによってインクタンク227内の体積が増大し、再び大気導入用開口2と密閉ゴム1とが密着する。これらの動作の繰り返しにより、インクタンク内の負圧を所定の範囲内に維持させることが出来る。
【0190】
3.5 第5例
図31は、図27(a)〜(c)に係る例と同形状のインクタンク127の上方に大気導入用開口12を設け、さらにこの大気導入用開口12を塞ぐ密閉ゴムの形状として、大気導入用開口12と接する部分を尖塔形状にした密閉ゴム21としている。このような構成をとることによって、次のような利点が生まれる。まず大気導入用開口12が上方にあることにより、ここから空気を導入する際に、空気がインク内を通過する機会はタンク内のインク量が多い時、すなわち、インクの液面7Aが大気導入用開口12より上方にある場合となる。従ってインク量が消費されて、インク残量が少なくなってくると、大気導入用開口12から導入されてくる空気は、インク内を通過しないで直接に空気が溜まっている部分へと進む。これによって、インク中を気泡が通過することによる泡立ちを抑制することが可能となる。特に、インクの泡立ちは、インクタンク127内のインク量が少なくなった時ほどその影響が大きいため、本例のような構成をとることは望ましい。
【0191】
また、密閉ゴム21の形状が尖塔形状であることによって、大気導入用開口12を塞ぐ際に平面形状同士で塞ぐよりも確実な密閉を実現できる。
【0192】
3.6 第6例
図32は、圧力板309及びコイルばね25を、タンクシートの一部をタンク収納室130の内壁に接着し、収縮・膨張を起こす部分を一面だけにしたタンクシート306で構成させたインクタンク327の外側に設置したものである。なお、コイルばね25は、インクタンク327を膨張させる方向、すなわち、図中矢印F方向に付勢されている。ここで圧力板309とコイルばね25との間の接合は、図11(a)で述べた方法と同様にスポット溶接を適用することができ、また圧力板309とタンクシート306との間の接合も図11(b)で述べた方法と同様に熱接着で達成できる。またインク収容室130の内壁部とコイルばね25との間の接合は、接着や嵌合等の公知の方法を適用することができる。この場合においても、インクの消費が進むとインクタンク327を形成しているタンクシート306はタンクの内側、即ち矢印E方向に向かって収縮し、これと同時に圧力板309がタンクの内側に向かって移動することで可動部材として作用する。これによって大気導入用開口2が密閉ゴム31から離間し、図27(a)に係る例で説明したことと同様に大気導入用開口2より空気を導入する。この空気の導入及びコイルばね25の作用によって、再びタンクは外側、即ち矢印F方向へ膨張し、これによってインクタンク327内の体積が増大し、再び大気導入用開口2と密閉ゴム31とが密着する。これらの動作の繰り返しにより、インクタンク内の負圧を所定の範囲内に維持させることが出来る。
【0193】
以上の実施例においては、いずれもインクタンク内部又は外部に弾性部材としてのばねを設けた形態で説明をしてきたが、タンクシートに使用するフィルムの剛性によっては、このばねを設置しなくともフィルムの剛性のみでシートの収縮・膨張を達成できる場合には、必ずしも弾性部材を設けなくともよい。更に可動部材としての圧力板を相対する位置に2個設けた場合、弾性部材はその間に設置しているが、これに限らず各可動部材取り付け位置のシートに対して外側と、インク収容室の内壁との間で設置しても構わない。
【0194】
また、各実施例では密閉部材として、所定の範囲を変位可能な、ゴムや軸とばねからなる密閉部材を挙げているが、所定の圧力でインク収納部としてのインクタンク内に大気を導入することが出来、インク収納部内の空気が膨張しても大気導入用開口からインクの導出を阻止する一方向弁のような構成であれば、必ずしも変位可能な弾性部材で密閉部材を構成する必要はない。具体的には各実施例で示されるインクタンク収容室130の壁面を利用してもよい。なお、このように密閉部材が変位しない構成を利用する場合には、第1、第2、第4例のように可動部材が複数備えられた構成としたほうが、内部に空気がある場合の環境変化に対して大気導入用開口のない可動部材が移動することが出来るので、より望ましい。
【0195】
さらに、本発明において可動部材を付勢する弾性部材と、密閉部材として弾性部材を用いる液体収納容器にあっては、密閉部材の弾性力は可動部材を付勢する弾性部材の弾性力よりも弱いほうが、インクタンク内を所定の圧力以下とする場合に初期に充填できるインク量を多くすることが出来、しかもタンク内に空気が導入される際の可動部材の可動量(バッファ空間)を確保できるので、より望ましい。
【0196】
また、大気導入用開口については、インク収容部を形成する部分であれば液体供給口としてのインク供給口を除きどこに設けてもよいが、上述の各実施例のように剛体の可動部材がインク収容部を構成する場合には可動部材に設けたほうが、より安定した大気の導入を可能とする点で望ましい。
【0197】
また以上の説明の中で、インクタンクを1つとして1色のインクを収納する形態で説明してきたが、インクタンク収容室内に、それぞれ異なる色のインクを収納するインクタンクを、3個乃至4個配列し、各インクタンクにそれぞれ異なるノズル群を接続すれば、カラー用のインクジェットプリントヘッドを構成できることはいうまでもない。例えば図16のように複数のインクタンクを収容する場合には、インクタンク間のに隔壁を配置し、この隔壁に一方向弁として機能する部材を配設すればよい。
【0198】
4.可動部材構成の好適例
次に、外部の気体がインクタンク内部に侵入するのを防止する上でどのような構成が好ましいかという点について述べる。
【0199】
これは、次のような膜における気体の透過メカニズムに関する知見に基づいてなされたものである。
【0200】
4.1 気体透過のメカニズム
ある材料を気体分子が透過するメカニズムとしては、大きく分けて2つある。1つは毛細管流れ機構であり、他の1つは活性化拡散流れ機構である。前者は、ピンホールなどの毛細管を通して流れるメカニズムであり、本発明が解決するメカニズムではない。他方、後者の活性化拡散流れ機構は、気体分子が実質的に孔のないプラスチックフィルムの中を透過するときの流れであり、重要なメカニズムである。以下、膜を透過する活性化拡散流れ機構について説明する。
【0201】
活性化拡散流れの場合、次に述べるように、第1領域にある気体が膜Mを透過して第2領域に侵入する。
【0202】
まず、第1領域にある気体分子が膜の表面に凝縮し、その内部に溶解する。その溶解濃度は、第1領域における気体の分圧に比例する。その後、膜の内部に溶解した気体分子は、膜内の濃度勾配を駆動力として、濃度の低い第2領域の方向に向かって拡散していき、そして第2領域側の表面に達してから蒸散放出される。つまり、気体分子は、溶解、拡散および脱着の3つのステップによって膜を透過する。
【0203】
本発明においては、例えば、液体収納容器を構成する可撓性材料(膜)を通して、容器外の領域から容器内の領域に向かって酸素や窒素などの気体分子が透過する状況を考えている。
【0204】
まず、容器内の第2領域に、負圧の気体が存在する場合を考える。この場合、第1領域から第2領域に向かって気体が透過する駆動力は、容器内部の負圧と気体の浸透圧である。容器外の第1領域と容器内の第2領域との間において、酸素分子や窒素分子の分圧にほとんど差がなくとも、第2領域における液体成分(例えば水分)はほぼ飽和状態にあると考えられるため、液体成分の濃度に関しては、第1領域と第2領域との間に差が生じる。したがって、その第2領域における液体成分の濃度を薄めるべく、第1領域から第2領域に向かって気体を透過させようとしてする駆動力として、気体の浸透圧が生じる。そのため、第1領域から第2領域への酸素分子や窒素分子の浸透量は、後述するように、これら2つの圧力(負圧と浸透圧)を加えた第1および第2領域間の圧力差、膜の面積、および経過時間に比例し、膜の厚さに反比例する。
【0205】
次に、第2領域に液体のみが存在する場合を考える。この場合、活性化拡散流れ機構において、3ステップ目の脱着機構が大きく異なる。通常、酸素分子や窒素分子はあまり液体には溶解せず、通常使用している場合、それらは液体中において既に飽和状態にある。つまり、第2領域側における膜の表面に気体分子が達しても、液体中の第2領域では、気体分子が既に飽和状態にあるため、その気体分子は膜から脱着できない。したがって、領域Bが液体である場合では、酸素分子や窒素分子の透過はきわめて強く抑制されることになる。
【0206】
したがって、液体収納容器における気体の透過を効果的に防止するためには、容器内部の気体領域と、容器外部の大気領域と、の間に位置する容器の部位ついて考えればよい。
【0207】
膜を気体が透過するメカニズムは、一般に下式によって表される。
Q=G・Δp・S・t/T
ここで、
Q[g]:気体の移動量
G[g・m/atm・m・s]:膜の材料に固有の気体透過係数
Δp[atm]:その材料によって区切られた領域の圧力差
S[m]:膜の表面積
T[m]:膜の厚さ
t[s]:経過時間
とする。
【0208】
これらのパラメータのうち、Δpは、容器内の領域と容器外部の領域(外環境)との間における圧力差であり、液体成分濃度の差によって生じる浸透圧と、容器内の負圧によって生じる圧力差と、を加えた大きさである.容器内は、容器内の液体が外部に漏れ出ないように負圧に維持される。容器内への気体の浸透を抑えるべく、この圧力差Δpを小さくすることは難しい。また、膜Mの厚みTを増加させることは、それを可撓性部材として用いる場合に、その剛性が高まって可撓性の低下を招くために、その機能が損なわれるおそれがある。
【0209】
したがって、容器内への気体の透過を抑えるためには、容器内に存在する気体(空気)と接する容器内面の表面積Sを減少させることが有効となる。つまり、可撓部材料や気体透過度の高い部材に関しては、それを容器内の気体とできる限り接触させないことにより、それらの材料から容器内への気体の浸透を効果的に防止することになる。使用時の姿勢における可動部材の好ましい位置づけは、このような知見に基づいてなされたものである。
【0210】
4.2 構成例
図33は、上記知見に基づいて構成した液体収納容器(インクタンク)を説明するための図である。
【0211】
容器410内部には、剛性の容器本体411と可撓性のシート(可撓性部材)412によって液体Lの収納空間(収納部)S1が形成されている。シート412は、剛性の圧力板413を介して、ばね414により図33中の下方、つまり収納空間S1を拡大する方向に付勢されている。これにより、収納空間S1は所定の負圧状態とされる。図33のように、収納された液体Lが全く使用されていない未使用の容器410は、その収納空間S1を最大とするように、シート412が図33中の下方に変形している。容器410は、図33のように、シート412を下側にして使用される。したがって、容器410の使用時において、シート412は、重力方向の下側に位置することになる。つまり、シート412は、収納空間S1の重力方向における1/2の位置よりも下側に位置する。収納空間S1の下部には液体導出口415が設けられており、また、本体411の上部には大気連通口416が設けられている。また、容器410内には、シート412の下側に位置する空間S2が形成されており、その空間S2は連通口417を通して大気に開放されている。
【0212】
本例の場合は、本体411の上部に設けた大気連通口416に、ばね421,受圧板422,可撓性部材423,およびシール部材424を備えた開閉機構である一方向弁430取付けられている。受圧板422と可撓性部材423には通気孔422A,423Aが形成されており、図33のように、ばね421が受圧板422を介して可撓性部材423をシール部材424に押し付けることによって、通気孔422A,423Aが閉じられる。この開閉機構は、収納空間S1内と外気との間の圧力差によって開閉する。すなわち、収納空間S1内の負圧が所定以上の大きさに達していないときは、図33のように通気孔422A,423Aを閉じて、収納空間S1内への外部空気の導入を阻止する。一方、収納空間S1内の負圧が所定以上となったときは、ばね414の不勢力に抗して、可撓性部材423の変形を伴って受圧板422と可撓性部材423が下方に変位し、通気孔422A,423Aを開く。これにより、大気連通口416および通気孔422A,423Aを通して、外部の空気を収納空間S1内に導入する。
【0213】
この結果、収納空間S1内の負圧が所定の範囲に維持されることになる。また、ばね421の強さの変更などによって、外部の空気を収納空間S1内に導入するときの負圧の大きさを容易かつ高精度に設定することができる。
【0214】
一方向弁430の機能をより具体的に説明すると次のとおりである。以下の説明においては、液体Lとしてのインクを収納空間S1内に収納し、そのインクを導出口15からインクジェット記録ヘッドに供給するものとする。その記録ヘッドは、インクを吐出するためのエネルギーとして、電気熱変換体から発生する熱エネルギーを利用するものであってもよい。その場合には、電気熱変換体の発熱によってインクに膜沸騰を生じさせ、そのときの発泡エネルギーによって、インク吐出口からインクを吐出することができる。
【0215】
図33のように、収納空間S1内にインクが十分に満たされているときには、圧縮されているばね414の圧縮変位量に従った伸長力(圧縮による反力)が圧力板413を介してシート412に作用する。また、このときの伸長力の向きは図33の下方、すなわちばね414が伸長する方向に働く。このとき、収納空間S1内に対しては、その収納空間S1の内側に向かう圧力が作用する。すなわち、収納空間S1内の圧力P1は、大気圧を「0」とすれば負の符号を有する値(負圧)となる。つまり、収納空間S1内にて発生する負圧P1は、ばね414による力の向きと逆方向である。このように負圧P1が収納空間S1に作用していることによって、記録ヘッド内におけるインク吐出用のノズルのメニスカスに対しても負圧が作用し、その記録ヘッドに設けられているインク吐出口からのインクの漏出が防止される。
【0216】
一方、この状態のときは、一方向弁の弁室内において、通気孔422A,423Aがシール部材424によって密閉される。また、この弁室内には、連通口416を介して収納空間S1の負圧P1が作用する。この弁室内でもばね421の伸長力が働いており、この伸長力は図33の上側方向、すなわちばね421が伸長する方向に作用する。つまり、弁室内においてばね421が作用する圧力の向きは、ばね421が伸びる方向と等しい。通気孔422A,423Aがシール部材424によって密閉されるための弁室内の圧力P2は、負圧P1の絶対値よりも大きい。すなわち、負圧P1に対して、それに逆らうばね421と可撓性部材423とによる力が大きい状態を維持することによって、一方向弁が密閉状態に保たれる。
【0217】
さらに、記録ヘッドからのインク吐出が進行して、収納空間S1内のインク残量が減少すると、これに伴って収納空間S1内の負圧P1も高まる。
【0218】
すなわち、収納空間S1内におけるインク残量の減少に伴って、密閉空間である収納空間S1内の体積も実質的に減少し、これにしたがってシート412は上方に変位する。このシート412の変位にしたがって圧力板も上方に変位し、ばね414の圧縮が進行していく。このばね414の圧縮の進行は、その伸長力の増大を意味し、収納空間S1内の負圧P1も高まっていく。
【0219】
そして、高まる収納空間S1内の負圧P1は、いつかは、一方向弁の弁室内の圧力P2とがつり合うことになる。そのときまでは、一方向弁が密閉状態に保たれる。その後、さらに負圧P1が高まって、弁室内の圧力P2によっては、シール部材424が通気孔422A,423Aを密閉できなくなり、その瞬間に、それらの密閉が解除される。
【0220】
この結果、通気孔422A,423Aから大気が流入して、それが連通口416を介して収納空間S1内に取り込まれる。この大気の取り込みによって、減少していた収納空間S1内の容積は増大し、同時に、高まっていた負圧P1は逆に低下する。その負圧P1の低下により、一方向弁における通気孔422A,423Aがシール部材424によって再び密閉される。
【0221】
その後、負圧P1の変化は非常に小さくなり、ほぼ一定の負圧値を保ってインクの消費が進む。そして、再び負圧P1が高まって、弁室内の圧力P2によっては、シール部材424が通気孔422A,423Aを密閉できなった都度、それらの密閉を解除して負圧P1を低下させる。一方向弁は、このような動作を繰り返すことによって、収納空間S1内の負圧P1が所定の範囲に維持する。したがって、記録ヘッドは、安定した吐出状態を維持しつつ、収納空間S1内のインクを最後まで使い切ることが可能となる。
【0222】
このように、本例の場合は、収納空間S1内のインクの消費に伴なって、収納空間S1内の負圧と、一方向弁が開口部を閉じる力と、が釣り合った後、さらにインクが消費されて、収納空間S1内の負圧がさらに高まった瞬間に、一方向弁が開口部を開いて、大気が収納空間S1内に取り込まれる。この大気の取り込みによって、収納空間S1内の容積が増大し、同時に、その内部の負圧が低下することによって、一方向弁が開口部を閉じる。
【0223】
図34(a)〜(c)は、容器410の以上の状況を説明するための図である。なお、これらの図において、一方向弁430は模式的に示されている。
【0224】
容器410は、図34(a)のように、シート412が重力方向の下側に位置する姿勢で使用される。そして、液体導出口415を通して、容器410内の液体Lを外部に導出した場合には、まず、図34(b)のように、液体Lの導出量に応じてシート412がばね414に付勢力に抗して上方に変形し、収納空間S1は、負圧を維持したまま容積が減少する。図34(b)においては、シート412が上方に最大限に変形しており、このようなシート412の変形を伴う収納空間S1の容積の減少分がバッファ領域として確保される。そのバッファ領域は、シート412の変形を伴って、収納空間S1内の圧力変動を吸収するための領域である。収納空間S1内の圧力変動は、その収納空間S1における気体(空気)の熱膨張などに起因する。
【0225】
さらに、容器410内の液体Lを外部に導出した場合には、図34(c)のように、バッファ領域を確保したシート412のさらなる変形は伴うことなく、導出される液体Lと置き換わるように、大気連通口416から空気が導入される。つまり、液体Lの導出による収納空間S1内の圧力の減少に伴って、大気連通口16から空気が導入されて、収納空間S1内の負圧が維持される。
【0226】
このように、容器10は、図34(a)のように、収納空間S1内に収納した液体Lが全くされていない未使用の状態から、図34(b)のようにバッファ領域が確保されるまでの間においては、シート412の変形を伴って液体Lを外部に供給し、その後は、図34(c)のように大気連通口416からの空気の導入を伴なって液体Lを外部に供給する。これにより、収納空間S1内の液体Lは、所定の負圧を伴って外部に安定的に供給される。
【0227】
図35は、容器410の使用形態において、収納空間S1内に導入された空気が上方に溜まっているときの説明図である。その収納空間S1内の空気中における内包液体の蒸気濃度は飽和状態に近く、その蒸気濃度と外気の蒸気濃度とは大きく異なる。そのため、収納空間S1内における空気存在部分と、外気との間に、前述した気体の浸透圧が発生し、その収納空間S1内の空気と接する本体411には、図35中の矢印のように、外部の気体を収納空間S1内浸透させようとする浸透圧が働く。また、収納空間S1内は、液体Lの漏れが生じないように負圧となっているため、外気との間に圧力差が生じている。このような収納空間S1の内外における圧力差により、容器410の本体411を通って、外部の気体を収納空間S1内に浸透させようとする力が発生する。このときの気体透過量は、前述した式にしたがう。
【0228】
本例の場合、収納空間S1内の気体(空気)と接する容器410の部分は、剛性(不撓性)の本体411であるため、その本体411の厚みを厚くしたり、その本体411の材料として気体透過度の低い材料(例えば金属など)などを採用することによって、収納空間S1内への外部気体の浸透を抑止することができる。
【0229】
このように、可撓性のシート412に気体の浸透圧が掛からないように、それを重力方向の下側に備えることにより、そのシート412として気体透過度の高い可撓性部材を用いても気体の浸透量を小さく抑えることができる。したがって、液体Lの長期保存においても、シート412の変形を伴うバッファ機構を充分に機能させて、収納空間S1内の圧力変動を吸収することができ、この結果、液体Lの漏出や容器410の破損を防止することができる。
【0230】
4.3 変形例
なお、液体収納容器は、可撓性部材を必ずしも液体の収納部に備える必要はなく、気体透過度の異なる複数の材料によって液体の収納部を構成する場合に、容器の使用時における重力方向の下側に、気体透過度の大きい材料が位置するように構成してもよい。また、本発明の液体収納容器は、インク以外の種々の液体を収納する容器として広範囲に適用することができる。
【0231】
また、剛性(不撓性)の本体411に比べて気体透過度の高い材料である可撓性部材を使用時の姿勢において重力方向下側に位置するようにする他、例えば図36に示すように、可撓性部材412’を多層(例えば2層)構成とし、毛管力によって層間にインクが広がり、保持されるような構成を採ることで、すなわち、インクタンク内外の領域がインク層によって絶縁されるようにすることで、内部への気体の侵入を防止するようにしてもよい。これによれば、インクタンクの使用時の姿勢の制約を緩和してインクタンクないし記録装置としての設計の自由度を向上することができ、さらには様々な姿勢を取り得る運搬時においてもインクタンク内への気体の侵入を有効に防止できる。
【0232】
5.インクタンクの設計条件
5.1 本発明のさらなる実施形態における一方向弁の作動原理
図37は本発明のさらなる実施形態に係る液体収納容器であり、液体収納容器にインクジェット記録ヘッド520(以下、単に「記録ヘッド」と称する)が一体に取り付けられている。ここで液体収納容器(以下、「インク収納容器」とも言う)は、概してインク収納空間510Aが画成されるインク収納室510および弁室530の2室からなり、その両室は連通路517で互いに内部が連通されている。そして、インク収納室510内には記録ヘッド520から吐出させるためのインクが充填され、記録ヘッド520に供給される。
【0233】
なお、記録ヘッド520におけるインクの吐出方式は特に限定されず、例えば、インクを吐出するためのエネルギとして、電気熱変換体から発生する熱エネルギを利用するものであってもよい。その場合には、電気熱変換体の発熱によってインクに膜沸騰を生じさせ、そのときの発泡エネルギによって、インク吐出口からインクを吐出させることができる。
【0234】
インク収納室510の一部には、可動部である可動部材511が配設されており、この部分と外装513との間でインクを収納する空間を画成している。この可動部材511から見たインク収納空間510Aに対する外側空間、すなわち図における可動部材511に対して右側の空間は、大気連通口512によって大気に開放され、大気圧と等しくされている。さらにこのインク収納空間510A内には、下方に設けられているインク供給口518および弁部をなす弁室530との間の連通路517を除いて、実質的に密閉空間を形成している。
【0235】
外装513は、上記のインク収納空間510Aを画成するとともに、可動部材511を外力から保護するシェルとしての役割も果たす。本例の可動部材511は変形可能な可撓性膜(シート部材)によって形成されており、その中央部分は平板状の支持部材である支持板514によって形状が規制されており、その周縁部分が変形可能となっている。そして、この可動部材511は、その中央部分が凸状とされていて、側面形状がほぼ台形となっている。この可動部材511は、後述するように、インク収納空間510A内におけるインク量の変化や圧力変動に応じて変形する。その際に、可動部材511の周辺部分がバランスよく伸縮変形し、その可動部材511の中央部分がほぼ垂直姿勢を保ったまま、図の左右方向に平行移動する。このように可動部材511がスムーズに変形(移動)するため、その変形に伴う衝撃の発生がなく、衝撃に起因するインク収納空間内に異常な圧力変動が生じることもない。
【0236】
またインク収納空間510A内には、支持板514を介して可動部材511を図の右方向に付勢する押圧力を作用することで、記録ヘッド520のインク吐出部に形成されるメニスカスの保持力と平衡して記録ヘッドのインク吐出動作が可能な範囲にある負圧を発生させる圧縮ばね形態のばね部材515が設けられている。なお、図37の状態は、インク収納空間510A内にほぼ完全にインクが充填された状態を示しているが、この状態でもばね部材515は圧縮された状態にあり、インク収納空間内に適切な負圧が生じているものとする。
【0237】
記録ヘッド520とインク収納室510との結合は、記録ヘッドに設けられている供給管521がインク収納室510内に挿入されることによってなされる。これによって両者が流体的に結合され、記録ヘッド520へインクが供給可能となる。なお、この供給管521の周囲にはシール部材524が取り付けられることで、供給管521とインク収納室510との密着を確実なものにしている。また、供給管521の内部にはフィルタ523が備えられ、供給されるインク中に混入した不純物が記録ヘッド520内へ流れ込んでいくことを防止している。
【0238】
次いで弁室530について説明する。弁室530は連通路517を介してインク収納空間510Aとの間で内部が連通している。本例においては、連通路517の形成部材に内径0.2mmのステンレス製パイプを用いている。さらに、連通路周囲の密閉性を向上するために、ステンレス製パイプの周囲にゴム製のシール部材538が取り付けられている。
【0239】
弁室530には、一方向弁の構成要素である開口部536を有して弁閉鎖部材となる弁閉鎖板534と、開口部536を密閉する弁シール部材537とを設けてあり、さらに弁閉鎖板534は可撓性シート531と接合されて、開口部536が弁閉鎖板534および可撓性シート531とを貫通している。さらに、この弁室530内においても連通路517および開口部536を除いて実質的に密閉空間を維持している。そして可撓性シート531より図中上側の空間は大気連通口512によって大気に開放され、大気圧と等しくされている。そして弁室530の外装33は、可撓性シート531を外力から保護するシェルとしての役割も果たす。
【0240】
また、この可撓性シート531も、中央部分の弁閉鎖板と接合されている部分以外の周縁部分は変形可能となっており、中央部分が凸状とされていて、側面形状がほぼ台形となっている。このような構成をとることによって弁閉鎖板534の上下動が円滑に行われる。
【0241】
弁室530の内部には、弁の開放動作を規制するための弁規制部材として、弁規制ばね535を設けてある。ここでも弁規制ばね535はやや圧縮された状態としておき、この圧縮の反力によって弁閉鎖部材534を図の上方に押す構成としている。この弁規制ばね535の伸縮によって、開口部536に対する弁シール部材537の密着/離間を行うことで弁としての機能をもたせ、さらに大気連通口532から開口部536を介して弁室内部への気体の導入のみを許可する一方向弁機構としている。
【0242】
ここで弁シール部材537としては、開口部536が確実に密閉されるものであればよい。すなわち、少なくとも開口部536と接触する部位が開口面を確実にシールする形状を有していれば足り、密着状態が確保できるものであれば材質は特に限定されない。しかし、この密着は弁規制ばね535の伸長力で達成されるものであるので、この伸長力の作用によって動く可撓性シート531と弁閉鎖板534に追随しやすいもの、すなわち収縮性をもつゴムのような弾性体で弁シール部材537を形成することは、より好ましい。
【0243】
図38(a)〜(e)を用い、以上の構成による本実施形態のインク収納容器の動作を説明する。
【0244】
図38(a)はインク収納空間内にインクが十分に満たされている状態を示す。このときには、ばね部材515が圧縮された状態であるためにその圧縮変位量に従った伸長力F1(圧縮による反力)が支持板514を介して可動部材511に作用する。また、このときの伸長力F1の向きは図52の右側方向、すなわちばね部材515が伸長する方向に働き、この方向を以下の説明では正の符号で示す。このときにインク収納空間510A内で作用している圧力は、室の内側に向かって作用する。すなわち、上記符号の規則に従って、インク収納空間510A内で作用している圧力P1は、大気圧を「0」とすれば負の符号を有する値(負圧)となる。従って、ばね部材515が接合されている支持板514の面積をS1とすると、このときにインク収納空間内で発生している負圧は次のように表現できる。
P1 = −F1/S1 (1)
すなわち、インク収納空間内で発生する負圧は、ばね部材515による力の向きと逆方向である。
【0245】
このように負圧がインク収納空間内で作用していることによって、記録ヘッド520内におけるインク吐出用のノズルのメニスカスに対しても負圧P1が作用し、記録ヘッド520に設けられているインク吐出口からのインクの漏出が防止される。
【0246】
一方、この状態のときに弁室530内においては、開口部536が弁シール部材537によって密閉された状態となるようにしている。また、この弁室530内における圧力は、インク収納空間510Aとの間にある連通路517を介して、前述の負圧P1が作用する。しかし、この弁室530内でも弁規制ばね535の伸長力が働いており、この伸長力をF2とすれば、この伸長力F2は図の上側方向、すなわち弁規制ばね535が伸長する方向に作用し、符号は正で表される。そして、この弁規制ばね535が接合されている弁閉鎖板534の接合面の面積をS2とすると、この弁室内で作用する力として、弁室530内において弁規制ばね535によって作用する圧力の向きは、弁規制ばね535が伸びる方向と等しく、正の符号で示される。従ってこの圧力をP2とすれば、
P2 = F2/S2 (2)
である。開口部536が弁シール部材537によって密閉された状態となるための圧力P2と前述の負圧P1との関係は、
−P1 < P2 (3)
で示され、(2)式と(3)式により、
−P1 < F2/S2 (4)
の関係となる。すなわち、内部の負圧に対して、弁規制ばね535と弁閉鎖板534とによる負圧に逆らう力が大きくなっている状態を維持していることで一方向弁の密閉が保たれる。
【0247】
さらに記録ヘッド520からのインク吐出が進行し、インク収納空間510A内のインク残量が減少していくが、これに伴ってインク収納空間510A内の負圧も強まっていく。
図39はインク収納空間510A内の負圧とインク残量との関係を示す。図38(a)の状態からインク消費が続くと図38(b)の状態となり、インク量の減少に伴って密閉空間であるインク収納空間510A内の体積も実質的に減少していき、これに従い可動部材511は図の左方へ向かっていく。この可動部材511の変位に従って支持板514も左方に向かい、ばね部材515も圧縮が進行していく。このばね部材515の圧縮の進行は伸長力F1の増大を意味し、(1)式に従って負圧P1も図39のa点からb点まで強まっていく。
【0248】
この図38(b)の状態からさらにインク消費が進行することによって、可動部材511の位置もさらに左方へ変位して行き、図38(c)の状態となる。これによりインク収納容器510内の負圧もさらに強まり、負圧も図39におけるc点まで変化する。この状態においては、インク収納容器510内の負圧と、弁室530内における弁規制部材534によって作用する力とがつりあい、
−P1 = F2/S2 (5)
なる関係が成立する。
【0249】
ここまでで、弁規制ばね535による弁シール部材537の圧接状態が変化しないことから、F2/S2は一定値を示しているわけであるので、このあともインク消費が継続されて負圧がさらに強まっていけば、圧力F2/S2では弁室530内の開口部536を弁シール部材537で密閉しきれなくなっていき、
−P1 > F2/S2 (6)
なる関係まで進行する。これはすなわち図38(d)の状態であり、また図39のd点の負圧変化である。この関係に至った瞬間に、開口部536のシール部材537による密閉が解除される。
【0250】
この結果、図38(d)の矢印で示されるように開口部536からの大気の流入が生じ、さらに連通路517を介してインク収納空間510A内に取り込まれていく。この大気の取り込みによって減少していったインク収納空間510A内の容積は増大して行き、同時に、強まっていった負圧は逆に弱まる方向に進んでいく。負圧が弱まっていくということは、(6)式の状態から再び(5)の状態へと復帰していくことであり、弁室530内においては、開口部536と弁シール部材537とが再び密着する。これはすなわち図38(e)の状態であり、図39のd点からe点への負圧変化である。
【0251】
以上述べたことは、弁室530内で見ると、インク収納空間510A内の負圧と、弁室530内において弁シール部材を押圧する圧力との関係は、圧力の作用方向は逆であるものの、それぞれの絶対値の大小関係で表現できるので、(1)式と(6)式とにより、
|F1|/S1 > |F2|/S2 (7)
で示される。
【0252】
この後に、さらにインクが消費されていくと、図38(d)の状態と図38(e)の状態との間を推移することになり、図39のe点以降に示したように負圧の変化は非常に小さくなり、ほぼ一定の負圧値を保ってインク消費が進んで行く。すなわち、このようにインクを消費し続けていっても、図38(d)の状態と図38(e)の状態とが繰り返されるので、ある程度までインクが消費された後は、インク収納空間510A内の負圧は必要以上に強まることはなく、安定した吐出状態を維持しつつ、インク収納空間510A内のインクを最後まで使い切ることが可能となる。
【0253】
5.2 パラメータの設定
以上のことから、負圧調整はインク収納空間510A内と弁室530内のそれぞれにおける内部圧力のバランスで行われるので、所望の負圧に対し各室の設計も容易に行うことができる。すなわち、ばねの伸長力F1およびF2は、各室に配設されているばねの圧縮状態で定まるものであり、その伸長力はばね定数と圧縮によって変位させた距離(初期の圧縮状態の変位量およびその後の変位量)とで定まる(F=k×x;kはばね定数、xは変位量)。従って、これらのパラメータを適切に設定することで、任意所望の負圧値を得ることができる。また、これらのばねに取り付ける支持板や弁閉鎖板の面積S1,S2の設定によっても、負圧の調整を容易に行うことが可能である。
【0254】
上記実施形態に具現した本発明の特徴は、種々の条件を勘案して、上述の如く導出したF1,F2,S1およびS2の関係式に基づきそれら4つのパラメータを適切に定めたインク収納容器を設計する指針となることである。
【0255】
例えば、従来技術の項で説明した特許文献2あるいは特許文献3に記載の技術の問題点、すなわち液体シールの不備を補うものとして、特許文献6に開示された技術がある。これには、ばね付勢された栓状の部材を外気導入用のボスに配置して機械的なシールを行う構成が示されている。しかしながら、上述の関係式についての考察はなく、その示唆も与えられていない。その意味では、液体シールを機械的シールに代替した発明の域を出るものではなく、本発明の如きインク収納容器の設計の最適化を図る指針となるものではない。
【0256】
相互の関係においてそれら4つのパラメータF1,F2,S1およびS2を適切に定めるという本発明の思想に基づく指針によってはじめて、インク収納容器を適切に設計することが可能となるものである。
【0257】
例えば、(1)式と(6)式とから得られる、
F1:(S1/S2)×F2
の関係について考察する。
【0258】
弁規制ばね535はほとんど変位しないため、そのばね力F2をほぼ一定と考えると、負圧発生のためのばね力の作用面積S1に対し外気導入用開口部の密閉力の作用面積S2が比較的小であり、すなわちS1/S2が比較的大である場合、外気導入が阻止される(1)式を満たすF1の範囲は広く、従って初期のF1を得るためのばね部材515の設計の自由度は高いものと考えられる。しかし初期のF1が高く設計されていれば、外気導入が行われる(6)式を満たすには、かなり大きいF1の変化が必要となり、それに従ってインク収納空間510A内の負圧も大きく高まる。しかしインク収納空間510A内の負圧は、そもそもインク吐出口に形成されるメニスカスの保持力と平衡してインク吐出部からのインク漏れを防止するに十分で、かつ記録ヘッドのインク吐出動作が可能な範囲にある適切な値であるべきである。従って、外気導入時までのF1を適切な範囲にとどめるためには、相対的に弁規制ばね535のばね力F2を小とせざるを得ず、これでは衝撃や環境変化によって簡単に開口部536が開放されてしまう恐れがある。
【0259】
これに対し、S1とS2とが適切に定められている場合にはそのような不都合を避けることができる。すなわち、(1)式を満たす状態から(6)式を満たす状態に遷移するまでのF1の変化量を大きくする必要がなく、F2の設定にも自由度が増し、開口部536の好ましくない開放を有効に阻止することができるようになる。
【0260】
以上の考察は一例に過ぎず、種々の条件を勘案して各部を適切に設計すべきことは言うまでもない。しかしこれは、上記4つのパラメータを相互の関連において考察することで初めて得られるものであり、外気導入の可否を決定するためにP1とP2との大小関係を単に常識的、直感的に考察してのみ得られるものではない。
【0261】
5.3 本発明のさらに他の実施形態における一方向弁の作動原理
以上の実施形態では、インク収納空間510A並びに弁室530のそれぞれにおいて、負圧を発生させる目的のばね部材515、並びに開口部536を密閉する力を発生させる目的のばね部材35および弁閉鎖板534は、いずれも各室の内側に設けられていた。しかしながら、ばねによる作用力の利用の形態としては、圧縮時の反力のみではなく、ばねを伸長させたときの反力も利用可能である。従って、それぞれのばねの配設位置としては、それぞれの室の外側であっても構わない。
【0262】
図40は、インク収納室および弁室のそれぞれに対するばねの配設位置を、各室の外側に変更した例である。この形態を採用した場合には、インクが十分に充填されているときには、インク収納室540に接続されているばね部材545は、やや伸ばした状態で設置することになり、同様に弁室550に設置されている弁規制ばね555も、やや伸ばした状態で設置することになる。
【0263】
この構成でも、インク収納空間540A内のインクを消費していくに従って可動部材541は図の左側方向に移動していくが、これによってばね部材545はさらに伸ばされて変位する。このときの変位量によって負圧が定まる。しかし、このときにばね部材545の変位に伴ってインク収納空間540A内に作用する負圧は、ばね部材545が収縮する方向の力によって発生し、このばね部材545の伸びの変位量に従った収縮力F1(伸びによる反力。負の符号を有するものとする。)が支持板544を介して可動部材541に作用する。このため、上記実施形態と同様の符号の規則を用いれば、このときの負圧は次の(8)式で示される。
P1 = F1/S1 (8)
【0264】
一方、弁室550においては、外装553と弁閉塞板554との間に設置されている弁規制ばね555も、それが収縮する方向に力を作用するので、弁規制ばね555の伸びの変位量に従った収縮力F2は図の上側方向に働き、これも上記図37の実施形態と同様の符号の規則を用いれば、可動部材551の内部における圧力は次の(9)式で示される。
P2 = −F2/S2 (9)
【0265】
従って、弁室550内で開口部56を弁シール部材557で密閉しているとき、すなわち
−P1 < P2
なる関係があるときは、
−F1/S1 < −F2/S2
であり、インクの消費が進行して開口部556と弁シール部材557との密着が解除され、大気連通口52より開口部556を介して外気が導入されるときには、
−F1/S1 > −F2/S2 (10)
なる関係である。しかしここでは、ばね部材545と弁規制ばね555が作用する力の方向が図37の実施形態と異なるだけであり、インク収納空間540A内での負圧および弁室550内における圧力の方向は図37の実施形態と同様であるので、(10)式は
|F1|/S1 > |F2|/S2 (11)
と表現することが可能である。従って、インクを消費していくに従って生じる各部の動作、並びに負圧変化と、インク収納空間540Aの内部と弁室550の内部とにおける圧力バランスも図37の実施形態と同様に考えることができる。
【0266】
このような構成をとった際には、各ばねはインクと接触することはないので、ばねを構成する部材がインクと触れることによるばねの劣化や、インク中への不純物の溶出混入などを考慮する必要がなくなる。従ってばねを構成する材質の自由度が広がるという利点もある。
【0267】
なお、ここではインク収納室および弁室共にばねを各室の外側に配設した例を示したが、いずれか一方についてその室内にばねを配設する形態であっても、上記(11)式の関係にて本発明を達成できることは容易に理解されよう。
【0268】
5.4 環境変化に対するバッファ領域
上述の図37および図40の実施形態の構成では、インクが十分に満たされている初期状態からインク消費が進んで行き、インク収納容器内の負圧と、弁室内における弁規制部材によって作用する力とがつりあった状態からさらにインク消費が継続されて負圧がさらに強まった瞬間に、開口部からの大気の流入が生じて、インク収納空間内に取り込まれる。この大気の取り込みによってインク収納空間内の容積は逆に増大して行き、同時に、負圧も弱まることによって開口部が閉鎖される。
【0269】
例えば、図37の実施形態では、図38(a)に示す初期状態からインクの消費が進み、図38(c)の状態に至った以降は、インクの消費進行に応じて図38(d)の状態と図38(e)の状態との間で推移する。すなわち、初期充填状態からのインク量の減少に伴って密閉空間であるインク収納空間510A内の体積が実質的に減少していき、可動部材511が図37の左方位置に変位した後にはじめて外気の取り込み動作が可能となり、それ以降は可動部材511が当該左方への変位位置付近にあってインク収納空間510Aの内容積自体は殆ど変化しない。
【0270】
すなわち、図37の実施形態に係る液体収納容器は、液体(インク)の収納空間510Aを画成するとともに供給管521からのインクの供給に伴って変位する可動部(可動部材511)を有するインク収納室510と、収納空間の内部に気体を導入することが可能な開口部536およびこれを密閉するための密閉部材であるシール部材537が設けられた弁室530と、を具え、インクの消費に伴う可動部材の変位により収納空間510Aの内容積が減少して行き、当該内容積が所定値(図38(c)の状態)以下となったときに、開口部536が開放されて前記気体が導入されるよう構成されてなるものである。そして、開口部536を密閉するための付勢力(弁規制ばね535のばね力)F2と、その作用面の面積(弁閉鎖板534の接合面の面積)S2と、収納空間510Aの内部の圧力P1と、収納容器の環境圧力(大気圧)をPとするとき、図38(c)の状態となった以降に、次式
P−P1 > F2/S2 (12)
が満たされた場合に開口部536がシール部材537から離れて開放されるものである。
【0271】
従って、インクタンクの周囲環境の変化、例えば、温度上昇あるいは減圧等が生じても、可動部材の変位位置から初期位置までの間の容積分、収納空間内に取り込まれている空気の膨張が許容されるので、換言すれば当該容積分の空間がバッファ領域として機能するので、周囲環境の変化に伴う圧力の上昇を緩和し、吐出口からのインク漏出を効果的に防止することができる。また、可撓性シート531が可動部材511に空圧的に連動して変位するので、インクタンクの周囲環境の変化、例えば、温度上昇や減圧等によって起こるインク収容空間の膨張によってもインク漏れを生じることはない。
【0272】
また、初期充填状態からの液体導出に伴いインク収納空間の内容積が減少し、バッファ領域が確保されるまでは、外気が導入されないので、それまでに周囲環境の急激な変化や振動や落下などが生じてもインク漏れもれが発生しない。さらに、インク未使用状態から予めバッファ領域を確保しているのではないので、インク収納容器の容積効率も高く、コンパクトな構成とすることができる。また、開口部536を密閉するための付勢力(弁規制ばね535のばね力)F2が作用する作用面の面積(弁閉鎖板534の面積)S2を開口部536ないしシール部材537による密閉面の面積より大とすることで、十分な密閉性を確保することができる。さらに、上記構成は、少ない部品点数でこれら効果を達成できるものであり、特に外気導入用の開口部536を可動部材(可撓性シート531および弁閉塞板534)の一部に設けることで、安定した大気の導入をも可能にするものである。
【0273】
以下、上記の機能を果たすバッファ領域として好ましい容積等について説明する。なお、ここでは図37に示した実施形態に係るインク収納容器に基づいて説明を行うが、図40に示した実施形態に係るインク収納容器についても同様である。
【0274】
図41は、液体(インク)導出量に伴ってインク収納空間510Aの内容積がどのように変化するかを示す説明図であり、図の横軸がインク導出量、縦軸がインク収納空間の内容積である。そして、太い実線はインク収納空間の内容積、破線はインク収納空間内の空気量の変化を示している。
【0275】
インク導出が未だ行われていない初期の状態では、図38(a)のように可動部材511は図の右側に変位した位置にあって内容積は最大(Vmax)となっている。この状態から、インク導出とともに可動部材511が変形し、内容積が単調減少して行く。この状態(図38(b)に対応した状態)では、容器内部に未だ空気が導入されていないので、周囲環境の変化がおきてもインク漏れは発生しない。
【0276】
そして、内容積が減少してVairまで達すると、すなわち図38(d)に対応した状態にまで達すると、開口部536が開放され、インク導出量に対応した量の空気が導入され、内容積減少が停止する。
【0277】
これ以降は、インク収納空間510Aの内容積自体は殆ど変化しない。すなわち、(Vmax−Vair)分の容積がバッファ領域として確保されているので、空気導入が行われてもインク漏れは生じない。また、このときに空気導入を行わなければ内部のインクを使い切ることができず、内部の容積効率が低下することになるが、上述した動作によってインクの導出進行に応じ図38(d)の状態と図38(e)の状態との間で推移するので、インクを効果的に最後まで使い切ることができる。
【0278】
次に、インク収納空間内容積Vairをいかに設定するかについて説明する。
【0279】
容器内に導入される最大空気量は、図41から明らかなように、ほぼVairである。また、ほぼ標準状態における大気圧を1atm(絶対圧)とし、実際にインク収納容器が置かれる周囲環境の大気圧をP(atm)と考えると、最大空気量Vairが減圧により膨張する体積Vは、
V = (1/P)×Vair (13)
で表され、この値VがVmax以下であれば、容器内の圧力は高まらず、インクが漏れることはない。よって、
V = (1/P)×Vair ≦ Vmax (14)
Vair ≦ P×Vmax (15)
の関係が満たされるような、内容積がVairとなったときに周囲環境の大気圧によって開口部536が開放される弁の設計を行えば、インク漏れが生じることはない。
【0280】
インク収納容器が置かれ得る実際の環境における最低と考えられる大気圧は、ほぼ標準状態における大気圧を1atmとすると、例えば以下の通りである。
Figure 0004217454
よって、例えば、すべての使用状態を満足させるためにはP=0.6atmとして考えればよい。また、平地のみで使用し移動させないならば、P=0.9atmとして最適な構成が可能となる。
【0281】
このようなデータにより、例えば平地でのみ使用する場合には、Vairは0.9×Vmax以下となり、外気を導入し始める体積が最大内容積の90%であればよい。しかし、温度変化の非常に激しい状況での使用を考慮するならばVairは0.8×Vmax以下であり、外気を導入し始める体積は最大内容積の80%以下、空輸や航空機内での使用を考慮するならばVairは0.7×Vmax以下であり、外気を導入し始める体積は最大内容積の70%以下、4000m以上の高地で使用することも考えるならば、Vairは0.6×Vmax以下であり、外気を導入し始める体積は最大内容積の60%以下とすることが望ましい。
【0282】
これらのように、環境に応じて必要とされるバッファの容積が異なるので、環境に応じた最適なバッファ体積が得られるよう設計を行うことにより、容器のインク収容効率を高め、かつインク漏出を効果的に防止することが容易となる。
【0283】
また、ばね部材515のばね定数をk1、初期状態からの変位量をX1とすると、フックの法則により、式(7)は次のように表される。
|k1×X1|/S1 > |F2|/S2 (16)
【0284】
ところで、本実施例において、可動部材511は支持板514を介しばね部材515によって変形が規制されているために、可動部材511の変形による体積変化はばね部材515の変位によって決定される。つまり、容器の体積がVmaxからVairに変化したとき、ばね部材515の変位量をXairとすると、式(16)を満たすX1が、
X1 > Xair (17)
であれば、ばね部材515が必ずXair以上変位した後に弁が開放されて外気が導入される。従って、
|k1×Xair|/S1 > |F2|/S2 (18)
の関係を満たすように弁規制ばね535やばね部材515を構成することにより、変形によって所定のバッファ体積以上の体積が確保された後の負圧の増加により弁が開放されて外気が導入されるので、液体漏れが生じない。
【0285】
5.5 環境変化に対するバッファ領域形成の他の実施形態
好ましいバッファ領域を形成するインク収納容器の構成としては、図37および図40の実施形態の如く弁室を有する構成のみならず、種々のものとすることができる。
【0286】
図42(a)はかかるインク収納容器の他の実施形態を示す模式的断面図である。容器外装563の内部にはインク収納空間を区画する可撓性膜(シート部材)でなる可動部材561が設けられるとともに、その可動部材561を支持板564を介してばね部材565によって付勢しており、通常状態で収納空間内容積が最大となるようになっている。そして、外装563に設けられたインク収納空間560Aの開口部592は弁規制ばね595によって付勢された密閉手段である弁体590によって密閉されている。
【0287】
図42(b)はインクが(Vmax−Vair)だけ供給口568から導出され、収納空間内容積がVairまで減少している状態を示す図である。このとき、可動部材561の変形により、支持板564が弁体590と接触し、弁規制ばね595の付勢力に抗して弁体590を変位させて開口部592が開放可能となる。すなわち、図中破線で示す可動部材561の初期位置から、支持板564が弁体590と接触した瞬間の実線で示す位置までの間がバッファ領域となる。換言すれば、所定のバッファ容積分が確保された後に弁体590に支持板564が接触して、開口部592の開放が可能な状態となるのである。
【0288】
図43(a)はさらにインクが導出され、支持板564が弁体590を押下することで、開口部592が瞬間的に開放され、インク収納空間560A内部に気体が導入されたときの図である。また、図43(b)は、支持板564と弁体590とが離れた図である。すなわち、図43(a)のように空気が導入されたことで内部の負圧が緩和され、支持板564を下方向に変位させる力が弱まったことにより、支持板564は僅かに上方に変位し、これによって支持板564と弁体590とが離れ、弁規制ばね595の付勢力により弁体590が再び開口部592を密閉する。この後、再びインク導出が行われれば、図42(b)のように支持板564と弁体590とが接触し、図43(a)に示すように空気が導入される。このようにして、徐々に空気が導入されることにより、所定の負圧を維持したままインク収納空間560A内部のインクが次第に空気に置換され、インクをすべて使い切ることができるようになるとともに、周囲環境の変化に伴う圧力の上昇を緩和し、吐出口からのインク漏出を効果的に防止することができる。
【0289】
また、弁体564が支持板564に機械的に連動して変位するので、周囲環境の変化、例えば温度上昇や減圧等によって起こるインク収容空間の膨張によってもインク漏れを生じることはない。
【0290】
次に、本実施形態において重要な特徴は、弁体590の開閉動作が支持板564の変位量によって規定されているために、必ず(Vmax−Vair)の容積のバッファ領域が確保された後に、開口部592が開放されることである。これによって、バッファ領域が充分にない状態では空気が導入されず、よってインク漏れも発生しない。また、上述の諸実施形態と同様、4つのパラメータすなわちばね部材565のばね力、弁規制部材595のばね力、支持板564の面積および弁体590の所定部位の面積の適切な設計によりすべての動作を制御できるので、インクの物性などが変化し、粘度や接触角が大きく変わっても構成を変更する必要がないことも大きな利点である。
【0291】
図44を用いて4つのパラメータの設計について説明する。同図は支持板564と弁体590とが接触し、空気が導入されるときの状態を示している。
【0292】
ここで、支持板564に作用する力は、ばね部材565による付勢力F1(上方向)と、負圧P1が支持板564の面積S1に作用することによる全圧力P1×S1(下方向)との和である。また、弁体590に作用する力は、弁規制ばね595による付勢力F2(上方向)と、弁体590が開口部592を覆う部分の面積S2に負圧P1が作用することによる全圧力P1×S2(上方向)との和である。
【0293】
弁体590が開放されるには、
(支持板564が弁体590を押す力)≧(弁体590が開口部を密閉する力)
であればよい。すなわち、
(P1×S1−F1) ≧ (F2+P×S2) (19)
であり、そのときの負圧は、
P1 ≧ (F1+F2)/(S1−S2) (20)
となる。つまり、弁を開放し、気液交換時に維持したい負圧によって、各ばね力F1,F2や支持板564および弁体590の面積S1,S2を選択すればよい。なお、Vairやこれらパラメータ等は、上述の実施形態と同様、種々の環境を考慮して適切に定めることができる。
【0294】
図45は供給口568からインクが導出されて行き、使い切る直前の状態を示す。このとき、インク収納空間560A内に導入された空気量はほぼVairであるが、斜線で示した可動部材561の変形体積がバッファとなり、外環境の変化により体積膨張が起きてもインクが漏れることはない。
【0295】
5.6 インクタンク設計条件の一般化
図37の実施形態は、使用時の姿勢において、インクタンクのインク収納空間510Aが画成されるインク収納室510の上方に弁室530が位置する形態を有している。しかし、インクタンクにおけるインク収納室と弁室との位置関係は様々に定められることが考えられ、いずれの場合でも一方向弁が良好に作動してインク収納室内に適正な負圧が維持されるようにインクタンクの設計を行うことが望ましい。そこで以下では、インクタンクの設計条件をより一般化する点について説明する。
【0296】
図46(a)は使用時の姿勢において記録ヘッドへのインク供給口618が底面に設けられたインク収納室610と、その底部近傍において連通路617を介して連通する弁室630とから構成された形態のインクタンクを示す。インク収納室610は、基本的には、図37に示したものとほぼ同様の構成を有しており、変形可能な可撓性膜(シート部材)によって形成された可動部材611が配設され、その中央部分は平板状の支持部材である支持板614によって形状が規制され、その周縁部分が変形可能となっている。また、インク収納空間内には、支持板614を介して可動部材611を図の下方向に付勢する押圧力を作用することで、記録ヘッド520のインク吐出部に形成されるメニスカスの保持力と平衡して記録ヘッドのインク吐出動作が可能な範囲にある負圧を発生させる圧縮ばね形態のばね部材615が設けられている。
【0297】
弁室630についても図37に示したものとほぼ同様であり、一方向弁の構成要素である開口部を有して弁閉鎖部材となる弁閉鎖板634と、開口部を密閉する弁シール部材637とを設けてあり、さらに弁閉鎖板634は可撓性シート631と接合されている。そして、弁室630の内部には、弁の開放動作を規制するための弁規制部材として、弁規制ばね635を設けてある。
【0298】
図46(a)はインクタンク未使用時の初期状態、図46(b)〜(f)はインク消費の進行に伴うインクタンクの状態の説明図である。また、図47はインク消費に伴う負圧の変化を示す図であり、図中の符号60a〜60fで示す点がそれぞれ図46(a)〜(f)の状態に対応している。
【0299】
図46(a)の構成においては、連通路617内にインクが存在しており、連通路617の毛管力により、連通路617の弁室630側の端部でメニスカスが形成されている。従って、インクタンクの設計にあたっては、このメニスカスの保持力に由来する圧力も考慮される。
【0300】
インク収納空間内にインクが十分に満たされている初期状態(図46(a))において、ばね部材615が圧縮変位量に従った伸長力F1(圧縮による反力)が支持板614を介して可動部材611に作用するものとする。このときの伸長力F1の向きは図46(a)の上側方向、すなわちばね部材615が伸長する方向に働き、この方向を正の符号で示すものとする。このときにインク収納空間内で作用している圧力は、室の内側に向かって作用する。すなわち、上記符号の規則に従って、インク収納空間内で作用している圧力は、大気圧を「0」とすれば負の符号を有する値(負圧)となる。ばね部材615が接合されている支持板614の面積をS1とすると、このときに連通路617のインク収納空間側開口位置で発生している負圧は次のように表現できる。
PT = −(F1/S1)+h×ρ×g (21)
ここで、hは連通路617に形成されるメニスカス位置からインク収納室内のインク最上面までの高さ(m)、ρはインクの密度(kg/m)、gは重力加速度(m/s)である。
【0301】
一方、この状態のときに弁室630内においては、開口部が弁シール部材637によって密閉された状態となるようにしている。また、この弁室630内における圧力は、インク収納空間との間にある連通路617を介して、前述の負圧PTが作用するとともに、連通路617の連通路617に形成されるメニスカス保持力に由来する圧力PMが作用する。すなわち、弁室630内の圧力(負圧)は、
PV = PT+PM =−(F1/S1)+hρg+PM (22)
となる。なお、PMは、インク収納室の負圧と弁室の負圧との関係で、大気圧に対し正負いずれにもなり得る値であり、両者が等しいときには0である。
【0302】
弁室630内でも弁規制ばね635の伸長力が働いており、この伸長力をF2とすれば、この伸長力F2は図の右側方向、すなわち弁規制ばね635が伸長する方向に作用し、符号は正で表される。そして、この弁規制ばね635が接合されている弁閉鎖板634の接合面の面積をS2とすると、この弁室内で作用する力として、弁室530内において弁規制ばね535によって作用する圧力の向きは、弁規制ばね535が伸びる方向と等しく、正の符号で示される。従ってこの圧力をP2とすれば、
P2 = F2/S2 (23)
である。開口部636が弁シール部材637によって密閉された状態となるための圧力P2と弁室内の負圧PVとの関係は、
−PV < P2 (24)
で示され、(22)式〜(24)式により、
−PV =(F1/S1)−hρg−PM < F2/S2 (25)
の関係となる。すなわち、弁室内部の負圧に対して、弁規制ばね535と弁閉鎖板534とにより負圧に逆らう力が大きくなっている状態を維持していることで一方向弁の密閉が保たれる。換言すれば、インク収納室内部の負圧発生手段が発生する負圧と、連通路617のメニスカス形成位置からインク収納室内のインク最上面までの高さに応じた圧力と、メニスカス保持圧力とにより定まる弁室内部の負圧に対して、弁規制ばね535と弁閉鎖板534とにより負圧に逆らう力が大きくなっている状態を維持していることで一方向弁の密閉が保たれる。
【0303】
記録ヘッドからのインク吐出が進行し、インク収納空間内のインク残量が減少していくが、これに伴ってインク収納空間内の負圧も強まっていく。
図46(b)および図47の符号61bはバッファ領域分の変位が行われた状態であり、インク収納室内の負圧PTが増大する一方、高さhが減少し、従って弁室内の負圧PVも増大する。
【0304】
インク収納室内の負圧がさらに高まると、図46(c)に示すように弁室からインク収納室側に向けてエアの移動が開始されるが、この状態ではまだ一方向弁は開放されていない。エアの移動が開始した直後、連通路617の毛管力により弁室側にメニスカスが瞬間的に移動するが、インク収納室の負圧により再びインク収納室側に移動する。
【0305】
そしてさらに負圧が高まり、
−PV =(F1/S1)−hρg−PM > F2/S2 (26)
となったときに一方向弁が開放され、インク収納室側に本格的にエアが導入されて負圧が緩和されるとともに、バッファ領域の変位が僅かながら緩和される。これはすなわち図46(d)の状態であり、また図47の60d点の負圧変化である。
【0306】
このエアの取り込みによって強まっていった負圧は逆に弱まる方向に進んでいく。負圧が弱まっていくということは、(26)式の状態から再び(25)式の状態へと復帰していくことである。
【0307】
弁室630内においては、弁閉鎖板634が再び閉塞方向に移動して行くが(図46(e)および図47の点61e)、エアが導入されている限り弁室内の負圧は(22)式の右辺より小さい。そしてついには開口部と弁シール部材637とが再び密着し、開口部が閉塞されるが(図46(f)および図47の点61f)、この閉塞状態が得られた後も、弁室内の負圧が(22)式の右辺とほぼ等しくなるまでは弁室側からインク収納室側へエアが移動し、弁室およびインク収納室の負圧がほぼ均一化される。
【0308】
以上述べたことは、弁室630内で見ると、一方向弁が開放されるための条件は、インク収納室610内の負圧と、高さhによる圧力と、メニスカス保持圧力と、弁室530内において弁シール部材を押圧する圧力との関係は、それぞれの絶対値の大小関係で表現できるので、
|PV|>|F2|/S2 (27)
となる。これが、インクタンクにおけるインク収納室と弁室との様々な位置関係に応じて、いずれの場合でも一方向弁が良好に作動してインク収納室内に適正な負圧が維持されるようにインクタンクの設計を行うための条件の一般式となる。なお、図46(a)の構成ではインク収納室と弁室との間の連通路がほぼ水平方向に延在している構成であるが、例えば弁室に向かう連通路が上方に屈曲し、その先に弁室が設けられるような構成においても、当該連通路に形成されるメニスカス位置からインク収納室のインク最上面までの高さhに関して(27)式を適用できる。
【0309】
5.7 インクタンクにおけるインク収納室と弁室との様々な位置関係に対する一般条件の適用
以上の一般条件を、種々の構成にあてはめて考察する。
【0310】
まず、図46(a)とほぼ同様の構成を採る場合において、弁室630の内容積を大きくする場合について考える。一方向弁が閉塞されるためには、|F2|/S2−|PV|が弁シール部材の端部を変形できる程度にまで大きくなっているのが強く望ましい一方、内容積の大きい弁室内の負圧を低下させるために大量のエアを導入する必要が生じる。
【0311】
図48はその場合の負圧変化を説明するための図であり、エア導入時の負圧は、図46(a)に示した場合の負圧変化(破線)に比較して、大きく低下する(実線)。弁室の負圧はインク収納室の負圧とほぼ均一化されるために、大気圧(0)に至るまで一方向弁が開放されているわけではないが、インクタンクについて定められる初期負圧より低下して大気圧に近くならないよう、弁室とインク収納室との容積比を適切に定めることが強く望ましい。
【0312】
つまり、弁室が完全に大気開放されてしまったときに弁が閉鎖されたと考えた場合、この時のインク収納室の負圧は、
PT≒−F1/S1+PM (28)
であるので、連通路を含む弁室の内容積をVV、インク収納室の内容積をVTとすると、一方向弁閉鎖時の両室の平均負圧は
(−F1/S1+PM)×VT/(VT+VV)
となる。すなわち、この値が初期負圧より大であるよう、弁室とインク収納室との容積比を定めればよい。
【0313】
次に、図49(a)のようにインク収納室710の上部に配置された連通路717を介して弁室730が設けられている場合を考える。この場合、連通路717を移動するエアの速度は、弁室730の大気連通口からのエアの導入速度より大となる。なお、図46(a)の形態では、液体であるインク中に気体であるエアが取り込まれて行くので、連通路617を移動するエアの速度は、弁室630の大気連通行からのエアの導入速度より小である。
【0314】
図49(a)の場合に上記一般条件をあてはめると、h=0およびPM=0であるので、連通路717でのエアの圧力損失をほぼ0と考えれば、インク収納室710および弁室730の圧力は常に等しい。
【0315】
従って、図49(b)の実線で示すように、図46(a)の場合の負圧変化(破線)に比較して、両室間で圧力が不均一となる過程がほとんど発生せず、一方向弁の開閉に伴う負圧の変動が小さい。
【0316】
この場合は、上記5.1項で述べた場合にほかならず、従って4つのパラメータF1、F2、S1およびS2の関係を考察してインクタンクの設計を行えばよい。
【0317】
次に、図46(a)とほぼ同様の構成を採る場合において、インク収納室810と弁室830とが断面寸法が大きい連通路817を介して接続されている場合について考える。
【0318】
ここで、弁室830の大気連通口が連通路817より鉛直方向下方にある場合は、大気連通口が常にインクに接することになり、メニスカス力とばね力とによる負圧制御を行うことになる。この場合は、上述した液体シールと同様にインク漏洩が生じる恐れがある。
【0319】
その後、インク消費が進み、大気連通口よりインク水位が低下すると、PM=0となり、ばね力のみによる負圧制御が行われる。
【0320】
図50(a)の場合は、連通路817のエア移動の抵抗が少ないため、インク収納室および弁室間の負圧差は小さく、図50(b)の実線に示すように、図46(a)の場合の負圧変化(破線)に比較して、一方向弁の開閉に伴う負圧の変動が小さい。また、連通路817がインクで満たされた状態でなくなった以降は、両室のエアが連通し、図49(a)の場合と同様の状態となる。
【0321】
5.8 振動がインクタンクに及ぼす影響を考慮した設計条件についての考察
一方向弁は、制御すべき負圧が0〜−200mmAq(約−2kPa)と非常に小さいため、輸送時・運搬時等における振動等によって僅かなインクやエアの移動が内部で生じても制御負圧以上の圧力変動が生じ、一方向弁が開放されて望ましくないエアの導入が行われてしまうとも考えられる。
【0322】
そこで発明者らが図46(a)の構成に対し振動を加えて検討を行ったところ、そのようなエアの導入は見られず、弁室がインクで満たされた状態となっていた。このことは、次の現象によるものと考えられる。
i)インク収納室内の移動により、弁室からインク収納室側へエアが移動する。
ii)瞬間的に弁室に比較的大きな負圧が発生する。
iii)その負圧により、一方向弁を開放させようとする力が働く。
iv)しかし振動による圧力変化は一瞬であり、一方向弁が開放されてエアが導入されるより先に、インク収納室から弁室へインクが侵入し、弁室内の負圧が緩和される。
v)一方向弁を開放しようとする力が失われ、開放は行われない。
vi)弁室がインクで満たされるまで以上が繰り返され、弁室内にエアがなくなれば弁室内は負圧状態とならなくなる。
【0323】
すなわち、弁室内の負圧が高まっても、エア導入されるより早くインクが侵入するので、一方向弁は開放されないのである。よって、図46(a)の構成の場合、一方向弁開放速度より連通路の毛管力による弁室へのインク進入速度の方が大となるよう、連通路の断面寸法を定めるのが望ましい。
【0324】
なお、弁室がインクで満たされても、使用時においてインクタンク全体の負圧が高まることにより一方向弁が作動すれば、導入されたエアとともにインクはインク収納室側に戻ることになるが、一方向弁の作動メカニズムがより有効に機能するために、使用時の姿勢において連通路の弁室側端部よりも弁室の大気連通口が鉛直方向上方に位置するのが好ましい。
【0325】
弁室が極端に大きい場合について検討を行ったところ、図46(a)の場合と同様であった。
【0326】
次に、図49(a)の構成に対して検討を行った。この場合は上述のような弁室へのインクの侵入は生じない。しかしながら、インク収納室内でインクの移動が発生しても、弁室およびインク収納室側の気室にあるエアによって圧力変化が吸収されるので、一方向弁に作用する圧力変動の影響は小さいものと考えられる。さらに、エアの圧力変動を上記バッファ部の変位によって吸収することができれば、望ましくないエア導入をより効果的に阻止できるものと考えられる。
【0327】
つまり、S1>S2とすることで、同じ変位量でもバッファばね(インク収納室内のばね)による圧力吸収効果を大とすることができ、さらに弁室内のばねのばね定数K2>インク収納室内のばねのばね定数K1とすることで、僅かな加重変化に対してバッファばねの方をより変位し易くすることができる。
【0328】
次に、図50(a)の構成に対して検討を行った。この場合は、容易に弁室内にインクが侵入するが、侵入したインクは逆に、容易にインク収納室側に戻されてしまうので、一方向弁が開放されてしまうことがある。
【0329】
従って、インクタンクを倒立させて連通路が鉛直方向上方に位置するような状態となった場合でもメニスカス力によりインクが連通路に保持されるように連通路の寸法を定めておくのが強く望ましい。すなわち、
連通路最狭部でのメニスカス力>連通路容積分のインクの重力
となる関係が得られることである。
【0330】
さらに、連通路断面積が極端に小さい場合についても検討を行った。この場合、圧力変化が発生しても連通路は常にインクで満たされており、インク収納室の圧力変化が弁室に伝播しない。しかしながら、連通路のメニスカス力が一方向弁による負圧制御範囲を越えるまでに大きい場合には、一方向弁の作動メカニズムが機能しなくなるので、
連通路最狭部でのメニスカス保持力による圧力<F2/S2
とすることが強く望ましい。
【0331】
5.9 変形例
なお、インク収納容器におけるインク収納室を形成する空間の内壁は、適切なバッファ領域が確保されるのであれば、上述の諸実施形態のように一部を変形可能な可撓性膜などの可動部材によって構成する他、全部をそのような部材で構成してもよい。また同じく、そのような変形可能な部材を設ける代わりに、収納空間Sの内容積に応じて変位する部材を一部に有したものでもよい。
【0332】
6.その他
以上では本発明を記録ヘッドにインクを供給するインクタンクに適用した場合について説明したが、記録部としてのペンにインクを供給する供給部に適用されるものでもよい。
【0333】
また、本発明は、そのような種々の記録装置の他、飲料水や液体調味料などの種々の液体を供給するための装置、あるいは薬品を供給する医療の分野などに広範囲に適用することができる。
【0334】
また、本発明は、上述したようなシリアルスキャン方式の他、種々の方式による記録装置に適用することができる。例えば、被記録媒体の記録領域の全長に渡って延在する長尺な記録ヘッドを用いる、いわゆるフルライン方式の記録装置として構成することもできる。
【0335】
【発明の効果】
本発明、またはその種々の形態、または上述のような種々の実施例によれば、所期の目的を達成できるものである。すなわち、次に掲げる事項のうち、少なくとも一つを実現できる。
【0336】
外部(記録ヘッドなど)に供給する液体(インクなど)の収納部に、所要の負圧を発生させる手段と、液体供給に伴う収納部内の負圧増大に応じて内部に空気を導入できるようにすることで負圧が適正な範囲に保たれるようにするための空気導入部とを有する構成にあって、いかなる使用環境および保存環境においても空気導入部からインクなどの液体が漏出することがなく、かつ液体消費の段階によらず安定した負圧特性を維持できるようになる。また、その状態において、容積効率が高くしかもインク供給がスムーズに行われるため、インクジェット記録システムに用いた場合、印字品位の安定化やコンパクトな設計など様々なメリットが得られる。
【0337】
気体を導入してインクタンクもしくは液体収納容器の内部の圧力を調整するための、一つの方向における気体の流通を許可しその一つの方向とは逆方向の流体(液体および気体)の流通を阻止する一方向弁をこれらインクタンク等とは別個に設けることができるので、一方向弁の配設位置について、インクタンクの配設位置による制約を受けずに定めることが可能となる。
【0338】
この結果、インクジェト記録装置などにおいてその設計上の自由度を向上させることが可能なインクタンクの負圧調整機構を得ることができる。
【0339】
インクタンク内に収納したインクを、消耗するまで安定した負圧を維持してインクジェットヘッドへ供給することが可能となる。また密閉部材が可動部材に連動して伸縮又は移動するため、インクタンクの周囲環境の変化、例えば、温度上昇又は減圧等によって起こるインクタンクの膨張においてもインク漏れも起こすことはない。
【0340】
更に、本発明は少ない部品点数で上記効果を達成できるものであり、大気導入用開口を可動部材の一部に設けることで安定した大気の導入をも可能にするものである。
【0341】
このことはインクジェットヘッドからのインク吐出において常に安定した特性を得ることができ、またインクを無駄にせず使用できることから、ランニングコストの低下にも貢献するものである。
【0342】
例えば容器の使用時における重力方向の下側に可撓性部材や気体透過度の高い部材を位置させることにより、容器内への気体の浸透を低減すべく、それらの部材に気体の浸透圧が掛かる機会を減らして、液体を適正な状態に収納することができると共に、その収納した液体を安定的に供給することができる。
【0343】
また、可撓性部材の変形を伴ってバッファ領域を確保する場合には、容器内への気体の浸透量を著しく低減させることにより、温度上昇などに伴う容器内の圧力変動をバッファ領域によって確実に吸収することができ、この結果、液体の漏れや容器の破損を防止することができる。しかも、気体の浸透量を低減することにより、浸透する気体の膨張分を見込んでバッファ領域を大きく確保する必要がなくなり、その分、容器の容積効率を増大させることができる。
【0344】
また、容器内の負圧が所定以上となったときに、容器内に外気を導入する開閉機構を備えることにより、容器内を所定の負圧に維持して、液体を安定的に供給することができる。その開閉機構としては、圧力差により開閉する弁体を用いた構成を採用することができる。
【0345】
容器内のほぼすべてのインクが消費されるまでの間、容器内を安定した負圧に維持して、記録装置に対してインクをより安定的に供給することができると共に、インクの無駄をなくして、ランニングコストを抑えることができる。
【0346】
液体収納容器内の液体(インク等)を消費しきるまで、内部の負圧を不必要に強めることなく安定した値で維持して外部に供給することが可能となる。また液体収納容器内における負圧を緩和させるための気体導入も適切なタイミングで行うことができるため、種々の条件を勘案した任意所望の負圧設定も容易であり、高い信頼性をもって安定した負圧設定を実現できる。さらに、負圧を発生すべく力を作用するための可動部材および気体導入のための開口を開閉するための部材を、伸縮力をもつ部材で制御するようにしたことで、液体収納容器の周囲環境の変化、例えば、温度上昇や減圧等によって起こる液体収納容器内に導入されている気体の膨張を吸収でき、不本意な液体漏洩も起こすことがない。また特に、液体がいまだ導出されていない初期位置から所定量変化した後にはじめて外気導入がなされるようになし、当該変化に対応した容積分の空間がバッファ領域として機能するので、周囲環境の変化に伴う圧力の上昇を緩和し、液体供給先の導出部等(インクジェット記録ヘッドのインク吐出口など)からの液体漏洩を確実に防止することができる。そしてこれらによって、無駄な液体消費が生じないようになし、ランニングコストの低下にも貢献するものである。
さらに、本発明は、少ない部品点数で上記効果を達成できるものである。
【0347】
加えて、本発明をインクジェット記録ヘッドに適用する場合には、常に安定したインク吐出特性を得ることができ、記録品位の安定化および向上に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)および(b)は、液体(インク)の消費に伴って生じる負圧の増大を緩和するために内部に外気を取り入れる従来の液体収納容器の問題点を説明するための説明図である。
【図2】本発明の基本構成の第1例におけるインクタンクおよび記録ヘッドの概略構成図である。
【図3】(a)および(b)は、図2における一方向弁の動作を説明するための断面図である。
【図4】(a)、(b)および(c)は、図2におけるインクタンクの動作を説明するための断面図である。
【図5】図2のインクタンクを用いた場合のインク供給量と収納空間S内の圧力変化との関係を示す説明図である。
【図6】図2におけるインクタンクの動作を説明するための断面図である。
【図7】本発明の基本構成の第2例に係るインクタンクの断面図である。
【図8】本発明の基本構成の第3例に係るインクタンクの断面図である。
【図9】本発明の基本構成の第4例に係るインクタンクの斜視図である。
【図10】(a)、(b)および(c)は、図9のインクタンクにおけるタンクシートの成型工程の説明図である。
【図11】(a)は図9のインクタンクにおけるばねユニットの製造工程の説明図、(b)は図9のインクタンクにおけるばね・シートユニットの製造工程の説明図である。
【図12】(a)および(b)は、図9のインクタンクにおけるばね・シート・フレームユニットの製造工程の説明図である。
【図13】図9のインクタンクにおけるばね・シートユニットとばね・シート・フレームユニットの結合工程の説明図である。
【図14】(a)および(b)は、図13の結合工程における要部の断面図である。
【図15】図9のインクタンクを用いて構成したインクタンク収納ユニットの断面図である。
【図16】図9のインクタンクを複数用いて構成したインクタンク収納ユニットの斜視図である。
【図17】本発明を適用可能なインクジェット記録装置の構成例を示す模式的斜視図である。
【図18】インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの結合に関する第1例を説明するための模式的断面図である。
【図19】インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの結合に関する第2例を説明するための模式的断面図である。
【図20】インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの結合に関する第3例を説明するための模式的断面図である。
【図21】(a)〜(c)は、図20に示したインクタンクにおけるそのインク供給動作に伴うインクタンク内の負圧の調整を説明するための図である。
【図22】インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの結合に関する第4例を説明するための模式的断面図である。
【図23】インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの結合に関する第5例を説明するための模式的断面図である。
【図24】インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの結合に関する第6例を説明するための模式的断面図である。
【図25】インクタンク、一方向弁および記録ヘッドの結合に関する第7例を説明するための模式的断面図である。
【図26】(a)および(b)は、インクタンクおよび記録ヘッドを装着するための機構の2例を模式的に示す図である。
【図27】(a)〜(c)は、他の形態による一方向弁を具えたインク供給装置の第1例の構成および動作を説明するための模式的断面図であり、(a)は大気導入用開口が密閉されている状態、(b)はインクタンクが収縮して大気導入用開口が離間される直前の状態、(c)は大気導入用開口が開放されて空気が導入された状態をそれぞれ示す。
【図28】(a)〜(d)は、他の形態による一方向弁を具えたインク供給装置の第2例の構成および動作を説明するための模式的断面図であり、(a)は大気導入用開口が密閉されている状態、(b)はインクタンクが収縮して大気導入用開口が離間される直前の状態、(c)は大気導入用開口が開放されて空気が導入された状態、(d)は密閉部材の構成をそれぞれ示す。
【図29】他の形態による一方向弁を具えたインク供給装置の第3例の構成を説明するための模式的断面図である。
【図30】他の形態による一方向弁を具えたインク供給装置の第4例の構成を説明するための模式的断面図である。
【図31】他の形態による一方向弁を具えたインク供給装置の第5例の構成を説明するための模式的断面図である。
【図32】他の形態による一方向弁を具えたインク供給装置の第6例の構成を説明するための模式的断面図である。
【図33】気体の透過に着目してなされたインクタンクの構成例を説明するための模式的断面図である。
【図34】(a)〜(c)は、図33のインクタンクの使用状況を説明するための図である。
【図35】図33のインクタンクにおける気体の浸透圧の説明図である。
【図36】気体の透過に着目してなされたインクタンクの他の構成例を説明するための模式的断面図である。
【図37】さらに他の実施形態に用いられる液体収納容器であり、インクジェット記録ヘッドが一体に取り付けられてなるインク収納容器の一例を示す模式的断面図である。
【図38】(a)〜(e)は、図37に示したインク収納容器の動作を説明するための説明図である。
【図39】図37に示したインク収納容器のインク収納空間内の負圧とインク残量との関係を示す説明図である。
【図40】さらに別の実施形態に用いられる液体収納容器であり、インクジェット記録ヘッドが一体に取り付けられてなるインク収納容器の他の例を示す模式的断面図である。
【図41】図37に示したインク収納容器によって形成される圧力変動防止用バッファ領域の機能を説明するために、液体(インク)導出量に伴ってインク収納空間の内容積がどのように変化するかを示す説明図である。
【図42】(a)および(b)は、好ましいバッファ領域を形成するインク収納容器の他の実施形態の構成例およびその動作を説明するための模式的断面図である。
【図43】(a)および(b)は、好ましいバッファ領域を形成するインク収納容器の他の実施形態の構成例およびその動作を説明するための模式的断面図である。
【図44】図42(a)の構成に対する設計上のパラメータを説明するための説明図である。
【図45】図42(a)の構成において、供給口からインクが導出されて行き、使い切る直前の状態を示す模式的断面図である。
【図46】(a)〜(f)は、インクタンク設計条件を一般化するために考察したインクタンクの構成例および動作を説明するための模式的断面図である。
【図47】図46(a)に示したインクタンク内の負圧とインク残量との関係を示す説明図である。
【図48】図46(a)の構成の変形例における負圧とインク残量との関係を示す説明図である。
【図49】(a)および(b)は、それぞれ、図46(a)の構成とは異なるインクタンクの構成例およびその内部の負圧とインク残量との関係を示す説明図である。
【図50】(a)および(b)は、それぞれ、図46(a)の構成の他の変形例に係るインクタンクおよびその内部の負圧とインク残量との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
10 インクタンク(液体収納容器)
11 可動部材
12 大気連通口
13 外装
14 圧力板
15 インク供給口
16 連通口
17,18 ゴム栓
20 記録ヘッド
21,22 中空針
23 フィルタ
24,25 シール部材
30 一方向弁
31 ダイヤフラム
31A 開口部
32 シール部材
33 ばね部材
34 支持板
40,42 ばね部材
127 インク収納ユニット
215 ばね
22,22A,22B,22C,22D ホルダ
225 フィルタ
227 インク流路
228 ジョイント針
231 可動部材
232 ばね
233 シール弾性体
234 シール弾性体
235,235A,235B チューブ
236 バッファタンク
238 ジョイント針
311 密閉部材
410 液体収納容器
411 本体
412 可撓性部材
413 圧力板
414 ばね
415 液体導出口
416 大気連通口
417 連通口
520 インクジェット記録ヘッド
510,540,610,710,810 インク収納室
510A,540A,560A インク収納空間
530,550,630,730,830 弁室
511,541,561,611 可動部材
512,542 大気連通口
513,543 インク収納室外装
514,544,564,614 支持板
515,545,565,615 ばね部材
517,617,717,817 連通路
521 供給管
523 フィルタ
531,551,561,631 可撓性シート
533,553 弁室外装
534,554 弁閉鎖板
535,555,595,635 弁規制ばね
536,556,592,636 開口部
537,557,637 弁シール部材

Claims (8)

  1. インクを吐出する吐出部に対して供給されるインクを収納する液体収納容器であって、
    大気連通口によって大気に開放された外装と、
    該外装内でインクを収納するインクの収納空間を形成しインクの消費に伴って変形する可撓性部材と、
    前記可撓性部材の形状を規制する板部材と、
    前記インクの収納空間内に設けられ、前記板部材を介して前記可撓性部材に作用し、前記吐出部のインク吐出動作が可能な範囲にある負圧を発生させる弾性部材と、前記インクの収納空間を外部に開放する連通部と、を備えるとともに、
    前記インクの収納空間内と連通する連通路と、大気開放用の開口、可動部材およびばね部材からなり、該ばね部材が前記可動部材を付勢するよう構成された一方向弁と、を備えた弁室が、前記連通管を前記インクの収納空間の連通部に位置づけて接続され、
    インクの消費による前記インクの収納空間内の負圧上昇によって前記弁室内の空気が前記インクの収納空間に供給され、前記弁室内の負圧が一定圧以上となった時、前記一方向弁が開放されて外気が前記弁室に導入されることによって、前記インクの収納空間および前記弁室内の負圧を調整することを特徴とする液体収納容器。
  2. 前記液体収納容器と前記弁室が前記連通路を介して分離できない構成であることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
  3. 前記可撓性部材は、中央部が前記インクの収納空間の外方に突出する凸形状を成す膜状の部材であり、前記板部材を介して前記弾性部材によって、前記インクの収納空間の容積を増大させる方向に付勢されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。
  4. 前記弾性部材は前記インクの収納空間の内容積を増大する方向の付勢力F1を発生し、
    前記板部材は、当該付勢力F1を受ける面積S1で構成され、
    前記弁室の前記ばね部材は前記一方向弁の開放動作を規制するための付勢力F2を発生し、
    前記弁室の前記可動部材は当該付勢力F2を受ける面積S2で構成され、
    前記インクの収納空間および前記弁室を連通する前記連通部にインクが存在する時に前記連通部に形成されるインクのメニスカスに起因する圧力をPM、前記メニスカスから前記インクの収納空間のインク最上部までの高さをh、前記インクの密度をρ、重力加速度をgとするときの前記弁室に作用する負圧PV=−(F1/S1)+h×ρ×g+PMの絶対値が、次式
    |PV| > |F2|/S2
    を満たす際に前記一方向弁が開放して外部から大気を導入するよう構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
  5. 前記インクの収納空間にインクが満たされている初期状態において次式
    |PV| < |F2|/S2
    が満たされているよう構成されてなることを特徴とする請求項4に記載の液体収納容器。
  6. 前記一方向弁が開放して前記インクの収納空間に前記連通路を介して外気が導入される際、次式
    |F1|/S1 > |F2|/S2
    が満たされているように構成されてなることを特徴とする請求項4に記載の液体収納容器。
  7. 前記面積S1が前記面積S2より大であることを特徴とする請求項6に記載の液体収納容器。
  8. 前記弾性部材および前記ばね部材は、それぞれ、ばね定数K1およびK2のばねで形成され、K2>K1であることを特徴とする請求項7に記載の液体収納容器。
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