以下に、本発明をインクジェット記録装置に適用したいくつかの実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する場合、または記録媒体の加工を行う場合を言うものとする。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板等、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能な物も言うものとするが、以下では「用紙」または単に「紙」ともいうものとする。
また、本発明は、インクジェット記録分野にあっては、記録媒体に対する処理液をインクと同様に供給することもできる。
(第1の実施形態)
「記録装置の概略構成」
図1は、本発明の第1の実施形態としてのインクジェット記録装置の概略構成を示す模式的平面図である。
この図1において、インクジェットカートリッジ(以下、「ヘッドユニット」と称する)1は、キャリッジ202に位置決めされて交換可能に搭載される形態となっている。ヘッドユニット1は、インクジェット記録ヘッドと、それに連結される第2インクタンクと、この第2インクタンクに連通する2つの管12,13とを備えている。一方の管12は、主として第2インクタンクにインクを導入する機能をもつためインク導入管と称し、他方の管13は、主として第2インクタンク内の気体を排出する機能をもつため気体排出管と称する。しかし、後述するように、いずれの管12,13においてもインクの導入と気体の排出が行われる。したがって、それらの管12,13の呼称は、それぞれがインクの導入用または気体の排出用としての専用のものであることを意味するものではない。そして、これらの第2インクタンクと2つの管12、13とによって第2インク収納領域を形成している。また、インクジェット記録ヘッドには、外部信号入力端子を介して各インク吐出部に駆動信号等を伝達するための電気接続部(コネクタ)が設けられている。キャリッジ202には、その電気接続部に駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダが設けられている。
キャリッジ202は、装置本体に設置されたガイドシャフト203によって、矢印Xの主走査方向に往復移動可能にガイドされている。そして、キャリッジ202は、主走査モータ204により、モータプーリ205、従動プーリ206、およびタイミングベルト207等の駆動機構を介して駆動されると共に、その位置および移動が制御される。また、キャリッジ202にはホームポジションセンサ210が設けられ、装置本体の定位置には遮蔽板216が配置されている。そして、キャリッジ202上のホームポジションセンサ210が遮蔽板216の位置を通過して、それを検知することによって、キャリッジ202がホームポジションにあることを知ることができる。また、このホームポジションの位置を基準としてキャリッジ202の位置を知ることもできる。
印刷用紙やプラスチック薄板等の記録媒体208は、ギアを介して給紙モータ215によりピックアップローラ211を回転させることによって、オートシートフィーダ(ASF)212から一枚ずつ図1中の下方に分離給紙される。更に、記録媒体208は、搬送ローラ209の回転により、ヘッドユニット1におけるインクジェット記録ヘッドの吐出口配列面と対向する位置(記録部)を通って、矢印Yの副走査方向に搬送される。搬送ローラ209は、ギアを介してLFモータ214により回転される。記録媒体208が給紙されたかどうかの判定と、その給紙時における記録媒体208の頭出し位置の確定(記録媒体208の先端位置の確定)は、記録媒体208がぺーパーエンドセンサ213の位置を通過した時点で行われる。更に、記録媒体208の後端の位置と、その後端の位置に基づいて記録媒体208上における現在の記録位置を割り出すためにもぺーパーエンドセンサ213は使用される。
なお、記録媒体208は、記録部において平坦な記録面を形成するように、その裏面がプラテン(不図示)により支持される。ヘッドユニット1は、その記録ヘッドにおけるインク吐出口の配列面がキャリッジ202から下方へ突出して、その配列面が記録媒体208の記録部と平行になるようにキャリッジ202に保持される。
ヘッドユニット1は、その記録ヘッドの各吐出部におけるインク吐出口の並び方向が矢印Xの主走査方向と交差する方向となるように、キャリッジ202に搭載される。ヘッドユニット1は、その記録ヘッドにおける吐出口列から、インクを液滴として記録媒体上に吐出することによって記録をする。
201は回復系機構であり、ヘッドユニット1内のインクジェット記録ヘッドの吐出口からインクを吸引排出させたり、その吐出口の配列面を保護するためのキャップ部材を有する。このキャップ部材は、不図示のモーターによって吐出口の配列面に対して圧接又は離間位置に移動可能とされている。このキャップ部材は一般的にはゴム製であり、吐出口の配列面に対して圧接状態のときに、その配列面との間の十分な密閉が達成できるように構成されている。そして、このキャップ部材を圧接状態にして、不図示の吸引ポンプによってキャップ部材内を負圧にし、インクジェット記録ヘッドの吐出口からインクをキャップ部材内に吸引排出することによって、吸引回復動作を行う。また、この圧接状態において吸引ポンプを動作させなければ、記録装置の非使用時にキャップ部材が吐出口を保護することになる。
11は接続部であり、ヘッドユニット1内の第2インクタンク125(図2参照)へのインク充填と、その第2インクタンク内からの気体排出を行う際に、その第2インクタンクと第1インクタンク51(図2参照)とを接続する。この接続部11に、インク導入管12と気体排出管13が取り付けられている。更に、この接続部11は、記録装置の使用時に上部となるヘッドユニット1の面に設けられている。この接続部11は、キャリッジ202がホームポジションに移動することによって、インクジェット記録装置内に設置されている供給部31(図2参照)に接続される。図2のように、供給部31には、インク導入管12と気体排出管13にそれぞれ連結するインク供給管32と気体誘導管33が設置されている。更に、供給部31は、インク流路41を介して第1インクタンク51に接続されている。このインク流路41は中空のチューブで構成されており、記録装置の使用時において上方に位置する供給部31の上部と、記録装置の使用時において下方に位置する第1インクタンク51の下部との間を連結している。これらの第1インクタンク51、インク流路41、及び供給部31によって第1インク収納領域を形成している。
図4(a),(b)は、接続部11と供給部31の構成例の説明図である。
これらの図においては、接続部11の中のインク導入管12を含むインク導入接続部21と、それに接続される供給部31の中のインク供給管32との構成を示す。これらの構成は、接続部11の中の気体排出管13を含む接続部と、それに接続される供給部31の中の気体誘導管33についても同様である。
図4(a)に示すように、供給部31のインク供給管32は、中空円筒のベース部材32aの内部にボール35と、これをゴム36に付勢するばね34とを備えている。ゴム36は、ベース部材32aの端部に取り付けられていて、スリットが形成されている。ベース部材32aの上部には、その内部を供給部31内のインク収納空間と連通させる孔32bが設けられている。第1インクタンク51からインク流路41と孔32bを通って供給部31のインク供給管32内に流入してきたインクは、ベース部材32aの内部に入り込む。しかし、図4(a)に示す非接続状態では、ボール35がゴム36のスリットを塞ぐため、このインク供給管32から外部にインクが漏れることはない。一方、インク導入接続部21は、そのベース部材21aの内部にて摺動可能なシールゴム26と、このシールゴム26の中央の孔を通る位置に設けられたインク導入管12と、シールゴム26を図中の上方に付勢するばね24とを備えている。インク導入管12は中空であり、その先端部が針状とされ、その先端部の脇には孔12bが設けられている。インク導入管12の中空内部の下端は第2インクタンク125の内部に連通し、かつ、その中空内部は孔12bを通して外部に開放されている。孔12bは、図4(a)の非接続状態ではシールゴム26によって塞がれている。
このような構成のインク供給管32とインク導入管12は、キャリッジ202がホームポジションに移動することによって、図4(b)に示すように接続される。すなわち、インク供給管32のベース部材32aがインク導入接続部21のベース部材21a内に入り込み、シールゴム26をばね24の付勢力に抗して押し下げる。これにより、インク導入接続部21内のインク導入管12の先端部は、ゴム36のスリットを通って、ベース部材32a内のボール35をばね34の付勢力に抗して押し上げる。この結果、インク導入管12の孔12bがベース部材32a内にて開口し、その孔32bを介して第1インクタンク51と第2インクタンク125との間が連通することになる。
「第2インクタンクの構成および製造方法」
次に、第2インクタンク125の構成及び製造方法を図8から図14に基づいて説明する。
図8は、本例における第2インクタンク125の斜視図であり、四角枠状のフレーム115における上下の開口部に、上下のばね・シートユニット114を取り付けた密閉構造となっている。ばね・シートユニット114は、後述するように、ばね107と圧力板109からなるばねユニット112と、可撓性のタンクシート106とによって構成される。フレーム115には、インクジェット記録ヘッドヘ第2インクタンク125内のインクを供給するためのインク供給口128と、インク導入管12を設置するための設置口(不図示)と、気体排出管13を設置するための設置口(不図示)が形成されている。
図9から図13は、このような第2インクタンク125の製造方法を説明するための図である。まず、図9(a),(b),(c)は、可撓性のタンクシート106を凸型に成形する工程の説明図である。
タンクシート106の成形素材としてのシート材料101は、原材料から大きなサイズのシート状につくられたものであり、このシート材料101は、第2インクタンク125の性能の重要な要素を占める。このシート材料101には、気体とインク成分の透過度が低く、かつ可撓性をもちつつ繰り返し変形に対する耐久性が要求される。その好適な材料としては、PP,PE,PVDC,EVOH、ナイロン等であり、また複合材として、アルミニウムやシリカを蒸着したものなどを用いることができ、更に、これらを積層化して用いても良い。特に耐薬品性に優れたPPやPEと、気体・水蒸気遮断性能に優れたPVDCを積層して用いることにより、優れたインクタンク性能を発揮することができる。また、このようなシート材料101の厚さは、柔軟性と耐久性に鑑みて、10μm〜100μm程度が適する。
このようなシート材料101は、図9(a)のように、凸形状部103、バキューム孔104、および温度調整機構(図示せず)を有する成形金型102を用いて凸型に成形する。すなわち、シート材料101は、バキューム孔104に吸着され、成形金型102からの熱により凸形状部103に沿う凸型に成形される。シート材料101は、図9(b)のように凸型に成形されてから、図9(c)のように、タンクシート106として所定の寸法に切り出される。その寸法は次工程の製造装置に適したものであればよく、インクを収容する第2インクタンク125の容積などに応じて設定することができる。
図10(a)は、第2インクタンク125の内部を負圧にするために用いられるばねユニット112の製造工程の説明図である。予め半円状に形成されたばね107をばね受け治具108に取り付けて、その上から、溶接電極111を用いたスポット溶接により圧力板109を取り付ける。圧力板109には、熱接着材110が付けられている。これらのばね107と圧力板109とによって、ばねユニット112が構成される。
図10(b)は、ばねユニット112をタンクシート106に取り付ける工程の説明図である。受け治具(図示せず)の上に載置したタンクシート106の内面に、ばねユニット112を位置決めして配置する。そして、ヒートヘッド113を用いて熱接着材110を加熱することにより、ばねユニット112とタンクシート106とを接着して、ばね・シートユニット114を構成する。
図11(a)は、ばね・シートユニット114をフレーム115に溶着する工程の説明図である。フレーム115は、フレーム受け治具116に固定される。フレーム115を取り囲むシート吸着治具117は、フレーム115が位置決め配置された後に、ばね・シートユニット114をバキューム孔117Aに吸着して、そのユニット114とフレーム115とを相対的に位置ずれなく保持する。その後、ヒートヘッド118により、フレーム115の図中上側の周縁部と、ばね・シートユニット114のタンクシート106との環状の接合面同士を熱溶着する。シート吸着治具117が、フレーム115の図11(a)中上側の周縁部と、ばね・シートユニット114のタンクシート106の周縁部分とを均一に対面させることにより、それらの接合面は、極めて均一に熱溶着されてシールされることになる。ゆえに、シート吸着治具117は、均一なシール性を確保すべく熱溶着する上において重要である。
図11(b)は、カッター(図示せず)によって、フレーム115の外側にはみ出たタンクシート106の部分を切り取る工程の説明図である。このように、フレーム115からはみ出たタンクシート106の部分を切り取ることにより、ばね・シート・フレームユニット119が完成する。
図12及び図13は、このようなばね・シート・フレームユニット119に、前述した工程により作製した他のばね・シートユニット114を熱溶着する工程の説明図である。図12のように、ばね・シート・フレームユニット119は受け治具(図示せず)に取り付けられ、その受け治具と相対的に位置が規定された吸着治具120によって、ばね・シート・フレームユニット119の外周部が囲まれる。その受け治具は、ばね・シート・フレームユニット119のタンクシート106における外面の平面部106Aに面接触して、その平面部106Aを図13(a),(b)のように保持する。他のばね・シートユニット114は、そのタンクシート106の外面の平面部106Aが押さえ治具121によって吸着保持され、この押さえ治具121が下降することによって、ばね・シートユニット114側のばね107の先端部107A,107Bと、ばね・シート・フレームユニット119側のばね107の先端部107A,107Bとがほぼ同時に嵌合する。即ち、ばね107の一方の先端部107Aは凸状、他方の先端部107Bは凹状となっており、それぞれが自己アライメントにより嵌まり込むようになっており、それらのばね107は、一対のばね部材構成体として結合することにより1つのばね部材を構成する。
更に、押さえ治具121を下降させて、図13(a)のように、それら一対のばね107を圧縮させる。その際、押さえ治具121は、ばね・シートユニット114における図13中上側の平面部106A、つまり凸部に形成されたタンクシート106の上側の平坦領域を幅広く押さえ込む。これにより、タンクシート106の平面部106Aの位置が規制され、下側のユニット119や治具120に対して、ばね・シートユニット114が平行に保たれたまま接近する。従って、図13(b)のように、ばね・シートユニット114のタンクシート106の周縁部分は、吸着治具120の面に接して、バキューム孔120Aに吸引保持されると共に、フレーム115の溶着面(同図中上側の接合面)にも均一に対面することになる。そして、この状態において、ヒートヘッド122により、ばね・シート・フレームユニット119のフレーム115における図中上側の周縁部と、ばね・シートユニット114のタンクシート106と、の環状の接合面同士を熱溶着する。
このように、上側のユニット114におけるタンクシート106の平面部106Aと、下側のユニット119におけるタンクシート106の平面部106Aとの平行度を維持しつつ、一対を成すばね107を圧縮させることにより、それら一対のタンクシート106の平面部106Aにおける平行度が高い第2インクタンク125を安定的に大量生産をすることができる。また、一対をなすばね107は、図13(a)及び(b)中において左右均一に圧縮変形されるため、ばね・シートユニット114を傾けるような力を生じることがなく、一対のタンクシート106における平面部106Aの平行度が高い第2インクタンク125をより安定的に生産することができる。更に、第2インクタンク125内の容積変化に伴って、一対をなすばね107が図13(a)及び(b)中において左右均一に圧縮変形されるため、一対のタンクシート106の平面部106Aは高い平行度を保ったまま対向間隔が変化することになり、この結果、インクを安定的に供給することができる。また、可撓性のタンクシート106の平面部106Aを斜めに傾けるような無理な力が作用しないため、第2インクタンク125のシール性、耐圧性、耐久性が向上することになる。
その後、フレーム115の外側にはみ出たタンクシート106の部分を切り取ることによって、図8の第2インクタンク125が完成する。第2インクタンク125の内部は、インク供給口128と、インク導入管12の挿入口(設置口)と、気体排出管13の挿入口(設置口)とによってのみ外部に連通する密閉構造となっている。
図14は、第2インクタンク125を記録ヘッドに取り付ける工程の説明図である。記録ヘッドを構成するヘッドチップ133はインクタンク収容室130に取り付けられており、このインクタンク収容室130内に第2インクタンク125が複数個取り付けられる。第2インクタンク125は、インクタンク取り付け部131に溶着や接着によって取り付けられる。また、本例の第2インクタンク125の上部には接続部11が取り付けられている。その後、インクタンク収容室130の開口部に蓋132を溶着や接着によって取り付けて、インクタンク収容室130を形成する。なお、第2インクタンク125の上面に設置した接続部11が蓋132の上部に出るように、蓋132には、それぞれの接続部11と対向する部分に開口部14が設けられている。また、ヘッドチップ133としては、記録ヘッドとしてインクジェット記録ヘッドを構成するものであってもよく、そのインクジェット記録ヘッドとしては、例えば、インク吐出口からインク滴を吐出するために電気熱変換体を備えた構成を採用することができる。即ち、電気熱変換体の発熱によりインクを膜沸騰させ、その発泡エネルギーを利用してインク吐出口からインク滴を吐出させる構成とすることができる。このようなインクジェット記録ヘッドと第2インクタンク125とを結合することにより、ヘッドユニット1を構成することができる。
図15は、これまでに説明した第2インクタンク125を搭載するヘッドユニット1の断面図である。
第2インクタンク125の内部にはインクの充填及び貯蔵が可能であり、そのインクは、第2インクタンク125のインク供給口128からフィルタ137を介して供給路136へ供給され、さらにヘッドチップ133に供給される。本例のヘッドチップ133は、インクジェット記録ヘッドを構成すべくヒータボード134が接着されており、このヒータボード134には、インク吐出流路とオリフィスが形成されていると共に、電気熱変換体(ヒータ)が備えられている。これにより、第2インクタンク125から供給されたインクの吐出が可能となっている。
また、第2インクタンク125内には、主として、接続部11に取り付けられているインク導入管12からインクを充填することが可能であり、このインク導入管12は、四角枠状フレーム115に接着固定されて、そのインク導入管12の外部からのインク漏れが防止されている。更に、気体排出管13についても同様に四角枠状フレーム115に接着固定されている。第2インクタンク125内へのインク充填は、インク導入管13の上部に位置する接続部11に、記録装置内に配備された供給部31が接続されることによって行われる。この接続動作の詳細は後述する。
また、第2インクタンク125内における対のばね107の代わりに、それらを結合したときと同様の形態を成す1つのばねを備えてもよい。その場合には、その1つのばねを対のタンクシート106の一方に取り付けた上、そのタンクシート106をフレーム115に結合させておいてから、その1つのばねを圧縮させつつ、他方のタンクシート106をフレーム115に結合させることもできる。その際に、その1つのばねを対のタンクシート106の一方に取り付けず、単に、対のタンクシート106の間にばねを挟むようにしてもよい。また、対のタンクシート106は、少なくとも一方が可撓性部材によって形成されていればよい。
「インクの充填動作」
次に、ヘッドユニット1内の第2インクタンク125にインクを充填し、それと同時に、第2インクタンク125内に溜まっている気体を排出させる際の動作について説明する。
図2は、複数個ある第2インクタンク125の内の1個について、その第2インクタンク125の接続部11と、第1インクタンク51の供給部31との接続状態を示している。なお図2中に示すように、第1インクタンク51からインク流路41を経て供給部31までの領域を第1のインク収納領域、インク導入管12並びに気体排出管13の設置部分からヘッドチップ133に至る領域を第2インク収納領域、インク供給管32並びに気体誘導管33の設置部分からインク導入管12並びに気体排出管13の設置部分までの部分を接続手段と定義することができる。
この中で、第1インクタンク51はモールド成形された容器内にインクを収納するものであり、その底部にインク導出口52、その上部に大気連通口53が設けられている。第1インクタンク51は第2インクタンク125よりも上方に位置するように設置されているため、インク流路41は斜度をもって接続されている。
なお、この第1インクタンク51に設けられている大気連通口53は、インク導出が行われるに伴って第1インクタンク内部の容積減少に対し、大気の導入を行うことによって補うものである。これによって第1インクタンク内の圧力を常に大気圧に保ち、インク導出を円滑に行うことができる。従って、大気連通口53は、少なくともインクの使用を開始してから、即ち第1インクタンクがこの記録装置内に装着されてから開口していればよい。このことから、大気連通口53は記録装置に装着される前はシール部材等で閉塞されていてもよい。更に、この装着前に大気連通口53が閉塞されていることは、第1インクタンクの使用前における内部に充填されているインクの容器外へのもれや、インクの蒸発も防止する点においても有効である。また大気連通口53の使用時における開口は、記録装置への装着の直前に使用者が引き剥がしたり、装着時に針をさして穴をあける等のことで達成できる。
また、本例では、第1インクタンクはモールド成形された容器で説明しているが、袋状に形成された可撓性シートで構成してもよい。この場合には、インクの導出に伴ってシートが変形し、内部のインク量に応じて内容積を変化させることができるため、大気連通口を省いても構わない。そして、可撓性シートで構成した袋は変形しない筐体内に収納しておくことで、装着の容易性及び外力からシート損傷を防止することができる。
続いて第2インクタンクの構成及び動作を説明するが、以降においては、説明を容易にするために、第2インクタンク125内に備えられるばねをコイルばねとする。
第2インクタンク125の中における四角枠状フレーム115の上部には、インク導入管12及び気体排出管13が挿入され、それらの管は四角枠状フレーム115と接する部分で接着固定されている。インク導入管12の下側の開口部にはインク導入口12aが形成され、気体排出管13の下側の開口部には気体排出口13aが形成されており、これらは共に第2インクタンク125の内部に入っている。また、第2インクタンク125内において、インク導入口12aは気体排出口13aよりも下方に位置している。また、気体排出口13aは、四角枠状フレーム115から第2インクタンク125内寄りにやや飛び出た位置にある。
以下、図3を用いて、第2インクタンク125内へのインクの充填及び第2インクタンク125内からの気体放出の過程を具体的に説明する。
まず、図3(a)は、第2インクタンク125内にインクが十分に存在しているときの状態を示している。このときは、第2インクタンク125を第1インクタンク125に接続せず、接続部11は供給部31から分離されている。更に、インク導入管12の先端部の孔12b(図4参照)はシールゴム26に塞がれ、気体排出管13の先端部の孔も同様に塞がれている。これにより、第2インクタンク125内はほぼ密閉状態にある。
このような図3(a)状態から、記録装置の記録動作に伴って、第2インクタンク125内に貯留されているインクが消費されると、第2インクタンク125の内容積を減少させるように、対をなしている2枚の圧力板109が第2インクタンク125の内側に移動していく(図3(b)参照)。そして、この図3(b)のように、対の圧力板109の間に取り付けられているばね107が圧縮されて、第2インクタンク125内部における負圧が次第に高まっていく。更に第2インクタンク125内のインクが減少すると、2枚の圧力板109同士は更に近づき、それに応じた負圧が第2インクタンク125内にて維持される。第2インクタンク125内の負圧は、記録ヘッドに対する最適なインクの供給圧(負圧)の範囲内に維持される。2枚の圧力板109同士が近づくことにより、第2インクタンクは収縮することになる。
ところで、一般に、記録装置は間欠的に使用されることが多い。そのため、第2インクタンク125内のインクが消費されていく過程において、記録装置を停止させて放置することは十分にある。このような放置状態においては、インク内部に溶存していた気体が気化したり、あるいは第2インクタンク125を構成している各部から外気が内部に進入したりして、第2インクタンク125内における気体の体積が増加するおそれがある。その気体としては、記録ヘッドの吐出口から進入するものや、記録ヘッドの吐出動作に伴って発生する気体なども存在する。そのため、第2インクタンク125内のインクを消費した後に、第1インクタンク51からインクを充填する際には、その第2インクタンク125内における気体の体積増加の影響により、以前の充填時と同量のインクが充填できなくなるおそれがある。このような不具合をなくすためには、第2インクタンク125内にインクを充填する際に、その第2インクタンク125内の気体を同時に排出することが必要となる。
そこで、第2インクタンク125内のインクが所定量以上消費されたときは、図3(c)のように、第2インクタンク125ヘのインクの充填と同時に、第2インクタンク125内に溜まった気体を排出する。
まず、キャリッジ202と共にヘッドユニット1がホームポジションに移動することによって、接続部11と供給部31とが対向して接続される。この接続により、第2インクタンク125内がインク導入管12と気体排出管13を介して第1インクタンク51内に連通する。この結果、第2インクタンク125内の負圧により、インク導入管12と気体排出管13を介して、第1インクタンク51から第2インクタンク125ヘと図3(c)の矢印Aの向きにインクが流れ込み始める。このインクの流れ込みにより、圧力板109によって圧縮されていたばね107の復元力も伴って、第2インクタンク125の内容積が次第に増大し、そして、タンクシート106が最大に張って第2インクタンク125の内容積が最大となったときには、最終的に図3(d)の状態に至る。
第1インクタンク51には、その内部と大気との間を連通させる大気連通口53が上部に設けられていて、その内部は常に大気圧に維持されるため、第1インクタンク51内のインクは、インク導入管12と気体排出管13を通って第2のインクタンク125内に充填される。そして、第2インクタンク125内がインクによって徐々に満たされて、その第2インクタンク125内におけるインクの液面が高くなるにつれて、その液面の上部空間にある気体が圧縮されて圧力が高まる。その気体は、インク導入管12と気体排出管13を通って、第2インクタンク125から第1インクタンク51へ逃げようとする。本例の場合、気体排出管13がインク導入管12よりも短くて、前者の長さ分の水頭差による圧力が後者の長さ分の水頭差による圧力が小さいために、第2インクタンク125内の気体は、インク導入管12を通るよりも気体排出管13を通った方が逃げやすい。そのため、第2インクタンク125内が所定圧に達したときに、図3(d)中の矢印Bのように、第2インクタンク125内の気体が気体排出管13を通って第1インクタンク51内に排出され、その排出に伴って、図3(d)中の矢印Aのように、インク導入管12を通って第1インクタンク51内のインクが第2インクタンク125内に導入されることになる。また、図3(d)のように、インク導入管12がインクの液面下に没したときは、そのインク導入管12がインクの導入用として、また気体排出管13が気体の排出用として、それらの機能がより明確に分かれる。
第2インクタンク125内の気体は、気泡として第1インクタンク51内に排出される。すなわち、その気泡は、気体排出管13の下端の気体排出口13aから入り、供給部31とインク流路41を通って、重力方向において高い位置にある第1インクタンク51内に向かう。第1インクタンク51は、単に液状のインクを収納する容器として構成されているため、その内部に排出された気体は、第1インクタンク51内の上方に移り、さらに大気連通口53から大気中に抜ける。
このような気体の排出を伴うインクの充填は、第2インクタンク125内のインクの液面が気体排出管13の気体排出口13aに到達するまで行われる。つまり、第2インクタンク125内のインクの液面が気体排出管13の気体排出口13aに到達したときに、インクの充填が自動的に停止することになる。したがって、第2インクタンク125内へのインクの充填は、特別なポンプなどを必要とすることなく、かつ気体の排出を伴いながらスムーズに行われることになり、しかも満タンになったときに充填動作を自動的に停止させることができる。
このようにして、第2インクタンク125に所定量のインクを充填した後は、キャリッジ202と共にヘッドユニット1をホームポジションから離して、接続部11と供給部31とを分離することによって記録動作が可能となる。接続部11と供給部31との分離により、インク導入管12の先端部の孔12b(図4参照)がシールゴム26に塞がれ、気体排出管13の先端部の孔も同様に塞がれて、第2インクタンク125内が再びほぼ密閉状態となる。
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態を説明するための図である。本例は、第1インクタンク51を第2インクタンク125よりも高い位置に置かなくともよい構成例である。この例においても図5中に示すように、第1インクタンク51からインク流路42を経て供給部31までの領域を第1のインク収納領域、インク導入管12並びに気体排出管13の設置部分からヘッドチップ133に至る領域を第2インク収納領域、インク供給管32並びに気体誘導管33の設置部分からインク導入管12並びに気体排出管13の設置部分までの部分を接続手段と定義することができる。
図5のように、第1インクタンク51を第2インクタンク125よりも高い位置に置かない場合でも、結合ユニットを構成する接続部11と供給部31とが結合された際に、前述した第1の実施形態と同様に、第1インクタンク51から第2インクタンク125へのインクの充填が行われる。しかし、第2インクタンク125から排出された気体は、下方に位置する第1インクタンク51には移動しない。そこで、インク流路42の途中に気体貯留室43を設け、その中に、第2インクタンク125から排出された気体を一旦溜める。この気体貯留室43は、柔軟で弾力性をもたないナイロン等によって袋状に形成されており、その一部に形成された開口部分に、インク流路42中の1つの開口部44が接続されている。
本例の構成におけるインクの充填と気体の排出の過程を図6および図7を用いて説明する。
まず、第2インクタンク125内にインクが十分にあるときは、図6(a)のように、接続部11は供給部31から分離している。このとき、気体貯留室43内には気体が排出されていないため、この気体貯留室43内はほとんどインクで満たされている。
第2インクタンク125内のインクが消費されて、その第2インクタンク125が変形した状態を図6(b)に示す。このように、圧力板109同士が接近することによってばね107が圧縮され、第2インクタンク125内は、依然として、記録ヘッドにインクを供給するために最適な範囲の負圧に保たれる。
第2インクタンク125内にインクを充填するときには、図6(c)のように接続部11と供給部31とが接続される。この接続により、前述した実施形態の場合と同様に、第2インクタンク125内の負圧の作用によって、その第2インクタンク125内に第1インクタンク51からインクが流れ込む。
このようなインクの流れ込みが進んでいくと、図6(d)のように、第2インクタンク125がはね107の復元力によって膨らみ、そして第2インクタンク125内のインクの液面も次第に上昇すると共に、その内部に存在していた気体が気体排出管13を通って気体貯留室43の中に進入していく。第2インクタンク125から排出された気体が気体貯留室43内に入っていくことにより、その気体貯留室43内において気体が占める割合が次第に多くなり、それに伴って相対的に減少する気体貯留室43内のインクは第2インクタンク125の中に入っていく。
このような一連のインク充填及び気体排出を終えた後は、図7(a)に示すように、接続部11と供給部31とを分離させる。この分離状態では供給部31が密閉されるため、気体貯留室43内に排出された気体は、その気体貯留室43内に溜まったままである。
次に、図7(b)に示すように、気体貯留室43に対して外力Pを加えることによって袋状の気体貯留室43が潰れ、その中に貯留されていた気体がインク流路42を通って第11インクタンク51内に入っていく。気体貯留室43を押圧するために、記録装置内に押圧手段を適宜設置しておくことも可能である。
また、このような構成においては、気体貯留室43の内容積をインク流路42の内容積よりも大きくしておくことが必要である。仮に、気体貯留室43の内容積がインク流路42の内容積よりも小さい場合には、気体貯留室43内の気体を第1のインクタンク51内に送り込んだ後、気体貯留室43が復元したときに、インク流路42内に気体が残留するおそれがある。すなわち、気体貯留室43を外力により潰して、その内部の気体を第1インクタンク51内に送り込んだ後、その外力の解除により気体貯留室43が復元して第1インクタンク51内のインクが気体貯留室43内に入っていったときに、インク流路42内の気体がインクと充分に置換されず、インク流路42と気体貯留室43との接合部付近に気体が残ったままとなる。このように残留した気体は、第2インクタンク125内に送られるおそれがある。したがって、上記のように、気体貯留室43の内容積は、インク流路42の内容積よりも大きくしておく。
(第3の実施形態)
図16及び図17は、本発明の第3の実施形態を説明するための図である。本例における第1インク収納容器(第1インクタンク)51には、その内部に画成されるインク収納室と、バルブ室68との2室から成り、それら両室の内部は連通口56を介して連通されている。
第1インク収納容器51の一部には、変形可能な可撓性膜(シート部材)52が配設されており、このシート部材52と第1インク収納容器51の内面との間に、インクを収納するための空間(インク収納室)が画成されている。第1インク収納容器51内におけるシート部材52の外側空間、すなわち図16におけるシート部材52の上側空間は、大気連通口55により大気に開放されて大気圧と等しくされている。この第1インク収納容器51は、下方に設けられている供給部31への接続部、およびバルブ室68への連通路を除いて、実質的に密閉空間を形成している。
本例のシート部材52の中央部分は、平板状の支持部材である圧力板53によって形状が規制されており、その周縁部分が変形可能となっている。そして、このシート部材52は、予めその中央部分が凸状に形成されていて、側面形状がほぼ台形となっている。このシート部材52は、後述するように、第1インク収納容器51内におけるインク量の変化や圧力変動に応じて変形する。その際に、シート部材52の周辺部分がバランスよく伸縮変形し、そのシート部材52の中央部分がほぼ水平姿勢を保ったまま、図の上下方向に平行移動する。このようにシート部材52がスムーズに変形(移動)するため、その変形に伴う衝撃の発生がなく、衝撃に起因する第1インク収納容器51内に異常な圧力変動が生じることもない。
また第1インク収納容器51内には、圧力板53を介してシート部材52を図中の上方に付勢する圧縮ばね形態のばね部材54が設けられている。このばね部材54の押圧力の作用により、記録ヘッドのインク吐出部に形成されるメニスカスの保持力と平衡して、記録ヘッドのインク吐出動作を可能とする範囲の負圧が発生される。なお、図16および図17の状態は、第1インク収納容器51内にほぼ完全にインクが充填された状態を示しており、この状態でもばね部材は圧縮された状態にあり、第1インク収納容器51内に適切な負圧が生じているものとする。
さらに、第1インク収納容器内51内の負圧が所定値以上に高まった時に外部から気体を導入すると共に、第1インク収納容器51からのインク漏出を阻止するための一方向弁61が構成される。この一方向弁61は、大気導入口66を有する弁閉鎖部材としての圧力板63と、大気導入口66と対応するようにバルブ室68の筺体に固定されて密閉可能なシール部材65と、を有する。バルブ室68は、第1インク収納容器51への連通口56および大気に開放される大気導入口66を除いて、実質的に密閉空間を維持している。バルブ室68の筐体内において、シート部材62よりも図中右側の空間は、大気連通口67によって大気に開放されて、大気圧と等しくされている。シート部材62は、その中央部分が圧力板63と接合され、その周縁部分が変形可能となっており、このような構成をとることによって、弁閉鎖部材である圧力板63の図中左右方向への移動が円滑に行なわれる。
バルブ室68の内部には、弁の開放動作を規制するための弁規制部材として、ばね部材64が備えられている。ばね部材64はやや圧縮された状態とされており、その圧縮の反力によって、圧力板63を図中の右方向に押圧する構成となっている。このばね部材64の伸縮によって、大気導入口66に対するシール部材65の密着/離間を行なう弁としての機能を持たせ、さらに、大気連通口67から大気導入口66を介してバルブ室68内部への気体導入のみを許可する一方向弁としての機能を持たせている。
ここでシール部材65としては、大気導入口66が確実に密閉できるものであれば良い。すなわち、シール部材65は、少なくとも大気導入口66と接触する部位が大気導入口66の開口面に対して平滑性を保つ形状のもの、あるいは大気導入口66の周囲に密着可能なリブを有するものなど、密着性が確保できるものであれば良く、またその材質も限定されない。好ましくは、シート部材62と圧力板63の変位に追従しやすい伸縮性を有するゴムのような弾性体によって、シール部材65を形成する。
かかる第1インク収納容器51の構成では、インクが十分に満たされている初期状態からインク消費が進んでいくと、第1インク収納容器51のインク収納室内の負圧と、バルブ室68内における弁規制部材(ばね部材64)の作用力等とがつり合うことになる。このようにつり合った状態からさらにインク消費が継続されて、第1インク収納容器51のインク収納室内の負圧がさらに強まった瞬間に、大気導入口66が開放されて大気が流入し、その大気が第1インク収納容器51のインク収納室内に取り込まれる。シート部材52および圧力板53が図中の上方に変位可能であるため、この大気の取り込みによってインク収納室内の容積が増大し、同時に、負圧も弱まって大気導入口66が再び閉鎖される。
また、第1インク収納容器51の周囲環境の変化、例えば、温度上昇あるいは減圧等が生じた場合には、シート部材52および圧力板53の下方への最大変位位置から初期位置までの変位量に相当する容積分、インク収納室内に取り込まれている空気の膨張が許容される。換言すれば、その容積分の空間がバッファ領域として機能する。そのため、周囲環境の変化に伴う圧力の上昇を緩和して、記録ヘッドの吐出口からのインク漏出を効果的に防止することができる。
また、初期のインク充填状態から、インクの導出に伴って第1インク収納容器51の内容積が減少してバッファ領域が確保されるまでは、インク収納室に外気が導入されないため、それまでに周囲環境の急激な変化や振動や落下などが生じてもインク漏れは発生しない。さらに、インクの未使用状態から予めバッファ領域を確保しているのではないので、インク収納容器51の容積効率も高く、コンパクトな構成とすることができる。
なお、図示の例では、第1インク収納容器51内のばね部材54、およびバルブ室68内のばね部材64を共にコイルばねの形態として模式的に示しているが、勿論、他の形態のばねを用いることができる。例えば、円錐弦巻ばねとすることもできるし、板ばねを用いることもできる。板ばねを用いる場合には、断面略U字形状を有する上下対称的な一対の板ばね部材を用い、それらのU字形状の開放端同士を対向させて組合せてもよい。
本例における第2インク収納容器(第2インクタンク)125は、前述した実施形態と同様に構成されている。ただし本例の場合、気体移送管(気体排出管)13の気体移送口(気体排出口)13aは、四角枠状フレーム115の下面とほぼ同一面上に位置している。
次に、図18を用いて、第2インク収納容器(第2インクタンク)125内へのインクの充填および第2インク収納容器(第2インクタンク)125内からの気体放出の過程を具体的に説明する。
図18(a)のように、第2インク収納容器125内にインクが十分に存在しているときの状態、図18(b)のように、第2インク収納容器125内のインクが消費された状態、および図18Cのように、外部からの気体の侵入によって第2インク収納容器125の上部に気体が溜まる状態は、前述した図3(a)および(b)における状態と同様である。前述したように、第2インク収納容器125内に溜まる気体としては、記録ヘッドの吐出口から侵入するものや、記録ヘッドのインク吐出動作に伴って発生する気体などがある。
本例の場合も前述した実施形態と同様に、第2インク収納容器125内のインクが所定量以上消費されたときは、第2インク収納容器125ヘのインクの充填と同時に、第2インク収納容器125内に溜まった気体を移送する。
まず、キャリッジ202と共にヘッドユニット1がホームポジションに移動することによって、接続部11と供給部31とが対向して接続される(図18(c),(d)参照)。この接続により、第2インク収納容器125内がインク導入管12と気体移送管13を介して第1インク収納容器51内に連通する。この結果、第2インク収納容器125内の負圧により、インク導入管12と気体移送管13を介して、第1インク収納容器51から第2インク収納容器125ヘと図18(d)の矢印Aの向きにインクが流れ込み始める。このように、第1インク収納容器51と連通する複数の連通路としてのインク導入管12と気体移送管13から、第2インク収納容器125側に同時にインク供給される。このインクの流れ込みにより、圧力板109によって圧縮されていたばね107の復元力も伴って、第2インク収納容器125の内容積が次第に増大する。
そして、図18(e)のように、第2インク収納容器125の内容積がほぼ最大となったときに、第2インク収納容器51内部の気体が気体移送管13と気体導入管33を介して第1インク収納容器51側に移送されると共に、第2インク収納容器125内にインクが充填される。つまり、第2インク収納容器125内に供給されるインクにより、第2インク収納容器125内の気体が圧縮されて圧力が高まり、その圧力上昇によって、気体移送管13内に形成されているインクのメニスカスが破られて第2インク収納容器125内の気体がインク収納容器51内に移送され、それと同時に、インク導入管12を通って第1インク収納容器51内のインクが第2インク収納容器125内に導入されることになる。また、インク導入管12のインク導入口12aがインクの液面下に没したときは、そのインク導入管12がインクの導入用として、また気体移送管13が気体の移送用として、それらの機能がより明確に分かれる。
このような気体の移送を伴うインクの充填は、図18(f)に示されるように、第2インク収納容器125内のインクの液面が気体移送管13の気体移送口13aに到達するまで行われる。つまり、第2インク収納容器125内のインクの液面が気体移送管13の気体移送口13aに到達したときに、インクの充填が自動的に停止することになる。
次に、図19を用いて、第2インク収納容器125内からの気体移送の際の圧力バランスについて、詳しく説明する。ここでは、インク供給と気体移送とが行われる図18(d)の状態で静止しているものとして説明を進める。
まず、第2インク収納容器125内の気体の圧力を考える。第1インク収納容器51内の気体の圧力をP、第2インク収納容器125内のインク界面と第1インク収納容器51内のインク界面との水頭差による圧力をHsとすると、第2インク収納容器125側の気体移送管13に形成されるインクのメニスカスに加わる圧力は、第1インク収納容器51内の気体の圧力PよりもHsだけ大きいP+Hsとなる。この水頭差による圧力増加は、第2インク収納容器125内の気体が密閉状態にあるために生じるのであって、接続部11に大気連通口があって第2インク収納容器125内が大気に開放されるような構成では生じることはない。
次に、気体移送管13の第2インク収納容器125側開口のメニスカス位置における圧力のバランスを考える。そのメニスカス位置に対して、下向きに作用する圧力はP+Ha、上向きに作用する圧力はP+Hsとなり、この状態でつりあっていると仮定しているため、上下方向の圧力差と、メニスカスに起因する次式で表される圧力Maと、がつりあっていることになる。
Ma = 2γ・cosθa/Ra (1)
ここで、γはインクの表面張力、θaは気体移送管13に対するインクの接触角、Raは気体移送管13の管径(内径)である。
したがって、気体移送管13の記録ヘッド側開口の位置での圧力バランスは次式で表される。
P+Hs−(P+Ha) = Ma (2)
Hs−Ha = Ma (3)
つまり、気体移送管13内のメニスカス位置と第2インク収納容器125のインク界面との水頭差による圧力(Hs−Ha)と、気体移送管13のメニスカスによる圧力(Ma)とがつりあっている状態である。
よって、第2インク収納容器125内に残留する気体の容積が大きくなって、
Hs−Ha > Ma (4)
となる場合には、第2インク収納容器125内の気体圧力が高くなって気体移送管13のメニスカスが破れ、第1インク収納容器125内の気体が第1インク収納容器51側に移動することになる。また、これに伴って、第1インク収納容器51内のインクは、インク供給管32とインク導入管12を介して第2インク収納容器125内に移動し、その第2インク収納容器125内のインク液面が上昇する。
気体移送管13の内容積は供給部31に比較して非常に小さいため、気体が移動し始める初期の段階では、比較的容積の大きい第2インク収納容器125内のインク液面の上昇はさほど大きくなく、気体移送管13内のメニスカス位置は第1インク収納容器51側の開口部に向けて素早く移動する。よって、気体移送管13の第1インク収納容器51側の開口位置と第1インク収納容器51内のインク界面との水頭差による圧力が小さくなり、気体導入管13に生じるメニスカスの圧力Ma’に対して第2インク収納容器125内の圧力がかなり大きくなって、気体の移送が促進される。Ma’は、気体導入管13の第1インク収納容器51側に形成されるメニスカスに起因する圧力である。
そして、気体移送管13の流路長分の水頭による圧力Laが下式の関係であるとき、図18(e)の状態まで気体の移送が行なわれる。
La < Ma+Ma’ (5)
以上では、インク導入管12の第2インク収納容器125側開口がインクに接している場合について考察した。長期間の放置などのために第2インク収納容器125内への気体の導入量が多い場合には、図19(b)のように、インク導入管12の記録ヘッド側開口も第2インク収納容器125内のインクに接していない状態となる。次に、この状態について考察する。
これまでの説明では、インク導入管12の第2インク収納容器125側開口がインクに接しているために、気体移送管13内のメニスカス位置における圧力のバランスだけを考察すれば足りた。しかし、図19(b)の状態では、インク導入管12に形成されるインクのメニスカスをも考察しなければならない。
図19(b)の状態で静止しているとする。第2インク収納容器125内の気体の圧力をP’、インク導入管12内に形成されるメニスカスによる圧力をMiとすると、この図19(b)の状態におけるインク導入管12と気体移送管13内のメニスカス位置での圧力バランスは、下式で表される。
P’−(P+Ha) = Ma, P’−(P+Hi) = Mi (6)
ここで、インク供給および気体の移送が行なわれるためには、
P’−(P+Ha) > Ma, P’−(P+Hi) < Mi
となればよい。これらから、
P’−P > Ha+Ma, P’−P < Hi+Mi
つまり、
Hi+Mi > Ha+Ma
Hi−Ha = H > Ma−Mi (7)
となる。したがって、インク導入管12および気体移送管13の第2インク収納容器125側の開口位置の鉛直方向における差に対応した水頭による圧力差Hと、インク導入管12および気体移送管13のメニスカスによる圧力差( Ma−Mi)との関係によって、インク供給と気体の移送が行なわれるか否かが決定されることになる。
以上に述べたように本実施形態によれば、第1,第2インク収納容器51,125との間に、複数の流路により構成される接続手段を設け、各流路における第2インク収納容器125側の開口位置の高さに差をつけることにより、複雑な構成を必要とすることなく、第2インク収納容器125側の気体を第1インク収納容器51側に速やかに移送することが可能となる。このような複数の流路により構成される接続手段を用いて、第1インク収納容器51から第2インク収納容器125内にインクを供給する。また、第2インク収納容器125内の気体を第1インク収納容器51側に移送させた状態において、第1インク収納容器51内は所定の負圧を有しているため、インク充填が終わった時点にて、第2インク収納容器125内は第1インク収納容器51内と同じ負圧を保持していることになる。したがって、第2インク収納容器125内へのインクの供給動作の終了後に、その第2インク収納容器125内を負圧とするための初期負圧出しの処理、例えばインクの吸引排出や予備吐出などを行う必要がない。インクの吸引排出は、記録ヘッドの吐出口から画像の記録に寄与しないインクを吸引排出する処理であり、また呼び吐出は記録ヘッドの吐出口から画像の記録に寄与しないインクを吐出する処理である。
第1インク収納容器51内に負圧を発生させるための負圧発生手段としては、図16のような負圧調整機構、つまり第1インク収納容器51内の負圧が所定値以上に高まった時に外部から気体を導入する一方向弁61による負圧調整機構の他に、以下のような負圧発生機構を有するものであってもよい。
図20(a)は、毛細管部材(負圧発生部材)71による負圧発生手段を備えた第1インク収納容器51を示している。この毛細管部材71は、ポリウレタンやメラミンなどの高分子フォームや、ポリオレフィンやポリエステルなど耐インク性を有する材料からなり、かつ適度な毛細管力をインクとの間に発生させるものである。また、この負圧発生部材としての毛細管部材71は、第1インク収納容器51内の環境温度変化による圧力変動を緩衝する効果をも有する。例えば、周囲の圧力が低下したり、温度が上昇したりした場合には、図20(a)中左側のインク室73A内の空気が膨張する。この空気の膨張分を図20(a)中右側のインク室73Bの毛細管部材71が吸収することにより、インク室73A内の負圧を安定させると共に、インク漏れなどを防ぐことができる。72は、インク室73B内を大気に連通する大気連通口である。
図20(b)は、前述した図16の第1インク収納容器51の負圧調整手段以外を用いた場合の構成例である。ここに示される負圧調整手段は、第1インク収納容器51の底面に配設された微小な空孔(大気連通口)81を有し、その空孔81に形成されるインクのメニスカスを利用する負圧調整機構である。この機構は、第1インク収納容器51内の負圧が過剰になった場合に、空孔81のメニスカス力を破って外部から空気を導入することにより、第1インク収納容器51内の圧力を一定に保持するものである。
図20(c)は、水頭差により負圧を発生させる負圧発生機構の構成例を示す。
第1インク収納容器51内のインク面を記録ヘッドのノズルよりも重力方向に対して下方に配設して、インクの水頭差により負圧を発生する構成となっている。第1インク収納容器51から、インク流路42を通して第2インク収納容器125へインクを導出し、そのインクの導出に伴って第1インク収納容器51内のインク量が減少したときに、大気連通口53から大気を導入する。これによって、第1インク収納容器51内の圧力が常に大気圧に保たれて、インクの導出を円滑に行うことができる。したがって、大気連通口53は、少なくともインクの使用を開始してから、すなわち第1インク収納容器51が記録装置に装着されてから開口していればよい。したがって大気連通口53は、第1インク収納容器51が記録装置に装着される前はシール部材等によって閉塞されていてもよい。更に、第1インク収納容器51の装着前に大気連通口53が閉塞されていることは、第1インク収納容器51の使用前において、その内部に充填されているインクの容器外への漏れや蒸発を防止する上において有効である。また、第1インク収納容器51の使用時における大気連通口53の開口は、記録装置への第1インク収納容器51の装着の直前に、大気連通口53を閉塞するシールを使用者が引き剥がしたり、第1インク収納容器51の装着時に針をさして穴をあける等の作業によって達成できる。
また、図20(c)の例では、第1インク収納容器51をモールド成形された容器として説明しているが、それは袋状に形成された可撓性シートによって構成してもよい。この場合には、インクの導出に伴ってシートが変形し、内部のインク量に応じて内容積を変化させることができるため、大気連通口53を省いても構わない。このように可撓性シートで構成した袋は、変形しない筐体内に収納しておくことにより、装着の容易性及び外力によるシート損傷を防止することができる。また、第2インク収納容器125から移送された気体を貯留させるために、供給部31の上方に気体貯留室43が形成されている。これにより、第2インク収納容器125から移送された気体を取り除くと共に、第1イン収納容器51の負圧によって第2インク収納容器125内の負圧を維持した状態で、インク供給を完了することが可能となる。
負圧発生機構としては、図20(a),(b),(c)の構成のほか、適正な負圧を維持できるものならば種々の構成のものを採用することができる。
このように、第2インク収納容器125内へのインクの充填は、特別なポンプなどを必要としないため、装置の大型化や複雑化を招くことがない。また、第1,第2インク収納容器51,125の間に複数連通路(上述した実施例では2つ)を有することにより、簡便な機構によって、第2インク収納容器125内に貯留した気体を交換可能な第1インク収納容器51内に移送して、毎回のインク充填時に安定したインク保持量を保証することができる。しかも、第1インク収納容器51内の負圧を利用して、第2インク収納容器125内の初期負圧を確保し、インク充填動作を自動的に停止させることができる。
このようにして、第2インク収納容器125に所定量のインクを充填した後は、キャリッジ202と共にヘッドユニット1をホームポジションから離して、接続部11と供給部31とを分離することによって記録動作が可能となる。接続部11と供給部31との分離により、インク導入管12の先端部の孔12b(図4(b)参照)がシールゴム26に塞がれ、気体移送管13の先端部の孔も同様に塞がれて、第2インク収納容器125内が再びほぼ密閉状態となる。
(第4の実施形態)
図21および図22は、本発明の第4の実施形態を説明するための図である。
本例は、第1インク収納容器51を第2インクタンク125よりも高い位置に置かずに、第2インク収納容器125内から第1インク収納容器51側に気体を移動させる形態の構成例である。この例においても図中に示すように、第1インク収納容器51からインク流路42を経て供給部31までの領域を第1のインク収納領域、インク導入管12および気体移送管13の設置部分からヘッドチップ133に至る領域を第2インク収納領域、インク供給管32および気体誘導管33の設置部分からインク導入管12および気体移送管13の設置部分までの部分を接続手段と定義することができる。
図21(a)のように、第1インク収納容器51を第2インク収納容器125よりも高い位置に置かなくても、結合ユニットを構成する接続部11と供給部31とが結合された際に、前述した第3の実施形態と同様に、第1インク収納容器51から第2インク収納容器125へのインクの充填が行われる。しかし、第2インク収納容器125から上方に移送された気体は、下方に位置する第1インク収納容器51には移動しない。そこで、インク流路42の途中に気体貯留室43を設け、その中に、第2インク収納容器125から移送された気体を一旦溜める。この気体貯留室43は、柔軟で弾力性をもたないナイロン等によって袋状に形成されており、その一部に形成された開口部分に、インク流路42中の一方の開口部44が接続されている。
本例の構成におけるインクの充填と気体の移送の過程を図21(a)から図21(d)および図22(a),図22(b)を用いて説明する。
第2インク収納容器125内のインクが消費されて、その第2インク収納容器125が変形した状態を図21(a)に示す。このように、圧力板109同士が接近することによってばね107が圧縮され、第2インク収納容器125内は、依然として、記録ヘッドにインクを供給するために最適な範囲の負圧に保たれる。また図21(a)は、インクが消費される間に、例えば記録ヘッド内に外部から気体が取り込まれたために、第2インク収納容器125内に気体が存在している状態を示している。
第2インク収納容器125内にインクを充填するときには、図21(b)のように接続部11と供給部31とが接続される。この接続により、前述した実施形態の場合と同様に、第2インク収納容器125内の負圧の作用によって、その第2インク収納容器125内に第1インク収納容器51からインクが流れ込む。
このようなインクの流れ込みが進んでいくと、図21(c)のように、第2インク収納容器125がはね107の復元力によって膨らみ、そして第2インク収納容器125内のインクの液面も次第に上昇すると共に、その内部に存在していた気体が気体移送管13を通って気体貯留室43内に進入していく。さらに、図21(d)のように、第2インク収納容器125から移送された気体が気体貯留室43内に入っていくことにより、その気体貯留室43内において気体が占める割合が次第に高まり、それに伴って相対的に減少する気体貯留室43内のインクは第2インク収納容器125内に入っていく。
このような一連のインク充填及び気体移送を終えた後は、図22(a)に示すように、接続部11と供給部31とを分離させる。この分離状態では供給部31が密閉されるため、気体貯留室43内に移送された気体は、その気体貯留室43内に溜まったままである。
次に、図22(b)に示すように、気体貯留室43に対して外力Pを加えることによって袋状の気体貯留室43が潰れ、その中に貯留されていた気体がインク流路42を通って第1インク収納容器51内に入っていく。気体貯留室43を押圧するために、記録装置内に押圧手段を適宜設置しておくことも可能である。
また、このような構成においては、気体貯留室43の内容積をインク流路42の内容積よりも大きくしておくことが必要である。仮に、気体貯留室43の内容積がインク流路42の内容積よりも小さい場合には、気体貯留室43内の気体を第1インク収納容器51内に送り込んだ後、気体貯留室43が復元したときに、インク流路42内に気体が残留するおそれがある。すなわち、気体貯留室43を外力により潰して、その内部の気体を第1インク収納容器51内に送り込んだ後、その外力の解除により気体貯留室43が復元して第1インク収納容器51内のインクが気体貯留室43内に入っていったときに、インク流路42内の気体がインクと充分に置換されず、インク流路42と気体貯留室43との接合部付近に気体が残ったままとなる。このように残留した気体は、第2インク収納容器125内に送られるおそれがある。したがって、上記のように、気体貯留室43の内容積は、インク流路42の内容積よりも大きくしておく。
(第5の実施形態)
図23(a)および図(b)は、本発明の第5の実施形態を説明するための図である。本例は、第1,第2インク収納容器の間に形成される複数流路の内、インク導入管と気体移送管の高さの差が実質的にない形態の構成例である。
図23(a)は、第2インク収納領域と接続部11の断面図である。この図に示されるように、第2インク収納容器125の枠状のフレーム(ベース部材)115に設けられたインク導入管12と気体移送管13は、それぞれの第2インク収納容器125側の開口部がほぼ同じ高さに位置している。ただし、インク導入管12の第2インク収納容器125側の開口部の一部は、フレーム115に設けられた溝91に接している。
図23(b)は、第2インク収納容器125に第1インク収納容器51を接続した状態を示している。この接続状態において、通常、インク導入管12と気体移送管13によって形成される2つの流路に高低差が生じない場合には、それらの流路における第2インク収納容器125側の開口部に生じるインクのメニスカス力に差が生じないため、気体の移送は生じない。しかしながら、この図に示されるように、フレーム115の溝91がインク導入管12の開口部に接するように設けられているため、その溝91の毛管力によりインクが壁面を伝わって流れ、そのインク導入管12側の開口部のメニスカスが破られることになる。そして、第2インク収納容器125内に移動したインクの体積によって、その容器125内の気体の圧力が増加し、その圧力によって気体移送管12に生じたメニスカスが破られて、容器125内の気体が第1インク収納容器51内に移動する。このように、2つの流路の高低差がない場合でも、気体の移送を行なうことが可能になる。
(第6の実施形態)
図24は、本発明の第4の実施形態を説明するための図である。本例は、第1,第2インク収納容器51,125の間に位置する複数の流路を第1インク収納容器51側に設ける形態の構成例である。
図24(a)において、第1インク収納容器51側には、インク導入管12と気体移送管13が備えられている。また、重力方向に対して下方に位置するインク導入管12と気体移送管13の開口部は、互いに高低差が付けられており、それらの下側開口部はシール部材(シールゴム)26により密閉されている。シール部材26は、ばね24によって下方に付勢され、かつ不図示のストッパーによって下方への抜けが防止されている。図24(a)のように、第1,第2インク収納容器51,125が接続されていないときは、シール部材26によって、インク導入管12と気体移送管13の下側開口部が閉塞されている。また、第2インク収納容器125のフレーム115には、スリットSaが形成されたシール部材Sが備えられている。図24(a)の状態において、シール部材Sは、その弾性によってスリットSaが閉じられて、第2インク収納容器125を封止している。
図24(b)のように、第1,第2インク収納容器51,125が接続されたときは、インク導入管12と気体移送管13が対応するシール部材SのスリットSaを通って、第2インク収納容器125内に入り込む。その際、シール部材26がインク導入管12と気体移送管13の下側開口部を開放し、第1,第2インク収納容器51,125の内部が連通する。また、シール部材SのスリットSaの内面は、インク導入管12と気体移送管13の外周面に密着してシールする。
本例においても、前述した第3実施例と同様のメカニズムによって、インクが供給されると共に気体の移送が行なわれる。
(第7の実施例)
図25は、本発明の第7の実施形態を説明するための図である。第1,第2インク収納容器51,125の間に位置する複数の流路が一体に構成されている。
上述した実施形態においては、インク供給管12と気体移送管13の別々の部材によって流路が形成されている。しかし、図25のように、1つの管Pの内部を2分割にして2つの流路を形成してもよい。管Pの内部において、図中右側はインク導入管12として機能し、図中左側は気体移送管13としての機能する。図25においては、第2インク収納容器125側の接続部11に管Pが備えられており、前述した図4Aと同様な構成に管Pを組み合わせた形態となっている。そのため、図4Aと同様の部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
本例のように、1つの管の内部に複数の流路を形成することにより、管の配備数を少なくして、第1,第2インク収納容器51,125の接続および離間時に生じる挿抜力を低減したり、それらの間の位置精度の制約を少なくすることができる。
(第8の実施形態)
図26は、本発明の第8の実施形態を説明するための図である。本例においては、第1,第2インク収納容器51,125の間に位置する2つの流路が1つの管Pによって形成され、一方の流路73がインク導入管12として機能し、他方の流路74が気体移送管13として機能する。さらに管Pには、インク流路に沿って微細な溝を形成する部分75が併設され、その部分75が流路73の記録ヘッド側開口から下方に延長している。その部分75は、第2インク収納容器125の内側上面から下方に突出する。
この構成においては、インクの毛管力により部分75の微細な溝にインクが侵入するために、流路73の記録ヘッド側開口部において高い圧力を作用するメニスカスが形成されなくなくなる。これにより、流路73から第2インク容器125内にインクが流れ落ち易くなる。すなわち、本実施形態においても、インク用の流路73と気体用の流路74における記録ヘッド側の開口位置の高さに差がなくても、インクの移動および気体の移送が行われ、前述した第5の実施形態と同様の効果が得られる。
なお、インク用の流路における記録ヘッド側の開口部分において、高い圧力を作用するメニスカスが形成できなくなるようにするための構成としては、第5および第8の実施形態に限られない。例えば、その開口部分を拡大した形状とすること、複数の流路の内径に差をつけること、あるいは材質の適切な選択や表面処理によって流路内面の条件(インクとの接触角など)が流路間において異なるようにすること、などによっても同様の効果が期待できる。
(第9の実施形態)
図27は、本発明の第9の実施形態における第2インク収納容器125を説明するための図である。
本例においては、前述した図26の流路73の記録ヘッド側開口部が下方に延在されて、それが第2インク収納容器125の底部近傍に位置している。これにより、その流路73の記録ヘッド側開口部は、常に、第2インク収納容器125内のインクと接触することになる。したがって、前述した(4)式の関係が満たされていれば常に気体が移送され、前述した19Bの状態が生じる場合を考慮する必要がなくなる。また、流路73の記録ヘッド側開口部をより確実にインクと常に接触させるために、その開口部の周囲にインクを溜めるためのインク溜まり部を設けてもよい。
(他の実施形態)
上述した実施形態においては、インク導入管12と気体排出管(気体移送管)13とによって、インク補充容器としての第1インクタンク51と、インク収納容器としての第2インクタンク125との間に計2つの連通路を形成した。しかし、第1インクタンク51と第2インクタンク125との間に3つ以上の連通路を形成してもよい。要は、少なくとも1つの連通路を通して、第2インクタンク125内の気体を第1インクタンク51内に排出しつつ、少なくとも他の1つの他方の連通路を通して、第1インクタンク51内のインクを第2インクタンク125内に供給することができればよい。
また、上述したように、インク導入管12と気体排出管13によって形成される連通路の機能は、必ずしもインク供給用または気体排出用に特定されない。例えば、第2インクタンク125内の負圧によって第1インクタンク51からインクが導入されるときは、インク導入管12と気体排出管13によって形成される連通路の両方を通してインクが供給され、その後、第2インクタンク125の内圧が上昇したときに、比較的短い気体排出管13によって形成される気体の抜け出やすい連通路を通して、第2インクタンク125内の気体が排出されつつ、インク導入管12によって形成される連通路を通してインクが供給される。そして、インク導入管12の下側の開口部がインクの液面下に没したときに、気体排出管13によって形成される連通路が気体排出用、またインク導入管12によって形成される連通路がインク導入用として、それらの機能が明確に分かれる。そして、第2インクタンク125内のインクの液面が気体排出管13に達したときに、インクの供給が止まる。したがって、気体排出管13の下側の開口部の設定位置に応じて、第2インクタンク125内にインクを定量供給することができる。この結果、第2インクタンク125が満タンとなるまでの必要量のインクを第2インクタンク125内に定量供給することができる。
また、複数の連通路のそれぞれは、その下端が第2インクタンク125内のインクタンクの液面下に没するまでは、インク導入用または気体排出用のいずれの機能をも果たし得るように形成することができる。また、それら複数の連通路における流体(インクおよび気体)の流動抵抗を通路の内径や形成材料などに応じて異ならせることによって、それらの機能を主としてインク導入用または気体排出用として分けることも可能である。また、複数の連通路における流体の流動抵抗に、製造上のばらつきなどによって若干の差が生じることを利用して、それらの連通路の機能を主としてインク導入用または気体排出用のいずれかに分けるようにしてもよい。したがって、仮に、複数の連通路を同じように設定したとしても、少なくとも1つの連通路から気体を排出しつつ、少なくとも他の1つの連通路からインクをスムーズに供給することができる。
また、このような複数の連通路は、その数に応じた複数本の管によって形成する他、1本の管の中に形成することもできる。例えば、2重管を用いることにより、中心寄りの連通路と、外周よりの連通路とを形成することができる。要は、1本の管の中を仕切る隔壁は、その管の中を完全または不完全に仕切って、複数の連通路を形成することができればよい。