JP4214000B2 - マルチピースソリッドゴルフボール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マルチピースソリッドゴルフボールに関し、更に詳しくは良好な打球感を有し、かつ優れた飛行性能およびコントロール性を有するマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常市販されているゴルフボールには、ツーピ―スゴルフボールやスリーピースゴルフボールなどのソリッドゴルフボールと糸巻きゴルフボールがある。近年、ツーピ―スゴルフボールおよびスリーピースゴルフボールは、従来の糸巻きゴルフボールと同等のソフトな打球感を維持したまま、飛距離を増大させることが可能であることから、市場においても大半を占めている。また、スリーピースゴルフボールのようなマルチピースゴルフボールにおいては、ツーピースゴルフボールに比較して多種の硬度分布を得ることができ、飛行性能を損なうことなく打球感に優れたゴルフボールが提供されている。
【0003】
そのようなゴルフボールは、ツーピースゴルフボールのコアとカバーの間に中間層を設けてスリーピースにしたものであり、例えば、特許文献1〜4等に開示されている。これらのゴルフボールにおいては、中間層にポリウレタン系等の熱可塑性エラストマー、アイオノマー樹脂、またはそれらの混合物等の熱可塑性樹脂を用いて、コア、中間層やカバーの硬度や硬度分布、圧縮変形量、比重、弾性率等を適性化させることにより、飛行性能と打球感を両立させる試みがなされている。
【0004】
特許文献1には、コアとカバーの間に中間層を設けたスリーピースソリッドゴルフボールであって、コアのJIS‐C硬度による中心硬度が75以下であり、コアの表面硬度が85以下であり、コアの表面硬度が中心硬度より5〜25高く、中間層硬度がコア表面硬度より10未満高く、カバー硬度が中間層硬度より高いスリーピースソリッドゴルフボールが開示されている。このゴルフボールでは、カバーがアイオノマー樹脂を主材として用いているため、十分なスピン性能が得られずコントロール性に劣り、また耐擦過傷性も不十分であった。
【0005】
特許文献2には、ソリッドコアと中間層とカバーから成り、カバーの表面に多数のディンプルを形成して成るゴルフボールであって、コアの表面硬度がショアDで48以下であり、中間層硬度がショアDで53以上60以下で、かつコア表面硬度より8以上高く、カバー硬度がショアDで55以上65以下で、かつ中間層より高く形成されると共に、上記ディンプルが直径及び/又は深さの異なる少なくとも2種類からなり、ディンプル総数が370〜450個、ディンプル表面占有率が63%以上、ディンプル総表面積指数Dst値が4以上であることを特徴とするゴルフボールが開示されている。このゴルフボールでは、カバーにアイオノマー樹脂を主材として用いており、カバーの硬度が高いため、打球感およびコントロール性が劣るものであった。
【0006】
特許文献3には、センターの100kg荷重変形量が2.5mm以上、ショアD硬度による中間層硬度がカバー硬度より13以上大きく、ボールの慣性モーメントが83g・cm以上のマルチピースゴルフボールが記載されている。しかしながら、カバーの硬度が低い上に厚いため、得られるゴルフボールの反発性が低く、スピン量も大きくなって、ドライバーでの飛距離の面で満足できるものが得られていない。
【0007】
特許文献4には、センター(1)と該センター上に形成された中間層(2)から構成されるコア(4)、および該コア上に形成されたカバー(3)とから成るスリーピースソリッドゴルフボールにおいて、該カバー(3)が、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーと熱可塑性ポリアミド系エラストマーとの混合物を基材樹脂として含有することを特徴とするスリーピースソリッドゴルフボールが開示されている。しかしながら、特許文献3と同様、カバーの硬度が低いため、得られるゴルフボールのスピン量が大きくなって、ドライバーでの飛距離の面で満足できるものが得られていない。
【0008】
上記の通り、未だ飛行性能と打球感の両立および実使用レベルのコントロール性という観点で満足のいくものは得られておらず、更に打球感の向上と共に、飛行性能およびコントロール性の優れたゴルフボールヘの要求がますます高まりつつある。
【0009】
【特許文献1】
特開平9‐313643号公報
【特許文献2】
特開平10‐305114号公報
【特許文献3】
特開平10‐151226号公報
【特許文献4】
特開平2002‐360740号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来のソリッドゴルフボールの有する問題点を解決し、良好な打球感を有し、かつ優れた飛行性能およびコントロール性を有するマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、カバーにポリウレタン材料を用い、かつセンターの表面と中心との硬度差、センターの表面、中間層およびカバーの硬度分布、並びにカバーの硬度を特定範囲に規定することにより、良好な打球感を有し、かつ優れた飛行性能およびコントロール性を有するマルチピースソリッドゴルフボールが得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、センター(1)と該センター上に形成された1層以上の中間層(2)から構成されるコア(4)、および該コア上に形成されたカバー(3)とから成るマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、
ショアD硬度による該センター(1)の中心硬度、表面硬度、該中間層(2)の硬度および該カバー(3)の硬度をそれぞれH、H、HおよびHで表した場合に、以下の2式:
−5≦(H−H)≦5
<H<H
で表される関係を満足し、かつ
該カバー(3)が、ポリウレタン材料を主成分として含有し、ショアD硬度45〜60を有することを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【0013】
一般にウレタン系カバーは、得られるゴルフボールのスピン量が大きくてコントロール性に優れるため広く使用されており、コントロール性向上のために特に軟質ウレタン系カバーが使用されている。しかしながら、軟質ウレタン系カバーは反発性が劣るため、このようなカバーを用いる場合には、
(i)カバー厚さを小さくしたり、
(ii)中間層を硬くして(特許文献3)
反発性を補うことが常套手段となっている。
【0014】
上記(i)の場合、得られるゴルフボールにおいては、ウレタン系カバー特有のスピン量増大効果が十分に得られなくなってアプローチショット等におけるコントロール性が悪いものとなり、また、カバーの耐久性や成形性が悪くなるという問題がある。また、上記(ii)の場合、得られるゴルフボールにおいては、打撃時の衝撃が大きくなって打球感が悪いものとなり、ドライバーによる打撃時のスピン量も大きくなってしまうため、吹き上がる弾道となって飛距離が低下するという問題があった。
【0015】
更に、ウレタン系カバーは、コントロール性は良好となるが、ドライバーによる打撃時のスピン量も大きくなってしまうため、また打出角が低くなってしまうため、飛距離が要求されるドライバーによる打撃時にも飛距離が短くなってしまうという問題があった。
【0016】
また、
(センター表面硬度)<(中間層硬度)<(カバー硬度)
の関係を満足するゴルフボールも提案されているが(特許文献1および2)、そのようなゴルフボールにおいては、カバーを高剛性にする観点からアイオノマー樹脂を主材とするカバーを用いることが常套手段となっている。従って、カバー硬度が高くなり過ぎたり、アプローチショットでのスピン量が小さくて十分なコントロール性が得られなくなるという問題があった。
【0017】
即ち、従来のゴルフボールにおいては、上記のようにウレタン系カバーとして軟質ウレタン系カバーが用いられていたため、ウレタン系カバーを用い、かつ
(センター表面硬度)<(中間層硬度)<(カバー硬度)
の関係を満足するゴルフボールは存在しなかった。
【0018】
そこで、本発明では
カバーがポリウレタン材料を主成分として含有することによって、打撃時のスピン量を増大させてアプローチショットでのコントロール性を向上させ、かつ、従来のウレタン系カバーを用いたゴルフボールとは異なる設計思想として、
センターの硬度分布を平坦なものとして反発性を向上させ、
(センター硬度)<(中間層硬度)<(カバー硬度)
を満足することによって、大変形するドライバーによる打撃時のスピン量が小さくなり、打出角が高くなって飛距離が向上させることを可能とした。また、従来のウレタン系カバーより高い硬度を有するウレタン系カバーを使用することによって、優れた耐擦過傷性を付与することを可能としたものである。従って、カバーを薄くしても、十分な耐久性が得られるものである。以上のことから、本発明により、ドライバーによる打撃時の高飛距離とアプローチショットでの高コントロール性とを両立することが可能となり、しかも耐擦過傷性、耐久性および生産性にも優れるゴルフボールが得られるものである。
【0019】
更に、本発明を好適に実施するためには、上記ゴルフボールが初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1274Nを負荷したときまでの圧縮変形量2.5〜4.0mmを有し;上記ポリウレタン材料が、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを主成分として含有することが好ましい。
【0020】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールを図1を参照して説明する。図1は本発明のゴルフボールの1つの態様の概略断面図である。本発明のマルチピースソリッドゴルフボールでは、センター(1)上に1層以上の中間層(2)を形成してコア(4)を形成し、該コア(4)上にカバー(3)を形成して得られる。上記中間層は、単層構造であっても、2層以上の多層構造を有していてもよい。但し、図1では説明をわかりやすくするため、1層の中間層(2)を有するゴルフボール、即ちスリーピースソリッドゴルフボールとした。本発明のゴルフボールのセンター(1)は、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、充填材等を含有するゴム組成物を、通常のソリッドゴルフボールのコアに用いられる方法、条件を用いて加熱圧縮加硫することにより得られる。
【0021】
基材ゴムとしては、従来からソリッドゴルフボールに用いられているものであればよいが、ポリブタジエンゴム、特にシス‐1,4‐結合少なくとも40%以上、好ましくは80%以上を有するいわゆるハイシスポリブタジエンゴムが好ましく、所望により、上記ポリブタジエンゴムには天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)等を配合してもよい。
【0022】
共架橋剤としては、アクリル酸またはメタクリル酸等のような炭素数3〜8個のα,β‐不飽和カルボン酸、またはその亜鉛、マグネシウム塩等の一価または二価の金属塩、またはそれらの混合物等が挙げられるが、特にアクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛が好適である。上記共架橋剤の配合量は、基材ゴム100重量部に対して、10〜40重量部、好ましくは10〜35重量部、より好ましくは15〜30重量部である。上記共架橋剤の配合量が、10重量部未満ではセンターの架橋が十分に行われず、反発性および耐久性が大きく低下し、40重量部より多いと架橋度が高くなり過ぎて硬くなり過ぎて打球感が悪くなる。
【0023】
有機過酸化物としでは、例えばジクミルパーオキサイド、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)へキサン、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドが好適である。上記有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100重量部に対して、0.1〜3.0重量部、好ましくは0.3〜2.5重量部、より好ましくは0.5〜2.0重量部である。上記有機過酸化物の配合量が、0.1重量部未満では加硫が十分に行われず、3.0重量部を越えるとコアが硬くなる割には反発性能が向上せず、また打球感が悪くなる。
【0024】
充填材としては、ソリッドゴルフボールのコアに通常配合されるものであればよく、例えば無機充填材、具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられ、高比重金属充填材、例えばタングステン粉末、モリブデン粉末等およびそれらの混合物と併用してもよい。配合量は、それぞれ基材ゴム100重量部に対して1〜30重量部、好ましくは3〜20重量部である。1重量部未満では重量調整が難しく、30重量部を越えるとゴムの重量分率が小さくなり反発性が低くなり過ぎる。
【0025】
更に本発明のゴルフボールのセンター(1)には、有機硫黄化合物、老化防止剤、その他ソリッドゴルフボールのコアの製造に通常使用し得る成分を適宜配合してもよい。使用する場合、配合量は、基材ゴム100重量部に対して、0.5〜5重量部、好ましくは0.7〜4重量部であることが望ましい。
【0026】
本発明のゴルフボールに用いられるセンター(1)は、前述のゴム組成物を金型内で140〜180℃、圧力2.8〜11.8MPaで10〜60分間加硫成形することにより得ることができる。この際の条件は、センター(1)が後述のような特性を満足すれば特に限定されないが、2段階以上の複数の工程で行われてもよい。
【0027】
本発明のゴルフボールのセンター(1)は、直径20〜41mm、好ましくは25〜41mm、より好ましくは27〜40mmを有するのが好適である。上記センター(1)の直径が20mmよりも小さいと中間層またはカバーが厚くなり反発性が低下し、41mmよりも大きいと中間層の厚さが薄くなり過ぎて、成形が困難となる。
【0028】
本発明のゴルフボールのセンター(1)は、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1274Nを負荷したときまでの変形量3.5〜5.5mm、好ましくは3.5〜5.0mm、より好ましくは3.8〜4.8mm、特に好ましくは4.0〜4.5mmを有することが望ましい。上記変形量が3.5mm未満では打球感が硬くて悪くなり、5.5mmを越えると逆に軟らかくなり過ぎて打球感が重くて悪いものとなる。
【0029】
本発明のゴルフボールにおいては、前述のように、ショアD硬度によるセンター(1)の中心硬度および表面硬度をそれぞれHおよびHで表した場合に、以下の式:
−5≦(H−H)≦5
で表される関係を満足することを要件とするが、以下の式:
−3≦(H−H)≦3
で表される関係を満足することが好ましい。上記センターの中心、中心から5mm、中心から10mm、中心から15mmおよび表面の位置での硬度差を、いずれの位置の組み合せにおいても、−5〜5とするのがより好ましい。即ち、上記センターが、平坦な硬度分布を有することが好ましい。
【0030】
本発明のゴルフボールのセンター(1)は、ショアD硬度による中心硬度30〜50、好ましくは33〜48、より好ましくは35〜46を有することが望ましい。上記中心硬度が、30より低いと軟らかくなり過ぎて反発性が低下して飛距離が低下する。上記中心硬度が、50より高いと、硬くなり過ぎて打球感が悪いものとなる。本明細書中で、センターの中心硬度とは、通常センターを2等分切断して、その切断面の中心点において測定した硬度を意味する。同様に、センターの中心から5mm、10mmおよび15mmの位置での硬度とは、その切断面の中心から5mm、10mmおよび15mmの位置において測定した硬度を意味する。
【0031】
本発明のゴルフボールのセンター(1)は、ショアD硬度による表面硬度30〜50、好ましくは33〜48、より好ましくは35〜46を有することが望ましい。上記表面硬度が30より低いと、軟らかくなり過ぎて反発性が低下して飛距離が低下する。上記表面硬度が、50より高くなると、上記式の関係を満足するためには中間層およびカバーが硬くなり過ぎて得られるゴルフボールの打球感が悪くなる。本明細書中で、センターの表面硬度とは、得られたセンターの外表面で測定した硬度を意味する。次いで、上記のセンター(1)上には、中間層(2)を形成する。
【0032】
本発明のゴルフボールの中間層(2)は、特に限定されないが、上記センター(1)と同様のゴム組成物から形成されても、または熱可塑性樹脂を基材樹脂として形成されてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、特に通常ゴルフボールのカバーに用いられるアイオノマー樹脂および熱可塑性エラストマーから成る群から選択される1種または2種以上の混合物が挙げられる。上記熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、上記熱可塑性エラストマーとしては、カルボキシル基、グリシジル基、スルホン基、エポキシ基等の官能基を有するものを用いてもよい。
【0033】
上記中間層(2)にゴム組成物を用いる場合、上記式の関係を満足するため、共架橋剤および有機過酸化物の配合量が上記センター用ゴム組成物と若干異なる。即ち、共架橋剤の配合量は、基材ゴム100重量部に対して、15〜50重量部、好ましくは20〜45重量部、より好ましくは20〜45重量部である。また、好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウムまたはメタクリル酸マグネシウムである。有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100重量部に対して、0.1〜6重量部、好ましくは0.3〜5重量部、より好ましくは0.5〜4重量部である。
【0034】
上記アイオノマー樹脂としては、特にα‐オレフィンと炭素数3〜8個のα,β‐不飽和カルボン酸の共重合体中のカルボン酸の一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、α‐オレフィンと炭素数3〜8個のα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボン酸の少なくとも一部を金属イオンで中和したものまたはその混合物が用いられる。上記アイオノマー樹脂中のα‐オレフィンとしては、エチレン、プロピレンが好ましく、α,β‐不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸等が好ましい。また、α,β‐不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n‐ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが好ましい。更に、中和する金属イオンとしては、アルカリ金属イオン、例えばNaイオン、Kイオン、Liイオン等;2価金属イオン、例えばZnイオン、Caイオン、Mgイオン等;3価金属イオン、例えばAlイオン、Ndイオン等;およびそれらの混合物が挙げられるが、Naイオン、Znイオン、Liイオン等が反発性、耐久性等からよく用いられる。
【0035】
上記アイオノマー樹脂の具体例としては、それだけに限定されないが、ハイミラン(Hi‐milan)1555、ハイミラン1557、ハイミラン1601、ハイミラン1605、ハイミラン1652、ハイミラン1702、ハイミラン1705,ハイミラン1706,ハイミラン1707,ハイミラン1855,ハイミラン1856、ハイミランAM7316(三井デュポンポリケミカル社製)、サーリン(Surlyn)8945、サーリン9945、サーリン6320、サーリン8320(デュポン社製)、アイオテック(Iotek)7010、アイオテック8000(エクソン(Exxon)社製)等を例示することができる。これらのアイオノマーは、上記例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。
【0036】
上記熱可塑性エラストマーの具体例として、例えば東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル」で市販されている(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)熱可塑性ポリエステル系エラストマー;アトフィナ・ジャパン(株)から商品名「ペバックス」で市販されている(例えば、「ペバックス2533」)ポリアミド系熱可塑性エラストマー;BASFポリウレタンエラストマーズ(株)から商品名「エラストラン」で市販されている(例えば、「エラストランET880」)ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;三菱化学(株)から商品名「サーモラン」で市販されている(例えば、「サーモラン3981N」)オレフィン系熱可塑性エラストマー、住友化学工業(株)から商品名「住友TPE」で市販されている(例えば、「住友TPE3682」、「住友TPE9455」等)ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;三菱化学(株)から商品名「ラバロン」で市販されている(例えば、「ラバロンSR04」)スチレン系熱可塑性エラストマー、旭化成工業(株)から商品名「タフテック」で市販されている(例えば、「タフテックH1051」)スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0037】
また上記中間層(2)用の組成物は、基材樹脂としての上記熱可塑性樹脂に加えて、充填材、顔料、老化防止剤等の他の添加剤を含有してもよい。充填材としては、例えば無機充填材(具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)、高比重金属粉末(例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末等)およびそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
本発明の中間層(2)は、一般に公知の方法を用いて形成することができ、特に限定されるものではない。上記中間層(2)がゴム組成物から形成される場合、中間層用ゴム組成物を混合、混練し、上記センター(1)上に同心円状に被覆し、金型内で160〜180℃で10〜20分間加熱プレスすることにより、上記センター(1)上に上記中間層(2)を被覆したコア(4)を得ることができる。上記中間層(2)が熱可塑性樹脂から形成される場合、中間層用樹脂組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてセンターを包み、加圧成形することにより、または上記中間層用組成物を上記センター(1)上に直接射出成形することにより、コア(4)を得ることができる。得られたコアは、その周りに被覆されるカバーとの密着性を向上するため、表面をバフ研磨しておくことが好ましい。
【0039】
本発明のゴルフボールにおいては、前述のように、ショアD硬度によるセンター(1)の表面硬度、中間層(2)の硬度およびカバー(3)の硬度をそれぞれH、HおよびHで表した場合に以下の式:
<H<H
の関係を満足することを要件とする。従って、本発明のゴルフボールの中間層(2)の硬度(H)がセンター(1)の表面硬度(H)より高いことを要件とするが、両者の硬度差(H−H)は好ましくは1〜15、より好ましくは2〜10、最も好ましくは3〜8である。上記中間層(2)の硬度がセンター(1)の表面硬度以下となると、ゴルフボール全体として外剛内柔構造が得られなくなり、スピン量が増加して飛距離が低下する。また、上記硬度差が、1より小さくなるとゴルフボール全体として外剛内柔構造とする効果を十分に得ることができずスピン量が増加して飛距離が低下し、15より大きくなると中間層が硬くなり過ぎて、得られるゴルフボールのコントロール性および打球感が低下する。
【0040】
上記中間層(2)はショアD硬度による硬度38〜58、好ましくは40〜55、より好ましくは42〜52を有することが望ましい。上記中間層硬度が38より低いと、コアが軟らかくなり過ぎて、反発性および耐久性が低下する。上記中間層硬度が58より高いと、打球感が悪いものとなり、また上記式の関係を満足するためにカバーも硬くなり過ぎてアプローチショットにおけるコントロール性が低下する。
【0041】
上記中間層(2)の厚さは、センター(1)およびコア(4)の直径を規定することにより決定されるが、0.5〜4.0mm、好ましくは0.5〜3.0mm、より好ましくは0.7〜2.0mmであることが望ましい。上記中間層(2)の厚さが、0.5mm未満では中間層が存在することによる性能が十分に得られず、反発性が低下し、打撃時のスピン量が増加して、飛距離が短いものとなる。上記中間層(2)の厚さが4.0mmを超えると、比較的硬い中間層であるため、得られるゴルフボールの打球感が硬くて悪いものとなる。
【0042】
本発明のゴルフボールのコア(4)は、直径39.0〜42.2mm、好ましくは40.0〜42.2mm、より好ましくは40.5〜42.0mmを有するのが好適である。上記コア(4)の直径が39.0mmよりも小さいとカバーが厚くなり反発性が低下し、42.2mmよりも大きいとカバーの厚さが薄くなり過ぎて、カバーの効果が十分に得られず、また成形が困難となる。
【0043】
本発明のゴルフボールのコア(4)は、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1274Nを負荷したときまでの変形量3.2〜5.0mm、好ましくは3.2〜4.8mm、より好ましくは3.4〜4.5mm、特に好ましくは3.2〜3.8mmを有することが望ましい。上記変形量が3.2mm未満では打球感が硬くて悪いものとなり、5.0mmを越えると軟らかくなり過ぎて打球感が重くて悪いものとなる。
【0044】
上記コア(4)上には、次いでカバー(3)を被覆する。本発明のゴルフボールに用いられるカバー(3)は、ポリウレタン材料を主成分として含有することを要件とする。上記ポリウレタン材料には、熱硬化性タイプおよび熱可塑性タイプのものがあるが、加工性とコストの面で熱可塑性タイプのポリウレタン材料、例えばポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0045】
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、一般にハードセグメントとしてポリウレタン構造を含有し、ソフトセグメントとしてポリエステルまたはポリエーテルを含有する。上記ポリウレタン構造は一般に、ジイソシアネートとアミン系等の硬化剤を含有する。上記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、構成成分としての上記ジイソシアネートが芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートおよび脂肪族ジイソシアネートであるものが挙げられる。
【0046】
上記芳香族ジイソシアネートの例として、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5‐ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリレンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられ、MDIが好適に用いられる。上記MDIを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーの具体例として、BASFポリウレタンエラストマーズ(株)から市販の「エラストランET890(商品名)」等が挙げられる。
【0047】
上記脂環式ジイソシアネートの例としては、MDIの水素添加物である4,4’‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、XDIの水素添加物である1,3‐ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トランス‐1,4‐シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)等が挙げられ、汎用性および加工性の面からH12MDIが好適である。上記H12MDIを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーの具体例として、BASFポリウレタンエラストマーズ(株)から市販の「エラストランXNY90A(商品名)」、「エラストランXNY97A(商品名)」、「エラストランXNY585」、「エラストランXKP‐016」等が挙げられる。
【0048】
上記脂肪族ジイソシアネートの例として、1,6‐ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート(LDI)等が挙げられ、HDIを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーの具体例として大日本インキ化学工業(株)から市販の「パンデックスT‐7890(商品名)」等が挙げられる。
【0049】
上記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、耐変色(黄変)性の観点から、分子内の骨格構造中に二重結合を有さないジイソシアネート、即ち脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネート、を使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。また、耐擦過傷性等を考慮して、機械的強度の大きい脂環式ジイソシアネートおよび更に芳香族ジイソシアネートを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。本発明のゴルフボールのカバーに用いるポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、上記耐変色性および耐擦過傷性の両者を考慮して、脂環式ジイソシアネートを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
【0050】
本発明のゴルフボールに用いられるカバー(3)には、上記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーに加えて、上記中間層(2)に用いたものと同様のアイオノマー樹脂や熱可塑性エラストマーの1種以上とを組合せて用いてもよい。組合せを用いる場合、上記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとの相溶性や反発性の点からポリアミド系熱可塑性エラストマーを混合することが最も好ましく、両者の重量比は95/5〜70/30が好ましい。
【0051】
また、本発明において、上記カバー用組成物には、主成分としての上記基材樹脂の他に必要に応じて、硫酸バリウム等の充填材や二酸化チタン等の着色剤や、その他の添加剤、例えば分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤並びに蛍光材料または蛍光増白剤等を、ゴルフボールカバーによる所望の特性が損なわれない範囲で含有していてもよいが、通常、着色剤の配合量はカバー用基材樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が好ましい。
【0052】
上記カバー(3)の厚さは、0.3〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.4mm、より好ましくは0.8〜1.4mmである。上記カバーの厚さが0.3mmより小さいと薄くなり過ぎてカバーの効果が十分に得られなくなり、コントロール性および耐久性が悪化し、2.0mmより大きいとコアおよび中間層の効果が十分に得られなくなり反発性が低下して飛距離が低下する。
【0053】
本発明のゴルフボールにおいては、前述のように、ショアD硬度によるセンター(1)の表面硬度、中間層(2)の硬度およびカバー(3)の硬度をそれぞれH、HおよびHで表した場合に以下の式:
<H<H
の関係を満足することを要件とする。従って、本発明のゴルフボールのカバー(3)においては、カバーの硬度(H)が、中間層の硬度(H)より大きいことを要件とするが、両者の硬度差(H−H)が好ましくは1〜15、より好ましくは3〜12、最も好ましくは5〜10である。上記カバー硬度が中間層硬度以下であると、ゴルフボール全体として外剛内柔構造が得られなくなり、スピン量が増加して飛距離が低下する。また、上記硬度差が、1より小さくなるとゴルフボール全体として外剛内柔構造とする効果を十分に得ることができずスピン量が増加して飛距離が低下し、15より大きくなるとカバーが硬くなり過ぎて、得られるゴルフボールのコントロール性および打球感が低下する。
【0054】
上記カバー(3)は、ショアD硬度による硬度45〜60、好ましくは47〜60、より好ましくは50〜58、最も好ましくは51〜56を有することが望ましい。上記カバーの硬度が45より低いとコアの硬度を調整しても打撃時のゴルフボール表面の変形が大きくなって反発性能が低下して飛距離が低下し、また耐久性悪いものとなる。上記カバーの硬度が60より高いと、カバーがせ硬くなり過ぎてスピン性能が低下すると共に打球感も硬くて悪いものとなる。尚、本明細書中で中間層硬度およびカバー硬度とは、中間層およびカバー用の各組成物から作製された厚さ約2mmの熱プレス成形シートを23℃で2週間保存後、そのシートを3枚以上重ねて測定した硬度を意味する。
【0055】
カバー成形時、ディンプルと呼ばれるくぼみを多数表面上に形成する。ここで、ディンプルの面積は、無限遠からゴルフボールの中心を見た場合の、ディンプルの輪郭に囲まれた面積(即ち、平面形状の面積)である。円形ディンプルの場合は、以下の式:
S=(d/2)×π
(式中、dはディンプル直径である)
によって面積が算出される。各ディンプルの面積Sの総和を、表面にディンプルが存在しない真球体であると仮定した場合のゴルフボール(仮想球)の表面積で除すことにより、ディンプルのボール表面積占有率が算出される。
【0056】
本発明のゴルフボールにおいて、ディンプルの上記表面積占有率は、70〜90%、好ましくは72〜88%、より好ましくは74〜86%であることが望ましい。上記表面積占有率が70%より小さいとディンプルによる飛行性能向上効果が十分に得られず、90%より大きいとゴルフボール表面に窪み部分が多くなり過ぎて、ゴルフボール本来の球形から逸脱した形状になってしまい、飛行対称性を損なう恐れがある。加えて、ゴルフボール表面の隣接するディンプル間に空間が得られなくなるため、上記表面積占有率を90%より大きくすることはディンプルの設計上困難である。尚、本明細書中でディンプル総容積やディンプルの占有率とは、最終的に得られたゴルフボール表面での状態を測定したものであり、カバー上に表面塗装されている場合は塗装状態で測定したものである。
【0057】
上記ディンプルの総数は、250〜500個、好ましくは300〜480個、より好ましくは320〜450個であることが望ましい。上記ディンプル総数が250個より小さいと個数が少な過ぎてディンプル効果が十分に得られず、500個より大きいと各ディンプルのサイズが小さくなってしまい、ディンプル効果が十分に得られない。従って、上記ディンプル総数が上記範囲を外れるといずれの場合も、飛行性能が向上するのに十分なディンプル効果が得られない。
【0058】
本発明のゴルフボールは美観を高め、商品価値を上げるために、通常ペイント仕上げ、マーキングスタンプ等を施されて市場に投入される。
【0059】
本発明のゴルフボールは初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1274Nを負荷したときまでの変形量2.5〜4.0mm、好ましくは2.5〜3.8mm、より好ましくは2.7〜3.5mmを有することが望ましい。2.5mmより小さいと打球感が硬くて悪くなり、4.0mmより大きいと反発性が低下して飛距離が低下する。
【0060】
尚、本発明のゴルフボールは、ゴルフボール規則に基づいて、直径42.67mm以上(好ましくは42.67〜42.82mm)、重量45.93g以下に形成される。
【0061】
上記のように、ゴルフボールの直径は規格にて42.67mm以上と制限されているが、直径が大きくなると飛行中の空気抵抗が増大して飛距離が低下するので、通常のゴルフボールの直径は42.67〜42.82mmに設定されており、本発明はこの直径のゴルフボールに適用し得る。また、ゴルフボールの直径を大きくして打ち易さの向上を狙った大径のゴルフボール等も存在し、更に顧客の要望や目的に応じて規格を外れるゴルフボールが必要とされる場合もあり、それらも含めると、ゴルフボールの直径は42〜44mm、更には40〜45mmの範囲も想定し得るものであり、本発明はこれら直径範囲のゴルフボールにも適用し得るものである。
【0062】
本発明のゴルフボールでは、カバーにポリウレタン材料を用い、かつセンターの表面と中心との硬度差、センターの表面、中間層およびカバーの硬度分布、並びにカバーの硬度を特定範囲に規定することにより、打球感、飛行性能およびコントロール性を向上させ得たものである。
【0063】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
コアの作製
(i)センターの作製
以下の表1に示した配合のセンター用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で140℃で20分間、次いで160℃で8分間加熱プレスすることにより球状のセンターを得た。得られたセンターの直径、圧縮変形量、中心硬度および表面硬度を測定し、その結果を表4(実施例)および表5(比較例)に示した。試験方法は後記の通り行った。
【0065】
【表1】
Figure 0004214000
【0066】
(注1)商品名、JSR(株)製のハイシスポリブタジエンゴム
(注2)ゴルフボール重量が45.4gとなるように硫酸バリウム量を調節
【0067】
(ii)中間層用組成物の調製
以下の表2に示す中間層用配合材料をそれぞれ二軸混練押出機によりミキシングし、ペレット状の中間層用組成物を得た。押出条件は、
スクリュー径 45mm
スクリュー回転数 200rpm
スクリューL/D 35
であり、配合物は押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された。得られた中間層用組成物から作製された厚さ約2mmの熱プレス成形シートを23℃で2週間保存後、そのシートを3枚以上重ねて、ASTM‐D2240に規定されるスプリング式硬度計ショアD型を用いて測定し、中間層硬度とした。その結果を表2、表4(実施例)および表5(比較例)に示した。
【0068】
【表2】
Figure 0004214000
【0069】
(iii)2層コアの作製
得られた中間層用組成物を上記(i)で作製したセンター上に直接射出成形することにより2層構造を有する球状のコアを作製した。得られた中間層の厚さ並びに得られた2層構造コアの直径および圧縮変形量を測定し、その結果を表4(実施例)および表5(比較例)に示した。
【0070】
カバー用組成物の調製
以下の表3に示すカバー用配合材料をそれぞれ二軸混練押出機によりミキシングし、ペレット状のカバー用組成物を得た。押出条件は、
スクリュー径 45mm
スクリュー回転数 200rpm
スクリューL/D 35
であり、配合物は押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された。得られたカバー用組成物から作製された厚さ約2mmの熱プレス成形シートを23℃で2週間保存後、そのシートを3枚以上重ねて、ASTM‐D2240に規定されるスプリング式硬度計ショアD型を用いて測定し、カバー硬度とした。その結果を表3、表4(実施例)および表5(比較例)に示した。
【0071】
【表3】
Figure 0004214000
【0072】
(注3)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注4)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注5)商品名、デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注6)商品名、デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注7)商品名、三菱化学(株)製のスチレン系熱可塑性エラストマー
(注8)商品名、BASFポリウレタンエラストマーズ(株)製の4,4’‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)(=水添MDI)を使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマー;JIS‐A硬度=97
(注9)商品名、BASFポリウレタンエラストマーズ(株)製の4,4’‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)(=水添MDI)を使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマー;JIS‐A硬度=90
(注10)商品名、BASFポリウレタンエラストマーズ(株)製の4,4’‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)(=水添MDI)を使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ショアD硬度=64
(注11)商品名、アトフィナ・ジャパン(株)製のポリアミド系熱可塑性エラストマー
(注12)商品名、デュポン社製のマグネシウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸‐アクリル酸エステル三元共重合体系アイオノマー樹脂
【0073】
実施例1〜5および比較例1〜5
得られたカバー用組成物を上記のようにして得られたコア上に直接射出成形して、ディンプルのボール表面積占有率84%およびディンプル総数410個を有し、かつ以下の表4(実施例)および表5(比較例)に示した厚さを有するカバー層を形成し、表面にクリアーペイントを塗装して、重量45.4gおよび直径42.7mmを有するゴルフボールを得た。得られたゴルフボールの圧縮変形量、飛行性能(スピン量および飛距離)、打球感、コントロール性および耐擦過傷性を測定または評価し、その結果を以下の表6(実施例)および表7(比較例)に示した。試験方法は以下の通り行った。
【0074】
(試験方法)
(1)圧縮変形量
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1274Nを負荷したときまでの変形量を測定することにより決定した。
【0075】
(2)硬度
(i)センター硬度
作製したセンターの外表面で測定したショアD硬度をセンターの表面硬度とし、センターを2等分切断し、その切断面の中心点において測定したショアD硬度をセンターの中心硬度とした。
【0076】
(ii)中間層およびカバー硬度(スラブ硬度)
各中間層およびカバー用組成物から作製された厚さ約2mmの熱プレス成形シートを23℃で2週間保存後、そのシートを3枚以上重ねて、ショアD硬度を測定した。尚、中間層用組成物がゴム組成物の場合、中間層成形時の加硫条件と同条件にて、熱プレス成形シートを作製する。
ショアD硬度は、ASTM‐D2240‐68に規定されるスプリング式硬度計ショアD型を用いて測定した。
【0077】
(3)飛行性能
ゴルフラボラトリー社製スイングロボットにメタルヘッド製ウッド1番クラブ(W#1、ドライバー)を取り付け、ヘッドスピードを45m/秒に設定して各ゴルフボールを打撃し、打ち出し直後のスピン量(バックスピン量)、および飛距離(トータル:ボールの停止点までの距離)を測定した。測定は各ゴルフボールで5回行って(n=5)、その平均を算出して、各ゴルフボールの結果とした。
【0078】
(4)打球感
ゴルファー10人によるメタルヘッド製ドライバーでの実打テストを行い、下記評価基準で評価し、最も多い評価をそのゴルフボールの結果とした。評価基準は以下の通りである。
評価基準
〇:衝撃が小さく、反発感もあって打球感が良好
△:普通
×:衝撃が大きい、または打球感が重くて悪い
【0079】
(5)コントロール性
上級ゴルファー10名によるピッチングウェッジ(PW)での実打テストを行い、下記基準で評価し、最も多い評価をそのゴルフボールの結果とした。評価基準は以下の通りである。
評価基準
〇:スピンがかかりやすく、コントロール性が良い。
△:普通(○と×との中間)
×:すべる感じでスピンがかかりにくく、コントロール性が悪い。
【0080】
(6)耐擦過傷性
ゴルフラボラトリー社製スイングロボットに市販のピッチングウェッジ(PW)を取り付け、ヘッドスピード36m/秒に設定して各ゴルフボールの2箇所を各1回打撃し、2箇所打撃部を目視で観察した。判定基準は以下の通りとした。
判定基準
○ … ゴルフボール表面に傷がわずかに残るがほとんど気にならない程度。
△ … ゴルフボール表面に傷がはっきり残り、若干の毛羽立ちが見られる。
× … ゴルフボール表面がかなり削れ、毛羽立ちが目立つ。
【0081】
(試験結果)
【表4】
Figure 0004214000
【0082】
【表5】
Figure 0004214000
【0083】
【表6】
Figure 0004214000
【0084】
【表7】
Figure 0004214000
【0085】
以上の結果より、本発明の実施例1〜5のゴルフボールは、比較例1〜5のゴルフボールに比べて、良好な打球感を有し、かつ優れた飛行性能およびコントロール性を有することがわかった。
【0086】
これに対して、比較例1のゴルフボールは、中間層硬度が非常に高いため、ボール全体として以下の式:
<H<H
で表される関係を満足する構造にならずスピン量が大きくなって飛距離が短くなっており、また打撃時の衝撃が大きくて打球感が悪いものとなっている。比較例2のゴルフボールは、カバーにアイオノマー樹脂を用いており、カバー硬度が高いため、スピン量が小さくなってコントロール性が悪いものとなり、また打撃時の衝撃が大きくて打球感も非常に悪いものとなっている。
【0087】
比較例3のゴルフボールは、カバーに硬質および軟質アイオノマー樹脂の混合物を用いているため、打球感は良好であるが、耐擦過傷性が非常に悪いものとなっている。比較例4のゴルフボールは、中間層硬度が低いため、ボール全体として上記式で表される関係を満足する構造にならずスピン量が大きくなって飛距離が短くなっている。また、打球感が重くて悪いものとなっている。
【0088】
比較例5のゴルフボールは、カバー硬度が低いため、ゴルフボールの圧縮変形量が大きくなって反発性が低下して飛距離が短くなっている。また、打球感が重くて悪いものとなっている。
【0089】
【発明の効果】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、カバーにポリウレタン材料を用い、かつセンターの表面と中心との硬度差、センターの表面、中間層およびカバーの硬度分布、並びにカバーの硬度を特定範囲に規定することにより、打球感、飛行性能およびコントロール性を向上させ得たものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のゴルフボールの1つの態様の断面概略図である。
【符号の説明】
1 … コア
2 … 中間層
3 … カバー
4 … コア

Claims (2)

  1. センター(1)と該センター上に形成された1層以上の中間層(2)から構成されるコア(4)、および該コア上に形成されたカバー(3)とから成るマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、
    ショアD硬度による該センター(1)の中心硬度、表面硬度、該中間層(2)の硬度および該カバー(3)の硬度をそれぞれH、H、HおよびHで表した場合に、以下の2式:
    −5≦(H−H)≦5
    <H<H
    で表される関係を満足し、かつ
    該中間層(2)が、アイオノマー樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーとの混合物から形成され、ショアD硬度による硬度38〜58を有し、
    該カバー(3)が、脂環式ジイソシアネートを使用したポリウレタン系熱可塑性エラストマーから形成され、ショアD硬度45〜60を有することを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
  2. 初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1274Nを負荷したときまでの圧縮変形量2.5〜4.0mmを有する請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
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