JP4213834B2 - ゴム系発泡体 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、自動車ガラス等の高温揮発昇華物の付着による曇り防止などに好適なゴム系発泡体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム系発泡体としてはエチレン・プロピレン系ゴムをアゾジカルボンアミドと尿素系発泡助剤とで発泡処理したものが知られていた。かかる発泡体は、その優れた軽量性や柔軟性、クッション性や圧縮性等に基づいてクッション材やパッド材、気密や止水等のシール材、断熱材や防音材などとして家電等の室内用品や自動車等の屋外用品、住宅等の建築物などの各種の分野で広く使用されている。
【0003】
しかしながら、前記のゴム系発泡体を例えば自動車のフロントやリアやウィンド等の各種ガラス板の周辺、住宅用複合ガラス窓の周辺、プラズマディスプレーの周辺、太陽電池パネルの周辺等におけるシール材などとして用いた場合に、ガラス板に汚染による曇りが生じる問題点があった。
【0004】
【発明の技術的課題】
本発明者らは、前記の汚染問題を解決するために鋭意研究を重ねる中で、その主汚染物質がアゾジカルボンアミドの分解温度を下げるために併用した尿素系発泡助剤に基づく尿素であることを究明した。これは、直射日光や装置の稼動で自動車内や窓、ディスプレーや太陽電池パネルが温度上昇した際にその尿素が揮発昇華しガラス板に付着して曇りを生じるものである。従って本発明は、シール性能等を低下させることなく高温下の揮発昇華物質でガラス等の曇りを生じにくいゴム系発泡体の開発を課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】
本発明は、エチレン・プロピレン系ゴム、アゾジカルボンアミド、亜鉛系発泡助剤及びゼオライトを成分とする混和物の加硫発泡体からなることを特徴とする尿素系発泡助剤使用回避のゴム系発泡体を提供するものである。
【0006】
【発明の効果】
本発明によれば、亜鉛系発泡助剤の使用による尿素系発泡助剤の使用回避下にアゾジカルボンアミドの分解温度を低下させて加硫処理でき、エチレン・プロピレン系ゴム発泡体による良好なクッション性や圧縮性等により高いシール性能を示して、かつ高温下においても揮発昇華による汚染物質を発生しにくくてフォギングを生じにくくガラス板等の光透過率が低下しにくいゴム系発泡体を得ることができる。
【0007】
【発明の実施形態】
本発明によるゴム系発泡体は、エチレン・プロピレン系ゴム、アゾジカルボンアミド、亜鉛系発泡助剤及びゼオライトを成分とする混和物の加硫発泡体からなり、尿素系発泡助剤の使用を回避したものである。エチレン・プロピレン系ゴムとしては、例えばエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)やエチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレンターポリマーなどの適宜なものを1種又は2種以上用いることができ、特に限定はない。加硫発泡処理性やシール性能等の実用性の点よりはEPDM、就中ムーニー粘度が(ML1+4、100℃、以下同じ)5〜100、特に10〜70のものが好ましく用いうる。
【0008】
加硫処理は、電子線照射等による加硫剤を用いない方式にても行いうるが、一般には加硫処理の容易性などの点より加硫剤が用いられる。その加硫剤については特に限定はなく、従来に準じた適宜なものを用いうる。ちなみにその例としては、硫黄や硫黄化合物類、セレンや酸化マグネシウム、一酸化鉛や酸化亜鉛、有機過酸化物類やポリアミン類、オキシム類やニトロソ化合物類、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物の如き樹脂類やアンモニウム塩類などがあげられる。
【0009】
得られる発泡体の加硫性や発泡性による耐久性等の物性などの点よりは、硫黄や硫黄化合物類、特に硫黄が好ましく用いうる。加硫剤の使用量は、その種類に基づく加硫効率などに応じて適宜に決定することができる。ちなみに硫黄系の場合、エチレン・プロピレン系ゴム100重量部あたり通例、0.1〜10重量部、就中0.5〜5重量部が用いられる。また有機過酸化物の場合には、エチレン・プロピレン系ゴム100重量部あたり50重量部以下、就中1〜40重量部、特に5〜30重量部が用いられる。
【0010】
なお加硫処理に際しては必要に応じて、例えばエチレンジメタクリレートやエチレングリコールアクリレート、トリアリルイソシアヌレートやトリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N'−m−フェニレンビスマレイミドなどの適宜な加硫助剤を併用することもできる。
【0011】
アゾジカルボンアミド(ADCA)は、発泡剤として用いられ、これにより自己消火性による安全性や無毒性などを達成することができる。ADCAの使用量は、発泡倍率等による目的とする発泡体の物性などに応じて適宜に決定でき、一般にはエチレン・プロピレン系ゴム100重量部あたり1〜50重量部、就中5〜40重量部、特に10〜30重量部が用いられる。なおADCA以外の有機系や無機系の発泡剤を併用することもできる。
【0012】
一方、本発明においてはADCAの分解温度を下げることを目的に発泡助剤が用いられ、その発泡助剤として亜鉛系発泡助剤が用いられる。これによりADCAの分解温度を有効に降下して高発泡倍率の加硫発泡処理を達成でき、かつ尿素系発泡助剤の使用回避でそれに基づく尿素の発生を防止してそれが温度の上昇で揮発昇華してフォギングの原因物質となることを予防することができる。
【0013】
亜鉛系発泡助剤としては、例えばベンゼンスルホン酸亜鉛や酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛や酢酸亜鉛などの適宜なものを1種又は2種以上用いることができ、就中ベンゼンスルホン酸亜鉛がADCAの分解温度降下性や無臭性などの点より好ましく用いうる。亜鉛系発泡助剤の使用量は、目的とする発泡体の物性等に応じて適宜に決定でき、一般にはADCAに対し1〜100重量%、就中5〜50重量%、特に10〜30重量%が用いられる。
【0014】
混和物の調製は、エチレン・プロピレン系ゴムやADCAや亜鉛系発泡助剤等の配合成分を、例えばニーダやミキシングロール、バンバリーミキサ等の混練機を介し混合する方式などの適宜な方式で混合することにより行うことができる。その際、加硫が進行する程度に温度上昇する混合方式は好ましくない。混和物の調製に際しては成形性や粘度や加硫性の調節、得られる発泡体の強度等の物性の調節などを目的に、必要に応じて従来に準じた適宜な配合剤を1種又は2種以上添加することができる。
【0015】
ちなみにフォギングの原因となる揮発昇華物質をトラップすることを目的にフォギング抑制剤を配合することができる。そのフォギング抑制剤としては、トラップ能を示す適宜なものを1種又は2種以上用いうるが、尿素発生の原因となりうるADCA等に基づくアンモニアをトラップする点よりゼオライトが少なくとも用いられる。
【0016】
フォギング抑制剤の使用量は、トラップ効果や混和物のシート等への加工成形性などに応じて適宜に決定しうるが一般には、エチレン・プロピレン系ゴム100重量部あたり1〜200重量部、就中5〜150重量部、特に10〜100重量部とされる。特にゼオライトの場合にはADCAの3〜5倍量が好ましい。
【0017】
また混和物には、成形性の調節等を目的としたプロセスオイルの如き軟化剤、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、ケイ酸やその塩類、酸化カルシウムやタルク、クレーや雲母粉、酸化亜鉛やベントナイト、カーボンブラックやシリカ、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、アルミナやアルミニウムシリケート、アセチレンブラックやアルミニウム粉、ステアリン酸やそのエステル類の如き充填剤、老化防止剤や酸化防止剤、顔料や着色剤、防カビ剤なども配合することができる。
【0018】
なお前記の酸化カルシウムは吸湿剤として、酸化亜鉛は安定剤として、カーボンブラックは補強剤として、ステアリン酸やそのエステル類は滑剤などとしても有用であり、従って各種の吸湿剤や安定剤、補強剤や滑剤も配合しうる成分の例としてあげられる。
【0019】
さらに混和物には、得られる発泡体の強度等の物性の調節を目的に、非ゴム系ポリマーやエチレン・プロピレン系ゴム以外のゴム系ポリマーを1種又は2種以上配合することもできる。その非ゴム系ポリマーやゴム系ポリマーについては適宜なものを用いることができ、特に限定はない。
【0020】
ちなみに前記した非ゴム系ポリマーの例としては、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルの如きアクリル系ポリマーやポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体やポリ酢酸ビニル、ポリアミドやポリエステル、塩素化ポリエチレンやウレタン系ポリマー、スチレン系ポリマーやシリコーン系ポリマー、エポキシ系樹脂などがあげられる。
【0021】
また当該ゴム系ポリマーの例としては、ブテン−1の如きα−オレフィン・ジシクロペンタジエンやエチリデンノルボルネンの如き非共役二重結合を有する環状又は非環状のポリエンを成分とするゴム系共重合体やシリコーン系ゴム、フッ素系ゴムやアクリル系ゴム、ポリウレタン系ゴムやポリアミド系ゴム、天然ゴムやポリイソブチレンがあげられる。
【0022】
さらにポリイソプレンやクロロプレンゴム、ブチルゴムやニトリルブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴムやスチレン・ブタジエン・スチレンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴムやスチレン・エチレン・ブタジエンゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンゴムやスチレン・イソプレン・プロピレン・スチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンなども当該ゴム系ポリマーの例としてあげられる。
【0023】
前記した非ゴム系ポリマーやエチレン・プロピレン系ゴム以外のゴム系ポリマーの使用量は、発泡体のエチレン・プロピレン系ゴムによるゴム的性質を維持する点などよりエチレン・プロピレン系ゴムの50重量%以下、就中30重量%以下、特に15重量%以下が好ましい。なお上記した混和物に必要に応じて添加する配合剤については、揮発昇華しにくいもの、特に高温において揮発昇華しにくいものであることが好ましい。
【0024】
本発明によるゴム系発泡体の形成は、上記した混和物を加熱して加硫発泡処理することにより行いうるが、その形成に際しては必要に応じ混和物を例えばシート等の所定の形態に成形して、その成形体を加熱処理して加硫発泡体とすることもできる。その場合、成形体は、適宜な方式にて任意な形態に成形したものであってよく、その形態について特に限定はない。
【0025】
従って加硫発泡処理の対象物は、混和物を例えばミキシングロールやカレンダーロールや押出成形等による適宜な方式でシート状やその他の形態に成形したものであってもよいし、所定の型を介して射出成形やプレス成形等による適宜な方式で凹凸等を有する所定の形態に成形したものなどであってもよい。
【0026】
前記において、凹凸形状を有する発泡体の形成では、未加硫シートを凹凸を有する型の上に配置して加熱し、その型の凹凸に前記未加硫シートを形成する混和物を流動侵入させて加硫発泡処理する方式なども採ることができる。かかる方式は、ヒダ構造を有する複雑で深い凹凸構造を有する型の場合にもその凹凸形状を精度よく形成できる利点などを有している。よって成形体の寸法は任意であり、目的とする加硫発泡体の形態などに応じて適宜に決定することができる。シート等の場合、その厚さは100mm以下、就中1μm〜80mm、特に10μm〜50mmが一般的である。
【0027】
上記した加硫発泡処理は、ADCAや必要に応じての加硫剤などによる発泡温度や加硫開始温度等により従来に準じた適宜な条件で行うことができる。一般的な加硫発泡温度は、約200℃以下、就中120〜180℃である。かかる加硫発泡処理で通例、混和物が軟化してADCAが分解し発泡構造を形成しつつ加硫が進行して目的の加硫発泡体が形成される。加硫発泡処理は、発泡倍率の調節等を目的に加圧下で行うこともでき、その加圧条件は従来に準じうる。
【0028】
前記において本発明では、高発泡倍率下に加硫処理して柔軟性(変形性)や圧縮性に優れて各種目的のシール箇所に適用して高精度なシール処理を達成しうる密度が0.2g/cm3以下のゴム系発泡体とすることもできる。適用性やシール性能などの点より発泡体の特に好ましい密度は、0.18g/cm3以下、就中0.05〜0.16g/cm3、特に0.1〜0.15g/cm3である。
【0029】
なお発泡体の密度は、前記に限定されず0.2g/cm3を超える発泡体とすることもできる。発泡倍率は、ADCAの配合量、加硫発泡の処理時間や温度などにより制御でき、発泡倍率の調節等を介して加硫発泡体の独立や連続、それらの混在等の発泡構造を制御することができる。
【0030】
本発明によるゴム系発泡体は、例えばクッション材やパッド材、気密や防水等の各種目的のシール材、断熱材、防音や制振等の振動低減材などの従来に準じた各種の用途に用いることができる。特に耐フォギング性に優れることより、例えば直射日光で温度上昇する自動車や住宅等の建築物における窓等の各種ガラス板や太陽電池パネル等の周辺におけるシール材、プラズマディスプレー等の装置の稼動で温度上昇する表示パネルにおけるシール材などとして好ましく用いることができる。
【0031】
【実施例】
参考例
EPDM100部(重量部、以下同じ)、プロセスオイル40部、重質炭酸カルシウム150部、カーボンブラック10部、酸化亜鉛5部及び粉末ステアリン酸3部をバンバリーミキサーにて混練後、それに硫黄1.5部、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤2部、チアゾール系加硫促進剤1部、ADCA20部及びベンゼンスルホン酸亜鉛10部の予備混合物を添加しミキシングロールで混練して混和物を得、それを45mmファイベント式一軸押出し機で成形して厚さ4.5mm、幅150mmの未加硫シートを得、それを160℃のオーブン中で30分間加熱し加硫発泡処理して、発泡シートを得た。なお発泡シートは、形成した発泡体より表層のスキン層をスライスして除去したものである(以下同じ)。
【0032】
実施例1
ゼオライト10部を追加配合した混和物を用いたほかは参考例に準じて発泡シートを得た。
【0033】
実施例2
ゼオライト20部を追加配合した混和物を用いたほかは参考例に準じて発泡シートを得た。
【0034】
実施例3
ゼオライト80部を追加配合した混和物を用いたほかは参考例に準じて発泡シートを得た。
【0035】
比較例
ベンゼンスルホン酸亜鉛に代えて、尿素系発泡助剤5部を配合した混和物を用いたほかは参考例に準じて発泡シートを得た。
【0036】
評価試験
参考例、実施例、比較例で得た縦100mm、横50mm、厚さ10mmの発泡シートを開口部内径40mm、底部内径70mm、高さ170mm(内径70mm部の高さ140mm)のガラス瓶の底上に配置し100℃のシリコーンオイルバス(オイル深さ110mm)に開口部を上にして入れ、その開口を厚さ3mm、47mm角のガラス板で蓋をして20時間放置した後、開口部に配置したガラス板のヘイズ値を調べた。なおヘイズ値(霞度)は、拡散透過光/全透過光にて定義される。
【0037】
前記の結果を次表に示した。
参 考 例 実施例1 実施例2 実施例3 比 較 例
ヘイズ値(%) 25 21 23 8 72
【0038】
表より、尿素系発泡助剤に代えてベンゼンスルホン酸亜鉛を用いることによりヘイズを約1/3に低下させることができ、フォギング抑制剤の併用で更にヘイズを低下できてADCAの4倍量を用いるとヘイズを8にまで低下させうることがわかる。
Claims (1)
- エチレン・プロピレン系ゴム、アゾジカルボンアミド、亜鉛系発泡助剤及びゼオライトを成分とする混和物の加硫発泡体からなることを特徴とする尿素系発泡助剤使用回避のゴム系発泡体。
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