JP4212928B2 - 難燃性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性、耐衝撃性、及び成形品表面外観に優れた、難燃性樹脂組成物、更に本難燃性樹脂組成物からなる成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ABS樹脂、HIPSで代表されるゴム変性スチレン系樹脂、更ににこれらとポリカーボネート樹脂との組成物を難燃化した難燃性樹脂組成物は、機械的特性、物理的特性、電気的特性等に優れることから、電気・電子分野、OA・家電分野、車輌分野、サニタリー分野等で幅広く使用されている。
これらの樹脂の難燃化には、ハロゲン系難燃剤(例えば、特許文献1参照)、有機リン系難燃剤(例えば、特許文献2および特許文献3参照)等で代表される難燃剤が使用されている。
これらの難燃性樹脂組成物においてハロゲン系難燃剤を用いた場合、加工機などに金属腐食が生じるなどの問題がある。又、ホスフェート化合物等のリン系難燃剤を用いた場合、難燃剤が樹脂の可塑剤として作用することなどから、機械的強さ、耐熱性等が劣る等の問題があり、新たな難燃化処方の開発が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】
特許第3198485号明細書
【特許文献2】
特開平9−87337号公報
【特許文献3】
特開平10−120853号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、難燃性、耐衝撃性、及び成形品表面外観に優れた難燃性樹脂組成物、さらに本難燃性樹脂組成物からなる成形品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記構成の熱可塑性樹脂組成物及び成形品が提供されて、本発明の上記目的が達成される。
すなわち、本発明の一局面によれば、(A)ゴム質重合体(a1)5〜75重量%の存在下に芳香族ビニル化合物を含有するビニル系単量体(a2)25〜95重量%をグラフト重合してなるグラフト(共)重合体(A1)、または、該グラフト(共)重合体(A1)および前記ビニル系単量体(a2)の(共)重合体(A2)の混合物からなるゴム質重合体(a1)含量が5〜75重量%であるゴム変性グラフト(共)重合体 5〜95重量%、
(B)芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、及びフェノール系樹脂から選ばれた少なくとも1種の重合体 5〜95重量%、
上記(A)成分と(B)成分とを含有し(但し、上記(A)成分と(B)成分との合計は100重量%である)、上記(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して、
(C)ポリオルガノシロキサン0.1〜20重量部、および、
(D)金属酸化物及び/又は無機酸の金属塩0.01〜20重量部、
を含有してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物が提供される。
【0006】
さらに、本発明の他の局面によれば、上記難燃性樹脂組成物からなる成形品が提供される。
なお、本明細書において、「(共)重合体」とは、単独重合体または共重合体を意味する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分としては、ゴム質重合体(a1)5〜75重量%の存在下に芳香族ビニル化合物を含有するビニル系単量体(a2)25〜95重量%をグラフト重合して得られるグラフト(共)重合体(A1)を使用できる。なお、ゴム質重合体(a1)とビニル系単量体(a2)との合計は100重量%である。また、ビニル系単量体(a2)は、芳香族ビニル化合物のみを含有してもよく、または、芳香族ビニル化合物およびこれと共重合可能な他のビニル単量体の混合物であってもよい。
また、本発明の(A)成分は、前記グラフト(共)重合体(A1)およびビニル系単量体(a2)の(共)重合体(A2)の混合物からなるゴム質重合体(a1)含量が5〜75重量%であるゴム変性グラフト(共)重合体であってもよい。なお、当該ゴム質重合体(a1)含量は、ゴム変性グラフト(共)重合体を100重量%とした場合の値である。(共)重合体(A2)は、ゴム質重合体(a1)の非存在下に前記ビニル系単量体(a2)同士を(共)重合させることにより得られる。
【0008】
ここで使用されるゴム質重合体(a1)としては、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、イソブチレン−イソプレン等のジエン系(共)重合体、これらジエン系(共)重合体の水素添加物、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、エチレン−ブテン−1−(非共役ジエン)共重合体、ポリウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0009】
これらのうち、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及びブタジエン部分の完全または部分水素添加物、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、アクリルゴム及びシリコーンゴムが好ましい。これらは、1種単独で、また2種以上組合わせて使用出来る。
グラフト(共)重合体(A1)中のゴム質重合体(a1)の使用量は、5〜75重量%、好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは30〜70重量%である。この使用量が5重量%未満では、耐衝撃性が劣り、75重量%を超えると難燃性及び耐衝撃性が劣る。
【0010】
ビニル系単量体(a2)として用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、臭素化スチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて使用出来る。これらのうち、スチレンおよびα−メチルスチレンが好ましい。
芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、ビニルシアン化合物、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド化合物、水酸基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上組合わせて使用出来る。
【0011】
ビニルシアン化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等があり、これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用出来る。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等があり、これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用出来る。
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等があり、これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用出来る。また、このマレイミド化合物は、無水マレイン酸を共重合させ、後イミド化する方法で導入してもよい。
【0012】
水酸基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
カルボキシル基含有不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらは、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
【0013】
アミノ基含有不飽和化合物としては、アミノ基および置換アミノ基の少なくとも1種を有するビニル系単量体であり、具体例としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル系誘導体、N−ビニルジエチルアミンおよびN−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン系誘導体類、アクリルアミン、メタクリルアミンおよびN−メチルアクリルアミンなどのアクリルアミン系誘導体類、アクリルアミドおよびN−メチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系誘導体およびp−アミノスチレンなどのアミノスチレン類などが用いられ、これらは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0014】
グラフト(共)重合体(A1)中のビニル系単量体(a2)の使用量は、25〜95重量%、好ましくは30〜90重量%、更に好ましくは35〜80重量%、特に好ましくは35〜65重量%の範囲である。この使用量が25重量%未満では、難燃性および耐衝撃性が劣り、95重量%を超えると、耐衝撃性が劣る。
上述のように、本発明の(A)成分は、上記グラフト(共)重合体(A1)のみから構成できるが、さらにゴム質重合体(a1)の非存在下に上記ビニル系単量体(a2)を重合して得られるスチレン系樹脂などの(共)重合体(A2)を配合して使用することが出来る。スチレン系樹脂(A2)で使用される(a2)成分としては、前記したものが全て使用出来る。
【0015】
上記(A1)及び(A2)成分におけるビニル系単量体(a2)の好ましい組み合わせは、▲1▼芳香族ビニル化合物、▲2▼芳香族ビニル化合物/ビニルシアン化合物、▲3▼芳香族ビニル化合物/(メタ)アクリル酸エステル、▲4▼芳香族ビニル化合物/ビニルシアン化合物/(メタ)アクリル酸エステル、▲5▼芳香族ビニル化合物/マレイミド化合物、▲6▼芳香族ビニル化合物/エポキシ基含有不飽和化合物/(ビニルシアン化合物)、▲7▼芳香族ビニル化合物/酸無水物基含有不飽和化合物、▲8▼芳香族ビニル化合物/カルボキシル基含有不飽和化合物/(ビニルシアン化合物)、▲9▼芳香族ビニル化合物/水酸基含有不飽和化合物/(ビニルシアン化合物)である。かくして得られる(共)重合体(A1)および(A2)は、それぞれ、1種単独、または2種以上組み合わせて使用出来る。
【0016】
上記ビニル系単量体(a2)の更に好ましい組み合わせは、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸メチル、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル、スチレン/フェニルマレイミド、スチレン/無水マレイン酸、スチレン/アクリロニトリル/2−ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸、スチレン/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレートであり、スチレンとアクリロニトリルの好ましい使用割合は、スチレン/アクリロニトリル=60〜90/10〜40重量%の範囲である。
【0017】
2−ヒドロキシエチルメタクリレートで代表される水酸基含有不飽和化合物、メタクリル酸で代表されるカルボキシル基含有不飽和化合物、グリシジルメタクリレートで代表されるエポキシ基含有不飽和化合物の(a2)成分中での使用量は、0.5〜20重量%の範囲が好ましい。これらの官能基含有不飽和化合物を共重合した(A1)成分および(A2)成分は、(A)成分と(B)成分の相溶化剤として作用し、耐衝撃性に良い効果をもたらす場合がある。
かかる官能基含有の(A1)成分及び/または(A2)成分を、相溶化剤として用いる場合、官能基含有重合体と官能基非含有重合体を乳化重合で得、凝固前にラテックスブレンドし凝固回収されたもの、すなわち共凝固品が、成形品表面外観から好ましい。
ラテックスブレンドに於ける好ましい固形分の割合は、官能基含有重合体/官能基非含有重合体=10〜80/20〜90重量%が好ましく、更に好ましくは15〜70/30〜85重量%、特に好ましくは20〜60/40〜80重量%である。
【0018】
本発明の(A)成分は、公知の重合法である乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及びこれらを組合わせた重合法で重合できる。本発明の目的を達成する上で(A1)成分は、乳化重合で得たものが好ましい。
乳化重合で製造する際、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤及び水が用いられる。これらは、公知のものが全て使用できる。尚、使用するゴム質重合体(a1)及びビニル系単量体(a2)は、上記ゴム質重合体(a1)全量の存在下に、上記ビニル単量体(a2)を一括添加して重合してもよく、または分割もしくは連続添加して重合してもよい。また、これらを組合わせた方法で重合してもよい。更に、上記ゴム質重合体(a1)の全量または一部を、重合途中で添加し重合してもよい。
【0019】
重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシモノカーボネート等が挙げられる。又、重合開始助剤としては、含糖ピロリン酸・鉄処方、スルフォキシレート処方等のレドックス系等が好ましく用いられる。
連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、テトラエチルチウラムスルフィド、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール、ターピノーレン類等が挙げられる。
【0020】
乳化重合の際に使用するに乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、ロジン酸塩、リン酸塩等のアニオン系界面活性剤、更に、公知のノニオン系界面活性剤も使用出来る。
乳化重合では、通常、凝固剤により凝固して得られる粉末を水洗後、乾燥することによってグラフト(共)重合体の粉末が得られる。この際の凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩、または硫酸、塩酸、酢酸等の酸を用いることが出来る。
【0021】
溶液重合において用いられる溶媒は、通常のラジカル重合で使用される不活性重合溶媒であり、たとえば、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、ジクロルメチレン、四塩化炭素等のハロゲン炭化水素、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。重合温度は、80〜140℃の範囲が好ましい。
溶液重合に際し、重合開始剤を使用せずに熱重合で重合することも出来るし、又、重合開始剤を用いて重合しても良い。ここで使用される重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好ましく用いられる。
連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン類等が用いられる。
又、これらの重合開始剤は、塊状重合、懸濁重合等でも好ましく用いられる。
【0022】
本発明の(A1)成分中に分散する平均ゴム粒子径は、500〜30000Åの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、1000〜20000Å、特に好ましくは、1500〜8000Åである。
乳化重合で本発明の(A1)成分を得る場合、乳化重合で得たゴム質重合体を使用する場合が多いが、その場合、ゴム質重合体中のゲル含率は、通常、98重量%以下であり、40〜98重量%であることが好ましく、更に好ましくは、50〜95重量%、特に好ましくは、60〜90重量%である。ゲル含率が40〜98重量%において、特に優れた難燃性、耐衝撃性、及び成形品表面外観を示す成形品を与える熱可塑性樹脂組成物を得ることが出来る。
【0023】
尚、上記ゲル含率は、トルエン100mlにゴム質重合体1gを投入し、室温で48時間静置した後、100メッシュ金網(重量W1)で濾過してトルエン不溶分と金網を80℃で6時間真空乾燥して秤量(重量W2)し、次式により算出される値である。
【0024】
【数1】
【0025】
ゲル含率は、ゴム質重合体の製造時に、分子量調整剤の種類及び量、重合時間、重合温度、重合転化率などを適宜設定することにより調整することが出来る。
【0026】
本発明の上記(A1)成分のグラフト率は、好ましくは20〜200重量%、更に好ましくは30〜150重量%、特に好ましくは40〜120重量%である。このグラフト率(%)は、次式により求められる。
【0027】
【数2】
【0028】
上記式中、Tはメチルエチルケトン20mlに(A1)成分1gを投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23000rpm)で60分遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の重量(g)であり、Sは(A1)成分1gに含まれるゴム質重合体(a1)の重量(g)である。
又、(A1)成分のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、0.2〜1.2dl/gが好ましく、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
【0029】
本発明の(A2)成分は、前記と同様の乳化重合、溶液重合、塊状重合、及び懸濁重合等で得ることが出来る。
本発明の(A2)成分のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、0.2〜1.2dl/gが好ましく、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
本発明の(A)成分は、上記(A1)成分と(A2)成分を任意の割合で混合して調製できるが、(A)成分中のゴム質重合体(a1)含量は、上記(A1)成分と(A2)成分との合計に対して、5〜75重量%、好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは20〜65重量%、特に好ましくは30〜65重量%である。この含量が5重量%未満では、耐衝撃性が劣り、75重量%を超えると難燃性及び耐衝撃性が劣る。
本発明の(A)成分の使用量は、本発明の(A)成分と(B)成分の合計に対して、5〜95重量%、好ましくは5〜80重量%、更に好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。この使用量が5重量%未満では耐衝撃性が劣り、95重量%を超えると難燃性及び耐衝撃性が劣る。
【0030】
本発明の(B)成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、及びフェノール系樹脂から選ばれた少なくとも1種の重合体である。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、種々のヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの界面重縮合によって得られるもの、またはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネート等のカーボネート化合物とのエステル交換反応(溶融重縮合)によって得られるもの等、公知の重合法によってよって得られるものが全て使用出来る。芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるジヒドロキシアリール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)プロパン、2.2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1.1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4、4′−ジヒドロキシフェニルエーテル、4、4′−ジヒドロキシ−3、3′−ジメチルジフェニルエーテル、4、4′−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4、4′−ジヒドロキシ−3、3′−ジメチルフェニルスルホキシド、4、4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、4、4′−ジヒドロキシ−3、3′−ジメチルジフェニルスルホン、ヒドロキノン、レゾルシン等、更に、ヒドロキシアリールオキシ末端化さらたポリジオルガノシロキサン(例えば、米国特許第3,419,634号参照)等があり、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用される。特に好ましいものは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。上記芳香族ポリカーボネート樹脂は、上記原料より得られた各種ポリカーボネートを1種単独で、または2種以上組合わせて用いることが出来る。
【0031】
本発明で使用される上記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、1300〜32000が好ましく、更に好ましくは17000〜31000、特に好ましくは、18000〜30000である。又、粘度平均分子量が異なる芳香族ポリカーボネート樹脂を併用することも出来る。
尚、芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、通常、塩化メチレンを溶媒として、20℃、濃度〔0.7g/100ml(塩化メチレン)〕で測定した比粘度(ηSP)を次式に挿入して算出することができる。
粘度平均分子量=([η]×8130)1.205
(式中、[η]=〔(ηSP×1.12+1)1/2−1〕/0.56Cである。尚、Cは濃度を示す。)
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂において、界面重縮合で得られたものは、各種塩素化合物を含む場合がある。この塩素化合物は、本発明の難燃性樹脂組成物の熱安定性に悪影響する場合があるため、芳香族ポリカーボネート樹脂の塩素化合物含有量は、塩素原子として300ppm以下であることがあることが好ましく、更に好ましくは、100ppm以下である。
【0032】
本発明で使用されるポリアリーレンスルフィドは、本質的にスルフィド基により相互に結合されたアリーレン基からなる重合体であり、下記一般式で表されるものである。
(―Ar―S―)n
(式中、Arは置換または末端基のアリーレン基、好ましくはフェニル基であり、nは50より大きい数であることが好ましい。)
本発明で使用されるポリアリーレンスルフィドは、直鎖状、分岐鎖状または交叉結合されているものであっても良い。
ポリアリーレンスルフィドの好ましい出発化合物および製造方法は、例えば、米国特許第3,354,129号明細書、及び同第3,919,177号明細書に記載されている。その製造において、ポリハロゲン化された芳香族化合物を極性溶媒中で触媒存在下にて含硫黄化合物と反応させて得られる。
【0033】
好適なポリハロゲン化芳香族化合物には、例えば、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、2、5−ジクロロトルエン、1,4−ジブロモベンゼン、2,5−ジブロモアニリンおよびその混合物がある。分岐鎖状のポリアリーレンスルフィドを製造する場合、ポリハロゲン化芳香族化合物の少なくとも0.05モル%は、芳香族トリハロゲンまたはテトラハロゲン化合物、例えば、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼンまたは、1,2,4,5−テトラクロロベンゼンであることが好ましい。
好適な含硫黄化合物としては、アルカリ金属硫化物、例えば硫化ナトリウム及びカリウムがある。これらのアルカリ金属硫化物の水和物が特に好ましい。また、アルカリ金属硫化物は、アルカリ水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウムを用いて硫化水素から生成出来る。
好適な極性溶媒には、例えば、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム及び1,3−ジメチルイミダゾリンがある。又、適当な触媒として、例えばアルカリフッ化物、アルカリリン酸塩またはアルカリカルボン酸塩の如き物質が挙げられ、アルカリ金属硫化物1モル当たり0.02〜1.0モルの量で用いることが好ましい。
【0034】
本発明のフェノール系樹脂は、フェノール性水酸基を複数有する重合体であれば任意であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、並びにこれらを変性した樹脂が挙げられる。
上記フェノール系樹脂は特に限定されるものではなく市販されているもの等が用いられる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるような比率で反応槽に仕込み、更にシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後、加熱し、所定の時間環流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水または静置脱水し、更に残っている水と未反応のフェノール類を除去する方法により得ることが出来る。これらの樹脂または複数の原料成分を用いることにより得られる共縮合フェノール樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
またレゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるような比率で反応槽に仕込み、水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の反応および処理をして得ることが出来る。
ここで、フェノール類とはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4′−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。
一方、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類は必要に応じて単独でまたは二種以上組み合わせて用いることが出来る。
【0036】
また、本発明に用いるフェノール系樹脂は、フェノール類以外の化合物により一部反応または架橋していても良い。このような化合物としては、エポキシ化合物、メラミン類、尿素類、ベンゾグアナミン類、アセトグアナミン類、キシレン、フラン類等が挙げられ、これらの混合物であっても良い。
フェノール系樹脂の分子量は特に限定されないが、好ましくは数平均で300〜20000であり、更に好ましくは500〜5000、特に好ましくは500〜2000の範囲のものであり、軟化点が60℃以上のものが好ましく、更に好ましくは80℃〜200℃、特に好ましくは100℃〜150℃のものである。尚、フェノール系樹脂の分子量は、テトラヒドロフラン溶液、フェノール樹脂分子量標準試料を使用し、ゲルパーミエーション法で測定できる。
本発明の(B)成分の使用量は、本発明の(A)成分と(B)成分の合計に対して5〜95重量%、好ましくは20〜95重量%、更に好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは50〜90重量%であり、10重量%未満では、難燃性が劣り、95重量%を超えると耐衝撃性が劣る。
【0037】
本発明の(C)成分のポリオルガノシロキサンは、一般式(I)で示される構造単位、及び一般式(II)で示される繰り返し構造単位を必須成分とし、一般式(III)で示される繰り返し構造単位、又は一般式(IV)で示される繰り返し構造単位を80モル%以下含有するものであり、形状は、オイル状、ガム状、ワニス状、粉体状、及びペレット状のものが使用出来る。
【0038】
【化1】
【0039】
式中、R1〜R6は、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14の置換アルキル基、炭素数1〜14のアルコキシル基、アリール基、アルキル基置換及びまたはアルキレン基置換アリール基、水素、(メタ)アクリル基から選ばれた少なくとも1種である。好ましくは、R1〜R6のうち5モル%以上がフェニル基等のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは10モル%〜80モル%未満、特に好ましくは30モル%〜80モル%未満である。又は、(メタ)アクリル基を含有していることが、難燃性から好ましい。
【0040】
本発明のポリオルガノシロキサンは、前記一般式(I)、(II)及び(III)からなる分岐ポリオルガノシロキサンが好ましく、R1〜R6に占める炭素数6〜12のアリール基含有量が20〜80モル%未満であるものが更に好ましく、アリール基がフェニル基であり、フェニル基以外のR1〜R6がメチル基であるフェニルメチルポリシロキサンが特に好ましい。
又、ポリオルガノシロキサンの側鎖、両末端、片末端、側鎖末端がアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、フェノール等で変性されたものを用いることも出来、アミノ基で変性されたものは、特に好ましい。
尚、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができ、置換アルキル基としては、トリフルオロプロピル基等を挙げることができる。アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
これらのポリオルガノシロキサンは、1種単独で、又2種以上併用して使用することが出来る。
【0041】
本発明の(C)成分であるポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、特に限定されないが、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算値で、300〜1000000の範囲のものが通常使用される。
本発明のポリオルガノシロキサンは、一般的な製造方法により製造されるが、製造方法を例示すると、上記一般式(II)を構成する単位又は一般式(II)を構成する単位と一般式(III)及び又は一般式(IV)を構成する単位の割合に応じた割合でオルガノハロシランを水中で共加水分解し、得られた加水分解生成物を縮合反応させた後、アルカリ金属水酸化物触媒により平衡化反応させることにより脱水し製造することができ、例えば特開平5−247212号公報等に記載されている方法等で製造することが出来る。
本発明の(C)成分は、本発明の(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、更に好ましくは2〜12重量部、特に好ましくは3〜10重量部である。その使用量が0.1重量部未満では難燃性が劣り、20重量部を超えると耐衝撃性、成形品表面外観が劣る。
これらのポリオルガノシロキサンは、1種単独で、又は2種以上併用して使用できる。好ましいものは、粉体形状を有する、いわゆるシリコーンレジンを少なくとも1種含むものであり、更に好ましくは、シリコーンレジンと粘度(25℃に於ける)が50万センチストークス以下の液状シリコーンを併用したものである。
【0042】
本発明の(D)成分の金属酸化物及び/又は無機酸の金属塩としては下記のものが例示される。すなわち、金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛などが挙げられる。無機酸の金属塩としては、硼酸亜鉛などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、酸化鉄、酸化銅、酸化カルシウムであり、更に好ましくは酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、酸化銅であり、特に好ましくは、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、硼酸亜鉛である。これらの平均粒子径としては、20μm以下のものが好ましく用いられる。
上記(D)成分は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。好ましい組合せとしては、酸化亜鉛/酸化チタン、酸化チタン/硼酸亜鉛、酸化亜鉛/硼酸亜鉛、酸化亜鉛/酸化チタン/硼酸亜鉛である。
本発明の(D)成分は、本発明の(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.02〜15重量部、更に好ましくは0.05〜12重量部、特に好ましくは0.05〜8重量部であり、その使用量が0.01重量部未満では難燃性が劣り、20重量部を超えると耐衝撃性及び成形品表面外観が劣る。
【0043】
更に本発明の難燃性樹脂組成物の難燃性を向上させる目的から、有機酸もしくは有機酸エステル、又はこれらの金属塩化合物(E)を配合することが出来る。
有機酸としては、有機スルホン酸、有機カルボン酸があり、有機酸エステルとしては有機リン酸エステル等がある。金属塩化合物に使用される金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、亜鉛、バリウム、鉛等がある。これらの中で好ましいものとしては、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩等があり、有機カルボン酸金属塩としては、炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸の金属塩が好ましく、特に好ましい具体例としてステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸リチウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸亜鉛等がある。
【0044】
有機スルホン酸金属塩の好ましい具体例としては、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩、芳香族スルホン酸金属塩、芳香族スルホンスルホン酸金属塩等があり、金属種としては、ナトリウム、カリウム等が好ましく用いられる。
上記本発明の(E)成分は、本発明の(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜15重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部の範囲で使用され、0.01重量部未満では、難燃性を向上させる効果が得られず、20重量部を超えると耐衝撃性が劣る。
【0045】
更に難燃性を向上させる目的から、フッ素樹脂粉末(F)を配合することが出来る。ここで使用されるフッ素樹脂粉末は、フッ化エチレン樹脂(エチレンの水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された単量体の重合体)であり、具体的な例として、ポリモノフルオロエチレン、ポリジフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン/フルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等があり、好ましい重量平均分子量は、通常50万以上、より好ましくは100万以上である。平均粒子径は、10〜600μmが好ましい。又本発明で使用されるフッ素樹脂粉末は、ポリエチレンワックス、有機酸、有機酸金属塩等で分散性を向上したものとすることが出来る。
上記(F)成分は、本発明の(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜8重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.1〜2重量部の範囲で使用され、その使用量が0.01重量部未満では、難燃性を向上させる効果が無く、又10重量部を超えると耐衝撃性及び成形品表面外観が劣る。
【0046】
本発明の難燃性樹脂組成物には、公知の無機充填材を配合することが出来る。ここで使用される無機充填材としては、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスビーズ、中空ガラス、炭素繊維、炭素繊維パウダー、タルク、ワラストナイト、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、ヘクトライト、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、板状アルミナ、及び有機処理されたスメクタイト等があり、これらは1種単独で、又2種以上併用して用いることが出来る。又、上記無機充填材の分散性を向上させる目的から、公知のカップリング剤で表面処理したものを用いることも出来る。公知のカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等がある。上記無機充填材は、本発明の難燃性樹脂組成物100重量部に対して、1〜100重量部の範囲で通常使用される。
【0047】
又、本発明の難燃性樹脂組成物には、公知の耐候剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤(好ましくは、ハロゲン系、リン酸エステル系)、難燃助剤、滑剤、可塑剤、着色剤、染料、抗菌剤、カップリング剤等を配合することが出来る。
更に、本発明の難燃性樹脂組成物には、他の公知の熱可塑性樹脂である、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステル樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル、POM、エポキシ樹脂、LCP、熱可塑性ポリウレタン等を適宜配合出来る。
【0048】
本発明の難燃性樹脂組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー、連続ニーダー等により、各成分を混練することにより調製することができる。好ましい製造法は、押出機(好ましくは二軸押出機)またはバンバリーミキサーを用いる方法である。
更に、各々の成分を混練するに際して、それらの成分を一括して混練してもよく、押出機、バンバリーミキサー等を用いて、多段、分割配合し混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練したあと、押出機により更に分割添加、混練、脱気等を行いペレット化することも出来る。
このようにして調製された本発明の難燃性樹脂組成物は、射出成形、プレス成形、シート押出成形、真空成形、異形押出成形、発泡成形等の公知の成形法により、成形品を得ることが出来る。これらの成形法で得られた成形品としては、下記のものが例示される。
【0049】
各種ギア、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシー、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品。
【0050】
VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品。
オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリー関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具関連部品。
便座、タンクカバー、ケーシング、台所回りの部品、洗面台関連部品、浴室関連パーツ等のサニタリー関連部品。
窓枠、家具、床材、壁材等の住宅、住設関連部品。
顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機器関連部品。
【0051】
オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気各種バルブ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウオーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイパーハーネス、ウインドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローラー、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース。
【0052】
パソコン、プリンター、ディスプレイ、CRTディスプレイ、ノートパソコン、携帯電話、PHS、DVDドライブ、PDドライブ、フレキシブルディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、シャーシー、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子機器部品、自動車部品、その他各種用途。
【0053】
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら制約されるものではない。
尚、実施例中、部及び%は、特に断らない限り重量基準である。又、実施例中の各種評価は、次のようにして測定したものである。
【0054】
評価方法:
(1−1)難燃性:
UL―94V試験に準拠して、試験片厚み2.0mmで試験した。尚、表中BNは、バーニングを示す。
(1−2)耐衝撃性:
ISO試験法179に準拠して、ノッチ付きシャルピー衝撃強さ(KJ/m2)を測定した。
(1−3)成形品表面外観:
平板を成形し、成形品表面外観を下記評価基準で目視評価した。
○;外観良好、
×;外観が劣る。
【0055】
(1−4)ゴム質重合体の平均粒子径:
ゴム質重合体分散粒子の平均粒子径は、予め乳化重合で合成したラテックス粒子径がそのまま樹脂中の分散粒子の粒子径を示すことを電子顕微鏡で確認しており、ラテックス中の分散粒子の粒子径を光散乱法で測定した。測定機器は、大塚電子社製LPA―3100を使用し、70回積算でキュムラント法を用い、粒子径を測定した。
(1−5)(A1)成分(ゴム変性スチレン系樹脂)のグラフト率
上記記載の方法で行った。
(1−6)(A1)および(A2)成分のメチルエチルケトン可溶部の極限粘度[η]
上記記載の方法で測定した。
難燃性樹脂組成物の成分
【0056】
(2−1)(A1)グラフト共重合体:
製造例A−1;
攪拌機を備えた内容積80Lのオートクレーブに、窒素気流中で、イオン交換水140部、ロジン酸カリウム0.5部、t―ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(平均粒子径;2700Å、ゲル含率;90%)40部(固形分)、スチレン15部、アクリロニトリル5部を加え、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部およびブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始し、1時間重合させた後、更にイオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、t−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加し、更に1時間重合させて、2,2′−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結した。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト共重合A1を得た。このグラフト共重合体A1のグラフト率は69%、メチルエチルケトン可溶部の極限粘度[η]は、0.45dl/gであった。
【0057】
(A2)グラフト共重合体:
製造例A−2;
攪拌機を備え付けた内容積80Lのオートクレーブに、窒素気流中で、イオン交換水155部、ポリブタジエンラテックス(平均粒子径;2700Å、ゲル含率90%)70部(固形分)を添加し、攪拌を開始した。内温が65℃になるまで昇温し、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.008部、硫酸第一鉄7水和物0.002部、ソディウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水15部からなる水溶液を添加した後、クメンハイドロパーオキサイド0.05部、およびスチレン20部、アクリロニトリル6部、グリシジルメタクリレート4部、ロジン酸カリウム0.1部、イオン交換水30部からなる乳濁液を4時間かけて連続的に添加し重合反応を行った。その間、内温は65℃に保った。更に2時間攪拌を続けた後、冷却し、2,2′−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結し、グラフト共重合体A2ラテックスを得た。サンプリングし、重合体含率、グラフト率およびメチルエチルケトン可溶部の極限粘度を測定した。重合体含率は33%、グラフト率28%、極限粘度0.32dl/gであった。
【0058】
(A3)スチレン系樹脂:
製造例A−3;
攪拌機を備えた内容積50Lのオートクレーブに、窒素気流中で、イオン交換水163部、ロジン酸カリウム0.3部を添加し、攪拌を開始するとともに、昇温した。内温が65℃になった時点で、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.01部、硫酸第一鉄7水和物0.0025部、ソディウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.28部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加した。t−ドデシルメルカプタン0.35部、クメンハイドロパーオキサイド0.12部、及びスチレン75部、アクリロニトリル25部からなる混合単量体を6時間かけて連続的に添加し、内温を65℃に保ちながら重合反応を行った。単量体添加開始から1時間後にロジン酸カリウム0.4部を添加し、3時間後にエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.025部、硫酸第一鉄7水和物0.006部、ソディウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.07部、イオン交換水2.5部からなる水溶液を添加した。6時間後、上記3時間後に添加した重合開始助剤とクメンハイドロパーオキサイド0.05部を添加し、更に2時間攪拌を続けて、A3重合体ラテックスを得た。冷却後サンプリングし、重合体含率および極限粘度を測定した。重合体含率35%、極限粘度0.35dl/gであった。
【0059】
(A4)スチレン系樹脂:
製造例A−4;
内容積30Lのリボン翼を備え付けたジャケット付き重合反応容器を2基連結し、窒素置換した後、1基目の反応容器にスチレン75部、アクリロニトリル25部、トルエン20部を連続的に添加した。t−ドデシルメルカプタン0.1部及びトルエン5部の溶液を、又重合開始剤として1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)0.1部及びトルエン5部の溶液を連続的に供給した。1基目の重合温度は、110℃にコントロールし、平均滞留時間2.0時間、重合転化率60%であった。得られた重合体溶液は、1基目の反応容器の外部に設けられたポンプにより、供給量と同量を連続的に取り出し、2基目の反応容器に供給した。
2基目の反応容器の重合温度は、130℃、平均滞留時間2.0時間、重合転化率80%であった。2基目の反応容器で得られた共重合体溶液は、2軸3段ベント付き押出機を用いて、直接未反応単量体と溶剤を脱揮し、スチレン系樹脂A4を得た。このものの極粘度は0.48dl/gであった。
【0060】
(A5)重合体A2とA3の共凝固品:
重合体A2と重合体A3を固形分で50/50部となるようにラテックスブレンドした後、硫酸水溶液を用いて凝固、水洗、脱水したあと乾燥しゴム変性グラフト共重合体A5を得た。
【0061】
(2−2)(B)成分:
重合体B1;
芳香族ポリカーボネートとして三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバレックス7022PJ(粘度平均分子量22000)を用いた。
重合体B2;
ポリフェニレンスルフィドとしてディーアイシー・イーピー社製AGT−7Gを用いた。
重合体B3;
ノボラック型フェノール樹脂として住友ベークライト社製PR−5319(軟化点110℃)を用いた。
【0062】
(2−3)(C)成分;ポリオルガノシロキサン:
C1;信越化学工業製X−40−9805(メチルフェニル系シリコーンレジン)を用いた。
C2;信越化学工業製X−40−9244(メチルフェニル系シリコーンオリゴマー)を用いた。
C3;信越化学工業製KF96H−30万cst(ポリジメチルシロキサン)を用いた。
C4;信越化学工業製X−40−2651(アミノ基含有シリコーンオリゴマー)を用いた。
【0063】
(2−4)(D)成分;金属酸化物及び/又は無機酸の金属塩:
D1;石原産業社製微粒子酸化チタンTTO−51(C)を用いた。
D2;堺化学工業社製2種酸化亜鉛(平均粒径0.6μm)を用いた。
D3;堺化学工業社製微粉酸化亜鉛(平均粒径0.3μm)を用いた。
D4;日本シリカ工業製酸化ケイ素ニプゲルCY−200を用いた。
D5;日本精鉱社製 硼酸亜鉛を用いた。
【0064】
(2−5)(E)成分:
E1;ステアリン酸バリウムを用いた。
E2;ステアリン酸リチウムを用いた。
【0065】
(2−6)(F)成分:
ポリテトラフルオロエチレンとして、住友スリーエム社製ホスタフロンTF1620を用いた。
【0066】
(2−7)実施例1〜19、比較例1〜6:
表1記載の成分を表1記載の配合割合でヘンシエルミキサーにより混合した後、二軸押出機で溶融混練(芳香族ポリカーボネート配合品は240℃〜250℃、ポリフェニレンスルフィド配合品は290〜300℃、フェノール樹脂配合品は210〜220℃)しペレット化した。十分に乾燥したのち、射出成形(シリンダー設定温度は、押出温度のー10℃に設定)で評価用試験片を成形した。上記各成形品を用い、前記の方法で、難燃性、耐衝撃性及び成形品表面外観を評価した。評価結果を表1に示した。
【0067】
【表1】
【0068】
比較例1は、本発明の(A)成分の使用量が発明の範囲外で多く、又(B)成分の使用量が発明の範囲外で少ない例であり、耐衝撃性および難燃性が劣る。
比較例2は、本発明の(A)成分の使用量が発明の範囲外で少なく、また(B)成分の使用量が発明の範囲外で多い例であり、耐衝撃性が劣る。
比較例3は、本発明の(C)成分の使用量が発明の範囲外で少ない例であり、難燃性が劣る。
比較例4は、本発明の(C)成分の使用量が発明の範囲外で多い例であり、耐衝撃性及び成形品表面外観が劣る。
比較例5は、本発明の(D)成分の使用量が発明の範囲外で少ない例であり、難燃性が劣る。
比較例6は、本発明の(D)成分の使用量が発明の範囲外で多い例であり、耐衝撃性及び、成形品表面外観が劣る。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、スチレン系ゴム強化樹脂及び特定の樹脂にポリオルガノシロキサンと金属酸化物及び/又は無機酸の金属塩を適量配合することで、難燃性、耐衝撃性及び成形品表面外観に優れた燃燃性樹脂組成物が得られる。
Claims (4)
- (A)ゴム質重合体(a1)5〜75重量%の存在下に芳香族ビニル化合物を含有するビニル系単量体(a2)25〜95重量%をグラフト重合してなるグラフト(共)重合体(A1)、または、該グラフト(共)重合体(A1)および前記ビニル系単量体(a2)の(共)重合体(A2)の混合物からなるゴム質重合体(a1)含量が5〜75重量%であるゴム変性グラフト(共)重合体 5〜95重量%、
(B)芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、及びフェノール系樹脂から選ばれた少なくとも1種の重合体 5〜95重量%、
上記(A)成分と(B)成分と難燃剤とを含有し(但し、上記(A)成分と(B)成分との合計は100重量%である)、
前記難燃剤が、上記(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して、
(C)ポリオルガノシロキサン0.1〜20重量部、および、
(D)酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、硼酸亜鉛及び酸化銅からなる群より選ばれた少なくも1種の金属酸化物及び/又は無機酸の金属塩0.01〜20重量部、並びに、
所望により、
(E)有機酸もしくは有機酸エステルまたはこれらの金属塩化合物0.01〜20重量、及び/又は、
(F)フッ素樹脂粉末0.01〜10重量部
からなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。 - 上記(C)成分のポリオルガノシロキサンの主成分がフェニルメチルポリシロキサンである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 上記成分(D)が酸化亜鉛及び酸化チタンの組合せ、酸化チタン及び硼酸亜鉛の組合せ、酸化亜鉛及び硼酸亜鉛の組合せ、又は、酸化亜鉛、酸化チタン、硼酸亜鉛の組合せである請求項1または2記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜3の何れか1項記載の難燃性樹脂組成物からなる成形品。
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