JP4212792B2 - ペースト状酵母エキス及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、5’−グアニル酸ナトリウム(以下、5’−GMPと略称する。)を3重量%以上と多量に含有した、室温で流動性を有するペースト状の酵母エキス及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵母エキスは強い呈味性を有し味の質が肉エキスに類似していること、さらに天然調味料ということで、天然の食材を指向する要望にもマッチして、近年広く利用されるようになってきた。
中でも、5’−GMP等の旨味成分を多量に含有した酵母エキスは、風味が良く旨味が強いことに加え、味にボリュウム感を与えること、味に丸みをつけること、塩かど・エグ味をとること、等の多様な作用のために、各種の加工食品の製造に広く用いられている。
【0003】
従来、5’−GMPを含有したペースト状酵母エキス類は、例えば、特公昭44−792号公報、同44−793号公報等に開示されているが、いずれも5’−GMPの含有量は約1%程度と低いものであった。5’−GMPは、溶解性が劣るため、例えば、ペースト状酵母エキス(固形分濃度30%)中の含有量が3%を超えると、温度が55℃付近以下になるとゲル化現象を起こす。そのため、室温ではゲル化しており、流動性を維持するためには高温で保持しなければならず、着色が著しくなるという欠点があり、5’−GMPを高含有した酵母エキスは、通常、粉末状で提供されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、粉末状のものは粉塵対策が必要となるばかりではなく、用途、例えば液体調味料、によっては取扱いにくいという欠点を有していた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討の結果、5’−GMPを高含有した酵母エキス濃縮液を、加熱下、撹拌あるいは振とうしながら冷却することにより、驚くべきことに、ゲル化することなく、ペースト状の酵母エキスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
(1)5’−GMPを3〜5重量%含有した、室温で流動性を有するペースト状酵母エキス、
(2)5’−GMPを3〜5重量%含有した40℃以上の酵母エキス濃縮液を、撹拌又は振とうしつつ室温以下まで冷却する、5’−GMPを3〜5重量%含有したペースト状酵母エキスの製造方法、
(3)酵母エキス濃縮液の温度が60℃以上である、上記(2)記載のペースト状酵母エキスの製造方法、
を提供するものである。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう流動性を有するとは、多少の弾性と固さとをもってゼリー状に固化(ゲル化)することなく流動性を保持していることをいう。
本発明のペースト状酵母エキスは、5’−GMPを3重量%、好ましくは4重量%以上含有したものであり、室温で流動性を有するものである。
5’−GMPの含有量が3重量%未満であると、旨味成分が不足し、用途によっては好ましくない場合があり、また、ゲル化したものは取扱が困難となる。
【0007】
本発明で用いられる酵母エキス濃縮液は、5’−GMPを3重量%、好ましくは4重量%以上含有したもので、製造工程中の濃縮液、粉末状酵母エキスの溶解液、あるいはゲル化した酵母エキス濃縮液、のいずれでもよい。これら酵母エキス濃縮液は、例えば、WO88/05267号公報等に記載の方法により、容易に製造することができる。
【0008】
酵母エキス濃縮液は、40℃以上、好ましくは60℃以上で、撹拌あるいは振とうを開始される。
酵母エキス濃縮液の温度は、濃縮液がゲル化しない温度以上に加熱されていることが好ましく、5’−GMPの含有量が高くなるに従って高くすること、例えば5’−GMP含有量が4%以上の場合は60℃以上、が望ましい。
撹拌あるいは振とう条件は、濃縮液の状態、その量等により異なるが、濃縮液が流動する状態を保てればよく、撹拌の場合は10rpm以上、好ましくは50rpm以上、振とうの場合は30回/分以上、好ましくは100回/分以上で十分ある。
【0009】
酵母エキス濃縮液は、撹拌または振とうしつつ室温以下まで冷却される。
冷却は自然冷却あるいは急冷のいずれでもよいが、冷却温度が低いほど静置後のゲル化が起こりにくいため、20℃以下まで冷却することが望ましい。
冷却された酵母エキス濃縮液は、ゲル化することなく、室温で流動性を有するペースト状酵母エキスとして取得することができる。
【0010】
【実施例】
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
30L容ジャーファーメンターを用い公知の培地(WO88/05267)15Lにキャンディダ・ウチリスCSB6316菌株の前培養液1Lを植菌し、30℃で24時間通気培養した。培養終了後、遠心分離、水洗し、約360g(乾燥重量)の菌体を得た。
本菌体を水1500mlに懸濁し、常法により、プロチンPC−10(大和化成(株)製、プロテアーゼ製剤)、リボヌクレアーゼP(天野製薬(株)製、5’−フォスホジエステラーゼ製剤)及びデアミザイム(天野製薬(株)製、デアミナーゼ製剤)を反応させた後、不溶性固形分を遠心分離により除去しエキスを得た。
本エキスを60℃で減圧下濃縮(固形分35%)し、5’−GMP含有量5重量%の濃縮液をとし、これを95℃2分間殺菌後、60℃まで冷却し、100rpmで撹拌しながら10℃まで冷却することにより、本発明のペースト状酵母エキスを得た。
本酵母エキスは、冷蔵(5℃)、室温ともに1ケ月保存してもゲル化することなく、流動性を有していた。
【0011】
比較例1
実施例1において、酵母エキス濃縮液の殺菌後、撹拌することなくそのまま室温まで冷却した以外は実施例1と同様に実施し、酵母エキスを得た。
本酵母エキスは、ゲル化しており、流動性はなかった。
【0012】
実施例2
粉末状酵母エキス((株)興人製、アロマイルド、5’−GMP含有量10.3重量%)500gを70℃の温水1Lに溶解して5’−GMP含有量3.4重量%の酵母エキス濃縮液1.3Lを作製した。
本濃縮液を、95℃2分間殺菌後、60℃まで冷却し、100rpmで撹拌しながら10℃まで冷却することにより、本発明のペースト状酵母エキスを得た。本酵母エキスは、冷蔵(5℃)、室温ともに1ケ月保存してもゲル化することなく、流動性を有していた。
【0013】
比較例2
実施例2において、濃縮液の殺菌後、撹拌することなくそのまま室温まで冷却した以外は実施例2と同様に実施し、酵母エキスを得た。
本酵母エキスは、ゲル化しており、流動性はなかった。
【0014】
実施例3
比較例1で得られた酵母エキスを70℃の湯浴中で加熱・溶解した。溶解後、100rpmで撹拌しながら室温まで冷却し、本発明のペースト状酵母エキスを得た。
本酵母エキスは、冷蔵(5℃)、室温ともに1ケ月保存してもゲル化することなく、流動性を有していた。
【0015】
【発明の効果】
以上説明してきた通り、本発明によると、5’−GMPを3重量%以上と大量に含有した酵母エキスを、簡便に、室温でもゲル化することなくペースト状で提供することができる。
Claims (3)
- 5’−グアニル酸ナトリウムを3〜5重量%含有した、室温で流動性を有するペースト状酵母エキス。
- 5’−グアニル酸ナトリウムを3〜5重量%含有した40℃以上の酵母エキス濃縮液を、撹拌又は振とうしつつ室温以下まで冷却することを特徴とする、5’−グアニル酸ナトリウムを3〜5重量%含有したペースト状酵母エキスの製造方法。
- 酵母エキス濃縮液の温度が60℃以上である、請求項2記載のペースト状酵母エキスの製造方法。
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