JPH11187826A - 分散安定化組成物及びそれを用いた分散安定食品 - Google Patents

分散安定化組成物及びそれを用いた分散安定食品

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JPH11187826A
JPH11187826A JP9367945A JP36794597A JPH11187826A JP H11187826 A JPH11187826 A JP H11187826A JP 9367945 A JP9367945 A JP 9367945A JP 36794597 A JP36794597 A JP 36794597A JP H11187826 A JPH11187826 A JP H11187826A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】溶液状態では増粘せず、該溶液を用時ホモゲナ
イズすることにより粘性を発現する、取扱い性及び操作
性に優れた分散安定化組成物の提供。 【解決手段】発酵セルロース及び一価、二価又は三価の
いずれかのカチオン、好ましくはカルシウム、マグネシ
ウム、ナトリウムを含む分散安定化組成物。該液状分散
安定化組成物を被験物に配合し、得られる被験組成物を
用時攪拌することを特徴とする分散安定化方法、及びか
かる方法で調製される分散安定食品。カルシウムが安定
して分散してなる食品であって、該食品100重量部あ
たり、発酵セルロースを0.01〜5重量部、カルシウ
ムを0.01〜1重量部含有することを特徴とするカル
シウム強化食品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、目的の被験物に簡
便にかつ安定して分散性を付与することのできる組成物
に関する。詳細には、本発明は、該組成物を単に溶解し
た溶液状態では増粘せず、該溶液若しくはその希釈物を
用時ホモゲナイズすることにより粘性を発現して分散安
定性を発揮する、取扱い性及び操作性に優れた分散安定
化組成物に関する。
【0002】また、本発明は、上記特性を有する分散安
定化組成物を用いた分散安定化方法、該組成物により調
製される分散安定食品及びその製造法に関する。
【0003】更に本発明は、発酵セルロースを含有する
ことによってカルシウムが安定して分散されてなるカル
シウム強化食品に関する。
【0004】
【従来の技術】従来から、食品などに分散安定性を付与
する目的で各種のゲル化剤が使用されている。これらゲ
ル化剤が有する分散安定作用は、ゲル化剤の増粘作用に
よるものであり、食品の粘度を上昇させて食品の連続相
に不連続相を安定に分散させるものである。これらのゲ
ル化剤は、粉末等の固体状で直接被験物たる食品に添加
するといわゆる「ままこ」を生じ易いため、通常は、予
め水等に溶解して溶液状にして食品に添加する方法が用
いられている。
【0005】しかしながら、一般にゲル化剤を含有する
溶液は、その濃度に比例して粘性が向上しそれ自体がゲ
ル化してしまうという性質を有するため、取扱い性、操
作性及び定量性が悪く、ゲル化剤溶液を高濃度の状態で
使用することは事実上困難であった。その一方、目的製
品の組成に影響を与えることなく、高濃度のゲル化剤を
最小量用いて、該製品に分散安定性を付与したいという
要求があるのも事実である。
【0006】このため、従来から、少量の使用で被対象
物に分散性を安定に付与することができる組成物であっ
て、取扱い性・操作性に優れる分散安定化組成物の開発
が求められていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情
に鑑みて開発されたもので、単に水溶液に溶解した状態
では高濃度含有する場合でも増粘せず取り扱い性、操作
性に優れ、所望により用時ホモゲナイズすることによっ
て始めて粘性を発現するという特性を有する分散安定化
組成物を提供することを目的とするものである。
【0008】さらに、本発明は、上記分散安定化組成物
を用いる分散安定化方法、分散安定食品及びその調製方
法を提供することを目的とする。
【0009】また、本発明は、カルシウムが沈殿するこ
となく食品中に安定して分散してなるカルシウム強化食
品を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、発酵セルロ
ースに関して、そのカチオン非含有水溶液はその濃度に
依存して増粘するのに対して、一価、二価又は三価のカ
チオンの存在する溶液中では発酵セルロースの濃度に関
わらず粘性を発現せずサラサラの溶液として調製される
こと、更に驚くことに、該サラサラ状態の溶液が、用時
ミキシングやホモゲナイズ等の処理をすることにより速
やかに粘性を復元することを見出した。
【0011】さらに本発明者らは、かかる発酵セルロー
ス特有の性質が、目的対象物に安定した分散性を簡便に
付与する方法として応用でき、また特にカルシウム強化
食品に有用であることを確認して本発明を完成した。
【0012】すなわち本発明は、以下項1〜5記載の分
散安定性組成物である。
【0013】項1.発酵セルロース及び一価、二価又は
三価のいずれかのカチオンを含む分散安定化組成物。
【0014】項2 カチオンが、アルカリ金属又はアル
カリ土類金属に属するものである項1記載の分散安定化
組成物。
【0015】項3 カチオンが、カルシウム、マグネシ
ウム、バリウム、ナトリウム、カリウム及び鉄からなる
群から選択されるいずれかである項1記載の分散安定化
組成物。
【0016】項4 液状形態を有することを特徴とする
項1乃至3のいずれかに記載の分散安定化組成物。
【0017】項5 一価、二価又は三価のいずれかのカ
チオン含有水溶液中に発酵セルロースを添加配合する
か、または前記カチオン及び発酵セルロースを同時に水
溶液に配合することにより調製される、項4記載の液状
分散安定化組成物。
【0018】また本発明は、次の項6記載の分散安定方
法である。
【0019】項6 項4又は5記載の液状分散安定化組
成物を被験物に配合し、得られる被験組成物を用時攪拌
することを特徴とする分散安定化方法。
【0020】さらに本発明は、次の項7乃至9記載の分
散安定食品である。
【0021】項7 項4又は5記載の液状分散安定化組
成物と食品原料とを混合し、得られる食品組成物を攪拌
する工程を経て調製される分散安定食品。
【0022】項8 上記食品が、カルシウム強化食品、
ココア飲料、抹茶入り飲料、野菜又は果汁入り飲料、豆
乳飲料、ゼリー入り飲料、しるこドリンク、スープ、み
そ汁及び液体調味料からなる群から選択される項7記載
の分散安定食品。
【0023】項9 カルシウムが安定して分散してなる
食品であって、該食品100重量部あたり、発酵セルロ
ースを0.01〜5重量部、カルシウムを0.01〜1
重量部含有することを特徴とするカルシウム強化食品。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の分散安定化組成物は、発
酵セルロース及び一価、二価又は三価のいずれかのカチ
オンを含むことを特徴とするものである。
【0025】本発明で用いられる発酵セルロースは、セ
ルロース生産菌が生産するセルロースであれば特に限定
されない。通常、セルロース生産菌を既知の方法、例え
ば特開昭61−212295号公報、特開平3−157
402号公報、特開平9−121787号公報に記載さ
れる方法に従って培養し、得られる発酵セルロースを所
望に応じて適宜精製することによって製造することがで
きる。
【0026】セルロース生産菌としては、アセトバクタ
ー属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に属
する細菌が挙げられるが、好適にはアセトバクター属で
ある。発酵セルロースを生産するアセトバクター属の細
菌として、より具体的には、アセトバクター・パスツリ
アヌス株(例えば、ATCC10245等)、アセトバ
クター・エスピーDA株(例えば、FERM P−12
924等)、アセトバクター・キシリナム株(例えば、
ATCC23768、ATCC23769、ATCC1
0821、ATCC1306−21等)を挙げることが
できる。好ましくは、アセトバクター・キシリナム株で
ある。
【0027】かかるセルロース生産菌を培養する培地及
び条件としては、特に制限されず、常法に従うことがで
きる。例えば、培地は、基本的に窒素源、炭素源、水、
酸素及びその他の必要な栄養素を含有しており、上記微
生物が増殖して目的の発酵セルロースを産生することが
できるものであればよく、例えばHestrin-Schramm培地
を挙げることができる。なお、セルロースの生産性を向
上させるために、培地中にセルロースの部分分解物、イ
ノシトール、フイチン酸等を添加することもできる(特
開昭56−46759号公報、特開平5−1718号公
報)。培養条件としては、例えばpH5〜9、培養温度
20〜40℃の範囲が採用され、発酵セルロースが十分
産生されるまで培養が続けられる。培養方法は、静置培
養、攪拌培養、通気培養のいずれでもよいが、好適には
通気攪拌培養である。
【0028】発酵セルロースを大量生産するためには、
多段階接種法(関連文献があれば教示ください。)が好
ましい。この場合、通常、2段階の予備接種プロセス、
一次接種発酵プロセス、二次接種発酵プロセス及び最終
発酵プロセスからなる5段階の発酵プロセスが採用さ
れ、各プロセスで増殖された細菌について細胞の形態お
よびグラム陰性であることを確認しながら、次プロセス
の発酵器に継代される。
【0029】発酵後、産生された発酵セルロースは培地
から分離処理され、洗浄されて、適宜精製される。精製
方法は特に制限されないが、通常、培地から回収した発
酵セルロースを洗浄後、脱水し、再度水でスラリー化し
た後に、アルカリ処理によって微生物を除去し、次いで
該アルカリ処理によって生じた溶解物を除去する方法が
用いられる。具体的には、次の方法が例示される。
【0030】まず微生物の培養によって得られる培養物
を脱水し、固形分約20%のケーキとした後、このケー
キを水で再スラリー化して固形分を1から3%にする。
これに水酸化ナトリウムを加えて、pH13程度にして
攪拌しながら数時間、系を65℃に加熱して、微生物を
溶解する。次いで、硫酸でpHを6〜8に調整し、該ス
ラリーを脱水して再度水でスラリー化し、かかる脱水・
スラリー化を数回繰り返す。
【0031】精製された発酵セルロースは、必要に応じ
て乾燥処理を施すことができる。乾燥処理としては特に
制限されることなく、自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、
スプレードライ等の公知の方法を用いることができる。
好ましくはスプレードライ法である。
【0032】かくして得られる発酵セルロースは、白色
から黄褐色の無臭の物質であり、水に急速に分散できる
非常に微細な繊維性粒子からなる。なお、本発明で用い
られる発酵セルロースは、上記方法で調製される発酵セ
ルロースと同一若しくは類似の性質を有し、本発明の目
的を達成しえるものであれば、その調製方法によって限
定されるものではない。
【0033】また、本発明の発酵セルロースは、特開平
9−121787号公報に記載されるように、カルボキ
シメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、キサ
ンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペ
クチン等の高分子物質の一種もしくは二種以上と複合化
していてもよい。
【0034】また、本発明で用いられるカチオンは、一
価、二価または三価のカチオンであれば特に制限される
ものではなく、例えばナトリウム、カリウム等のアルカ
リ金属イオン、マグネシウム、カルシウム、バリウム等
のアルカリ土類金属イオン、鉄等の三価イオン等が例示
される。好ましくはナトリウム又はカリウムといったア
ルカリ金属イオン、マグネシウム又はカルシウムといっ
たアルカリ土類金属イオンであり、より好ましくは、カ
ルシウム、マグネシウム等の二価のカチオンである。
【0035】本発明の組成物は、発酵セルロースと組み
合わせて、上記カチオンを単独で含有していてもよいし
また上記カチオンを二種以上を組み合わせて含有してい
てもよい。
【0036】本発明の組成物に含まれる発酵セルロース
及びカチオンの配合割合は、特に制限されないが、通常
発酵セルロース0.01〜5重量部に対して、カチオン
0.001〜10重量部、好ましくはカチオン0.00
5〜3重量部、より好ましくはカチオン0.01〜1重
量部である。
【0037】本発明の組成物は、上述する発酵セルロー
ス及びカチオンを含有するものであればその形態によっ
て特に制限されるものではなく、粉末、顆粒等の固体状
であっても、水等の溶媒に配合して調製されるような液
状であってもよい。
【0038】その調製方法も特に制限されないが、液状
組成物の場合は、あらかじめ一価、二価又は三価のいず
れかのカチオンを含有する水溶液を調製しておき、その
中に発酵セルロースを添加配合する方法、または前記カ
チオン及び発酵セルロースを同時に水溶液に添加配合す
る方法によって調製することが好ましい。
【0039】使用の態様も特に制限されるものではない
が、粉末、顆粒等の固体状組成物の場合は、水等の溶媒
に添加、配合して液状物として用いられることが好まし
い。
【0040】液状組成物、または固形状組成物を液状物
として調製する場合の、該溶液中に含まれる発酵セルロ
ース及びカチオンの量は、とくに制限されないが、通
常、発酵セルロース量として、0.01〜5重量部、好
ましくは0.03〜2重量部、より好ましくは0.05
〜0.5重量部の範囲を例示することができる。
【0041】本発明の分散安定化組成物は、溶液の状態
にあっては、含有する発酵セルロースの量を増大させて
も増粘せずサラサラの溶液状態を保持しており、該溶液
をそのままもしくは希釈後、用時攪拌処理を施すことに
より発酵セルロースの含有量に依存して粘性を発現する
という特性を有するものである。このため、本発明の組
成物によれば、該組成物の使用量、粘度等に制限される
ことなく、被験物に対して簡便に所望の分散安定性を付
与することができる。
【0042】すなわち、本発明の液状の分散安定化組成
物は、被験物に添加使用する際は、含有する発酵セルロ
ース濃度に関わらず粘性を有しないため取り扱い易く、
被験物に配合後、用時攪拌処理するとその発酵セルロー
スの増粘作用に基づいて、食品を始めとする被験物の粘
度を上昇させて、該被験物中に含まれる不連続相を連続
相に安定に分散させることができるものである。
【0043】よって、本発明は、前述する本発明の液状
分散安定化組成物を被験物に配合し、得られる被験組成
物を用時攪拌処理することを特徴とする、被験組成物の
分散安定化方法を提供する。
【0044】本発明が対象とする被験物としては、液体
の連続相にコロイド粒子、液体粒子若しくは固体粒子等
の不連続相が混在して存在するものであって、該不連続
相が連続相中で安定して分散することが求められるもの
が挙げられる。このようなものであれば特に制限されな
いが、具体的には、毛髪化粧料,洗顔料,化粧料,ロー
ション等の香粧品、染料・顔料組成物、セメント等の工
業組成物、後述するような食品が例示される。
【0045】本発明でいう分散には、一般に液体中にコ
ロイド粒子又は固体粒子が分散した状態をいう懸濁、及
び液体中に液体粒子がコロイド粒子もしくはそれより粗
大な粒子として分散して乳状をなした状態をいう乳濁な
どが広く包含される。
【0046】また、攪拌処理とは、攪拌する手段であれ
ば特に制限されることなく一般に採用される方法が広く
用いられ、例えば、ミキシング(プロペラ攪拌、ミキサ
ーによる高攪拌等)、ホモゲナイズ、コロイドミル等の
処理が挙げられる。好ましくは、約100〜200kg
/cm2のホモゲナイズ圧力の範囲でホモゲナイズする
方法である。攪拌する際の温度は特に制限されず、通常
10〜90℃、好ましくは10〜50℃の温度範囲を採
用することができる。
【0047】本発明の方法において、用いられる液状分
散安定化組成物の組成、発酵セルロース及びカチオンの
含有量、被験物への配合量等は、特に制限されることな
く、被験物の種類、所望される粘度,分散安定性などに
応じて適宜選択・調整することができる。
【0048】発酵セルロースは可食性繊維であることか
ら、上記本発明の方法は、分散安定性が求められる食品
に好適に適用される。かかる観点から、本発明は、前述
の液状分散安定化組成物と食品原料とを混合し、得られ
る食品組成物を攪拌処理する工程を有することを特徴と
する分散安定食品の調製方法、及びかかる方法によて調
製される分散安定食品を提供するものである。
【0049】分散安定食品としては、食品に、含まれる
固体若しくは液体等の不連続相が安定して分散すること
が要求されるものであれば特に制限されず、例えばココ
ア飲料、カルシウム強化食品、抹茶入り食品、野菜・果
物の果汁若しく果肉汁入り食品、豆乳飲料、ゼリー入り
飲料、汁粉ドリンクまたは小豆入り飲料、スープ、味噌
汁、液体調味料等が例示される。
【0050】好ましくは、カルシウム強化食品である。
なお、カルシウム強化食品とは、通常食品100重量部
中、カルシウムを0.09〜3重量部、好ましくは0.
09〜1重量部、より好ましくは0.18〜1重量部含
むものである。
【0051】具体的に、このような食品としては、乳飲
料、ヨーグルト、プリン、ムース、ババロア、ゼリー、
杏仁豆腐、コーヒー、ココア等が例示される。本発明で
用いられる分散安定化組成物は、粘性を比較的低く保っ
たままで高い分散安定性を付与するものであるため、好
ましくは、切れの良いあっさりした食感を要する食品で
ある。
【0052】本発明の分散安定食品は、本発明の液状分
散安定化組成物と食品原料とを混合し、得られる食品組
成物を攪拌処理する工程を経て調製されるものであれ
ば、特に制限されず、例えば分散安定食品がカルシウム
強化コーヒー飲料の場合、コーヒー抽出液、乳原料、カ
ルシウム及び糖類等と共に、本発明の液状分散安定化組
成物を添加調合し、ホモゲナイズ処理(例えば、100
〜200kg/cm2)することにより、カルシウムが
安定して飲料液中に分散してなるコーヒー飲料を調製す
ることができる。
【0053】食品原料に添加配合する分散安定化組成物
の量は、食品の種類、その内容成分、含まれる不連続相
の種類や量等によって種々異なり、一概に規定すること
はできないが、通常、食品組成物100重量部あたり、
発酵セルロース量として0.01〜5重量部、好ましく
は0.03〜2重量部含まれるように配合されるが、具
体的に食品が、例えばカルシウム強化乳飲料である場合
は、100重量部あたり、発酵セルロース量が通常0.
01〜5重量部、好ましくは0.03〜2重量部の範囲
で含まれるように用いられる。
【0054】本発明は、上記方法で調製される分散安定
食品に加えて、分散安定食品100重量部あたり、通常
発酵セルロースを0.01〜5重量部、カルシウムを
0.01〜1重量部、好ましくは発酵セルロースを0.
03〜1重量部、カルシウムを0.01〜0.8重量部
含有するカルシウム強化食品である。なお、当該カルシ
ウム強化食品は、上記組成を有する限りその製法により
制限されるものではない。
【0055】当該カルシウム強化食品によれば、食品中
でカルシウムが沈殿することなく長期にわたって安定し
て分散している。
【0056】なお、本発明の分散安定食品は、上記方法
で調製されるものであれば特に制限されず、上記の成分
の他に、食品の分野で広く用いられている糖類、香料、
中和剤、カラメル、乳化剤、食塩、食用油脂、安定剤、
酸化防止剤、保存料、色素、酸味料などが含まれていて
もよい。
【0057】
【実施例】以下、本発明の内容を以下の実施例及び実験
例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら
限定されるものではない。尚、以下特に言及する場合を
除いて、%は重量%を意味するものとする。
【0058】実施例1 常法により、下記処方からなるカルシウム強化乳飲料を
調製した。
【0059】<処方> 牛乳 50 % 炭酸カルシウム 0.45% 発酵セルロース 表1記載水 適 量 合 計 100 % この中に、それぞれ発酵セルロースを、その含量が0
%、0.05%、0.1%、0.15%となるように配合
して、20℃、1500rpmの条件で10分間、攪拌
処理した。
【0060】このカルシウム強化飲料(発酵セルロース
含量:0%、0.05%、0.1%、0.15%)を1週
間冷蔵庫に放置した場合の、懸濁安定性、色調及び口当
たり(n=20による官能試験)を評価した。結果を表
1に示す。尚、比較データとして、分散安定化剤として
微結晶セルロース製剤(アビセルRC−N30、旭化成
(株)製)を0.3%使用した場合の結果を併記する。
【0061】
【表1】 上記結果から、発酵セルロースを少量用いることによっ
て、不溶性カルシウムの分散安定性を図ることができる
ことが分かった。
【0062】また、発酵セルロースと不溶性カルシウム
を併用することにより、レトルト殺菌時における褐変防
止効果が認められた。
【0063】
【実験例】実験例1 発酵セルロース+Caイオン溶
液の粘度、及び粘度の復元 発酵セルロースをイオン交換水に溶解して、0.5%、
1.0%、1.5%の溶液をそれぞれ調製し、B型粘度計
(東京計器社製)にて該溶液(20℃)の粘度を測定し
た(60rpm)。一方、CaCl2を含有する水溶液
に発酵セルロースを添加して、発酵セルロース0.5%
+CaCl20.0693%、発酵セルロース1.0%+
CaCl20.139%、発酵セルロース1.5%+Ca
Cl20.208%のそれぞれを含有する溶液を調製し
て、同様にそれらの溶液の粘度を測定した。
【0064】結果を図1に示す。図1からわかるよう
に、発酵セルロースを溶解含有する水溶液は、発酵セル
ロースの濃度に比例して溶液の粘度が上昇するのに対し
て、Caイオン存在下で調製した発酵セルロース溶液
は、発酵セルロースの濃度に関係なく粘度を呈さなかっ
た。なお、分散安定化剤としてカラギナンを用いた場
合、0.1%溶液でゲル化してしまい、添加剤として使
用困難であった。
【0065】次いで、上記3種類のCaCl2含有発酵
セルロース溶液をそれぞれ10倍に希釈し、これに炭酸
カルシウムを0.3%添加して該希釈液をホモゲナイザ
ー(150kg/cm2)で攪拌均質化し、上記の方法と同様
にして該攪拌溶液の粘度を測定した。結果を図2に示
す。
【0066】これからわかるように、含有する発酵セル
ロース濃度に比例して粘度を発現し、該溶液を室温で1
0日間放置した後も、炭酸カルシウムは沈殿することな
く良好に分散していた。なお、図2中「無添加」とは、
発酵セルロース及び他の安定剤を含まない炭酸カルシウ
ム分散液(炭酸カルシウムとして0.3%)である。
【0067】また、上記3種類のCaCl2含有発酵セ
ルロース溶液を希釈せず、そのまま攪拌処理した場合、
各溶液はCaCl2を含まない発酵セルロース溶液の粘
度の約半分の粘度を発現し、分散安定性を発揮した。
【0068】実験例2 次の2つの方法を用いて、発酵セルロースに対する各種
カチオンの影響を調べた。
【0069】(1) イオン交換水に0.2%となるように
発酵セルロースを添加し、室温で10分間攪拌(250
0rpm)して溶解膨潤させた後に、各種塩類(カチオ
ン濃度として、0、0.001、0.005、0.01、
0.02、0.05、0.1、1.0%)を添加して更に1
分間攪拌した。
【0070】(2)各種塩類溶解液(カチオン濃度とし
て、0、0.001、0.005、0.01、0.02、
0.05、0.1、1.0%)中に、発酵セルロースを0.
2%となるように添加して、室温で10分間攪拌(25
00rpm)した。
【0071】(1)及び(2)の各方法により攪拌分散後、B
型粘度計にて、20℃で粘度を測定した(60rp
m)。(1)の方法による結果を図3に、(2)の方法による
結果を図4に示す。
【0072】図3に示すように、発酵セルロースを予め
イオン交換水に溶解して膨潤させた後にカチオン類を添
加した場合は、カチオン類の添加による発酵セルロース
溶液の粘度に対する影響はさほど大きくなく、一価カチ
オン及び二価のカチオンともに微量の配合で粘度の減少
が認められたものの、配合量の増加に伴って粘度が上昇
する傾向があった。
【0073】一方、カチオン含有溶液に発酵セルロース
を添加した場合は、図4に示すように、一価カチオン及
び二価のカチオンともに、その配合するカチオンの濃度
の増加に従って急激に溶液の粘度の減少が認められた。
特に二価カチオンにその傾向が強く、カチオン濃度が
0.01%の場合は粘度を殆ど発現しなかった。図5に
NaCl(Naイオン濃度:0.001、0.005、
0.01、0.02、0.05、0.1、1.0%)溶液に
発酵セルロースを配合した場合の分散安定性を観察した
図を、また図6にCaCl2(Caイオン濃度:0.00
1、0.005、0.01、0.02、0.05、0.1、
1.0%)溶液に発酵セルロースを配合した場合の分散
安定性を観察した図を示す。これから、溶液の粘度と分
散安定性とが対応していることが分かる。
【0074】なお、三価のカチオンは、二価のカチオン
と同様の挙動を示した。
【0075】実験例3 攪拌による粘度の発現 Ca2+が0.01%含まれるようにイオン交換水にCa
Cl2を溶解し、該溶液に0.2%となるように発酵セル
ロースを添加して、室温または80℃で10分間攪拌
(2500rpm)し、発酵セルロースを膨潤させた。
次いで、種々のホモゲナイザー圧(kg/cm2)を用
いてホモゲナイザー処理し、粘度発現を観察した。粘度
はB型粘度計にて、60rpm、20℃で測定した。
【0076】結果を図7に示す。なお、比較例(図中、
STDと表示)として、イオン交換水に発酵セルロース
を0.2%となるように溶解して、その溶液の粘度を測
定した。
【0077】図7からわかるように、カルシウムの添加
溶液に単に発酵セルロースを分散させた溶液(ホモゲナ
イザー未処理:図中、ホモゲナイザー圧力0)の粘度
は、殆ど0であったが、ホモゲナイザーで攪拌、均質化
することによって粘性が発現した。またその粘性は、ホ
モゲナイザー圧力の上昇に従って上昇した。
【図面の簡単な説明】
【図1】発酵セルロースとCaイオンの併用による粘度
低下効果を示す実験結果(実験例1)を示す図である。
【図2】CaCl2を含有する発酵セルロース溶液をホ
モゲナイザー(150kg/cm2)で攪拌均質化することに
よって粘度が発現することを示す実験結果(実験例1)
を示す図である。
【図3】発酵セルロース溶液中にカチオンを添加した場
合の粘度発現状況を示す図である(実験例2(1))。
【図4】カチオン含有溶液中に発酵セルロースを添加し
た場合の粘度発現状況を示す図である(実験例2
(2))。
【図5】NaCl溶液に発酵セルロースを配合した場合
の分散安定性をみた図である。なお、分散安定性を明確
に示すため参考写真1を添付する。
【図6】CaCl2溶液に発酵セルロースを配合した場
合の分散安定性をみた図である。なお、分散安定性を明
確に示すため参考写真2を添付する。
【図7】攪拌によって粘度が発現することを示す図であ
る(実験例3)。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】発酵セルロース及び一価、二価又は三価の
    いずれかのカチオンを含む分散安定化組成物。
  2. 【請求項2】カチオンが、アルカリ金属又はアルカリ土
    類金属に属するものである請求項1記載の分散安定化組
    成物。
  3. 【請求項3】カチオンが、カルシウム、マグネシウム、
    バリウム、ナトリウム、カリウム及び鉄からなる群から
    選択されるいずれかである請求項1記載の分散安定化組
    成物。
  4. 【請求項4】液状形態を有することを特徴とする請求項
    1乃至3のいずれかに記載の分散安定化組成物。
  5. 【請求項5】一価、二価又は三価のいずれかのカチオン
    含有水溶液中に発酵セルロースを添加配合するか、また
    は前記カチオン及び発酵セルロースを同時に水溶液に配
    合することにより調製される、請求項4記載の液状分散
    安定化組成物。
  6. 【請求項6】請求項4又は5記載の液状分散安定化組成
    物を被験物に配合し、得られる被験組成物を用時攪拌す
    ることを特徴とする被験組成物の分散安定化方法。
  7. 【請求項7】請求項4又は5記載の液状分散安定化組成
    物と食品原料とを混合し、得られる食品組成物を攪拌す
    る工程を経て調製される分散安定食品。
  8. 【請求項8】上記食品が、カルシウム強化食品、ココア
    飲料、抹茶入り飲料、野菜又は果汁入り飲料、豆乳飲
    料、ゼリー入り飲料、しるこドリンク、スープ、みそ汁
    及び液体調味料からなる群から選択されるいずれかであ
    る請求項7記載の分散安定食品。
  9. 【請求項9】カルシウムが安定して分散してなる食品で
    あって、該食品100重量部あたり、発酵セルロースを
    0.01〜5重量部、カルシウムを0.01〜1重量部
    含有することを特徴とするカルシウム強化食品。
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