JP4212665B2 - 高圧ホース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内面ゴム層と外面ゴム層との間にワイヤ編組からなる補強層を埋設した高圧ホースに関し、更に詳しくは、吊り下げ等により引張荷重を受けながら、或いはリールに巻き取られた状態で使用される場合に好適な高圧ホースに関する。
【0002】
【従来の技術】
トンネル掘削用ホース等として高圧液体を圧送する高圧ホースは、吊り下げ或いはリールへの巻取り等により引張荷重を受けながら使用されるため、高内圧に耐え得ることに加えて引張荷重に対抗するような構造を有することが要求される。従来、このような高圧ホースとして、内面ゴム層と外面ゴム層との間にワイヤ編組からなる2層の補強層を埋設し、内側の補強層の編組角度を理論静止角度である109.5°に近い角度にすると共に、外側の補強層の編組角度を80〜100°にした高圧ホース(実公平1−33904号公報)が提案されている。この高圧ホースでは、内側の補強層が内圧負荷を負担する一方で、外側の補強層が長さ方向の引張荷重を負担するようになっている。
【0003】
しかしながら、上述した高圧ホースは、内外2層の補強層の平均編組角度が94.75°〜104.75°となり理論静止角度109.5°よりも小さいため、内圧負荷時に必ず長さ方向に収縮するという問題があった。また、上記ホースは、引張荷重を受けながら使用される場合、一般のホースよりは伸びが少ないものの、伸びている状態で内圧を負荷されると、その収縮量が更に大きくなってしまう。
【0004】
そして、ホースを繰り返しリールに巻き込んだり、吊るしたりする使用条件において、加圧や減圧を繰り返すたびに長さ方向の伸長や収縮を繰り返すため、吊るした状態ではホースが暴れ、リールに巻き込まれている状態ではリールを締め付けるためリールを破損したり、或いは継手金具部に内圧による断面荷重に加えてホース収縮による引張荷重が加わることよりホースが継手金具から抜けやすいという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、長さ方向の引張荷重に対する抗力が高く、かつ内圧負荷時の長さ方向の変形量を低減することを可能にする高圧ホースを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の高圧ホースは、内面ゴム層と外面ゴム層との間にワイヤ編組からなる2層の補強層を埋設し、これら2層の補強層間に中間ゴム層を介在させた高圧ホースにおいて、前記2層の補強層のうち、内側の補強層の編組角度を118°〜140°にすると共に、外側の補強層の編組角度を80°〜96°にし、これら補強層の編組角度に基づいて内圧負荷時に伸長方向の変形を生じるようにし、無加圧時のホース長さに対する10MPaの内圧を負荷した時のホース長さの変化率が0%〜+0.4%であることを特徴とするものである。
【0007】
このように外側の補強層の編組角度を80°〜96°の範囲で静止角度109.5°より小さくすることにより、長さ方向の引張荷重に対する抗力を高くすることができ、しかも内側の補強層の編組角度を118°〜140°の範囲で静止角度109.5°より大きくすることにより、無加圧で引張荷重を受けた時のホース伸びを小さくすると共に、内圧保持を可能にしながら内圧負荷時の長さ方向の変形量を低減することができる。即ち、内側の補強層の編組角度を理論静止角度である109.5°に対して上記範囲で大きくすると、内圧負荷時に外側の補強層が収縮しようとするのに対して、内側の補強層が伸長しようとして互いに相殺し合うことによって、全体としての内圧負荷時の長さ方向の変形量が極めて少なくなり、しかもホースの長さ方向の加圧変化が伸長方向になる。
【0008】
なお、本発明において、「編組角度」とは、ホースの軸方向を挟んで互いに交差するワイヤコードがなす角度をいう。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態からなる高圧ホースを示すものである。図において、内面ゴム層1と外面ゴム層5との間には、複数本の金属ワイヤを互いに交差するように編組してなる2層の補強層2,4が挿入されており、これら2層の補強層2,4間に中間ゴム層3が介在している。内面ゴム層1、補強層2、中間ゴム層3、補強層4及び外面ゴム層5は積層されて一体的に管状の高圧ホースに成形されている。内側の補強層2は、その編組角度αが118°〜140°の範囲に設定されている。この補強層2は主として内圧負荷を負担するものである。一方、外側の補強層4は、その編組角度βが80°〜96°の範囲に設定されている。この補強層4は主として引張荷重を負担し、ホースの伸長を防止するものである。
【0010】
上述のように構成される高圧ホースは、外面ゴム層5側の補強層4の編組角度βが上記範囲で静止角度より小さくなっているので、長さ方向の引張荷重に対する抗力が高い。
本発明において、内側の補強層2の編組角度αは理論静止角度である109.5°より大きく設定してあるので、内圧負荷時に外側の補強層4が収縮しようとするのに対して、内側の補強層2が伸長しようとしてホース長さ方向の変形を互いに相殺し合うことによって、全体としての内圧負荷時の長さ方向の変形量が極めて少なくなり、しかもホースの長さ方向の加圧変化が伸長方向になる。
【0011】
特に、従来の高圧ホースでは、引張荷重を受けて僅かに伸長した状態で内圧を負荷されると、加圧による長さ方向の収縮量が著しく大きくなるという欠点を有していたが、本発明の高圧ホースでは、たとえ引張荷重を受けて僅かに伸長した状態で内圧を負荷されても、その収縮と伸長が互いに相殺されて長さ方向の変形量が小さくなるように作用する。従って、本発明の高圧ホースは、引張荷重を受けながら高い内圧を負荷されるような使用環境であっても、ホースが暴れたり、或いは継手金具が抜けることを防止することができる。
【0012】
図3は、本発明の高圧ホースにおける内側の補強層の編組角度αと外側の補強層の編組角度βと内圧負荷時の長さ変化率との関係を示すものである。即ち、図3は、編組角度αを112°〜140°の間で変化させると共に、編組角度βを76°〜100°の間で変化させ、これら編組角度α,βを種々組み合わせた高圧ホースに対してそれぞれ10MPaの内圧を負荷し、無加圧時のホース長さに対する加圧時のホース長さの変化率(%)を示すものである。なお、図3において、プラスは加圧時にホースが伸長したことを意味し、マイナスは加圧時にホースが収縮したことを意味する。
【0013】
この図3から明らかなように、編組角度βが80°〜96°の範囲において、編組角度αを114°〜140°とした場合、内圧負荷時の長さ変化率が略0%〜+0.6%と小さくなっているので、この種の高圧ホースとして好ましい変形特性を有している。また、編組角度αを118°〜130°とした場合、長さ変化率が0%〜+0.4%となり、内圧負荷時の変形が伸長方向に転じ、しかも長さ方向の変形量が極めて小さくなる。
【0014】
従って、内側の補強層2の編組角度αは114°〜140°、さらに好ましくは118°〜130°にする。この編組角度αが114°未満であると、内圧負荷時にホースが収縮するようになり、逆に140°より大きくすればするほど内圧保持能力が低下するため好ましくない。一方、外側の補強層4の編組角度βは80°〜96°にする。この編組角度βが96°を超えると、引張荷重に対するホースの伸びが大きくなってしまい、逆に80°未満であると、ホースの曲げ力が大きくなって柔軟性が低下してしまう。
【0015】
なお、本発明の高圧ホースは、内側の補強層2の編組角度αが従来の高圧ホースの内側補強層の編組角度109.5°と比べて118°〜140°と大きくなっているので、リール等に巻き取る際に曲げやすく、しかも引張荷重に対して座屈しにくいという利点もある。従って、本発明の高圧ホースは、土木機械、建設機械、産業機械等で使用されるリール巻取り用、さらに好ましくは吊り下げて使用される掘削用の高圧ホースとして好適である。
【0016】
【実施例】
図1に示す積層構造を有する高圧ホースにおいて、内側の補強層の編組角度αと外側の補強層の編組角度βを種々異ならせた従来ホース1,2及び本発明ホース1〜4をそれぞれ製作した。各ホースについて、内径を12.7mmとし、外径を22.0mmとした。また、内側の補強層には直径0.3mmの鋼線ワイヤを140本使用し、外側の補強層には直径0.25mmの鋼線ワイヤを140本使用した。
【0017】
このようにして得た各高圧ホースに対してそれぞれ10MPaの内圧を負荷し、内圧負荷時のホース長さを測定し、無加圧時のホース長さに対する加圧時の長さ変化率(%)を求めた。また、各高圧ホースに対してそれぞれ981Nの引張荷重をかけた時のホースの伸び変化率(%)、ホースの破裂圧力(MPa)及びホースを最小曲げ半径に曲げたときの曲げ力(N)を測定し、その結果を表1に示した。
【0018】
【表1】
【0019】
この表1から明らかなように、本発明ホース1〜4はいずれも内圧負荷時における長さ変化率が小さくなっており、しかも加圧時の長さ変化率が伸長方向になっているので、この種の高圧ホースとして好ましい変形特性を有していた。一方、従来ホースは加圧時の長さ変化率が−1.8%と大きく、変形が収縮方向に起こっていた。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、内面ゴム層と外面ゴム層との間にワイヤ編組からなる2層の補強層を埋設し、これら2層の補強層間に中間ゴム層を介在させた高圧ホースにおいて、前記2層の補強層のうち、内側の補強層の編組角度を118°〜140°にすると共に、外側の補強層の編組角度を80°〜96°にしたことにより、長さ方向の引張荷重に対する抗力を高くし、かつ内圧負荷時の長さ方向の変形量を低減することができ、しかもホースの長さ方向の加圧変化が伸長方向になる。従って、本発明によれば、掘削用ホース等のように引張荷重を受けながら使用される場合に好適な高圧ホースを構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる高圧ホースを例示する斜視断面図である。
【図2】図1の高圧ホースを一部切り欠いて示す側面図である。
【図3】本発明の高圧ホースにおける内側の補強層の編組角度αと外側の補強層の編組角度βと内圧負荷時の長さ変化率との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 内面ゴム層
2 内側の補強層
3 中間ゴム層
4 外側の補強層
5 外面ゴム層
Claims (1)
- 内面ゴム層と外面ゴム層との間にワイヤ編組からなる2層の補強層を埋設し、これら2層の補強層間に中間ゴム層を介在させた高圧ホースにおいて、前記2層の補強層のうち、内側の補強層の編組角度を118°〜140°にすると共に、外側の補強層の編組角度を80°〜96°にし、これら補強層の編組角度に基づいて内圧負荷時に伸長方向の変形を生じるようにし、無加圧時のホース長さに対する10MPaの内圧を負荷した時のホース長さの変化率が0%〜+0.4%である高圧ホース
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