JP4212258B2 - 集積回路装置及び集積回路装置製造方法 - Google Patents

集積回路装置及び集積回路装置製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は集積回路装置に関し、より詳しく言えば、炭素元素から構成される円筒状の構造体を配線部材材料として用いた、あるいはこの構造体を異なる層に位置する配線を相互に接続するビア材料として用いた集積回路装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
トランジスタの発明から半世紀余りが経過し、そのトランジスタ技術に基礎をおいて開発された半導体集積回路(半導体IC)は格段の進歩を遂げ、集積度のより高い大規模集積回路(LSI)の実現をみるに至った。現在のLSIにあっては、その信頼性の阻害要因として、マイグレーション現象として知られる配線材料の金属原子の移動現象が挙げられる。これは、配線金属材料に加わるストレスや配線中を流れる電子に起因する断線現象で、複雑な構造を採らざるを得ない配線ビア部分などで、特にこの現象が生じることが多い。ストレスに起因して発生するマイグレーションはストレスマイグレーション、配線中を流れる電子に起因するものはエレクトロマイグレーションと呼ばれる。
【0003】
配線金属として以前から用いられてきたアルミニウム(Al)に代わり、最近では銅(Cu)が使われはじめているが、それにより若干の改善は見られるものの、銅を用いた配線のマイグレーション耐性は、たかだか電流密度で1平方センチメートル当たり105アンペア台までと言われている。マイグレーション耐性についてのこの限界値は配線の放熱能力とも密接な関係にあり、放熱が悪く配線周囲の温度が上昇すると限界値が下がることが知られている。
【0004】
一方、半導体ICの高性能化はトランジスタのスケーリング則にのっとってなされてきたが、リソグラフィー技術の限界等の要因により、それにも早晩限界が来る。リソグラフィー技術の限界を打破する方法として、自己組織化を利用した微細構造形成技術がある。現在、自己組織化を用いた量子ドットデバイスや分子デバイスの研究が盛んに行なわれているが、ナノデバイスと総称されるこれらが集積回路コンポーネントとなる時代が訪れるためには、これらのデバイスの配線技術も並行開発されなければならない。さもなければ、集積度はやはり配線技術の限界で決まってしまうことになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の一つの目的は、断線の原因となるマイグレーションに対する耐性に優れたビアを備え、信頼性の向上した集積回路装置を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、リソグラフィー技術の限界を破って微細化した配線構造を備えた集積回路装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
ビアのマイグレーション耐性に優れた本発明による集積回路装置は、半導体基板上に作られた複数の素子と、それらの素子及び当該集積回路装置を機能させるための配線と、異なる層の配線どうしを接続するビアとを含む集積回路装置であって、ビアが炭素元素から構成される円筒状の構造体により形成されていることを特徴とする。
【0007】
リソグラフィー技術の限界を破って微細化した配線構造を備えた本発明による集積回路装置は、半導体基板上に作られた複数の素子と、それらの素子及び当該集積回路装置を機能させるための配線部材とを含む集積回路装置であって、配線部材のうちの少なくとも一部が、炭素元素から構成される円筒状の構造体により形成されていることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、集積回路装置における、ビアを含めた配線材料として、自己組織化によるナノ構造体である、炭素元素から構成される円筒状の構造体を使用する。このような構造体としては、一般にカーボンナノチューブとして知られているものが挙げられる。
【0009】
カーボンナノチューブは、その独特の特性から最近注目を浴びている新しい炭素系材料である。カーボンナノチューブは、炭素原子がsp2という最も強い結合で6員環状に組み上げられたグラファイトシートを筒状に丸めた構造をしていて、チューブの先端は5員環を含むいくつかの6員環で閉じられている。チューブの直径はサブナノメートルのオーダーまで微細化でき、最小で0.4ナノメートルである。この材料の物性は今まさに研究段階にあるが、ダイヤモンド以上の熱伝導率を持つこと、電流密度が1平方センチメートル当たり106アンペアほどであること、ヤング率が高いことなど分かってきている。
【0010】
カーボンナノチューブの形成には、従来はアーク放電やレーザーアブレーションが用いられてきたが、最近の研究でプラズマCVDや熱CVDによっても形成可能との報告がある。アーク放電などによる方法は高純度のナノチューブの生産を可能にする方法ではあるが、集積回路の製造には不向きである一方、CVDによる形成方法は、集積回路の製造への応用の可能性のあるものと言える。
【0011】
ビアのマイグレーション耐性に優れた本発明による集積回路装置では、カーボンナノチューブをビア材料とすることを特徴としている。このカーボンナノチューブは、CVD法により好ましく形成することができる。
【0012】
ビアのマイグレーション耐性に優れた本発明の集積回路装置の一態様を、集積回路装置の一つのビア部分を示す図1により説明する。この図においては、下地層11の上に下層配線層12、絶縁層13、上層配線層14が順次形成されており、下層配線層12と上層配線層14はそれらの間に介在する絶縁層13を貫くビア15により接続されている。このビア15は、複数のカーボンナノチューブの集合体により形成されている。下地層11は、通常絶縁層であり、そしてこの下地層11は半導体基板(図示せず)あるいは別の配線層(図示せず)の上に位置している。下層及び上層配線層12、14は、任意の導電性材料から形成することができ、例えば銅、アルミニウム等の金属材料又はそれらを含む積層金属材料を使用することができる。絶縁層13(層間絶縁膜とも称される)は、現在広く使用されているケイ素系絶縁膜から形成してもよく、あるいはより低誘電率の多孔質材料等の膜から形成してもよい。場合によっては、絶縁層13をなくしてビア側面を露出させた、いわゆる空中配線構造を採用してもよい。
【0013】
図1に示したビアの形成方法の一例を、図2を参照して説明する。図2(a)に示したように、下地層11の上に設けた下層配線層12の上に、形成すべきビアの形状に対応したパターンの開口17を備えた絶縁層13を形成する。ここで、13bはパターン開口17を形成するためのレジストパターンを示す。続いて、図2(b)に示したように、開口17の底に露出した下層配線層12の上面に、触媒18を付着させる。触媒18としては、コバルト、ニッケル、鉄等を用いることができ、そしてこの触媒18の付着は、スパッタリングあるいは蒸着等の手法により行い、その後レジストパターン13bをリフトオフすることにより行うことができる。次に、プラズマCVDあるいは熱CVDにより、触媒18を利用して開口17内にカーボンナノチューブのバンドルからなるビア15(図2(c))を成長させる。プラズマCVDと熱CVDでは成長メカニズムが異なることが知られており、カーボンナノチューブの成長後、触媒18は、プラズマCVDによる成長の場合はナノチューブの先端に残り、熱CVDによる場合はナノチューブの根本に残る(すなわち図2(b)に示した開口17の底部にそのまま残る)。図2(c)に示したビア15は、プラズマCVDで成長させたものに相当している。次いで、図2(d)に示したように、形成したビア15を介して下層配線層12につながる上層配線層14を形成する。下層及び上層配線層12、14の形成と絶縁層13の形成は、周知のいずれの方法により行ってもよい。
【0014】
図2(c)に示した成長したビア15の先端の触媒18は、上層配線層14の形成に先立ち除去してもよく、除去せずにそのまま残してもよい。ビア15の先端の触媒18は、実際には、5員環を含むいくつかの6員環で閉じられた各カーボンナノチューブの内側に位置しており、これを除去する場合には、6員環に比べ結合の弱い5員環の部分を酸素プラズマアッシングなどにより破るといった方法で行うことができる。
【0015】
カーボンナノチューブには、単層構造のものと多層構造のものがあることが知られている。単層構造のナノチューブは、それを構成する円筒が一つのもの(巻回したグラファイトシートが一つであるもの)であり、多層構造のナノチューブは、複数の円筒から構成され、一番外側の円筒から一番内側の円筒まで直径を異にする円筒が順次配列した構造をしている。本発明の集積回路装置のビアで使用するカーボンナノチューブは、単層構造及び多層構造のいずれのものであってもよい。また、一つのビアに単層構造と多層構造の両方のナノチューブが混在する場合と単層構造あるいは多層構造のみからなる場合を含む。
【0016】
更に、本発明の集積回路装置におけるビアは、1本のカーボンナノチューブから形成してもよく、あるいは先に言及したように複数のナノチューブの集合体として形成してもよい。
【0017】
本発明の集積回路装置におけるビアは、金属を内包したフラーレンなどの、全体として金属的性質を示す、ナノチューブとは別のナノ構造体がカーボンナノチューブ内に詰まっている、いわゆるピーポッド構造のナノチューブを用いて形成してもよい。図3に、金属内包フラーレン22を内側に含むカーボンナノチューブ21を模式的に示す。フラーレンは炭素原子の5員環と6員環からなる多面体構造を有するが、図3では簡単のために球状に描かれている。また、フラーレン22に内包されている金属も簡単のために図示していない。
【0018】
このような別のナノ構造体を含むピーポッド構造のナノチューブを用いることにより、ビアの電気伝導特性あるいは機械的強度を増強することが可能になる。例えば、金属内包フラーレンを含むカーボンナノチューブの場合、内包された金属の電荷がフラーレン外側に現れ、更にナノチューブ外側に現れることが、第一原理計算から知られており、それによってビアの電気伝導特性を向上させることができる。
【0019】
金属内包フラーレンのように全体として金属的性質を示す、ナノチューブとは別の構造体もしくは分子あるいは原子は、ナノチューブ内ではなく、一つのビアを構成している隣接ナノチューブ間に存在してもよい。また、内部に金属フラーレンを含む隣接ナノチューブ間に、上記のナノチューブとは別の構造体もしくは分子あるいは原子を配置することも可能である。
【0020】
カーボンナノチューブ内、又は隣接したカーボンナノチューブ間に金属フラーレンを配置する方法としては、カーボンナノチューブを金属フラーレン含有雰囲気にさらす方法を挙げることができる。金属内包フラーレンは、カーボンナノチューブの示す強い吸引力により吸引されて、所定の部位に収まる。ナノチューブ内に配置する場合には、その先端を酸素プラズマアッシング等により開放しておく必要がある。
【0021】
このように、本発明の集積回路装置におけるビアの特徴としては、(1)カーボンナノチューブの構造体としての強度が現在用いられる材料よりも強いことから、ストレスマイグレーション耐性が高いこと、(2)炭素原子どうしの結合が強く、原子の移動が起こりにくいので、エレクトロマイグレーション耐性も高いこと、(3)熱伝導率が現存する材料中最高であるため、ビアを通しての熱放散効率がよく、これもマイグレーション対策に有益であること、(4)高密度の電流が流せること、(5)自己組織的に構造が決まることから、ビア断面積の縮小が可能なこと、などが挙げられる。
【0022】
リソグラフィー技術の限界を破って微細化した配線構造を備えた本発明による集積回路装置では、配線部材が炭素元素から構成される円筒状の構造体により形成されていることを特徴としている。このカーボンナノチューブも、CVD法により好ましく形成することができる。この集積回路装置における「配線部材」は、絶縁層上に形成された配線層の配線と、絶縁層を貫き、その絶縁層の上下の配線どうしをつなぐビアと、集積回路装置の素子どうしをつなぐ配線に接続するコンタクトを包含する。また、この集積回路装置に含まれる配線部材の一部、例えば集積回路装置を外部の回路に接続するための配線などは、カーボンナノチューブ以外の金属等の導電性材料から形成してもよい。
【0023】
図4に、炭素元素から構成される円筒状構造体であるカーボンナノチューブから形成した配線部材を含む集積回路装置を模式的に示す。シリコン基板31にトランジスタ32等の素子が複数作りこまれ、それらを覆って複数の絶縁層(層間絶縁膜)33a〜33fが形成されている。絶縁層を挟んで配線層が位置し、所定の配線層の配線35は絶縁層を貫通して形成されたビア36により別の層の配線35につながれている。37は、素子どうしをつなぐ配線35に接続するコンタクトを表している。この図に示した集積回路装置では、配線35、ビア36、コンタクト37のいずれもカーボンナノチューブで形成されている。一番上の配線層は保護層38で被覆されている。
【0024】
次に、CVD法によるカーボンナノチューブ配線部材の形成を、図5を参照して説明する。先に説明したとおり、プラズマCVDと熱CVDでは成長メカニズムが異なり、カーボンナノチューブの成長に使用する触媒は、成長終了時点で、プラズマCVDでは成長したナノチューブの先端に残り、熱CVDでは成長したナノチューブの根本に残る。図5で説明する事例では、カーボンナノチューブをプラズマCVDにより成長させ、そのゆえ触媒は、成長過程を通じてナノチューブの先端に位置する。但し、図5では、簡略化のため触媒は図示しないことにする。また、カーボンナノチューブは、図5ではやはり簡略化のため円筒ないし円柱状に表されている。
【0025】
図5(a)に示すように、基板41の上面に設けた電極パッド42から上方へ垂直に、プラズマCVDによりカーボンナノチューブ43aを成長させる。そのために必要な触媒金属は、成長前に電極パッド42上の所定の位置に配置しておく。
【0026】
CVD法によるカーボンナノチューブの成長において、カーボンナノチューブを基板面から垂直方向に成長させるためには、同方向の電界の存在するのが重要であることが分かっている。そこで、図5(a)の基板41の面から上方へ垂直にカーボンナノチューブ43aを成長させる際には、同図に示したように垂直方向の電界Ezを印加しておく。
【0027】
次に、触媒金属をカバーする先端部分のナノチューブを酸素プラズマアッシングによって除去して触媒金属を露出させ、そしてその後、図5(b)に示したように水平方向に電界Ex(t)を印加しながら、更にプラズマCVDを続けてカーボンナノチューブ43bを成長させる。図5(a)の工程では垂直上方の一方向への成長であったために印加した電界Exが直流電界であったのに対比して、このときの電界Ex(t)は交流電界とする。その結果、ここで成長するカーボンナノチューブ43bは、酸素プラズマアッシングにより触媒金属を露出させた垂直成長したカーボンナノチューブ43aの先端を基点として水平方向左右に成長する。このとき、交流電界印加前に露出されている触媒金属は、この電界の印加後に2つに分離して、成長するナノチューブの先端とともに左右の2方向に移動してゆく。この例では、交流電界が基板に対して水平にかけられているため、成長したナノチューブの全体形状はT宇型になっているが、成長ナノチューブの持つ形状はT字型のみに限られるものではない。例えば、水平方向以外の印加電界方向、直流電界オフセットの印加などの、適当な制御によって、Y字型や↑型などの、任意の可能な三次元構造が形成できる。また、水平方向の直流電界印加により、逆L字型の構造を形成することもできる。
【0028】
本発明の集積回路装置における配線部材は、1本のカーボンナノチューブから形成してもよく、複数のナノチューブの集合体として形成してもよい。また、カーボンナノチューブは単層構造と多層構造のいずれのものでもよく、配線部材が複数のナノチューブから形成される場合には単層構造のものと多層構造のものが混在してもよいし、おのおの単独のものであってもよい。
【0029】
図5(b)の水平左右方向への成長を続けると、垂直成長した隣り合うナノチューブ43aの先端から互いに接近するように水平方向に成長したナノチューブ43bの先端は、図5(c)に示したように接触する場合もある。この時点で、図5(d)に示したように印加方向を直角に変更した交流電界Ey(t)を印加すると、今度は、先に水平方向に成長したナノチューブ43bと同一平面内においてその成長方向と直角方向のカーボンナノチューブ43cの成長が始まる。
【0030】
上述の垂直及び水平方向の成長工程を適宜繰り返すことにより、立体的に枝分かれした配線構造を容易に形成することができる。図6は、そのようにして電界印加方向を変更しながら基板41上に形成した、立体的に枝分かれした配線構造48を例示している。
【0031】
このように立体的に枝分かれした配線構造は、先に説明したプラズマCVDのみならず、熱CVDによっても形成することができ、あるいはプラズマCVDと熱CVDの組み合わせを利用して形成することもできる。例えば、図6に示した立体的配線構造48は、最初に垂直方向の電界を印加しながらプラズマCVDにより基板41上に垂直方向のカーボンナノチューブ43a’を形成してから、次に熱CVDに切り換え、水平方向の交流電界又は垂直方向の直流電界を印加しながら熱CVDによる成長を継続して得ることができる。この場合、ナノチューブの成長のための金属触媒(図示せず)は、最初のプラズマCVDにより形成したナノチューブ43a’の先端部に残る。
【0032】
上述のとおり、本発明では、マイグレーション耐性の優れたビアの形成にも、リソグラフィー技術の限界を超えて微細化した配線構造の形成にも、プラズマCVDあるいは熱CVDを利用している。これらのCVDの技術は周知であり、特に説明を要するものではないが、一例を挙げれば、プラズマCVDは電界印加及び減圧下に650℃程度でメタン(CH4)ガスと水素(H2)ガスを流しながら行うことができ、熱CVDはやはり電界印加及び減圧下に650℃程度でアセチレン(C22)ガスと水素ガスを流しながら行うことができる。どちらの場合にも、触媒としてコバルト、鉄、ニッケル等の金属を使用する。
【0033】
図5と6には絶縁層が示されていない。このように絶縁層のない配線構造、いわゆる空中配線構造は、層間絶縁膜の低誘電率化の究極的手段として提案されているものである。カーボンナノチューブは機械的強度が極めて高いことから、配線部材としてカーボンナノチューブを用いる本発明の集積回路装置は、配線部材の周囲に絶縁層がなく配線部材が露出されている空中配線構造をとるのに適している。とは言え、配線部材としてカーボンナノチューブを用いる本発明の集積回路装置は、図4に例示したように層間絶縁膜を有することもできる。この層間絶縁膜は、例えば、低誘電率の多孔質材料等の膜から形成することができる。配線部材のうちの一部分が露出され、そのほかの部分が絶縁材料に埋め込まれていても差し支えない。
【0034】
カーボンナノチューブには、金属的な性質を示すための条件を満たすバンド構造を取るものと、半導体的(半金属的)な性質を示すための条件を満たすバンド構造を取るものがある。カーボンナノチューブが金属的性質を示すか半導体的性質を示すかには、カーボンナノチューブのカイラリティ(グラファイトシートの巻き方)が関与している。図7(a)は、金属的性質を示すナノチューブのカイラリティ(アームチェア型と呼ばれる)を示しており、図7(b)は、半導体的性質を示すもの(ジグザグ型と呼ばれる)を示している。図7(c)に示した構造はカイラル型として知られるものであり、この場合には、条件により金属的性質を示すことと半導体的性質を示すことがある。CVD法での成長により得られるカーボンナノチューブのカイラリティは、使用するCVD法、成長条件などに左右される。
【0035】
図8は、最初にプラズマCVDにより成長させた部分51aと次に熱CVDにより成長させた部分51bからなる垂直方向のカーボンナノチューブ51を示している。このナノチューブ51はその物性が縦方向に異なっていて、この物性の違いは、プラズマCVDにより成長させた部分51aと熱CVDにより成長させた部分51bのヘテロ接合構造に由来している。物性の違いの一例として、二つの部分のナノチューブ間のカイラリティの変化による電気伝導度の違いが挙げられる。このほかにも、ナノチューブの径の違い、層数の違いや、ドーピング濃度の違いなども利用できる。図8の例では、最初のプラズマCVDで金属的性質のナノチューブ部分51aを成長後、熱CVDで半導体的性質のナノチューブ部分51bを成長している結果として、整流作用のある金属−半導体接合が形成されている。
【0036】
このような金属−半導体接合構造を配線の途中に組み込むことで、従来信号伝達のための構成要素でしかなかった配線が、アクティブな配線となり、それにより機能性を持った3次元的集積回路装置を実現することが可能になる。言うまでもなく、この金属−半導体接合構造は、ビア部分に設けてもよく、場合によってはコンタクト部分に設けてもよい。
【0037】
本発明をその様々な実施形態とともに付記として列挙すれば、次のとおりである。
(付記1) 半導体基板上に作られた複数の素子を含む集積回路装置であり、それらの素子のほかに、それらの素子及び当該集積回路装置を機能させるための配線と、異なる層の配線どうしを接続するビアとを更に含む集積回路装置であって、当該ビアが炭素元素から構成される円筒状の構造体により形成されていることを特徴とする集積回路装置。
(付記2) 前記ビアが単一の円筒状構造体から形成されている、付記1記載の集積回路装置。
(付記3) 前記ビアが複数の円筒状構造体のバンドルから形成されている、付記1記載の集積回路装置。
(付記4) 前記円筒状の構造体が、単一の円筒で構成された単層構造のものである、付記1から3までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記5) 前記円筒状の構造体が、複数の円筒から構成された多層構造のものである、付記1から3までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記6) 前記ビアに、単層構造と多層構造の両方の円筒状構造体が混在している、付記3記載の集積回路装置。
(付記7) 前記ビアが絶縁層によって取り囲まれており、当該絶縁層が有機ケイ素系材料又は多孔質材料で形成されている、付記1から6までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記8) 前記ビアの側面が露出されている、付記1から6までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記9) 前記ビアのうちの一部のものが、金属的性質の円筒状構造体と半導体的性質の円筒状構造体との接合構造を有する、付記1から8までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記10) 前記円筒状構造体の内部もしくは隣接した円筒状構造体の間、又はその両方に、全体として金属的性質を示す別の構造体が含まれている、付記1から9までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記11) 前記円筒状構造体がカーボンナノチューブである、付記1から10までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記12) 半導体基板上に作られた複数の素子を含む集積回路装置であり、それらの素子のほかに、それらの素子及び当該集積回路装置を機能させるための配線部材を更に含む集積回路装置であって、配線部材のうちの少なくとも一部が、炭素元素から構成される円筒状の構造体により形成されていることを特徴とする集積回路装置。
(付記13) 前記配線部材が単一の円筒状構造体から形成されている、付記12記載の集積回路装置。
(付記14) 前記配線部材が複数の円筒状構造体のバンドルから形成されている、付記12記載の集積回路装置。
(付記15) 前記円筒状の構造体が、単一の円筒で構成された単層構造のものである、付記12から14までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記16) 前記円筒状の構造体が、複数の円筒から構成された多層構造のものである、付記12から14までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記17) 前記配線部材に、単層構造と多層構造の両方の円筒状構造体が混在している、付記14記載の集積回路装置。
(付記18) 前記配線部材が絶縁層によって取り囲まれており、当該絶縁層が多孔質材料で形成されている、付記12から17までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記19) 前記配線部材が露出されている、付記12から17までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記20) 前記配線部材のうちの一部のものが露出され、残りのものが絶縁材料に埋め込まれている、付記12から17までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記21) 前記絶縁材料が多孔質の絶縁材料である、付記20記載の集積回路装置。
(付記22) 前記配線部材のうちの一部のものが、金属的性質の円筒状構造体と半導体的性質の円筒状構造体との接合構造を有する、付記12から21までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記23) 前記円筒状構造体がカーボンナノチューブである、付記12から22までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
(付記24) 半導体基板上に作られた複数の素子を含む集積回路装置であり、それらの素子のほかに、それらの素子及び当該集積回路装置を機能させるための配線部材を更に含み、当該配線部材のうちの少なくとも一部が、炭素元素から構成される円筒状の構造体により形成されている集積回路装置の製造方法であって、当該円筒状の構造体の形成に電界を印加したCVD法を使用し、そして当該円筒状構造体の成長方向を、直流電界を使って一方向に成長するよう又は交流電界を使って相対するに方向に成長するよう制御することを含む、集積回路の製造方法。
(付記25) 前記電界の印加方向を順次切り換えることにより、前記円筒状構造体により形成される配線部材を立体的に枝分かれした構造のものとして成長させる、付記24記載の方法。
(付記26) 前記円筒状構造体の成長過程において、プラズマCVD法から熱CVD法へ、又は熱CVD法からプラズマCVD法への切り換えを行う、付記24又は25記載の方法。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ビアのマイグレーション耐性が向上した高信頼性の集積回路装置の利用が可能になる。
その一方、本発明によれば、ナノデバイスに適した自己組織化によるナノ構造体により形成して空間的に3次元方向に張り巡らされた、リソグラフィー技術の限界を超えて微細化した配線構造を備えた集積回路装置の利用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビアのマイグレーション耐性に優れた本発明の集積回路装置の一態様を説明する図である。
【図2】図1の集積回路装置におけるビアの形成を説明する図である。
【図3】金属内包フラーレンを内側に含むカーボンナノチューブを示す図である。
【図4】カーボンナノチューブから形成した配線部材を含む集積回路装置を説明する図である。
【図5】CVD法によるカーボンナノチューブ配線部材の形成を説明する図である。
【図6】立体的に枝分かれした配線構造を示す図である。
【図7】カーボンナノチューブのカイラリティを説明する図である。
【図8】金属−半導体接合のカーボンナノチューブを説明する図である。
【符号の説明】
11…下地層
12…下層配線層
13…絶縁層
13b…レジスト層
14…上層配線層
15…ビア
18…触媒
21…カーボンナノチューブ
22…金属内包フラーレン
31…シリコン基板
33a〜33f…絶縁層
35…配線
36…ビア
37…コンタクト
41…基板
43a、43a’、43b、43c…カーボンナノチューブ
48…配線構造

Claims (9)

  1. 半導体基板上に作られた複数の素子を含む集積回路装置であり、それらの素子のほかに、それらの素子及び当該集積回路装置を機能させるための配線と、異なる層の配線どうしを接続するビアとを更に含む集積回路装置であって、当該ビアが炭素元素から構成される円筒状の構造体により形成されていることを特徴とする集積回路装置。
  2. 前記ビアの側面が露出されている、請求項1記載の集積回路装置。
  3. 前記ビアのうちの一部のものが、金属的性質の円筒状構造体と半導体的性質の円筒状構造体との接合構造を有する、請求項1又は2記載の集積回路装置。
  4. 前記円筒状構造体の内部もしくは隣接した円筒状構造体の間、又はその両方に、全体として金属的性質を示す別の構造体が含まれている、請求項1から3までのいずれか一つに記載の集積回路装置。
  5. 半導体基板上に作られた複数の素子を含む集積回路装置であり、それらの素子のほかに、それらの素子及び当該集積回路装置を機能させるための配線部材を更に含む集積回路装置であって、配線部材のうちの少なくとも一部が、炭素元素から構成される円筒状の構造体により形成され、前記配線部材の少なくとも一部が、絶縁層によって埋め込まれていることを特徴とする集積回路装置。
  6. 記絶縁層が多孔質材料で形成されている、請求項5記載の集積回路装置。
  7. 前記配線部材のうちの一部のものが露出され、残りのものが絶縁材料に埋め込まれている、請求項5記載の集積回路装置。
  8. 前記配線部材のうちの一部のものが、金属的性質の円筒状構造体と半導体的性質の円筒状構造体との接合構造を有する、請求項5からまでのいずれか一つに記載の集積回路装置。
  9. 半導体基板上に作られた複数の素子を含む集積回路装置であり、それらの素子のほかに、それらの素子及び当該集積回路装置を機能させるための配線部材を更に含み、当該配線部材のうちの少なくとも一部が、炭素元素から構成される円筒状の構造体により形成されている集積回路装置の製造方法であって、当該円筒状の構造体の形成に電界を印加したCVD法を使用し、そして当該円筒状構造体の成長方向を、直流電界を使って1方向に成長するよう又は交流電界を使って相対するに2方向に成長するよう制御することを含む、集積回路の製造方法。
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