JP4210534B2 - 燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体を、金属製セパレータで挟持して構成される燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜(陽イオン交換膜)からなる固体高分子電解質膜の両側に、それぞれアノード側電極およびカソード側電極を対設した電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)を、セパレータによって挟持することにより単位セルとして構成されている。
【0003】
この単位セルにおいて、アノード側電極に供給された燃料ガス、例えば、主に水素を含有するガス(以下、水素含有ガスともいう)は、電極触媒上で水素がイオン化され、電解質膜を介してカソード側電極側へと移動する。その間に生じた電子は外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用される。なお、カソード側電極には、酸化剤ガス、例えば、主に酸素を含有するガスあるいは空気(以下、酸素含有ガスともいう)が供給されているために、このカソード側電極において、水素イオン、電子および酸素が反応して水が生成される。
【0004】
ところで、燃料電池は、通常、数十〜数百の単位セルを積層してスタックを構成している。その際、各単位セル同士を正確に位置決めする必要があり、このため、前記単位セルに形成された位置決め用孔部にノックピンを挿入する作業が行われている。しかしながら、単位セルの積層数が増加するのに伴って、ノックピンの挿入作業が困難なものとなり、作業性が低下するとともに、部材の位置ずれが惹起し易く、シール機能が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、上記の問題を解決するために、特許文献1には、固体高分子電解質型燃料電池が開示されている。具体的には、図8に示すように、燃料電池1は、単位セル2と、この単位セル2を挟んで配置されるセパレータ3a、3bとを備えている。単位セル2は、固体高分子電解質膜2aと、この固体高分子電解質膜2aの一面に設けられるアノード側電極2bと、前記固体高分子電解質膜2aの他面に設けられるカソード側電極2cとにより構成されている。
【0006】
燃料電池1のセパレータ3aには、積層方向に貫通して保持ピン挿入用保持孔4が形成されるとともに、セパレータ3bには、止め輪挿入用保持孔5が形成されている。保持ピン挿入用保持孔4には、保持ピン6が挿入されており、この保持ピン6の止め輪挿入溝6aには、止め輪挿入用保持孔5に配置されている止め輪7が取り付けられる。保持ピン6の先端には、面取り加工が施されたピン先端6bが設けられる一方、前記保持ピン6の後端には、他の保持ピン6のピン先端6bが嵌合される挿入穴6cが形成されている。
【0007】
このような構成において、保持ピン6が燃料電池1の保持ピン挿入用保持孔4に挿入されるとともに、止め輪挿入用保持孔5から止め輪7が挿入される。そして、この止め輪7が、保持ピン6の止め輪挿入溝6aに嵌め込まれることにより、燃料電池1が積層状態で保持される。
【0008】
その際、保持ピン6のピン先端6bは、セパレータ3bの外面よりも突出している。このため、ピン先端6bが、他の燃料電池1を保持している保持ピン6の挿入穴6cに嵌合することにより、互いに隣接する燃料電池1同士の位置決めが行われる、としている。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−12067号公報(段落[0016]、図1)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1では、各単位セル2毎に複数本の保持ピン6を保持ピン挿入用保持孔4に挿入するとともに、この保持ピン6の止め輪挿入溝6aに止め輪7を嵌め込む作業が必要となっている。このため、特に、多数の単位セル2を積層する際に、保持ピン6と止め輪7の組み付け作業が相当に繁雑かつ困難なものとなっており、作業性が低下するという問題が指摘されている。
【0011】
さらに、保持ピン6自体の加工精度とセパレータ3a、3bの加工精度とを高く設定する必要がある。これにより、加工作業が繁雑になるとともに、経済的ではないという問題がある。
【0012】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単かつ安価な構成で、セパレータ同士の位置決めが容易かつ効率的に遂行されるとともに、組み立て作業性に優れる燃料電池を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る燃料電池では、互いに対向する第1および第2金属製セパレータの外周部に、第1および第2シール部材が一体的に設けられるとともに、前記第1および第2シール部材は、互いに嵌合する嵌合部を備えている。この嵌合部は、4以上の凹部と、前記4以上の凹部に嵌合する4以上の凸部とを設け、第1および第2金属製セパレータは、前記凸部が対向する前記凹部の底面にセパレータ面が露出している。このため、凹部の深さ寸法を確保しながら、第1および第2シール部材の厚さが薄肉化される。従って、凸部と凹部とが良好に嵌合して第1および第2金属製セパレータ同士を確実に位置決め保持することが可能になる。
【0014】
そして、第1および第2金属製セパレータを重ね合わせるだけで、4以上の凹部に4以上の凸部が嵌合し、前記第1および第2金属製セパレータ同士が相対的に位置決めされる。これにより、簡単かつ迅速な作業で、第1および第2金属製セパレータを正確に位置決めするとともに、部品点数を大幅に削減することが可能になる。その上、凹部および凸部は、比較的容易に変形し易いため、寸法誤差が発生していても前記凸部と前記凹部とは、互いの形状に倣って良好に嵌合する。このため、凹部および凸部の加工精度を高く設定する必要がなく、経済的である。
【0015】
しかも、第1および第2金属製セパレータ同士は、4以上の凹部と4以上の凸部とにより強固に位置決め支持される。従って、第1および第2金属製セパレータは、車載用燃料電池に組み込まれる際に、積層方向(例えば、車両の進行方向)に交差する横方向から剪断荷重が付与されても、位置ずれを確実に阻止することができる。特に多数の燃料電池が積層される際に、各燃料電池同士間に位置ずれが惹起することがなく、多数の燃料電池を高精度かつ効率的に位置決めすることが可能になり、所望のシール性を確保してスタックを構成することができる。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る燃料電池では、第1および第2金属製セパレータは、少なくとも反応ガスまたは冷却媒体を流すための複数の連通孔を設けるとともに、互いに隣接する前記連通孔の間には、凹部または凸部が配置される。これにより、比較的幅狭で強度の低い連通孔間を確実に保持することが可能になり、前記連通孔間のシール性の低下を阻止することができる。
【0017】
さらに、本発明の請求項3に係る燃料電池では、第1および第2金属製セパレータは、両端側にそれぞれ3つの連通孔が設けられるとともに、前記両端側には、それぞれ3つの前記連通孔同士の間に対応して、それぞれ2つの凹部または凸部が配置される。従って、簡単な構成で、それぞれ3つの連通孔同士を確実にシールすることが可能になる。
【0018】
さらにまた、本発明の請求項4に係る燃料電池では、第1金属製セパレータは、第1シール部材の凹部と凸部とを近接して設けるとともに、第2金属製セパレータは、第2シール部材の凸部と凹部とを近接して設ける。このため、第1および第2金属製セパレータは、それぞれの凹部同士が近接することがなく、第1および第2シール部材は、互いに確実かつ強固に密着して所望のシール性および強度を確保することができる。
【0020】
さらに、本発明の請求項5に係る燃料電池では、少なくとも互いに対向する第1および第2金属製セパレータの外周部に、第1および第2シール部材が一体的に設けられるとともに、前記第1および第2シール部材は、互いに嵌合する嵌合部を備えている。
【0021】
この嵌合部は、少なくとも2以上の凹部と、前記2以上の凹部に嵌合する少なくとも2以上の凸部とを設けている。これにより、簡単かつ迅速な作業で、第1および第2金属製セパレータを正確に位置決めするとともに、部品点数を大幅に削減することが可能になる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池10の要部分解斜視説明図であり、図2は、前記燃料電池10の端部断面説明図である。
【0023】
図1に示すように、燃料電池10は、電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)12が、第1および第2金属製セパレータ14、16に挟持されて構成される。第1および第2金属製セパレータ14、16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板により構成されている。
【0024】
燃料電池10の矢印B方向(図1中、水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔20a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔22b、および燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔24bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0025】
燃料電池10の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔24a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔22a、および酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔20bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0026】
電解質膜・電極構造体12は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸されてなる固体高分子電解質膜26と、前記固体高分子電解質膜26を挟持するアノード側電極28およびカソード側電極30とを備える。アノード側電極28は、カソード側電極30よりも大きな表面積を有している。
【0027】
アノード側電極28およびカソード側電極30は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されてなる電極触媒層とを有する。電極触媒層は、互いに固体高分子電解質膜26を介装して対向するように、前記固体高分子電解質膜26の両面に接合されている。
【0028】
第1金属製セパレータ14のカソード側電極30に対向する面14aには、酸化剤ガス入口連通孔20aと酸化剤ガス出口連通孔20bとに連通し、例えば、矢印B方向に延在する直線状の酸化剤ガス流路32が設けられる。第2金属製セパレータ16のアノード側電極28に対向する面16aには、燃料ガス入口連通孔24aと燃料ガス出口連通孔24bとに連通し、矢印B方向に延在する直線状の燃料ガス流路34が形成される。
【0029】
第1金属製セパレータ14の面14bと第2金属製セパレータ16の面16bとの間には、冷却媒体入口連通孔22aと冷却媒体出口連通孔22bとに連通する冷却媒体流路36が形成される。この冷却媒体流路36は、矢印B方向に直線状に延在する。
【0030】
第1金属製セパレータ14の面14a、14bには、この第1金属製セパレータ14の外周端部を周回して第1シール部材40が、例えば、焼き付け等により一体化される。第1シール部材40は、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコンゴム、フロロシリコンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン、またはアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材を使用する。
【0031】
図1〜図3に示すように、第1金属製セパレータ14の面14aには、この第1金属製セパレータ14の外周端部に近接して第1シール部材40を構成する第1突部46aが一体化される。面14aには、この第1突部46aから内方に所定の距離だけ離間した位置に第1シール部材40を構成する第2突部46bが一体化される。
【0032】
第1および第2突部46a、46bは、先端先細り形状(リップ形状)、台形状または蒲鉾形状等、種々の形状に選択可能である。この第2突部46bは、電解質膜・電極構造体12を構成する固体高分子電解質膜26に直接接触する(図2および図3参照)。
【0033】
図1および図4に示すように、第1および第2突部46a、46bは、酸化剤ガス流路32を囲繞するとともに、前記酸化剤ガス流路32と酸化剤ガス入口連通孔20aおよび酸化剤ガス出口連通孔20bとを連通する。第1金属製セパレータ14の面14aには、燃料ガス入口連通孔24a、冷却媒体入口連通孔22a、冷却媒体出口連通孔22bおよび燃料ガス出口連通孔24bを囲繞してシール部材47が設けられる。
【0034】
図2および図4に示すように、第1金属製セパレータ14の面14bには、この第1金属製セパレータ14の外周端部に近接して第3突部46cが設けられ、この第3突部46cから内方に所定の距離だけ離間して第4突部46dが設けられる。第3および第4突部46c、46dは、上記の第1および第2突部46a、46bと同様の形状を有している。
【0035】
図1、図2および図5に示すように、第2金属製セパレータ16の面16a、16bには、この第2金属製セパレータ16の外周端部を周回して第2シール部材48が一体化される。この第2シール部材48は、上記の第1シール部材40と同一の材料で構成される。第2金属製セパレータ16の面16aには、この第2金属製セパレータ16の外周端部に近接して第2シール部材48を構成する第1平面部54が一体化される。第2金属製セパレータ16の面16bには、第1平面部54よりも長尺な第2平面部56が一体化される。
【0036】
第1平面部54は、第1シール部材40の第1突部46aと密着するとともに、第2平面部56は、第1シール部材40の第3および第4突部46c、46dと密着可能である。
【0037】
第1平面部54は、電解質膜・電極構造体12の外周端部に摺接する位置を周回する一方、第2平面部56は、アノード側電極28に所定の範囲にわたって重合する位置を周回する。図1に示すように、第1平面部54は、燃料ガス入口連通孔24aおよび燃料ガス出口連通孔24bを燃料ガス流路34に連通する。第2平面部56は、図5に示すように、冷却媒体入口連通孔22aおよび冷却媒体出口連通孔22bを冷却媒体流路36に連通する。
【0038】
第1および第2シール部材40、48は、互いに嵌合して第1および第2金属製セパレータ14、16を相対的に位置決めするための嵌合部60を備える。図1に示すように、嵌合部60は、4以上の凹部と4以上の凸部、本実施の形態では、第1シール部材40に設けられる第1凹部62a、第2凹部62b、第1凸部64aおよび第2凸部64bと、第2シール部材48に設けられる第3凹部62c、第4凹部62d、第3凸部64cおよび第4凸部64dとを備える。
【0039】
図4に示すように、第1凹部62aは、酸化剤ガス入口連通孔20aと冷却媒体出口連通孔22bとの間に配置されており、第1凸部64aは、前記冷却媒体出口連通孔22bと燃料ガス出口連通孔24bとの間に配置されている。第2凸部64bは、燃料ガス入口連通孔24aと冷却媒体入口連通孔22aとの間に配置されるとともに、第2凹部62bは、前記冷却媒体入口連通孔22aと酸化剤ガス出口連通孔20bとの間に配置されている。
【0040】
図6に示すように、第1凹部62aは、第1シール部材40の両面に形成されるリング状突部66内に設けられるとともに、この第1凹部62aの底面には、第1金属製セパレータ14の面14a、14bが露呈する。第1凸部64aは、第1シール部材40の両面から突出形成されている。
【0041】
図1および図4に示すように、第2凹部62bおよび第2凸部64bは、第1凹部62aおよび第1凸部64aと同様に構成されており、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0042】
図5に示すように、第3凸部64cは、酸化剤ガス入口連通孔20aと冷却媒体出口連通孔22bとの間に配置されており、第3凹部62cは、前記冷却媒体出口連通孔22bと燃料ガス出口連通孔24bとの間に配置されている。第4凹部62dは、燃料ガス入口連通孔24aと冷却媒体入口連通孔22aとの間に配置されるとともに、第4凸部64dは、前記冷却媒体出口連通孔22bと酸化剤ガス出口連通孔20bとの間に配置されている。
【0043】
図6に示すように、第3凸部64cは、第2シール部材48の両面から突出形成されており、第1シール部材40の第1凹部62aに嵌合自在である。第3凹部62cは、第2シール部材48の両面に形成されるリング状突部68内に設けられるとともに、この第3凹部62cの底面には、第2金属製セパレータ16の面16a、16bが露呈する。第3凹部62cには、第1シール部材40の第1凸部64aが嵌合する。
【0044】
図1および図5に示すように、第4凹部62dには、第1シール部材40の第2凸部64bが挿入されるととともに、第4凸部64dは、第1金属製セパレータ16の第2凹部62bに嵌合自在である。第4凹部62dおよび第4凸部64dは、第3凹部62cおよび第3凸部64cと同様に構成されており、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0045】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0046】
まず、図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔20aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔24aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔22aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0047】
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔20aから第1金属製セパレータ14の酸化剤ガス流路32に導入され、矢印B方向に移動しながら電解質膜・電極構造体12を構成するカソード側電極30に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔24aから第2金属製セパレータ16の燃料ガス流路34に導入され、矢印B方向に移動しながら電解質膜・電極構造体12を構成するアノード側電極28に供給される。
【0048】
従って、電解質膜・電極構造体12では、カソード側電極30に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極28に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0049】
カソード側電極30に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔20bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード側電極28に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔24bに沿って矢印A方向に排出される。
【0050】
また、冷却媒体入口連通孔22aに供給された冷却媒体は、第1および第2金属製セパレータ14、16間の冷却媒体流路36に導入された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体12を冷却した後、冷却媒体出口連通孔22bから排出される。
【0051】
この場合、本実施形態では、第1および第2金属製セパレータ14、16の外周部に第1および第2シール部材40、48が一体的に設けられるとともに、前記第1および第2シール部材40、48は、互いに嵌合する嵌合部60を備えている。この嵌合部60は、第1シール部材40に設けられる第1凹部62a、第1凸部64a、第2凹部64bおよび第2凸部64bと、第2シール部材48に設けられる第3凹部62c、第3凸部64c、第4凹部62dおよび第4凸部64dとを備える。
【0052】
そして、第1および第2金属製セパレータ14、16は、電解質膜・電極構造体12を介装して重ね合わされるだけで、第1凹部62aと第3凸部64c、第1凸部64aと第3凹部62c、第2凹部62bと第4凸部64dおよび第2凸部64dと第4凹部62dとが、それぞれ嵌合し、前記第1および第2金属製セパレータ14、16同士が相対的に位置決め保持される。
【0053】
このように、簡単かつ迅速な作業で、第1および第2金属製セパレータ14、16同士を正確に位置決めするとともに、燃料電池10全体の部品点数を大幅に削減することが可能になるという効果が得られる。しかも、第1〜第4凹部62a〜62dおよび第1〜第4凸部64a〜64dは、第1および第2シール部材40、48に設けられている。
【0054】
第1〜第4凹部62a〜62dおよび第1〜第4凸部64a〜64dは、比較的容易に変形し易く、これらに寸法誤差が発生していても、互いの形状に倣って良好に嵌合する。これにより、第1〜第4凹部62a〜62dおよび第1〜第4凸部64a〜64dは、加工精度を高く設定する必要がなく、経済的であるという利点がある。
【0055】
さらに、第1および第2金属製セパレータ14、16同士は、第1〜第4凹部62a〜62dと、第1〜第4凸部64a〜64dとにより強固に位置決め支持される。従って、燃料電池10が車載用として用いられる際、この燃料電池10の横方向(矢印B方向)から剪断荷重が付与されても、第1および第2金属製セパレータ14、16の位置ずれを確実に阻止することができる。
【0056】
その際、図7に示すように、多数の燃料電池10が、例えば、車両の進行方向に沿って積層される際、隣り合う各燃料電池10同士間では、第1〜第4凹部62a〜62dと第1〜第4凸部64a〜64dが嵌合支持されている。これにより、多数の燃料電池10を高精度かつ強固に位置決めすることが可能になり、所望のシール製を確保して良好なスタックを構成することができる。
【0057】
また、図1、図4および図5に示すように、酸化剤ガス入口連通孔20aと冷却媒体出口連通孔22bとの間に、第1凹部62aと第3凹部64cとが設けられ、前記冷却媒体出口連通孔22bと燃料ガス出口連通孔24bとの間に、第1凸部64aと第3凹部62cが設けられる。一方、燃料ガス入口連通孔24aと冷却媒体出口連通孔22bとの間に、第2凸部64bと第4凹部62dとが設けられ、前記冷却媒体入口連通孔22aと酸化剤ガス出口連通孔20bとの間に、第2凹部62bと第4凸部64dとが設けられている。
【0058】
このため、比較的幅狭で強度の低い連通孔間、すなわち、酸化剤ガス入口連通孔20aと冷却媒体出口連通孔22bとの間、前記冷却媒体出口連通孔22bと燃料ガス出口連通孔24bとの間、燃料ガス入口連通孔24aと冷却媒体入口連通孔22aとの間、および前記冷却媒体入口連通孔22aと酸化剤ガス出口連通孔20bとの間を確実に保持することが可能になり、これらの間のシール性を良好に維持することができるという効果が得られる。
【0059】
さらにまた、第1金属製セパレータ14では、第1および第2凹部62a、62b同士並びに第1および第2凸部64a、64b同士の間隔よりも、前記第1凹部62aと前記第1凸部64aとの間隔、および、前記第2凹部62bと前記第2凸部64bとの間隔が、短尺に設定される。従って、凹部同士や凸部同士が互いに近接して設けられる構成に比べ、第1および第2シール部材40、48は、互いに確実かつ強固に密着して所望のシール性および強度を確保することが可能になる。
【0060】
また、第1〜第4凹部62a〜62dの底面には、第1および第2セパレータ14、16の各面14a、14b、16aおよび16bに露出している。このため、第1〜第4凹部62a〜62dの深さ寸法を確保しながら、第1および第2シール部材40、48の厚さが薄肉化される。これにより、燃料電池10全体の薄肉化を図るとともに、第1および第2金属製セパレータ14、16同士を確実に位置決め保持することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、第1および第2金属製セパレータ14、16を位置決め保持するために、第1〜第4凹部62a〜62dおよび第1〜第4凸部64a〜64dを設けているが、これに限定されるものではない。例えば、2または3の凹部と2または3の凸部とを設けてもよく、あるいは、5以上の凹部と5以上の凸部とを設けてもよい。
【0062】
また、第1〜第4凹部62a〜62dおよび第1〜第4凸部64a〜64dは、第1および第2シール部材40、48に一体的に設けているが、この第1〜第4凹部62a〜62dおよび第1〜第4凸部64a〜64dに対応する部分を他の部分に比べて硬度の高い材質で構成してもよい。
【0063】
さらに、燃料電池10は、2枚のセパレータとして第1および第2金属製セパレータ14、16を備えているが、これに限定されるものではなく、3枚以上のセパレータを備える場合も同様に、各セパレータ間に嵌合部60を設けることができる。
【0064】
【発明の効果】
本発明に係る燃料電池では、第1および第2金属製セパレータは、凸部が対向する凹部の底面にセパレータ面が露出しているため、前記凹部の深さ寸法を確保しながら、前記第1および第2シール部材の厚さが薄肉化される。従って、凸部と凹部とが良好に嵌合して第1および第2金属製セパレータ同士を確実に位置決め保持することが可能になる。さらに、第1および第2金属製セパレータを重ね合わせるだけで、2以上あるいは4以上の凹部に2以上あるいは4以上の凸部が嵌合し、前記第1および第2金属製セパレータ同士が位置決め保持される。これにより、簡単かつ迅速な作業で、第1および第2金属製セパレータを正確に位置決めするとともに、部品点数を大幅に削減することが可能になる。その上、凹部および凸部は、比較的容易に変形し易いため、寸法誤差が発生していても前記凸部と前記凹部とは、互いの形状に倣って良好に嵌合する。このため、凹部および凸部の加工精度を高く設定する必要がなく、経済的である。
【0065】
しかも、第1および第2金属製セパレータ同士は、複数の凹部と複数の凸部とにより強固に位置決め支持される。従って、第1および第2金属製セパレータは、車載用燃料電池に組み込まれる際に、積層方向(例えば、車両の進行方向)に交差する横方向から剪断荷重が付与されても、位置ずれを確実に阻止することができる。特に多数の燃料電池が積層される際に、各燃料電池同士間に位置ずれが惹起することがなく、多数の燃料電池を高精度かつ効率的に位置決めすることが可能になり、所望のシール性を確保してスタックを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の端部断面説明図である。
【図3】前記燃料電池の要部断面斜視図である。
【図4】前記燃料電池を構成する第1金属製セパレータの正面説明図である。
【図5】前記燃料電池を構成する第2金属製セパレータの正面説明図である。
【図6】前記燃料電池の要部断面説明図である。
【図7】前記燃料電池を複数積層した状態を示す要部断面説明図である。
【図8】特許文献1に係る燃料電池の要部分解断面図である。
【符号の説明】
10…燃料電池 12…電解質膜・電極構造体
14、16…金属製セパレータ 20a…酸化剤ガス入口連通孔
20b…酸化剤ガス出口連通孔 22a…冷却媒体入口連通孔
22b…冷却媒体出口連通孔 24a…燃料ガス入口連通孔
24b…燃料ガス出口連通孔 26…固体高分子電解質膜
28…アノード側電極 30…カソード側電極
32…酸化剤ガス流路 34…燃料ガス流路
36…冷却媒体流路 40、48…シール部材
46a〜46d…突部 54、56…平面部
60…嵌合部 62a〜62d…凹部
64a〜64d…凸部
Claims (5)
- 電解質の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体を、金属製セパレータで挟持して構成される燃料電池であって、
少なくとも互いに対向する第1および第2金属製セパレータは、それぞれの外周部に第1および第2シール部材を一体的に設けるとともに、
前記第1および第2シール部材は、互いに嵌合して前記第1および第2金属製セパレータを相対的に位置決めする嵌合部を備え、
前記嵌合部は、4以上の凹部と、
前記4以上の凹部にそれぞれ嵌合する少なくとも4以上の凸部と、
を設け、
前記第1および第2金属製セパレータは、前記凸部が対向する前記凹部の底面にセパレータ面が露出することを特徴とする燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池において、前記第1および第2金属製セパレータは、少なくとも反応ガスまたは冷却媒体を流すための複数の連通孔を設けるとともに、
互いに隣接する前記連通孔の間に、前記凹部または前記凸部が配置されることを特徴とする燃料電池。 - 請求項2記載の燃料電池において、前記第1および第2金属製セパレータは、両端側にそれぞれ少なくとも3つの前記連通孔が設けられるとともに、
前記両端側には、それぞれ3つの前記連通孔同士の間に対応して、それぞれ2つの前記凹部または前記凸部が配置されることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池において、前記第1金属製セパレータは、2以上の前記凹部と2以上の前記凸部とを設けるとともに、
前記凹部と前記凸部が、該凹部同士および該凸部同士の間隔よりも近接して設けられる一方、
前記第2金属製セパレータは、2以上の前記凸部と2以上の前記凹部とを設けるとともに、
前記凸部と前記凹部が、該凸部同士および該凹部同士の間隔よりも近接して設けられることを特徴とする燃料電池。 - 電解質の両側に一対の電極を設けた電解質・電極構造体を、金属製セパレータで挟持して構成される燃料電池であって、
少なくとも互いに対向する第1および第2金属製セパレータは、それぞれの外周部に第1および第2シール部材を一体的に設けるとともに、
前記第1および第2シール部材は、互いに嵌合して前記第1および第2金属製セパレータを相対的に位置決めする嵌合部を備え、
前記嵌合部は、少なくとも2以上の凹部と、
前記2以上の凹部にそれぞれ対応する少なくとも2以上の凸部と、
を有し、
前記凹部および前記凸部は、セパレータ面内で反応ガス流路を挟んで対向する連通孔近傍にそれぞれ設けられ、
前記第1および第2金属製セパレータは、前記凸部が対向する前記凹部の底面にセパレータ面が露出することを特徴とする燃料電池。
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