図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、矢印A方向(例えば、水平方向)に複数積層されることにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用される。
燃料電池10は、電解質膜・電極構造体12をカソードセパレータ(第2のセパレータ)14及びアノードセパレータ(第1のセパレータ)16で挟持する。カソードセパレータ14及びアノードセパレータ16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板や、カーボン部材等で構成されている。
図2に示すように、電解質膜・電極構造体12は、MEA構成部12aを備える。MEA構成部12aは、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜18と、前記固体高分子電解質膜18を挟持するカソード電極20及びアノード電極22とを有する。固体高分子電解質膜18は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質が使用される。
固体高分子電解質膜18、カソード電極20及びアノード電極22は、同一の平面寸法を有する。なお、カソード電極20又はアノード電極22の少なくとも一方は、固体高分子電解質膜18よりも小さな平面寸法を有してもよい。カソード電極20は、固体高分子電解質膜18の一方の面18aに配置されるとともに、アノード電極22は、前記固体高分子電解質膜18の他方の面18bに配置される。
カソード電極20は、固体高分子電解質膜18の面18aに接合される第1電極触媒層20aと、前記第1電極触媒層20aに積層される第1ガス拡散層20bとを有する。第1電極触媒層20aと第1ガス拡散層20bとは、同一の平面寸法に設定される。なお、第1電極触媒層20aは、第1ガス拡散層20bよりも平面寸法が小さくてもよい。
アノード電極22は、固体高分子電解質膜18の面18bに接合される第2電極触媒層22aと、前記第2電極触媒層22aに積層される第2ガス拡散層22bとを有する。第2電極触媒層22aと第2ガス拡散層22bとは、同一の平面寸法に設定される。なお、第2電極触媒層22aは、第2ガス拡散層22bよりも平面寸法が小さくてもよい。
第1ガス拡散層20b及び第2ガス拡散層22bは、カーボンペーパ等からなる。第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aは、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、第1ガス拡散層20b及び第2ガス拡散層22bの表面に一様に塗布されて形成される。
図1及び図2に示すように、電解質膜・電極構造体12は、固体高分子電解質膜18、カソード電極20及びアノード電極22の外周部に接合される樹脂製枠部材24を備える。樹脂製枠部材24は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーンゴム、フッ素ゴム又はEPDM(エチレンプロピレンゴム)等で構成される。
図1に示すように、燃料電池10の矢印B方向(図1中、水平方向)の一端縁部には、積層方向(矢印A方向)に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔26a、冷却媒体入口連通孔28a及び燃料ガス出口連通孔30bが設けられる。酸化剤ガス入口連通孔26aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する一方、冷却媒体入口連通孔28aは、冷却媒体を供給する。燃料ガス出口連通孔30bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。酸化剤ガス入口連通孔26a、冷却媒体入口連通孔28a及び燃料ガス出口連通孔30bは、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
燃料電池10の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給する燃料ガス入口連通孔30a、冷却媒体を排出する冷却媒体出口連通孔28b、及び酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス出口連通孔26bが設けられる。燃料ガス入口連通孔30a、冷却媒体出口連通孔28b及び酸化剤ガス出口連通孔26bは、矢印C方向に配列して設けられる。
図3に示すように、カソードセパレータ14の電解質膜・電極構造体12に向かう面14aには、酸化剤ガス入口連通孔26aと酸化剤ガス出口連通孔26bとに連通する酸化剤ガス流路32が設けられる。酸化剤ガス流路32の入口側には、複数のエンボスを有する入口バッファ部34aが設けられる。酸化剤ガス流路32の出口側には、複数のエンボスを有する出口バッファ部34bが設けられる。
図1及び図4に示すように、アノードセパレータ16の電解質膜・電極構造体12に向かう面16aには、燃料ガス入口連通孔30aと燃料ガス出口連通孔30bとに連通する燃料ガス流路36が形成される。燃料ガス流路36の入口側には、複数のエンボスを有する入口バッファ部38aが設けられる。燃料ガス流路36の出口側には、複数のエンボスを有する出口バッファ部38bが設けられる。
アノードセパレータ16には、燃料ガス入口連通孔30aを入口バッファ部38aに連通する複数の供給孔部40aと、前記燃料ガス流路36を出口バッファ部38bに連通する複数の排出孔部40bとが形成される。カソードセパレータ14の面14bとアノードセパレータ16の面16bとの間には、冷却媒体入口連通孔28aと冷却媒体出口連通孔28bとに連通する冷却媒体流路42が形成される。
図1及び図2に示すように、カソードセパレータ14の面14a、14bには、このカソードセパレータ14の外周端部を周回して、第1シール部材44が一体化される。アノードセパレータ16の面16a、16bには、このアノードセパレータ16の外周端部を周回して、第2シール部材46が一体化される。
第1シール部材44及び第2シール部材46には、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール部材が用いられる。
図1〜図3に示すように、第1シール部材44は、カソードセパレータ14の面14aに一体化される平面シール部44aと、前記カソードセパレータ14の面14bに一体化される平面シール部44bとを有する。平面シール部44a、44bは、面14a、14bに沿って(セパレータ面に沿って)平面状に延在する。
平面シール部44aは、図3に示すように、酸化剤ガス入口連通孔26a、冷却媒体入口連通孔28a、燃料ガス入口連通孔30a、酸化剤ガス出口連通孔26b、冷却媒体出口連通孔28b及び燃料ガス出口連通孔30bを周回して設けられる。図2に示すように、平面シール部44aは、高さ方向(積層方向)の厚さt1を有する。
平面シール部44bは、図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔26a、燃料ガス入口連通孔30a、酸化剤ガス出口連通孔26b及び燃料ガス出口連通孔30bを周回して設けられる。
図1、図2及び図4に示すように、第2シール部材46は、積層方向に沿って電解質膜・電極構造体12の外周縁部、第1の実施形態では、樹脂製枠部材24の外周縁部に重なり合う位置に配置される内側シール部材46aを設ける。内側シール部材46aは、電解質膜・電極構造体12に対向し、アノードセパレータ16の面16aに一体化される第1平面シール部(ベースシール)46afを有する。第1平面シール部46afは、面16aに沿って(セパレータ面に沿って)平面状に延在する。図2に示すように、第1平面シール部46afは、高さ方向(積層方向)の厚さt2を有する。
内側シール部材46aは、第1平面シール部46afから電解質膜・電極構造体12側に膨出形成される第1凸状シール部46atを設ける。第1凸状シール部46atは、樹脂製枠部材24の外周縁部に直接接触するとともに、高さ方向(積層方向)の厚さt3を有する。
第2シール部材46は、電解質膜・電極構造体12の外周端部からセパレータ面方向外方に位置してカソードセパレータ14の平面シール部44aに接する外側シール部材46bを有する。外側シール部材46bは、電解質膜・電極構造体12に対向し、アノードセパレータ16の面16aに一体化される第2平面シール部(ベースシール)46bfを有する。
第2平面シール部46bfは、面16aに沿って(セパレータ面に沿って)平面状に延在するとともに、内側端部は、第1平面シール部46afの外側端部に一体化される。図2に示すように、第2平面シール部46bfは、高さ方向(積層方向)の厚さt4を有する。
外側シール部材46bは、第2平面シール部46bfから第1凸状シール部46atと同一方向に膨出形成される第2凸状シール部46btを設ける。第2凸状シール部46btは、カソードセパレータ14の平面シール部44aに直接接するとともに、高さ方向(積層方向)の厚さt5を有する。
外側シール部材46bは、アノードセパレータ16の面16b(電解質膜・電極構造体12とは反対のセパレータ面)に一体化される第3平面シール部(ベースシール)46bfrを有する。第3平面シール部46bfrは、面16bに沿って(セパレータ面に沿って)平面状に延在するとともに、高さ方向(積層方向)の厚さt6を有する。
図2に示すように、第1凸状シール部46atの厚さt3は、第2凸状シール部46btの厚さt5と同一の寸法に設定される(t3=t5)。第1平面シール部46afの厚さt2は、第2平面シール部46bfの厚さt4よりも小さな寸法に設定される(t2<t4)。
平面シール部44aの厚さt1は、第1平面シール部46afの厚さt2よりも大きな寸法に設定される(t2<t1)。第2平面シール部46bfの厚さt4は、第3平面シール部46bfrの厚さt6(同等)以上に設定される(t6≦t4)。
図4に示すように、第1凸状シール部46atは、燃料ガス流路36、入口バッファ部38a、出口バッファ部38b、供給孔部40a及び排出孔部40bを周回して樹脂製枠部材24の外周縁部に当接する矩形状を有する。第2凸状シール部46btは、冷却媒体入口連通孔28a、燃料ガス入口連通孔30a、冷却媒体出口連通孔28b及び燃料ガス出口連通孔30bを周回してシールする。第2凸状シール部46btは、酸化剤ガス入口連通孔26a及び酸化剤ガス出口連通孔26bを酸化剤ガス流路32に連通するために、内方に開口部を設ける。
図2及び図4に示すように、第1凸状シール部46atと第2凸状シール部46btとの間には、酸化剤ガス入口連通孔26aと酸化剤ガス出口連通孔26bとに連通するカソード排水通路48caが形成される。アノードセパレータ16の面16a、内側シール部材46a及び樹脂製枠部材24の間には、燃料ガス入口連通孔30aと燃料ガス出口連通孔30bとに連通するアノード排水通路48anが形成される。
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔26aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔30aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔28aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔26aからカソードセパレータ14の酸化剤ガス流路32に導入され、矢印B方向に移動してMEA構成部12aのカソード電極20に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔30aから供給孔部40aを通ってアノードセパレータ16の燃料ガス流路36に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路36に沿って矢印B方向に移動し、MEA構成部12aのアノード電極22に供給される。
従って、各MEA構成部12aでは、カソード電極20に供給される酸化剤ガスと、アノード電極22に供給される燃料ガスとが、第1電極触媒層20a内及び第2電極触媒層22a内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
次いで、カソード電極20に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔26bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極22に供給されて消費された燃料ガスは、排出孔部40bを通り、燃料ガス出口連通孔30bに沿って矢印A方向に排出される。
また、冷却媒体入口連通孔28aに供給された冷却媒体は、カソードセパレータ14とアノードセパレータ16との間の冷却媒体流路42に導入された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、MEA構成部12aを冷却した後、冷却媒体出口連通孔28bから排出される。
この場合、第1の実施形態では、図2に示すように、外側シール部材46bを構成する第2平面シール部46bfの厚さt4は、内側シール部材46aを構成する第1平面シール部46afの厚さt2よりも大きな寸法に設定されている(t2<t4)。
このため、内側シール部材46aが接する電解質膜・電極構造体12の外周縁部には、第1の実施形態では、樹脂製枠部材24の外周縁部には、過大な荷重が発生することがない。従って、樹脂製枠部材24が損傷することを可及的に抑制することができる。
しかも、外側シール部材46bは、第2平面シール部46bfが肉厚状に構成されている。これにより、例えば、ゴム成形時に塵埃等が混入しても、第2平面シール部46bfに絶縁破壊が発生することがない。このため、第2平面シール部46bfは、所望のシール性を確実に保持することが可能になるという効果が得られる。
なお、第1の実施形態では、電解質膜・電極構造体12は、MEA構成部12aの外周部に樹脂製枠部材24を固着して構成されているが、これに限定されるものではない。
例えば、樹脂製枠部材24を用いずに、固体高分子電解質膜18の両側にカソード電極20及びアノード電極22を設けた電解質膜・電極構造体を使用してもよい。その際、カソード電極20とアノード電極22との平面寸法を異ならせた、所謂、段差MEAを採用し、平面寸法の大きなガス拡散層に内側シール部材46aが接するように構成してもよい。この場合、内側シール部材46aは、平面寸法の大きなガス拡散層に過大な荷重を発生させることがなく、前記平面寸法の大きなガス拡散層の破損を可及的に抑制することが可能になる。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池60の要部分解斜視説明図である。複数の燃料電池60が矢印A方向に積層されて燃料電池スタック61が構成される(図6参照)。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
燃料電池60は、第1セパレータ62、第1電解質膜・電極構造体(樹脂枠付きMEA)64、第2セパレータ66、第2電解質膜・電極構造体(樹脂枠付きMEA)68及び第3セパレータ70を設ける。第1セパレータ62、第2セパレータ66及び第3セパレータ70は、例えば、金属セパレータ又はカーボンセパレータにより構成される。
燃料電池60の長辺方向(矢印B方向)の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔26a及び燃料ガス出口連通孔30bが設けられる。燃料電池60の長辺方向(矢印B方向)の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガス入口連通孔30a及び酸化剤ガス出口連通孔26bが設けられる。
燃料電池60の短辺方向(矢印C方向)の両端縁部には、酸化剤ガス入口連通孔26a側の一方に、矢印A方向に互いに連通して一対の冷却媒体入口連通孔28aが設けられる。燃料電池60の短辺方向の両端縁部には、燃料ガス入口連通孔30a側の他方に、矢印A方向に互いに連通して一対の冷却媒体出口連通孔28bが設けられる。
図7に示すように、第1セパレータ62の第1電解質膜・電極構造体64に向かう面62aには、酸化剤ガス入口連通孔26aと酸化剤ガス出口連通孔26bとに連通する第1酸化剤ガス流路32aが形成される。
図5に示すように、第1セパレータ62の面62bには、一対の冷却媒体入口連通孔28aと一対の冷却媒体出口連通孔28bとに連通する冷却媒体流路42の一部が形成される。
第2セパレータ66の第1電解質膜・電極構造体64に向かう面66aには、燃料ガス入口連通孔30aと燃料ガス出口連通孔30bとに連通する第1燃料ガス流路36aが形成される。燃料ガス入口連通孔30aの近傍には、前記燃料ガス入口連通孔30aと第1燃料ガス流路36aとを連通する複数の供給流路溝部72aが形成される。複数の供給流路溝部72aは、ブリッジである蓋体74aにより覆われる。燃料ガス出口連通孔30bの近傍には、前記燃料ガス出口連通孔30bと第1燃料ガス流路36aとを連通する複数の排出流路溝部72bが形成される。複数の排出流路溝部72bは、ブリッジである蓋体74bにより覆われる。
図8に示すように、第2セパレータ66の第2電解質膜・電極構造体68に向かう面66bには、酸化剤ガス入口連通孔26aと酸化剤ガス出口連通孔26bとに連通する第2酸化剤ガス流路32bが形成される。
図5に示すように、第3セパレータ70の第2電解質膜・電極構造体68に向かう面70aには、燃料ガス入口連通孔30aと燃料ガス出口連通孔30bとに連通する第2燃料ガス流路36bが形成される。燃料ガス入口連通孔30aの近傍には、前記燃料ガス入口連通孔30aと第2燃料ガス流路36bとを連通する複数の供給流路溝部76aが形成される。複数の供給流路溝部76aは、ブリッジである蓋体78aにより覆われる。燃料ガス出口連通孔30bの近傍には、前記燃料ガス出口連通孔30bと第2燃料ガス流路36bとを連通する複数の排出流路溝部76bが形成される。複数の排出流路溝部76bは、ブリッジである蓋体78bにより覆われる。
図9に示すように、第3セパレータ70の面70bには、第2燃料ガス流路36bの裏面形状である冷却媒体流路42の一部が形成される。第3セパレータ70の面70bには、前記第3セパレータ70に隣接する第1セパレータ62の面62bが積層されることにより、冷却媒体流路42が一体に設けられる。
図6に示すように、第1電解質膜・電極構造体64及び第2電解質膜・電極構造体68は、MEA構成部64a及びMEA構成部68aを備える。MEA構成部64a、68aは、固体高分子電解質膜18と、前記固体高分子電解質膜18を挟持するカソード電極20及びアノード電極22とを有する。カソード電極20は、固体高分子電解質膜18及びアノード電極22よりも小さな平面寸法を有する。
第1電解質膜・電極構造体64は、固体高分子電解質膜18の外周を周回するとともに、アノード電極22及びカソード電極20に接合される第1樹脂製枠部材80を備える。第1樹脂製枠部材80は、樹脂製枠部材24と同一の材料で構成される。
第1樹脂製枠部材80は、カソード電極20の外周側に突出する薄肉状内側膨出部80aが一体に設けられる。内側膨出部80aは、MEA構成部64aに接着剤等により固着される。
図5及び図6に示すように、第2電解質膜・電極構造体68は、固体高分子電解質膜18の外周を周回するとともに、アノード電極22及びカソード電極20に接合される第2樹脂製枠部材82を備える。第2樹脂製枠部材82は、第1樹脂製枠部材80と同様に構成されており、その詳細な説明は省略する。
図5に示すように、第1樹脂製枠部材80のカソード電極20側の面には、酸化剤ガス入口連通孔26aと第1酸化剤ガス流路32aの入口側との間に位置して入口バッファ部84aが設けられる。第1樹脂製枠部材80のカソード電極20側の面には、酸化剤ガス出口連通孔26bと第1酸化剤ガス流路32aの出口側との間に位置して、出口バッファ部84bが設けられる。入口バッファ部84a及び出口バッファ部84bは、複数本のライン状凸部及びエンボス部を有する。以下に説明するバッファ部は、同様に構成される。
第1樹脂製枠部材80のアノード電極22側の面には、燃料ガス入口連通孔30aと第1燃料ガス流路36aとの間に位置して入口バッファ部86aが設けられる。第1樹脂製枠部材80のアノード電極22側の面には、燃料ガス出口連通孔30bと第1燃料ガス流路36aとの間に位置して、出口バッファ部86bが設けられる。
第2電解質膜・電極構造体68に設けられる第2樹脂製枠部材82は、カソード電極20側の面に、酸化剤ガス入口連通孔26aと第2酸化剤ガス流路32bとの間に位置して入口バッファ部88aが設けられる。第2樹脂製枠部材82のカソード電極20側の面には、酸化剤ガス出口連通孔26bと第2酸化剤ガス流路32bとの間に位置して、出口バッファ部88bが形成される。
第2樹脂製枠部材82のアノード電極22側の面には、燃料ガス入口連通孔30aと第2燃料ガス流路36bとの間に位置して入口バッファ部90aが設けられる。第2樹脂製枠部材82のアノード電極22側の面には、燃料ガス出口連通孔30bと第2燃料ガス流路36bとの間に位置して、出口バッファ部90bが設けられる。
第1セパレータ62の面62a、62bには、この第1セパレータ62の外周端縁部を周回して第1シール部材92が一体成形される。第2セパレータ66の面66a、66bには、この第2セパレータ66の外周端縁部を周回して第2シール部材94が一体成形される。第3セパレータ70の面70a、70bには、この第3セパレータ70の外周端縁部を周回して第3シール部材96が一体成形される。
第1シール部材92、第2シール部材94及び第3シール部材96としては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール材が用いられる。
図6及び図7に示すように、第1シール部材92は、第1セパレータ62の面62aに一体化される平面シール部92aと、前記第1セパレータ62の面62bに一体化される平面シール部92bとを有する。平面シール部92aには、積層方向に膨出して第2シール部材94に接する凸状シール部92atが一体成形される。
第2シール部材94は、図6に示すように、第2セパレータ66の面66aに一体化される平面シール部94aと、前記第2セパレータ66の面66bに一体化される平面シール部94bとを有する。平面シール部94aには、積層方向に膨出して第1樹脂製枠部材80に接する凸状シール部94atが一体成形される。平面シール部94bには、積層方向に膨出して第3シール部材96に接する凸状シール部94btが一体成形される。
図5及び図6に示すように、第3シール部材96は、第3セパレータ70の面70aに一体化される第1平面シール部96a1及び第2平面シール部96a2を有する。第1平面シール部96a1は、第2樹脂製枠部材82に対向しており、前記第2樹脂製枠部材82に接する凸状シール部96atが膨出形成される。第2平面シール部96a2は、第1平面シール部96a1よりも肉厚に形成される。
第3シール部材96は、図6及び図9に示すように、第3セパレータ70の面70bに一体成形される内側シール部材98aを設ける。内側シール部材98aは、第1平面シール部96a1に対応する位置で、面70bに一体化される第1平面シール部(ベースシール)98afを有する。第1平面シール部98afは、面70bに沿って(セパレータ面に沿って)平面状に延在する。
内側シール部材98aは、第1平面シール部98afから第2樹脂製枠部材82に接する凸状シール部96atとは反対側に膨出し、第3セパレータ70の面70bに一体化される第1凸状シール部98atを設ける。第1凸状シール部98atは、第1セパレータ62の平面シール部92bに、凸状シール部96atと積層方向に重なり合う位置で接する。
第3シール部材96は、第1電解質膜・電極構造体64及び第2電解質膜・電極構造体68の外周端部からセパレータ面方向外方に位置して外側シール部材98bを有する。外側シール部材98bは、第3セパレータ70の面70bに一体化される第2平面シール部(ベースシール)98bfを有する。
第2平面シール部98bfは、面70bに沿って(セパレータ面に沿って)平面状に延在するとともに、内側端部は、第1平面シール部98afの外側端部に一体化される。外側シール部材98bは、第1シール部材92の凸状シール部92atと積層方向に重なり合う位置に、第2平面シール部98bfから第2凸状シール部98btが膨出形成される。第2凸状シール部98btは、第1セパレータ62の平面シール部92bに、凸状シール部92at、94btと積層方向に重なり合う位置で接する。
図6に示すように、第1凸状シール部98atの厚さt10は、第2凸状シール部98btの厚さt11と同一の寸法に設定される(t10=t11)。第1平面シール部98afの厚さt12は、第2平面シール部98bfの厚さt13よりも小さい寸法に設定される(t12<t13)。
平面シール部92bの厚さt14は、第1平面シール部98afの厚さt12よりも大きな寸法に設定される(t12<t14)。第2平面シール部98bfの厚さt13は、第2平面シール部96a2の厚さt15(同等)以上に設定される(t13≧t15)。
燃料電池60同士が互いに積層されることにより、一方の燃料電池60を構成する第1セパレータ62と、他方の燃料電池60を構成する第3セパレータ70との間には、冷却媒体流路42が形成される。
このように構成される燃料電池60の動作について、以下に説明する。
先ず、図5に示すように、酸化剤ガスは、一部が酸化剤ガス入口連通孔26aから入口バッファ部84aを通って第1セパレータ62の第1酸化剤ガス流路32aに供給される。酸化剤ガスは、他の一部が入口バッファ部88aを通って第2セパレータ66の第2酸化剤ガス流路32bに導入される。
酸化剤ガスは、第1酸化剤ガス流路32a及び第2酸化剤ガス流路32bに沿って矢印B方向(水平方向)に移動し、第1電解質膜・電極構造体64及び第2電解質膜・電極構造体68の各カソード電極20に供給される。
一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔30aから供給流路溝部72a、76aを通って第2セパレータ66の第1燃料ガス流路36a及び第3セパレータ70の第2燃料ガス流路36bに供給される。燃料ガスは、第1燃料ガス流路36a及び第2燃料ガス流路36bに沿って矢印B方向に移動し、第1電解質膜・電極構造体64及び第2電解質膜・電極構造体68の各アノード電極22に供給される。
従って、第1電解質膜・電極構造体64及び第2電解質膜・電極構造体68では、各カソード電極20に供給される酸化剤ガスと、各アノード電極22に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
次いで、第1電解質膜・電極構造体64及び第2電解質膜・電極構造体68の各カソード電極20に供給されて消費された酸化剤ガスは、出口バッファ部84b、88bを通って酸化剤ガス出口連通孔26bに排出される。第1電解質膜・電極構造体64及び第2電解質膜・電極構造体68のアノード電極22に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔30bに排出される。
一方、左右一対の冷却媒体入口連通孔28aに供給された冷却媒体は、冷却媒体流路42に導入される。冷却媒体は、各冷却媒体入口連通孔28aから冷却媒体流路42に供給され、一旦矢印C方向内方に沿って流動した後、矢印B方向に移動して第1電解質膜・電極構造体64及び第2電解質膜・電極構造体68を冷却する。この冷却媒体は、矢印C方向外方に移動した後、一対の冷却媒体出口連通孔28bに排出される。
この場合、第2の実施形態では、図6に示すように、外側シール部材98bを構成する第2平面シール部98bfの厚さt13は、内側シール部材98aを構成する第1平面シール部98afの厚さt12よりも大きな寸法に設定されている(t12<t13)。
このため、内側シール部材98aの裏面側で凸状シール部96atが接する第2電解質膜・電極構造体68の外周縁部には、第2の実施形態では、第2樹脂製枠部材82の外周縁部には、過大な荷重が発生することがない。従って、第2樹脂製枠部材82が損傷することを可及的に抑制することができる。その他、第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池100の要部断面説明図である。燃料電池100は、電解質膜・電極構造体12をカソードセパレータ(第2のセパレータ)102及びアノードセパレータ(第1のセパレータ)104で挟持する。
カソードセパレータ102には、第1シール部材106が一体成形されるとともに、アノードセパレータ104には、第2シール部材108が一体成形される。第1シール部材106は、外側シール部材106aを有する一方、第2シール部材108は、内側シール部材108aを有する。
外側シール部材106aは、電解質膜・電極構造体12に対向し、カソードセパレータ102の面102aに一体化される第2平面シール部(ベースシール)106afを有する。外側シール部材106aは、第2平面シール部106afから電解質膜・電極構造体12側に膨出形成される第2凸状シール部106atを設ける。
外側シール部材106aは、カソードセパレータ102の面102b(電解質膜・電極構造体12とは反対のセパレータ面)に一体化される第3平面シール部(ベースシール)106afrを有する。
内側シール部材108aは、第1平面シール部108afから電解質膜・電極構造体12側に膨出形成される第1凸状シール部108atを設ける。第2シール部材108は、第1平面シール部108afの外周端部に一体成形される平面シール部(ベースシール)108bfを有する。平面シール部108bfには、第2凸状シール部106atが当接する。アノードセパレータ104の面104bには、平面シール部108bfrが一体成形される。
第2平面シール部106afの厚さt21は、第1平面シール部108afの厚さt22よりも大きな寸法に設定される(t21>t22)。平面シール部108bfの厚さt23は、第1平面シール部108afの厚さt22よりも大きな寸法に設定される(t23>t22)。第2凸状シール部106atの厚さt24は、第1凸状シール部108atの厚さt25と同一の寸法に設定される(t24=t25)。第2平面シール部106afの厚さt21は、第3平面シール部106afrの厚さt26(同等)以上に設定される(t26≦t21)。
このように構成される第3の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、第3の実施形態は、上記の第2の実施形態にも適用することが可能である。