JP4209985B2 - ポリオレフィン系微多孔膜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池、特にリチウムイオン二次電池に適したセパレータに関するもので、中でも円筒形電池に適したセパレータの提供に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオカメラ、携帯電話、ノート型パソコン等のポータブル機器の普及に伴い、小型かつ軽量で高容量の二次電池に対する需要が高まっている。炭素系材料を負極に使用したリチウムイオン二次電池は高エネルギー密度を実現できるが、長期に亘って充放電を繰り返すと充放電可能な電気容量が徐々に低下するという問題がある。特に螺旋状に巻き取った円筒形電池では、平板状の積層電池やコイン形電池に比べ電極間インピーダンスの増加による充放電容量の経時低下が著しい。
【0003】
この主な原因として正極と負極との間に発生する応力がある。充放電により電極材料は膨張収縮を繰り返すが螺旋状に巻き取った円筒形電池では電極集電用の金属箔が多層に巻かれているため電極が自由に膨張することが出来ない。電極の膨張による応力すなわち電極間応力の上昇で電極の構造が破壊されてインピーダンスが上昇する恐れがある。これを解決し円筒型電池でのサイクル寿命を向上させる手段として、電極間応力を下げる試みがこれまで検討されてきた。
【0004】
まず電極とセパレータを予め緩めに巻き取る方法が考えられた。しかしながら、この場合、電極とセパレータの捲回張力が殆ど掛からない状態で巻き取ることが難しく、捲回工程での巻きずれやたわみが発生しやすくなり生産上実用的な方法とはいえなかった。また、捲回張力が殆どかからない状態で巻き取ることが可能であっても充放電による電極の膨張収縮が大きい場合には、十分な効果は期待できなかった。
【0005】
次に、セパレータの厚みを厚くすることも試みられた。すなわち、セパレータを厚くすれば電極間応力は、セパレータの厚みが変化することで緩和され、電極構造のダメージも少なく抑えられる。ただし、セパレータを厚くすると外装缶内に充填できる電極体積が小さくなって、電池の定格容量が小さくなってしまう欠点がある。一般に、電池の容量を大きくするために、セパレータはその電気的、力学的特性が許す限り可能な範囲で薄くすることが要求され、通常は、セパレータの厚みは、20〜50μmのものが使用され、これ以上セパレータの厚みを厚くすることは実用上好ましくない。
【0006】
さらに、セパレータの気孔率を上げてセパレータ厚み方向に潰れ易くすることも試みられている。しかし、気孔率を60%以上に上げると膜の突刺強度が著しく低下し、セパレータ亀裂による短絡不良など電池の組立収率を下げる原因となるという欠点がある。もともと、この突刺強度と電池組立時の不良率との間には強い相関があり、高気孔率の膜ほど突刺強度が低下して不良率が増加する傾向にある。例えば、気孔率を60%以上に維持しながら突刺強度を500g以上にすることは困難であった。従って、セパレータの気孔率を上げることで電池のサイクル寿命を伸ばすことは実用上難しかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、電極とセパレータを螺旋状に巻く構造を有する円筒形電池における経時的な充放電容量低下の問題を解決することを課題とするものであり、膜厚を増加することなく電極構造へのダメージを極力抑えサイクル寿命を伸ばすと共に、組立不良率の低減に寄与することを特徴としたセパレータ用ポリオレフィン系微多孔膜を供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、膜物性とサイクル寿命との関係を鋭意検討した結果、隣接する層の変形率が互いに異なるポリオレフィン系微多孔膜の積層構造を有するセパレータが、その高い突刺強度にも係わらず電池のサイクル寿命を長くすることを見出し本発明に至った。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に基づいてさらに詳細に説明する。
セパレータとして膜に要求される力学物性は、電池の種類や電極の形状、電池組立時の捲回条件にも依存するが、その微多孔膜の圧縮変形率は50kg/cm2荷重下で30%以上でなければならない。セパレータの圧縮変形率と電池のサイクル寿命との間には相関があり、使用するセパレータの圧縮変形率が30%より低い場合、電極構造へのダメージが大きく充分なサイクル寿命を達成できない。
【0010】
次いで、膜の突刺強度は、良好な電池組立収率を達成するためには、少なくとも300g以上、好ましくは500g以上でなければならない。
上記のような、圧縮変形率を有し、かつ突刺強度の大きいセパレータを形成するには、セパレータを積層構造にすることが有効である。すなわち、圧縮変形率が相対的に高い膜層と低い膜層を積層し、セパレータ全体としての圧縮変形率が30%以上となる様に各膜層を設定する。この場合1つの膜層は少なくとも変形率が30%以上であることが必要である。このような積層構造を有するセパレータは、圧縮変形率が30%以上にもかかわらず突刺強度500g以上のセパレータを実現し、良好な電池組立収率を達成できる。
【0011】
用いる膜の材質は、長期に亘って充放電を繰り返す場合、その良好な耐電解液性と耐酸化性からポリオレフィン系である必要があり、例えば、高密度ポリエチレンやアイソタクチックポリプロピレン、線状共重合ポリオレフィン、またそれらの混合物が挙げられるが、ポリオレフィンならばこの範囲に限定されることはない。
【0012】
更にセパレータの厚みはその電気的、力学的特性が許す限り可能な範囲で薄くすることができ、通常は、20〜50μmのものが使用され、これ以上セパレータの厚みを厚くするとは実用上好ましくない。
また、セパレータとしての微多孔膜の気孔率は、それが用いられる電池の基本性能が保たれる範囲で有れば特に制限は無いが、電池充放電時に電極間を自由にイオンが移動出来る様に20〜80%の微多孔膜層で形成することが好ましく、さらに好ましくは、30〜70%である。
【0013】
このような積層構造セパレータは、複数の圧縮変形率が異なる均一なポリオレフィン膜層を一般的な手法で積層することにより実現可能である。この場合、積層数2、または3で本特許の目的を達成出来るが、必要に応じて、それ以上の積層数の膜構造を形成してもよい。製法によっては、セパレータ厚み方向に連続的に変形率が異なる膜構造で実現することも可能である。
【0014】
製法を更に具体的に述べると、まず、
(a)ポリオレフィンと可塑剤からなる組成物を溶融混連練し、押し出して冷却固化させシート状に形成する工程、
(b)少なくとも1軸方向に少なくとも1回延伸を行う工程、
(c)可塑剤を抽出する工程、
をこの順に含む一連の工程により、圧縮変形率が小さな膜(以下、膜層Aと称す。)を成膜した後、次にこの膜層Aを用いて、
(d)少なくとも1軸方向に少なくとも1回延伸を行う工程、
で気孔率が高く圧縮変形率が大きな膜(以下、膜層Bと称す。)を成膜し、膜層Aと膜層Bを用いて、
(e)2種類の膜層を膜層B、膜層A、膜層Bの順に張り合わせる積層工程によって、圧縮変形率が30%以上で突刺強度が500g以上であることを特徴とする3層構造のセパレータを成膜する。
【0015】
膜層の積層法としては、単に隣接したポリオレフィン膜層の圧縮変形率が互いに異なっている層膜を重ねて使用することも可能であるし、層膜を重ねた後に加熱固定や加熱ローラーによるプレスをすることも可能である。
上記の製法は、最も一般的な製法であるが、これ以外にも、圧縮変形率が小さな膜層と大きな膜層の両方またはどちらか一方の膜層を上記以外の成膜法で形成することも可能である。
【0016】
【発明実施の形態】
以下、この発明に係る二次電池について実施例を挙げて具体的に説明すると共に、この実施例に係る二次電池が長期に亘って安定して使用できることを比較例を挙げて明らかにする。なお、この発明における二次電池は以下の実施例に示したものに限定されるものではなく、その趣旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0017】
まず、この実施例における、膜性能評価法の概要は次の通りである。
(1)膜厚
ダイヤルゲージ(尾崎製作所製PEACOK No.25)を用いて測定した。
(2)気孔率
20cm角の試料を用意し、その試料体積(cm3)と重量(g)を測定し、得られた結果から次式を用いて気孔率(%)を計算した。
気孔率={1−(重量/樹脂密度)/試料体積}×100
(3)圧縮変形率
JIS K7181に適合する試験器を用い、サンプルを3cm×3cmに切り取り、厚み方向に10枚重ね合わせて直径15mmの圧縮治具に乗せた。次に1mm/分の速度でサンプルを厚み方向に圧縮し、圧縮応力を測定した。圧縮応力が50kg/cm2での膜厚方向の圧縮変形率(%)を求めた。
(4)突刺強度
圧縮試験器(カトーテック製KES−G5)を用いて、先端の曲率半径0.5mmの針を用いて突刺速度2mm/sで突刺試験を行い、最大突刺荷重(g)を突刺強度(g)とした。
(5)サイクル寿命
25℃の条件下で、最大充電電流が600mAであり、充電電圧4.2Vで3時間充電を行ったあと放電電流600mAで放電終止電圧3Vまで放電を行い、これを1サイクルとして充放電を繰り返し、電池容量が初期容量の50%になるサイクル数(回)を求めた。適正な電池のサイクル寿命は、ビデオカメラやノートパソコン等の用途によっても異なるが実用電流で充放電可能な容量が初期容量の60%になるまでのサイクル寿命が少なくとも300回以上、好ましくは500回以上である。
(6)電池組立性
電池の組立工程において正極と負極の間にセパレータを挿入し螺旋状に巻き取った電極群に直流電圧をかけ電流の漏れがないことを確認した。
【0018】
【実施例1】
まず、セパレータの製造法について説明する。重量平均分子量14万の高密度ポリエチレン(密度0.962)および流動パラフィン(37.8℃における動粘度75.9cST)とを重量比4:6の割合で35mm二軸押出機に投入し200℃で溶融混練した。コートハンガーダイを経て表面温度40℃の冷却ロール上に押出キャストすることにより厚み1mmの高分子ゲルシートを得た。得られた高分子ゲルシートを同時2軸延伸機を用いて122℃で7×7倍に抽出前延伸をした。続いて塩化メチレン中に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、ポリエチレン微多孔膜(膜層A)を作製した。
【0019】
さらに、テンター延伸機を用いて膜層Aを115℃で横方向に1.4倍に抽出後延伸し、気孔率の高い微多孔膜(膜層B)を得た。膜層Aおよび膜層Bの膜物性を表1に示した。膜層Aを内層としその両面に膜層Bを張り合わせた3層構造をセパレータとして用いた。
正極を作製するにあたっては、正極材料として、リチウム含有二酸化コバルト(LiCoO2)および導電剤である人工黒鉛とを重量比9:1の割合で混合して正極合剤を得た。そして、結着剤であるポリフッ化ビニリデンをN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す。)に溶解させたNMP溶液と上記の正極合剤とを混練して、正極合剤とポリフッ化ビニリデンとの重量比が95:5になったスラリーを調製し、このスラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の両面に塗布し、これを150℃で2時間真空乾燥させてシート状になった正極を作製した。
【0020】
負極を作製するにあたっては、負極材料として、黒鉛粉末を用い、結着剤であるポリフッ化ビニリデンをNMPに溶解させたNMP溶液と上記の黒鉛粉末とを混練して、黒鉛粉末剤とポリフッ化ビニリデンとの重量比が85:15になったスラリーを調製し、このスラリーを負極集電体である銅箔の両面に塗布し、これを150℃で2時間真空乾燥させてシート状の負極を作製した。
【0021】
上記のようにして作製した正極と負極の間にセパレータを挿入し螺旋状に巻き取って捲回コイルを作製した。電極の非対向部が可能な限り少なくなる様に最外周と最内周の非対向の塗工電極を剥がしリード端子を接続し、捲回コイルを電池容器に収納させた。60℃で24時間真空乾燥後、非水電解液を注入し封口して、直径が17mm、高さが50mmの円筒形電池を作製した。
【0022】
非水電解液の作製するにあたっては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを1:1の体積比で混合させた混合溶媒に、溶質としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1mol/lの割合で溶解させて電解液として用いた。
封口した電池は、電解液が電極とセパレータに充分含浸される様25℃の条件の下で24時間放置し、初充電を最大充電電流600mA、充電電圧4.2Vで5時間行った。この電池をエージングのため充電状態で10日放置後、初期放電容量約600mAhの円筒形リチウムイオン二次電池とした。
【0023】
次に、サイクル寿命測定の条件の下で充放電を繰り返し、使用したセパレータの膜物性とサイクル寿命との関係を調べた。表2に示した様に、圧縮変形率が30%を越え、セパレータの突刺強度が500g以上あるにもかかわらずサイクル寿命は500回以上になった。
【0024】
【実施例2】
膜層Aを用いて横方向延伸倍率を1.5倍として膜層Bよりもさらに気孔率の高い微多孔膜(膜層C)を作製した。膜層Aを内層としその両面に膜層Cを張り合わせた3層構造をセパレータとして用いた。それ以外は、すべて実施例1に準じて電池を作成し、その性能評価を行った。膜層Cの膜物性を表1に、電池の性能評価結果を表2に示す。実施例1同様、セパレータの突刺強度が500g以上あるにもかかわらずサイクル寿命は500回以上になった。
【0025】
【実施例3】
重量平均分子量9万の高密度ポリエチレン(密度0.967)を35mm二軸押出機に投入し140℃で溶融押出した。出口のスリット幅が400μmのコートハンガーダイから押出し、風で冷却しながら縦方向に延伸し厚さ6μmの高分子シートを製作した。得られた高分子シートを115℃で30分間熱処理し、室温で縦方向に冷延伸後、表面温度122℃の多段ロールで縦方向に順次7倍まで熱延伸してポリエチレン微多孔膜(膜層D)を作製した。膜層Aを内層としその両面に膜層Dを張り合わせた3層構造をセパレータとして用いた。それ以外は、すべて実施例1に準じて電池作成し、その性能評価を行った。膜層Dの膜物性を表1に、電池の性能評価結果を表2に示す。圧縮変形率が更に大きくなり、セパレータの突刺強度は500g以上あるにもかかわらずサイクル寿命は700回以上に達した。
【0026】
【比較例1】
高分子ゲルの厚みを調製して単一の膜層をセパレータとして用いた。それ以外は、実施例1に準じて電池作成し、その性能評価を行った。結果を表2に示す。圧縮変形率が低く、突刺強度は500g以上であったが、サイクル寿命は300回未満で実用電池に用いるには不向きなセパレータであった。
【0027】
【比較例2】
比較例1よりも気孔率の高い単一層からなるセパレータを用いた以外は、すべて比較例1に準じて電池作成し、その性能評価を行った。結果を表2に示す。セパレータの圧縮変形率は30%以上と高く、サイクル寿命も500回以上に達した。しかし、突刺強度が300g未満で低く、電池の組立工程において正極と負極の間で絶縁不良が多発し、実用電池に用いるには不向きなセパレータであった。
【0028】
【比較例3】
比較例2よりもさらに気孔率の高い単一層からなるセパレータを用いた以外は、すべて比較例1に準じて電池作成、及びその性能評価を行った。結果を表2に示す。セパレータの圧縮変形率は30%以上と高く、サイクル寿命も700回以上に達し良好であったが、突刺強度が300g未満と低く実用電池に用いるには不向きなセパレータであった。
【0029】
【表1】
Figure 0004209985
【0030】
【表2】
Figure 0004209985
【0031】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン系微多孔膜をセパレータとして用いることで、リチウムイオン二次電池、特に螺旋状に巻き取った円筒形電池において、セパレータ膜厚の増加や突刺強度低下を起こさず、電池組立作業を容易にし、組立不良率の低減に寄与すると共に、電極構造へのダメージを極力抑え電池のサイクル寿命を伸ばす、すなわち、長期に亘って充放電を繰り返しても電極間インピーダンスの増加による充放電気容量の低下が起こりにくい、実用可能な電池を供することが出来る。

Claims (3)

  1. 50kg/cm2の荷重を加えた時の圧縮変形率が30%以上で突刺強度が500g以上であることを特徴とする電池セパレータ用ポリオレフィン系微多孔膜。
  2. 少なくとも2つ以上のポリオレフィン膜層からなる積層構造を有し、隣接したポリオレフィン膜層の圧縮変形率が互いに異なっている、請求項1に記載の電池セパレータ用ポリオレフィン系微多孔膜。
  3. 請求項1または2に記載のポリオレフィン系微多孔膜をセパレータとして用いたリチウムイオン二次電池。
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