JP4200416B2 - アクリル物品またはポリアミド物品とその加工・製造方法 - Google Patents
アクリル物品またはポリアミド物品とその加工・製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セリシン・フィブロイン付着アクリル物品またはポリアミド物品とその加工・製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、従来より繊維製品として汎用的に用いられているアクリル糸、アクリル系繊維糸、アクリルフィルム、アクリル成型品あるいはこれらのアクリルを主成分とする繊維製品や繊維集合体、不織布、紙、さらに、ナイロン糸、ナイロンフィルム、ナイロン成型品、絹糸、羊毛糸、獣毛繊維あるいはこれらのポリアミドを主成分とする繊維製品や繊維集合体、不織布などに、蚕糸業や製糸工場の副産物から得られる絹セリシンや絹フィブロインという絹タンパク成分を付着させることで、肌触りの向上や吸水性・吸湿性の向上、新たな染色性などの優れた性質を付与することのできる、セリシン・フィブロイン付着アクリル物品またはポリアミド物品とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
繊維製品の高付加価値加工として、抗菌性、イージーケア性、防縮性、吸湿性、紫外線遮断性、皮膚への刺激低減など種々の加工が知られている。また、近年は、人間の健康志向、環境への負荷を低減すること、未利用天然物の有効利用などの立場から、天然タンパク質を用いた繊維の加工が行われ、シルクプロテイン被覆繊維やシルクプロテインと合成繊維とで紡糸した糸などが商品化されている。天然繊維として古くから用いられてきた絹は、生糸の芯であるフィブロインとこの周りを覆うセリシンとで構成されており、絹フィブロインは衣料素材として用いられている。また、セリシンは精練工程を経ることによって取り除かれ、廃棄物として処理されてきている。生糸の場合、セリシンとフィブロインとの重量比は、25〜30:75〜70である。ただ、廃棄物として処理されているセリシンにはセリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジンなど親水性に富むアミノ酸残基が全体の50%以上であることから、その有効利用が求められており、これまでにも、例えば特許出願公開特許公報「セリシンの分離回収法(特開平11−131318)」にあるような回収法や、回収したセリシンを繊維の加工剤として用いる方法「吸収性物品(特開平9−322911)」、「繊維質肌当て用品(特開平10−1872)」等が提案されている。
【0003】
回収されたセリシンは凍結乾燥法で粉末とされることが多いが、現在の繊維加工業では、処理方法が簡便なことや従来からの装置を用いることを理由として、水溶液系での加工方法が一般的である。絹タンパク質を繊維加工剤として利用する場合も、浸染法、スプレー法など加工方法は種々あるものの、セリシン水溶液として加工に供されており、セリシン粉末を再度水溶液として用いている。
【0004】
一方、絹フィブロインはアラニンやグリシン、セリンを主成分としたタンパク質で、絹糸ではβ構造をとっている。このような絹フィブロインについても、その利用分野の拡大についての検討が進められてきており、例えば、坪内らの研究(特開平8−198970号公報、特開2001−48989号広報)では、このフィブロインをアルカリ処理し、次いで力学的な粉砕を行うことによって結晶構造を残した微粉末を得、この微粉末をボールペンの軸や、腕時計の裏に塗布することが行われている。
【0005】
また、力学的な粉砕を行わずにフィブロインを溶解・粉末化する方法としては、平林らによるアルカリ加水分解、中和、脱塩、乾燥法が良く知られている(日本蚕糸学会誌,63,21−27,1994)。さらには、「シルクパウダーの製造方法(特開平6−70702)」のように、中性無機塩と強酸とを添加した水溶液中で、85〜150℃の温度で処理することによって、フィブロインの溶解を行い、脱塩後乾燥させて粉末を得る例もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、絹セリシンや絹フィブロインについての有効利用や利用分野の拡大が検討されているものの、従来においてはいくつかの課題が残されていた。例えばセリシンの場合にはこれを回収する原料としてはほとんどが生糸や絹布であって、農家等での蚕糸業の副産物としての毛羽や工場での毛羽等に着目し、これを積極的に利用しようとする試みや技術的検討はなされていない。農家毛羽や工場毛羽はセリシン含量が約40%と非常に高いものの蚕糸業ではそれら毛羽は廃棄されているのが現状である。そこで、セリシンおよびフィブロリンを含む絹タンパク質を有効活用することができれば、経済的効果は大きいと考えられる。。
【0007】
さらに、フィブロインなどの他の絹タンパク質についてもセリシンと同様のことが言える。。
【0008】
しかしながら、従来では、以上のような絹タンパク質(セリシン、フィブロインなど)の利用についての提案や開発技術については知られていないる。
【0009】
そこで、本発明は、上記の点に鑑みて農家毛羽や工場毛羽などの蚕糸業や製糸業の副産物から得られた絹タンパク質を利用して汎用物品の機能の高度化しうる簡便な加工処理方法を提供することを課題とする。具体的には、汎用素材としてのアクリル物品またはポリアミド物品に対して、表面加工剤として絹タンパク質を用いることにより、例えばセリシンが示す柔軟性や親水性、フィブロインが示すサラサラ感などの風合いなど、優れた機能性を付与する方法、およびその方法を利用した物品を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のアクリル物品またはポリアミド物品の加工・製造方法は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
<1>蚕糸業における副産物の毛羽を抽出して得られる絹セリシンおよび絹フイブロインの水溶液を、90℃〜140℃の温度範囲で30分〜2時間の範囲でアクリル物品またはポリアミド物品に接触処理し、次いで、流水中で洗浄した後に風乾することで、該物品の表面に絹セリシンおよび絹フイブロインを付着させる。
<2>絹セリシンの分子量が10,000〜200,000の範囲であって、かつ、絹フイブロインの分子量が5,000〜30,000の範囲である。
<3>絹セリシンは、浴比1:5〜1:100、温度100℃以上で毛羽より水溶液として抽出されたものである。
<4>絹フイブロインは、浴比1:5〜1:100、温度140℃以上で、セリシン抽出残渣より水溶液として抽出されたものである。
<5>染色仕上げ加工工程に付随して、またはその一部として絹セリシンおよび絹フイブロインを付着させる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は上記のとおりの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0013】
本発明の実施の形態としては、例えば以下のように例示することができる。
【0014】
アクリル物品としては、アクリル糸、アクリル系繊維糸、アクリルフィルム、アクリル成型品が使用でき、アクリルを主成分とする繊維製品や繊維集合体、不織布、紙も含まれる。いっぽう、ポリアミド物品としては、ナイロン糸、ナイロンフィルム、ナイロン成型品、絹糸、羊毛糸、獣毛繊維が使用でき、ポリアミドを主成分とする繊維製品や繊維集合体、不織布も含まれる。
【0015】
絹セリシンおよび絹フィブロイン(絹タンパク質)は絹を含む原料からセリシンおよび/またはフィブロインを抽出して絹タンパク質の水溶液を作成することができる。セリシンおよび/またはフィブロインを含む水溶液中で、アクリル物品またはポリアミド物品と例えば90〜130℃で30分〜1時間処理することによって、それらに絹タンパク質の付着処理を行うことができる。
【0016】
絹タンパク質は農家毛羽や工場毛羽、キャリア(繭から糸が正常に解除され、さらに、順調に繰糸されるようにするために巻き取られた繭外周部の絹糸)、および、きびそ(絹の糸口を見つけるため取り除かれる繭の最外層部フィラメントを集めた絹糸)などの蚕糸業で副産物であり廃棄されているような絹原料からも抽出できる。毛羽の夾雑物を取り除くため、あるいは絹フィラメントの方向を揃えるために、毛羽をカード機あるいは同じ機能を備える装置で開繊することが好ましい。この操作によって、夾雑物を取り除き、さらには、セリシンやフィブロインの抽出効率を増すことができる。
【0017】
開繊された毛羽を、チーズ染色機、ロータリー染色機、オーバーマイヤー染色機などのような染色機や圧力釜・圧力鍋などのような圧力容器に入れ、例えば浴比(毛羽:水)を1:5〜1:100、好ましくは1:10〜20で、130℃、1〜2時間抽出操作を行う。この操作で、毛羽重量の40%相当のセリシンが抽出され、セリシン水溶液を得ることができる。
【0018】
セリシン水溶液を取り除き、次いで同じ圧力容器中で、同様の浴比条件、例えば140℃〜180℃、望ましくは140〜160℃で2時間抽出操作を行う。この操作で、フィブロイン重量の20%に相当するフィブロインが抽出されフィブロイン水溶液として得ることができる。
【0019】
前記のセリシン水溶液およびフィブロイン水溶液をそれぞれ単独、あるいは適当な割合で混合した水溶液をチーズ染色機あるいはオーバーマイヤー染色機などに入れ、アクリル物品またはポリアミド物品とともに、例えば90〜140℃、好ましくは95〜120℃で30分処理し、絹タンパク質をそれら物品の表面に付着処理させることができる。
【0020】
上記処理を経たアクリル物品およびポリアミド物品は通常の染色方法で染色する。また、前記の絹タンパク質付着処理以前に染色処理を施すこともできる。
【0021】
本発明で利用されるアクリル物品およびポリアミド物品は、仮撚り加工などの糸に対する加工を施されていてもよい。アクリル物品またはポリアミド物品の一態様として不織布、紙、繊維集合体に合成樹脂製のバインダー等が用いられている場合においては、絹タンパク質の水溶液中で、アクリル物品またはポリアミド物品とこの水溶液を接触させて、前記の絹タンパク質付着処理をを施すことができる。
【0022】
本発明のアクリル物品またはポリアミド物品は特殊な前処理を行わずに前記の絹タンパク質付着処理に供することができる。
【0023】
本発明の絹タンパク質付着処理において、温度は、好ましくは90〜140℃であり、加工時間は好ましくは30分〜2時間である。加工温度の上昇および加工時間の増加に伴って、絹タンパク質の分子量が低下することから、より好ましくは95〜120℃で30分間処理する。この付着加工処理はバッチ式で行ってもよいが、好ましくは染色加工機のように処理水溶液が循環する機構を持つような機械装置で行う。
【0024】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例で行った評価方法は次の通りである。
【0025】
タンパク質繊維を染色する酸性染料(Kayanol Milling Blue GW、(株)日本化薬製)を用いて、セリシン及びフィブロイン加工を行ったアクリルについて染色試験を行った(染色試験)。未加工試料では酸性染料の染着座席が無いため汚染となるが、タンパク成分が導入された試料では染色される。また、ポリアミドについては、繊維鑑別用インディケーター染料であるカヤステインQ((株)日本化薬製)を用いて染色を行った。
【0026】
親水性の変化を評価するために、JIS L1907 繊維製品の吸水試験方法、滴下法を参考に拡散時間を測定した。
【0027】
未加工試料と加工試料との表面観察を、日本電子(株)走査型電子顕微鏡T−20を用いて行った(SEM観察)。
【0028】
未加工試料と加工試料の蛍光顕微鏡観察を、(株)オリンパス製蛍光顕微鏡BX−51を用いて行った。
【0029】
未加工試料と加工試料との赤外分光分析を、Nicolet 製 MAGNA 560を用いて行った。タンパク質が付与されると、アミドIなどの特徴ある吸収スペクトルが観察される。
【0030】
手触りを感覚で評価した。
【0031】
未加工布と加工布の接触冷温感qmaxをカト−テック(株)精密迅速熱物性試験機を用いて測定した。この値が大きいほど、”冷”と感じる。
【0032】
未加工布と加工布の動摩擦係数を、カトーテック(株)風合い試験機表面特性試験機を用いて測定した。
<実施例1>
工場毛羽(群馬県碓氷郡松井田町の製糸工場から入手)をカード機で開繊して繊維軸を揃えると伴に、毛羽に含まれる夾雑物を取り除いた。この工場毛羽をテクサム技研(株)回転ポット染色試験機用ポットの中に入れ、浴比を1:20となるように水を加え、130℃で2時間抽出を行った。得られたセリシン水溶液の濃度は2%であった。
【0033】
次いで、セリシン抽出残渣を浴比1:30として160℃で4時間抽出してフィブロイン水溶液を得た。濃度は0.8%であった。
【0034】
染色堅ろう度試験用添付白布のナイロン布を、セリシンとフィブロインをそれぞれ0.5%含む水溶液中で、浴比を1:20として、95℃で1時間処理した。その後、40℃の流水中で洗浄を15分間行い、風乾した。重量増加率としての付加率は、絹タンパク質付着処理前後の乾燥重量変化から求めた。
【0035】
この試料について、付加率、染色試験、吸水速度、SEM観察、手触り、蛍光顕微鏡観察、qmaxの結果を表1にまとめる。また、SEM観察写真を図1に示す。
【0036】
【表1】
付加率は、加工を施すことによって0.12%となった。
【0037】
ナイロンはアミド結合を持つため、絹の染料で染色可能であるが、染色の程度に差が見られた。このことは、ナイロン表面に導入されたセリシン・フィブロイン成分に基づくものである。
【0038】
酸性染料の染着を示すK/S値は、未加工布と加工布とを比較すると、加工布のそれが大きく、酸性染料によって染着される部分が増加し、染色布は濃色となった。このように、極少ない量のセリシン・フィブロイン成分付着でも染料染着に効果的であることが分かる。
【0039】
水滴の拡散時間は絹タンパク質付着処理を施すことによって減少した。未加工布の拡散時間は744秒であるが、加工布では628秒となり、ナイロン繊維表面の親水性が増加したことを示している。
【0040】
図1に未加工ナイロンと、加工布の電子顕微鏡写真を示すが、後者では小さな沈着物と繊維表面を覆うような膜状物を観察することができた。
【0041】
蛍光顕微鏡観察を行うと、絹タンパク質付着処理を施した布では励起が認められ、タンパク質成分が付与されたことを示している。
【0042】
手触りは未加工布では剛であったの対して、加工布では柔らかく滑り感を感じる。
【0043】
摩擦係数は加工布の方が小さく、布の滑らかさが絹タンパク質付着処理で増したことを示している。
<実施例2>
実施例1と同様にセリシン・フィブロイン水溶液を調整し、アクリル布を入れ、105℃及び130℃で1時間処理を行った。
【0044】
この試料について、試験結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
付加率は、加工を施すことによって105℃では0.18%、及び130℃では0.31%である。
【0046】
アクリルはアミド結合を持たないため、絹の染料で染色不可能であるが、加工布は染色され、染着の程度に差が見られた。このことは、アクリル表面に導入されたセリシン・フィブロイン成分に基づくものである。
【0047】
染料の染着を示すK/S値は、未加工布と加工布とを比較すると、加工布のそれが大きく、酸性染料によって染着される部分が増加し、染色布は濃色となった。この傾向は加工温度が高いほど明瞭である。このように、極少ない量のセリシン・フィブロイン成分付着でも染料染着に効果的であることが分かる。
【0048】
赤外吸収スペクトル分析では、加工試料ではアミドIに基づく吸収が観察され、セリシン・フィブロイン成分が導入されたことを確認できる。
【0049】
水滴の拡散時間は絹タンパク質付着処理を施すことによって変化しなかった。アクリル布が紡績糸で構成されており、水の拡散時間が短いためである。
【0050】
未加工アクリルと、加工アクリルの電子顕微鏡観察を行うと、アクリルフィラメント表面の条線に、セリシン・フィブロイン成分の沈着を認めることができる。
【0051】
蛍光顕微鏡観察を行うと、セリシン・フィブロイン加工を施した布では励起が認められ、タンパク質成分が付与されたことを示している。
【0052】
手触りは未加工布ではザラザラ感であったの対して、加工布では滑らかさとぬめり感がある。
【0053】
摩擦係数は加工布の方が小さく、布の滑らかが絹タンパク質付着処理で増したことを示している。
<実施例3>
セリシンとフィブロインをそれぞれ0.5%含む水溶液中に、染色堅ろう度試験添付白布の絹布を入れ、浴比1:20として、95℃、及び130℃で1時間絹タンパク質付着処理を行った。その後の試験結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
染色性はいずれの試料も良好であった。しかしながら、その色相は異なり、精練絹よりも生糸の染着色に近づいていることから、絹表面に導入されたセリシン成分の性質を示している。
【0055】
手触りは、加工布でコシの他に、厚みを感じたり、サラサラ感を与えている。
【0056】
電子顕微鏡観察では、加工試料表面の空隙を覆うようにセリシン・フィブロイン成分が沈着している様子を観察できた。
【0057】
蛍光顕微鏡観察では、絹そのものが蛍光を発する性質を備えるが、加工試料では、未加工試料と比較してその強度の強いことが観察できた。
【0058】
表面の摩擦係数は、加工試料の方が小さく、セリシン・フィブロイン成分が繊維表面に沈着したことに基づいている。
<実施例4>
セリシンとフィブロインをそれぞれ0.5%含む水溶液中に、染色堅ろう度試験添付白布の羊毛布を入れ、浴比1:20として、95℃、及び130℃で1時間絹タンパク質付着処理を行った。その後の試験結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
染色性はいずれの試料においても良好であった。しかしながら、加工羊毛では、絹に近い色相を示し、セリシン・フィブロインの性質を反映している。
【0060】
手触りは、加工することによってコシ感や厚み感が得られた。このことから、セリシン・フィブロイン成分が、スケール間に沈着していると考えることができる。
【0061】
電子顕微鏡観察では、図2に130℃で加工した羊毛表面写真を示すように、スケール表面への沈着と、スケール間を覆うような沈着状態を観察することができる。
【0062】
蛍光顕微鏡観察を行うと、実施例3と同様に羊毛が蛍光を発するが、加工試料のそれは強いことが分かった。
【0063】
摩擦係数は、130℃で加工した試料で小さくなっており、セリシン・フィブロインがスケール表面を覆うように沈着していることに基づいている。
【0064】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、本発明によって、農家毛羽や工場毛羽等の副産物から得られるセリシンやフィブロインを、簡便な方法によって、汎用品としてのアクリル品及びナイロン、絹、羊毛などのポリアミド品の機能高度化のために利用することのできる方策が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1におけるSEM観察写真である。
【図2】 実施例4におけるSEM観察写真である。
Claims (5)
- 蚕糸業における副産物の毛羽を抽出して得られる絹セリシンおよび絹フイブロインの水溶液を、90℃〜140℃の温度範囲で30分〜2時間の範囲でアクリル物品またはポリアミド物品に接触処理し、次いで、流水中で洗浄した後に風乾することで、該物品の表面に絹セリシンおよび絹フイブロインを付着させることを特徴とするアクリル物品またはポリアミド物品の加工・製造方法。
- 絹セリシンの分子量が10,000〜200,000の範囲であって、かつ、絹フイブロインの分子量が5,000〜30,000の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の加工・製造方法。
- 絹セリシンは、浴比1:5〜1:100、温度100℃以上で毛羽より水溶液として抽出されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の加工・製造方法。
- 絹フイブロインは、浴比1:5〜1:100、温度140℃以上で、セリシン抽出残渣より水溶液として抽出されたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の加工・製造方法。
- 染色仕上げ加工工程に付随して、またはその一部として絹セリシンおよび絹フイブロインを付着させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の加工・製造方法。
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