JP2003171874A - セリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品とその製造方法 - Google Patents

セリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品とその製造方法

Info

Publication number
JP2003171874A
JP2003171874A JP2001370842A JP2001370842A JP2003171874A JP 2003171874 A JP2003171874 A JP 2003171874A JP 2001370842 A JP2001370842 A JP 2001370842A JP 2001370842 A JP2001370842 A JP 2001370842A JP 2003171874 A JP2003171874 A JP 2003171874A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sericin
polyester
fibroin
silk
article
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001370842A
Other languages
English (en)
Inventor
Hisao Ito
久夫 伊藤
Koji Tsukamoto
幸司 塚本
Hiroshi Saito
宏 齋藤
Masanori Ota
正徳 太田
Hiroko Matsushita
浩子 松下
Yoichi Ueishi
洋一 上石
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
ART KK
TSUKAMOTO SENSHOKU KK
Art Inc Japan
Gunma Prefecture
Original Assignee
ART KK
TSUKAMOTO SENSHOKU KK
Art Inc Japan
Gunma Prefecture
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ART KK, TSUKAMOTO SENSHOKU KK, Art Inc Japan, Gunma Prefecture filed Critical ART KK
Priority to JP2001370842A priority Critical patent/JP2003171874A/ja
Publication of JP2003171874A publication Critical patent/JP2003171874A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】農家毛羽や工場毛羽等の副産物から得られるセ
リシンやフィブロインを、簡便な手段によって、汎用物
品の機能高度化のために利用することのできる方策を提
供する。 【解決手段】 ポリエステルを主成分とする物品を養蚕
業あるいは製糸工場での副産物である絹セリシン又は絹
フィブロインもしくはその両者の水溶液で接触処理して
ポリエステルを主成分とする物品の表面に絹セリシン又
は絹フィブロインもしくはその両者を付着させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セリシン・フィブ
ロイン付着ポリエステル物品とその製造方法に関するも
のである。さらに詳しくは、本発明は、従来より繊維製
品として汎用的に用いられているポリエステル糸、再生
ポリエステル糸、ポリエステルフィルム、ポリエステル
成型品あるいはこれらのポリエステルを主成分とする繊
維製品や繊維集合体、不織布、紙などに、蚕糸業や製糸
工場の副産物から得られる絹セリシンや絹フィブロイン
という絹タンパク成分を付着させることで、肌触りの向
上や吸水性・吸湿性の向上、新たな染色性などの優れた
性質を付与することのできる、セリシン・フィブロイン
付着ポリエステル物品とその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】繊維製品の高付加価値加工として、抗菌
性、イージーケア性、防縮性、吸湿性、紫外線遮断性、
皮膚への刺激低減など種々の加工が知られている。ま
た、近年は、人間の健康志向、環境への負荷を低減する
こと、未利用天然物の有効利用などの立場から、天然タ
ンパク質を用いた繊維の加工が行われ、シルクプロテイ
ン被覆繊維やシルクプロテインと合成繊維とで紡糸した
糸などが商品化されている。天然繊維として古くから用
いられてきた絹は、生糸の芯であるフィブロインとこの
周りを覆うセリシンとで構成されており、絹フィブロイ
ンは衣料素材として用いられている。また、セリシンは
精練工程を経ることによって取り除かれ、廃棄物として
処理されてきている。生糸の場合、セリシンとフィブロ
インとの重量比は、25〜30:75〜70である。た
だ、廃棄物として処理されているセリシンにはセリン、
グルタミン酸、アスパラギン酸、リジンなど親水性に富
むアミノ酸残基が全体の50%以上であることから、そ
の有効利用が求められており、これまでにも、例えば特
許出願公開特許公報「セリシンの分離回収法(特開平1
1−131318)」にあるような回収法や、回収した
セリシンを繊維の加工剤として用いる方法「吸収性物品
(特開平9−322911)」、「繊維質肌当て用品
(特開平10−1872)」等が提案されている。
【0003】回収されたセリシンは凍結乾燥法で粉末と
されることが多いが、現在の繊維加工業では、処理方法
が簡便なことや従来からの装置を用いることを理由とし
て、水溶液系での加工方法が一般的である。絹タンパク
質を繊維加工剤として利用する場合も、浸染法、スプレ
ー法など加工方法は種々あるものの、セリシン水溶液と
して加工に供されており、セリシン粉末を再度水溶液と
して用いている。
【0004】一方、絹フィブロインはアラニンやグリシ
ン、セリンを主成分としたタンパク質で、絹糸ではβ構
造をとっている。このような絹フィブロインについて
も、その利用分野の拡大についての検討が進められてき
ており、例えば、坪内らの研究では、このフィブロイン
をアルカリ処理し、次いで力学的な粉砕を行うことによ
って結晶構造を残した微粉末を得、この微粉末をボール
ペンの軸や、腕時計の裏に塗布することが行われてい
る。
【0005】また、力学的な粉砕を行わずにフィブロイ
ンを溶解・粉末化する方法としては、平林らによるアル
カリ加水分解、中和、脱塩、乾燥法が良く知られてい
る。さらには、「シルクパウダーの製造方法(特開平6
−70702)」のように、中性無機塩と強酸とを添加
した水溶液中で、85〜150℃の温度で処理すること
によって、フィブロインの溶解を行い、脱塩後乾燥させ
て粉末を得る例もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、絹セリ
シンや絹フィブロインについての有効利用や利用分野の
拡大が検討されているものの、従来においてはいくつか
の課題が残されていた。例えばセリシンの場合にはこれ
を回収する原料としてはほとんどが生糸や絹布であっ
て、農家等での蚕糸業の副産物としての毛羽や工場での
毛羽等に着目し、これを積極的に利用しようとする試み
や技術的検討はなされていない。農家毛羽や工場毛羽は
セリシン含量が約40%と非常に高く、抗菌性や抗酸化
性を示す物質もまゆ(繭)の表層に近い部分に多いこと
から、このような特徴のあるセリシンを有効活用するこ
とには大きな技術的、経済的な価値がある。
【0007】また、このようなセリシンの利用について
は当然にも農家や工場の毛羽等からのフィブロインの利
用についても考慮されねばならない。
【0008】しかし、残念ながら、従来では、以上のよ
うなセリシン、フィブロインの利用についての提案や開
発技術については知られていないのが実情である。
【0009】そこで、本発明は、上記の点に鑑みて農家
毛羽や工場毛羽などの蚕糸業や製糸業の副産物から得ら
れたセリシンやフィブロインを簡便な手段によって、汎
用物品の機能高度化のために利用することのできる方策
を提供すること、より実際的には、汎用素材としての、
ポリエステル糸や再生ポリエステル糸、ポリエステルフ
ィルム、ポリエステル成型品あるいはこれらのポリエス
テルを主成分とする繊維製品や繊維集合体、不織布、紙
などの表面加工剤として用いることにより、セリシンが
示す柔軟性や親水性、フィブロインが示すサラサラ感な
どの風合いや機能性に優れる製品やその製造方法を提供
することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するものとして、第1には、蚕糸業あるいは製糸工
場での副産物である絹セリシン又は絹フィブロインもし
くはその両者がポリエステルを主成分とする物品に表面
付着されていることを特徴とするセリシン・フィブロイ
ン付着ポリエステル物品を提供する。
【0011】また、第2には、上記の副産物である絹セ
リシン又は絹フィブロインは、蚕糸業での農家毛羽、製
糸工場での工場毛羽、キャリア及びきびそのうち少なく
とも1種から得られたものであることを特徴とするセリ
シン・フィブロイン付着ポリエステル物品を提供し、第
3には、上記のポリエステルを主成分とする物品は、ポ
リエステル糸、再生ポリエステル糸、ポリエステルフィ
ルム、ポリエステル成型品及びこれら1種以上のものの
集合品であることを特徴とするセリシン・フィブロイン
付着ポリエステル物品を提供する。
【0012】そして、本発明は、第4には、ポリエステ
ルを主成分とする物品を蚕糸業あるいは製糸工場での副
産物である絹セリシン又は絹フィブロインもしくはその
両者の水溶液で接触処理してポリエステルを主成分とす
る物品の表面に絹セリシン又は絹フィブロインもしくは
その両者を付着させることを特徴とするセリシン・フィ
ブロイン付着ポリエステル物品の製造方法を提供する。
【0013】第5には、上記の絹セリシンの分子量は1
0,000〜200,000であり、絹フィブロインの
分子量は5,000〜30,000の範囲であることを
特徴とする、セリシン・フィブロイン付着ポリエステル
物品の製造方法を、第6には、100℃以上の温度で水
溶液による接触処理を行うことを特徴とするセリシン・
フィブロイン付着ポリエステル物品の製造方法を、第7
には、染色仕上げ加工に付随して、又はその一部として
水溶液による接触処理を行うことを特徴とするセリシン
・フィブロイン付着ポリエステル物品の製造方法を提供
する。
【0014】さらに、第8には、上記の副産物である絹
セリシン又は絹フィブロインは、蚕糸業での農家毛羽、
製糸工場での工場毛羽、キャリア及びきびそのうち少な
くとも1種から得られたものであることを特徴とするセ
リシン・フィブロイン付着ポリエステル物品の製造方法
を、第9には、上記のポリエステルを主成分とする物品
は、ポリエステル糸、再生ポリエステル糸、ポリエステ
ルフィルム、ポリエステル成型品及びこれらの1種以上
のものの集合体であることを特徴とするセリシン・フィ
ブロイン付着ポリエステル物品の製造方法を提供する。
【0015】第10には、副産物の絹セリシン又は絹フ
ィブロインは、毛羽のカード機もしくはこれと同機能の
手段での開繊による夾雑物の除去後に抽出されたもので
あることを特徴とするセリシン・フィブロイン付着ポリ
エステル物品の製造方法を、第11には、セリシンの水
溶液は、毛羽の浴比1:5〜1:100,温度100℃
以上での抽出により得られたものであることを特徴とす
るセリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品の製造
方法を、第12には、フィブロイン水溶液は、セリシン
の抽出後に浴比1:5〜1:100,温度140℃以上
での抽出により得られたものであることを特徴とするセ
リシン・フィブロイン付着ポリエステル物品の製造方法
を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明は上記のとおりの特徴を持
つものであるが、以下にその実施の形態について説明す
る。
【0017】本発明の特徴を実現するための形態として
は、例えば以下のように例示することができる。
【0018】(1)ポリエステル糸や再生ポリエステル
糸、ポリエステルフィルム、ポリエステル成型品あるい
はこれらのポリエステルを主成分とする繊維製品や繊維
集合体、不織布、紙などに、農家毛羽や工場毛羽から直
接得たセリシン及びフィブロインを含む水溶液、あるい
はどちらか一方を含む所定濃度の水溶液中で、例えば1
20〜130℃で30分〜1時間処理することによって
絹タンパク質を付着させる。
【0019】(2)セリシン及びフィブロインは農家毛
羽や工場毛羽から抽出するが、毛羽の夾雑物を取り除く
ため、あるいは絹フィラメントの方向を揃えるために、
カード機あるいは同じ機能を備える装置で開繊すること
が好ましい。このことによって、夾雑物を取り除くこと
のみならず、セリシンやフィブロインの抽出効率を増す
ことができる。
【0020】(3)開繊された毛羽を、チーズ染色機、
ロータリー染色機、オーバーマイヤー染色機などのよう
な染色機や圧力釜・圧力鍋などのような高圧容器に入
れ、例えば浴比(毛羽:水)を1:5〜1:100,望
ましくは1:10〜20で、130℃、1〜2時間処理
する。この操作で、毛羽重量の40%に相当するセリシ
ンが抽出され、浴比の応じた濃度のセリシン水溶液を得
ることができる。
【0021】(4)セリシン水溶液を取り除き、次いで
同じ圧力容器中で、同様の浴比条件、例えば140℃〜
180℃、望ましくは140〜160℃で2時間フィブ
ロインを抽出する。この操作で、フィブロイン重量の約
20%をフィブロイン水溶液として得ることができる。
【0022】(3)のセリシン水溶液及び(4)のフィ
ブロイン水溶液をそれぞれ単独、あるいは適当な割合で
混合した水溶液をチーズ染色機あるいはオーバーマイヤ
ー染色機などに入れ、加工されるポリエステル糸や再生
ポリエステル糸、ポリエステルフィルム、ポリエステル
成型品あるいはこれらのポリエステルを主成分とする繊
維製品や繊維集合体、不織布、紙などが入ったチーズ染
色機あるいはオーバーマイヤー染色機に入れ、例えば1
00〜140℃、望ましくは120℃で30分処理す
る。
【0023】上記処理を経たポリエステル糸や再生ポリ
エステル糸、ポリエステルフィルム、ポリエステル成型
品あるいはこれらのポリエステルを主成分とする繊維製
品や繊維集合体、不織布、紙などを通常の染色方法で染
色する。あるいは、上記処理以前に染色処理を施すこと
もできる。
【0024】本発明で利用される主にポリエステルから
なる素材は、ポリエステル糸や再生ポリエステル糸、ポ
リエステルフィルム、ポリエステル成型品やこれらから
なる繊維製品、繊維集合体、不織布、紙などであり、仮
撚り加工などの糸に対する加工を施されていても可能で
ある。また、不織布、紙、繊維集合体に合成樹脂製のバ
インダー等が用いられていても、セリシン及びフィブロ
イン水溶液中で、このセリシンやフィブロインとポリエ
ステル繊維素材が接触することができると、本発明を施
すことができる。
【0025】本発明で利用される主にポリエステルから
なる素材としての、ポリエステル糸や再生ポリエステル
糸、ポリエステルフィルム、ポリエステル成型品からな
る繊維製品、繊維集合体、不織布、紙などは特殊な前処
理を行わずにセリシン・フィブロイン加工に供すること
ができる。
【0026】本発明のセリシン及びフィブロイン水溶液
中の加工温度は、100〜140℃であり、加工時間は
30分〜2時間であるが、加工温度の上昇及び加工時間
の増加と伴に絹タンパク質の分子量が低下することか
ら、望ましくは120℃で30分間処理する。処理水は
一カ所にとどまる静水系ではなく、染色加工機のように
水が循環する機構が望ましい。
【0027】
【実施例】次に、本発明を実施例及び比較例によりさら
に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定される
ものではない。以下の実施例及び比較例で行った評価方
法は次の通りである。
【0028】タンパク質繊維を染色する酸性染料(Kaya
nol Milling Blue GW、(株)日本化薬製)を用いて、
セリシン及びフィブロイン加工を行った試料について染
色試験を行った(染色試験)。未加工試料では酸性染料
の染着座席が無いため汚染となるが、タンパク成分が導
入された試料では染色される。
【0029】未加工試料と加工試料との表面観察を、日
本電子(株)走査型電子顕微鏡T−20を用いて行った
(SEM観察)。
【0030】未加工試料と加工試料の蛍光顕微鏡観察
を、(株)オリンパス製蛍光顕微鏡BX−51を用いて
行った。
【0031】未加工試料と加工試料との赤外分光分析
を、Nicolet 製 MAGNA 560を用いて行った。タンパク質
が付与されると、アミドIなどの特徴ある吸収スペクト
ルが観察される。
【0032】手触りを感覚で評価した。
【0033】ポリエステル処理布と未処理布の接触冷温
感qmaxをカト−テック(株)精密迅速熱物性試験機を用
いて測定した。この値が大きいほど、”冷”と感じる。
【0034】
【実施例1】工場毛羽(群馬県碓氷郡松井田町の製糸工
場から入手)をカード機で開繊して繊維軸を揃えると伴
に、毛羽に含まれる夾雑物を取り除いた。この工場毛羽
をテクサム技研(株)回転ポット染色試験機用ポットの
中に入れ、浴比を1:20となるように水を加え、13
0℃で2時間抽出を行った。得られたセリシン水溶液の
濃度は2%であった。
【0035】次いで、セリシン抽出残渣を浴比1:30
として160℃で4時間抽出してフィブロイン水溶液を
得た。濃度は0.8%であった。
【0036】染色堅ろう度試験用添付白布のポリエステ
ル布を、2%水酸化ナトリウム水溶液で、浴比1:20
として120℃、40分間回転ポット染色試験機で処理
し、その後、40℃の3%酢酸水溶液中で5分間中和し
た。さらに、流水洗浄を40℃で15分間行い、風乾し
た。ポリエステル布の減量率は23%であった。
【0037】減量加工ポリエステル布と未処理ポリエス
テル布に対して、次のa法及びb法でセリシン・フィブ
ロイン加工を行った。a法;セリシンとフィブロインを
それぞれ0.5%含む水溶液に、エポキシド(ナガセ化
成工業(株)、デナコールEX-512)を0.5%、反応触
媒としてのチオシアン酸ナトリウムを0.1%となるよ
う加え、浴比を1:20として80℃で1時間処理し
た。b法;a法と同様にセリシン・フィブロイン濃度を
調整した水溶液中で、浴比を1:20として、130℃
で1時間処理した。a法,b法処理後に流水洗浄を40
℃で15分間行い、風乾した。重量増加率としての付加
率は、セリシン・フィブロイン加工前後の乾燥重量変化
から求めた。
【0038】これらの試料について、染色試験、SEM
観察、手触り、qmaxの結果を表1にまとめる。
【0039】付加率は、原布のa法では0.1%、b法
では0.05%であったのに対し、減量加工布ではそれ
ぞれ0.23%、0.06%であった。このことから、
a法ではエポキシドのグリシジル基と反応するポリエス
テルの水酸基、カルボキシル基が減量加工によって増加
していること、あるいは微小クレーター形成に伴うポリ
エステル繊維フィラメント表面積が増加していると考え
ることができる。b法では繊維表面積の増加と伴に、ク
レーターを埋めるようなセリシン・フィブロインの沈
着、あるいはポリエステルフィラメント表面から分子量
の小さいセリシン・フィブロインがポリエステルフィラ
メントの極表面に拡散したことなど考えることができ
る。
【0040】酸性染料の染着を示すK/S値は、原布と減
量加工布とを比較すると、減量加工布のそれが大きく、
酸性染料によって染着される部分が増加したことを示し
ている。しかしながら、酸性染料の染着座席はカチオン
基であることから、表面積の増加に伴う物理的な付着量
が増したと考えることができる。原布をa法及びb法で
処理した試料のK/S値はb法の値が大きく、色も濃色と
なった。このb法処理布では汚染というよりも染着して
おり、ポリエステル繊維表面に導入されたセリシン・フ
ィブロイン成分に染料が染着している。
【0041】減量加工布のa法とb法とのK/S値を比較
すると、上述の結果と同様にb法の値が大きかった。a
法処理布、b法処理布ともに汚染ではなく染色されてお
り、ポリエステル表面に導入されたセリシン・フィブロ
イン成分に基づくものである。付加率は前者の値が大き
いにもかかわらず染着の程度が異なることは、絹タンパ
ク質を構成するアミノ酸の中の塩基性アミノ酸もエポキ
シドと反応することから、酸性染料の染着座席が減少し
たためである。このように、極少ない量のセリシン・フ
ィブロイン成分付着でも染料染着に効果的であることが
分かる。
【0042】染色性は、原布及びこのa法処理布、減量
加工布では汚染程度であるが、原布のb法処理布、減量
加工布のa法、b法処理布では染着であり、K/Sで示し
たように後者の染色性が高かった。これらのことから、
従来行われている架橋剤を仲介する方法と比較して、1
30℃処理法が優れていることがわかる。
【0043】水滴の拡散時間はセリシン・フィブロイン
加工を施すことによって顕著に減少した。原布の拡散時
間は1,083秒であるが、減量加工を施した布では3
39秒となり、ポリエステル繊維表面の親水性が増加し
たことを示している。原布のa法処理布では336秒、
b法処理布では279秒であり、後者の方が絹タンパク
質の親水性を多く反映している。減量加工布のa法処理
布では238秒、b法処理布では199秒とセリシン・
フィブロイン加工効果を示している。減量加工ポリエス
テル布の値と比較しても、親水性が向上している。付加
率が僅かであるにもかかわらずこのような結果が得られ
たことは、ポリエステル表面を薄くコートするようにセ
リシン・フィブロインタンパク質が付着していると考え
られる。
【0044】qmaxはポリエステル原布と比較して、原布
のa法、b法ともに小さな値を示しており、繊維表面に
付着したセリシン・フィブロイン成分の微小凸凹の影響
で熱の移動速度が小さくなったからである。減量加工を
行うとこの値がさらに小さくなり、”暖”と感じること
を示している。この減量加工ポリエステルにセリシン・
フィブロイン加工を施すと、この値は小さくなることか
ら、より暖かく感じる。このようなことからも、ポリエ
ステル表面へのセリシン・フィブロイン付与が風合いや
触感に与える影響は大きい。
【0045】図1に減量加工ポリエステル、図2にこの
布のa法処理、及び図3にb法処理を行った布の電子顕
微鏡写真を示すが、減量加工ポリエステルには微小なク
レーターの他に繊維軸に沿った条線を観察することがで
きる。a法、b法処理布ではこの条線を観察することが
できず、クレーターの周縁部も丸みを帯びていることか
ら、絹タンパク質成分が表面を覆っていると考えられ
る。表面に小さな沈着や、b法では比較的大きな粒子を
観察することができ、後者は容易に結晶化するフィブロ
インであると考えられる。このような小さな沈着や微粒
子が、加工布に大きな影響を及ぼしている。
【0046】蛍光顕微鏡観察を行うと、セリシン・フィ
ブロイン加工を施した布では励起が認められ、タンパク
質成分が付与されたことを示している。
【0047】
【実施例2】2%セリシン水溶液中で減量加工ポリエス
テル布(減量率18%)を130℃30分間処理した。
対照として2%セリシン水溶液に0.5%エポキシド
(ナガセ化成工業(株)、EX313)、触媒としての
チオシアン酸ナトリウムを0.1%加え、80℃で30
分間処理した。これらの処理布についての試験結果を表
2に示す。
【0048】このように、実施例1と同様に、表面に絹
タンパク質成分の表面沈着が認められ、酸性染料で染色
可能となった。手触りは本発明の処理方法では柔らかさ
とぬめり感を示すのに対して、対照区では剛さとコシを
与える風合いである。
【0049】
【実施例3】セリシンとフィブロインをそれぞれ0.5
%含む水溶液中に、減量加工を行ったポリエステルレー
ス生地(減量率18%)を浸し、マングルで100%に
絞った後、160℃で30秒間キュアリングを行った。
対照として、同一水溶液に0.5%エポキシド(ナガセ
化成工業(株)、EX313)、触媒としてのチオシア
ン酸ナトリウムを0.1%加え、100%絞り後同一条
件でキュアリングを行った。これらの処理布をロータリ
ー染色機を用いて、120℃の水中で10分間処理し
た。その後の試験結果を表3に示す。
【0050】このようにパッドアンドキュア法で処理す
ることによって、架橋剤を仲介としなくてもセリシンや
フィブロインを繊維表面に付与することが分かる。ま
た、セリシン・フィブロイン加工後に120℃で10分
間、水中で模擬的な染色を行っても、その後酸性染料で
染色されることから、セリシン・フィブロインは欠落し
ないで繊維表面に残ることが分かる。
【0051】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、本発明によ
って、農家毛羽や工場毛羽等の副産物から得られるセリ
シンやフィブロインを、簡便な方法によって、汎用品と
してのポリエステル品の機能高度化のために利用するこ
とのできる方策が提供される。
【0052】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1における減量加工ポリエステル布の
SEM観察写真である。
【図2】実施例1におけるa法処理布のSEM観察写真
である。
【図3】実施例1におけるb法処理布のSEM観察写真
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塚本 幸司 群馬県桐生市堤町1丁目7番地9号 塚本 染色合名会社内 (72)発明者 齋藤 宏 群馬県桐生市相生町5丁目46番1号 群馬 県繊維工業試験場内 (72)発明者 太田 正徳 群馬県桐生市相生町5丁目46番1号 群馬 県繊維工業試験場内 (72)発明者 松下 浩子 群馬県桐生市相生町5丁目46番1号 群馬 県繊維工業試験場内 (72)発明者 上石 洋一 群馬県桐生市相生町5丁目46番1号 群馬 県繊維工業試験場内 Fターム(参考) 4L033 AA01 AA03 AA07 CA01 CA08

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】蚕糸業あるいは製糸工場での副産物である
    絹セリシン又は絹フィブロインもしくはその両者がポリ
    エステルを主成分とする物品に表面付着されていること
    を特徴とするセリシン・フィブロイン付着ポリエステル
    物品。
  2. 【請求項2】副産物である絹セリシン又は絹フィブロイ
    ンは、蚕糸業での農家毛羽、製糸工場での毛羽、キャリ
    ア(繭から糸が正常に解除され、さらに、順調に繰糸さ
    れるようにするために巻き取られた繭外周部の絹糸)及
    びきびそ(絹の糸口を見つけるため取り除かれる繭の最
    外層部フィラメントを集めた絹糸)のうちの少なくとも
    1種から得られたものであることを特徴とする請求項1
    のセリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品。
  3. 【請求項3】ポリエステルを主成分とする物品は、ポリ
    エステル糸、再生ポリエステル糸、ポリエステルフィル
    ム、ポリエステル成型品及びこれら1種以上のものの集
    合品であることを特徴とする請求項1又は2のセリシン
    ・フィブロイン付着ポリエステル物品。
  4. 【請求項4】ポリエステルを主成分とする物品を蚕糸業
    あるいは製糸工場での副産物である絹セリシン又は絹フ
    ィブロインもしくはその両者の水溶液で接触処理してポ
    リエステルを主成分とする物品の表面に絹セリシン又は
    絹フィブロインもしくはその両者を付着させることを特
    徴とするセリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品
    の製造方法。
  5. 【請求項5】絹セリシンの分子量は10,000〜20
    0,000であり、絹フィブロインの分子量は5,00
    0〜30,000の範囲であることを特徴とする請求項
    4のセリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品の製
    造方法。
  6. 【請求項6】100℃以上の温度で水溶液による接触処
    理を行うことを特徴とする請求項4又は5のセリシン・
    フィブロイン付着物品の製造方法。
  7. 【請求項7】染色仕上げ加工工程付随して、又はその一
    部として水溶液による接触処理を行うことを特徴とする
    請求項4ないし6のいずれかのセリシン・フィブロイン
    付着ポリエステル物品の製造方法。
  8. 【請求項8】副産物である絹セリシン又は絹フィブロイ
    ンは、蚕糸業での農家毛羽、製糸工場での工場毛羽、キ
    ャリア及びきびそのうちの少なくとも1種から得られた
    ものであることを特徴とする請求項4ないし7のいずれ
    かのセリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品の製
    造方法。
  9. 【請求項9】ポリエステルを主成分とする物品は、ポリ
    エステル糸、再生ポリエステル糸、ポリエステルフィル
    ム、ポリエステル成型品及びこれら1種以上のものの集
    合品であることを特徴とする請求項4ないし8のいずれ
    かのセリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品の製
    造方法。
  10. 【請求項10】副産物の絹セリシン又は絹フィブロイン
    は、毛羽のカード機もしくはこれと同機能の手段での開
    繊による夾雑物の除去後に抽出されたものであることを
    特徴とする請求項4ないし9のいずれかのセリシン・フ
    ィブロイン付着ポリエステル物品の製造方法。
  11. 【請求項11】セリシンの水溶液は、毛羽の浴比1:5
    〜1:100,温度100℃以上での抽出により得られ
    たものであることを特徴とする請求項4ないし10のい
    ずれかのセリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品
    の製造方法。
  12. 【請求項12】フィブロイン水溶液は、セリシンの抽出
    後に浴比1:5〜1:100、温度140℃以上での抽
    出により得られたものであることを特徴とする請求項4
    ないし11のいずれかのセリシン・フィブロイン付着ポ
    リエステル物品の製造方法。
JP2001370842A 2001-12-05 2001-12-05 セリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品とその製造方法 Pending JP2003171874A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001370842A JP2003171874A (ja) 2001-12-05 2001-12-05 セリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品とその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001370842A JP2003171874A (ja) 2001-12-05 2001-12-05 セリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品とその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003171874A true JP2003171874A (ja) 2003-06-20

Family

ID=19180002

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001370842A Pending JP2003171874A (ja) 2001-12-05 2001-12-05 セリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品とその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003171874A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011069643A3 (en) * 2009-12-08 2011-08-11 Amsilk Gmbh Silk protein coatings
JP2012026054A (ja) * 2010-07-23 2012-02-09 Art:Kk アレルゲン物質を吸着除去する繊維製品
JP2018500470A (ja) * 2014-12-02 2018-01-11 シルク セラピューティクス, インコーポレイテッド シルク性能衣服及び製品、並びにこれらを製造する方法
JP2018525541A (ja) * 2015-07-14 2018-09-06 シルク セラピューティクス, インコーポレイテッド シルク性能衣服及び製品、並びにこれらを製造する方法
JP2018193645A (ja) * 2017-05-19 2018-12-06 朝倉染布株式会社 染色繊維及びその製造方法
CN114481595A (zh) * 2022-03-11 2022-05-13 罗莱生活科技股份有限公司 一种改性涤纶纤维及其制备方法与应用
US11390988B2 (en) 2017-09-27 2022-07-19 Evolved By Nature, Inc. Silk coated fabrics and products and methods of preparing the same

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011069643A3 (en) * 2009-12-08 2011-08-11 Amsilk Gmbh Silk protein coatings
JP2012026054A (ja) * 2010-07-23 2012-02-09 Art:Kk アレルゲン物質を吸着除去する繊維製品
US11453975B2 (en) 2014-12-02 2022-09-27 Evolved By Nature, Inc. Silk performance apparel and products and methods of preparing the same
JP2021193232A (ja) * 2014-12-02 2021-12-23 エボルブド バイ ネイチャー, インコーポレイテッド シルク性能衣服及び製品、並びにこれらを製造する方法
JP2018500470A (ja) * 2014-12-02 2018-01-11 シルク セラピューティクス, インコーポレイテッド シルク性能衣服及び製品、並びにこれらを製造する方法
US11649585B2 (en) 2014-12-02 2023-05-16 Evolved By Nature, Inc. Silk performance apparel and products and methods of preparing the same
JP2018525541A (ja) * 2015-07-14 2018-09-06 シルク セラピューティクス, インコーポレイテッド シルク性能衣服及び製品、並びにこれらを製造する方法
JP2021169692A (ja) * 2015-07-14 2021-10-28 エボルブド バイ ネイチャー, インコーポレイテッド シルク性能衣服及び製品、並びにこれらを製造する方法
JP7171840B2 (ja) 2015-07-14 2022-11-15 エボルブド バイ ネイチャー, インコーポレイテッド シルク性能衣服及び製品、並びにこれらを製造する方法
US11512425B2 (en) 2015-07-14 2022-11-29 Evolved By Nature, Inc. Silk performance apparel and products and methods of preparing the same
JP2018193645A (ja) * 2017-05-19 2018-12-06 朝倉染布株式会社 染色繊維及びその製造方法
US11390988B2 (en) 2017-09-27 2022-07-19 Evolved By Nature, Inc. Silk coated fabrics and products and methods of preparing the same
CN114481595A (zh) * 2022-03-11 2022-05-13 罗莱生活科技股份有限公司 一种改性涤纶纤维及其制备方法与应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101259409B1 (ko) 분할형 복합섬유, 이를 이용한 섬유 구조물 및 와이핑 천
WO2002031236A1 (en) Fibre and its production
JP2003171874A (ja) セリシン・フィブロイン付着ポリエステル物品とその製造方法
JP4200416B2 (ja) アクリル物品またはポリアミド物品とその加工・製造方法
JP2004137617A (ja) 防汚ウエア
JP3823494B2 (ja) 拭取布帛とその製造方法
JP2000256960A (ja) 精製セルロース繊維織編物の加工方法
JP2004076224A (ja) 反応染料を用いて染色とセリシン・フィブロイン付着を同時に行った物品とその製造方法
JP2003171875A (ja) セリシン・フィブロイン付着セルロース物品とその製造方法
JP2004360163A (ja) タオル地
JP3420692B2 (ja) 衣料の処理方法
JPH0610268A (ja) 繊維処理剤組成物および処理された繊維
JP2674676B2 (ja) コンジュゲートファイバを基材とする織物及び不織布の開繊方法
KR102631672B1 (ko) 친환경적인 항균성 면소재의 제조방법
JP2001020150A (ja) ワイピングクロスおよびその製造方法
KR100489514B1 (ko) 아세테이트 섬유의 소취 가공 방법
JPH06330461A (ja) 吸水・速乾性に優れた繊維構造物
JPH04100976A (ja) 変性絹フィブロインで改質加工した繊維構造物及びその製造方法
KR20240020275A (ko) 친환경적인 항균성 면소재의 제조방법
JP3911205B2 (ja) 易滑性ポリエステル繊維
JP3259834B2 (ja) ポリアミド系繊維品
JP2003193366A (ja) 絹の加工方法
JPH08209538A (ja) セルロース繊維布帛の防皺処理法
JPH0813239A (ja) 巻縮ポリアミドフィブリル繊維およびその製造方法
JP2000345406A (ja) ハンカチおよびその製造方法