JP4198252B2 - 汚泥脱水剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は汚泥脱水剤、特に下水、し尿処理場、および各種産業排水の生物性汚泥、およびその他汚泥との混合汚泥を脱水処理するのに適した汚泥脱水剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、下水、し尿処理場および各種産業排水の生物性汚泥の余剰汚泥は、主としてカチオン性高分子凝集剤を添加して遠心脱水機、ベルトプレス脱水機、スクリュウプレス脱水機等で脱水して処理されている。近年、カチオン性高分子凝集剤による汚泥の脱水性をさらに向上させるために、高分子の同一分子内にカチオン性基とアニオン性基を合わせ持つ両性高分子凝集剤(特開昭56−118798)、カチオン性基が3級アミノ基からなる両性高分子凝集剤(特開昭62−205112)やカチオン性基に3級アミノ基と4級アンモニウム塩基の両方を一定割合で含有する両性高分子凝集剤(特開平3−189000)を使用する方法、およびこれらの両性高分子凝集剤と無機凝結剤を併用する方法(特開昭63−158200)等が提案されている。
【0003】
しかしながら、難脱水性の汚泥が発生するオキシデーションデッチ法を使用した場合や機械脱水における高負荷運転した場合等の難脱水条件の場合には、汚泥の処理量を上げることが困難であり、上げられる場合でもかなり多くの高分子凝集剤の添加が必要である等の脱水効率や経済性の改善を必要とする問題があり、凝集性能の一層の向上が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、汚泥の脱水性を高めることにより、より少ない添加量において、単位時間当たりの汚泥処理量を向上させる経済性良好なる汚泥脱水剤を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者はこれらの課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、多官能性単量体存在下に重合して得られる両性高分子が極めて優れた汚泥脱水効果が発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は(a)4級アンモニウム基および3級アミノ基を有するビニル単量体から選ばれた少なくとも1種のカチオン性単量体、(b)アニオン性単量体、(c)ノニオン性単量体及び(d)これらの全単量体重量に対して3〜30ppmの多官能性単量体を重合して得られる高分子重合体で、かつ、該高分子重合体を0.1重量%含む1M塩化ナトリウム溶液の25℃における粘度が1.3〜4.5mPa・s、好ましくは2.0〜4.0mPa・sである高分子重合体を含んでなる汚泥脱水剤を提供するものである。
【0007】
【発明の実態の形態】
本発明の両性高分子はアニオン性単量体とカチオン性単量体、ノニオン性単量体、及び多官能性単量体を水溶液中で共重合することにより得られる。アニオン性単量体としては、特に限定されないが、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびシトラコン酸等があり、これらの1種もしくは2種以上を使用することができる。中でもアクリル酸及び/又はメタクリル酸の使用が好ましい。
【0008】
カチオン性単量体は4級アンモニウム塩基および/または3級アミノ基を有するビニル単量体から選択される単量体であり、例えばジメチルアミノエチルメタクリレートおよび/またはジメチルアミノエチルアクリレート、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、メチルクロライド第4級塩、ジメチル硫酸第4級塩、およびベンジルクロライド第4級塩等があり、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0009】
ノニオン性単量体は少なくとも(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、ヒトロキシルエチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である。
【0010】
本発明の両性高分子の重合においては、重量基準で全単量体の3〜30ppmの多官能性単量体を用いることが必須である。多官能性単量体が3ppm未満もしくは30ppm超の場合には、目標とする凝集性能や脱水性能が得られない。多官能性単量体としては、例えばN,Nーメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物、メチロール(メタ)アクリルアミドなどのビニル系メチロール化合物、アクロレインなどのビニル系アルデヒド化合物、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル等のビニル系エーテル化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
本発明の両性高分子の合成に際し、使用する共重合性単量体の比率は、好ましくはモル比でノニオン性単量体:カチオン性単量体:アニオン性単量体=10〜85:10〜60:5〜30、更に好ましくは25〜70:20〜55:10〜20であり、かつ、アニオン性単量体とカチオン性単量体のモル比は、好ましくはアニオン性単量体:カチオン性単量体=1:1.5〜6、更に好ましくは1:2〜4である。上記の範囲で得られる両性高分子は凝集性やスラッジの脱水において特に良好な性能を示す。
【0012】
カチオン性単量体のアニオン性単量体に対するモル比が1.5倍未満では、得られる両性高分子は、良好な凝集性能を発現しにくくなり、6倍超では、得られる両性高分子は、従来のカチオン性高分子と類似した凝集性能に近づき、良好な凝集性能を発現しにくくなる傾向にある。
【0013】
本発明の両性高分子は、該高分子重合体を0.1重量%含む1M塩化ナトリウム溶液の25℃における粘度が1.3〜4.5mPa・s、好ましくは2.0〜4.0mPa・sである。1.3mPa・s未満では目標とする脱水効果を得るために添加量を多くしなければならず経済性を損ない、4.5mPa・s超では形成される汚泥のフロックに粘性を生じ脱水性が低下し目的を達成することができない。
【0014】
本発明の両性高分子を後述の油中水系エマルションで得る場合、高分子物質の数平均粒子径は未膨潤の状態で0.1μm〜10μmが好ましく、更に好ましくは0.8〜5μmである。高分子物質の粒子径が0.1μm未満では目標とする汚泥脱水効果が不十分となる傾向にあり、10μm超ではエマルションの安定性が低下し凝集沈殿を生じて実用に適さなくなる傾向にある。
【0015】
本発明の両性高分子は、例えば1種または2種以上の疎水性液体からなる油相、前記のような共重合性単量体を含有してなる水相、および油中水型エマルションを生成させるのに有効な界面活性剤を混合した後、反応開始剤を添加し、これらの共重合性単量体を重合することにより、分散層である水層の高分子物質の数平均粒径が0.1μm〜10μmである油中水系エマルションとして得ることができる。界面活性剤としては、例えばソルビタンモノオレエートのようなソルビタンエステル系、グリコールモノオレエートのような脂肪酸エステル系などを、モノマーと水の合計重量に対し例えば0.5〜10%、好ましくは1〜5%用いることができる。合成に際し、必要に応じ、連鎖移動剤やキレート剤を添加する。油中水系エマルションの重合方法は特開昭63−90510号や特開昭63−232888号に開示されている。
【0016】
また、本発明の両性高分子は、水相のみの中で共重合することにより水溶液として得ることもできる。さらに、これらの両性高分子はそれぞれ、油相や水相の溶剤を除去し、粉砕することにより粉末として得ることもできる。本発明における両性高分子は分子量が大きいので、これらの水溶液は油中水系エマルションとして得る場合に比べて非常に粘性が高い。従って、非常に低濃度に希釈しないと取り扱い性が悪い。高分子物質が粉末として得られる場合は水に溶解して用いなければならない。油中水型エマルションとして得られた両性高分子は取り扱い性が優れているので好ましい。しかしながら、水溶液や粉末として得られた両性高分子も本発明の実施に有効である。
【0017】
油中水系エマルションによる方法で得られる両性高分子を使用する場合、油中水系エマルションを水中へ投入し、水溶液に転相して使用する。その際、水溶液への転相を容易にするため、通常上記の油中水系エマルション混合物に予め転相用界面活性剤を添加しておくか、あるいは、水中へ投入した直後に転相用界面活性剤を添加する。
【0018】
本発明の汚泥脱水剤の使用にあたり適用される汚泥の制限はないが、下水処理場やし尿処理場の生物性汚泥や混合汚泥、並びに、一般産業廃水処理で生じる生物性汚泥、並びに、凝集汚泥を含む混合汚泥等に特に効果がある。また、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、塩化第2鉄、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、ポリ鉄(ポリ硫酸鉄、ポリ塩化鉄)、アルミン酸ソーダ等の無機凝結剤が予め含まれている汚泥や、これらの無機凝結剤の1種または2種以上が後から添加された汚泥についても本発明の汚泥脱水剤は効果がある。
【0019】
本発明の汚泥脱水剤の使用方法は、処理する汚泥の諸条件により相違し特定することはできないが、一般的な使用方法は、0.2〜1.0重量%の水溶液(汚泥脱水剤水溶液と称す)としたものを汚泥の固形分重量に対して、汚泥脱水剤水溶液中に含まれる有効成分(本特許請求範囲に記載の高分子重合体)で0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜2重量%を添加し、汚泥のフロック形成を促進することである。こうして得られた汚泥のフロックは、ベルトプレス、スクリュウプレス、フィルタープレス等の圧搾脱水機、または、遠心分離機、真空濾過機等の圧力脱水機で脱水処理される。本発明の汚泥脱水剤を使用することにより、これらの脱水機による脱水効率もしくは単位時間当たりの汚泥処理量が向上し、経済性を高めることができる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
高分子化合物の溶液粘度は以下の方法に従った。1000ppmの高分子化合物を含む水溶液50mlに塩化ナトリウム2.92gを加え溶解した試料を25℃に保ち、BL型回転粘度計にてBLアダプターを用い60rpmの回転数で測定する。得られた指示値を粘度計の補正式に従い計算し、当該高分子化合物の溶液粘度とする。
【0021】
実施製造例1
ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級化物(以下、DAqと称す)96.7g、アクリルアミド(以下、AMDと称す)70.9g、アクリル酸(以下、AcAと称す)12.0g及び多官能性単量体としてN,Nーメチレンビス(メタ)アクリルアミド(以下、MBAと称す)0.54mgを1000ml四つ口セパラブルフラスコに投入し、蒸留水を加えて全体として360g単量体水溶液になるように調製した。この単量体水溶液に、全単量体重量に対し0.3重量%のイソプロピルアルコール(以下、IPAと称す)を加えた。さらに、この単量体水溶液をHLB4.2のノニオン性界面活性剤9.9gを溶解したパラフィン油140gに加え、ホモジナイザーにて高速撹拌し乳化した。撹拌機を通常の化学反応用の撹拌機に代え、撹拌しながらこの乳化液中に30分間窒素ガスを通し脱気した後、窒素ガス雰囲気下で重合開始剤の水溶性アゾ触媒を添加し共重合反応を行った。反応終了後、HLBが13.0のノニオン性界面活性剤10.5gを加えて溶解し両性高分子化合物(A−1)を得た。A−1の各単量体のモル比は、カチオン性単量体(DAq):アニオン性単量体(AcA):ノニオン性単量体(AMD)=30:10:60である。また、多官能性単量体(MBA)の量は全単量体重量に対して3ppmである。
【0022】
実施製造例2
実施製造例1で単量体水溶液に加えるMBAの量を0.54mgに代えて0.90mgとした他は同様の操作をして両性高分子化合物(A−2)を得た。MBAの量は全単量体重量に対して5ppmである。
【0023】
実施製造例3
実施製造例1で単量体水溶液に加えるMBAの量を0.54mgに代えて1.79mgとした他は同様の操作をして両性高分子化合物(A−3)を得た。MBAの量は全単量体重量に対して10ppmである。
【0024】
実施製造例4
実施製造例1で単量体水溶液に加えるMBAの量を0.54mgに代えて5.39mgとした他は同様の操作をして両性高分子化合物(A−4)を得た。MBAの量は全単量体重量に対して30ppmである。
【0025】
比較製造例1
実施製造例1で単量体水溶液にMBAを加えない他は同様の操作をして両性高分子化合物(A−5)を得た。MBAの量は全単量体重量に対して0ppmである。
【0026】
比較製造例2
実施製造例1で単量体水溶液に加えるMBAの量を0.54mgに代えて8.96mgとした他は同様の操作をして両性高分子化合物(A−6)を得た。MBAの量は全単量体重量に対して50ppmである。
【0027】
実施製造例1〜4、および比較製造例1〜2で示された両性高分子(A−1)〜(A−6)について、前記の方法により、溶液粘度と粒子径を測定した。結果を表−1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例1−4および比較例1−5
し尿処理場から採取した混合汚泥(固形物濃度2.5%、pH6.6)に無機凝結剤の硫酸バンドを2500ppm添加した汚泥150mlを300mlビーカーに採取した。これに次の(イ)〜(ロ)水溶液の一つを表−2に示す量加えた。
(イ)表1の両性高分子化合物(A−1)〜(A−6)の0.2重量%水溶液、
(ロ)カチオン性単量体(DAq):ノニオン性単量体(AMD)=20:80のモル比で溶液粘度が3.0mPa・sのカチオン系高分子の0.2重量%水溶液(A−7)。
【0030】
混合物を英国トライトン社製CSTミキサーで1000rpm、30秒撹拌した。生成したフロックのサイズを目視にて判定し、次に60メッシュのステンレス製濾過管上に注ぎ、10秒後の濾水量をメスシリンダーにて測定した。
ステンレス製濾過管上に残った汚泥を、60メッシュのナイロン布に包み、円沈管式遠心分離器で2000rpm、5分間脱水することにより、ナイロン布から洩れた汚泥を目視で観察し、脱水ケーキを得た。この脱水ケーキは常法によりケーキ含水率を測定した。以上の結果を表−2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例5−8および比較例6−9
化学工場から採取した汚泥(固形物濃度2.9%、pH7.0)150mlを300mlビーカーに取り、これに表−1に示す重合体(A−1)〜(A−6)の脱水剤を0.2重量%の水溶液として表−3に示す量を添加し、英国トライトン社製CSTミキサーで1000rpm、30秒撹拌した。生成したフロックのサイズを目視にて判定し、次に60メッシュのステンレス製濾過管上に注ぎ、10秒後の濾水量をメスシリンダーにて測定した。
ステンレス製濾過管上に残った汚泥を、60メッシュのナイロン布に包み、円沈管式遠心分離器で2000rpm、5分間脱水することにより、ナイロン布から洩れた汚泥を目視で観察し、脱水ケーキを得た。この脱水ケーキは常法によりケーキ含水率を測定した。以上の結果を表−3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】
以上の実施例、比較例から明らかなように本発明の汚泥脱水剤を用いると、より少ない添加量において、より大きな汚泥凝集フロックと高い濾水量が得られ、また、汚泥の漏れや剥離が良好であり、得られるケーキ含水率も著しく低下する。
Claims (7)
- (a)4級アンモニウム基および3級アミノ基を有するビニル単量体から選ばれた少なくとも1種のカチオン性単量体、(b)アニオン性単量体、(c)ノニオン性単量体及び(d)これらの全単量体重量に対して3〜30ppmの多官能性単量体を重合して得られる高分子重合体で、かつ、該高分子重合体を0.1重量%含む1M塩化ナトリウム溶液の25℃における粘度が1.3〜4.5mPa・sである高分子重合体を含んでなる汚泥脱水剤。
- 該高分子重合体を0.1重量%含む1M塩化ナトリウム溶液の25℃における粘度が2.0〜4.0mPa・sである請求項1の汚泥脱水剤。
- カチオン性単量体がジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、又はこれらの塩酸塩、硫酸塩、メチルクロライド第4級塩、ジメチル硫酸第4級塩若しくはベンジルクロライド第4級塩の少なくとも1種以上であり、アニオン性単量体がアクリル酸又はメタクリル酸の少なくとも1種以上であり、ノニオン性単量体がアクリルアミド又はメタクリルアミドの少なくとも1種以上であり、多官能性単量体がN,Nーメチレンビス(メタ)アクリルアミド又はポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上であり、ノニオン性単量体:カチオン性単量体:アニオン性単量体のモル比が10〜85:10〜60:5〜30で、かつアニオン性単量体:カチオン性単量体のモル比が1:1.5〜6である請求項1または2の汚泥脱水剤。
- ノニオン性単量体:カチオン性単量体:アニオン性単量体のモル比が25〜70:20〜55:10〜20である請求項3の汚泥脱水剤。
- アニオン性単量体:カチオン性単量体のモル比が1:2〜4である請求項3の汚泥脱水剤。
- (A)1種以上の疎水性液体からなる油相、(B)(a)前記カチオン性単量体、(b)前記アニオン性単量体、(c)前記ノニオン性単量体、(d)前記多官能性単量体よりなる水層、及び(C)油中水型エマルションを生成させるのに有効な界面活性剤を混合した後、これらを重合することによりエマルションとして得られる該粒子が未膨潤の状態で0.1μm〜10μmの数平均粒径を有する高分子重合体からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載した汚泥脱水剤。
- 汚泥脱水剤が生物性汚泥脱水剤である請求項1〜6のいずれか1項に記載した汚泥脱水剤。
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