JP6486006B2 - 高分子凝集剤並びにそれを用いる汚泥の脱水方法 - Google Patents

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本発明は、高分子凝集剤並びに汚泥の脱水方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、エマルションの安定性に優れ、難脱水性汚泥を効果的に脱水することができ、含水率の低い脱水ケーキを得ることができる高性能な高分子凝集剤並びにそれを用いる汚泥の脱水方法に関する。
従来、生活排水、産業排水等に含まれる懸濁物を凝集・沈降・分離させることを目的として、ノニオン性、アニオン性、カチオン性および両性の高分子凝集剤が使用されている。特に、下水汚泥の脱水処理にはカチオン性高分子凝集剤が多用されている。しかし、汚泥の発生量の増加や汚泥の性状の変化、特に有機性汚泥については有機物含有量の増加や腐敗等により、汚泥を十分に脱水することができなくなっている。
これらの問題を解決するため、汚泥の脱水方法に関する種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1や特許文献2には、有機性汚泥に無機凝集剤を添加し、さらに両性高分子凝集剤を添加した後、脱水する方法が提案されている。しかし、これらの方法では、汚泥の性状によっては十分な効果が得られない、薬品コストが高い、設備や作業が煩雑になる等の問題がある。
また、特許文献3や特許文献4には、有機性汚泥に特定の物性を示すカチオン性高分子凝集剤を添加し、脱水する方法が提案されている。特許文献3と特許文献4には、特定の物性を示すカチオン性高分子凝集剤の製造処方の具体例がないので、どのように製造すると当該高分子凝集剤が得られるのか詳細は不明である。分岐や架橋の指標とされる曳糸長をパラメータに使用していることや2官能のアクリル系架橋剤であるメチレンビスアクリルアミドが例示されていることから、メチレンビスアクリルアミド等の公知の架橋剤を用いた架橋型重合体である可能性が高い。このような公知の方法で製造される架橋型の高分子凝集剤を使用しても、難脱水性汚泥に対しては、十分に満足できる効果は得られない。
特許文献5には、重合体中のカルボキシル基と反応する2官能のジグリシジルエーテル系架橋剤を用いた架橋型の高分子凝集剤およびその製造方法が開示されている。しかし、このような架橋剤は熱によって架橋反応の進み方が大きく異なる。そのため、重合時や乾燥時のわずかな温度の違いの影響を受け易く、架橋反応が進みすぎると容易にゲル化してしまう等、架橋反応の調整が極めて困難である。
特許文献6には、重合時に過酸化水素等を使用し、重合体の主鎖中の水素を引き抜き、ラジカルを発生させてそこを起点に分岐反応や架橋反応させる分岐型または架橋型のカチオン性高分子エマルジョンの製造方法および高分子凝集剤としての使用例が開示されている。しかし、前記の特許文献5と同様に、架橋反応が進みすぎると容易にゲル化してしまう等、架橋反応の調整が困難である。
特許文献7には、架橋剤として2官能のアクリル系架橋剤であるメチレンビスアクリルアミドを用いた架橋型両性高分子エマルジョンからなる汚泥脱水剤およびその製造方法が開示されている。しかし、当該架橋型両性高分子エマルジョンは、非架橋型すなわち従来の直鎖状の両性高分子エマルジョンと比較すると一定の効果は見られるものの十分ではない。特に難脱水性汚泥に対しては、十分に満足できる効果は得られない。また、前記の特許文献1や特許文献2と同様に、薬品コストが高い、設備や作業が煩雑になる等の問題も解消されていない。
特許文献8には、架橋剤として2官能以上のビニル基または(メタ)アリル基を分子内に有する架橋性単量体を用いた架橋型水溶性重合体からなり、特定の固有粘度を示すことを特徴とする高分子凝集剤およびその製造例が開示されている。また、当該発明で使用可能な架橋剤の具体例として、非常に多くの架橋剤が例示されている。しかし、これら全ての架橋剤は、反応性の官能基が何れもビニル基または(メタ)アリル基であり、ラジカル重合の反応性が低すぎるために殆ど架橋反応が進まない。反応性が低いことを補うために、架橋剤の添加量を多くしているが、そのうち、実際に架橋反応に寄与するのはごく一部であり、架橋反応しないものの方が多い。高分子凝集剤としての性能も、非架橋型すなわち従来の直鎖状のカチオン性重合体と比較すると僅かに効果は見られるものの十分ではなく、特に難脱水性汚泥に対して十分に満足できる効果は得られない。
特許文献9には、2官能以上の(メタ)アクリレートを分子内に有する架橋性単量体を用いた逆相懸濁重合による高分子凝集剤とその製造例が開示されている。しかし、2官能以上の架橋性単量体を用いることが例示されているものの、2官能の架橋性単量体と3官能の架橋性単量体の効果の差は示されていない。
特許文献10には、油中水型マイクロエマルションの製造において、界面活性剤として、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性のものを、単独又は組み合わせて使用できると記載されているが、エマルションの安定性に関して、適切なHLBの範囲については示されていない。
特開昭63−158200号公報 特開平2−180700号公報 特開2000−126800号公報 特開2000−24700号公報 特開2001−129311号公報 特開2002−114810号公報 特開2002−233708号公報 特開2004−255378号公報 特開2012−183530号公報 特許第2676483号公報
本発明が解決しようとする課題は、前記の問題点を解決し、難脱水性汚泥に対して凝集性に優れ、フロック径が大きく、ろ過速度やろ液の外観にも優れ、効果的に脱水することができ、含水率の低い脱水ケーキを得ることができる高性能な高分子凝集剤およびその製造方法並びに汚泥の脱水方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、少なくともカチオン性単量体と、特定の架橋性単量体と、を含む単量体混合物を親水性疎水性バランス(以下HLBと表記)の異なる2種類以上の界面活性剤の存在下、HLBをそれぞれの界面活性剤のHLBの加重平均で5.0から9.0の範囲に調整し、油中水型エマルション重合して得られる架橋型重合体を、高分子凝集剤として使用すると、油中水型エマルションの安定性に優れ、難脱水性汚泥に対しても凝集性に優れ、フロック径が大きく、重力ろ過性やろ液の外観にも優れ、効果的に脱水することができ、含水率の低い脱水ケーキを得られることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)少なくともカチオン性単量体と、ラジカル重合性の多官能性の架橋性単量体と、を含む単量体混合物を、HLBの異なる2種以上の界面活性剤を混合して各界面活性剤のHLB値の加重平均が5.0〜9.0の範囲になるように調整した界面活性剤の存在下、油中水型エマルション重合して得られる架橋型重合体を含む高分子凝集剤。
(2)前記架橋型重合体が、少なくともHLBが3〜7の範囲内の界面活性剤と、HLBが10〜17の範囲内の界面活性剤の存在下、油中水型エマルション重合して得られる(1)に記載の高分子凝集剤。
(3)前記架橋型重合体が、HLBの異なる3種以上の界面活性剤の存在下、油中水型エマルション重合して得られる(1)または(2)に記載の高分子凝集剤。
(4)前記単量体混合物が、アニオン性単量体およびノニオン性単量体を含む(1)〜(3)のいずれかに記載の高分子凝集剤。
(5)前記カチオン性単量体が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体の1種または2種以上を含む(1)〜(4)に記載の高分子凝集剤。
CH=CR−CO−X−Q−N・Z (1)
(但し、Rは水素原子またはメチル基、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基であり、同種でも異種でもよい。Xは酸素原子またはNH、Qは炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンをそれぞれ表す。)
(6)前記カチオン性単量体が、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル第4級塩およびジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル第4級塩の少なくとも1種であり、全単量体混合物中のカチオン性単量体の共重合比が、30〜95モル%である(1)〜(5)のいずれかに記載の高分子凝集剤。
(7)前記ラジカル重合性の多官能性の架橋性単量体が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリレート系架橋性単量体である(1)〜(6)のいずれかに記載の高分子凝集剤。
(8)1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリレート系架橋性単量体が、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物の1種または2種以上を含む(7)に記載の高分子凝集剤。
Figure 0006486006
(但し、R、R、Rはそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基、l、m、nはそれぞれ独立に0〜5の整数、R、R、R10はそれぞれ独立にアクリロイル基またはメタクリロイル基、R11はヒドロキシ基、メチル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基をそれぞれ表す。)
Figure 0006486006
(但し、R12〜R17はそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基、p1、p2、q1、q2、r1、r2はそれぞれ独立に0〜5の整数、R18〜R22はそれぞれ独立にアクリロイル基またはメタクリロイル基、R23は水素原子、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表す。)
Figure 0006486006
(但し、R24〜R27はそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基、s1、s2、t1、t2はそれぞれ独立に0〜5の整数、R28〜R31はそれぞれ独立にアクリロイル基またはメタクリロイル基を表す。)
(9)1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリレート系架橋性単量体が、
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパンから選択される1種または2種以上と、
(メタ)アクリル酸と、
の反応生成物である(7)または(8)に記載の高分子凝集剤。
(10)ラジカル重合性の多官能性の架橋性単量体の他の単量体に対する添加量(ppm)をA、架橋型重合体のポリマー純分0.5重量%水溶液をB型回転式粘度計でローターNo.2を用いて、ローター回転数12rpmで25℃で測定した粘度(mPa・s)をB、架橋型重合体のポリマー純分0.1重量%となるように1Nの塩化ナトリウム水溶液に溶解させ、B型回転式粘度計及びBLアダプターを使用して、ローター回転数60rpm、25℃で測定した0.1%塩粘度(mPa・s)をCとした場合、下記式(5)で表される範囲内にある架橋型重合体である(1)〜(9)のいずれかに記載の高分子凝集剤。
40≦(B/C/A)≦120 (5)
(11)汚泥に、(1)〜(10)のいずれかに記載の高分子凝集剤を添加して脱水する汚泥の脱水方法。
本発明の高分子凝集剤は、エマルションの分離安定性にも優れ、かつ難脱水性汚泥に対しても凝集性に優れ、フロック径が大きく、ろ過速度やろ液の外観にも優れ、効果的に脱水することができ、含水率の低い脱水ケーキを得ることができる。すなわち、本発明により、上記のような高性能な高分子凝集剤およびその製造方法並びに汚泥の脱水方法が提供される。また、本発明の高分子凝集剤は、汚泥の濃縮に用いることもできる。
その他の用途としては、例えば、製紙用濾水歩留向上剤、濾水性向上剤、地合形成助剤および紙力増強剤等の製紙用薬剤、掘削・泥水処理用凝集剤、原油増産用添加剤、有機凝結剤、増粘剤、分散剤、スケール防止剤、帯電防止剤および繊維用処理剤等の幅広い用途に応用することが可能である。これらのうち、製紙用薬剤、掘削・泥水処理用凝集剤、原油増産用添加剤および有機凝結剤の用途において、特に優れた性能が発揮される。
以下に本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書においては、アクリレートおよび/またはメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを(メタ)アクリルアミドと表し、アクリル酸および/またはメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
本発明で使用するカチオン性単量体は、ラジカル重合し得るラジカル重合性の二重結合およびカチオン基を有する単量体であれば何れでもよく、下記一般式(1)で表される化合物の他、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアリルジアルキルアンモニウムハロゲン化物等を挙げることができる。これらのカチオン性単量体の中でも、ラジカル重合反応性に優れて、高分子凝集剤として必要な高分子量化が容易であり、得られる架橋型重合体の高分子凝集剤としての性能が優れることから、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
CH=CR−CO−X−Q−N・Z (1)
但し、上記一般式(1)中のRは水素原子またはメチル基、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基であり、同種でも異種でもよい。Xは酸素原子またはNH、Qは炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンをそれぞれ表す。Zとしては、塩化物イオン等のハロゲン化物イオンや硫酸イオンが例示される。
前記一般式(1)で表されるカチオン性単量体の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩酸塩および硫酸塩が例示される。また、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートやジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル等のハロゲン化アルキル付加物、塩化ベンジル等のハロゲン化ベンジル付加物、硫酸ジメチル等の硫酸ジアルキル付加物等である第4級塩が例示される。
これらの好ましいカチオン性単量体の中でも、特に高分子凝集剤としての性能に優れ、カチオン性単量体および架橋型重合体の品質および貯蔵安定性にも優れることから、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル付加物である第4級塩およびジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル付加物である第4級塩が最も好ましい。
これらのカチオン性単量体は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明の高分子凝集剤は、前記カチオン性単量体の他、必要に応じて共重合可能な単量体の1種または2種以上を併用してもよい。
共重合可能な単量体としては、以下に記載するアニオン性単量体およびノニオン性単量体が例示される。
アニオン性単量体としては、下記一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸およびこれらの塩類の他、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、マレイン酸等およびこれらの塩類を挙げることができる。これらのアニオン性単量体の中でも、カチオン性単量体との共重合性に優れて、高分子凝集剤として必要な高分子量化が容易であり、高分子凝集剤としての性能が優れることから、下記一般式(6)で表される(メタ)アクリル酸およびそれらの塩類が好ましい。塩類としては、アンモニウム塩並びにナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
CH=CR34−CO−OM (6)
但し、上記一般式(6)中のR34は水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、アンモニウムイオンまたはアルカリ金属イオンを表す。
これらの(メタ)アクリル酸およびそれらの塩類の中でも、高分子凝集剤としての性能が特に優れることから、アクリル酸およびそのアンモニウム塩が最も好ましい。
これらのアニオン性単量体は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
ノニオン性単量体としては、下記一般式(7)で表される(メタ)アクリルアミド系化合物の他、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルキル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等を挙げることができる。これらのノニオン性単量体の中でも、カチオン性単量体との共重合性に優れて、高分子凝集剤として必要な高分子量化が容易であり、高分子凝集剤としての性能が優れることから、下記一般式(7)で表される(メタ)アクリルアミド系化合物が好ましい。
CH=CR35−CO−NR3637 (7)
但し、上記一般式(7)中のR35は水素原子またはメチル基であり、R36およびR37はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。
これらの(メタ)アクリルアミド系化合物の中でも、水溶性であり、高分子凝集剤としての性能が特に優れることから、アクリルアミドが最も好ましい。
これらのノニオン性単量体は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明の単量体混合物中の各単量体の配合比(モル比)は、カチオン性単量体:アニオン性単量体:ノニオン性単量体=1〜100:0〜99:0〜99である。ノニオン性単量体を用いる場合、単量体混合物中におけるノニオン性単量体の含有量は、5〜95モル%が好ましく、10〜90モル%が特に好ましい。
本発明で使用する1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリレート系架橋性単量体(以下、単に「架橋性単量体」または「架橋剤」と略記することもある)は、ラジカル重合性の官能基である下記一般式(8)で表される(メタ)アクリロイル基を、当該架橋性単量体の1分子中に3個以上有する化合物であれば何れでもよく、下記一般式(8)で表される化合物の他、種々の化学構造の化合物が対象となる。
CH=CR38−CO− (8)
但し、上記一般式(8)中のR38は水素原子またはメチル基であり、−CO−はカルボニル基を表す。
前記架橋性単量体の1分子中に有する(メタ)アクリロイル基の数は、3個以上である。3〜10個であるものが好ましく、3〜6個であるものがさらに好ましく、3〜4個であるものが最も好ましい。1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個有する架橋性単量体では、得られる架橋型重合体の高分子凝集剤としての性能が劣る。また、1分子中に有する(メタ)アクリロイル基の数が10個を超えても、(メタ)アクリロイル基の数に相応の高分子凝集剤としての性能向上の効果が得られない場合がある。
これらの中でも、ラジカル重合反応性およびカチオン性単量体との共重合性に優れ、高分子凝集剤として必要な高分子量化が容易であり、得られる架橋型重合体の高分子凝集剤としての性能が優れることから、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006486006
但し、上記一般式(2)中のR、R、Rはそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基、l、m、nはそれぞれ独立に0〜5の整数、R、R、R10はそれぞれ独立にアクリロイル基またはメタクリロイル基、R11はヒドロキシ基、メチル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基をそれぞれ表す。
Figure 0006486006
但し、上記一般式(3)中のR12〜R17はそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基、p1、p2、q1、q2、r1、r2はそれぞれ独立に0〜5の整数、R18〜R22はそれぞれ独立にアクリロイル基またはメタクリロイル基、R23は水素原子、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表す。
Figure 0006486006
但し、上記一般式(4)中のR24〜R27はそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基、s1、s2、t1、t2はそれぞれ独立に0〜5の整数、R28〜R31はそれぞれ独立にアクリロイル基またはメタクリロイル基を表す。
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート等が例示される。なお、EO変性およびPO変性とは、エチレンオキサイド(以下、「EO」と略記する)およびプロピレンオキサイド(以下、「PO」と略記する)をそれぞれ付加して変性された化合物であることを表し、その具体例としては、EOおよびPOの付加モル数が1〜5のものが例示される。
前記一般式(3)で表される化合物の具体例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールEO変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールPO変性ペンタ(メタ)アクリレート等が例示される。また、EO変性およびPO変性の具体例としては、EOおよびPOの付加モル数が1〜5のものが例示される。
前記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンEO変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンPO変性テトラ(メタ)アクリレート等が例示される。また、EO変性およびPO変性の具体例としては、EOおよびPOの付加モル数が1〜5のものが例示される。
また、前記一般式(2)〜(4)で表される以外の化合物の具体例としては、ジグリセリンEO変性トリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンEO変性テトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
これらの前記一般式(2)〜(4)で表される化合物の中でも、高分子凝集剤としての性能が特に優れることから、本発明で使用する架橋性単量体は、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパンから選択される1種または2種以上と(メタ)アクリル酸との反応生成物であることが好ましい。当該化合物は、前記一般式(2)中のl、m、nが0であり、前記一般式(3)中のp1、p2、q1、q2、r1、r2が0であり、前記一般式(4)中のs1、s2、t1、t2が0である。
さらに好ましい架橋性単量体の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が例示される。これらの架橋性単量体は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル第4級塩をカチオン性単量体の主体として使用する場合には、当該カチオン性単量体との共重合性が特に優れて、高分子凝集剤としての性能のうち、難脱水性汚泥に対しても凝集性に優れ、フロック径が大きく、ろ過速度やろ液の外観にも優れ、効果的に脱水することができ、含水率の低い脱水ケーキを得られることから、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物がさらに好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物が最も好ましい。
本発明の1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリレート系架橋性単量体を用いた架橋型重合体が特に高分子凝集剤としての性能に優れる理由に関して、本発明者らは以下のように考察している。すなわち、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリレート系架橋性単量体である本発明の架橋剤を用いた架橋型重合体の場合、従来の2官能の架橋剤を用いた架橋型重合体に比べて、一つの架橋剤分子により繋ぎ合わされる重合体主鎖の本数が多くなる。つまり、本発明の架橋型重合体では、一つの架橋点で繋ぎ合わされる重合体主鎖の本数が多く、このような高分子構造を有する本発明の架橋型重合体では、処理対象となる汚泥に添加された際、汚泥スラリー中で、汚泥中の懸濁物を凝集させるのに有利な凝集力の強いコンフォメーションを取り易いためではないかと考えられる。
本発明で使用する1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリレート系架橋性単量体の添加量は、特に制限されないが、前記単量体混合物中の各単量体の合計質量に対して、質量基準で2〜1,000ppmが好ましく、3〜500ppmがさらに好ましく、5〜100ppmが最も好ましい。架橋性単量体の添加量が2ppm未満では、架橋反応が不十分となることがあり、その場合、高分子凝集剤としての汚泥フロックの形成能が不足して、フロック径が十分に大きくならなかったり、脱水ケーキの含水率が低くならなかったりすることがある。また、架橋性単量体の添加量が1,000ppmを超えると、架橋反応が進みすぎ、凝集剤としての機能が著しく低下する。
本発明の油中水型エマルション重合は、所定の単量体を含有する水相と、非混和性の油と界面活性剤からなる油相とを混合して得られる油中水型エマルションに所定の連鎖移動剤やラジカル開始剤を添加し、窒素雰囲気下で重合することにより本発明のポリマーを有する油中水型エマルションを得ることができる。油としてはパラフィン類や各種鉱油およびそれらの混合物やη−ヘキサン、シクロヘキサン、η−ヘプタンのような炭化水素系化合物を挙げることができる。油の含有量は、油中水型エマルション全量に対して20質量%〜50質量%が好ましい。界面活性剤は、HLBの異なる2種以上の界面活性剤を混合して各界面活性剤のHLB値の加重平均が5.0〜9.0の範囲になるように調整して用いる。
特に、HLBが3〜7の界面活性剤とHLBが10〜17の界面活性剤を組み合わせ、HLBを5.0〜9.0にすることが好ましい。この理由としては、2種類以上のHLB値が離れた界面活性剤を組み合わせることで、エマルション粒子の粒子界面に存在する界面活性剤層が厚くなり、エマルションとしての安定性が改善されると推測している。
ここで、HLB値は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、非イオン性界面活性剤については、下記(9)に示すグリフィン(Griffin)の式により求められるものである。2種以上の非イオン性界面活性剤から構成される混合界面活性剤のHLBは、次のようにして求められる。混合界面活性剤のHLBは、各非イオン性界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて荷重平均したものである。
混合HLB=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx (9)
HLBxは、非イオン性界面活性剤XのHLB値を示す。
Wxは、HLBxの値を有する非イオン性界面活性剤Xの重量(g)を示す。
使用する界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレアルキレンアルキルエーテル、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリエチレングリコールモノオレエート、オレイン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル、ポリエチレングリコールオレイン酸ジエステル等のノニオン性界面活性剤を挙げることができる。これら界面活性剤の有効な添加量は、油中水型エマルション全量に対して0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
重合条件は使用するモノマーや開始剤、重合体の物性に応じて適宜設定される。重合温度は0〜100℃で行い、10〜80℃が好ましい。単量体濃度は20〜50質量%が好ましく、25〜40質量%がより好ましい。重合時間は1〜10時間が好ましい。
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキシドやパーメンタハイドロオキシド等の有機過酸化物、2,2′−アゾビス−(アミジノプロパン)ハイドロクロライド、アゾビスシアノバレリン酸、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]などのアゾ系化合物、並びに過酸化水素、過硫酸塩と重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄などの組み合わせからなるレドックス触媒など公知のものが挙げられる。これらの重合開始剤は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
分子量を調節する方法としては、公知の連鎖移動剤を使用することができる。公知の連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物や、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸水素ナトリウム及び次亜リン酸ナトリウム等の還元性無機塩類、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、メタリルスルホン酸ナトリウム等のアリル化合物が挙げられる。
重合後は、転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して、エマルション粒子を水になじみ易くし、水へ溶解しやすくすることができる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLBが9〜17のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
この他、本発明の効果を阻害しない範囲で安定剤やpH調整剤、酸化防止剤等の添加物を追加しても良い。
油中水型エマルションは、噴霧乾燥、あるいはエマルションを直接乾燥器で乾燥し、その後粉砕し、造粒するなどの方法を用いて、粉末化して用いることもできる。
本発明の架橋型重合体では、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリレート系架橋性単量体の単量体に対する添加量をA(ppm)、0.5%水溶液粘度をB(mPa・s)、0.1%塩粘度をC(mPa・s)とした場合、B/C/Aを指標にして、当該架橋型重合体の構造を表すことができる。本発明者らは、鋭意検討の結果、0.1%塩粘度(mPa・s)が同じである架橋型重合体同士を比較すると、B/C/Aがある一定の範囲の示す架橋型重合体が、適度な密度の架橋構造を有し、高分子凝集剤として優れた性能を発揮することを見出した。
具体的には、式(5)の範囲内のB/C/Aを示す架橋型重合体である。
40≦(B/C/A)≦ 120 (5)
式(5)に示すB/C/Aの下限値が、式(5)で表される値よりも小さいと、架橋の度合いが不足して、従来の直鎖状の重合体と同程度にしかフロック径が大きくならなかったり、重力ろ過性が向上しなかったり、脱水ケーキの含水率が低下しないことがある。一方、式(5)に示すB/C/Aの好ましい範囲の上限値を超えると、架橋構造が適切な密度とならず、ろ水の清澄性や脱水ケーキの含水率が十分に低下しないことがある。
本発明の高分子凝集剤を用いる汚泥の脱水方法では、処理対象の汚泥は特に制限されない。下水処理、し尿処理および生活廃水処理等で発生する汚泥の他、食品工場、食肉加工および化学工場等の各種産業廃水処理で発生する汚泥、養豚場等の畜産関係で発生する生し尿およびその廃水処理で発生する汚泥、パルプまたは製紙工業で発生する汚泥等の各種汚泥が処理対象になる。汚泥の種類にも制限はなく、初沈汚泥、余剰汚泥およびこれらの混合汚泥、濃縮汚泥および嫌気性微生物処理した消化汚泥等が何れも処理対象になる。
本発明の汚泥の脱水方法は、上記各種汚泥に、本発明の前記架橋型重合体を含む高分子凝集剤を添加して脱水することを特徴とする。
脱水方法の具体例としては、以下の方法が例示される。すなわち、汚泥に、必要に応じて無機凝集剤を添加し、好ましくはpHを4〜7に調節する。その後、この汚泥に本発明の高分子凝集剤を添加し、公知の方法で撹拌および/または混合することで汚泥中の懸濁物と高分子凝集剤を作用させて、汚泥フロックを形成させる。形成された汚泥フロックを、公知の手段により機械的に脱水処理することで、処理水と脱水ケーキに分離する。なお、本発明の高分子凝集剤として架橋型両性重合体を使用する場合は、前記無機凝集剤を併用することが好ましい。また、脱臭、脱リンおよび脱窒等を目的とする場合は、汚泥のpHを5未満にすることが好ましい。無機凝集剤としては、特に制限されないが、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄等が例示される。
脱水装置としては、特に制限されないが、スクリュープレス型脱水機、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機、スクリューデカンター、多重円盤等が例示される。
また、本発明の高分子凝集剤は、汚泥の脱水処理の前処理として、汚泥の濃縮にも用いることができる。濃縮装置としては、特に制限されないが、一般的な遠心式、重力式、浮上式などの装置が挙げられる。
以下、実施例によりさらに具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。各種物性の測定方法は以下の通りである。各種物性の測定における温度条件は、特に断りのない限り25℃である。
〔0.5%水溶液粘度〕
純水400mLに、0.50質量%となる量の試料(重合体)を加えて十分に溶解し、試料溶液を調製した。B型回転式粘度計を用いて、この試料溶液の25℃、ローター回転数12rpmにおける粘度を測定した。
〔0.1%塩粘度〕
塩化ナトリウム5.84gを純水に溶解して全容量を80.0mLに調製した塩化ナトリウム水溶液に、前記0.5%水溶液粘度を測定後の試料溶液20.0mLを加えて十分に溶解し試料溶液を調製した。BLアダプタおよび専用のBLローターを装着したB型回転式粘度計を用いて、この試料溶液の25℃、ローター回転数60rpmにおける粘度を測定した。
〔フロック径〕
凝集した汚泥中のフロックの大きさ(フロック径)を目視で測定した。
〔重力ろ過性〕
内径75mm、深さ100mm、目開き250μm、線径160μmのステンレス製篩に、凝集した汚泥を一気にそそぎ込み、重力ろ過した。このとき、ろ液が200mLのメスシリンダーに入るようにロートをセットしておき、汚泥投入後、5秒、10秒、20秒、30秒経過後のろ液の容量を計測して、重力ろ過性を評価した。このうち、10秒経過後のろ液の容量を10秒後ろ液量(mL)とした。
〔ろ液の外観〕
前記の重力ろ過性の評価後のろ液の外観について、下記の基準で目視で評価した。
◎: ろ液に懸濁成分(SS)の流出が全く見られない
○: ろ液に懸濁成分(SS)の流出がほとんど見られない
△: ろ液に懸濁成分(SS)の流出が若干量見られる
×: ろ液に懸濁成分(SS)の流出が多量に見られる
〔脱水ケーキの含水率〕
前記の重力ろ過性を評価後のステンレス製篩上に残った重力ろ過後の汚泥の含水ケーキを全量取り出し、ベルトプレス用ろ布(ポリエステル製、杉綾織)に挟んで卓上試験用ベルトプレス機を使用して170kPaで3分間圧搾することで脱水ケーキを得た。得られた脱水ケーキから中心の一部をサンプリングしてアルミパンに秤量し、105℃の熱風乾燥機で16時間乾燥した後、乾燥後の質量を測定し、乾燥による減少量と乾燥前の質量の質量比から含水率を求めた。
〔油中水型エマルションの安定性〕
油中水型エマルションを高さ120mm、内径20.3mmのガラス製容器に、高さ100mmまで液をいれ、25℃で2週間静置した。そして外観の評価及び注射器を用いて、液の上層部と下層部をそれぞれ約5ml採取し、105℃で3時間加熱して固形分を測定し、以下の指標で評価した。
◎: 上層部にオイル相の分離が2mm未満で、上層部と下層部の固形分差が0. 5%未満である。
○: 上層部にオイル相の分離が2mm未満で、上層部と下層部の固形分差が1% 未満である。
Δ: 上層部にオイル相の分離が3mm以上みられるか、上層部と下層部の固形分 差が1%以上〜2%未満である。
×: 上層部にオイル相の分離が5mm以上みられるか、上層部と下層部の固形分 差が2%以上である。
<製造例1>
油中水型エマルションA1は、以下に記載する工程により合成した。1000ml四つ口セパラブルフラスコに50%アクリルアミド水溶液67.2g、79%ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級化物水溶液463.8g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(3官能)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(4官能)の混合物である多官能性アクリレート系架橋剤(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−306」、以下、「M−306」と略記する)のアセトン溶液0.1%に調製したものを6.0g添加し、さらに蒸留水を投入し、濃硫酸でpHを4に調整した後、開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩を0.4g含む水溶液20gを添加し全量700gのモノマー水溶液になるように調製した。さらに、この単量体水溶液にノニオン系界面活性剤2種類をHLBが6.0となるようにHLBが3.7のソルビタンセスキオレート21.2gとHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを6.5gを溶解したパラフィン油246.0gに加え、ホモジナイザーにて高速攪拌して乳化した。フラスコに窒素ガス吹き込み管、還流冷却器、温度計を取り付け、攪拌機を通常の化学反応用の攪拌機に代え、攪拌しながらこの乳化液中に30分間窒素ガスを通し脱気した後、50℃に昇温し、窒素雰囲気下で4時間重合を行った。重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを31.62gを加えて油中水型エマルションA1を得た。この油中水型エマルションは、単量体に対して架橋剤を重量濃度で15ppm(A)含有しており、その物性は、前記の方法で分析した結果、0.5%水溶液粘度(B)は、3950mPa・s、0.1%塩粘度(C)は、2.45mPa・sであり、B/C/Aは、107であった。
<製造例2>
油中水型エマルションA2は、ペンタエリスリトールトリアクリレート(3官能)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(4官能)の混合物である多官能性アクリレート系架橋剤(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−306」、以下、「M−306」と略記する)のアセトン溶液0.1%に調製したものを12.0g添加し、ノニオン系界面活性剤2種類をHLBが8.0となるようにHLBが5.0のオレイン酸ジエタノールアミド18.0gとHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル9.8gを溶解したパラフィン油253.0gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを16.1g加えた以外は、製造例1と同様に実施した。
<製造例3>
油中水型エマルションA3は、ノニオン系界面活性剤3種類をHLBが6.0となるようにHLBが5.0のオレイン酸ジエタノールアミド5.5gとHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを5.8g、HLBが3.7のソルビタンセスキオレート16.5gを溶解したパラフィン油249.0gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを31.6g加えた以外は、製造例2と同様に実施した。
<製造例4>
油中水型エマルションA4は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(5官能)とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能)の混合物である多官能性アクリレート系架橋剤(東亞合成株式会社製:商品名「アロニックスM−400」、以下「M400」と略記する)のアセトン溶液0.1%に調整したものを6.0g用いた以外は、製造例2と同様に実施した。
<製造例5>
油中水型エマルションA5は、ノニオン系界面活性剤3種類をHLBが8.0となるようにHLBが5.0のオレイン酸ジエタノールアミド4.1gとHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル11.8g、HLBが3.5のソルビタンセスキオレート12.2gを溶解したパラフィン油253.0gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを16.1g加えた以外は製造例4と同様に実施した。
<製造例6>
油中水型エマルションA6は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(5官能)とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能)の混合物である多官能性アクリレート系架橋剤(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−400」、以下「M400」と略記する)のアセトン溶液0.1%に調整したものを12.0g用い、ノニオン系界面活性剤3種類をHLBが8.0となるようにHLBが5.0のオレイン酸ジエタノールアミド4.9gとHLBが16.7のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート9.0gとHLBが3.7のソルビタンセスキオレート14.8gを溶解したパラフィン油255.0gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを8.5g加えた以外は、製造例5と同様に実施した。
<製造例7>
油中水型エマルションA7は、50%アクリルアミド水溶液157.3g、79%ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級化物水溶液406.8g、多官能性アクリレート系架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(3官能)(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−309」、以下、「M−309」と略記する)のアセトン溶液0.1%に調製したものを12.0g添加し、開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド0.01g含む水溶液5.0gを添加し、全量700.0gのモノマー水溶液になるように調製した。さらに、この単量体水溶液に、ノニオン系界面活性剤3種類をHLBが8.0となるように、HLBが3.7のソルビタンセスキオレート12.2gとHLBが5.0のオレイン酸ジエタノールアミド4.1g、HLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル11.8g溶解したパラフィン油253.01gに加えて、ホモジナイザーにて高速攪拌して乳化した。フラスコに窒素ガス吹き込み管、還流冷却器、温度計を取り付け、攪拌機を通常の化学反応用の攪拌機に代え、攪拌しながらこの乳化液に、二酸化硫黄を50ppm含む窒素を1分あたり130mlの量を乳化液中に吹き込みながら、50℃に昇温して、4時間重合を行った。重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを16.1gを加えた。
<製造例8>
油中水型エマルションA8は、多官能性アクリレート系架橋剤トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(3官能、EO付加モル数は約1),(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−350」)のアセトン溶液0.1%に調整したものを12.0g用いノニオン系界面活性剤3種類をHLBが9.0となるようにHLBが6.3のポリオキシエチレンラウリルエーテル3.5gとHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル14.4gとHLBが3.7のソルビタンセスキオレート10.5gを溶解したパラフィン油255.1gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル8.1g加えた以外は、製造例7と同様に実施した。
<製造例9>
油中水型エマルションA9は、50%アクリルアミド水溶液15.2g、79%ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級化物水溶液496.7g、多官能性アクリレート系架橋剤トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート(3官能、PO付加モル数は約1),(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−310」)のアセトン溶液0.1%に調整したものを12.0g用いた以外は、製造例8と同様に実施した。
<製造例10>
油中水型エマルションA10は、多官能性アクリレート系架橋剤ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(4官能),(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−408」)のアセトン溶液0.1%に調整したものを12.0g用いた以外は、製造例9と同様に実施した。
<比較製造例1>
油中水型エマルションB1は、HLBが3.7のノニオン系界面活性としてソルビタンセスキオレート27.2gをパラフィン油244.6gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル48.9g加えた以外は製造例4と同様に実施した。
<比較製造例2>
油中水型エマルションB2は、ノニオン系界面活性剤2種類をHLBが4.5となるようにHLBが3.7のソルビタンセスキオレート10.5gとHLBが5.0のオレイン酸ジエタノールアミド16.8gをパラフィン油246.1gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル43.0g加えた以外は製造例7と同様に実施した。
<比較製造例3>
油中水型エマルションB3は、架橋剤を添加しないこと以外は、製造例5と同様に実施した。
<比較製造例4>
油中水型エマルションB4は、多官能架橋剤N,N’−メチレンビスアクリルアミド(2官能、以後「MBAAm」と略記)のアセトン溶液0.1%に調整したものを12.0g用いた以外は、比較製造例1と同様に実施した。
<比較製造例5>
油中水型エマルションB5は、多官能性アクリレート系架橋剤ポリエチレングリコールジアクリレート(2官能、但し、EO付加モル数は約4)、東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−240」のアセトン溶液0.1%に調整したものを6.0g用い、ノニオン系界面活性剤2種類をHLBが9.5となるようにHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル16.8gとHLBが3.7のソルビタンセスキオレート11.6gを溶解したパラフィン油256.1gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル4.1g加えた以外は、製造例1と同様に実施した。
<比較製造例6>
油中水型エマルションB6は、多官能性架橋剤ペンタエリスリトールジアリルエーテル(2官能)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(3官能)、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル(4官能)の混合物P−30M(ダイソー株式会社製;商品名「ネオアリルP−30M」)のアセトン溶液0.1%に調整したものを6.0g用いて、HLBが8.6のノニオン系界面活性剤ソルビタンモノラウレート28.3gをパラフィン油254.2gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル11.3g加えた以外は製造例7と同様に実施した。
これらの分析結果を表1に示した。
Figure 0006486006
但し、表1における架橋剤の種類については、下記のものを表す。
「M−306」: ペンタエリスリトールトリアクリレート(3官能)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(4官能)の混合物
(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−306」)
「M−400」: ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(5官能)とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能)の混合物
(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−400」)
「M−309」: トリメチロールプロパントリアクリレート(3官能)
(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−309」)
「M−350」: トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(3官能)
但し、EO付加モル数は約1である。
(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−350」)
「M−310」: トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート(3官能)
但し、PO付加モル数は約1である。
(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−310」)
「M−408」: ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(4官能)
(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−408」)
「MBAAm」: N,N’−メチレンビスアクリルアミド(2官能)
「M−240」: ポリエチレングリコールジアクリレート(2官能)
但し、EO付加モル数は約4である。
(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−240」)
「P−30M」: ペンタエリスリトールジアリルエーテル(2官能)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(3官能)、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル(4官能)の混合物
(ダイソー株式会社製;商品名「ネオアリルP−30M」)
本発明の1分子中にアクリロイル基を3個以上有するアクリレート系架橋剤を用いた製造例1〜9の重合体(A1〜A9)は、比較製造例4と5の重合体(B4〜B5)と比較して、B/C/Aの値が低く、また比較製造量6の重合体(B6)よりもB/C/Aの値が高く、適度な密度の架橋構造を有した重合体の物性を示している。
<実施例1〜10、比較例1〜6>
公共下水処理場1から採取した初沈汚泥と余剰汚泥が混合された混合汚泥について、凝集ろ過および脱水処理のテーブルテストを実施した。なお、この消化汚泥の性状は、pH=4.7、TS(Total Solid)=11,200mg/L、VTS(Volatile Total Solids)/TS=89.0質量%、SS(Suspended Solids)=9,500mg/L、VSS(Volatile Suspended Solids)/SS=84.2質量%、繊維分/SS=6.6質量%、電気伝導度=524mS/mであった。
まず、この汚泥200mLを300mLのビーカーに入れた。これに、製造例1〜9および比較製造例1〜4で製造した重合体を、それぞれ汚泥質量に対して240ppm添加した。ジャーテスターを用いて、この汚泥を300rpmで1分間攪拌することにより、汚泥フロックを形成させ、フロック径を目視で測定した。次に、この凝集した汚泥全量を内径75mm、深さ100mm、目開き250μmのステンレス製篩に一気にそそぎ込み、重力ろ過した。このとき、ろ液が200mLのメスシリンダーに入るようにロートをセットしておき、所定時間経過毎にろ液の容量を測定して、重力ろ過性を評価した。また、ろ液の外観を目視で評価した。
次いで、重力ろ過性を評価後のステンレス製篩上に残った重力ろ過後の汚泥の含水ケーキを全量取り出し、卓上試験用ベルトプレス機を使用して170kPaで3分間圧搾することで脱水ケーキを得た。得られた脱水ケーキの含水率を測定した。これらの評価結果を表2に示した。また、前述の方法で評価したエマルションの安定性の評価結果も表2に合わせて示した。
Figure 0006486006
実施例で用いた重合体(A1〜A10)は、比較例で用いた重合体(B3〜B6)と比較して形成されるフロックの粒径が同等または大きく、10秒後ろ液量が多くろ過性に優れる。また、ろ液の外観にも優れ、得られる脱水ケーキの含水率も低い。架橋剤を用いなかった比較例3の重合体(B3)は、フロック径、10秒後ろ液量、ろ液の外観、脱水ケーキの含水率が最も悪い。2官能の架橋剤(MBA)を用いた比較例4の重合体(B4)は、B3と比較するとフロック径、10秒後ろ液量、脱水ケーキの含水率について改善が見られるものの、実施例で用いた重合体には及ばない。また、2官能の架橋剤(M−240)を用いた比較例5の重合体(B5)とアリルエーテル系架橋剤(P−30M)を用いた比較例6の重合体(B6)についても、比較例4の重合体(B4)よりも劣り、実施例で用いた重合体には及ばない。このように実施例で用いた重合体は、比較例で用いた重合体よりも高分子凝集剤の性能が優れている。エマルションの安定性も実施例で用いた重合体(A1〜A10)は、比較例で用いた重合体(B1、B2、B4〜B6)よりも優れている。比較例の重合体(B3)は、凝集剤としての性能は劣るものの、界面活性剤を3種類組み合わせ適切なHLBで製造したものであるため、エマルションの安定性は他の比較例よりも優れている。
<実施例11〜20、比較例7〜12>
公共下水処理場2から採取した消化汚泥について、凝集ろ過および脱水処理のテーブルテストを実施した。なお、この混合汚泥の性状は、pH=6.8、TS=15,800mg/L、VTS/TS=78.1質量%、SS=22,400mg/L、VSS/SS=49.7質量%、繊維分/SS=20.5質量%、電気伝導度=446mS/mであった。
まず、この汚泥200mLを500mLのビーカーに入れた。これに、製造例1〜5および製造例10並びに比較製造例2〜4で製造した重合体を、それぞれ汚泥質量に対して280ppm添加した。ジャーテスターを用いて、この汚泥を100rpmで30秒間攪拌することにより、汚泥フロックを形成させ、フロック径を目視で測定した。次に、この凝集した汚泥全量を内径75mm、深さ100mm、目開き250μmのステンレス製篩に一気にそそぎ込み、重力ろ過した。あとは実施例1と同様に操作して、10秒後ろ液量、ろ液の外観、脱水ケーキの含水率を測定した。これらの評価結果を表3に示した。
Figure 0006486006
実施例で用いた重合体(A1〜A10)は、比較例で用いた重合体(B3〜B6)と比較して形成されるフロックの粒径が同等または大きく、10秒後ろ液量が多くろ過性に優れる。また、ろ液の外観にも優れ、得られる脱水ケーキの含水率も低い。
架橋剤を用いなかった比較例3の重合体(B3)は、フロック径、10秒後ろ液量、ろ液の外観、脱水ケーキの含水率が最も悪い。2官能の架橋剤(MBA)を用いた比較例4の重合体(B4)は、B3と比較するとフロック径、10秒後ろ液量、脱水ケーキの含水率について改善が見られるものの、実施例で用いた重合体には及ばない。また、2官能の架橋剤(M−240)を用いた比較例5の重合体(B5)とアリルエーテル系架橋剤(P−30M)を用いた比較例6の重合体(B6)についても、比較例4の重合体(B4)よりも劣り、実施例で用いた重合体には及ばない。比較例で用いた重合体(B1とB2)は、凝集性能は、実施例で用いた重合体と同等であるが、表2に記載した通り、エマルションの安定性が悪い。
<製造例11>
油中水型エマルションA11は、以下に記載する工程により合成した。1000ml四つ口セパラブルフラスコに50%アクリルアミド水溶液236.2g、79%ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級化物水溶液251.0g、78%ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級化物水溶液8.9g、80%アクリル酸水溶液29.9g,ペンタエリスリトールトリアクリレート(3官能)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(4官能)の混合物である多官能性アクリレート系架橋剤(東亞合成株式会社製;商品名「アロニックスM−306」、以下、「M−306」と略記する)のアセトン溶液0.1%に調製したものを4.0g添加し、さらに蒸留水を投入し、濃硫酸でpHを4に調整した後、開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩を0.4g含む水溶液20gを添加し全量700.0gのモノマー水溶液になるように調製した。さらに、この単量体水溶液にノニオン系界面活性剤3種類をHLBが8.0となるようにHLBが3.7のソルビタンセスキオレート12.2gとHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを11.8gとHLBが50のオレイン酸ジエタノールアミドを4.1gを溶解したパラフィン油253.0gに加え、ホモジナイザーにて高速攪拌して乳化した。フラスコに窒素ガス吹き込み管、還流冷却器、温度計を取り付け、攪拌機を通常の化学反応用の攪拌機に代え、攪拌しながらこの乳化液中に30分間窒素ガスを通し脱気した後、50℃に昇温し、窒素雰囲気下で4時間重合を行った。重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを16.1gを加えて油中水型エマルションA11を得た。この油中水型エマルションは、単量体に対して架橋剤を重量濃度で10ppm(A)含有しており、その物性は、前記期の方法で分析した結果、0.5%水溶液粘度(B)は、3040mPa・s、0.1%塩粘度(C)は、3.15mPa・sであり、B/C/Aは、97であった。これらの分析結果を表4に示した。
Figure 0006486006
<製造例12>
油中水型エマルションA12は、多官能性アクリレート系架橋剤M−400を用いた以外は、製造例11と同様に実施した。
<製造例13>
油中水型エマルションA13は、多官能性アクリレート系架橋剤M−309を用い、ノニオン系界面活性剤3種類をHLBが9.0となるようにHLBが5.0のオレイン酸ジエタノールアミド4.3gとHLBが16.7のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート11.2gとHLBが3.7のソルビタンセスキオレート13.0gを溶解したパラフィン油256.1gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを4.3g加えた以外は、製造例11と同様に実施した。
<製造例14>
油中水型エマルションA14は、ノニオン系界面活性剤3種類をHLBが6.0となるようにHLBが3.7のソルビタンセスキオレート16.4gとHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを5.8gとHLBが5.0のオレイン酸ジエタノールアミドを5.7gを溶解したパラフィン油249.0gに加えたこと以外は、製造例11と同様に実施した。
<製造例15>
油中水型エマルションA15は、ノニオン系界面活性剤2種類をHLBが6.0となるようにHLBが3.7のソルビタンセスキオレート21.2gとHLBが13.5のポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを6.5gを溶解したパラフィン油249.0gに加えたこと以外は、製造例14と同様に実施した。
<比較製造例7>
油中水型エマルションB7は、ノニオン系界面活性剤をHLBが3.7のソルビタンセスキオレート27.2g溶解したパラフィン油245.0gに加えたこと以外は、製造例11と同様に実施した。
<比較製造例8>
油中水型エマルションB8は、ノニオン系界面活性剤2種類をHLBが4.5となるようにHLBが3.7のソルビタンセスキオレート10.5gとHLBが5.0のオレイン酸ジエタノールアミドを16.8gを溶解したパラフィン油246gに加えたこと以外は、製造例13と同様に実施した。
<比較製造例9>
油中水型エマルションB9は、架橋剤を添加しないこと以外は、製造例11と同様に実施した。
<比較製造例10>
油中水型エマルションB10は、多官能架橋剤MBAAmを用いた以外は、比較製造例7と同様に実施した。
<比較製造例11>
油中水型エマルションB11は、多官能架橋剤P−30Mを用い、HLBが8.6のノニオン系界面活性剤ソルビタンモノラウレート28.3gをパラフィン油254.2gに加え、重合終了後、親水性界面活性剤として、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルを11.3g加えた以外は製造例11と同様に実施した。
<実施例21〜25、比較例13〜17>
化学工場から採取した初沈汚泥と余剰汚泥が混合された混合汚泥について、凝集ろ過および脱水処理のテーブルテストを実施した。なお、この混合汚泥の性状は、pH=6.2、TS=12,500mg/L、VTS/TS=85.2質量%、SS=10,800mg/L、VSS/SS=82.0質量%、繊維分/SS=20.5質量%、電気伝導度=104mS/mであった。
まず、この汚泥200mLを300mLのビーカーに入れた。この汚泥に、pHが5.0となるまでポリ硫酸第二鉄2,500ppmを添加した。これに、製造例10〜12および比較製造例5〜7で製造した重合体を、それぞれ汚泥質量に対して200ppm添加した。ジャーテスターを用いて、この汚泥を200rpmで1分間攪拌することにより、汚泥フロックを形成させ、フロック径を目視で測定した。次に、この凝集した汚泥全量を内径75mm、深さ100mm、目開き250μmのステンレス製篩に一気にそそぎ込み、重力ろ過した。あとは実施例1と同様に操作して、10秒後ろ液量、ろ液の外観、脱水ケーキの含水率を測定した。これらの評価結果を表5に示した。また、前述の方法で評価したエマルションの安定性の評価結果も表5に合わせて示した。
Figure 0006486006
実施例で用いた重合体(A11〜A15)は、比較例で用いた重合体(B9〜B11)と比較して形成されるフロックの粒径が同等もしくはより大きく、10秒後ろ液量が多いのでろ過性に優れる。また、ろ液の外観にも優れ、得られる脱水ケーキの含水率も低い。よって、実施例で用いた重合体は、比較例で用いた重合体よりも高分子凝集剤の性能が優れている。比較例で用いた重合体(B8)は、凝集性能は実施例で用いた重合体と同等レベルであるが、エマルションの安定性に劣る。

Claims (7)

  1. 少なくともカチオン性単量体と、ラジカル重合性の多官能性の架橋性単量体と、を含む単量体混合物を、HLBが3〜7の範囲内の界面活性剤を少なくとも2種類と、HLBが10〜17の範囲内の界面活性剤を少なくとも1種と、を含む3種類以上の界面活性剤を混合してHLB値の加重平均が5.0〜9.0の範囲になるように調整した界面活性剤の存在下、油中水型エマルション重合して架橋型重合体を得ることを特徴とする、高分子凝集剤の製造方法。
  2. 前記架橋型重合体が、
    全単量体に対する前記架橋性単量体の添加量(ppm)をAとし、
    前記架橋型重合体の0.5%粘度(mPa・s)をBとし、
    前記架橋型重合体の0.1%塩粘度(mPa・s)をCとした場合、
    下記式(5)
    40 ≦ (B/C/A) ≦ 120 式(5)
    を満たす請求項1に記載の高分子凝集剤の製造方法。
  3. 前記単量体混合物が、アニオン性単量体およびノニオン性単量体を含む請求項1又は2に記載の高分子凝集剤の製造方法。
  4. 前記カチオン性単量体が、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体の1種または2種以上を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の高分子凝集剤の製造方法
    CH=CR−CO−X−Q−N・Z (1)
    (但し、Rは水素原子またはメチル基、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基であり、同種でも異種でもよい。Xは酸素原子またはNH、Qは炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンをそれぞれ表す。)
  5. 前記架橋性単量体が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリレート系架橋性単量体である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の高分子凝集剤の製造方法
  6. 前記(メタ)アクリレート系架橋性単量体が、下記一般式(2)〜(4)で表される1種または2種以上を含む請求項5に記載の高分子凝集剤の製造方法
    Figure 0006486006
    (但し、R、R、Rはそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基、l、m、nはそれぞれ独立に0〜5の整数、R、R、R10はそれぞれ独立にアクリロイル基またはメタクリロイル基、R11はヒドロキシ基、メチル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基をそれぞれ表す。)
    Figure 0006486006
    (但し、R12〜R17はそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基、p1、p2、q1、q2、r1、r2はそれぞれ独立に0〜5の整数、R18〜R22はそれぞれ独立にアクリロイル基またはメタクリロイル基、R23は水素原子、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表す。)
    Figure 0006486006
    (但し、R24〜R27はそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキレン基、s1、s2、t1、t2はそれぞれ独立に0〜5の整数、R28〜R31はそれぞれ独立にアクリロイル基またはメタクリロイル基を表す。)
  7. 前記(メタ)アクリレート系架橋性単量体が
    ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートから選択される1種または2種以上である請求項5または請求項に記載の高分子凝集剤の製造方法
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