JP5866096B2 - 廃水処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機凝結剤を用いる製紙廃水等の処理方法に関する。
従来、廃水処理方法として、廃水に無機凝結剤を添加混合し、さらに高分子凝集剤を添加混合することにより、廃水中の懸濁物を凝集沈殿させる方法がある。かかる廃水処理方法では、凝結剤の荷電中和作用により廃水中の懸濁物の表面電荷を中和し、懸濁物同士の反発力を小さくする。これにより懸濁物を凝結させて1次凝集フロックを形成し、さらに高分子凝結剤を加えて生成させた2次凝集フロックを固液分離することにより懸濁物を廃水から除去する。しかし、この方法は多量の無機凝結剤が必要となるため、廃水処理後の固液分離で生じるスラッジ量が多量になり、スラッジの処理コストが上昇する。
凝結剤の添加量を低減するため、無機凝結剤に代わり有機凝結剤を使用することが検討されている。特許文献1には、固有粘度が0.05〜1.0dl/gであるポリジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレート等を使用した脱墨廃水の処理方法が記載されている(請求項1)。特許文献2には、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを有機凝結剤として使用した廃水処理の方法が記載されている(請求項2)。特許文献3には、アルキレンジアミン類とエピハロヒドリンを反応して得られる有機凝結剤による廃水処理について記載されている(請求項1)。また、特許文献4には、原水にポリアミン等の有機凝結剤、または無機凝結剤と有機凝結剤とを添加混合した後、高分子凝集剤を添加混合する浄水の処理方法が記載されている(要約)。
有機凝結剤を用いる場合、廃水に対する添加量は、無機凝結剤を用いる場合と比較して少量である。しかし有機凝結剤の添加により形成されるフロックのフロック径や沈降速度などに表れる凝集性能や処理水の清澄性(濁度、懸濁物(SS)質量)を評価すると、いまだ有機凝結剤は十分な凝集性能を備えているとはいえない。また、無機凝結剤と比較して高価な有機凝結剤を大量に使用する場合は、コスト上の問題も生じる。従って有機凝結剤を使用する廃水処理方法においては、更に有機凝結剤の添加量を抑制し、凝集性能や処理水の清澄性(濁度、懸濁物(SS)質量)を向上させることが求められている。
特開平10−118660号公報 特開2001−38104号公報 特開2009−125649号公報 特開2002−346572号公報
本発明の目的は、上記の課題を解決し、無機凝結剤の添加量を低減し、かつ清澄性の高い処理水を得ることができる廃水の処理方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討を続け、所定の物性を有する両性またはカチオン性水溶性重合体からなる有機凝結剤を廃水に添加混合することにより、無機凝結剤を使用することなく、又は添加量を少量に抑制して優れた凝集性能を得られることを見いだした。
PAC(ポリ塩化アルミニウム)や硫酸バンドなどの無機凝結剤の凝結作用は、主にそのカチオン性に基づく荷電中和作用によるものであることから、従来の有機凝結剤は、高カチオン性で比較的低分子量の水溶性高分子について研究開発が行われてきた。しかしながら、本発明者らが種々の構造及び物性を持った水溶性高分子について有機凝結剤としての性能を調べたところ、必ずしも高カチオン性で低分子量の水溶性高分子でなくとも有機凝結剤として高い性能を示すものがあることを見出した。これは、水溶性高分子の場合、無機凝結剤の主たる凝結作用である荷電中和作用だけでなく、高分子物質であることにより生じる、懸濁物に対する吸着や懸濁物間の架橋作用も寄与するためと考えられる。
本発明者らは、凝結性能の高い有機凝結剤の物性と凝結性能との相関関係について検討した結果、所定の組成を有し、25℃で測定される場合の0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が1〜100であり、25℃で測定される場合の0.5%塩粘度が1〜30mPa・sである両性またはカチオン性水溶性重合体が、従来の有機凝結剤に比べて優れた凝結作用を発現することを見出した。
上記の所定の組成と物性を有する水溶性重合体は、添加対象に塩類が溶解する場合にも分子の広がりが良好で、廃水中で懸濁物と効果的に架橋し、懸濁物の凝集に寄与する。
本発明者らは、上記の両性またはカチオン性水溶性重合体からなる有機凝結剤に関する知見に基づき、無機凝結剤の添加量を抑制し、かつ清澄性の高い処理水を得ることができる廃水処理方法を完成するに至った。
本発明は、工業廃水、無機物質懸濁廃水等に対し、少なくとも1次凝集工程と2次凝集工程とを行う廃水処理方法である。1次凝集工程では、所定の有機凝結剤を廃水に添加混合して1次凝集フロックを形成する。2次凝集工程では、1次凝集フロックが形成された廃水に、さらに高分子凝集剤を添加混合して2次凝集フロックを形成する。本発明は、形成された2次凝集フロックを固液分離して清澄な処理水を得ることができる。
本発明は、少なくとも、下記一般式(1)
(化1)
CH=CR−CO−X−Q−N+ R・Z(1)
[式(1)中、XはOまたはNH;Qは炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基;RはHまたはメチル基;Rは炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基、R、Rはそれぞれ独立にH、炭素数1〜3のアルキル基、Zは対アニオンを表す。]
で表されるカチオン性モノマーに由来する構成単位を50〜100モル%と、下記一般式(2)
(化2)
CH=CR−A−B (2)
[式(2)中、Rは水素、メチル基、またはCOOB、Rは水素、メチル基、またはCHCOOB、AはCOO、SO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOでありB、Bは水素または陽イオンをそれぞれ表す。]
で表されるアニオン性モノマーに由来する構成単位を0〜30モル%と、その他のモノマーに由来する構成単位を0〜50モル%とを含有し、25℃で測定される場合の0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が1〜100であって、25℃で測定される場合の0.5%塩粘度が1〜30mPa・sである水溶性重合体からなる有機凝結剤を廃水に添加混合して1次凝集フロックを形成する1次凝集工程と、前記1次凝集フロックを形成した廃水に、さらに高分子凝集剤を添加、混合して2次凝集フロックを形成する2次凝集工程と、を含む廃水処理方法である。上記水溶性重合体は、両性またはカチオン性水溶性重合体であることが好ましい。本発明は、1次凝集工程でさらに無機凝結剤を添加混合させることが好ましい。上記カチオン性モノマーは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級化物であることが好ましい。本発明は、無機物質懸濁廃水や製紙廃水、食品加工工場廃水の処理方法として好ましい。
本発明は、廃水の処理に際し、無機凝結剤を使用することなく、又は添加量を少量に抑制して、かつ清澄性の高い処理水を得ることができる。
以下、本発明の廃水の処理方法の詳細について記載する。
本発明の処理対象となる廃水には産業廃水、無機物質懸濁廃水等が含まれる。廃水については後に詳説する。
(1)1次凝集工程
本発明の1次凝集工程では、廃水に、後に詳説する所定の有機凝結剤を添加混合する。廃水に所定の有機凝結剤を添加し、通常の凝集沈殿法と同様にして撹拌することにより、廃水中のSS等が凝集して1次凝集フロックが形成される。
(1−1)有機凝結剤
本発明で用いられる有機凝結剤は、上記式(1)で表されるカチオン性モノマーに由来する構成単位を50〜100モル%と、上記式(2)で表されるアニオン性モノマーに由来する構成単位を0〜30モル%と、その他のモノマーに由来する構成単位を0〜50モル%とを含有する水溶性重合体からなる。
上記の水溶性重合体は、25℃で測定される場合の0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が1〜100であることが好ましく、1〜80であることがより好ましく、1〜70であることがさらに好ましい。「0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値」が100を超えると、廃水の処理性が悪化し、微小SSをとりきれず、処理水の清澄性が悪化する。
また、該水溶性重合体における25℃で測定される場合の0.5%塩粘度は、1〜30mPa・sが好ましく、1〜25mPa・sがより好ましく、1〜20mPa・sが特に好ましい。30mPa・sを超えると、微小なSSを取りきれず、処理水の清澄性が悪化する。
「0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値」は、水溶性重合体分子の廃水中における分子の広がりを示す指標である。この値が小さいほど、水溶性高分子を廃水中に添加したときに高分子の分子の広がりが減少しがたいことを示す。
「0.5%溶液粘度」および「0.5%塩粘度」の測定方法は後に詳説するが、水溶性重合体をイオン交換水および4質量%塩化ナトリウム水溶液に、それぞれ固形分換算で0.5質量%になるように加えて溶解させ、25℃で測定した場合の粘度に基づき算出する。
水溶性重合体の分子形状は、水中の塩濃度に影響をうけることが知られている。塩類が溶解した水溶液に水溶性重合体を添加する場合、分子の広がりは純水中に比べて大きく減少する。
廃水には、様々な塩類を含むものが種々存在する。従って塩類を含む廃液に、通常の水溶性重合体を添加する場合、分子の広がりが小さくなる。
本発明で使用する有機凝結剤は、0.5%溶液粘度や0.5%塩粘度に関して上記所定の値を示し、廃水中で分子の広がりが減少しがたい水溶性高分子からなる。その結果、本発明で用いる有機凝結剤は、廃液中の有機物や懸濁物、無機物等の物質に対する電荷中和や架橋反応が廃水中で十分に行われ、凝集性能が良好である。
0.5%溶液粘度や0.5%塩粘度は、水溶性重合体の組成や分子量等に応じて異なる。従って、両性またはカチオン性水溶性重合体の組成や重合条件を以下に説明する内容で調節することにより、本発明に用いる水溶性重合体の25℃で測定される場合の0.5%塩粘度を1〜30mPa・sに調節し、0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値を1〜100に調節することができる。
以下に、本発明において有機凝結剤として用いる両性水溶性重合体およびカチオン性水溶性重合体を、組成を中心にそれぞれ説明する。
(1−2)両性水溶性重合体
本発明で用いる両性水溶性重合体は、両性水溶性重合体の全構成単位に対し、上記式 (1)で表されるカチオン性モノマーに由来する構成単位を50〜70モル%含有することが好ましく、より好ましくは、60〜70モル%含有する。さらに上記式(2)で表されるアニオン性モノマーに由来する構成単位を、1〜30モル%含有することが好ましく、より好ましくは5〜20モル%含有する。また、更にその他のモノマーに由来する構成単位を0〜20モル%含有する。カチオン性モノマーの含有量が50モル%より少ない場合は、十分な荷電中和性能が備わらず効果的に1次凝集フロックを形成することができない。
重合の構成単位となる上記式(1)で表される構造において、対アニオンとしては、塩素イオン等のハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、メチルスルホン酸イオンを挙げることができる。上記式(1)で表されるカチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、及びジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、両者をジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートと表す。以降、他のモノマーについても同様な構造類似体は(メタ)を付けて表す。) の塩、塩化メチルや塩化ベンジル等による4級化物等が好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級化物がより好ましい。
アニオン性モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸及びその塩、クロトン酸、イタコン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸及びその塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルキルアルカンスルホン酸及びその塩、並びにビニルスルホン酸およびその塩や4−ビニル安息香酸及びその塩が挙げられる。塩としては、アンモニウム塩、並びにナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸およびその塩が好ましい。
本発明の両性水溶性重合体は、少なくとも、上記のカチオン性モノマーおよびアニオン性モノマーをそれぞれ1種類以上含有するモノマー混合物を重合して得ることができる。さらに他のモノマーと共に共重合してもよい。
他のモノマーとしては、ノニオン性モノマーおよび疎水性モノマーを含有させることができる。
ノニオン性モノマーとしては、ラジカル重合性を有するものであれば種々の化合物を使用でき、具体的には、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド及びジエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。これらの中でも、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
また本発明の効果を損なわない限り、他の疎水性モノマーも使用することができる。
疎水性モノマーとしては、ラジカル重合性を有するものであれば種々の化合物を使用でき、具体的には、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びビニルアセテート等を挙げることができる。これら他のモノマーは単独でも2種類以上を使用してもよい。
重合方法としてはラジカル重合が好ましい。ラジカル重合方法としては、連続滴下重合、塊状重合、懸濁重合、分散重合、エマルション重合、水溶液重合、水溶液ゲル重合等、従来公知のラジカル重合方法を用いることができる。これらのラジカル重合方法の中では、製造コストや重合物の取り扱い易さから、連続滴下重合、水溶液ゲル重合、エマルション重合が好ましい。
いずれの重合方法を用いるかは、有機凝結剤に必要とされる物性により適宜選択される。0.5%塩粘度が3mPa・sより低い有機凝結剤を製造する場合は連続滴下重合、3mPa・sより高い有機凝結剤を製造する場合は水溶液ゲル重合、エマルション重合を選択することが好ましい。
ラジカル重合における重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過酢酸、t−ブチルハイドパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、アゾビスシアノバレリン酸、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド、アゾビスシアノバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化水素、過硫酸ナトリウム等の過酸化物と、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸等還元剤との組み合わせからなるレドックス系開始剤、及び光重合開始剤等を、重合方法に応じて適宜利用できる。重合開始剤の使用量はモノマーの合計質量に対し0.001〜5%が好ましい。
また、必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、メチルアミン、ジメチルアミン等のアミン類、メタンチオール、エタンチオール等のチオール類、メタリルスルホン酸およびその塩等を挙げることができる。
また、必要に応じて架橋剤を使用してもよい。架橋剤としては、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ジメタクリル酸エチレングリコール、N−ビニルアクリルアミド、トリアリルアミン等を挙げることができる
本発明に用いる水溶性重合体を、連続滴下重合や水溶液ゲル重合、エマルション重合等により製造する場合、公知の重合条件で製造することができる。
連続滴下重合の場合、重合温度は、通常40〜90℃が好ましい。分子量制御の観点から、重合温度は所定温度を一定に保つように制御することが好ましい。重合温度は反応溶液を適宜加熱・冷却することにより制御される。重合時間は、発熱により重合開始が確認されたときから1〜24時間が好ましい。重合反応は酸素の存在しない不活性雰囲気で行うことが好ましい。
水溶液ゲル重合の場合、重合開始温度は0〜35℃が好ましい。重合時間は0.1〜3時間が好ましい。重合反応は酸素の存在しない不活性雰囲気で行うことが好ましい。重合反応終了後には、必要に応じて適宜熱処理や乾燥を行う。
エマルション重合の場合、本発明に用いる所定のモノマーやラジカル開始剤、連鎖移動剤等を含有する水相と、非混和性の炭化水素からなる油状物質と、油中水型エマルションを形成するための有効量の界面活性剤とを用いて油中水型エマルションを形成させる。形成された油中水型エマルションを重合することにより本発明に用いる水溶性重合体を合成することができる。
油状物質としては、パラフィン類や、各種鉱油、これらと同等の特性を有する炭化水素系油、およびそれらの混合物を挙げることができる。油状物質の含有量は、油中水型エマルション全量に対して20〜50質量%であり、好ましくは25〜40質量%である。
油中水型エマルションを形成するための界面活性剤は、HLBが3〜11であることが好ましい。そのような界面活性剤の例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート等のノニオン性界面活性剤を挙げることができる。これら界面活性剤の有効な添加量は、油中水型エマルション全量に対して0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
エマルション重合を行う場合、重合条件は使用するモノマーや開始剤、重合体の物性に応じて適宜設定される。重合温度は0〜100℃で行い、20〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。モノマーの重合濃度は20〜50質量%が好ましく、25〜40質量%がより好ましい。また、重合反応は酸素の無い不活性雰囲気で行うことが好ましい。重合時間は1〜10時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。
本発明の両性水溶性重合体の好ましい0.5%塩粘度は、1〜30mPa・sである。重合度の調節は、重合触媒濃度、架橋剤、連鎖移動剤の使用等、公知の方法により行うことができる。
架橋度と重合度を調節することにより、25℃で測定される場合の0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が1〜100であり、塩粘度が1〜30mPa・sである両性水溶性重合体を得ることができる。かかる両性水溶性重合体を廃水に添加することにより、効果的に1次凝集フロックを形成することができる。
(1−3)カチオン性水溶性重合体
本発明で有機凝結剤として用いるカチオン性水溶性重合体は、少なくとも上記式(1)で表されるカチオン性モノマーに由来する構成単位を、50〜100モル%含有し、好ましくは、80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含有する。カチオン性水溶性重合体には、その他のモノマーに由来する構成単位を含んでも良い。その他のモノマーの構成単位は、0〜50モル%であり、好ましくは0〜20モル%であり、より好ましくは、0〜10モル%である。
重合体の構成単位となる上記式(1)で表されるカチオン性モノマーやその他のモノマーは、上記の両性水溶性重合体の製造に用いるカチオン性モノマーおよびその他のモノマーと同じものを用いることができる。
カチオン性水溶性重合体は、少なくとも上記式(1)で表されるカチオン性モノマーを含む組成物を、公知の重合方法を用いて重合させることにより得ることができる。公知の重合方法は前記のとおりである。
本発明のカチオン性水溶性重合体の好ましい0.5%塩粘度は、1〜30mPa・sである。重合度の調節は、重合触媒濃度、架橋剤、連鎖移動剤の使用等、公知の方法により行うことができる。架橋剤や連鎖移動剤は、本発明の両性水溶性重合体の重合に用いるものと同じものを用いることができる。
架橋度と重合度を調節することにより、25℃で測定される場合の0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が1〜100であり、0.5%塩粘度が1〜30mPa・sであるカチオン性水溶性重合体を得ることができる。かかるカチオン性水溶性重合体を廃水に添加することにより、効果的に1次凝集フロックを形成することができる。
上記の両性またはカチオン性水溶性重合体からなる有機凝結剤の添加量は、廃水のpH、SS、溶解性物質濃度等の廃水の性状、無機凝結剤を併用する場合はその添加量に応じて調整される。有機凝結剤の添加量は、廃水の量に対して固形分換算で通常0.1〜20mg/l、好ましくは0.5〜10mg/lである。
無機凝結剤を併用する場合は、無機凝結剤の添加量も考慮される。例えば、有機凝結剤を使用することにより低減された無機凝結剤の量100質量部に対し、有機凝結剤の添加量を0.1〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。無機凝結剤については、後に詳説する。
廃水に添加される有機凝結剤の態様は、溶液、粉末、エマルション等、特に限定されないが水溶液であることが好ましい。
本発明の有機凝結剤は本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤等の添加剤を加えてもよい。
(1−4)他の凝結剤
本発明は、1次凝集工程において凝結作用を向上させるために、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに公知の無機凝結剤や、上記に説明した所定の有機凝結剤と異なる他の有機凝結剤を併用することができる。
公知の無機凝結剤の例としては、硫酸バンドやポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミ、 塩化第2鉄、硫酸第1鉄、ポリ鉄、ポリシリカ鉄等を挙げることができる。これらの無機凝結剤は単独でも2種類以上用いてもよい。
無機凝結剤を併用する場合の添加量は、廃水のpH、SS、TS等、廃水の性状に応じて調整される。無機凝結剤の添加量は廃水の量に対して固形分換算で通常10〜2000mg/lであり、好ましくは50〜2000mg/lである。
廃水に添加される無機凝結剤の態様は、溶液、粉末等、特に限定されないが水溶液であることが好ましい。
他の有機凝結剤の例としては、エピクロルヒドリンとジメチルアミンの縮合物 、ポリエチレンイミン塩酸塩、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
1次凝集工程で本発明の有機凝結剤と他の有機凝結剤や無機凝結剤を併用する場合、廃水への添加順序は特に制限されない。本発明の有機凝結剤と他の有機凝結剤や無機凝結剤を個別に廃水に添加してもよく、予め混合して添加することもできる。本発明の有機凝結剤と無機凝結剤を併用する場合は、無機凝結剤を添加混合後、有機凝結剤を添加混合することが好ましい。
本発明は、上記(1−1)、(1−2)、(1−3)に説明した有機凝結剤を廃水に添加するため、無機凝結剤を大量に添加する必要がない。有機凝結剤の荷電中和作用および吸着・架橋作用により、無機凝結剤を添加することなく、または添加量を少量に抑制しても十分に凝集性能が発揮され、清澄性の良好な処理水を得ることができる。
(1−5)廃水
本発明の処理対象となる廃水には、産業廃水、無機物質懸濁廃水等が含まれる。
具体的には、自動車業、製鉄業等の工業廃水、クリーニング業廃水、金属加工業の廃液が挙げられる。金属加工業の廃液には、例えば、ダイキャスト鋳造、熱間鍛造で用いられる水溶性または水分散性の処理液や潤滑剤、切削油等を含む廃液が挙げられる。
他の例としては、半導体製造や液晶パネル製造における現像工程、剥離工程、エッチング工程、洗浄工程等で発生する電子産業廃水、塗装・染色工場で発生する有機性廃水、化学工場廃水、下水処理場等における下水の汚濁廃水がある。他に、食肉加工工場廃水、食品加工工場廃水がある。食品加工工場廃水には、有機質、油分が多く含まれる。
他の例として、動物や魚の血液等を含む畜産系処理水や、し尿及び有機性産業汚濁廃水がある。
さらに他の例として、地盤改良、トンネル掘削、ビル建設現場等で発生する工事・建設汚濁廃水、砂利採取、砂利砕石、河川、港湾等の工事現場で発生する浚渫泥漿等が挙げられる。一般的にこれらの廃水には無機懸濁物が多量に含まれる。
本発明は、製紙工業で発生する製紙廃水の処理に有効である。製紙廃水とは、古紙パルプを製造する際に排出される古紙パルプ製造廃水、クラフトパルプ(KP)を製造する際に排出されるクラフトパルプ製造廃水、機械パルプを製造する際に排出される機械パルプ製造廃水、塗料を紙に塗工する際に排出される塗工液廃水、パルプを抄紙する際に排出される抄紙工程廃水、塩素で漂白処理をした際に排出される晒し系廃水等である。さらにこれらの製紙廃水を活性汚泥処理した廃水、クラリファイヤー処理水、及びこれらを更に硫酸アルミニウム等で処理した廃水、さらに上述の各種製紙廃水や、冷却廃水等からなる総合廃水であってもよい。一般的に、前記製紙廃水には、繊維分、填料、顔料等の懸濁物質が含まれる。
(2)2次凝集工程
2次凝集工程では、1次凝集フロックが形成された廃水に、さらに高分子凝集剤を添加混合する。1次凝集フロックがさらに粗大化した2次凝集フロックが形成される。
本工程では、公知のアニオン性またはノニオン性高分子凝集剤を用いることができる。アニオン性高分子凝集剤としては、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物、アクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの共重合物、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のナトリウムまたはアンモニウム塩の共重合物、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドの部分加水分解物等を挙げることができる。ノニオン性高分子凝集剤としてはポリアクリルアミド、アクリルアミドと他のノニオン性モノマーの共重合物等を挙げることができる。
高分子凝集剤の好ましい重量平均分子量は200万〜2000万である。
高分子凝集剤の添加量は、1次凝集工程後の廃水の性状により調整される。添加量は1次凝集工程で処理された廃水中に廃水の量に対して固形分換算で0.05〜20mg/lが好ましく、より好ましくは0.1〜10mg/lである。
2次凝集工程で高分子凝集剤が添加混合されることにより、廃水内に粗大化した2次凝集フロックが形成される。
(3)2次凝集工程後の処理
2次凝集工程で形成される2次凝集フロックを固液分離することにより、清澄な処理水を得ることができる。
固液分離の方法は従来公知の方法で行うことができる。例えば、沈降分離、加圧浮上、濾過などにより固液分離でき、好ましくは沈降分離が行われる。2次凝集フロックやその他の懸濁物を固液分離することにより、清澄性の良好な処理水を得ることができる。
本発明の廃水処理方法は、適宜pH調整剤を廃水に添加しながら行ってもよい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(有機凝結剤)
表1に示す組成のモノマーを重合して得られる水溶性重合体A1〜A16およびB1〜B4の0.1質量%水溶液を用いた。表1における略号DMC、DAB、DAC、AcAおよびAMDは以下を意味する 。
DMC:ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級化物
DAB:ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化ベンジル4級化物
DAC:ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級化物
AcA:アクリル酸
AMD:アクリルアミド
Figure 0005866096
(製造例1:連続滴下重合)
有機凝結剤A1は、以下に記載する工程により合成した。
窒素吹き込み管、撹拌翼、温度計、還流冷却器を取り付けた1500ml四つ口セパラブルフラスコに蒸留水640gを量り採り、窒素ガスを吹き込みながら撹拌し、内温が80℃になるように加熱した。窒素雰囲気下、10%過硫酸アンモニウム水溶液4mlを投入し5分間撹拌した。この水溶液に脱気した78%DMC水溶液230g、10%過硫酸アンモニウム水溶液32ml、脱気した5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20mlを2時間かけて滴下した。滴下中の溶液温度は80℃±1℃になるように反応槽温度を制御した。滴下終了後、残存するモノマーを低減するために、10%過硫酸アンモニウム水溶液4mlを加えてさらに1時間撹拌した。溶液を冷却し、水溶性重合体A1の水溶液を得た。得られた有機凝結剤A1のサンプルをとり、B型粘度計により0.5%塩粘度を測定した。0.5%塩粘度は1.04mPa・sであった。
(製造例2:エマルション重合)
有機凝結剤A7は、以下に記載する工程により合成した。
1000ml四つ口セパラブルフラスコに50%アクリルアミド水溶液11.0g、79%ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級化物360.0g、連鎖移動剤としてメタリルスルホン酸ナトリウム0.29g(モノマーに対し0.1質量%)および蒸留水を投入し、濃硫酸でpHを4に調整した後、開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩を1.1g含む水溶液20gを添加し、全量400gのモノマー水溶液になるように調製した。さらに、この単量体水溶液をHLB4.2のノニオン性界面活性剤9.9gを溶解したパラフィン油160gに加え、ホモジナイザーにて高速攪拌して乳化した。フラスコに窒素ガス吹き込み管、還流冷却器、温度計を取り付け、攪拌機を通常の化学反応用の攪拌機に代え、攪拌しながらこの乳化液中に30分間窒素ガスを通し脱気した後、50℃に昇温して、窒素ガス雰囲気下で4時間重合を行った。重合終了後、HLBが13.0のノニオン性界面活性剤10.5gを加えてエマルションの有機凝結剤A7を得た。得られた有機凝結剤A7のサンプルをとり、B型粘度計により0.5%塩粘度を測定した。0.5%塩粘度は11.5mPa・sであった。
有機凝結剤A2〜6およびA8〜A16は、製造例1または2と同様にして反応条件を適宜調整することにより得た。
(無機凝結剤)
硫酸バンドの0.8質量%水溶液、又はポリ塩化アルミニウム(PAC)の1.2質量%水溶液、又はポリ鉄の1.5質量%水溶液を用いた。 AcNaは、アクリル酸ナトリウムの略号である。AMDは、アクリルアミドの略号である。
(高分子凝集剤)
ポリアクリルアミド系凝集剤A〜Dを用いた。
高分子凝集剤A:AcNa/AMD=8/92(mol/mol)、固有粘度=19.3dl/g
高分子凝集剤B:AcNa/AMD=12/88(mol/mol)、固有粘度=21dl/g
高分子凝集剤C:AcNa/AMD=20/80(mol/mol)、固有粘度=20dl/g
高分子凝集剤D:AcNa/AMD=5/95(mol/mol)、固有粘度=20dl/g
(廃水)
異なる製紙工場から排出される総合廃水(廃水A、廃水B)、食品工場廃水(廃水C)と砂利砕石廃水(廃水D)を処理対象とした。廃水A、廃水B、廃水Cと廃水Dの性状は以下のとおりである。
廃水A:pH=7.56、SS=600mg/l、TS=1300mg/l
廃水B:pH=5.72、SS=1800mg/l、TS=3500mg/l
廃水C:pH=7.03、SS=450mg/l、TS=1100mg/l
廃水D:pH=8.05、SS=19600mg/l、TS=18800mg/l
(水溶性重合体の0.5%塩粘度と0.5%粘度の測定)
表1の水溶性重合体A1〜16およびB1〜4のサンプルを、500mlトールビーカー中でイオン交換水で調整した4質量%の塩化ナトリウム水溶液500mlに、固形分換算で0.5質量%になるように加えた。サンプルが完全に溶解するまで25±1℃の恒温水槽中でスクリュー翼(約6cmφ)を用いて200rpmで撹拌した。このサンプル溶液の粘度を、M1ローターを付けた東機産業社製TV−10M型 B型粘度計を用いて60rpm、25±1℃で3分間回転後の値を読み取り、これを0.5%塩粘度とした。粘度がM1ローターの測定上限を超えた場合は、M2ローターを使用した。
表1の水溶性重合体A1〜16およびB1〜4のサンプルをイオン交換水500mlに、固形分換算で0.5質量%になるように加え、上記の0.5%塩粘度の測定溶液と同様の方法で溶解させて、0.5質量%の溶液を調整した。このサンプル溶液の粘度を、M1ローターを付けた東機産業社製TV−10M型 B型粘度計を用いて30rpm、25±1℃で3分間回転後の値を読み取り、これを0.5%溶液粘度とした。粘度がM1ローターの測定上限を超えた場合は、M2ローターを使用した。
(沈降時間)
2次凝集工程後、撹拌停止後に 、2次凝集フロックが500mlビーカーの底に沈降するまでの時間を測定し、沈降時間とした。
(透視度)
JIS K0102工場排水試験法に従い、透視度計を用いて目視で測定した。
(実施例1〜16、比較例1〜6)
500mlのビーカーに廃水Aを500ml採取し、無機凝結剤として硫酸バンドの0.8質量%水溶液を表2に示す添加量で添加し、120rpm×30秒で撹拌した。続いて、表1に示す有機凝結剤A1〜16およびB1〜4の0.1%水溶液を表2に示す添加量でそれぞれ添加し、120rpm×60秒撹拌した。その後、さらに高分子凝集剤Aを0.5mg/l添加して120rpm×60秒、続いて60rpm×60秒撹拌し、凝集フロックを形成させ、撹拌停止後にフロックが500mlビーカーの底に沈降するまでの沈降時間を測定した。1分間静置後、フロック径と、透視度を測定した。各実施例および比較例で形成されたフロックのフロック径、沈降時間および透視度を表2に示す。
Figure 0005866096


比較例1は、1次凝集工程で無機凝結剤だけを添加する従来の廃水処理方法である。実施例1〜16は、本発明の所定の有機凝結剤と無機凝結剤とを添加した。無機凝結剤の添加量は比較例1の1/2であったが、良好な凝集性能を発揮した。廃水の透視度も比較例1と比較して向上した。
比較例2は、有機凝結剤を添加しなかった。結果は、実施例1〜16及び比較例1に比べ凝集性能が低下し、廃水の透視度も劣った。
比較例3と比較例4は、用いた水溶性重合体の、0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が本発明の規定範囲の上限を超えた。結果は、微小SSが取りきれず、処理水の清澄性が実施例1〜16と比較して劣った。
比較例5は、有機凝結剤中のカチオン性モノマーの割合が本発明の規定範囲の下限を下回った。結果は、凝集性能、清澄性が共に実施例1〜16と比較して劣った。
比較例6は、用いた水溶性重合体の、0.5%塩粘度が本発明の規定範囲の上限を超えた。結果は、凝集性能、清澄性が共に実施例1〜16と比較して劣った。
(実施例17〜32、比較例7〜12)
500mlのビーカーに廃水Bを500ml採取し、無機凝結剤としてPACの1.2質量%水溶液を表3に示す添加量で添加し、120rpm×30秒で撹拌した。続いて、表1に示す有機凝結剤A1〜16およびB1〜4の0.1%水溶液を表3に示す添加量でそれぞれ添加し、120rpm×60秒撹拌した。その後、さらに高分子凝集剤Bを0.5mg/l添加して120rpm×60秒、続いて60rpm×60秒撹拌し、凝集フロックを形成させ、撹拌停止後にフロックが500mlビーカーの底に沈降するまでの沈降時間を測定した。1分間静置後、フロック径と、透視度を測定した。各実施例および比較例で形成されたフロックのフロック径、沈降時間および透視度を表3に示す。
Figure 0005866096
比較例7は、1次凝集工程で無機凝結剤だけを添加する従来の廃水処理方法である。実施例17〜32は、本発明の所定の有機凝結剤と無機凝結剤とを添加した。無機凝結剤の添加量は比較例7の1/2であったが、良好な凝集性能を発揮した。廃水の透視度も比較例1と比較して向上した。
比較例8では、有機凝結剤を添加しなかった。結果は、実施例17〜32及び比較例7に比べ凝集性能が低下し、廃水の透視度も劣った。
比較例9と比較例10は、用いた水溶性重合体の、0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が本発明の規定範囲の上限を超えた。結果は、微小SSが取りきれず、処理水の清澄性が実施例17〜32と比較して劣った。
比較例11は、有機凝結剤中のカチオン性モノマーの割合が本発明の規定範囲の下限を下回った。結果は、凝集性能、清澄性が共に実施例17〜32と比較して劣った。
比較例12は、用いた水溶性重合体の、0.5%塩粘度が本発明の規定範囲の上限を超えた。結果は、凝集性能、清澄性が共に実施例17〜32と比較して劣った。
(実施例33〜48、比較例13〜18)
500mlのビーカーに廃水Cを500ml採取し、無機凝結剤としてポリ鉄の1.5質量%水溶液を表4に示す添加量で添加し、120rpm×30秒で撹拌した。続いて、表1に示す有機凝結剤A1〜16およびB1〜4の0.1%水溶液を表4に示す添加量でそれぞれ添加し、120rpm×60秒撹拌した。その後、さらに高分子凝集剤Cを5mg/l添加して120rpm×60秒、続いて60rpm×60秒撹拌し、凝集フロックを形成させ、撹拌停止後にフロックが500mlビーカーの底に沈降するまでの沈降時間を測定した。1分間静置後、フロック径と、透視度を測定した。各実施例および比較例で形成されたフロックのフロック径、沈降時間および透視度を表4に示す。
Figure 0005866096
比較例13は、1次凝集工程で無機凝結剤だけを添加する従来の廃水処理方法である。実施例33〜48は、本発明の所定の有機凝結剤と無機凝結剤とを添加した。無機凝結剤の添加量は比較例13の1/2であったが、良好な凝集性能を発揮した。廃水の透視度も比較例1と比較して向上した。
比較例14では、有機凝結剤を添加しなかった。結果は、実施例33〜48及び比較例7に比べ凝集性能が低下し、廃水の透視度も劣った。
比較例15と比較例16は、用いた水溶性重合体の、0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が本発明の規定範囲の上限を超えた。結果は、微小SSが取りきれず、処理水の清澄性が実施例33〜48と比較して劣った。
比較例17は、有機凝結剤中のカチオン性モノマーの割合が本発明の規定範囲の下限を下回った。結果は、凝集性能、清澄性が共に実施例33〜48と比較して劣った。
比較例18は、用いた水溶性重合体の、0.5%塩粘度が本発明の規定範囲の上限を超えた。結果は、凝集性能、清澄性が共に実施例33〜48と比較して劣った。
上記の実施例では、無機凝結剤の量を従来の添加量から少なくとも半減させることができた。有機凝結剤の添加量は、半減した無機凝結剤の添加量の100分の1以下である。
(実施例49〜68、比較例19〜23)
500mlのビーカーに廃水Dを500ml採取し、PACの1.2質量%水溶液を表5に示す添加量で添加し、120rpm×30秒で撹拌した(実施例65〜68および比較例19)。続いて、表5に示す有機凝結剤の0.1質量%水溶液を表5に示す添加量で添加し、120rpm×60秒で撹拌した(実施例49〜68、比較例20〜23)。その後、高分子凝集剤Dを10mg/l添加して120rpm×60秒、続いて60rpm×60秒撹拌した。形成された2次凝集フロックのフロック径を測定した。1分間静置後、ビーカー内の廃水の透視度を測定した。各実施例および比較例で形成されたフロックのフロック径および透視度を表5に示す。
Figure 0005866096
比較例19は、無機凝結剤だけを添加する従来の廃水処理方法である。実施例49〜64は、本発明の所定の有機凝結剤を添加した。無機凝結剤は添加しなかったが、良好な凝集性能を発揮した。廃水の透視度も比較例19と比較して向上した。
比較例20〜23は、無機凝結剤を使用しなかった。
比較例20と21は水溶性重合体の0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が、本発明に用いる水溶性重合体の規定範囲を超えていた。そのため、微小SSを取りきれず清澄性で劣った。
比較例22は、有機凝結剤中のカチオンモノマーの割合が、本発明に用いる水溶性重合体の規定範囲より低かった。そのため清澄性が劣った。
比較例23は、有機凝結剤の0.5%塩粘度が、本発明で用いる水溶性重合体の規定範囲の上限を超えていた。そのため、凝集性能が劣った。
実施例65〜68は、本発明の所定の有機凝結剤と無機凝結剤とを添加した。無機凝結剤の添加量は比較例19の1/2であったが、良好な凝集性能を発揮した。廃水の透視度も比較例19と比較して向上した。その結果は、有機凝結剤を単独で添加する実施例49〜64よりも更に良好であった。
上記の実施例49〜64の場合は、本発明は、無機凝結剤を使用することなく良好な凝集性能が発揮され、清澄性の良好な処理水を得ることができた。さらに、実施例65〜68の場合は、本発明の有機凝結剤と、無機凝結剤とを併用することにより、さらに良好な結果が得られた。有機凝結剤の添加量は、無機凝結剤を単独で使用する場合の添加量の100分の1以下であった。
すなわち、本発明は、無機凝結剤を使用することなく、又は無機凝結剤の添加量を従来に比べ大幅に低減しつつ良好な凝集性能を発揮する。これにより、清澄性の高い処理水を得る廃水処理方法を実現している。

Claims (7)

  1. 有機凝結剤を廃水に添加混合して1次凝集フロックを形成する1次凝集工程と、
    前記1次凝集フロックを形成した廃水に、さらに高分子凝集剤を添加、混合して2次凝集フロックを形成する2次凝集工程と、を含む廃水処理方法であって、
    前記1次凝集工程が、
    少なくとも、下記一般式(1)
    (化1)
    CH=CR−CO−X−Q−N+ R・Z(1)
    [式(1)中、XはOまたはNH;Qは炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基;RはHまたはメチル基;Rは炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基、R、Rはそれぞれ独立にH、炭素数1〜3のアルキル基、Zは対アニオンを表す。]
    で表されるカチオン性モノマーに由来する構成単位を50〜100モル%と、下記一般式(2)
    (化2)
    CH=CR−A−B (2)
    [式(2)中、Rは水素、メチル基、またはCOOB、Rは水素、メチル基、またはCHCOOB、AはCOO、SO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOでありB、Bは水素または陽イオンをそれぞれ表す。]
    で表されるアニオン性モノマーに由来する構成単位を0〜30モル%と、その他のモノマーに由来する構成単位を0〜50モル%とを含有し、25℃で測定される場合の0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が1〜100であって、25℃で測定される場合の0.5%塩粘度が1〜30mPa・sである水溶性重合体からなる有機凝結剤を廃水に添加混合して1次凝集フロックを形成する1次凝集工程であり
    前記2次凝集工程が、
    前記1次凝集フロックを形成した廃水に、さらに高分子凝集剤を添加、混合して2次凝集フロックを形成する2次凝集工程である、無機凝結剤を用いない廃水処理方法。
  2. 有機凝結剤を廃水に添加混合して1次凝集フロックを形成する1次凝集工程と、
    前記1次凝集フロックを形成した廃水に、さらに高分子凝集剤を添加、混合して2次凝集フロックを形成する2次凝集工程と、を含む廃水処理方法であって、
    前記1次凝集工程が、
    少なくとも、一般式(1)
    (化1)
    CH =CR −CO−X−Q−N+ R ・Z (1)
    [式(1)中、XはOまたはNH;Qは炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基;RはHまたはメチル基;R は炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基、R 、Rはそれぞれ独立にH、炭素数1〜3のアルキル基、Zは対アニオンを表す。]
    で表されるカチオン性モノマーに由来する構成単位を50〜70モル%と、一般式(2)(化2)
    CH=CR−A−B (2)
    [式(2)中、Rは水素、メチル基、またはCOOB、Rは水素、メチル基またはCHCOOB、AはCOO、SO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOでありB、Bは水素または陽イオンをそれぞれ表す。]
    で表されるアニオン性モノマーに由来する構成単位を1〜30モル%と、その他のモノマーに由来する構成単位を0〜20モル%とを含有し、25℃で測定される場合の0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が1〜100であって、25℃で測定される場合の0.5%塩粘度が1〜30mPa・sである両性水溶性重合体からなる有機凝結剤を廃水に添加混合して1次凝集フロックを形成する1次凝集工程であり
    前記2次凝集工程が、
    前記1次凝集フロックを形成した廃水に、さらに高分子凝集剤を添加、混合して2次凝集フロックを形成する2次凝集工程である廃水処理方法。
  3. 有機凝結剤を廃水に添加混合して1次凝集フロックを形成する1次凝集工程と、
    前記1次凝集フロックを形成した廃水に、さらに高分子凝集剤を添加、混合して2次凝集フロックを形成する2次凝集工程と、を含む廃水処理方法であって、
    前記1次凝集工程が、
    少なくとも、一般式(1)
    (化1)
    CH =CR −CO−X−Q−N+ R ・Z (1)
    [式(1)中、XはOまたはNH;Qは炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキレン基;RはHまたはメチル基;R は炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基、R 、Rはそれぞれ独立にH、炭素数1〜3のアルキル基、Zは対アニオンを表す。]
    で表されるカチオン性モノマーに由来する構成単位を50〜100モル%含有し、その他のモノマーに由来する構成単位を0〜50モル%含有し、25℃で測定される場合の0.5%溶液粘度を0.5%塩粘度で除した値が1〜100であって、25℃で測定される場合の0.5%塩粘度が1〜30mPa・sであるカチオン性水溶性重合体からなる有機凝結剤を廃水に添加混合する1次凝集工程であり
    前記2次凝集工程が、
    前記1次凝集工程で処理後の廃水に、さらに高分子凝集剤を添加、混合する2次凝集工程である廃水処理方法。
  4. 1次凝集工程において、さらに無機凝結剤を添加混合する請求項2又は3に記載の廃水の処理方法。
  5. 前記カチオン性モノマーが、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級化物である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の廃水処理方法。
  6. 廃水が無機物質懸濁廃水である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の廃水の処理方法。
  7. 廃水が製紙廃水または食品加工工場廃水である請求項1、4または5のいずれかに記載の廃水処理方法。
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