JP4196176B2 - 光ディスクの排出装置および該排出装置を備えたインクジェット式記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録用紙などの被噴射媒体を排出用駆動ローラの回動によって排出する被噴射媒体の排出装置および該排出装置を備えたインクジェット式記録装置等の液体噴射装置に関する。
【0002】
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンタ、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含む意味で用いる。 液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【0003】
【従来の技術】
以下、液体噴射装置の1つとしてのインクジェット式記録装置(以下「プリンタ」と略称する)および、被噴射媒体又は被記録材の1つとしてのコンパクトディスク(以下「CD」と略称する)を一例として説明する。プリンタには、CDのデジタルデータが記憶された面と反対側の面(ラベル面)に直接液体であるインク滴を吐出(噴射)し、印刷(記録実行)することができるものがある。また、CDは小型の円盤形状からなる為、プリンタの用紙搬送経路を搬送する為には、専用のトレイ(以下「搬送用トレイ」)と言う)にセットし、当該搬送用トレイにセットした状態で印刷を行う。
【0004】
ところで、プリンタの排出用ローラである排紙ローラが、回動駆動される排出用駆動ローラである排紙駆動ローラと、該排紙駆動ローラに弾性的に接して従動回動する排出用従動ローラである排紙従動ローラとによって構成され、且つ、前記排紙従動ローラが、外周に歯を有することによって印刷面と点接触する歯付きローラ(以下「歯付きローラ」と言う)である場合に、当該歯付きローラがCDの印刷面に圧接状態で接触すると、CDの印刷面の直下にあるデータ記憶領域を破壊する虞がある。従ってこの様な不具合を防止する観点から、CDへの印刷時には歯付きローラを排紙駆動ローラから離間位置に変位させ、CDの印刷面に接触しないように構成する必要がある。この為、歯付きローラを取り付ける排紙フレームは、歯付きローラが排紙駆動ローラに接触する接触姿勢と、排紙駆動ローラから離間する離間姿勢とを変化可能となるように設けられている。
【0005】
従来、排紙フレームを前記接触姿勢と前記離間姿勢とに変化させる手段は、操作レバーと、該操作レバーの切り替え操作と排紙フレームの姿勢変化とを連係させるリンク機構とによってなされていた(例えば特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特開平2002−192782号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来の構成では、前記操作レバーと、前記リンク機構とを設けることによって構成が複雑となり、部品点数も多くコストアップの一因となっていた。また、操作レバーとリンク機構とによって歯付きローラを変位させる為、歯付きローラの変位量の精度が低く、場合によっては、データ記憶領域を破壊する程では無いがCDの印刷面に軽く接触してしまうこともあった。
【0008】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、排出用従動ローラを排出用駆動ローラから離間させる構成を簡単に且つ低コストに得ると共に、排出用従動ローラを高精度に変位させる様にすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、被噴射媒体に液体噴射を実行する液体噴射ヘッドの下流側に設けられ、回動駆動される排出用駆動ローラと、付勢手段によって前記排出用駆動ローラに向けて付勢され、前記排出用駆動ローラに接して従動回動する排出用従動ローラと、前記排出用従動ローラを前記排出用駆動ローラに接触させる接触姿勢と、前記排出用従動ローラを前記排出用駆動ローラから離間させる離間姿勢とを変化可能に設けられる、前記排出用従動ローラを取り付ける排出用フレームと、を備えた、被噴射媒体を前記排出用駆動ローラの回動によって排出する被噴射媒体の排出装置であって、前記排出用フレームに、前記排出用駆動ローラと前記排出用従動ローラとの間から上流側に向けて前記付勢手段の付勢力に抗して差し込まれた搬送媒体の噴射実行領域外の部分と当接可能な当接部が設けられ、前記排出用駆動ローラと前記排出用従動ローラとの間から搬送媒体が上流側に向けて差し込まれたとき、当該搬送媒体の噴射実行領域外の部分が、前記当接部を押し退けることによって前記排出用フレームを前記接触姿勢から前記離間姿勢に変化させるように構成されている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、排出用駆動ローラと排出用従動ローラとの間から上流側に向けて挿入された搬送媒体の液体噴射実行領域外の部分が、直接に前記当接部を押し退けることによって排出用フレームを押し退け、これにより、排出用従動ローラを排出用駆動ローラから離間させるので、排出用フレームを前記接触姿勢から前記離間姿勢に変化させる為の操作レバーやリンク機構等が不要となり、従って排出用従動ローラを排出用駆動ローラから離間させる構成を構造簡単にして且つ低コストに得ることができると共に、搬送媒体が差し込まれると必ず排出用従動ローラが排出用駆動ローラから離間するので、ユーザによる操作ミスを防止することができる。また、搬送媒体それ自体が直接排出用フレームすなわち前記当接部を押し退ける為、操作レバーやリンク機構等を介して排出用フレームの姿勢を変化させる場合と比して排出用従動ローラを高精度に変位させることができる。
【0011】
尚ここで、「搬送媒体」とは、印刷用紙(例えば、厚手のボード紙)や、コンパクトディスクに代表される光ディスクのラベル面に直接印刷を行う為に当該光ディスクをセットするディスク搬送用トレイ等の、インクジェット式記録装置等の液体噴射装置における被噴射媒体搬送経路を搬送可能な媒体を言い、「被噴射媒体」とは、液体噴射装置における被噴射媒体搬送経路を搬送可能であるか否かを問わず、前述したボード紙或いは光ディスク等の、液体噴射装置において液体噴射が実行される媒体そのものを言う。
【0012】
また、本発明の第2の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、前記第1の態様において、前記当接部が設けられる前記排出用フレームは、下流側に支点をもって前記当接部が位置する上流側が揺動可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第3の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、本発明の第3の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、体の搬送方向と直交する幅方向に複数個配列され、前記当接部は前記複数個の排出用従動ローラの内の幅方向の端に位置するものの外側近傍に配設されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第4の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、前記第1の態様から第3の態様のいずれかにおいて、前記当接部は、前記被噴射媒体の幅方向の基準位置を決める基準位置側と反対側に設けられていることを特徴とする被噴射媒体の排出装置。
【0015】
また、本発明の第5の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、前記第1の態様から第4の態様のいずれかにおいて、前記当接部が、搬送媒体と接触して回動する回転体によって構成されていることを特徴とする。
本発明の第5の態様によれば、前記当接部が、搬送媒体と接触して回動する回転体によって構成されているので、搬送媒体に傷等のダメージを与えず、且つ、負荷無く円滑に搬送媒体を挿入することができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、前記第1の態様から第5の態様のいずれかにおいて、前記排出用従動ローラが、外周部に歯を有する歯付きローラであることを特徴とする。
【0017】
排出用従動ローラが、被噴射媒体(被記録材)の被噴射面(記録実行面または印刷面)と点接触する、外周部に歯を有する歯付きローラである場合において、当該歯付きローラが、光ディスク等の様に印刷面(ラベル面)の直下にデータ記憶領域がある様な被記録材の印刷面に圧接すると、前記データ記憶領域を破壊する虞がある。しかし、前述した本発明の第1の態様は、排出用従動ローラを確実に退避させることができるので、以て排出用従動ローラが歯付きローラである場合においても、光ディスク等における、印刷面の直下にあるデータ記憶領域を破壊する虞が無い。
【0018】
また、本発明の第7の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、前記第1の態様から第6の態様のいずれかにおいて、前記当接部が、前記液体噴射ヘッドの液体噴射可能領域外に設けられていることを特徴とする。
本発明の第7の態様によれば、前記当接部が、前記液体噴射ヘッドの液体噴射実行領域外、即ち、前記液体噴射ヘッドによる液体噴射可能領域の右側或いは左側に設けられているので、前記液体噴射ヘッドによる液体噴射可能領域内を通過する被噴射媒体の搬送動作の妨げになることが無い。
【0019】
また、本発明の第8の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、前記第1の態様から第7の態様のいずれかにおいて、前記排出用駆動ローラの下流側に、回動駆動される送り駆動ローラと、付勢手段によって前記送り駆動ローラに向けて付勢され、前記送り駆動ローラに接して従動回動する、前記排出用フレームに取り付けられる送り従動ローラと、を備えた送りローラを備えていることを特徴とする。
【0020】
被噴射媒体は、液体噴射ヘッドの上流側に設けられた搬送ローラによって液体噴射ヘッド下へと精密送りされるが、被噴射媒体に余白無く液体噴射を実行(印刷)する場合(以下「縁無し印刷」と言うがある)、被噴射媒体の後端が前記搬送ローラから外れると、液体噴射ヘッドの下流側に設けられた排出用駆動ローラおよび排出用従動ローラによって被噴射媒体を精密送りする必要がある。しかし、インク滴を被噴射媒体に吐出することによって記録を行うインクジェット式記録装置等においては、インク滴の転写を防止する観点から排出用駆動ローラと排出用従動ローラとによって被噴射媒体をしっかりとニップすることができず、縁無し印刷においては被噴射媒体の送り精度の低下によって液体噴射実行(記録)品質が低下する場合がある。
【0021】
しかし、本発明の第8の態様に係る排出装置は、排出用駆動ローラの下流側に、回動駆動される送り駆動ローラと、付勢手段によって前記送り駆動ローラに向けて付勢され、前記送り駆動ローラに接して従動回動する、前記排出用フレームに取り付けられる送り従動ローラと、を備えた送りローラを備えている。従って当該送りローラにより、縁無し印刷において被噴射媒体後端が搬送ローラから外れた後でもその送り精度の低下を防止し、適切な液体噴射実行品質を得ることが可能となる。
【0022】
また、液体噴射ヘッドの下流側に被噴射媒体を排出するためのローラが1組のみ設けられている場合は、被噴射媒体後端が搬送ローラから外れると、被噴射媒体先端が下方に垂れ下がることによって被噴射媒体後端が浮き上がる。従ってこれにより、液体噴射実行面(印刷面)と液体噴射ヘッドとが擦れたり、或いは駅値亜噴射ヘッドと被噴射媒体との距離が不均一となって駅値亜噴射実行品質が低下する虞がある。しかし、本発明の第8の態様に係る排出装置は、排出用駆動ローラおよび排出用従動ローラの下流側に他の組の送りローラが設けられているので、被噴射媒体後端が搬送ローラから外れても、被噴射媒体は2組のローラ対によってニップされ、以て前述の様な不具合を防止することが可能となる。
【0023】
また、本発明の第9の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、前記第8の態様において、搬送媒体を前記送りローラの下流側から上流側に向けて手差し給送する際に、搬送媒体を下方から支持し且つ前記給送の際の桁方向位置を規制する位置決め用アダプタを取り付けるアダプタ取付部と、前記送り従動ローラ外周面に当接可能に設けられ、当接することにより、前記付勢手段に抗して前記送り従動ローラを前記送り駆動ローラから離間させる送り従動ローラレリース部材と、を備え、前記位置決め用アダプタを前記アダプタ取付部に取り付けた際に、前記位置決め用アダプタの一部が前記送り従動ローラレリース部材に当接して前記送り従動ローラを前記送り駆動ローラから離間させるように構成されている、ことを特徴とする。
【0024】
当該排出装置は、搬送媒体を送り駆動ローラの下流側から上流側に向けて手差し給送する際に、搬送媒体を下方から支持し且つ給送の際の桁方向位置を規制する位置決めアダプタを取り付けるアダプタ取付部を備え、搬送媒体を送り駆動ローラの下流側から手差し給送する際には、前記アダプタ取付部に前記位置決め用アダプタを取り付け、該位置決め用アダプタ上から搬送媒体を給送し、そして排出するようになっている。
【0025】
そこで本発明の第9の態様に係る発明は、位置決め用アダプタをアダプタ取付部に取り付けた際に、位置決め用アダプタの一部が、送り従動ローラの外周面に当接可能に設けられた従動ローラレリース部材に当接し、これによって送り従動ローラが送り駆動ローラから離間(レリース)するように構成されている。
従って、搬送媒体を位置決め用アダプタ上から給送する際には必ず送り従動ローラが送り駆動ローラから離間した状態となっているので、ユーザの操作ミスを防止して送り従動ローラを被噴射媒体の液体噴射実行面から確実に離間させることができ、以て適切な液体噴射結果を得ることができる。
【0026】
また、本発明の第10の態様に係る被噴射媒体の排出装置は、前記第9の態様において、前記送り従動ローラが、被噴射媒体と弾性的に面接触する弾性ローラであることを特徴とする。
本発明の第10の態様に係る発明によれば、送り従動ローラが被噴射媒体と弾性的に面接触する弾性ローラであるので、液体噴射面に傷を付け難く、従って光ディスクの様にラベル面の直下にデータ記憶領域がある様な場合でも、前記データ記憶領域を破壊する虞が無い。
【0027】
また、本発明の第11の態様に係る液体噴射装置は、被噴射媒体に液体噴射を実行する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドの下流側に位置し被噴射媒体を装置外に排出する為の被噴射媒体の排出装置と、を備えた液体噴射装置であって、前記第1の態様から第10の態様のいずれかの被噴射媒体の排出装置を備えていることを特徴とする。
本発明の第11の態様に係る発明によれば、被噴射媒体に液体噴射を実行する液体噴射装置において、前述した第1の態様から第10の態様のいずれかの発明の作用効果と同様な作用効果を得ることが可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下では図面を参照しつつ本発明に係る被噴射媒体の排出装置およびそれを備えた液体噴射装置の実施形態について、インクジェット式記録装置を例にして、
1.インクジェット式記録装置の構成
2.第1排紙従動ローラの構成
3.第2排紙従動ローラの構成
4.排紙フレームの取り付け構造
5.第2排紙従動ローラのレリース手段の構成
の順に説明する。
【0029】
<1.インクジェット式記録装置の構成>
以下、図1乃至図6を参照しつつ、本発明の液体噴射装置の一実施形態に係るインクジェット式記録装置(以下「プリンタ」と略称する)1の構成について概説する。ここで、図1はプリンタ1の外観斜視図(外部カバーを取り外した状態)、図2はプリンタ1の側断面概略図、図3は排紙フレーム下33およびアダプタ50の側面図である。また、図4(A),(B)はアダプタ取付部37の平面図および正面図、図5(A),(B)はアダプタ50をアダプタ取付部37に取り付ける作業を示す説明図である。更に、図6は、プリンタ1の制御系統を示すブロック図である。尚、以下では、必要に応じてプリンタ1の後方側(図2において左側)を上流側(用紙搬送経路の上流側)と言い、プリンタ1の前方側(図2において右側)を下流側(用紙搬送経路の下流側)と言うこととする。
【0030】
プリンタ1は、図1に示す様に後部に給紙装置5を備え、該給紙装置5から単票紙を給送し、そして前方側の用紙排出口1bから排出する基本構成を採る。また、プリンタ1は、コンパクトディスクに代表される光ディスク(図示せず:以下「光ディスク」と言う)をセット可能な、板状体からなる記録媒体搬送用トレイ(以下「トレイ」と言う)70を前方側から手差し給送し、そして光ディスクのラベル面に直接印刷することができる様に構成されていて、また、印刷が行われた後は、給紙側と同じ前方側に排出される構成となっている。ここで、トレイ70は、用紙排出口1bに着脱自在に取り付けられる位置決め用アダプタ(以下「アダプタ」と言う)50によって下方から支持され、且つ、給紙および排紙の際の桁方向(用紙幅方向)位置が規制される様になっている。
【0031】
より詳しくは、プリンタ1は図2に示す様に、給紙装置5において傾斜姿勢でセットされた単票紙Pを、回動駆動される給紙ローラ13によって矢印▲1▼の方向に給送する第1の給送経路と、装置後方から給紙装置5の下を通り、インクジェット記録ヘッド(以下「記録ヘッド」と言う)21の下へ略水平(矢印▲2▼の方向)に給送する第2の給送経路と、装置前方(図2の右側)から記録ヘッド21の下へ略水平(矢印▲3▼の方向)に手差し給送する第3の給送経路とを備えている。ここで、第1の給送経路は可撓性を有する単票紙Pの給送用に、第2の給送経路は剛性の高く且つ厚手(非可撓性)の被記録材(例えば、ボード紙等)の給送用に、第3の給送経路は、前述したトレイ70の給送用に利用される様になっている。尚、給紙装置5は、後部に図示しないロール紙ホルダが着脱可能となっていて、該ロール紙ホルダからロール紙を繰り出し、給紙装置5の下側を通って記録ヘッド21へ給送することもできる様に構成されている。
【0032】
尚、以下では、上述の単票紙、ボード紙、光ディスク等の、インク滴が吐出されることによって印刷が行われるものを総称して「被記録材」と言い、印刷が行われるか否かに関わらず、プリンタ1の用紙搬送経路を搬送されるものを総称して「搬送媒体」(例えば、前述のトレイ70)と言うこととする。
【0033】
以下、主として図2を参照しつつ、適宜その他の図面をも参照しながら、プリンタ1の用紙搬送経路を構成する各構成要素について詳説する。給紙装置5は、傾斜姿勢で設けられる板状体からなるホッパ9を備えている。ホッパ9は、上部に設けられた揺動支点9aを中心に揺動可能(図2の時計方向および半時計方向)に設けられ、図示しないカム機構によって揺動することにより、下部が給紙ローラ13に圧接および離間する様になっていて、圧接することにより、ホッパ9上に堆積された単票紙Pの最上位のものが給紙ローラ13の回動と共に下流側へ給送される。給紙ローラ13は側面視略D形の形状をなし、後述する駆動モータ16(図6参照)によって回動駆動され、外周にはゴム材(図示せず)が巻回されることによって当該給紙ローラ13に圧接した単票紙Pをスリップすることなく給送する。また、下流側に設けられた搬送ローラ19による搬送媒体の精密送り(副走査送り)時には、搬送負荷(バックテンション)が生じない様に、図示する様に平坦面が単票紙Pと対向する様に駆動制御される。
【0034】
次に、給紙ローラ13の下流には搬送媒体を副走査方向に精密送りする搬送ローラ19が設けられている。搬送ローラ19は、後述する駆動モータ16(図6参照)によって回動駆動される搬送駆動ローラ15と、該搬送駆動ローラ15に圧接して従動回動する搬送従動ローラ17とから構成されている。搬送駆動ローラ15は、主走査方向(図2の紙面表裏方向)に長い軸体からなり、外周面に耐摩耗性粒子(例えば、セラミック粒子)が接着材によって固着されてなる高摩擦層(図示せず)を有し、搬送媒体の裏面(印刷面と反対側の面)との間でスリップを発生させずに確実な精密送り動作を実行可能となっている。一方、搬送従動ローラ17は搬送駆動ローラ15の軸方向に複数個配置され、且つ、同様に搬送駆動ローラ15の軸方向に複数個配置される搬送従動ローラホルダ18の下流側(図2の右側)端部において自由回動可能に軸支されている。尚、本実施形態に置いては、1つの搬送従動ローラホルダ18に2つの搬送従動ローラ17が軸支されている。
【0035】
搬送従動ローラホルダ18は、回動支点18aを中心に図2の時計方向および半時計方向に回動可能に設けられ、且つ、図示しない付勢手段によって搬送従動ローラ17が搬送駆動ローラ15に圧接する方向(図2の時計方向)に回動付勢されている。また、搬送従動ローラホルダ18は、図示しないカムの回動によって、搬送従動ローラ17が搬送駆動ローラ15から離間する方向(図2の反時計方向)に回動することができる様になっている。そして、回動することによって搬送従動ローラ17が搬送駆動ローラ15から離間し、離間することにより、矢印▲2▼および▲3▼で示す方向に搬送媒体を手差し給送する際の、手差し給送経路を開放する様になっている。
【0036】
次に、搬送駆動ローラ15の軸方向に複数配設された搬送従動ローラホルダ18のうち、最も0桁側(プリンタ1の右側:図2の紙面裏側)に位置するものには溝穴が設けられ、該溝穴を挿通して上から下に突出する様に紙検出レバー14が設けられている。紙検出レバー14は、上部を揺動中心として揺動可能となっていて、符号▲1▼及び▲2▼で示す方向から給送された搬送媒体の先端が通過すると上方に押し上げられ、搬送媒体の後端が通過すると下方に復帰する様になっている。そして、当該紙検出レバー14の揺動動作は紙検出器11(図6参照)によって検出可能となっていて、該紙検出器11がプリンタ1の制御部8(図6参照)へ検出信号を送信し、以て搬送媒体の通過および搬送媒体のサイズ(長さ)を検出することができる様になっている。被記録材の幅方向の基準位置は前記0桁側にある。
【0037】
次に、搬送ローラ19の下流には、インクジェット記録ヘッド(以下「記録ヘッド」と言う)21および該記録ヘッド21に対向してプラテン25が設けられている。記録ヘッド21はキャリッジ23の下部に設けられ、キャリッジ23に搭載されたインクカートリッジ24からインクを供給され、搬送された被記録材の印刷面にインク滴を吐出する。キャリッジ23は、プリンタ1の基体を構成する、装置右側に立設されたサイドフレーム右6と、装置左側に立設されたサイドフレーム左7(図1参照)との間に掛架された主キャリッジガイド軸22aおよび副キャリッジガイド軸22bとにガイドされながら、キャリッジモータ36(図6参照)の駆動力を受けて主走査方向(図2の紙面表裏方向)に往復動する様構成されている。
【0038】
次に、記録ヘッド21から下流は、プリンタ1の排紙部(被噴射媒体の排出装置)を構成する。記録ヘッド21の下流には第1排紙ローラ(第1排出用ローラ)26が設けられ、該第1排紙ローラ26の下流には更に第2排紙ローラ(第2排出用ローラ)27が設けられている。第1排紙ローラ26および第2排紙ローラ27は、それぞれ駆動モータ16(図6参照)によって回動駆動される第1排紙駆動ローラ(第1排出用駆動ローラ)28および第2排紙駆動ローラ(第2排出用駆動ローラ)29と、これら回動駆動されるローラに弾性的に接することによって従動回動する第1排紙従動ローラ(第1排出用従動ローラ)30および第2排紙従動ローラ(第2排出用従動ローラ)31によって構成されていて、これら2組のローラ対で搬送媒体を挟圧し、且つ、それぞれの駆動ローラが回動駆動されることによって搬送媒体が下流側に排紙される。ここで、第1排紙従動ローラ30は、印刷面と点接触する、外周に歯を有する歯付きローラからなり、第2排紙従動ローラ31は、印刷面と面接触するゴムローラからなっているが、詳細については後に説明する。
【0039】
尚、第1排紙駆動ローラ28および第1排紙従動ローラ30は、それぞれ特許請求の範囲に記載された「排出用駆動ローラ」、「排出用従動ローラ」に相当し、第2排紙ローラ27と、これを構成する第2排紙駆動ローラ29および第2排紙従動ローラ31は、それぞれ特許請求の範囲に記載された「送りローラ」、「送り駆動ローラ」、「送り従動ローラ」に相当する。
【0040】
次に、第1排紙従動ローラ30と、第2排紙従動ローラ31とは、主走査方向に所定の間隔で複数個配設されていて(図4(A)参照)、そしてこれらローラは、主走査方向に長い板状体からなる排紙フレーム下33に取り付けられている。排紙フレーム下33は、サイドフレーム右6およびサイドフレーム左7(図1参照)とによって左右端が保持され、且つ、後に詳述する保持手段により、下流側を揺動支点として上流側が上方に浮き上がる様に揺動可能となっている。そして、揺動することにより、第1排紙従動ローラ30が、第1排紙駆動ローラ28から離間する離間位置と、第1排紙駆動ローラ28に接する接触位置とをとることができる様になっている。即ち、排紙フレーム下33は、第1排紙従動ローラ30を第1排紙駆動ローラ28から離間させる「離間姿勢」と、第1排紙従動ローラ30を第1排紙駆動ローラ28に接触させる「接触姿勢」との2つの姿勢をとることができる様になっている。尚、排紙フレーム下33の姿勢をこの様に変化させる手段については、後に詳説する。
【0041】
以上により、第1排紙従動ローラ30が第1排紙駆動ローラ28から離間すると、矢印▲2▼および▲3▼で示す方向に搬送媒体を手差し給送する際の当該給送経路が開放されると共に、被記録材の印刷面に、第1排紙従動ローラ30が接触しない状態となる。ここで、第1排紙従動ローラ30が被記録材の印刷面に接触しない様にするのは、トレイ70によって搬送される光ディスクは、印刷面(ラベル面)の直下にデータ記憶領域があり、従って外周に歯を有する第1排紙従動ローラ30が前記印刷面に強く接触すると、前記データ記憶領域を希に破壊することがあるからである。
【0042】
次に、プリンタ1においては、第2排紙従動ローラ31についても、図示しないローラレリース手段によって第2排紙駆動ローラ29から離間可能となっていて、これにより、印刷面に第2排紙従動ローラ31が接触しない様にすることもできる様になっている。これは、被記録材が前述した光ディスクである場合、吐出されたインクが印刷面(ラベル面)に浸透しづらく、乾燥時間が掛かり、この様な印刷面に第2排紙従動ローラ31が接触すると、インクの白ヌケや転着を招く虞があるからである。尚、第2排紙従動ローラ31を第2排紙駆動ローラ29から離間させるローラレリース手段についても、後に詳説する。
【0043】
尚、第1排紙従動ローラ30が第1排紙駆動ローラ28との間で被記録材をニップするニップ力と、第2排紙従動ローラ31が第2排紙駆動ローラ29との間で被記録材をニップするニップ力とは、本実施形態においては後者が大なる様に設定されている(例えば、前者が0.049N(5gf)、後者が0.147N(15gf))。これは、第1排紙ローラ26は記録ヘッド21に近い為、記録ヘッド21によって吐出されたインク滴が未乾燥状態の虞があり、この様な状態で強くニップするとインクの転着等を招いて印刷品質を低下させる虞がある為である。従って、本実施形態においては、特に第2排紙ローラ27によって被記録材をしっかりとニップする様に構成し、これによって被記録材後端が搬送従動ローラ17と搬送駆動ローラ15とから外れた後も、精度良く紙送りすることができる様になっている。
【0044】
次に、図3において、排紙フレーム下33の上方には排紙フレーム上35が設けられ、排紙フレーム上35の左側に偏倚した位置(図1参照)には、アダプタ50を取り付ける為のアダプタ取付部37が設けられている。アダプタ取付部37は、図4に示す様に左右に嵌合穴右38および嵌合穴左39を有し、これら嵌合穴に、図5(A),(B)に示す様にアダプタ50の先端部(図3の左側)に設けられた嵌合凸部右52および嵌合凸部左53が嵌合することにより、アダプタ50がプリンタ1の用紙排出口1bに取り付けられる様になっている。
【0045】
尚、嵌合穴右38には、嵌合凸部右52が嵌合穴右38に嵌入したことを検出する検出端41および検出部42が設けられている。検出端41の一端側は検出部42において揺動可能に保持され、他端側は、嵌合穴右38内に突出する様に設けられている。そして、嵌合凸部右52が嵌合穴右38に嵌入すると、検出端41が揺動し(図4(A)において時計方向)、これによって検出部42がプリンタ1の制御部8(図6参照)へ検出信号を送信する様になっている。従って、プリンタ1の制御部8は、アダプタ50がプリンタ1の用紙排出口1bに取り付けられたことを認識し、これにより、アダプタ50が装着された状態においては上流側から下流側への用紙搬送動作を行わない様にすることができ、搬送媒体がアダプタ50に引っ掛かって紙ジャムとなるといった不具合を防止することが可能となっている。
【0046】
次に、アダプタ50は、図5に示す様に左右にグリップ部右55およびグリップ部左56を備え、これらの間に、板状体としてのトレイ70を差し込む様な形状を有している。一方、アダプタ50によって下方から支持され、且つ、給紙の際の桁方向位置が規制されるトレイ70には、光ディスクをセットする凹部71と、光ディスクの中央に形成された丸穴と嵌合する凸部72とが形成され、これによってセットされた光ディスクがトレイ70において動かない様に保持される。ここで、トレイ70は、アダプタ50に一旦差し込まれると、アダプタ50に対して前後にスライド動作する際のスライド範囲が、図示しない係合手段によって規制される様になっていて、これにより、トレイ70は一旦アダプタ50に差し込まれると、アダプタ50から容易に脱落しない様になっている。従って、アダプタ50とトレイ70とは常に一体化した状態となり、アダプタ50とトレイ70の取り扱い性を向上させている。
【0047】
以上がプリンタ1の用紙搬送経路の詳細であり、以下、プリンタ1の制御系統について図6を参照しつつ概説する。プリンタ1は、図示しないCPU、ROM、RAM、外部コンピュータとの接続用インタフェース、モータドライバ等を備えた制御部8を備えている。制御部8には、前述した紙検出器11の検出信号と、アダプタ50が装着されたことを検出する検出部42の検出信号が入力され、制御部8は、これによって必要な制御を行う。また、制御部8はキャリッジ23を駆動するキャリッジモータ36と、給紙ローラ13、搬送駆動ローラ15,第1排紙駆動ローラ28、第2排紙駆動ローラ29の共通の駆動源となる駆動モータ16を制御対象として有し、これにより、制御部8の有するROMに格納された種々の制御プログラムに従って、給紙ローラ13,搬送駆動ローラ15、第1排紙駆動ローラ28,第2排紙駆動ローラ29の駆動タイミング、回転速度、回転量が制御される。
以上が、プリンタ1の全体構成である。
【0048】
<2.第1排紙従動ローラの構成>
次に、図7及び図8を参照しつつ、第1排紙従動ローラ30の詳細な構成について説明する。ここで、図7(A)は第1排紙従動ローラ30の側面図、図7(B)は同正面図((A)のA矢視図)、図8は第1排紙従動ローラ31の種々の実施形態を示す部分拡大斜視図である。
【0049】
先ず、第1排紙従動ローラ30について説明する。第1排紙従動ローラ30には、図7に示す様に外周に歯30aが等間隔で複数配設されていて、当該歯30aが単票紙P(以下では、説明の便宜上、被記録材の例として単票紙Pを用いることとする)の印刷面と点接触し、且つ、単票紙Pが搬送されることにより、第1排紙従動ローラ30が従動回動する。また、第1排紙従動ローラ30の軸心部には棒ばね32が挿通する様になっていて、該棒ばね32が、排紙フレーム下33に設けられた排紙従動ローラホルダ43(図19参照)に軸支され、これにより、第1排紙従動ローラ30は、第1排紙駆動ローラ28に向けて付勢された状態となっている。
【0050】
ここで、歯30aは、図7(B)に示す様に、単票紙Pの搬送方向(図7(A)の矢印方向)から見て左右対称の形状をなす様に形成されている。より詳しくは、歯30aは図8(a)に示す様に先端に向かって先細りする四角錐の形状をなし、その四角錐の形状は、図7(B)に示す様に単票紙Pの搬送方向から見て、単票紙Pの印刷面に直交する直線Vに対して線対称となる形状となっている。従ってこれにより、歯30aが単票紙Pの印刷面に食い込んだ状態で第1排紙従動ローラ30が回動しても、第1排紙従動ローラは振れが生じることなく真っ直ぐに回動することになる。
【0051】
つまり、図7(B)において、歯30aが直線Vに対して非対称の形状(例えば、一方が垂直面で片方が斜面)であると、歯30aが単票紙Pの印刷面に食い込んだ際に当該歯30aには搬送方向と直交する方向(図7(B)における左右方向)へ力が働き、これによって第1排紙従動ローラ30には回動に際して振れが生じる。そして、振れが生じると、歯30aは単票紙Pの印刷面を抉る様な状態となり、第1排紙従動ローラ30の通過痕が目立ち易くなる。特に、単票紙Pに銀塩写真並の超高画質印刷を行う場合にはより顕著となり、更に、顔料インクを使用する際には印刷面へのインクの浸透性が低いことからインク層が連れ去られ易く、歯30aの通過痕がより一層目立ち易い。
【0052】
しかし、歯30aは上述の様に単票紙Pの搬送方向から見て左右対称の形状をなす様に形成されているので、第1排紙従動ローラ30は振れが生じることなく真っ直ぐに回動し、以て第1排紙従動ローラ30の通過痕を最小限とすることができ、特に顔料インクを用いて銀塩写真並の超高画質印刷を行う場合にも印刷品質の低下を防止することができる。
【0053】
尚、この様な歯30aの形状として、図8(a)に示す本実施形態に係る歯30aの他に、図8(b)乃至(d)に示す様な形状とすることもできる。ここで、図8(b)は三角錐形状をなす歯30a、(c)は円錐形状をなす歯30a、(d)は平面視(ローラ軸方向視)において三角形の形状をなし、単票紙Pの搬送方向から見て長方形の形状をなす歯30aを示している。これらはいずれも単票紙Pの搬送方向からみて左右対称の形状をなし、これによって第1排紙従動ローラ30は振れが生じることなく真っ直ぐに回動することができる。尚、図8に示した歯30aの種々の形態は例示であり、その他の形状を採用可能であることは言うまでも無い。
【0054】
<3.第2排紙従動ローラの構成>
次に、図9乃至図15を参照しつつ、第2排紙従動ローラ31の構成について詳説する。先ず、図9を参照しつつ、第2排紙従動ローラ31の外観構成について説明する。ここで、図9(A)は第2排紙従動ローラ31の側面図、図9(B)は同正面図((A)のB矢視図)である。
【0055】
第2排紙従動ローラ31は、図9に示す様に樹脂材料によって形成されたホイール31aに、ドーナツ形状をなすゴム材31b(本実施形態においては、幅約3mm)が装着されてなる。また、ホイール31aの軸心部には、前述した第1排紙従動ローラ30と同様に棒ばね32が挿通する様になっていて、該棒ばね32が、排紙フレーム下33に設けられた排紙従動ローラホルダ43(図19参照)に軸支され、これにより、第2排紙従動ローラ31は、第2排紙駆動ローラ29に向けて付勢された状態となっている。
【0056】
そして第2排紙従動ローラ31は、ゴム材31bそのものの硬度を下げないでローラ外周面における硬度を下げる為に、外周面にシボ加工を施している(本実施形態においては、シボ深さ20〜100μm)。ここで、ローラ外周面における硬度を下げるのは、ローラ外周面における硬度を下げることによって単票紙Pとの接触面積を増大させ、以て単票紙Pを確実に精度良く精密送りする為である。即ち、第2排紙ローラ27は、前述の通り単票紙Pの後端が搬送ローラ19を外れた後においても確実に精度良く単票紙Pの精密送りを実行する為に設けられるものであり、従って単票紙Pとの接触面積を増大することによってより一層確実な搬送力を得る為である。また、ゴム材31bそのものの硬度を下げない様にするのは、ゴム材31bそのものの硬度を下げると、可塑剤が滲出して単票紙Pの印刷面に悪影響を及ぼすからである。尚、本実施形態においては、第2排紙従動ローラ31の外周面の硬度は22〜30(JIS硬度)となっている。
【0057】
また、ゴム材31bの材料として、本実施形態においてはCMゴム(塩素化ポリエチレンゴム)を用いている。これは、CMゴムは、硬度を低くした場合でも可塑剤が比較的滲出しづらいという性質を有している為であり、これによっても、可塑剤の滲出を抑制して印刷面への悪影響を防止している。
加えて、本実施形態における第2排紙従動ローラ31の外周面には、撥インク処理が施されていて、これによってインクの転写の防止を図っている。
【0058】
次に、第2排紙従動ローラ31は、図2から明らかな様に第1排紙従動ローラ30に比して外径drが大なる様に形成されている(本実施形態においては、dr=15mm)。以下、第2排紙従動ローラ31の外径drが大なる様になされたことによる作用効果について、図10乃至図15を参照しつつ詳説する。
図10は、単票紙Pが、桁方向に複数個配設された第2排紙従動ローラ31を矢印の方向に通過する様子を示している。図10(A),(B)において、符号A1は、記録ヘッド21によってインクが吐出された印刷領域(例えば、高画質写真印刷の様に高インクデューティによって印刷された領域)を示し、図10(B)において符号A2は、これからインクが吐出される印刷領域を示している。
【0059】
前述の様に、第2排紙従動ローラ31は、単票紙Pを確実に搬送する為に単票紙Pと面接触するゴムローラからなっている。従って、図10に示す様に第2排紙従動ローラ31が高インクデューティによって印刷された領域を通過すると、未乾燥のインクが第2排紙従動ローラ31に転着し、そして当該転着したインクが、第2排紙従動ローラ31が1回転した際に印刷面に転着して印刷結果に影響を及ぼすといった問題が生じる。この様なインクの転着の問題は、印刷領域A1において発生することによって印刷領域A1の印刷品質を低下させる他、特に、第2排紙従動ローラ31が印刷領域A1から抜けた後の余白領域A3において発生することによって、より顕著に視認し易くなり、好ましくない印刷結果を招くことになる。
【0060】
そこで、プリンタ1においては、第2排紙従動ローラ31の外径drを大なる様にすることにより、第2排紙従動ローラ31が1回転する時間を長く設定し、以て第2排紙従動ローラ31の外周面に転着したインクが、第2排紙従動ローラが1回転した時点で印刷面に転着しない程度にまでローラ外周面に定着する様にしている。図11は、これをわかりやすく図示したものであり、図示する様にインクの濡れ領域におけるM1地点(図10の領域A1内)において第2排紙従動ローラ31の外周面に付着したインクが、第2排紙従動ローラ31がM1地点から1回転した場合に相当する位置を示すM2地点(図10の領域A3内)において、印刷面に転着しない状態にまでローラ外周面に定着した状態となる様に、第2排紙従動ローラ31の外径dr、換言すると、第2排紙従動ローラ31の外周長Lpが設定されている。尚、図11における矢印は、単票紙Pの搬送方向(排紙方向)を示している。
【0061】
以下、第2排紙従動ローラ31の外径drの決定方法について詳しく説明する。図10において、プリンタ1は印刷領域A1或いはA2においては、キャリッジ23を主走査方向に移動させてインクを吐出するインク吐出工程と、搬送ローラ19を所定の回動速度で回動駆動することにより、単票紙Pを副走査方向に予め定められた量だけ紙送りする紙送り工程とを交互に繰り返す。ここで、紙送り工程を実行する際における搬送ローラ19の回動速度(紙送り速度)及び1回の紙送り量は、プリンタ1固有のものとして予め判明しているので、これにより、1回の紙送り工程に掛かる時間が判明する。尚、紙送り速度及び1回の紙送り量は、種々の印刷モード、例えば、ドラフト印刷、高品質文字印刷、画像印刷、インターレース画像印刷、等々によって異なることとなるが、プリンタ1においては、画像の印刷を対象とした印刷モードのうち、最も不利となる条件(第2排紙従動ローラ31の1回転する時間が短くなるもの)を採用する。以下、当該条件における紙送り速度をVc(mm/s)とし、1回の紙送り量をFp(mm)とする。これにより、1回の紙送り工程に掛かる時間Tf(s)は、Tf=Fp/Vcとなる。
【0062】
一方、1回のインク吐出工程に掛かる時間は、予め便宜的に決定する。即ち、キャリッジ23の移動量(主走査範囲)はホストコンピュータ(図示せず)から送信される印刷データ、つまり、単票紙Pの幅寸法や或いは印刷領域の幅寸法によって変動する為、キャリッジ23の移動量を便宜的な値(一定値)Wp(mm)とし、このときのキャリッジ23の1パスに掛かる時間(主走査時間)をTp(s)とする。
【0063】
そして、第2排紙従動ローラ31に転着したインクが、印刷面に転着しない程度に定着する時間(インク定着時間)Tc(s)は、高インクデューティによって印刷を行い、そして余白部分にインクの転着が認められるか否かを、搬送ローラ19の回動速度、即ち、紙送り速度を段階的に変化させることによって実験的に求めることができる。
【0064】
以上により、インク定着時間Tc内において、前記紙送り工程は、
(Tc/(Tf+Tp)) (回)
だけ行われることになり、従ってインク定着時間Tc内において単票紙Pは、
(Tc/(Tf+Tp))×Fp (mm)
だけ紙送りされる。従ってこれが、第2排紙従動ローラ31の外周長Lpに最低求められる値となる。即ち、
Lp≧(Tc/(Tf+Tp))×Fp (mm)
となる。
【0065】
尚、主走査時間Tp及びインク定着時間Tcは、安全を考慮して小さめに設定することが望ましい。従って、第2排紙従動ローラ31の外径drに制限がなければ、主走査時間Tp、即ち、キャリッジ23の1パス分の時間を考慮に入れずに、紙送り工程時間Tfのみを考慮して外周長Lpを決定することが望ましい。加えて、インク定着時間Tcは、プリンタ1の置かれる環境の温度等によっても左右されるので、この様な条件をも考慮して決定されることが望ましい。しかしながら、より安全を考慮する程、第2排紙従動ローラ31の外径drは大なるものとなり、プリンタ1への組み込みが困難となるので、最も一般的な使用条件(室温)を前提とし、最もインク転着の防止効果が得られる印刷モード(画像印刷モード)を考慮して、インク定着時間Tc或いは主走査時間Tpを決定することが望ましいと言える。
【0066】
以上により、第2排紙従動ローラ31が1回転する間に、当該第2排紙従動ローラ31に転着したインクが、印刷面に転着しない程に第2排紙従動ローラ31に定着するので、これにより、紙送り工程とインク吐出工程との間に待ち時間を設けずにインクの転着を防止することができ、以て印刷スループットを低下させずにインクの転着を防止することが可能となる。
【0067】
尚、インク転着の防止効果を得る為には、少なくとも一定の条件下において、第2排紙従動ローラ31に転着したインクが、当該第2排紙従動ローラ31が1回転する間に、印刷面に転着しない程に当該第2排紙従動ローラ31の外周面に定着していれば良い。従って、必ずしも全ての条件(単票紙Pの紙質、周囲の環境、インク成分・色、等々)下においてインク定着を防止できずとも、一定条件下でこの様な機能を奏することのできるインクジェットプリンタは、本実施形態に係るプリンタ1が奏する作用効果と同様な作用効果を奏すると言える。
【0068】
次に、印刷実行時におけるより具体的な制御方法について図12乃至図15を参照しつつ説明する。ここで、図12はプリンタ1における印刷制御のフローチャートであり、図13はその変形例(他の実施例)、図14は余白送り制御のフローチャートであり、図15は図12に示した印刷制御を実行中における単票紙Pの状態を示す説明図である。尚、図12及び図13に示した印刷制御は、制御プログラムとして図示しない記憶装置に格納され、制御部8(図6参照)によって実行される。
【0069】
図12に示した制御ルーチン200においては、先ず用紙頭出しを行い(ステップS201)、その後に印刷を開始する。印刷実行中は、キャリッジ23の主走査(インク吐出工程)及び副走査送り(紙送り工程)を交互に実行する。尚この時の紙送り速度はVc(mm/s)であり、また、紙送り量はFp(mm)であり、第2排紙従動ローラ31の外径drは、これに合わせて決定されている為、インクの転着が防止された状態となっている。
【0070】
一方、余白送りを実行する場合(例えば、図10(B)に示した印刷領域A1の印刷終了時)には、ステップS205によって余白送り制御を実行する。ここで、余白送り制御を実行するのは、余白部分を形成する為に紙送り工程を連続して実行すると、第2排紙従動ローラ31に転着したインクがローラ外周面に定着する前に当該第2排紙従動ローラ31が1回転する虞があるからである。
【0071】
図14に示す余白送り制御ルーチン400では、紙送り速度をVsに設定する(ステップS401)。紙送り速度Vs(mm/s)は、ローラ外周長(Lp)/インク定着時間(Tc)によって求め、これにより、インク定着時間が確保される。そして、所定量の余白送りを実行した後に(ステップS402)、再度紙送り速度をVcに戻し、メインルーチンへ戻る。
【0072】
次に、図12に戻って印刷が終了した状態、より詳しくは、インクの吐出が全て完了した状態(ステップS206の肯定枝)では、単票紙Pは、例えば図15(a)に示す様な状態となっている。図15(a)において、記録ヘッド21から下流側(右側)の印刷面はインクで濡れた領域(印刷領域)となっていて、記録ヘッド21から上流側(左側)は、下端マージン部分となっている。従って、当該状態から単票紙Pを高速で排出すると、インクの転着を招く虞があり、従ってステップS207において送り速度を余白送り制御時と同様な値Vsに設定し、そして印刷領域の後端部分が第2排紙従動ローラ31に到達するまで(図15(b)の状態)、排紙送り▲1▼を実行する(ステップS208)。ここで、排紙送り▲1▼における紙送り量はLc(mm)であり、これは、本実施形態においては記録ヘッド21における最も上流側のノズル位置から、第2排紙従動ローラ31に至る距離である(図15(a)参照)。尚、図15(b),(c)において符号Peは、単票紙Pの後端を示している。
【0073】
そして次に、下端マージンLe(mm)が、第2排紙従動ローラ31の外周長Lpよりも大なるか否かを判断し(ステップS209)、下端マージンLeが外周長Lpよりも小さければ(ステップS209の否定枝)、送り速度をVf(高速)に設定し(ステップS211)、単票紙Pの最終的な排紙送りである排紙送り▲2▼を実行する(ステップS212)。一方、下端マージンLeが外周長Lpよりも大きいと(ステップS209の肯定枝:図15(b)に示す様な状態)、インク転着の虞がある為、低速度(速度Vs)のまま第2排紙従動ローラ31が1回転するまで紙送りを行う(ステップS210)。この状態を、図15(c)に示す。これにより、図15(c)に示す様に、図15(b)の状態において第2排紙従動ローラ31が(上流側に向かって)1回転した場合に相当する位置Qが、第2排紙従動ローラ31の地点まで移動する。
【0074】
そしてその後、送り速度をVf(高速)に設定して(ステップS211)単票紙Pの最終的な排紙送りを行う(ステップS212)。これにより、単票紙Pの下端マージンが大きい場合であってもインク転着が発生せず、且つ、インク転着の虞が無くなった後(図15(c)に示す状態から後)は、高速で紙送りすることによって迅速に排紙される。
【0075】
尚、以上においては、図15(b)に示した状態から、ゆっくりとした紙送りを続けることによってインク転着を防止しているが、図13に示す様に、図15(b)に示した状態で一旦待ち時間を置き、そしてその後に高速に排紙する様にしても良い。より詳しくは、図13において、ステップS309迄は図12と同様である。そして、下端マージンLeがローラ外周長Lpよりも大きいと判断した場合には、時間Twだけ待ち時間を置き(ステップS210)、そしてその後に送り速度をVf(高速)に設定して(ステップS311)、単票紙Pの最終的な排紙を行う。ここで、時間Twは、紙送り速度Vfによって第2排紙従動ローラ31を1回転させた時間(外周長Lp/紙送り速度Vf)を、インク定着時間Tcから引いた値を採用する。これにより、高速で紙送りを行っても、第2排紙従動ローラ31が1回転する時間は、インク定着時間Tcと同一となり、これにより、インクの転着を防止することができる。
尚、以上説明した印刷制御は一例であり、第2排紙従動ローラ31が1回転する時間が、インク定着時間Tc以上となる様な制御方法であれば、どの様なものであっても構わないことは言うまでも無い。
【0076】
<4.排紙フレームの取り付け構造>
次に、図16乃至図19を参照しつつ、排紙フレーム下33の取り付け構造について詳説する。ここで、図16(A)は排紙フレーム下33の右端部の斜視図、図16(B)は同左端部の斜視図、図17は排紙フレーム下33をプリンタ1の手前側(下流側)から見た図であり、図18は排紙フレーム下33の中央部付近の斜視図、図19は排紙フレーム下33の側面図である。
【0077】
図16において、サイドフレーム右6にはL字形のフック形状をなすフレーム係合部右6bが形成され、該フレーム係合部右6bと、排紙フレーム下33の右端手前(下流側)に形成された、L字形のフック形状をなす被係合部右33dとが係合している。また、サイドフレーム右6においてフレーム係合部右6bから奥側(上流側)には、排紙フレーム下33の側に突出する様に舌片6cが形成され、該舌片6cに、排紙フレーム下33の右端奥側(上流側)が乗る様になっている。一方、サイドフレーム左7側も同様に、L字形のフック形状をなすフレーム係合部左7bと被係合部左33eとが係合し、更に、排紙フレーム下33においてサイドフレーム左7から外側に突出する様に形成された舌片33cが、図示する様にサイドフレーム左7に形成された窓穴の縁部に乗る様になっている。以上により、排紙フレーム下33は、手前側(下流側)、即ち、フレーム係合部右6bおよびフレーム係合部左7bを支点とし、奥側(上流側)が上方に浮き上がる様に揺動することができる様になっている。
【0078】
また、サイドフレーム右6にはコイルばね45aの一端が掛止するばね掛止部6aが形成され、排紙フレーム下33の右端中程にはコイルばね45aの他端が掛止するばね掛止部33aが形成され、これらばね掛止部にコイルばね45aが掛止することによって排紙フレーム下33を手前側に引き寄せる様な外力を付与している。一方、排紙フレーム下33の左側も同様に、サイドフレーム左7に形成されたばね掛止部7aおよび排紙フレーム下33左側においてやや中央部(搬送経路を側視して中央部)に形成されたばね掛止部33bにコイルばね45bが掛止し、排紙フレーム下33を手前側に引き寄せる様な外力を付与している。よって、排紙フレーム下33は、コイルばね45a,45bのばね力によってサイドフレーム右6およびサイドフレーム左7に弾性的に保持される。尚、ばね掛止部6aとばね掛止部7aとは、共にばね掛止部33aおよびばね掛止部33bよりも下方に形成され、これによって排紙フレーム下33は、コイルばね45a,45bから下方に引き寄せられる様な外力を受け、これによって排紙フレーム下33の上流側が容易に上方に浮き上がらない様になっている。
【0079】
次に、排紙フレーム下33の上面を下方に向けて付勢する付勢手段、排紙フレーム下33の撓みを規制する撓み規制手段、排紙フレーム下33の曲げモーメントを緩和する曲げモーメント緩和手段について説明する。
図17において、排紙フレーム下33は桁方向(図17の左右方向)に長く、且つ、前述の様に両側端をサイドフレーム右6とサイドフレーム左7とによって弾性的に保持されている。従って、排紙フレーム下33は、いわば両端が自由端となっている両端支持はりの状態となっている。一方、排紙フレーム下33は前述の通り桁方向に複数の第1排紙従動ローラ30および第2排紙従動ローラ31を有し、これらローラは、その下に配置された第1排紙駆動ローラ28および第2排紙駆動ローラ29に付勢手段(図7および図8に示した棒ばね32)によって弾性的に接触している。従って、排紙フレーム下33は、これらローラによる上方へ向かう荷重を受け、上に凸となる方向に撓もうとする。つまり、換言すると、両端支持はりに複数の集中荷重が加わった状態となる。
【0080】
ここで、排紙フレーム下33が上に凸となる方向に撓むと、以下の様な不具合が生ずる。即ち、第1排紙従動ローラ30および第2排紙従動ローラ31は、排紙フレーム下33が撓まずに水平面に沿った状態においては被記録材の印刷面に対して垂直に接するが、排紙フレーム下33が上に凸となる様に撓むと、印刷面に対して垂直に接することができなくなる。その結果、特に、第1排紙従動ローラ30は図7を参照しつつ説明した様に外周に歯を有する歯付きローラである為、印刷面に対して垂直に接しないと、回動と共に印刷面を抉る様な状態となり、印刷面を傷めることになる。
【0081】
そこで、プリンタ1においては、この様な不具合を防止する為に、図17に示す様に桁方向における中央付近に、排紙フレーム下33の上面(被記録材通過側と反対側の面)を、下方(被記録材通過側)に向けて付勢するコイルばね44を備えている。コイルばね44は、図17及び図18に示す様に排紙フレーム上33の上部に設けられた補助フレーム40の、水平に折り曲げられたばね当接部40aの下面と、排紙フレーム下33の上面とに付勢力を付与する。従って、当該コイルばね44による下向きの付勢力が、前述した第1排紙従動ローラ30および第2排紙従動ローラ31とによる上向きの荷重に対抗し、これによって排紙フレーム下33が上に凸となる方向に撓む現象を抑制し、第1排紙従動ローラ30が長期に渡って常に印刷面に対して垂直に接することが可能となることにより、高い印刷品質を維持することが可能となっている。
【0082】
尚、本実施形態においてコイルばね44は、図18に示す様に排紙フレーム下33において、第2排紙従動ローラ31の近傍に配設されているので、図2から明らかな様にコイルばね44がキャリッジ23の主走査方向への往復動作に邪魔になることは無い。
【0083】
ところで、上述からコイルばね44は、排紙フレーム下33の撓みを規制する「撓み規制手段」を構成し、或いは、排紙フレーム下33に生ずる曲げモーメントを緩和する「曲げモーメント緩和手段」を構成する、と言うこともできる。従って、この様な手段としてはコイルばね44に限られず、他の弾性手段であっても良い。また、弾性的に排紙フレーム下33に力を付与するのではなく、例えばコイルばね44の代替として、撓みを規制する規制部材を配設しても良い。つまり、弾性的に排紙フレーム下33に力を付与するのではなく、非弾性的に排紙フレーム下33に力を付与する様なものであっても良い。また、排紙フレーム下33へ付与する力の作用点は、本実施形態の様に桁方向における略中央部付近に1つである必要はなく、桁方向に複数配置しても良い。
【0084】
次に、排紙フレーム下33を揺動させる手段、即ち、排紙フレームを前述した「離間姿勢」と「接触姿勢」とに変化させる手段について、主として図19を参照しつつ説明する。
図19に示す様に、排紙フレーム下33に設けられた従動ローラホルダ43には、レリースローラ34が1つ、自由回動可能に軸支されている。レリースローラ34は、図4に示す様に排紙フレーム下33の左側端側の上流に設けられ、更にその上下位置は、図19に示す様に第1排紙従動ローラ30からやや下方に突出する様に設けられている。ここで、図19(A)に示す様にトレイ70が第2排紙駆動ローラ29と第2排紙従動ローラ31との間から上流側に向けて挿入されると、図19(B)に示す様に、トレイ70における左側端部分、即ち、トレイ70の記録領域外の部分(光ディスクをセットする凹部71(図5参照)から外れた部分)がレリースローラ34と接触し、そしてレリースローラ34を上方に押し退け、これにより、排紙フレーム下33が離間姿勢をとり、第1排紙従動ローラ30が、トレイ70にセットされた光ディスクの印刷面に接触しない位置まで離間する。
【0085】
つまり、搬送媒体としてのトレイ70が、直接に排紙フレーム下33を離間姿勢に変化させ、第1排紙従動ローラ30を上方に変位させる構成となっているので、操作レバーおよびリンク機構等によってユーザが手動で排紙フレーム下33の姿勢を変化させる様な構成と比して、低コスト化を図ることが可能となる。また同時に、トレイ70を利用して光ディスクに印刷を行う際に、ユーザが第1排紙従動ローラ30を上方に退避させないまま印刷を実行する様なことが無く、光ディスクの印刷面直下にあるデータ記憶領域を確実に保護することができる。更に、搬送媒体が直接に第1排紙従動ローラ30を上方に変位させるので、第1排紙従動ローラ30の上方への変位量が正確となる。
【0086】
尚、レリースローラ34は、挿入されたトレイ70の記録領域外の部分と当接して排紙フレーム下33の姿勢を変化させる「当接部」であるので、必ずしも回転体である必要は無いが、本実施形態の様に回転体(ローラ)とすることによって円滑に且つ負荷なくトレイ70を挿入することが可能となる。また、本実施形態においては、レリースローラ34は記録ヘッド21の印刷可能領域外、即ち、プリンタ1後方側から給送される単票紙P或いはボード紙等(図2において符号(マル1)および(マル2)で示す方向に給送される搬送媒体)の側端から外れた位置に設けられていて、これにより、プリンタ1後方側から搬送媒体が搬送されても、当該搬送媒体によっては第1排紙従動ローラ30は上方に離間せず、以て第1搬送ローラ26と第2搬送ローラ27とによる適切な排紙動作を実行することが可能となっている。
【0087】
<5.第2排紙従動ローラのレリース手段の構成>
次に、主として図20および図21を参照しながら、適宜その他の図面をも参照しつつ、第2排紙従動ローラ31を第2排紙駆動ローラ29から離間させるローラレリース手段について説明する。ここで、図20は排紙フレーム下33の外観斜視図であり、図21は排紙フレーム下33の側断面図(部分拡大図)である。
【0088】
先ず、図20に示す様に排紙フレーム下33の長手方向において左側に偏倚した場所であって下流側端部には、排紙フレーム下33の長手方向に長い送り従動ローラレリース部材(以下「レリース部材」と言う)46が設けられている。レリース部材46の、排紙フレーム下33の長手方向における配設位置は、より詳しくは図4(A)に示す様にアダプタ取付部37の配設位置と同じであって、アダプタ50がアダプタ取付部37に取り付けられた際に、アダプタ50の先端部と係合可能な位置(アダプタ50によって押される位置)に配設されている。
【0089】
以下、図21を参照しつつより詳しく説明する。図21(A)において、レリース部材46は排紙フレーム下33の長手方向に延びる回動軸46aを有し、該回動軸46aを中心に、被記録材搬送経路を側視して回動可能に設けられている。回動軸46aから下には、第2排紙従動ローラ31の外周部に当接可能な当接部46bが形成されていて、レリース部材46が回動軸46aを中心に回動すると、当接部46bが第2排紙従動ローラ31の外周に当接する様に構成されている。
【0090】
一方、第2排紙従動ローラ31の外周に当接する当接部46bの反対側(被記録材搬送経路を側視して右側)は、アダプタ取付部37の下方に位置するアダプタ係合部46cとなっていて、図21(A)に示す様にアダプタ50の嵌合凸部52がアダプタ取付部37に嵌合すると、アダプタ50の先端面50aがアダプタ係合部46cに当接し、そしてレリース部材46を、当接部46bが第2排紙従動ローラ31の外周面に当接する方向に回動させる。すると、図21(B)に示す様に、レリース部材46が第2排紙従動ローラ31の回動軸をなす棒ばね32のばね力に抗して第2排紙従動ローラ31を第2排紙駆動ローラ29から離間(レリース)させる。
【0091】
以上の様に構成されたローラレリース手段の作用効果について説明する。プリンタ1は、前述の通りトレイ70をセットしたアダプタ50をアダプタ取付部37に着脱自在に取り付け可能に構成されていて、トレイ70を第2排紙従動ローラ31と第2排紙駆動ローラ29との間から手差し給送する際には、アダプタ50をアダプタ取付部37に取り付け、アダプタ50上からトレイ70を手差し給送する様になっている。一方、トレイ70にセットされた光ディスクは、インク滴の浸透性が悪く、印刷面に第2排紙従動ローラ31が接触するとインクの転着を招き易く、また、トレイ70の排紙動作は、搬送ローラ19(図2参照)によって行うことができるので、必ずしも第2排紙従動ローラ31と第2排紙駆動ローラ29とでトレイ70をニップする必要は無い。従って、トレイ70を用いて適切に光ディスクへ印刷を行うには、第2排紙従動ローラ31を第2排紙駆動ローラ29から離間させる必要があるが、ユーザが印刷前に予め第2排紙従動ローラ31を第2排紙駆動ローラ29から離間させる様な構成であると、ユーザの操作忘れの虞がある。
【0092】
しかし、プリンタ1においては、前述の様にアダプタ50をアダプタ取付部37に取り付けた際に、アダプタ50の一部(先端面50a)がレリース部材46に当接し、これによって第2排紙従動ローラ31が第2排紙駆動ローラ29から離間(レリース)するので、トレイ70を手差し給送する際には必ず第2排紙従動ローラ31が第2排紙駆動ローラ29から離間した状態となる。従って、トレイ70を用いて光ディスクへの印刷を実行する際に、ユーザの操作ミス、即ち、第2排紙従動ローラ31のレリース忘れを防止することができ、確実に適切な印刷結果を得ることができる。
【0093】
尚、本実施形態においては、図4に示す様にレリース部材46は、桁方向に複数個配置された第2排紙従動ローラ31のうち、アダプタ50上から給送されるトレイ70の範囲に位置するものにのみ(本実施形態においては、6個)当接する様に構成されているので、不必要な第2排紙従動ローラ31を離間させる必要が無く、レリース部材46の低コスト化を計ることができる。
【0094】
尚、本実施形態においては、アダプタ50はトレイ70を適切に給送する為の専用の構成要素として構成されているが、トレイ70のみならず、例えば厚手のボード紙等をアダプタ50上から給紙し、そしてアダプタ50上に排紙する様に構成することも可能である。この場合、アダプタ50は、前記ボード紙等を下方から支持する給紙トレイおよび排紙トレイの機能を果たすとともに、給紙の際の桁方向位置を規制する機能を果たすことになる。
【0095】
以上説明した様に、本発明によれば、排出用駆動ローラと排出用従動ローラとの間から上流側に向けて挿入された搬送媒体の液体噴射実行領域外の部分が、直接に排出用フレームすなわち当接部を押し退けることにより、排出用従動ローラを排出用駆動ローラから離間させるので、排出用フレームを前記接触姿勢から前記離間姿勢に変化させる為の操作レバーやリンク機構等が不要となり、従って排出用従動ローラを排出用駆動ローラから離間させる構成を構造簡単にして且つ低コストに得ることができると共に、搬送媒体が差し込まれると必ず排出用従動ローラが排出用駆動ローラから離間するので、ユーザによる操作ミスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るインクジェットプリンタの外観斜視図である。
【図2】 本発明に係るインクジェットプリンタの側断面概略図である。
【図3】 本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、排紙フレーム下及び位置決め用アダプタの側面図である。
【図4】 (A)は本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、アダプタ取付部の平面図であり、(B)は同正面図である。
【図5】 本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、位置決め用アダプタをアダプタ取付部に取り付ける作業を示す説明図である。
【図6】 本発明に係るインクジェットプリンタの制御系統のブロック図。
【図7】 (A)は本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、第1排紙従動ローラの平面図であり、(B)は同正面図((A)のA矢視図)。
【図8】 第1排紙従動ローラの他の実施形態を示す部分拡大斜視図。
【図9】 本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、第2排紙従動ローラの平面図であり、(B)は同正面図((A)のB矢視図)である。
【図10】 単票紙が第2排紙従動ローラを通過する様子を示す説明図。
【図11】 第2排紙従動ローラの外径とインクの転着との関係を示す説明図である。
【図12】 本発明に係るインクジェットプリンタの印刷制御のフローチャートである。
【図13】 図12に示した印刷制御のフローチャートの変形例である。
【図14】 本発明に係るインクジェットプリンタの余白送り制御のフローチャートである。
【図15】 図12に示した印刷制御を実行中における単票紙の状態を示す説明図である。
【図16】 (A)は本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、排紙フレーム下の右端部の斜視図であり、(B)は同左端部の斜視図である。
【図17】 本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、排紙フレーム下の正面図である。
【図18】 本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、排紙フレーム下の中央部付近の斜視図である。
【図19】 本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、排紙フレーム下の側面図である。
【図20】 本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、排紙フレーム下の外観斜視図である。
【図21】 本発明に係るインクジェットプリンタを構成する、排紙フレーム下の側断面図(部分拡大図)である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ、 1b 用紙排出口、 5 給紙装置、
6 サイドフレーム右、 7 サイドフレーム左、 8 制御部、
11 紙検出器、 14 紙検出レバー、 15 搬送駆動ローラ、
16 駆動モータ、 17 搬送従動ローラ、 19 搬送ローラ、
21 インクジェット記録ヘッド、 26 第1排紙ローラ、
27 第2排紙ローラ、 28 第1排紙駆動ローラ、
29 第2排紙駆動ローラ、 30 第1排紙従動ローラ、
31 第2排紙従動ローラ、 32 棒ばね、 33 排紙フレーム下、
34 レリースローラ、 35 排紙フレーム上、 36 キャリッジモータ、
37 取付部、 40 補助フレーム、 43 排紙従動ローラホルダ、
44 コイルばね、 46 レリース部材、 47 補助フレーム、
50 位置決め用アダプタ、 70 記録媒体搬送用トレイ、 P 単票紙
Claims (7)
- 印刷面の直下にデータ記憶領域を有する光ディスクに記録を実行するインクジェット式記録ヘッドの下流側に設けられ、回動駆動される排出用駆動ローラと、
付勢手段によって前記排出用駆動ローラに向けて付勢され、前記排出用駆動ローラに接して従動回動する、外周部に歯を有する歯付きローラと、
前記歯付きローラを前記排出用駆動ローラに接触させる接触姿勢と、前記歯付きローラを前記排出用駆動ローラから離間させる離間姿勢とを変化可能に設けられる、前記歯付きローラを取り付ける排出用フレームと、を備えた、前記光ディスクを前記排出用駆動ローラの回動によって排出する光ディスクの排出装置であって、
前記排出用フレームに、前記排出用駆動ローラと前記歯付きローラとの間から上流側に向けて前記付勢手段の付勢力に抗して差し込まれた前記光ディスクを保持する搬送用トレイの記録実行領域外の部分と当接可能な当接部が設けられ、
前記排出用駆動ローラと前記歯付きローラとの間から前記搬送用トレイが上流側に向けて差し込まれたとき、当該搬送用トレイの記録実行領域外の部分が、前記当接部を押し退けることによって前記排出用フレームを前記接触姿勢から前記離間姿勢に変化させるように構成されており、
前記排出用駆動ローラの下流側に、回動駆動される送り駆動ローラと、
付勢手段によって前記送り駆動ローラに向けて付勢され、前記送り駆動ローラに接して従動回動する、前記排出用フレームに取り付けられる送り従動ローラと、を備えた送りローラを備え、
前記搬送用トレイを前記送りローラの下流側から上流側に向けて手差し給送する際に、前記搬送用トレイを下方から支持し且つ前記給送の際の桁方向位置を規制する位置決め用アダプタを取り付けるアダプタ取付部と、
前記送り従動ローラ外周面に当接可能に設けられ、当接することにより、前記付勢手段に抗して前記送り従動ローラを前記送り駆動ローラから離間させる送り従動ローラレリース部材と、を備え、
前記位置決め用アダプタを前記アダプタ取付部に取り付けた際に、前記位置決め用アダプタの一部が前記送り従動ローラレリース部材に当接して前記送り従動ローラを前記送り駆動ローラから離間させるように構成されている、ことを特徴とする光ディスクの排出装置。 - 請求項1において、前記送り従動ローラが、前記光ディスクと弾性的に面接触する弾性ローラであることを特徴とする、光ディスクの排出装置。
- 請求項1または請求項2において、前記当接部が設けられる前記排出用フレームは、下流側に支点をもって前記当接部が位置する上流側が揺動可能に構成されていることを特徴とする光ディスクの排出装置。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項において、前記歯付きローラが適宜間隔をあけて前記光ディスクの搬送方向と直交する幅方向に複数個配列され、前記当接部は前記複数個の歯付きローラの内の幅方向の端に位置するものの外側近傍に配設されていることを特徴とする光ディスクの排出装置。
- 請求項1から4のいずれか1項において、前記当接部は、前記光ディスクの幅方向の基準位置を決める基準位置側と反対側に設けられていることを特徴とする光ディスクの排出装置。
- 請求項1から5のいずれか1項において、前記当接部が、搬送用トレイと接触して回動する回転体によって構成されていることを特徴とする光ディスクの排出装置。
- 印刷面の直下にデータ記憶領域を有する光ディスクに記録を実行するインクジェット式記録ヘッドと、該インクジェット式記録ヘッドの下流側に位置し前記光ディスクを装置外に排出する為の光ディスクの排出装置と、を備えたインクジェット式記録装置であって、請求項1から6のいずれか1項に記載の光ディスクの排出装置を備えていることを特徴とするインクジェット式記録装置。
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