JP4194711B2 - 熱可塑性植物繊維シートの製造方法 - Google Patents

熱可塑性植物繊維シートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱可塑性の植物繊維シートの製造方法に関し、詳しくは、各種加熱加圧成形に用いられる、熱可塑性の植物繊維シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、植物性繊維と熱可塑性樹脂系繊維とを混合し抄造して得たマット体を、加熱・加圧して、熱可塑性繊維を接着剤として使用して所定形状に成形して、熱可塑性植物繊維シートが製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなシート体の製造工程において、マット体の加熱時に熱可塑性樹脂系繊維がシュリンクして粒状になることがある。粒状の熱可塑性樹脂では、植物繊維との十分な接触面積を得ることができず、シート体において十分な強度を得ることができないことがある。
そこで、本発明では、熱可塑性樹脂系繊維と植物性繊維との良好な接触状態を有する熱可塑性植物繊維シートの製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明では、マット体中の熱可塑性樹脂系繊維を、シュリンクさせないで保持させ、この状態で熱圧プレスすれば、植物性繊維との十分な接触状態を得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、植物性繊維と、熱可塑性樹脂系繊維とを含有するマット体を熱風により加熱して熱可塑性樹脂系繊維を軟化する予熱工程と、
予熱されたマット体を加熱及び加圧して前記熱可塑性樹脂系繊維を溶融させる加熱加圧工程と、
前記加熱加圧工程により得られたシートを冷却する工程、
とを有する、熱可塑性植物繊維シートの製造方法を提供する。
この方法によれば、熱風で予熱されたマット体中において軟化した熱可塑性樹脂系繊維を、加熱及び加圧することにより、植物性繊維に対して被覆状に熱可塑性樹脂が固定される。この結果、熱可塑性樹脂と植物性繊維との良好な接触面積が得られる。
【0005】
この方法においては、前記植物性繊維は、繊維長50mm以上150mm以下であり、前記熱可塑性繊維は繊維長25mm以上50mm以下であることが好ましい。この態様によれば、それぞれの繊維につき良好な分散性が得られ、熱可塑性樹脂と植物性繊維との良好な接触状態が得られる。
さらに、前記植物性繊維は、50重量%以上80重量%以下で、前記熱可塑性樹脂系繊維は20重量%以上50重量%以下であることが好ましい態様である。この態様によれば、良好な熱可塑性樹脂系繊維の分散性が得られる。
【0006】
また、この方法において、予熱工程の熱風の加熱温度が、前記熱可塑樹脂の軟化温度より10℃以上20℃以下低い温度であることも好ましい。この態様によれば、予熱工程において容易に熱可塑性樹脂系繊維の繊維状態が保持される。
さらに、前記加熱加圧工程の加熱温度が、前記熱可塑性樹脂の軟化温度より20℃以上40℃以下高い温度であることも好ましい。この態様によれば、加熱加圧工程において、一挙に繊維状態の熱可塑性樹脂を溶融できる。
【0007】
また、前記加熱加圧工程において、徐々にマット体を圧縮することが好ましい。このようにすると、均一に熱可塑性樹脂を繊維状態で溶融し、植物性繊維に対して被覆状に接触させることができる。
前記予熱工程では、前記マット体の上方側および/または下方側から他方側へ熱風を供給し、前記加熱加圧工程では、前記マット体の上下側から熱プレスする、ことも好ましい。このようにすると、予熱工程においてマット体に供給され保持された熱が、加熱加圧工程において、効果的に利用される。
【0008】
前記加熱加圧工程に次いで、加圧しつつシートを冷却することも好ましい態様である。加圧しつつシートを冷却することにより、繊維状態で軟化され、植物性繊維に対して被覆状に接触されている熱可塑性樹脂が、植物繊維と良好な接触状態を保持しながら、固定され、植物性繊維を接着する。
【0009】
前記熱可塑性植物繊維シート中の前記熱可塑性樹脂系繊維は、前記植物性繊維に対して被覆状に固化されている、シートの製造方法も提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明は、植物性繊維と、熱可塑性樹脂系繊維とを含有するマット体を熱風により加熱して熱可塑性樹脂系繊維を軟化する予熱工程と、
予熱されたマット体を加熱及び加圧して前記熱可塑性樹脂系繊維を溶融させる加熱加圧工程と、
加熱加圧工程で得られたシートを冷却する工程、
とを有する、熱可塑性植物繊維シートの製造方法である。
【0012】
(マット体の原料)
本発明のマット体は、植物性繊維と熱可塑性樹脂系繊維を原料として有している。
植物性繊維は、植物由来繊維であり、リグノセルロースを主成分とする。かかる植物性繊維の原料としては、木材系、草本系等、種類を限定しない。また、廃棄繊維材料等も使用できる。麻(ジュート)、バガス、ケナフ、フラックス等の草本目系の植物性繊維が好ましい。特に一年生の草本目系が好ましい。また、これらの原料の使用部位も特に限定しない。
植物性繊維の繊維長も特に限定しないが、分散性を考慮すると、50mm以上150mm以下が好ましい。より好ましくは、70mm以上100mm以下であり、さらに好ましくは、70mm以上90mm以下である。
また、植物性繊維として、あるいは植物性繊維の一部として圧縮反発性の強い繊維を使用することも好ましい。かかる繊維は、典型的には、繊維直径が、0.3mm以上0.6mm以下である。このような圧縮反発性の強い植物性繊維を用いることにより、シート密度を低減しつつ、シートの板厚の増加によりシートの剛性を向上させることができる。
【0013】
本発明で使用する熱可塑性樹脂系繊維は、熱可塑性樹脂を含有するステープル状あるいはフィラメント状の繊維である。繊維の形態としては、通常の形態の他、らせん状、特殊な形態の繊維も利用できる。また、繊維長は、特に限定しないが、好ましくは、25mm以上50mm以下である。この範囲であると、繊維長50mm以上150mm以下の植物性繊維との良好な分散性を得ることができる。
【0014】
熱可塑性樹脂の種類は特に限定しないが、軟化温度が100℃以上200℃以下のものが好ましい。より好ましくは、150℃以上180℃以下のものである。
具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどを好ましく用いることができる。特に好ましくは、ポリプロピレンである。
熱可塑性樹脂は1種類でも、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。さらに、熱可塑性樹脂系繊維には、他の材料を含んでいてもよく、混紡されていてもよい。また、中心側にポリプロピレン等の高融点樹脂、外層側にポリエチレン等の低融点樹脂を有する複合繊維を用いることもできる。
本発明においては、単一の種類の熱可塑性樹脂のみからなる繊維を用いることが好ましい。
【0015】
このような植物性繊維と熱可塑性樹脂系繊維との配合比は、シート密度及び強度により、必要に応じて選択することができる。好ましくは、植物性繊維が50重量%以上80重量%以下であり、熱可塑性樹脂系繊維が20重量%以上40重量%以下である。かかる配合比の範囲において、良好な分散性と接着性とが確保され、シート密度及び強度の調節も容易となる。
なお、マットの原料としては、他の原料も使用できる。例えば、チップ状、繊維状、細長い帯状等のガラス、セラミックス、金属、サーメット、熱硬化樹脂、エラストマー等である。
【0016】
(マット体調製工程)
マット体は、植物性繊維及び熱可塑性樹脂系繊維を綿状に解繊後、混合し、その後、抄造することにより得られる。解繊、混合、抄造は、従来公知の手段及び方法によって行われる。
本発明で用いるマット体は、目付量が0.6kg/m2以上3.0kg/m2以下であることが好ましい。また、密度としては0.04g/cm3以上0.1g/cm3以下であることが好ましい。
かかる範囲であると、マット体の予熱工程において、マット体中に十分に熱風が通気され、かつ、加熱されたガス(空気)をマット体中に保持できる。この結果、マット体が内部まで均一に加熱される。これにより、熱可塑性樹脂系繊維を容易に軟化させることができる。また、マット体中の植物性繊維等に由来する油脂や水分等の揮発性成分を、予熱工程において容易に蒸発させることができる。このような油脂は、シートに残留すると不快臭の原因となるし、水分の残留は、シートにおけるカビ等の微生物の繁殖、植物性繊維の劣化、不快臭の原因となりうる。さらに、引火(着火)の危険性を十分に低下させることができる。より好ましくは、目付量が1.0kg/m2以上1.8kg/m2以下であり、密度が、0.04g/cm3以上0.07g/cm3以下である。
【0017】
マット体は、かかる目付量及び/又は密度を有していることが好ましいが、このようなマット体は、通常、単に抄造工程を終えた段階のいわゆるフリースマットとして得られる。すなわち、ニードルパンチング工程を経ていない状態のマット体である。しかしながら、マット体原料の飛散防止、搬送性の容易化等を図るために、上記目付量及び/又は密度が確保される範囲内で、ニードルパンチングすることもできる。
【0018】
(マット体の予熱工程)
このようにして調製したマット体を、熱風で予熱する。具体的には、通常、熱風炉と呼ばれる加熱炉で加熱する。
熱風炉としては従来公知の熱風炉を各種使用できるが、好ましくは、コンベア等でマット体が炉内を移動するようになっている、熱風炉である。また、熱風供給源は、マット体の載置部の下方側にあることが好ましく、マット体の下方側から上方側に向けて熱風を供給できるようになっていることが好ましい。
【0019】
本予熱工程では、マット体中の熱可塑性樹脂系繊維を、繊維状の形態を保持させながら軟化される。すなわち、熱可塑性樹脂系繊維がシュリンクされないで軟化される。このため、予熱工程における熱風温度は、マット体中の熱可塑性樹脂が溶融しない程度の温度であるが、軟化させる程度の温度であることが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂の軟化温度より低い温度に加熱されたガス(典型的には、空気)を供給する。ただし、軟化温度以上に加熱されたガスを短時間供給して、マット体中の熱可塑性樹脂を溶融・分解等させずに軟化させることもできる。
したがって、熱風の加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂の種類によって選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の軟化温度より10℃から20℃低い温度の熱風を供給する。典型的には、ポリプロピレン系繊維(軟化温度160℃)に対しては、140℃〜150℃の熱風を供給することが好ましく、ポリエチレン系繊維(軟化温度130℃)の場合には、110℃以上120℃以下の熱風を供給することが好ましく、ポリエチレンテレフタレート系繊維(軟化温度210℃)の場合には、190℃以上200℃以下の熱風を供給することが好ましい。
なお、熱可塑性樹脂の軟化温度は、例えば、JIS K7206 熱可塑性プラスチックのビカット軟化温度試験方法により測定することができる。また、工程における加熱温度は、例えば、赤外輻射型非接触温度計にて測定することができる。
【0020】
本発明で使用するマット体が、上記した目付量及び/又は密度を有する場合には、熱風がマット体を通過する際の圧力(抵抗)が適切であり、適度に熱風がマット体を通過し、かつ適度に加熱された空気がマット体中に保有される。このため、マット体中の揮発成分を蒸発させることができ、かつ効率よく熱可塑性樹脂系繊維を軟化させることができる。また、短時間で内部まで均一な加熱状態とすることができる。
【0021】
(加熱加圧工程)
先の予熱工程において、熱可塑性樹脂系繊維が、繊維状の形態を保持しながら軟化した状態となったマット体を、その樹脂の軟化状態を維持させて、加熱・加圧する。本工程では、繊維状形態で軟化した熱可塑性樹脂の流動が抑制されつつ溶融される(なお、本工程における加熱により、熱可塑性樹脂は、本来の繊維形態を有しなくなるため、以下、熱可塑性樹脂という。)。すなわち、植物性繊維との良好な接触状態が維持されて熱可塑性樹脂が溶融される。この結果、植物性繊維に対して熱可塑性樹脂が分散した状態が維持されるとともに、熱可塑性樹脂が植物性繊維に対して皮膜状に接触した状態が得られる。すなわち、熱可塑性樹脂と植物性繊維が広い面積で接触した状態が得られる。
本工程におけるこのような作用により、得られるシートの強度及び剛性が効果的に増大される。特に、シートが低目付量及び/又は低密度の場合においても、強度が確保される。
【0022】
本工程における加熱温度は、用いた熱可塑性樹脂を溶融できる程度の温度である。したがって、かかる熱可塑性樹脂の軟化温度以上であることが好ましい。
加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂の種類によって選択される。特に、本工程においては、速やかに、繊維状態の熱可塑性樹脂を軟化することが好ましいため、熱可塑性樹脂の軟化温度より20℃から40℃高い温度とすることが好ましい。
典型的には、ポリプロピレン系繊維(軟化温度160℃)に対しては180℃以上200℃以下の温度であり、ポリエチレン系繊維(軟化温度130℃)の場合には、150℃以上170℃以下の温度であり、ポリエチレンテレフタレート系繊維(軟化温度210℃)の場合には、230℃以上250℃以下の温度であることが好ましい。
なお、本工程では、予め予熱されたマット体を加熱するため、材料内部温度が急速に上方し、速やかにかつ均一に加熱できる。
【0023】
本工程における加圧圧力は、得ようとするシートの密度が、0.5以上1.0以下の範囲となるように加圧することが好ましい。この範囲であると、繊維状形態で軟化した熱可塑性樹脂の流動を効果的に抑制し、植物性繊維内部への含浸を抑制して植物性繊維に対して十分に皮膜状とすることができる。また、シート中に保有される空気量が適度に低減され、着火の危険性を十分に低減することができる。また、このシートをその後、所定の形状に成形するプレ成形体として使用する場合の成形性等が良好となる。より好ましくは、0.5以上0.9以下であり、さらに好ましくは、0.5以上0.7以下である。
また、圧縮反発性のある植物性繊維をマット体原料として用いた場合には、0.4以上1.0以下の範囲の密度に加圧するようにするのが好ましい。より好ましくは、0.4以上0.9以下である。
なお、本工程では、マット体内部に予熱により保持された熱が内部側に集中され、効果的に加熱される。
【0024】
このような加圧は、従来公知の各種加圧手段及び方法を用いて行うことができる。本発明においては、繊維状態に軟化した熱可塑性樹脂をそのままの状態で速やかに加圧するのが好ましいため、表面にスチールホイルを備えた熱ローラーにより加圧するのがよい。特に、移動式の熱風炉から次々に排出される予熱されたマット体を加圧するのに、かかる熱ローラー方式の加圧・加熱が最も好ましい。
【0025】
特に、予熱工程が、マット体の上方側および/または下方側から他方側に向けて熱風を供給するようにし、本工程が、マット体の上下側から加圧加熱するようにすることにより、予熱工程でマット体に供給された熱が、加圧によりマット体の中央側に保持され、さらに、上下からの加熱によりマット体の内部まで一挙に熱可塑性樹脂の軟化温度にまで加熱される。したがって、本工程における加熱温度の上昇を抑制可能であり、使用する熱量を節約できるというメリットがある。
【0026】
また、加圧は、段階的あるいは連続的に徐々に行うことが好ましい。徐々に所望の密度が得られるように加圧することにより、表層側から内部まで均一な密度のシートを得ることができる。典型的には、2個から4個のローラーを用いて徐々に加圧することが好ましい。
【0027】
(冷却工程)
このような加圧工程において得られる、熱可塑性植物繊維シートにおいては、繊維状態で熱可塑性樹脂が軟化され、植物性繊維に対して被覆状態となっている。この後、この軟化状態を固定するために、シートを冷却する。好ましくは、加圧しながら冷却する。
冷却工程では、繊維状態の熱可塑性樹脂と植物性繊維との接触状態は維持される。すなわち、両者の良好な接触状態が維持されて熱可塑性樹脂が冷却固化するので、熱可塑性樹脂による接着性が良好に発揮され、強度及び剛性の良好なシートが得られる。
また、冷却しつつ加圧することにより、熱可塑性樹脂の流動を抑制するとともに、熱可塑性樹脂の植物性繊維への含浸も抑制することができ、効率よく植物性繊維の主として表面側に熱可塑性樹脂をコーティングし、接着することができる。
【0028】
冷却は、用いる熱可塑性樹脂がおおよそ固化し、流動しないような状態まで行えば十分である。また、このような状態にまで冷却すれば、容易に、搬送体等のシート載置表面から、シートを剥離することができる。熱可塑性樹脂が固化して粘着性を発揮しなくなるからである。冷却工程においては、特に、雰囲気を常温以下とする必要はないが、送風等の供給は冷却固化時間の短縮に効果的であり、雰囲気を常温以下としたり、あるいは冷風を供給することはさらに効果的である。冷却は、典型的には、シートの温度が熱可塑性樹脂の軟化温度の約半分程度の温度になるように行う。例えば、ポリプロピレン(軟化温度160℃)を用いる場合には、80℃以下することが好ましく、ポリエチレン(軟化温度130℃)の場合には、65℃以下にすることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(軟化温度210℃)の場合には、105℃以下にするのが好ましい。いずれの場合においても、ハンドリング性を考慮すれば、60℃以下にするのが好ましい。
【0029】
本工程における加圧手段は、従来公知の各種手段を用いることができる。好ましくは、先の加圧工程における加圧手段と同様、ロールによる加圧が好ましい。両加圧工程が、加圧ロールによって行われると、加圧工程から加圧・冷却工程に連続的に移送可能であり、熱可塑性樹脂の良好な存在形態が維持されつつ、冷却固化される。
【0030】
冷却工程を経たシート中の熱可塑性樹脂は、植物性繊維中に分散され、植物性繊維と接触された状態で存在している。また、植物性繊維との接触状態において、植物性繊維の主として表面側に皮膜状に熱可塑性樹脂が付与されて、コーティングされたようになっている。すなわち、熱可塑性樹脂と植物性繊維とは広い接触面積が確保されて結合され、接着されている。また、このような熱可塑性樹脂の分散状態が、シート内部全体において均一に確保されている。
したがって、目付量および/または密度が低いシート体においても、熱可塑性樹脂が、植物性繊維とこのような接触状態で分散されているため、良好な強度及び剛性を得ることができる。
また、熱可塑性樹脂系繊維の配合量が少なくても、植物性繊維との十分な接触面積が得られるので、熱可塑性樹脂系繊維を配合量を低減しても、良好な強度及び剛性を得ることができる。
また、低目付量および/または低密度であっても、良好な強度及び剛性を得ることができる。すなわち、軽量でかつ強度及び剛性の高いシートを得ることができる。
【0031】
また、冷却工程後のシートの曲げ強さは、例えば、JIS K7203硬質プラスチックの曲げ試験方法に従って、弾性率を測定することができる。例えば、試験片を幅50mm×長さ150mmとし、支点間距離を80mmとして測定できる。
本発明のシートの弾性率(JIS K7203)は、1300MPa以上であることが好ましく、より好ましくは、1500MPa以上であり、さらに好ましくは、1700MPa以上であり、最も好ましくは、1800MPa以上である。
【0032】
冷却工程後のシートにおいては、好ましくは0.5〜0.9の密度を有し、より好ましくは、0.6〜0.8の密度を有している。このため、含有する空気量が少なく、着火性が抑制されたシートとなっている。
また、従来のプレ成形体であるニードルパンチング後のマット体に比較して、ハンドリング性、着火性及び成形性が優れたプレ成形シートとなっている。
【0033】
このようにして得られたシートは、そのまま板状体の形態で各種用途に使用することができるが、熱可塑性であるので、さらに、加熱して、所望の形状に成形することもできる。
このようなシートをプレ成形体として用いて最終成形体を得る場合においても最終成形工程において、シート体における熱可塑性樹脂と植物性繊維との良好な接触状態が維持されるので、強度及び剛性の良好な最終成形体を得ることができる。
最終成形体においては、好ましくは0.6〜1.0の密度を有し、より好ましくは、0.6〜0.9、さらに好ましくは、0.7〜0.9の密度を有している。このため、含有する空気量が少なく、着火性が抑制されたシートとなっている。
この最終成形体においても、曲げ強さを、例えば、JIS K7203硬質プラスチックの曲げ試験方法に従って、弾性率として測定することができる。例えば、試験片を幅50mm×長さ150mmとし、支点間距離を80mmとして測定できる。
本発明のシートを用いてさらに成形した最終成形体の弾性率(JIS K7203)は、1400MPa以上であることが好ましく、より好ましくは、1600MPa以上であり、さらに好ましくは、1800MPa以上であり、最も好ましくは、1900MPa以上である。
【0034】
以上説明したシートの材料、組成、各種特性をそれぞれ組み合わせたシートおよび最終成形体も本発明の開示の範囲内に含まれる。また、上述した、各工程内容をそれぞれ組み合わせたシート体の製造方法および最終成形体の製造方法も本発明の開示の範囲内にある。
以上のことから、本発明は、以下の形態を採ることがもできる。
(1)繊維長50mm以上150mm以下の植物性繊維と、熱可塑性樹脂とを含有し、前記植物性繊維は、50重量%以上80重量%以下で、前記熱可塑性樹脂は20重量%以上50重量%以下であり、前記熱可塑性樹脂は、植物性繊維に対して被覆状に固化されている、熱可塑性植物繊維シート。
(2)繊維長50mm以上150mm以下の植物性繊維と、熱可塑性樹脂とを含有し、前記植物性繊維は、50重量%以上80重量%以下で、前記熱可塑性樹脂は20重量%以上50重量%以下であり、密度(g/cm3)が0.5〜0.9であり、弾性率が、1300MPa以上である、熱可塑性植物繊維シート。
(3)繊維長50mm以上150mm以下の植物性繊維と、熱可塑性樹脂とを含有し、前記植物性繊維は、50重量%以上80重量%以下で、前記熱可塑性樹脂は20重量%以上50重量%以下であり、前記熱可塑性樹脂は、植物性繊維に対して被覆状に固化されている、熱可塑性植物繊維成形体。
(4)繊維長50mm以上150mm以下の植物性繊維と、熱可塑性樹脂とを含有し、前記植物性繊維は、50重量%以上80重量%以下で、前記熱可塑性樹脂は20重量%以上40重量%以下であり、密度(g/cm3)が0.6〜1.0であり、弾性率が、1400MPa以上である、熱可塑性植物繊維成形体。
(5)繊維長50mm以上150mm以下の植物繊維と、熱可塑性樹脂とを含有し、前記植物繊維は、50重量%以上80重量%以下で、前記熱可塑性樹脂は20重量%以上50重量%以下である熱可塑性植物繊維シートを、加熱及び加圧して成形する、熱可塑性植物繊維成形体の製造方法。
(6)前記熱可塑性植物繊維シートの密度(g/cm3)が0.5〜0.9であり、弾性率が、1300MPa以上である、前記(5)記載の製造方法。
【0035】
【発明の効果】
この発明によれば、熱可塑性樹脂系繊維と植物性繊維との良好な接触状態を有する熱可塑性植物繊維シートが提供される。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の具現化した一実施例について具体的に説明する。
マット体原料として、繊維長約100mmのケナフと、繊維長約30mmのポリプロピレン繊維(軟化点160℃)(PP)を用いた。ケナフとPPとの配合比は、重量比で、70:30とした。
【0037】
まず、これらの原料を、十分に解繊し混合する。混合された原料を、抄造機で目付量が1.4kg/m2程度となるように抄造した。得られたフリースマットの密度は、約0.01g/cm3であった。
なお、本例においては、このフリースマットをマット体として、予熱工程に供したが、ニードルパンチングを施して密度が約0.1g/cm3のマット体としてもよい。
【0038】
このフリース状のマット体を、150℃の熱風炉に入れた。熱風炉は、その内部をマット体を載せたスチールベルトが所定の速度で移動するようになっており、マット体下方側から、マット体載置部の通風孔を通過して、熱風が供給され、マット体の上方に向けて通過されるようになっている。
本例においては、150℃に調整された熱風をこのマット体に供給した。本例においては、マット体あたりの熱風供給時間は、約2分であった。この予熱工程により、マット体中の熱可塑性樹脂は、繊維状態が維持されたたまま、マット体内部において均一に、溶融されることなく軟化された。
【0039】
この熱風炉を通過させたマット体は、直ちに、マット体の上方から薄いスチールホイルを介して230℃の熱ローラーによって加圧・加熱した。4本のローラーを配列して、順に圧縮し、最終的に、密度が0.6〜0.8g/cm3に圧縮した。マット体は、上方から、そしてマット体表面においてローラーによって直接加熱・加圧されることにより、予熱工程でマット体中に保持された熱が有効に利用され、速やかに熱可塑性樹脂が溶融され、しかも、植物性繊維に対して皮膜状に付与された。
【0040】
圧縮後、スチールベルトで搬送しながら、さらに、ローラーで加圧した。ローラーは特に加熱せず、また冷却もしなかった。所定時間後、シートが60℃以下となったところで、スチールベルト上からシートを剥離した。PPが既に十分に冷却固化しているために、シート表面とスチールベルト表面との間に粘着性はなく、容易に剥離できた。本実施例で得られたシートは、本実施例と同様の材料、同様の重量比を混合して従来の方法(熱可塑性樹脂の軟化および溶融を同一の加熱工程(170℃〜190℃)で処理し、密度が0.6〜0.8g/cm3となるように冷却成形する方法)により成形して得られたシートと比較して、良好な弾性率(JIS K7203)を備えていた。

Claims (3)

  1. 繊維長50mm以上150mm以下で繊維直径0.3mm以上0.6mm以下の植物性繊維を50重量%以上80重量%以下含有し繊維長25mm以上50mm以下の熱可塑性樹脂系繊維を20重量%以上50重量%以下含有する、密度0.04g/cm 3 以上0.1g/cm 3 以下のマット体を、熱風により加熱して熱可塑性樹脂系繊維を軟化する予熱工程と、
    予熱されたマット体を加熱及び加圧して、前記熱可塑性樹脂系繊維を溶融させながら、得ようとするシートの密度が0.4g/cm 3 以上1.0g/cm 3 以下の範囲となるように加圧する加熱加圧工程と、
    前記加熱加圧工程により得られたシートを冷却する工程、とを有
    前記予熱工程の熱風の温度が、前記熱可塑樹脂の軟化温度より10℃以上20℃以下低い温度であり、
    前記加熱加圧工程の加熱温度が、前記熱可塑性樹脂の軟化温度から20℃以上40℃以下高い温度であり、
    前記予熱工程では、前記マット体の上方側または下方側から他方側へ熱風を通過させ、前記加熱加圧工程では、前記マット体の上下から熱プレスし、
    前記予熱工程では、前記マット体中の熱可塑性樹脂系繊維を繊維状の形態を保持させながら軟化させ、前記加熱加圧工程では、前記熱可塑性樹脂系繊維の軟化状態を維持させながら加熱及び加圧し、
    前記シート中の前記熱可塑性樹脂系繊維は、植物性繊維に対して被覆状に固化されている、熱可塑性植物繊維シートの製造方法。
  2. 前記加熱加圧工程において、徐々にマット体を圧縮する、請求項1記載の熱可塑性植物繊維シートの製造方法。
  3. 前記加熱加圧工程に次いで、加圧しつつシートを冷却する、請求項1または請求項2に記載の熱可塑性植物繊維シートの製造方法。
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