JP4194638B2 - 造形材料、および造形材料の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、ポリビニルアルコール系樹脂に対して有機中空微小球や無機中空微小球を加えた場合、ポリビニルアルコール系樹脂の凝析が生じ、軽量粘土における粘性、流動性、凝集性等が、短期間で低下するといった問題が見られた。
より具体的には、主材としての粒径20〜120μmの合成樹脂微小中空球体(5〜15重量%)と、ポリビニルアルコール系樹脂(5〜10重量%)と、酢酸ビニル系樹脂と、水(50〜80重量%)と、からなり、ポリビニルアルコール系樹脂と、酢酸ビニル系樹脂との配合比を重量比で10:7〜10:3とした軽量粘土である。
より具体的には、粒径20〜120μmの合成樹脂微小中空球体5〜15重量%と、ポリビニルアルコール樹脂5〜10重量%と、可塑剤を含む酢酸ビニル樹脂1.5〜7重量%と、ポリエチレンオキサイド0.5〜1.5重量%と、水50〜80重量%と、からなる造形用軽量粘土である。
また、特許文献1に開示された軽量粘土は、可塑剤を含む酢酸ビニル樹脂が必須成分であり、密閉包装状態で長期間保管した場合には、ポリビニルアルコール系樹脂が凝析して、軽量粘土における粘性や塑性が著しく低下するという問題が見られた。
また、特許文献1および2に開示された軽量粘土は、バインダー樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂、可塑剤を含む酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンオキサイド等)の含有量が多すぎる一方、バインダー樹脂と、水との配合割合が最適化されていないために、流動性に乏しいばかりか、保形性についても乏しいという問題が見られた。
すなわち、本発明の目的は、造形材料を製造したり、使用したりする際には、適度な流動性が得られるばかりでなく、乾燥後には、優れた耐水性を示す造形材料およびそのような造形材料の効率的な製造方法を提供することにある。
すなわち、酢酸イオンの濃度を、例えば、酢酸イオン調整剤の添加や、加熱処理条件の調整等によって、所定範囲に制御することにより、乾燥した後に、優れた耐水性を示す造形材料を提供することができる。
また、造形材料中の、酢酸イオンの濃度を、所定範囲に制御することにより、安定的に、かつ均一な特性の造形材料を製造することができるばかりか、長期間に渡って優れた保存安定性を得ることができる。
なお、造形材料中の酢酸イオンの濃度(ppm)は、造形材料1kg当たりに含まれる酢酸イオン量(mg)を意味している。
そして、酢酸イオンの濃度を、例えば、酢酸イオン調整剤(NH4NO3、NaOH、およびKCl等)の添加や、加熱処理条件の調整等によって、所定範囲に容易に制御することが可能である。
よって、初期的には、造形材料中に、酢酸イオンが実質的に含まれていないものの、徐々に加水分解が進行して、所定量の酢酸イオンが放出されて、それが残留するものであり、その酢酸イオンの濃度については、イオンクロマトグラフィ装置を用いて計測して、精度良く制御することができるものである。
このような範囲に水の含有量を制限することにより、造形材料の使用感と、乾燥性と、耐水性との間のさらなる良好なバランスをとることができる。
このような範囲に水の含有量を制限することにより、造形材料の使用感と、乾燥性と、耐水性との間のさらなる良好なバランスをとることができる。
このような範囲に骨材の含有量を制限することにより、造形材料の使用感(使い勝手)と、軽量性等との間のさらなる良好なバランスをとることができる。
このような範囲に水/ポリビニルアルコール系樹脂の配合比率を制限することにより、造形材料の使用感と、乾燥性と、耐水性との間のさらなる良好なバランスをとることができる。
このような範囲に粘度調整剤の添加量を制限することにより、造形材料の使用感と、乾燥性と、耐水性との間のさらなる良好なバランスをとることができる。
このような範囲に陽イオンの合計量を制御することにより、加水分解が適度に進んで、造形材料中の酢酸イオンの濃度を所定範囲内の値にさらに容易に調整することができる。
したがって、このような範囲の陽イオンであれば、造形材料を製造したり、使用したりする際には、適度な流動性が得られるばかりでなく、乾燥後には、優れた耐水性を得ることができる。
なお、造形材料中の陽イオンの合計量は、酢酸イオン調整剤(NH4NO3、NaOH、およびKCl等)の添加等によって、所定範囲内の値に容易に調整することができる。
すなわち、造形材料中の酢酸イオンの濃度を、例えば、酢酸イオン調整剤の添加や、加熱処理条件の調整等により、所定範囲に制御することによって、造形材料を製造したり、使用したりする際には、適度な流動性が得られるばかりでなく、乾燥後には、優れた耐水性を有する造形材料を効率的に得ることができる。
また、本発明の別の実施形態は、ポリビニルアルコール系樹脂を含むバインダー樹脂と、水と、骨材と、を含有する造形材料の製造方法であって、バインダー樹脂と、水と、骨材と、を均一に混合し、造形材料とする工程と、得られた造形材料中の酢酸イオンの濃度を500〜10,000ppmの範囲内値に調整工程と、を含むことを特徴とする造形材料の製造方法である。
以下、構成要件ごとに、本発明の造形材料および造形材料の製造方法について、それぞれ説明する。
(1)種類
バインダー樹脂の種類としては、ポリビニルアルコール系樹脂を使用することを特徴とする。この理由は、かかるポリビニルアルコール系樹脂は、単位重量当たりに含まれる水酸基量が多く、そのため、適度な粘性、流動性、凝集性等を有しており、少量の添加で、造形材料としての好ましい特性を発揮することができるためである。
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、保水性にも優れている一方、他の水溶性樹脂、例えば、水酸基含有化合物やカルボキシル基含有化合物との間の相溶性にも優れているためである。
なお、かかるポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルを鹸化して得られるポリビニルアルコールそのものや、カルボキシル基をポリビニルアルコールの側鎖に導入した変性ポリビニルアルコール、アミノ基をポリビニルアルコールの側鎖に導入した変性ポリビニルアルコール、あるいは炭素数10以上の長鎖アルキル基をポリビニルアルコールの側鎖に導入した変性ポリビニルアルコール等が含まれる。
すなわち、ポリアクリル酸は、少量の添加により、全体的にクリ−ム状にしやすく、手触りに優れた造形材料が得られることから、ポリビニルアルコール系樹脂に対して、有効な併用物である。
さらに、バインダー樹脂中に、酢酸ビニル系樹脂やポリエチレンオキサイド等を添加してもよいが、この場合、流動性が著しく低下したり、手触りが悪くなったりする傾向がある。したがって、それらの含有量を全体量に対して、0.5重量%未満の値とすることが好ましい。
また、バインダー樹脂の含有量を、造形材料の全体量(100重量%)に対して、0.2〜30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるバインダー樹脂の含有量が0.2重量%未満の値となると、造形材料の取り扱い性や成型性が著しく低下する場合があるためである。一方、かかるバインダー樹脂の含有量が30重量%を超えると、造形材料の展性が低下したり、混合分散が困難となったりする場合があるためである。
したがって、造形材料の取り扱い性や成型性と、造形材料の展性とのバランスがより良好となるため、バインダー樹脂の含有量を、全体量に対して、0.3〜25重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.4〜22重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量をかかる範囲内の値とすることによって、造形材料において、優れた使用感や造形性が得られるばかりか、長期間保管した場合であっても、ポリビニルアルコール系樹脂が凝析することを効果的に抑制することができるためである。
したがって、バインダー樹脂としてのポリビニルアルコール系樹脂の含有量を、造形材料の全体量に対して、0.6〜20重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.7〜18重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した酢酸イオンによるポリビニルアルコール系樹脂の凝析についての詳細説明は、後のイオンについての項において記載する。
水の含有量は、造形材料の取り扱い性や成型性、あるいは造形材料の製造の容易さを考慮して定めることが好ましい。例えば、全体量に対して、30〜89重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる水の含有量が30重量%未満の値となると、粘度調整が困難となったり、流動性が著しく低下したりする場合があるためである。一方、かかる水の含有量が89重量%を超えると、耐クリープ性の制御が困難となって、保形性が著しく低下したりする場合があるためである。
したがって、かかる水の含有量を、造形材料の全体量に対して、50〜85重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、60〜80重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、かかる水/ポリビニルアルコール系樹脂の配合比率が3未満の値になると、粘度調整が困難となったり、流動性が著しく低下したりする場合があるためである。
一方、かかる水/ポリビニルアルコール系樹脂の配合比率が400を超えると、耐クリープ性の制御が困難となって、保形性が著しく低下したりする場合があるためである。
したがって、水/ポリビニルアルコール系樹脂の配合比率(重量比)を5〜300の範囲内の値とすることがより好ましい。
(1)種類
骨材の種類は特に制限されるものではないが、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、ベントナイト、フライアッシュ、マイカ、ケイソウ土(珪藻土)、パーライト、石膏、長石等の一種単独または二種以上の組み合わせ画挙げられる。
このような有機中空微小球としては、有機材料からなる外殻(殻壁)を有し、その内部に空隙を有する微小球であれば好適に使用することができる。すなわち、外殻が塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合樹脂、酢酸ビニル−アクリロニトリル共重合樹脂、メチルメタクリレート−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂等から構成されるとともに、内部に、気体や液体を内包しているものが好ましい。
なお、酢酸ビニル−アクリロニトリル共重合樹脂、メチルメタクリレート−アクリロニトリル共重合樹脂、およびアクリロニトリル樹脂等からなる外殻を有する有機中空微小球は、白色性が高いことからより好ましい有機中空微小球である。
さらに、無機中空微小球と、有機中空微小球と併用した場合、無機中空微小球が周囲に存在し、クッション材の役目を果たして、破壊されることを有効に防止したり、無機中空微小球の分散性をより向上させたりすることができる。
また、このように有機中空微小球と、無機中空微小球とを併用することにより、着色剤との関係で、発色性を高めたり、造形材料の形状保持性を高めたり、収縮率を低下させたりすることもできる。
また、骨材の好ましい平均粒径は、骨材の種類によっても変わるが、通常、0.1〜120μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる骨材の平均粒径が0.1μm未満の値となると、造形材料の造形性が低下したり、所定量添加した場合の軽量化が困難となったりする場合があるためである。一方、かかる骨材の平均粒径が120μmを超えると、混合分散が困難となったり、あるいは、造形材料の造形性が低下したりする場合があるためである。
したがって、骨材の平均粒径を1〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜80μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる骨材の平均粒径は、光学顕微鏡で骨材の画像を取り込み、当該画像から画像処理装置を用いて算出することができる。
また、骨材の含有量を、全体量に対して、3〜55重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、骨材の含有量をかかる範囲内の値とすることにより、造形材料の軽量化と、造形性や取り扱い性と、のバランスを容易にすることができるためである。
すなわち、かかる骨材の含有量が3重量%未満の値となると、造形材料の軽量化が困難となったり、保形性が著しく低下したりする場合があるためである。一方、かかる骨材の含有量が55重量%を超えると、造形材料の造形性や取り扱い性が著しく低下するとともに、混合分散が困難となる場合があるためである。
したがって、骨材の含有量を4.5〜45重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、6〜40重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、骨材の種類が、有機中空微小球のように比重が1g/cm3以下の場合には、当該骨材の含有量を、全体量に対して、3〜22重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(1)種類
また、粘度調整剤の種類は特に制限されるものではないが、脂肪酸、脂肪酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル化合物、多糖類、ノニオンセルロース誘導体、アクリルアミド類、ポリアクリル酸、グアーガムからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を用いることが好ましい。
より具体的には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル硫酸エステル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、プロペンアミド、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム等の一種単独または二種以上の組み合わせであることが好ましい。
この理由は、このような粘度調整剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と均一に相溶し、造形材料の粘度を所定範囲に容易に制御することができるためである。また、このような粘度調整剤は、ポリビニルアルコール系樹脂の凝析を有効に防止して、造形材料の全体の粘度変化はもちろんのこと、水分含有量の変化を防止することができるためである。したがって、周囲の環境条件が変化したとしても、粘性、流動性、凝集性等について、初期状態を有効に維持することができる。
また、粘度調整剤の含有量を、全体量に対して0.1〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、粘度調整剤の含有量が0.1重量%未満の値となると、粘度が高くなったり、ポリビニルアルコール系樹脂の凝析を防止したりすることが困難となる場合があるためである。一方、かかる粘度調整剤の含有量が20重量%を超えると、造形材料の保形性が著しく低下したり、混合分散が困難となったりする場合があるためである。
したがって、造形材料の凝析防止と、保形性等とのバランスがより良好となるため、粘度調整剤の含有量を、全体量に対して、0.3〜18重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜16重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(1)酢酸イオン
酢酸イオンの濃度を、造形材料の全体量に対して、500〜10,000ppmの範囲内値とすることを特徴とする。
この理由は、酢酸イオンの濃度をかかる範囲内の値とすることにより、優れた製造性のみならず、長期間に渡って優れた保存安定性を得ることができる。また、このような酢酸イオンの濃度であれば、乾燥後には、優れた耐水性を示す造形材料を提供することができる。
したがって、酢酸イオンの濃度を、造形材料の全体量に対して、700〜10,000ppmの範囲内の値とすることがより好ましく、900〜10,000ppmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる酢酸イオンや、後述する所定の陽イオンの合計量は、イオンクロマトグラフィ装置によって測定することができる。また、かかる測定条件等の詳細については、実施例において記載する。
図1には、横軸に、造形材料の全体量に対する酢酸イオンの濃度(0〜14000ppm)を採り、縦軸に、造形材料の耐水特性の指標としての押印可能サイクル回数(回)を採った特性曲線を示している。なお、使用した造形材料としては、実施例1〜6、および比較例1〜2に準じた。
より具体的には、造形材料に含有される酢酸イオンの濃度が500ppm未満の範囲では、図2(a)に示すような印章(スタンプ)100を成形し、それを耐水性試験に供した場合、押印可能サイクル回数が50回未満であって、耐水性に乏しいと言える。実際、水性インクによって、造形材料を成形したスタンプの表面が一部溶解する現象が見られた。
但し、製造上、造形材料は、均一な流動特性を示し、図2(a)〜(c)に示すような印章(スタンプ)を安定的に製造(成形)できることが確認された。
また、図2(b)に示す印章は、造形材料から直径25mm、厚さ20mmの円筒状物106を成形し、その一部を収容するように、発泡ポリエチレン材料からなる直径28mm、深さ12mmの円筒状のキャップ108を取り付けてなる印章100´である。
さらに、図2(c)に示す印章は、造形材料から直径25mm、厚さ8mmの円筒状物106を成形し、その表面に、同様の造形材料からなる略円錐状の取手110を取り付けてなる印章100´´である。
また、製造に関しても、造形材料は、均一な流動特性を示し、図2(a)〜(c)に示すような印章(スタンプ)を安定的に製造できることが確認された。
また、製造に関しても、造形材料は、ほとんど均一な流動特性を示し、図2(a)〜(c)に示すような印章(スタンプ)を安定的に製造できることが確認された。
一方、製造に関しては、造形材料は、一部、不均一な流動特性を示し、図2(a)〜(c)に示すような印章(スタンプ)を安定的に製造することが一部困難になることが確認された。
一方で、かかる酢酸イオン濃度が12,000ppmを超えると、製造において、造形材料は、相当不均一な流動特性を示し、図2(a)〜(c)に示すような印章(スタンプ)を安定的に製造することが困難になることが確認された。
(2)−1 種類
また、本発明の造形材料は、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも一種の陽イオンを含有することが好ましい。
すなわち、このようなイオンを含むことによって、造形材料に含まれる樹脂成分としてのポリビニルアルコール系樹脂に作用して、かかる樹脂の加水分解を促進させ、耐水性を効果的に向上させることができるためである。
したがって、このようなイオンを含むことによって、造形材料を、長期間保管した場合であっても、吸湿による機械的強度等の低下を効果的に抑制することができる。
また、上述したナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンの少なくとも一つ以上の合計量を、全体量に対して、500〜16,000ppmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、陽イオンの含有量をかかる範囲内の値とすることによって、ポリビニルアルコール系樹脂に作用して、かかる樹脂の加水分解を促進させ、耐水性を効果的に向上させることができるためである。
したがって、さらなる耐水性の向上等や、造形材料の保存安定性等を考慮して、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンの少なくとも一つ以上の合計量を、全体量に対して、600〜14,000ppmの範囲内の値とすることがより好ましく、700〜12,000ppmの範囲内の値とすることがさらに好ましく、1,000〜8,000ppmの範囲内の値とすることが最も好ましい。
なお、造形材料中の、所定の陽イオンの合計量は、酢酸イオン調整剤(NH4NO3、NaOH、およびKCl等)の添加等によって、所定範囲に容易に調整することができる。
(1)繊維
また、繊維(パルプ)を含有させることが好ましい。
この理由は、繊維(パルプ)を含有させることによって、造形性や保形性を向上させることができるばかりか、収縮防止効果を付与することもできるためである。
一方、添加物としての繊維(パルプ)は、造形材料の流動性を著しく低下させる場合がある。
したがって、繊維(パルプ)を添加する場合、その含有量を、全体量に対して、6重量%以下の値とすることが好ましい。
また、カラー化のために着色剤を添加することが好ましい。このような着色剤の種類としては、特に制限されるものではないが、従来からインキ、塗料などの分野で用いられているものであればよく、例えば、有機顔料や無機顔料、あるいは染料が挙げられる。
また、このような着色剤の含有量を、全体量に対して、0.01〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる着色剤の含有量が0.01重量%未満となると、添加効果や、骨材と相乗効果が発揮されずに、着色剤による発色性が低下する場合があるためである。一方、かかる着色剤の含有量が10重量%を超えると、光散乱が大きくなったり、あるいは著しく凝集しやすくなったりするため、逆に発色性が低下する場合があるためである。
したがって、着色剤による発色性がより良好となるため、着色剤の含有量を0.02〜8重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.03〜7重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
造形材料中に、添加剤として、上述した添加物以外に、防カビ剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、油類、ワックス類、増粘剤、可塑剤、粘度調整剤以外の界面活性剤、有機溶剤等の一種単独、または二種以上の組み合わせを添加することも好ましい。
(1)混合工程
バインダー樹脂、骨材、粘度調整剤、着色剤、水及び所定の陽イオン等の配合原料を均一に混合する工程である。例えば、これらの配合原料を均一に混合分散できるように、プロペラミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、三本ロール、ボールミル等を使用することが好ましい。
特に、骨材は軽くて、混練している間に破壊されやすい一方、分散にばらつきが生じやすいために、例えば、ニーダーを使用して、回転数10〜1,000rpm、時間1〜60分の条件で、押し出し混練することが好ましく、ニーダーを使用して、回転数30〜300rpm、時間10〜30分の条件で、押し出し混練することがより好ましい。
また、配合原料を混合する際には、例えば、30〜70℃の範囲内の温度に維持することが好ましい。
この理由は、かかる混合温度が30℃未満となると、配合原料が均一に混合しない場合があるためであり、一方、混合温度が70℃を超えると、得られる造形材料の伸びがなくなり、もろくなる場合があるためである。
したがって、配合原料を混合する際の混合温度を35〜60℃の範囲内の温度に維持することがより好ましく、40〜55℃の範囲内の温度に維持することがさらに好ましい。
得られた造形材料に含まれる酢酸イオンを、後述する実施例1に記載するイオンクロマトグラフィ装置により定量し、所定範囲の値であることを確認した。
また、得られた造形材料に含まれる酢酸イオンの濃度が所定範囲外の場合には、
例えば、酢酸イオン調整剤(NH4NO3、NaOH、およびKCl等)の添加や、加熱処理条件の調整等により、所定範囲内の値になるように制御する。
すなわち、酢酸イオン調整工程を実施することによって、優れた製造性のみならず、得られた造形材料において、長期間に渡って優れた保存安定性を得ることができる。
また、このような酢酸イオンの濃度であれば、乾燥後には、優れた耐水性を示す造形材料を効率的に得ることができる。
また、得られた造形材料の針入度を調整する工程である。さらに水や粘度調整剤を添加して、JISK2207に準拠して測定される造形材料の針入度を、例えば、5〜50mm(25℃条件下)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる造形材料の針入度が5mm未満の値になると、得られる造形材料の伸びがなくなって、もろくなり、逆に取り扱い性が低下する場合がある。一方、造形材料の針入度が50mmを越えると、表面のべたつきが多くなり、取り扱い性が低下する場合がある。
1.造形材料の作成
攪拌機付きの混練装置内に、以下の配合材料A〜Fを収容した後、30分間撹拌し、造形材料を作成した。
なお、得られた造形材料におけるpHは6.55であった。
A:ポリビニルアルコール系樹脂 16kg
(20℃条件下、4%水溶液の粘度:4,000mPa・s)
B:有機中空微小球 10kg
(平均粒径35μm、pH=7.0)
C:パルプ 1kg
D:パラオキシ安息香酸ブチル 4.5kg
E:水 98.9kg
F:NH4NO3 0.3kg
(合計) (130.7kg)
(1)酢酸イオンの測定
得られた造形材料における酢酸イオンの濃度を測定した。すなわち、プラスチック容器内に、得られた造形材料0.20g及びイオン交換水20ミリリットルを収容した後、密栓した。
次いで、かかるプラスチック容器を振とう装置を用いて、25℃、30分間の条件で、振とうし、造形材料の懸濁液を得た。
次いで、得られた懸濁液をフィルターでろ過し、得られたろ液に対して、以下のイオンクロマトグラフィ装置を用いて、陰イオン分析を行った。その結果、酢酸イオンの濃度は540ppmであった。
得られた結果を表1に示す。なお、酢酸イオンの測定条件は、以下に示す通りである。また、代表的なイオンクロマトグラフィ装置により得られる測定チャートを図3に示す。
使用機器 :ダイオネクス(株)製、イオンクロマトグラフ DX−500
使用カラム :東ソー(株)製、IC−PacA25S
カラム温度 :30℃
検出器 :電気伝導度検出器
溶離液 :4ミリモル/リットルNa2CO3水溶液
流速 :1.0ミリリットル/分
次いで、得られた造形材料に含まれるナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンの含有量を、それぞれ以下の測定条件により、イオンクロマトグラフィ装置を用いて測定した。
使用機器 :ダイオネクス(株)製、イオンクロマトグラフ DX−100
使用カラム :東ソー(株)製、IonPac CS12A
カラム温度 :22℃
検出器 :電気伝導度検出器
溶離液 :0.1ミリモル/リットル メタンスルホン酸水溶液
流速 :0.8ミリリットル/分
得られた造形材料から、図2(a)に示すような印章(所定の印影あり)を作成し、1週間、室温で乾燥させて、供試体とした。
また、スタンプインキとして、スタンプ台に含浸させた状態の染料系水系スタンプインキ(青)(シャチハタ製)を準備し、それに、供試体としての印章を3秒間押し付けた。
次いで、インキを付けた状態の供試体としての印章を、コピー用紙(A4サイズ)に対して、3秒間押圧して、インキを転写させた。
この一連の動作を1サイクルとして、印影が不鮮明になるまでのサイクル数を測定した。
また、得られた造形材料における針入度を、JIS2207に準拠して測定した。すなわち、得られた造形材料における25℃条件下で、針入度(50g針入度)を、図4に示すような針入度測定器10を用いて測定した。より具体的には、針に50gの荷重をかけ、30秒間の間に、貫入する針の長さを1mm単位で測定した。得られた結果を表1に示す。
図2(a)に示すような印章(所定の印影あり)を作成し、以下の基準で、造形材料の取り扱い性を評価した。
◎:手に対してべたつくことがなく、かつ、伸びやすい。
○:手に対してほとんどべたつくことがなく、かつ、少々伸びやすい。
△:手に対して若干べたついたり、逆に、伸びが少ない。
×:手に対してべたついたり、逆に、ほとんど伸びがない。
実施例2〜5、参考例6においては、酢酸イオン調整剤として、NH4NO3、NaOH、およびKClを、それぞれ添加量を変えて配合し、表1に示すように、イオンクロマトグラフィ装置によって測定される酢酸イオンの濃度が890ppm〜11,860ppmである造形材料をそれぞれ作成して、実施例1と同様に評価した。
比較例1においては、イオンクロマトグラフィ装置によって測定される酢酸イオンの濃度が150ppmである造形材料を作成した。
すなわち、造形材料を作成する際に、酢酸イオン調整剤(NH4NO3、NaOH、およびKCl)を加えなかったほかは、実施例1と同様に造形材料を作成し、イオン濃度等を測定するとともに、取り扱い性を評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例2においては、イオンクロマトグラフィ装置によって測定される酢酸イオンの濃度が290ppmである造形材料を作成した。
すなわち、造形材料を作成する際に、酢酸イオン調整剤(NH4NO3、NaOH、およびKCl)を加えない状態で、40℃、24時間の条件で加熱したほかは、実施例1と同様に造形材料を作成し、イオン濃度等を測定するとともに、取り扱い性を評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例3においては、イオンクロマトグラフィ装置によって測定される酢酸イオンの濃度が16,600ppmである造形材料を作成した。
すなわち、造形材料を作成する際に、NH4NO3を3.6kg添加し、NaOHを2kg添加し、およびKClを1.9kg添加したほかは、実施例1と同様に造形材料を作成した。
但し、造形材料が固化していまい、造形材料の成形品として評価することができなかった。
実施例7においては、イオンクロマトグラフィ装置によって測定される酢酸イオンの濃度が1340ppmである造形材料を作成した。
すなわち、実施例7においては、実施例1の配合において、NH4NO3を配合しないとともに、密封状態で、45℃の恒温槽中に、110日間保管した造形材料を供試体とした。
実施例8においては、イオンクロマトグラフィ装置によって測定される酢酸イオンの濃度が1490ppmである造形材料を作成した。
すなわち、実施例8においては、攪拌機付きの混練装置内に、以下の配合材料A〜Gを収容した後、30分間撹拌し、造形材料を作成し、実施例1と同様に評価した。
A:ポリビニルアルコール系樹脂 6kg
(20℃条件下、4%水溶液の粘度:4,000mPa・s)
B:シラスマイクロバルーン 75kg
(平均粒径50μm)
C:パルプ 6kg
D:パラオキシ安息香酸ブチル 4.5kg
E:水 242kg
F:タルク 170kg
G:オレイン酸 2kg
(合計) (505.5kg)
実施例9においては、イオンクロマトグラフィ装置によって測定される酢酸イオンの濃度が960ppmである造形材料を作成した。
すなわち、実施例9においては、攪拌機付きの混練装置内に、以下の配合材料A〜Eを収容した後、30分間撹拌し、造形材料を作成し、実施例1と同様に評価した。
A:ポリビニルアルコール系樹脂 10kg
(20℃条件下、4%水溶液の粘度:4,000mPa・s)
B:タルク 140kg
C:パルプ 17kg
D:パラオキシ安息香酸ブチル 3kg
E:水 166kg
(合計) (336kg)
造形材料を製造したり、使用したりする際には、適度な流動性が得られるようになった。
一方、造形材料中の酢酸イオンの濃度を所定値とすることにより、乾燥後の耐水性の低下を、効果的に抑制することができるようになった。
したがって、乾燥前には、長期間にわたって流動性に富むとともに、乾燥後には、耐水性に大変優れていることから、水性材料と接触する組成物材料、例えば、はんこ材料(印章)、フレスコ壁画用下地材、油彩画用下地材、水彩画用下地材、菓子等の見本用擬似材料、装飾品材料等に好適に使用される。
12:造形材料
16:針
18:水準器
100:印章
102:取手
104:接着剤
106:造形材料
108:キャップ
110:取手
Claims (8)
- ポリビニルアルコール系樹脂を含むバインダー樹脂と、水と、骨材と、を含有する造形材料であって、
前記造形材料中の酢酸イオンの濃度を500〜10,000ppmの範囲内の値とすることを特徴とする造形材料。 - 前記水の含有量を、全体量に対して、30〜89重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の造形材料。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂の添加量を、全体量に対して、0.5〜22重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の造形材料。
- 前記骨材の添加量を、全体量に対して、3〜55重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の造形材料。
- 前記水/ポリビニルアルコール系樹脂の配合比率(重量比)を3〜400の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の造形材料。
- 粘度調整剤をさらに含むとともに、当該粘度調整剤の添加量を、全体量に対して、0.1〜20重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の造形材料。
- ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも一種の陽イオンを含有するとともに、当該陽イオンの合計量を、全体量に対して500〜16,000ppmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の造形材料。
- ポリビニルアルコール系樹脂を含むバインダー樹脂と、水と、骨材と、を含有する造形材料の製造方法であって、
前記バインダー樹脂と、水と、骨材と、を均一に混合し、造形材料とする工程と、
得られた造形材料中の酢酸イオンの濃度を500〜10,000ppmの範囲内の値に調整する調整工程と、
を含むことを特徴とする造形材料の製造方法。
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