JP4119900B2 - 固形状描画材 - Google Patents

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Description

本発明は、固形状描画材に関する発明であり、特に滑らかな書き味を保持したまま、崩れにくくかつ折れにくい固形状描画材に関する発明である。
クレヨンは、パラフィン等のワックスを固形化剤としているので塗布面が平らにならず、広い面積を塗ることが困難であり、塗布面が硬化しないために汚れ、色落ちし、更に塗布面が滑るので重ね塗りが難しい等の欠点を有する。一方、パステルは、ワックスと油分を全く含まず、低濃度の水溶性接着成分で顔料等の粉末をスティック状に固めたものであるが、紙の上に定着しないので筆記線上から専用の定着液を噴霧して色を定着させる必要がある。また、パステルは粉が飛散して周囲を汚しやすい。
これらの欠点を改良するために、脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩をゲル化剤とした水性ゲルスティックの固形状描画材が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
特開平1−217090号公報 特開平4−337372号公報 特開平5−311107号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の固形状描画材等では、スティック状の強度はワックスタイプのクレヨンと比較すると弱く、使用中に崩れたり、折れたりし易い。この場合、石けんの配合割合を増加すると、ある程度の硬度を上げることができるが、その反面、スティックとしての柔軟性が低下し、かえって折れやすくなる。また、滑らかな書き味が損なわれ、書き屑が出易くなる等の問題を生じる。更に、ゾルの流動性が低下し、製造時の成形が困難になる場合がある。
従って、本発明は、従来品に比べ、スティックの強度が大きく、特に筆記抵抗が少なく(滑らかな書き味を有する意味である)、崩たり折れにくく、書き屑が少なく、窓ガラスなどのような平滑面にも良く描くことができ、更に描いた跡は濡れ雑巾で簡単に拭き取ることが可能な固形状描画材を提供することにある。
本発明は、少なくとも炭素原子8〜36個を有する脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩からなるゲル形成物質、脂肪族アミノアルコール、還元澱粉糖化物、着色剤、及び水を含有する組成物を加熱・混合後、冷却して得られる固形状描画材に関する発明である。
上記発明において、更に下記の態様とすることが望ましい。
(1)前記還元澱粉糖化物が澱粉を酵素分解後、水素添加により還元して得られるものであること
(2)前記脂肪族アミノアルコールがエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びイソブタノールアミンから選ばれた1種以上であること
(3)前記組成物中に脂肪族アミノアルコールが2〜20重量%、及び還元澱粉糖化物が5〜30重量%含有されていること
本発明の固形状描画材によれば、従来品に比べ、スティックの曲げ強度を大幅に向上することができ、筆記抵抗が少なく、崩れたり折れたりしにくく、書き屑が少なく、窓ガラスなどのような平滑面にも良く描くことが出来、更に描いた跡は濡れ雑巾で簡単に拭き取ることが出来、着色剤として繊維に染色しにくい染料を使うと、手や衣服についた汚れが水洗いで簡単に落とせるウォッシャブルタイプとすることが可能なる。更に、以下のような用途と特徴を有する。
(イ)幼稚園などで園児用のクレヨンとして使用するのに適している。
(ロ)基材として水性ゲルである脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を含むので、水を含んだ筆を使うと塗布面を溶かしてぼかしが発現し、水彩絵の具のような効果を出すことができる。
(ハ)店舗のウインドーデコレーション、店頭に置くメッセージボードにメニュー等の表示に使用することが可能である。
本発明の固形状描画材は、少なくとも炭素原子8〜36個を有する脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩からなるゲル形成物質、脂肪族アミノアルコール、還元澱粉糖化物、着色剤、及び水を含有する組成物を加熱・混合後、冷却して得られることを特徴とする。
以下に本発明を詳述する。
(1)ゲル形成物質
本発明で使用するゲル形成物質は、炭素原子8〜36個を有する脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩からなる。
前記脂肪族カルボン酸は、分岐を有する又は分岐を有しない、炭素数が8〜36個の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩であり、特に炭素原子数が12〜18個の脂肪族カルボン酸が好ましい。この脂肪族カルボン酸塩を構成する脂肪族カルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、及びメリシン酸を挙げることができる。
また、前記脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等を用いることができ、特にミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム又はこれらの混合物が好ましい。この脂肪族カルボン酸塩の配合割合は、本発明の固形状描画材を製造する際の原料全組成物中で、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは8〜45重量%となる量である。このように配合割合にするのは、脂肪族カルボン酸塩を5重量%以上にすると固形状描画材がより固まり易くなりゲルの生成の点で有利であり、またスティック形状物の強度を向上できるからであり、一方50重量%以下とすることにより製造時の加熱・混合の際に脂肪族カルボン酸塩の溶融を容易にし、書き屑を少なくでき、筆記抵抗を少なくすることができ、更に成形の際に流動性を向上して成形を容易にすることができる。
(2)脂肪族アミノアルコール
本発明の固形状描画材の原料組成物に脂肪族アミノアルコールを配合すると加熱溶融時の粘性を低下させ、金型やホルダーへの充填を容易にすると共に滑らかな書き味を付与することができる。
添加する脂肪族アミノアルコールとしては、常温で液状のものが好ましい
脂肪族アミノアルコールとしては、一般式がR NROH、RN(ROH)、N(ROH)、で表されるものが例示でき、Rは水素原子又は炭素原子数が1〜6のアルキル基で1つの化合物中に複数存在する場合にはこれらは同一のものであってもよいし、異なっていてもよい。ROH、ROH、及びROHはそれぞれ炭素原子数が1〜6のアルコキシル基、又は(−ROROH)で表される基(ここでRとRはそれぞれアルキレン基で、RとRをあわせた炭素原子数は2〜10である)であり、1つの化合物中に複数存在する場合にはこれらは同一であってもよいし異なっていてもよい。
脂肪族アミノアルコールとしては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソブタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、及びN,N-ジイソプロピルエタノールアミンが例示でき、これらから選ばれた1種以上であるが、これらのなかでもエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びイソブタノールアミンが特に好ましい。
この脂肪族アミノアルコールの使用量は、本発明の固形状描画材の原料全組成物中で、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%、特に好ましくは3.5〜10重量%となる量である。脂肪族アミノアルコールの使用量を前記2重量%以上とすることにより材料を溶融状態で型やホルダーに流し込むための流動性を向上でき、筆記抵抗が少なくでき、更に書き屑を減少でき、また前記20重量%以下とすることにより離型を容易に行うことができる。
(3)還元澱粉糖化物
本発明に用いられる還元澱粉糖化物は、澱粉を酵素分解等により分解して得られる各種水飴を水素添加(還元)して得られるものであり、食品、甘味料、結晶防止剤、ツヤ出し・増粘剤等にも使用可能なものである。
澱粉を分解していくと、様々な重合度の糖類が生成するため、特定の多糖類を単離することは困難であり糖混合物として使用する。糖組成としては、2糖以上の多糖類を主成分、例えば85重量%以上とする混合物、又は2糖〜8糖程度を主成分とする還元澱粉糖化物が有効である。単糖や二糖のみでは吸水性が高いために乾燥皮膜の形成が不充分な場合が生じ好ましくない。このような糖類は分子量が大きくなるに従い吸湿性が低くなり、乾燥皮膜を形成し易くなる。更に、耐熱性、耐酸性、耐微生物性等の性能も向上し、固形状描画材中で安定した状態を維持できる。また、固形分が60重量%以上のものが好適に使用できる。
市販されている還元澱粉糖化物として、林原商事(株)販売の、商品名:HS−20、HS−30、HS−40;東和化成工業(株)製の商品名:PO−20、PO−30、PO−40、PO−60、PO−300、PO−500などが挙げられる。
このような還元澱粉糖化物の使用量は、本発明の固形状描画材の原料全組成物中で、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%となる量である。還元澱粉糖化物を前記5重量%以上とすることにより、耐ドライアップ性の効果を発現でき、ガラス面などの平滑面にも描くことが可能になると共に書き屑を少なくすることができる。一方、還元澱粉糖化物の使用量を前記30重量%以下とすることによりスティックの必要な曲げ強度を維持できる。
(4)着色剤
本発明に用いる着色剤は、とくに制限されるものではなく、必要に応じて公知の顔料又は染料を使用することができ、例えば、鉄黒、鉄黄、弁柄、群青、紺青、アルミナホワイト、カーボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉、マイカなどの無機顔料;ナフトールグリーン、ナフトールイエローなどのニトロソあるいはニトロ顔料;リソールレッド、レーキットC、ブリリアントカーミン6B、ウオッチングレッド、ボルドー10Bなどのアゾレーキ顔料;ファーストエロー、ジスアゾエロー、ピラゾロンオレンジ、パラレッド、レーキッド4R、ナフトールレッドなどの不溶性アゾ顔料;クロモフタールエロー、クロモフタールレッドなどの縮合アゾ顔料;ピーコックブルーレーキ、アルカリブルーレーキ、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ、マラカイトグリーンレーキなどの染付レーキ顔料;フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン顔料;アントラピリミジンエロー、ペリノンオレンジ、ペリンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルーなどのスレン顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレッドなどのキナクリドン顔料;ジオキサジンバイオレットなどのジオキサジン顔料;イソインドリノンエローなどのイソインドリノン顔料;蛍光顔料;マイカを基材としたパール顔料を挙げることができる。
また、白色顔料として、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、酸化アンチモン、アルミナホワイト、サチン白、及び硫酸バリウム等を挙げることができるがこれらの白色顔料のなかで、特に酸化チタンが好ましい。
この着色剤の使用量は、着色剤が無機顔料の場合には、本発明の固形状描画材の原料全組成物中で好ましくは1〜40重量%、より好ましくは10〜35重量%となる量であり、また、着色剤が有機顔料の場合には好ましく1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%となる量である。
(5)水分
固形状描画材の水分含有量は、本発明の固形状描画材の原料全組成物中で好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%となる量である。このように水分の含有量を10%以上にすると塗布性、描画性を向上し、塗布面が荒れるのを防止でき、また60%以下にすると描画材の強度を維持し、折れたり崩れたりするのを抑制できるからである。
(6)その他の成分
さらに、本発明の固形状描画材の流動性を調節するために、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリン等のグリコール類を、本発明の固形状描画材の原料全組成物中で0〜20重量%程度となる量添加することができる。なお、これらの添加量を20重量%程度以下とすることにより、他の添加成分にもよるが柔らかく成り過ぎるのを防止し、重ね塗りをより可能にすることができる。
(7)固形状描画材の製造
固形状描画材の製造法として、特に制限はないが、例えば攪拌機及び温度計を備えた容器に、ゲル形成物質、脂肪族アミノアルコール、還元澱粉糖化物、着色剤、及び水等を添加後、加熱・混合後溶融した材料を型に流し込み、冷却して固形状描画材を製造することができる。この場合、成分の添加順序に特に制限はない。
尚、脂肪族アミノアルコールと一部のゲル形成物質及び水などを透明石けん基材として配合することもできる。
より具体的な製造例としては、攪拌機及び温度計を備えた容器に所定割合の成分を添加し、攪拌しながら還流下90℃程度で加熱、混合する。溶融した材料を操出式ホルダーに流し込み、冷却固化するか、冷却固化又は押出成形してできた棒状物をキャップ付き密封容器に挿入することにより製造することができる。
かくして得られた固形状描画材は、従来品に比べ、スティックの強度を大幅に向上することができ、筆記抵抗が少なく、崩れたり折れたりしにくく、書き屑が少なく、窓ガラスなどのような平滑面にも良く描くことが出来、更に描いた跡は濡れ雑巾で簡単に拭き取ることが出来、着色剤として繊維に染色しにくい染料を使うと、手や衣服についた汚れが水洗いで簡単に落とせるウォッシャブルタイプとすることができる。
本発明の固形状描画材は、例えば図1の外観図に示すように繰出式ホルダー内に収納した固形状描画材として実用に供される。
以下、本発明の具体的態様を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
本実施例等における使用したサンプル、及び評価法を以下に記載する。
1.使用サンプル
(1)ステアリン酸ナトリウムは、日本油脂(株)製、商品名:SN−1を使用した。
(2)トリエタノールアミン、イソブタノールアミンは試薬を用いた。
(3)還元澱粉糖化物
市販の還元澱粉糖化物(林原商事(株)販売、商品名:HS−20、HS−30、HS−40)を使用した。尚、これらの還元澱粉糖化物は、でんぷんを酵素分解して得られた各種水飴を更に水素添加(還元)したものである。
糖組成と固形分等を表1に示す。
Figure 0004119900
(4)以下に記載する着色剤を使用した。
黄色顔料:Pigment Yellow 12、白色顔料:Pigment White 6、
赤色顔料:Pigment Red 48-3、
ブロンズ色パール顔料:メルクジャパン(株)製、イリオジン500
オレンジ色染料:ミリケン化学社(Milliken Chemical Co., LTD)製、Palmer Orange
(5)その他のグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールは市販の試薬を使用した。
(6)透明石けん基材
韓国ユンギルオイル化学(株)(Joongil Oil Chem. Co., LTD)製、商品名:H−2を使用した。成分は以下の通りである。
ステアリン酸ナトリウム:30重量%、ラウリン酸ナトリウム:10重量%、ミリスチン酸ナトリウム:21重量%、トリエタノールアミン:30重量%、水:9重量%
2.評価方法
成形した評価用固形状描画材(長さ:50mm、直径:11mmの円筒形状)を50℃恒温室内から取り出し、室温で2時間放置した後、下記の評価を行った。
(a)書き屑
台秤の上に上質紙を固定し、台秤の表示で筆圧が3N(306gf)〜4N(408gf)になるように調整しながら長さ10cmの線を引き、その際の書き屑粒子を目視で観察した。
「少ない」:目視で確認できる粒子が1個以下
「多い」:目視で観察できる粒子が無数に確認できる。
(b)筆記抵抗
台秤の上に縦横90×90mm、厚み20μmのパラフィン紙を固定し、台秤の表示で筆圧が3N(306gf)〜4N(408gf) になるように調整しながら左右1往復の線を引き、そのときのパラフィン紙の状態を観察した。
「小」:パラフィン紙にまったくしわができない。
「大」:パラフィン紙にしわができる。
(c)ガラス面への描画
縦横26×76mmのスライドガラス表面の周辺部5mm幅を除いた内側に、可能な限り厚く重ね塗りし、乾燥後、増加した重量を測定した。
「非常に良い」:塗布された量が0.02g以上
「良い」:塗布された量が0.01g以上、0.02g未満
「不可」:塗布された量が0.01g未満
(d)溶融した材料の流動性
室温において、内径11mm、深さ90mmで一端が閉じた円筒を開口部が上部になるように垂直に立て、90℃で溶融した固形状描画材の材料を流し込み、充填状態を観察した。
「良い」:円筒内に隙間なく材料が充填される。
「低い」:材料の一部が円筒内に流れ込むが大きな隙間が生ずる。
「非常に低い」:材料は円筒内に殆ど流れこまない。
(e)曲げ強度(N)
JIS S6026の5.6に規定された測定法に基づいた。尚、測定は室温(約25℃)で行った。荷重をかけて試験片が折れたときの荷重を計測した。
〔実施例1〕
攪拌機及び温度計を備えた容器に、ゲル形成物質としてステアリン酸ナトリウム、還元澱粉糖化物としてHS−20、着色剤として黄色顔料(Pigment Yellow 12)、透明石けん基材(ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、トリエタノールアミン、及び水を含有)、水、及びグリセリンを表2に示す配合割合となるように添加し、攪拌しながら還流下で90℃に加熱した。溶融した材料を内径11mmの操出式ホルダーに流し込み、冷却固化して、黄色の固形状描画材を得た。
曲げ強度は、28.4Nであった。このスティックで画用紙に筆記したところ、強く押し付けても崩れず、非常に滑らかで鮮やかな黄色の線を描くことが出来た。水を含んだ筆でその線上をこすったところきれいにぼかすことが出来た。また、ガラスなどの平滑面にも描くことが出来、濡れ雑巾を使ってそれを簡単に拭き取ることが出来た。評価結果をまとめて表2に示す。
〔実施例2〕
表2に示す成分を使用して、実施例1に記載したと同様の方法により、ピンク色の固形状描画材を得た。
本実施例2のように還元澱粉糖化物を多く含む場合、ガラスなどの平滑面への描画性が非常によくなり、特にウインドーデコレーションなどの描画の用途に適している。曲げ強度は10.8Nであった。評価結果をまとめて表2に示す。
〔実施例3〕
表2に示す成分を使用して、実施例1に示したと同様の方法により、ブロンズ色の固形状描画材を得た。尚、実施例3においては、透明石けん基材は使用せず、アルコキシル化窒素含有化合物としてトリエタノールアミンを添加した。評価結果をまとめて表2に示す。
〔実施例4〕
表2に示す成分を使用して、実施例3に示したと同様の方法により、橙色の固形状描画材を得た。
得られた橙色の固形状描画材で画用紙に筆記したところ、強く押し付けても崩れず、非常に滑らかで鮮やかな橙色の線を描くことが出来た。水を含んだ筆でその線上をこすったところきれいにぼかすことが出来た。また、ガラスなどの平滑な面にも描くことが出来、濡れ雑巾を使ってそれを簡単に拭き取ることが出来た。洗濯性を試験するためにJIS染色堅牢度試験用多繊交織布にこの固形状描画材を塗り、完全に乾かしてから洗濯したところ、色の跡がまったく残らなかった。曲げ強度は28.9Nであった。本実施例4では、手や衣服に付いた汚れを簡単に落とせるので、子供向けクレヨンに適している。評価結果をまとめて表2に示す。
〔比較例1〕
実施例4におけるトリエタノールアミンと還元澱粉糖化物の全量を水に置き換えて、実施例3に示したと同様の方法により、橙色の固形状描画材を得た。
加熱・混合時の材料の流動性が悪く、ホルダーに流し込むことが出来なかった。そのまま固めたものは、紙面に描画したとき、筆記抵抗は大で、書き屑が多くなり、また、ガラス面には描けなかった。配合成分と評価結果表3に示す。
〔比較例2〕
実施例4の還元澱粉糖化物の全量を水に置き換えて、実施例3に示したと同様の方法により、固形状描画材を得た。
加熱・混合した材料は、ホルダーへ流し込むことができた。紙上での筆記抵抗は小で滑らかであったが、書き屑が出やすく、また、ガラスへの描画は出来なかった。曲げ強度は26.5Nであった。配合成分と評価結果表3に示す。
〔比較例3〕
実施例4におけるトリエタノールアミンの全量を還元澱粉糖化物に置き換えて、実施例3に示したと同様の方法により、固形状描画材を得た。
加熱・混合時の材料の流動性が低く、材料をホルダーに流し込めなかった。そのまま固めたものは、書き屑が出にくく、ガラス面に描くことができた。配合成分と評価結果表3に示す。
〔比較例4〕
実施例4における水の全量を還元澱粉糖化物に置き換えて、実施例3に示したと同様の方法により、固形状描画材を得た。
加熱・混合時の材料の流動性が低く、その上ゲル化する温度が高くて固まりやすいため、材料をホルダーに流し込めなかった。そのまま固めたものは、書き屑が出にくく、ガラス面にもよく描くことができるが、筆記抵抗は大であった。配合成分と評価結果表3に示す。
Figure 0004119900
Figure 0004119900
本発明の固形状描画材は、そのスティック形状物が崩れたり折れたりしにくく、筆記抵抗が少なく、書き屑が少なく、窓ガラスなどのような平滑面にも良く描くことが出来、更に描いた跡は濡れ雑巾で簡単に拭き取ることができるので、子供用クレヨンや固形マーカーとして広く使用することができる。
繰出式ホルダー内に収納した本発明の固形状描画材の外観図
符号の説明
1:キャップ
2:固形状描画材
3:バレル
4:回転尾栓

Claims (4)

  1. 少なくとも炭素原子8〜36個を有する脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩からなるゲル形成物質、脂肪族アミノアルコール、還元澱粉糖化物、着色剤、及び水を含有する組成物を加熱・混合後、冷却して得られる固形状描画材。
  2. 前記還元澱粉糖化物が澱粉を酵素分解後、水素添加により還元して得られるものである請求項1記載の固形状描画材。
  3. 前記脂肪族アミノアルコールがエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びイソブタノールアミンから選ばれた1種以上である請求項1または2に記載の固形状描画材。
  4. 前記組成物中に脂肪族アミノアルコールが2〜20重量%、及び還元澱粉糖化物が5〜30重量%含有されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の固形状描画材。
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