JP4192642B2 - Fpd用保護膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PDP(Plasma Display Panel:プラズマディスプレイパネル)、PALC(Plasma Addressed Liquid Crystal display)等のFPD(Flat Panel Display)用保護膜およびその製造方法ならびにこれを用いたFPDに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子ビーム蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法などの真空プロセスを用いてFPDの保護膜を形成する方法と比較し、低コストで量産性に優れた保護膜の形成方法として、MgO粉末、Mg(OH)2 粉末、MgO粉末およびMg(OH)2 の混合粉末、あるいは希土類酸化物粉末を含有したペーストまたはコーティング液を用い、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレーコート法などの湿式プロセスにより形成する方法が提案されている(例えば特許文献1〜13など)。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−67437号
【特許文献2】
特開平7−220640号
【特許文献3】
特開平7−147136号
【特許文献4】
特開平7−335134号
【特許文献5】
特開平8−111177号
【特許文献6】
特開平8−111178号
【特許文献7】
特開平8−212917号
【特許文献8】
特開平6−325696号
【特許文献9】
特開平8−167381号
【特許文献10】
特開平8−264125号
【特許文献11】
特開平9−12940号
【特許文献12】
特開平9−12976号
【特許文献13】
特開平8−96718号
【特許文献14】
特開平10−149767号
【特許文献15】
特開2001−35382
【特許文献16】
特開2001−43806
【非特許文献1】
J.A.Rodriguez 「Surface Science477(2001)L279-L288.」
【0004】
一方、PDPの保護膜は直接、放電空間に接しているため、放電特性に最も重要な役割を担うキーマテリアルであり、従来より2次電子放出能が高く、耐スパッタ性,光透過性および絶縁性に優れたMgO膜が使用されている。しかし、このMgO膜は工程途中で大気中に曝されると、容易にCO2 やH2O と反応して変質することから、MgO本来の特性を得るためには、パネル封着後、真空加熱下での長時間の脱ガス排気処理が必要であることが知られている。
【0005】
このようなMgOの変質を防止するため、MgO表面を他の透湿性の少ない材料でコーティングすることが提案されている(特許文献14〜16等)。
上記特許文献14には、保護膜を形成した後に、この保護膜上に透湿性の低い一時保護膜を形成し、その後一時保護膜を除去するPDPの製造方法が提案されている。この方法によりPDPの製造途中では、保護膜の表面が一時保護膜により保護されているので、保護膜の表面に変質層が形成されない。この結果、放電特性の良好な保護膜を得ることができるとともに、保護膜の変質層の熱分解処理が不要になる。
また、特許文献15では、保護膜の基板(誘電体層)との密着性及ぴ整合性の低下を防止し、かつ保護膜の電気絶縁性の低下を防止、及ぴ膜本体または膜体中のMgO等が大気中のC02 ガスやH20 ガスと反応することをフッ化物層が阻止することにより、MgO等のFPDに有害なMgC03 やMg(OH)2 等への変質を防止する手法が提案されている。
特許文献16ではBa02 またはSr02 の少なく とも1つ、またはBa02 またはSr02 の少なくとも1つとCa02 または希土類酸化物の少なくとも1つとの組み合わせを下地金属表面に形成し、これを真空中で加熱し、そののち希ガス中で前記パネル完成後の通常の動作電流よりも犬きい電流で活性化の目的で放電させて形成することを提案している。
また、非特許文献1の中では、Mg0表面とS02 ガスによる反応について調査している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の各公報に記載された保護膜の形成方法では、MgO粉末、Mg(OH)2 粉末、あるいはMgO粉末およびMg(OH)2 の混合粉末を焼成して得られたMgO粉末や希土類酸化物粉末が微粒子であるため、表面積が大きく、この表面は大気中のH2O ,CO2 等と比較的容易に反応して炭酸塩や水酸化物に変化するおそれがあった。このためFPDの放電中に炭酸ガスや水分が放電空間中に放出され、放電特性が低下する問題点があった。
【0007】
また、上記従来の特許文献14に記載されたPDPの製造方法では、一時保護膜を形成する際に一時保護膜と保護膜とを整合させることが難しく、一時保護膜にクラックが発生したり、あるいは一時保護膜が剥離する場合があり、一時保護膜による保護膜の変質防止効果が不十分であった。
これを改善するために、一時保護膜を保護膜に厚く積層させる方法が考えられるが、この方法では一時保護膜の除去時に多量の不純物(一時保護膜の分解物)が生成される問題点があった。
また、特許文献15では、非常に腐食性の高いフッ素化ガスを使用するため、通常のSUS304やSUS316に比較し高価で耐腐食性の高いチャンパ材料を使用する必要があり、装置製造コストが増大してしまうという問題があった。さらに、エージング初期の点灯電圧が高く、エージングによるフッ化物層の除去に比較的時間を有するという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献16では、パネルを貼りあわせるのと同時に真空排気をおこない過酸化物の熱分解を促進しているが、ここで放出される酸素ガスの量は膜全体が過酸化物であるため極めて多く、一方パネルの放電空間が小さいためガスのコンダクタンスが小さくなってしまい、その結果、酸素ガスを十分に排出するには極めて時問がかかるという問題点があった。かつ、得られた膜は比較的ポーラスであるため膜の耐スパッタ性が低く、パネルの寿命が短いという問題点があった。
また非特許文献1は、表面反応のみの調査で、その後のH20 やC02 との反応性に関しては調査されていない。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、FPD製造過程における膜本体または膜体中のMgO等が大気中のH2O ,CO2 等と反応するのを硫酸化物層およびまたは硫化物層が阻止あるいは抑制することにより、MgO等がFPDに有害なMgCO3 やMg(OH)2 等に変質するのを防止あるいは抑制する、即ち膜本体または膜体の耐環境性を向上できる、という目的を達成しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のFPD用保護膜の製造方法は、基板(13)の表面にMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかにより形成された膜本体(14a)を形成する工程と、前記膜本体(14a)をガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤にて表面処理することにより前記膜本体(14a)の表面に硫酸化物層および/または硫化物層(14b)を形成する工程とを含むことにより上記課題を解決した。
本発明は、基板(13)の表面に膜本体(14a)を真空中で形成する工程と、前記膜本体(14a)を大気に暴露させずに真空中または不活性ガス雰囲気中でガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤にて表面処理することにより前記膜本体(14a)の表面に硫酸化物層および/または硫化物層(14b)を形成する工程とを含むことが好ましい。
本発明は、表面に膜本体(14a)および硫酸化物層および/または硫化物層(14b)が形成された基板(13)のパネル組立て後に放電エージング処理により前記膜本体(14a)の活性化をおこなう手段を採用することができる。
本発明は、圧力が6.65Pa〜1.0×105 Pa(0.05〜760Torr)のガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤により、MgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかにより形成された膜本体を表面処理したことを特徴とする。
本発明は、ガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤が、SO2 、SO3 、またはH2Sのいずれかである手段を採用することができる。
【0011】
本発明のFPD用保護膜は、図1および図2に示すように、基板13の表面にMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかにより形成された膜本体14aと、この膜本体14aの表面に形成された硫酸化物層および/または硫化物層14bとを備えたFPD用保護膜である。このFPD用保護膜では、膜本体14aの表面が硫酸化物層および/または硫化物層14bにより被覆されるため、FPD10(図2参照)の製造過程において保護膜14が大気中に長時間曝されても、膜本体14a中のMgO等が大気中のCO2 ガスやH2O ガスと殆ど反応しない。この結果、膜本体14a中のMgO等がFPD10の機能を損なうおそれのあるMgCO3 やMg(OH)2 等に変質することは殆どない。また基板13には保護膜14のうち基板13と熱膨張係数が略同一の膜本体14aが接着されるので、熱サイクルにより保護膜14が基板13から剥離せず、保護膜14の基板13に対する密着性および整合性が極めて良好となる。
【0012】
本発明は、図3および図4に示すように、基板13の表面にMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかにより形成される膜体34aが硫酸化物層および/または硫化物層にて被覆されたMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末を用いて形成されたFPD用保護膜である。このFPD用保護膜では、MgO粉末等の表面が硫酸化物層および/または硫化物層により被覆されるため、FPD10(図4参照)の製造過程において保護膜34が大気中に長時間曝されても、膜体34a中のMgO等が大気中のCO2 ガスや H2Oガスと殆ど反応しない。この結果、膜体34a中のMgO等がFPD10の機能を損なうおそれのあるMgCO3 やMg(OH)2 等に変質することは殆どない。またMgO粉末等の表面を被覆する硫酸化物層および/または硫化物層は極めて薄いため、このMgO粉末等の機械的特性は表面に硫酸化物層および/または硫化物層のないMgO粉末等と略同一である。
【0013】
本発明は、硫酸化物層および/または硫化物層14bがMOXSY,MOX(SO2)Y ,MOX(SO3)Y,MOX(SO4)Yであることができ、この硫酸化物層および/または硫化物層14bがガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤とMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかとの反応によって得ることが望ましい。さらに、ガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤がSO2 、SO3 、H2Sのいずれかであることが好ましく、硫酸化物層および/または硫化物層14bの厚さが0.1〜1000nmであることが好ましい。
なお、明細書の記載において、「ガス状硫酸化剤および/または硫化剤」はガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤を意味する。
【0014】
本発明のFPD用保護膜の製造方法は、図1および図2に示すように、基板13の表面にMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかにより形成された膜本体14aを形成する工程と、この膜本体14aをガス状硫酸化剤および/または硫化剤にて表面処理することにより膜本体14aの表面に硫酸化物層および/または硫化物層14bを形成する工程とを含むものである。このFPD用保護膜の製造方法では、膜本体14a中のMgO等がFPD10(図2参照)の機能にとって有害なMgCO3 やMg(OH)2 等に殆ど変質しないため、後工程で上記MgCO3 やMg(OH)2 等を除去する脱ガス処理工程時間を短縮または脱ガス処理工程を省くことができ、FPD10の製造コストを低減できる。
【0015】
本発明のFPD用保護膜の製造方法は、更に図1および図2に示すように、基板13の表面に膜本体14aを真空中で形成する工程と、この膜本体14aを大気に暴露させずに真空中または不活性ガス雰囲気中でガス状硫酸化剤および/または硫化剤にて表面処理することにより膜本体14aの表面に硫酸化物層および/または硫化物層14bを形成する工程とを含むことを特徴とする。このFPD用保護膜の製造方法では、基板13の表面に膜本体14aを形成した後であって、膜本体14aの表面に硫酸化物層および/または硫化物層14bを形成する前に、膜本体14aを大気に暴露しないため、膜本体14aの表面にFPDに有害なMgO等の炭酸塩(MgCO3 等)や水酸化物(Mg(OH)2 等)の生成を防止あるいは抑制することができる。
【0016】
本発明は、表面に膜本体14aおよび硫酸化物層および/または硫化物層14bが形成された基板13のパネル組立て後に放電エージング処理により前記膜本体14aの活性化をおこなうことを特徴とする。このFPD用保護膜の製造方法では、膜本体14aの表面に硫酸化物層および/または硫化物層14bを形成した後に放電エージング処理すると、膜本体14aが活性化されるので、膜本体14aに僅かにMgO等の水酸化物(Mg(OH)2 等)が生成していても H2Oとして除去でき、また表面の硫酸化物層および/または硫化物層はスパッタリングされ放電に直接寄与しない部分へ、除去することができる。
ここで、放電エージングは、FPD、例えばPDPの前面板の2電極のみ、もしくは前面板の2電極と背面板の1電極に、パネル駆動と同等もしくはそれ以上の高い電圧を印加させ、FPD例えばPDPの電圧値を安定させることをいう。
【0017】
本発明のFPD用保護膜の製造方法は、図3および図4に示すように、MgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末をガス状硫酸化剤および/または硫化剤にて表面処理することによりMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末を硫酸化物層および/または硫化物層にて被覆する工程と、この硫酸化物層および/または硫化物層により被覆されたMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末とバインダと溶媒とを混合して膜用ペーストまたは膜用分散液を調製する工程と、膜用ペーストまたは膜用分散液を用いて基板13の表面に膜体34aを形成する工程とを含むFPD用保護膜の製造方法である。このFPD用保護膜の製造方法では、膜体34a中のMgO等がFPD10(図4参照)の機能にとって有害なMgCO3 やMg(OH)2 等に殆ど変質しないため、後工程で上記MgCO3 やMg(OH)2 等を除去する脱ガス処理工程時間を短縮または脱ガス処理工程を省くことができ、FPD10の製造コストを低減できる。
【0018】
また、本発明は、圧力が6.65Pa〜1.0×105 Pa(0.05〜760Torr)のガス状硫酸化剤および/または硫化剤により、MgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかにより形成された膜本体14a、あるいはMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末を表面処理することが好ましく、この表面処理において、ガス状硫酸化剤および/または硫化剤が、SO2 、SO3 、またはH2Sのいずれかを用いることが好ましい。
【0019】
本発明に係るMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末は、請求項2記載のFPD用保護膜34を形成するために硫酸化物層および/または硫化物層により被覆されて作製される。本発明に係る粉末は、請求項14記載の粉末を被覆する硫酸化物層および/または硫化物層の厚さが0.1〜1000nmであることを特徴とする。本発明に係る膜用ペーストは、上記の硫酸化物層および/または硫化物層にて被覆されたMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末とバインダと溶媒とを混合して調製される。本発明に係る膜用分散液は、上記の硫酸化物層および/または硫化物層にて被覆されたMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末とバインダと溶媒とを混合して調製される。上記の硫酸化物層および/または硫化物層にて被覆された膜用ペーストまたは膜用分散液を用いることにより、前述の膜体を容易に形成することができる。
【0020】
本発明のFPDは、上記の保護膜を用いたことで、FPDの製造工数を大幅に低減できるので、安価にFPDを製造できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るFPD用保護膜およびその製造方法ならびにこれを用いたFPDの第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
本発明のFPDとしてはPDP、PALC等が挙げられる。
【0022】
この実施の形態ではPDPについて説明する。図1および図2に示すように、AC型のPDP10は背面ガラス基板11上に所定の間隔をあけて形成された隔壁12を介して前面ガラス基板13を被せることにより構成される。前面ガラス基板13の両面のうち背面ガラス基板11に対向する面には表示電極16および透明誘電体層17を介して膜本体14aが形成され、この膜本体14aの表面には硫酸化物層(硫化物層)14bが形成される。
背面ガラス基板11と前面ガラス基板13と隔壁12とにより多数の放電セル18が区画形成され、背面ガラス基板11上には放電セル18内に位置しかつ上記表示電極16に対向するようにアドレス電極19が形成される。また放電セル18内には隔壁12の側面から背面ガラス基板11の上面にかけて蛍光体層21が形成される。更に放電セル18内には放電ガス(図示せず)が注入される。
【0023】
このように構成されたPDPの保護膜の製造方法を説明する。
[1]蒸着法による膜本体の形成
先ず図1に示すように、前面ガラス基板13の表面に表示電極16となるAgやAu等の電極用ペーストをスクリーン印刷法により所定の間隔をあけて塗布し乾燥・焼成した後に、上記前面ガラス基板13の表面に透明誘電体層17となる透明ガラスペーストをスクリーン印刷法により前面ガラス基板13の表面全体に塗布し乾燥する。上記前面ガラス基板13を大気中で100〜200℃に10〜60分間保持して乾燥した後に、大気中で500〜600℃に10〜60分間保持して焼成する。
【0024】
次に純度が99.5%以上のMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの焼結体ペレットを電子ビーム蒸着法等の蒸着法により上記ガラス基板13の透明誘電体層17表面を覆うように蒸着して膜本体14を形成する。この膜本体14の成膜条件は、加速電圧が5〜30kV、蒸着圧力が0.1×10−2〜10×10−2Pa、蒸着距離が100〜1000mmの範囲内にあることが好ましい。更にこの前面ガラス基板13をガス状硫酸化剤および/または硫化剤雰囲気中(温度10〜200℃)に0.1〜120分間保持して膜本体14aの表面を改質し、膜本体14aの表面に硫酸化物層(硫化物層)14bを形成する。上記ガス状硫酸化剤および/または硫化剤が、SO2 、SO3 、またはHSのいずれか、特にSO2 を用いることが好ましく、このガス状硫酸化剤および/または硫化剤の圧力は好ましくは6.65Pa〜1.0×105 Pa(0.05〜760Torr)、更に好ましくは1.3×103 Pa〜4.0×104 Pa(10〜300Torr)の範囲内に設定される。ガス状硫酸化剤および/または硫化剤の圧力を0.05〜760Torrの範囲内に限定したのは反応進行度、即ち硫酸化物層(硫化物層)の厚さの制御を容易にするためである。
【0025】
[2]スパッタリング法による膜本体の形成
先ず上記[1]と同様に電極付ガラス基板を作製した後、純度が99.5%以上の5インチサイズのMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかのターゲットを用いて、スパッタリング法によりガラス基板に透明誘電体層表面を覆うように膜本体を形成する。この膜本体の成膜条件は、高周波出力が1kW、スパッタ圧力が0.50〜3.0Pa、アルゴンガスに対する酸素濃度が5〜50%、基板温度が20〜300℃の範囲内であることが好ましい。次に上記[1]と同様にガス状硫酸化剤および/または硫化剤雰囲気中に保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成する。
【0026】
[3]スクリーン印刷法による膜本体の形成
予め気相法や液中合成法等により平均粒径が5〜200nm(50〜2000Å)のMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末を作製しておく。
先ず前面ガラス基板の表面に表示電極となるAgやAu等の電極用ペーストをスクリーン印刷法により所定の間隔をあけて塗布し乾燥・焼成した後に、上記前面ガラス基板の表面に透明誘電体層となる透明ガラスペーストをスクリーン印刷法により前面ガラス基板の表面全体に塗布し乾燥する。次いで膜本体となるMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末と、バインダと、溶媒とを所定の割合で混合して膜用ペーストを調製し、このペーストをスクリーン印刷法により上記透明誘電体層の表面全体に塗布し乾燥する。
【0027】
上記バインダとしてはアルカリ土類金属や希土類金属のアルコキシド,有機酸化合物,アセチルアセトネート(例えば、有機酸マグネシウム,マグネシウムアルコキシド,マグネシウムアセチルアセトネート)、あるいはエチルセルロースやエチルシリケート等が用いられ、溶媒としてはα−テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テレピン油等が用いられる。また上記MgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末と、バインダと、溶媒との混合割合は0〜10重量%と、10〜100重量%と、0〜30重量%とにそれぞれ設定されることが好ましい。
次に上記前面ガラス基板を大気中で100〜200℃に10〜60分間保持して乾燥した後に、大気中で500〜600℃に10〜60分間保持して焼成する。更に上記[1]と同様に前面ガラス基板をガス状硫酸化剤および/または硫化剤雰囲気中に保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成する。
【0028】
[4]スピンコート法による膜本体の形成
上記[3]と同様に、前面ガラス基板の表面に電極用ペーストおよび誘電体層用ペーストを塗布し乾燥・焼成した後に、膜本体となるMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末と、バインダと、溶媒とを所定の割合で混合して膜用分散液を調製し、この分散液をスピンコート法により上記透明誘電体層の表面全体に成膜し乾燥する。上記バインダとしてはアルカリ土類金属や希土類金属のアルコキシド,有機酸化合物,アセチルアセトネート(例えば、マグネシウムアルコキシド,有機酸マグネシウム,マグネシウムアセチルアセトネート)、あるいはエチルシリケート等が用いられ、溶媒としてはアルコール、セロソルブ等が用いられる。また上記MgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末と、バインダと、溶媒との混合割合は0〜40重量%と、0.1〜10重量%と、55〜99.9重量%とにそれぞれ設定されることが好ましい。
この前面ガラス基板を大気中で40〜100℃に5〜60分間保持して乾燥した後に、大気中で500〜600℃に10〜60分間保持して焼成し、更に上記[1]と同様にガス状硫酸化剤および/または硫化剤雰囲気中に保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成する。
【0029】
このように製造されたPDPの保護膜では、膜本体14aの表面が硫酸化物層(硫化物層)14bにより被覆されるため、PDP10の製造過程において保護膜14が大気中に長時間曝されても、膜本体14a中のMgO等が大気中のCO2 ガスやH2O ガスと殆ど反応しない。この結果、膜本体14a中のMgO等がPDP10の機能を損なうおそれのあるMgCO3 やMg(OH)2 等に変質することは殆どないので、膜本体14aの耐環境性を向上できる。また、膜本体14a中のMgO等がMgCO3 やMg(OH)2 等に殆ど変質しないため、後工程で上記MgCO3 やMg(OH)2 等を除去する脱ガス処理工程時間を短縮または脱ガス処理工程を省くことができ、PDP10の製造コストを低減できる。更に透明誘電体層17には保護膜14のうち誘電体層17と熱膨張係数が略同一の膜本体14aが接着されるので、熱サイクルにより保護膜14が透明誘電体層17から剥離せず、保護膜14の誘電体層17に対する密着性および整合性が極めて良好となる。
【0030】
なお、上記[1]および[2]の保護膜14の形成過程において、下記の[a]のような処理を施すことが好ましい。
[a]ガラス基板13の表面に膜本体14aを真空中で形成し、この膜本体14aを大気に暴露させずに真空中または不活性ガス雰囲気中でガス状硫酸化剤および/または硫化剤にて表面処理することにより膜本体14aの表面に硫酸化物層(硫化物層)14bを形成する。上記不活性ガス雰囲気とは、アルゴンガスまたはN2 ガスの雰囲気であることが好ましく、純度が4N(99.99%)以上であり、露点がマイナス65℃以下であり、更にCO2 およびCOの濃度が5.0体積ppm以下であることが好ましい。このような処理を施すことにより、基板13の表面に膜本体14aを形成した後であって、膜本体14aの表面に硫酸化物層(硫化物層)14bを形成する前に、膜本体14aを大気に暴露しないため、膜本体14aの表面にFPDに有害なMgO等の炭酸塩(MgCO3 等)や水酸化物(Mg(OH)2 等)の生成を防止あるいは抑制することができる。
【0031】
図3および図4は本発明の第2実施形態を示す。
図3および図4において図1および図2と同一符号は同一部品を示す。
【0032】
この実施の形態では、前面ガラス基板13の表面に表示電極16および透明誘電体層17を介して保護膜34である膜体34aが形成され、この膜体34aが硫酸化物層(硫化物層)にて被覆されたMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末を用いて形成される。
上記硫酸化物層(硫化物層)は、前述した第1実施形態の硫酸化物層(硫化物層)と同様に、MOXSY,MOX(SO2)Y ,MOX(SO3)Y ,MOX(SO4)Y (MはMg,Ca,Sr,Ba,アルカリ土類複合金属または希土類金属,あるいはアルカリ土類金属および希土類金属の複合金属であり、0≦X<1.5,0<Y≦1.5である。)等である。
また硫酸化物層(硫化物層)はMgO等とガス状硫酸化剤および/または硫化剤との反応によって得ることができ、ガス状硫酸化剤および/または硫化剤としては反応性の高さや汎用性の観点からSO2 、SO3 、またはHSを用いることが好ましい。また硫酸化物層(硫化物層)の厚さは、MgO等のCO2 ガスやH2O ガスとの反応阻止向上と、MgO等とガス状硫酸化剤および/または硫化剤との反応時間とのバランスにより決定され、好ましくは0.1〜1000nmの範囲内、更に好ましくは0.1〜100nmの範囲内に形成される。硫酸化物層(硫化物層)の厚さを0.1〜1000nmの範囲内に限定したのは、1000nmを越えるとMgO等とガス状硫酸化剤および/または硫化剤との反応時間が長くなって作業性が悪くなるためである。上記以外は第1実施形態と同一に構成される。
【0033】
以下、上記の構成とされたPDPの保護膜の製造方法を説明する。
【0034】
[1]スクリーン印刷法による膜体の形成
先ず気相法や液中合成法等により平均粒径が5〜200nm(50〜2000Å)のMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末を作製する。
次いでこのMgO粉末等をガス状硫酸化剤および/または硫化剤雰囲気中(温度10〜200℃)に0.1〜120分間保持してMgO粉末等の表面を改質し、MgO粉末等の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成する。上記ガス状硫酸化剤および/または硫化剤としてはSO2 、SO3 、またはH2Sを用いることが好ましく、このガス状硫酸化剤および/または硫化剤の圧力は好ましくは6.65Pa〜1.0×105 Pa(0.05〜760Torr)、更に好ましくは1.3×103 Pa〜4.0×104 Pa(10〜300Torr)の範囲内に設定される。ガス状硫酸化剤および/または硫化剤の圧力を0.05〜760Torrの範囲内に限定したのは反応進行度、即ち硫酸化物層(硫化物層)の厚さの制御を容易にするためである。
【0035】
次に図3に示すように、前面ガラス基板13の表面に表示電極16となるAgやAu等の電極用ペーストをスクリーン印刷法により所定の間隔をあけて塗布し乾燥・焼成した後に、上記前面ガラス基板13の表面に透明誘電体層17となる透明ガラスペーストをスクリーン印刷法により前面ガラス基板13の表面全体に塗布し乾燥する。
また膜体34aとなるMgO粉末等(上記表面が硫酸化物層(硫化物層)により被覆されたMgO粉末等)、バインダおよび溶媒を所定の割合で混合して膜用ペーストを調製し、このペーストをスクリーン印刷法により上記透明誘電体層17の表面全体に塗布し乾燥する。上記バインダとしてはアルカリ土類金属や希土類金属のアルコキシド,有機酸化合物,アセチルアセトネート(例えば、有機酸マグネシウム,マグネシウムアルコキシド,マグネシウムアセチルアセトネート)、あるいはエチルセルロースやエチルシリケート等が用いられ、溶媒としてはα−テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テレピン油等が用いられる。また上記MgO粉末等と、バインダと、溶媒との混合割合は0.1〜10重量%と、10〜99.9重量%と、0〜30重量%とにそれぞれ設定されることが好ましい。更に上記前面ガラス基板13を大気中で100〜200℃に10〜60分間保持して乾燥した後に、大気中で500〜600℃に10〜60分間保持して焼成する。
【0036】
[2]スピンコート法による膜体の形成
先ず上記[1]と同様にしてMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかの粉末の表面を硫酸化物層(硫化物層)により被覆する。
次に前面ガラス基板の表面に電極用ペーストおよび誘電体層用ペーストを塗布し乾燥・焼成した後に、膜体となるMgO粉末等(上記表面が硫酸化物層(硫化物層)により被覆されたMgO粉末等)、バインダおよび溶媒を所定の割合で混合して膜用分散液を調製し、この分散液をスピンコート法により上記透明誘電体層の表面全体に成膜し乾燥する。上記バインダとしてはアルカリ土類金属や希土類金属のアルコキシド,有機酸化合物,アセチルアセトネート(例えば、マグネシウムアルコキシド,有機酸マグネシウム,マグネシウムアセチルアセトネート,トリフルオロ酢酸マグネシウム,マグネシウムトリフルオロアセチルアセトネート,マグネシウムヘキサフルオロアセチルアセトネート)、あるいはエチルシリケート等が用いられ、溶媒としてはアルコール、セロソルブ等が用いられる。また上記MgO粉末等と、バインダと、溶媒との混合割合は1〜40重量%と、0.1〜10重量%と、55〜98.9重量%とにそれぞれ設定されることが好ましい。更に上記前面ガラス基板を大気中で40〜100℃に5〜60分間保持して乾燥した後に、大気中で500〜600℃に10〜60分間保持して焼成する。
【0037】
このように製造されたPDP用保護膜では、膜体34aとなるMgO粉末等の表面が硫酸化物層(硫化物層)により被覆されるため、PDP10の製造過程において膜体34aが大気中に長時間曝されても、膜体34a中のMgO粉末等が大気中のCO2 ガスや H2Oガスを殆ど反応しない。この結果、膜体34a中のMgO粉末等がPDP10の機能を損なうおそれのあるMgCO3 やMg(OH)2 等に変質することは殆どないので、膜体34aの耐環境性を向上できる。また膜体34a中のMgO粉末等がPDP10の機能を損なうおそれのあるMgCO3 やMg(OH)2 等に殆ど変質しないため、後工程で上記MgCO3 やMg(OH)2 等を除去する脱ガス処理工程時間を短縮または脱ガス処理工程を省くことができ、PDP10の製造コストを低減できる。更に上記MgO粉末等の表面を被覆する硫酸化物層(硫化物層)は極めて薄いため、このMgO粉末等の機械的特性は表面に硫酸化物層(硫化物層)のないMgO粉末等と略同一である。なお、上記第1および第2実施形態では、FPDとしてPDPを挙げたが、前面ガラス基板の表面に保護膜として膜本体または膜体を形成するものであればPALC等でもよい。
【0038】
なお、上記の実施形態においては、大気中において焼成することで膜本体14aの活性化を行ったが、基板13のパネル組立て後に放電エージング処理により前記膜本体14aの活性化をおこなう手段を採用することができる。
この場合、膜本体14aの活性化により、膜本体14aに僅かにMgO等の水酸化物(Mg(OH)2 等)が生成していても H2Oとして除去でき、また表面の硫酸化物層および/または硫化物層はスパッタリングされ放電に直接寄与しない部分へ、除去することができる。
【0039】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0040】
<実施例1>
先ず図1に示すように、厚さ3mmの前面ガラス基板13の表面にAgの表示電極16(膜厚5μm)をスクリーン印刷法により形成した後に、ガラスからなる透明誘電体層17(膜厚20μm)をスクリーン印刷法により形成した。次いでこのガラス基板13を大気中で150℃に30分間保持して乾燥した後に、大気中で550℃に30分間保持して焼成した。次に純度が99.8%のMgO焼結体ペレットを電子ビーム蒸着法により上記ガラス基板13の透明誘電体層17表面を覆うように蒸着して膜本体14aを形成した。この膜本体14の成膜条件は、加速電圧が15kV、蒸着圧力が1×10−2Pa、蒸着距離が600mmであった。更にこのガラス基板13を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガスと分圧が100kPa(752Torr)のN2 ガスとの混合ガス雰囲気中(温度25℃)に10分間保持して膜本体14aの表面を改質し、膜本体14aの表面に硫酸化物層(硫化物層)14bを形成した。このガラス基板13を実施例1とした。
【0041】
<実施例2>
実施例1と同様にガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例2とした。
【0042】
<実施例3>
実施例1と同様にガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が5.07kPa(38Torr)のSO3 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例3とした。
【0043】
<実施例4>
実施例1と同様にガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のH2S ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例4とした。
【0044】
<実施例5>
先ず実施例1と同様に電極付ガラス基板を作製した後、純度が99.99%(4N)の5インチサイズのMgOターゲットを用いてスパッタリング法によりガラス基板に透明誘電体層表面を覆うように膜本体を形成する。この膜本体の成膜条件は、高周波出力が1kW、スパッタリング圧力が1.33Pa、アルゴンガスに対する酸素濃度が10%、基板温度が150℃の範囲内であることが好ましい。次に上記実施例2と同様にガラス基板をSO2 ガス雰囲気中保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例5とした。
【0045】
<実施例6>
先ず厚さ3mmの前面ガラス基板13の表面にAgの表示電極16(膜厚5μm)をスクリーン印刷法により形成した後に、ガラスからなる透明誘電体層(膜厚20μm)をスクリーン印刷法により形成した。次いでMgO成分を含むバインダとして有機酸マグネシウム(日化産製、ナフテックスマグネシウム)を79重量%と、MgO成分を含まないバインダとしてエチルセルロースを2重量%と、溶媒としてα−テルピネオールを19重量%を混合して膜用ペーストを調製し、このペーストを上記ガラス基板上にスクリーン印刷法により塗布して膜本体を形成した。次に上記ガラス基板を大気中で150℃に30分間保持して乾燥した後に、大気中で550℃に30分間保持して焼成した。更にこのガラス基板を圧力が5.07kPa(38Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例6とした。
【0046】
<実施例7>
先ず厚さ3mmのガラス基板の表面にAgの表示電極16(膜厚5μm)をスクリーン印刷法により形成した後に、ガラスからなる透明誘電体層(膜厚20μm)をスクリーン印刷法により形成した。次いでMgO成分を含むバインダとしてマグネシウムジエトキシドを1.25重量%と、溶媒としてメチルセロソルブを98.75重量%とを混合して均一な膜用コーティング液を調製し、このコーティング液を上記ガラス基板上にスピンコート法により塗布して膜本体を成膜した。次に上記ガラス基板を大気中で60℃に30分間保持して乾燥した後に、大気中で580℃に10分間保持して焼成した。更にこのガラス基板を圧力が5.07kPa(38Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例7とした。
【0047】
<実施例8>
気相法により作製した平均粒径が10nm(100Å)のMgO粉末(宇部マテリアルズ製)5gを、圧力が5.07kPa(38Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度25℃)に10分間保持してMgO粉末の表面を改質した、即ちMgO粉末の表面を硫酸化物層(硫化物層)により被覆した。このMgO粉末を実施例46のMgO粉末とした。一方、図3に示すように、厚さ3mmの前面ガラス基板13の表面にAgの表示電極16(膜厚5μm)をスクリーン印刷法により形成した後に、ガラスからなる透明誘電体層17(膜厚20μm)をスクリーン印刷法により形成した。次に上記表面が硫酸化物層(硫化物層)により被覆されたMgO粉末を5重量%と、バインダとして有機酸マグネシウム(日化産製、ナフテックスマグネシウム)を75重量%およびエチルセルロースを2重量%と、溶媒としてα−テルピネオールを18重量%を混合して膜用ペーストを調製し、この膜用ペーストを上記ガラス基板13上にスクリーン印刷法により塗布して膜体34aを形成した。更に上記ガラス基板13を大気中で150℃に30分間保持して乾燥した後に、大気中で580℃に10分間保持して焼成した。このガラス基板13を実施例8とした。
【0048】
<実施例9>
実施例1と同様にしてCaO焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例9とした。
【0049】
<実施例10>
実施例1と同様にしてSrO焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例10とした。
【0050】
<実施例11>
実施例1と同様にしてBaO焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例11とした。
【0051】
<実施例12>
実施例1と同様にして(Mg・Ca)O焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例12とした。
【0052】
<実施例13>
実施例1と同様にして(Ca・Sr)O焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例13とした。
【0053】
<実施例14>
実施例1と同様にしてY2O3焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例14とした。
【0054】
<実施例15>
実施例1と同様にしてGd2O3焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例15とした。
【0055】
<実施例16>
実施例1と同様にしてCeO2 焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例16とした。
【0056】
<実施例17>
実施例1と同様にしてLa2O3焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例17とした。
【0057】
<実施例18>
実施例1と同様にしてMgGd2O4焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のSO2 ガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面に硫酸化物層(硫化物層)を形成した。このガラス基板を実施例18とした。
【0058】
<比較例1>
実施例1と同様にガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成したが、この膜本体の表面は改質しなかった。このガラス基板を比較例1とした。
【0059】
<比較例2>
実施例5と同様にガラス基板の表面に膜本体をスパッタリング法により形成したが、この膜本体の表面は改質しなかった。このガラス基板を比較例2とした。
【0060】
<比較例3>
実施例6と同様にガラス基板の表面に膜本体をスクリーン印刷法により形成し乾燥・焼成したが、この膜本体の表面は改質しなかった。このガラス基板を比較例3とした。
【0061】
<比較例4>
実施例7と同様にガラス基板の表面に膜本体をスピンコート法により形成し乾燥・焼成したが、この膜本体の表面を改質しなかった。このガラス基板を比較例4とした。
【0062】
<比較例5>
表面を改質していないMgO粉末を用いて、ガラス基板の表面に実施例8と同様にスクリーン印刷法により膜体を形成した。上記ガラス基板を比較例5とした。
【0063】
<比較例6
実施例9と同様にしてCaO焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した。このガラス基板を比較例6とした。
【0064】
<比較例7>
実施例10と同様にしてSrO焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した。このガラス基板を比較例7とした。
【0065】
<比較例8>
実施例11と同様にしてBaO焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した。このガラス基板を比較例8とした。
【0066】
<比較例9>
実施例12と同様にして(Mg・Ca)O焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した。このガラス基板を比較例9とした。
【0067】
<比較例10>
実施例13と同様にして(Ca・Sr)O焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成したした。このガラス基板を比較例10とした。
【0068】
<比較例11>
比較例14と同様にしてY2O3焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した。このガラス基板を比較例11とした。
【0069】
<比較例12>
実施例15と同様にしてGd2O3焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した。このガラス基板を比較例12とした。
【0070】
<比較例136>
実施例16と同様にしてCeO2 焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した。このガラス基板を比較例13とした。
【0071】
<比較例14>
実施例17と同様にしてLa2O3焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した。このガラス基板を比較例14とした。
【0072】
<比較例15>
実施例18と同様にしてMgGd2O4焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した。このガラス基板を比較例15とした。
【0073】
<比較例16>
実施例1と同様にしてMgO焼結体ペレットによりガラス基板の表面に膜本体を電子ビーム蒸着法により形成した後に、このガラス基板を圧力が1.01kPa(7.6Torr)のHFガス雰囲気中(温度100℃)に1分間保持して膜本体の表面を改質し、膜本体の表面にフッ化物層を形成した。このガラス基板を比較例16とした。
【0074】
<評価方法>
実施例および比較例のガラス基板上の膜本体表面または粉末表面に形成された硫酸化物層(硫化物層)の厚さをX線光電子分光法により深さ方向の元素分析を行って測定した。
【0075】
・脱ガス量
得られた薄膜からの脱ガス分析は以下の手順で行なった。Siウェハー上に薄膜を作製した試料を大気中(温度:24〜27℃、湿度:50〜60%RH)に5h放置後、1cm□にカットし、TDS(Temperature Desorption Spectroscopy)装置を用い、真空中でのサンプル温度が400℃まで加熱したときの脱ガス量[mol]を重量[mg]に換算して行なった。
【0076】
・電圧降下時間
得られた薄膜を用いた擬似PDP放電セルの電圧降下時間は以下の手順で行なった。先ず真空チャンバー内にて基板温度を350℃で3h加熱し、その後室温にて500Torr のNe−4%Xe混合ガスをチャンバー内に満たした。ただし使用した放電ギャップは100μm、放電空間高さ(リブ高さ)は130μmだった。周波数を30kHzに固定し、放電ギャップ間に印加する交流電圧値を上げていくとあるところで放電が開始するが、放電が開始するのに必要な電圧値(放電開始電圧)は時間とともに急激に降下し、一定時間後は放電開始電圧に大きな変化がなくなった。そこで、この電圧降下曲線の変曲点を電圧降下時間と定義し、評価した。
【0077】
これらの測定結果を表1,2に示した。
【0078】
【表1】
【表2】
【0079】
表1,2から明らかなように、実施例では比較例に比べ脱ガス量が少なく、パネル張り合わせ後の真空排気工程が簡略化できることが予想される。また実施例の電圧降下時間は、比較例(未処理品)と同等もしくはそれ以上の時間が必要であり、電圧安定化のために必要なエージング処理工程が長くなる可能性が高い。また実施例2と同様だが処理ガスのみをHFに変えた比較例16(特許文献15に対応)では、脱ガス量の低減効果は実施例2のSO2処理と同様だが、電圧降下時間が長く、やはりエージング処理工程が長くなる不具合があることが判った。
【0080】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、基板の表面に膜本体を形成し、この膜本体の表面に硫酸化物層および/または硫化物層を形成したので、FPDの製造過程において保護膜が大気中に長時間曝されても、膜本体中のMgO等が大気中のCO2 ガスや H2Oガスと殆ど反応しない。この結果、膜本体中のMgO等がFPDの機能を損なうおそれのあるMgCO3 やMg(OH)2 等に変質することは殆どないので、膜本体の耐環境性を向上できる。また保護膜のうち基板と熱膨張係数が略同一の膜本体が接着されるので、熱サイクルにより保護膜が基板から剥離せず、保護膜の基板に対する密着性および整合性が極めて良好となる。
【0081】
また基板の表面に形成される膜体を、硫酸化物層および/または硫化物層にて被覆されたMgO粉末等を用いて形成すれば、上記と同様にFPDの製造過程において保護膜が大気中に長時間曝されても、膜体中のMgO等が大気中のCO2ガスや H2Oガスと殆ど反応しない。この結果、膜体中のMgO等がFPDの機能を損なうおそれのあるMgCO3 やMg(OH)2 等に変質することは殆どなく、膜体の耐環境性を向上できる。またMgO粉末等の表面を被覆する硫酸化物層および/または硫化物層は極めて薄いため、このMgO粉末等の機械的特性は表面に硫酸化物層および/または硫化物層のないMgO粉末等と略同一である。また硫酸化物層および/または硫化物層がMOXSY,MOX(SO2)Y ,MOX(SO3)Y ,MOX(SO4)Y (MはMg等であり、0≦X<1.5,0<Y≦1.5である。)であったり、硫酸化物層および/または硫化物層をガス状硫酸化剤および/または硫化剤とMgO等との反応にて得たり、ガス状硫酸化剤および/または硫化剤としてSO2 、SO3 、またはH2S等を用いたり、あるいは硫酸化物層および/または硫化物層の厚さを0.1〜1000nmの範囲内に形成したりすれば、上記効果を更に顕著に奏することができる。
【0082】
また基板の表面に膜本体を形成し、この膜本体をガス状硫酸化剤にて表面処理することにより膜本体の表面に硫酸化物層および/または硫化物層を形成すれば、膜本体中のMgO等がFPDの機能にとって有害なMgCO3 やMg(OH)2 等に殆ど変質しないため、後工程で上記MgCO3 やMg(OH)2 等を除去する脱ガス処理工程時間を短縮または脱ガス処理工程を省くことができ、FPDの製造コストを低減できる。また基板の表面に膜本体を真空中で形成し、この膜本体を大気に暴露させずに真空中または不活性ガス雰囲気中でガス状硫酸化剤および/または硫化剤にて表面処理することにより膜本体の表面に硫酸化物層および/または硫化物層を形成すれば、膜本体の表面にFPDに有害なMgO等の炭酸塩や水酸化物の生成を防止あるいは抑制することができる。
【0083】
またMgO粉末等をガス状硫酸化剤および/または硫化剤にて表面処理することによりMgO粉末等を硫酸化物層および/または硫化物層にて被覆し、この硫酸化物層および/または硫化物層により被覆されたMgO粉末等とバインダと溶媒とを混合して調製された膜用ペーストまたは膜用分散液を用いて基板の表面に膜体を形成すれば、上記と同様に膜体中のMgO粉末等がFPDの機能にとって有害なMgCO3 やMg(OH)2 等に殆ど変質しないため、後工程で上記MgCO3 やMg(OH)2 等を除去する脱ガス処理工程時間を短縮または脱ガス処理工程を省くことができ、FPDの製造コストを低減できる。また圧力が6.65Pa〜1.0×105 Pa(0.05〜760Torr)のガス状硫酸化剤および/または硫化剤により膜本体またはMgO粉末等を表面処理したり、ガス状硫酸化剤および/または硫化剤としてSO2 、SO3 、またはHS等を用いたりすれば、膜本体またはMgO粉末等の表面にエージング処理にて比較的除去しやすい硫酸化物層および/または硫化物層を比較的容易に形成することができる。更に上記保護膜を用いてFPDを製造すれば、FPDの製造工数を大幅に低減できるので、安価にFPDを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明第1実施形態の保護膜が形成された前面基板の断面図。
【図2】 その前面基板が組込まれたPDPの要部断面図。
【図3】 本発明第2実施形態の保護膜が形成された前面基板の断面図。
【図4】 その前面基板が組込まれたPDPの要部断面図。
【符号の説明】
10 PDP(FPD)
13 前面ガラス基板(基板)
14,34 保護膜
14a 膜本体
14b 硫酸化物層(硫化物層
34a 膜体
Claims (5)
- 基板の表面にMgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかにより形成された膜本体を形成する工程と、前記膜本体をガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤にて表面処理することにより前記膜本体の表面に硫酸化物層および/または硫化物層を形成する工程とを含むことを特徴とするFPD用保護膜の製造方法。
- 基板の表面に膜本体を真空中で形成する工程と、前記膜本体を大気に暴露させずに真空中または不活性ガス雰囲気中でガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤にて表面処理することにより前記膜本体の表面に硫酸化物層および/または硫化物層を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項1記載のFPD用保護膜の製造方法。
- 表面に膜本体および硫酸化物層および/または硫化物層が形成された基板のパネル組立て後に放電エージング処理により前記膜本体の活性化をおこなうことを特徴とする請求項1または2記載のFPD用保護膜の製造方法。
- 圧力が6.65Pa〜1.0×105 Pa(0.05〜760Torr)のガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤により、MgO,CaO,SrO,BaO,アルカリ土類複合酸化物もしくは希土類酸化物,またはアルカリ土類酸化物および希土類酸化物の複合酸化物のいずれかにより形成された膜本体を表面処理したことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載のFPDの保護膜の製造方法。
- ガス状硫酸化剤および/またはガス状硫化剤がSO2 、SO3 、H2Sのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載のFPD用保護膜の製造方法。
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