本発明のプラズマディスプレイパネルは、それぞれの内表面に放電を発生させる電極が形成された一対の基板が空間を介して対向配置され、前記一対の基板のうちの一方の基板に形成された前記電極を覆う誘電体層と前記誘電体層を覆う保護膜とを備え、前記保護膜は、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムのいずれか、またはこれらの混合物、もしくは、これらのいずれかとマグネシウムとの複合酸化物により形成され、前記保護膜がイリジウムおよびパラジウムの少なくともいずれか一方を含有している。
上記本発明のプラズマディスプレイパネルは、イリジウムおよびパラジウムの少なくともいずれか一方を保護膜が含有している。このため、他の物質と反応しやすい材料の保護膜が大気中の二酸化炭素と反応してしまった場合でも、イリジウムおよびパラジウムの少なくともいずれか一方による分解を促進する作用によりこれを分解して、高い放電特性を備えた保護膜とすることができる。この結果、低電圧で良好な画像表示を行うことができるプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
上記本発明のプラズマディスプレイパネルにおいて、前記保護膜の前記誘電体層との界面に、イリジウムおよびパラジウムの少なくともいずれか一方が粒状物として存在しているようにすることができる。また、前記保護膜の前記空間に面した表面に、イリジウムおよびパラジウムの少なくともいずれか一方の粒状物が露出して存在しているようにすることができる。
また、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、それぞれの内表面に放電を発生させる電極が形成された一対の基板が空間を介して対向配置され、前記一対の基板のうちの一方の基板に形成された前記電極を覆う誘電体層と前記誘電体層を覆う保護膜とを備えたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記一方の基板の前記誘電体層上に、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、希土類酸化物のいずれか、またはこれらの混合物、もしくは、これらのいずれかとマグネシウムとの複合酸化物により形成され、イリジウムおよびパラジウムの少なくともいずれか一方を含有している前記保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記保護膜が形成された前記一方の基板と前記電極が形成された他方の基板とを封着材により封着する封着工程の後、パネル内部を排気して水素を含有するガスを導入する不純物分解工程と、前記不純物分解工程後にパネル内部を排気し、放電ガスを導入して排気管を封止する排気・ガス封入工程とを有する。
このように、封着工程後に水素を含有するガスを導入する不純物分解工程を備えることで、保護膜に含有されているイリジウムまたはパラジウムを触媒として作用させ、高γ特性の保護膜材料に反応、吸着された二酸化炭素を効果的に分解することができる。この結果、封着工程を、高価な設備を用いずに大気中で行った場合でも、完成パネルとして放電特性に優れた低電圧で良好な画像表示を行うことができるプラズマディスプレイパネルを得ることができ、安価なプラズマディスプレイパネルの製造方法を実現することができる。
上記プラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記保護膜形成工程が、イリジウムおよびパラジウムの少なくともいずれか一方の粒状物を前記誘電体層上に散布する工程と、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムのいずれか、またはこれらの混合物、もしくは、これらのいずれかとマグネシウムとの複合酸化物を蒸着する工程とを含むことが好ましい。また、前記保護膜形成工程が、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムのいずれか、またはこれらの混合物、もしくは、これらのいずれかとマグネシウムとの複合酸化物を蒸着する工程と、イリジウムおよびパラジウムの少なくともいずれか一方の粒状物を蒸着された前記保護膜上に散布する工程とを含むことが好ましい。このようにすることで、不純物分解工程において触媒として働く粒状のイリジウムまたはパラジウムを保護膜に備えたプラズマディスプレイパネルを、容易に製造することができる。
さらに、前記イリジウムおよびパラジウムの少なくともいずれか一方の粒状物を散布する工程が、スプレー法、印刷法、インクジェット法、ディスペンサ法のいずれかで行われることが好ましい。このようにすることで、イリジウムまたはパラジウムの粒状物を、容易に分散させて散布することができ、放電特性に優れたプラズマディスプレイパネルを容易に製造することができる。
以下、本発明のプラズマディスプレイパネル、および、プラズマディスプレイパネルの製造方法について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるプラズマディスプレイパネルの概略構成を示す要部分解斜視図である。
本実施形態のプラズマディスプレイパネル10は、前面板20と背面板30とを空間を介して対向配置し、周辺部を図示しない封着材を用いて封着することにより構成されており、前面板20と背面板30との間に多数の放電セルが形成されている。
前面板20は、一方の基板であるガラス製の前面基板21と、前面基板21の内表面に形成された走査電極22と維持電極23とからなる表示電極24と、表示電極24を覆う誘電体層26と、誘電体層を覆う保護膜27とを有している。
表示電極24は、前面基板21の内表面上に形成された一対の走査電極22と維持電極23とからなっていて、前面基板21上に互いに平行に複数本が形成されている。なお、図1では、表示電極24が、走査電極22、維持電極23、走査電極22、維持電極23という順番に繰り返して形成されている例を示したが、表示電極24は、走査電極22、維持電極23、維持電極23、走査電極22というように、走査電極22と維持電極23との順序が交互に異なるように形成されていてもよい。
また、図1では、走査電極22および維持電極23が、それぞれ所定の幅を持った電極パターンで構成されているように示しているが、走査電極22と維持電極23によって放電セルからの発光を遮ることを避けるために、走査電極22と維持電極23とを、それぞれ透明導電膜を用いた透明電極と金属材料のバス電極の組み合わせとして構成することができる。また、走査電極22と維持電極23それぞれを、幅の狭い電極の対としてそれぞれ2本ずつ形成することもできる。
表示電極24上と電極が形成されていない前面基板21の内表面上を覆うように、誘電体層26が形成され、誘電体層26上には誘電体層26を覆うように保護膜27が形成されている。
背面板30は、他方の基板であるガラス製の背面基板31と、背面基板31の内表面上に形成されたデータ電極32と、データ電極32を覆うように形成された誘電体層33と、誘電体層33上に形成された隔壁34と、隔壁の表面に形成された蛍光体層35とを有している。
背面基板31上のデータ電極32は、複数本が互いに平行に形成されている。そしてデータ電極32を覆う誘電体層33上に、縦隔壁34aと横隔壁34bとを有する井桁状の隔壁34が形成されている。さらに誘電体層33の表面と隔壁34の側面とに赤(R)、緑(G)、青(B)各色の蛍光体層35が形成されている。なお、隔壁34を縦隔壁34a横隔壁34bとで格子状に構成すること、また、蛍光体としてRGBの三色を用いることは、いずれも本実施形態のプラズマディスプレイパネル10において必須の要件ではなく、縦もしくは横方向のみの隔壁を用いることや、RGB三色以外の色の蛍光体を用いることもできる。
前面板20と背面板30とは、それぞれの内表面に形成された表示電極24とデータ電極32とが略直交に立体交差するように対向配置され、表示電極24とデータ電極32とが対向して交差する部分に放電セルが形成される。前面基板21および背面基板31において、放電セルが形成された部分が画像を表示する画像表示領域となり、図1では図示しない、画像表示領域を外側から囲む前面基板21および背面基板31の周縁部分が、低融点ガラスの封着材により封着されている。前面板20と背面板30との間に形成された放電空間には、放電ガスが封入されている。
本実施の形態にかかるプラズマディスプレイパネル10においては、保護膜27として酸化カルシウム(CaO)を主成分とする蒸着膜が用いられ、放電ガスとしてキセノン(Xe)が20%のNe−Xe混合ガスが用いられている。また、一画素に相当する放電セル一つの大きさは、縦576μm、横160μmとしている。なお、その他の表示電極24、誘電体層26、蛍光体層35等の仕様は、一般的なプラズマディスプレイパネルのものと同様であるため詳細な説明は省略する。
本実施形態にかかるプラズマディスプレイパネル10では、保護膜27として、酸化カルシウム(CaO)を用いている。CaOは、従来代表的な保護膜材料として用いられているMgOと比較して、部材自体の二次電子放出特性に優れているため、プラズマディスプレイパネルの放電開始電圧を下げることができ、より低い消費電力での画像表示が可能となることが期待されている。
一方で、CaOはMgOと比較して活性に富むため、水(H2O)や大気中に存在する二酸化炭素(CO2)と反応しやすい。例えば、保護膜27を前面基板21の誘電体層上に蒸着形成した後に、前面板20と背面板30とを封着する封着工程などにおいて、保護膜27のCaOは、H2Oと反応して水酸化カルシウム(Ca(OH)2)になり、CO2と反応して炭酸カルシウム(CaCO3)に変化する。特に、CaOがCaCO3に変化した場合には、保護膜27のCaOが本来有する二次電子放出特性が著しく低下してしまい、γ特性の高いCaOを保護膜材料として用いてもプラズマディスプレイパネルの放電電圧が却って上昇してしまう。そこで、本実施形態のプラズマディスプレイパネル10では、CaO保護膜27にイリジウム(Ir)の微粒子を含有させている。このIrを、水素ガス(H2)を用いた不純物分解工程での触媒として作用させることができ、一旦CaCO3に変化した保護膜のCaOを分解して、本来の二次電子放出特性を回復させることができる。
図2は、本実施形態にかかるプラズマディスプレイパネル10の放電セルの状態を示す要部拡大断面図である。
図2に示すように、前面基板21の内表面に、表示電極24、誘電体層26、保護膜27が順次形成された前面板20と、背面基板31の内表面に、データ電極32、誘電体層33、縦隔壁34aが形成され、誘電体層33と縦隔壁34aが蛍光体層35で覆われている背面板30との対向部分が放電セルを形成している。なお、図2は、背面板30をデータ電極32の配設方向から見た断面図であるため、図1に示した隔壁34の内、縦隔壁34aのみが示されている。
図2に示すように、前面板20と背面板30とは所定の間隔を隔てて対向していて、この間隙部分である放電空間に、前面板20の保護膜27が面している。そして、本実施形態のプラズマディスプレイパネル10では、保護膜27中に、含有率が5atm%のIr微粒子28が包含されている。
図3は、本実施形態にかかるプラズマディスプレイパネルと、比較例として作成したプラズマディスプレイパネルにおける、静特性における放電電圧を測定したデータを示している。
図3において、実施例と記載したものが、本実施の形態にかかるプラズマディスプレイパネル10であり、CaOを材料とした保護膜27に5atm%のIr微粒子28を包含したものである。
実施例のパネルでは、前面板20と背面板30との封着工程を大気中で行った後、パネル内部を一次排気してH2を含むガスとして、例えば、窒素(N2)に4%濃度のH2を含んだガスを導入する不純物分解処理を行い、その後パネル内部を改めて排気、放電ガスを封入後に排気管をチップオフした。
また、比較例と記載したパネルは、実施例のパネルと同様に保護膜27としてCaOを主体としているが、保護膜27中にIr微粒子は含まず、大気中で封着工程を行った後そのまま排気、放電ガスの封入、チップオフを行った。なお、本実施形態のプラズマディスプレイパネル10の製造方法については、後に改めて詳述する。
図3中の放電特性欄は、Vfnが、非点灯状態から印加電圧を上昇させていってパネル全面の放電セルで放電が開始されたときの印加電圧であり、Vf1が、同じく全ての放電セルが非点灯の状態からパネル内のいずれか1つの放電セルで放電が開始されたときの印加電圧を示す。また、Vsmnが、パネル全面の放電セルが点灯している状態から印加電圧を下げていっていずれかの放電セルが非点灯になったときの印加電圧であり、Vsm1が、点灯状態の最後の1つの放電セルが非点灯となった状態、言い換えると、パネルの全ての放電セルが非点灯となったときの印加電圧値を示している。
図3から明らかなように、実施例のパネルでは、全ての放電電圧特性の電圧値が比較例のパネルの放電電圧値よりも低く、低い動作電圧を用いた低消費電力でのパネル駆動が可能であることがわかる。これに対し、比較例のパネルでは、実質的な放電開始電圧であるVsmnが186Vと高く、また、VfnやVf1についても従来のMgOを用いた保護膜のパネルと比較してばらつきが大きく、保護膜材料として二次電子放出特性に優れたCaOを用いた効果が得られなかった。
本実施形態のプラズマディスプレイパネルで、図3に実施例として示すような良好な放電特性が得られた理由は、保護膜27中に含有させたIr微粒子28が、水素を含んだガスを導入する不純物分解処理時に触媒として働き、封着工程などで保護膜27のCaOと反応して吸着されていたCO2を分解する働きが強まったためと考えられる。
保護膜材料として従来用いられてきたMgOに代えてCaOを保護膜として用いることで、CaOの高い二次電子放出特性を利用してパネルの放電開始電圧を下げることが可能となる。しかし、上記したように活性であるCaOは、前面板と背面板とを封着材で封着する封着工程でパネル温度が400度以上に加熱される際に大気中のCO2と反応してCaCO3に変化してしまい、放電特性が大幅に低下する。したがって、保護膜がCaCO3に変化した状態でそのままパネルとした、図3に示した比較例の場合は、MgOよりも却って放電特性が低下してしまっている。これは、封着工程よりも低い300度から350度の温度条件下で行われる排気行程では、CaCo3→CaO+CO2という分解反応が十分に進まずに、保護膜中のCaCo3が分解されなかったためと考えられる。
これに対し、実施例のパネルでは、大気中での封着工程の後に行った、H2を含んだガスを用いた不純物分解処理を行うことで、CaCo3+4H2→CaO+CH4+2H2OというCaCo3の分解反応が起こる。この、H2を介した分解反応は、CaCo3→CaO+CO2という通常の分解反応よりも活性化エネルギーが低いため、低い温度で、保護膜中に存在するCaCo3を分解することができる。このとき、保護膜中のIrが触媒のような作用をして、より選択的に、保護膜中に形成されたCaCo3とH2との反応を引き起こすことができて、さらに低い温度での分解反応が行われたと考えることができる。
このため、封着工程の温度よりも低い300度〜350度程度の温度条件下における不純物分解処理で、保護膜に形成された不純物であるCaCo3が分解して、完成後のパネルの保護膜がCaO本来の高い放電特性を実現できたと考えることができる。
このように、本実施形態のプラズマディスプレイパネル10では、保護膜27にIrを含んでいるため、封着工程などで保護膜に形成されたCaCo3を効果的に分解して、保護膜27としてCaO本来の高い放電特性を得ることができる。このため、CaOが大気中のCO2と反応してCaCo3が形成されないようにする場合に必要な、真空、または、不活性ガス雰囲気下で封着工程を行うなどの対策を採る必要が無く、封着工程での製造設備として簡易な従来からの装置を用いることができる。
なお、本実施形態では、5atm%のIr微粒子28を含有する保護膜27について例示して説明したが、Irの含有量は5atm%に限られるものではなく、保護膜27の不純物を分解することができる範囲でその含有量を適宜調整することができる。ただし、Ir含有量が5atm%を下回ると、不純物分解処理における触媒としての作用が十分に発揮できない場合があり、20atm%以上となると、保護膜27の透過率が下がりプラズマディスプレイの表示に悪影響を及ぼす場合がある。このため、Irの含有量としては、5atm%〜20atm%の間で選択することが好ましい。
また、本実施形態では、Irが保護膜27中に粒状物として含有されている状態を示した。これは、粒状物であることで金属Irの特性が強く出るので、H2を含んだガスを用いた不純物分解処理における触媒としての作用を、より強く果たすことができるからである。しかし、本実施形態の保護膜27においては、Irが含有されていれば、粒状物としてではなく原子レベルで分散して含有されていても、不純物分解処理における触媒としての作用を果たすことができる。
なお、Irを粒状物として含む場合に、その粒径は溶媒などへの分散性が良くなることから、小さい方が望ましい。具体的には、粒径が1μm以下のものが望ましい。 また、Irと同じように、H2を含んだガスを用いたCaCo3の分解処理において触媒としての作用を発揮する物質としてパラジウム(Pr)があり、Irに代えてPrを保護膜に含有させることができる。さらには、IrとPrとの双方を含有する保護膜を用いても、良好な放電特性を備えたプラズマディスプレイパネルを得ることができる。なお、Prの含有量、Prとして粒状物であることがより好ましいことなどは、上記Irの場合と同じである。
次に、本実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法について、具体例を挙げて説明する。なお、以下の製造工程の説明において、パネルの構成としては本実施形態において図1に示したプラズマディスプレイパネル10を例として用いて、プラズマディスプレイパネル10の各構成部材について、図1の符号を参照して説明する。
図4は、本実施の形態にかかるプラズマディスプレイの製造方法の製造工程例の工程図を示している。
図4に示すように、本実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法の工程例では、 前面板20に対する電極・誘電体形成工程41において、ガラス製の前面基板21上に走査電極22と維持電極23とからなる表示電極24を金属薄膜または透明導電膜の蒸着等により形成し、その上に誘電体層26を蒸着等して形成する。
続く保護膜形成工程42において、誘電体層26上にCaOを蒸着等して保護膜27の形成を行う。
ここで、保護膜27にIr微粒子28を含有させる方法としては、例えば、誘電体層26上にIr粒子を塗布し、その上にCaOを蒸着する方法を用いることができる。Ir粒子の塗布方法としては、水やエタノールを溶媒として用いるスプレー塗布法の他に、印刷法、ディスペンサ法、インクジェット法など粒状物を塗布することができる各種の手法を用いることができる。
また、Irを原子状でCaO保護膜27に含有させる方法としては、誘電体層26上に、CaOとともにIrを共蒸着する方法、混合ターゲットを用いる方法などが考えられる。
なお、Ir微粒子の散布とCaOの蒸着とを交互に行うことで、保護膜27にIrが分散して配置されることとなり、CaCo3の分解処理の効率が上がる。
電極・誘電体形成工程41と保護膜形成工程42とで、前面板20の工程が完了する。
一方の背面板30に対して、電極・隔壁・蛍光体形成工程43において、ガラス製の背面基板31上に金属薄膜の蒸着などによりデータ電極32を形成し、データ電極32を覆うように、可視反射層として機能する誘電体層33を形成する。さらに、誘電体層33上に所定の高さを有する縦横の格子状の隔壁34を所定のピッチで形成し、この隔壁34の表面と誘電体層33の表面に囲まれた空間の内部に、それぞれR、G、Bの蛍光体層35を形成する。
次に、フリット塗布・組立工程44において、背面基板31上の隔壁が形成されていない周辺領域に、封着材としての低融点ガラスペーストであるフリットを塗布し、フリット内の樹脂成分等を除去するために仮焼きを行う。次に、保護膜27が形成された前面板20と背面板30とを、前面板20の表示電極と背面板30のデータ電極32とが隔壁34で区切られた画素部分で交差するように、かつ、それぞれの基板同士の間に所定の間隔を隔てて対向するように重ね合わせて保持する。
その後、背面板30の周囲に塗布された封着材であるフリットが溶融する温度まで加熱して保持し、フリットを溶融後再凝固させて前面板20と背面板30との周囲を密封する封着工程45を行う。
本実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法では、この封着工程45は、大気中で行われる。
封着工程45の後、不純物分解工程46として、封着温度以下の所定の温度にパネルを加熱しながらパネル内を一次排気し、H2を含んだガスとして例えばH2濃度4%のN2/H2ガスをパネル内に導入する。この工程により、CaCo3+4H2→CaO+CH4+2H2OというCaCo3の分解反応が起きて、保護膜27から不純物が除去されCaOを主体とする膜に戻る。
その後、排気・ガス封入工程47でパネル内の排気を行い、Xe−Neガスなどの放電ガスを所定ガス圧になるように導入、排気管をチップオフする。
排気・ガス封入工程47後に、パネル内に形成した表示電極24に通常動作時よりも高い交流電圧を印加して、強い放電を発生させて安定放電が行えるようにするエージング処理などを行う仕上げ工程48を経て、プラズマディスプレイパネル10が完成する。
図4に示した本実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造工程では、大気中で行われた封着工程45の後に、封着工程より低い温度で一次排気して、H2を含むガスを導入する不純物分解工程46を経ることで、封着工程45などで大気中のCO2と反応して形成されたCaCo3を分解して保護膜27から効果的に除去できるので、二次電子放出特性の高いCaO本来の特性を備えた保護膜27を有するプラズマディスプレイパネルを得ることができる。
特に、本実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法では、不純物分解工程46でCaCo3に変化してしまったCaOを容易に分解することができるので、保護膜27のCaOが大気中のCO2と反応してしまうことを防止するために、フリット塗布・組立工程や封着工程を真空や不活性ガス雰囲気下で行う必要が無い。このため、フリット塗布・組立工程や封着工程として特殊な設備を用いることが不要であり、放電特性に優れた低消費電力駆動が可能なプラズマディスプレイパネルを製造することができる製造方法を、より低コストで提供することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかるプラズマディスプレイパネルの第2の実施形態について、図面を用いて説明する。
図5は、第2の実施形態にかかるプラズマディスプレイパネル10’の放電セルの構成を示す要部拡大断面図である。本実施形態のプラズマディスプレイパネル10’は、図2を用いて説明した第1の実施形態にかかるプラズマディスプレイパネル10と比較して、保護膜27におけるIr粒状物28の配置状況が異なり、他の構成部材については、第1の実施形態にかかるプラズマディスプレイパネル10と同じであるため、同じ部材には同じ符号を付して詳細の説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態のプラズマディスプレイパネル10’においても、図2に示した第1の実施形態のプラズマディスプレイパネル10と同様に、前面基板21の内表面に、表示電極24、誘電体層26、保護膜27が順次形成された前面板20と、背面基板31の内表面に、データ電極32、誘電体層33、縦隔壁34aが形成され、誘電体層33と縦隔壁34aが蛍光体層35で覆われている背面板30との対向部分が放電セルを形成している。図5は、図2と同様に背面板30をデータ電極32の配設方向から見た断面図であるため、縦隔壁34aのみが示されている。
図5に示すように、前面板20と背面板30とは所定の間隔を隔てて対向していて、この間隙部分である放電空間に、前面板20の保護膜27が面している。そして、本実施形態のプラズマディスプレイパネル10では、保護膜27に全体における含有率5atm%となるように、Ir微粒子29が保護膜27の放電空間に面した表面から露出した状態で保護膜27に包含されている。
本実施形態のプラズマディスプレイパネル10’では、Irの粒状物29が、保護膜27の放電空間側表面に露出して配置されている。保護膜27のCaOが、大気中のCO2と反応して形成されるCaCo3は、保護膜27の放電空間側表面での濃度が高くなっている。このため、保護膜27の放電空間側の表面に、CaCo3+4H2→CaO+CH4+2H2OというCaCo3の分解反応において触媒として作用するIr微粒子29を配置することで、CaCo3の分解反応をより効率よく行うことができる。
図6は、本実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法の、製造工程例を示す工程図である。
図6に示す、本実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、図4を用いて説明した、第1の実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法における製造工程と比較して、前面板20における保護膜形成工程のみが異なり、他の工程は、図4を用いて説明した製造工程と同じである。このため、第1の実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法と同じ部分については、詳細な説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法の工程例では、 前面板20に対する電極・誘電体形成工程51で、ガラス製の前面基板21上に走査電極22と維持電極23とからなる表示電極24を金属薄膜または透明導電膜の蒸着等により形成し、その上に誘電体層26を蒸着等して形成する。
続く保護膜形成工程52において、図5に示したように、放電空間側の表面に露出した状態でIr微粒子29が配置された保護膜27を形成する。
具体的には、第2の実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法では、まず、誘電体層26の表面に保護膜材料であるCaOを蒸着する保護膜蒸着53を行う。その後、形成されたCaO膜の表面にIr微粒子29を塗布するイリジウム塗布54を行う。Ir微粒子29の塗布方法としては、水やエタノールを溶媒として用いてスプレー塗布する方法の他に、印刷法、ディスペンサ法、インクジェット法など粒状物を塗布することができる各種の手法を用いることができる。
電極・誘電体形成工程51、保護膜形成工程52により、前面板20の工程が完了する。
一方の背面板30に対して、電極・隔壁・蛍光体形成工程55において、ガラス製の背面基板31上に金属薄膜の蒸着などによりデータ電極32を形成し、データ電極32を覆うように誘電体層33を形成する。さらに、誘電体層33上に格子状の隔壁34を所定のピッチで形成し、この隔壁34の表面と誘電体層33の表面に囲まれた空間の内部に、それぞれR、G、Bの蛍光体層35を形成する。
次に、フリット塗布・組立工程56において、背面基板31上の隔壁が形成されていない周辺領域に、封着材としての低融点ガラスペーストであるフリットを塗布し、前面板20の表示電極と背面板30のデータ電極32とが隔壁34で区切られた画素部分で交差するように、かつ、それぞれの基板同士の間に所定の間隔を隔てて対向するように前面板20と背面板30とを重ね合わせて保持する。その後、背面板30の周囲に塗布された封着材であるフリットが溶融する温度まで加熱して保持し、フリットを溶融後再凝固させて前面板20と背面板30との周囲を密封する封着工程57を大気中で行う。
その後、不純物分解工程58において、封着温度以下の所定の温度にパネルを加熱しながらパネル内を一次排気し、H2を含んだガスとして例えばH2濃度4%のN2/H2ガスをパネル内に導入する。この工程により、保護膜27の放電空間側の表面に露出して配置されたIr微粒子29を触媒として作用させながら、CaCo3+4H2→CaO+CH4+2H2OというCaCo3の分解反応を起こして、保護膜27を本来のCaO膜に戻すことができる。
その後、排気・ガス封入工程59でパネル内の排気を行い、Xe−Neガスなどの放電ガスを所定ガス圧になるように導入、排気管をチップオフする。さらに、エージング工程などの仕上げ工程60を経ることにより、プラズマディスプレイパネル10’が完成する。
図6に示した本実施形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法の工程例でも、大気中で行われた封着工程56の後に、封着工程より低い温度で一次排気して、H2を含むガスを導入する不純物分解工程57を経ることで、封着工程56などで大気中のCO2と反応して形成されたCaCo3を分解して、保護膜27から効果的に除去することができる。このため、二次電子放出特性の高いCaO本来の特性を備えた保護膜を有するプラズマディスプレイパネルを、フリット塗布・組立工程や封着工程を真空や不活性ガス雰囲気下で行わずに、放電特性に優れた低消費電力駆動が可能なプラズマディスプレイパネルを製造することができる低コストの製造方法を提供することができる。
以上、本発明のプラズマディスプレイパネル、および、プラズマディスプレイパネルの製造方法の説明においては、保護膜材料として電子放出特性の高いCaOを用いたものを例示して説明してきた。しかし、本発明にかかるプラズマディスプレイパネル、および、プラズマディスプレイパネルの製造方法において、保護膜材料は、CaOに限られるものではない。
CaOと同様に、従来用いられてきたMgOと比較して電子放出特性が高くいわゆる高γ特性の保護膜部材として、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)を用いることができる。また、ランタン(La)、セシウム(Ce)、ネオジム(Nd)などの希土類の酸化物である、La2O3、CeO2、Nd2O3などの二次電子放出特性の高い材料を保護膜材料として用いることができる。
さらに、上記したCaO、SrO、BaO、La2O3、CeO2、Nd2O3の2以上の物質を含む混合物、CaO、SrO、BaO、La2O3、CeO2、Nd2O3のいずれかとMgOとの複合酸化物も、二次電子放出特性の高い材料として好適に保護膜に使用することができる。
そして、いずれの材料を用いた保護膜においても、IrおよびPrの少なくともいずれか一方を含有させることで、低電圧での画像表示化が可能なプラズマディスプレイパネルを得ることができる。また、大気中でフリット塗布・組立工程や封着工程を行い、その後に一次排気とH2を含んだガスの導入とを行う不純物分解工程を経ることで、特別な設備を必要とすることのない、低コストのプラズマディスプレイパネルの製造方法を実現することができる。
また、上記実施の形態の説明では、不純物分解工程でパネル内に導入されるH2を含んだガスとして、H2濃度4%のN2/H2ガスを例示して説明した。