本発明は、製鉄用焼結鉱の製造における焼結原料の事前処理に関わり、特に焼結原料の一部としてピソライト鉱石を配合して焼結鉱を製造する際の製鉄用焼結原料の造粒処理に関するものである。
一般に、高炉製鉄法の主原料として用いられる焼結鉱は、以下のように製造される。先ず、焼結原料の主原料となる約10mm以下の鉄鉱石粉に、石灰石、ドロマイト、転炉スラグ、蛇紋岩、珪石、かんらん岩、ダストなどの副原料、コークス粉、無煙炭などの炭剤を配合後、ドラムミキサー、ペレタイザー、アイリッヒミキサー等の造粒機で適量水分となるように水分添加量を調節しながら混合、造粒を行い、焼結原料を擬似粒子化する。ここで、擬似粒子は、主に、粒径0.5mm以下の微粉粒子が粒径1〜3mmの核粒子に付着した構造となっており、焼結原料をこのような擬似粒子とすることにより焼結原料充填層(焼結ベッド)中の微粉粒子による通気性悪化を抑制し、焼結機の生産性向上を図ることができる。
したがって、焼結原料の造粒処理工程では、焼結原料中の微粉粒子を核粒子の周りに付着させる度合い、つまり、焼結原料の擬似粒化性を向上させること、造粒で得られた擬似粒子が焼結ベッドにおいて焼結反応までの湿潤帯、乾燥帯等で崩壊し難いこと等が求められる。また、一般に、このような焼結原料の擬似粒化性や擬似粒子の強度(崩壊し難さ)は焼結原料の配合原料の粒度構成、特に、焼結原料の主要部分を占める鉄鉱石の粒度構成や鉱石銘柄によって大きく左右されることが知られている。
一方、焼結原料の主要原料である鉄鉱石は、成分、特性が多種多様な銘柄の鉄鉱石が世界には存在し、一般的にはこれらの複数銘柄の鉄鉱石を鉄含有原料として焼結原料中に配合して使用している。このような鉄鉱石のうち、これまで焼結原料として多く使用されてきた良質なヘマタイト鉱石は、世界の鉄鉱石資源をみても枯渇の方向にあり、現状の生産が続くと主要鉱山は近年中にも掘り尽くしてしまうと予測されており、これに替わる銘柄の鉄鉱石の利用が望まれている。
日本の鉱石輸入主要国である豪州でも、ブロックマン鉱床から産出される良質なヘマタイト主要鉱石の枯渇に伴い、ピソライト鉱石が豪州産鉄鉱石の主力となり、その配合量はますます増加していくと予想される。ピソライト鉱石は、表1に示す産地銘柄名(通称名)でローブリバー鉱石やヤンディー鉱石がその代表的なものである。
ピソライト鉱石の化学組成は、表1に示すように、例えば、豪州のブロックマン鉄鉱床から産出される主要鉱石である良質なヘマタイト主要鉱石と比較して結晶水含有量が高いという性質を有している。また、多孔質であるため、造粒時において、多量の水が必要となるという性質を有している。
上述のような経緯によって、ピソライト鉱石を多量に配合した焼結原料において、造粒性を向上させることが望まれているが、例えば、特許文献1には、アクリル酸コポリマーを造粒処理剤として用いた、ピソライト鉱石(ローブリバー粉鉱)22%配合系(焼結新原料に対して20.2%に相当)の造粒処理法が開示されている。
また、特許文献2には、軟質/多孔性鉄鉱石を焼結原料の一部として用いる際に、砂糖あるいは糖蜜等の添加剤を添加することで、軟質/多孔性鉄鉱石への水の吸収を抑制する方法が開示されているが、上記の鉄鉱石の一例として、ピソライト鉱石(ヤンディー鉱)が挙げられている。
さらに、特許文献3には、16.5質量%の配合割合でピソライト鉱石を含む焼結新原料を用いた造粒処理方法が記載されている。
ピソライト鉱を高配合する焼結鉱の製造方法として、特許文献4には、成品成分でSiO2成分:4.0〜4.8%、MgO成分:1.2〜2.4%、CaO成分:6.0〜9.0%の範囲になるように原料または造けい剤量を調製することによって、歩留・生産性を向上する方法が開示されている。また、特許文献5には、ピソライト鉱を高配合する焼結鉱の製造方法として、投入熱量の制御によって、焼結時に発生する過剰熱量を抑え、通気性を改善することにより、生産性の低下を抑える方法が開示されている。
現在実用化されている造粒添加剤としては、例えば、非特許文献1に開示されている生石灰が広く使われている。これによると、生石灰の効果は、次のように示されている。第一に、ミキサー内での擬似粒化の促進を図ることができる。第二に、擬似粒子よりなる焼結原料を特定の高さに充填し、焼結ベッドを形成した後に表層に点火した後の焼結過程において、乾燥、加熱する過程で擬似粒子が崩壊することを防止し、焼結層中の均一な風の流れを保つことができるとされている。
また、特許文献6には、結晶水を多く含有するリモナイト鉱石などを石灰粉やスケールとともに混合し、リグニンスルホン酸を有効成分として含むパルプ廃液を添加して造粒した後、残りの原料と混合し、その後再度造粒する方法が開示されている。
特開昭59−50129号公報(公開日:昭和59年3月23日)
特表平10−502417号公報(公表日:平成10年3月3日)
WO2002−066688(公開日:2002年8月29日)
特開平8−239720号公報(公開日:平成8年9月17日)
特開2000−265220号公報(公開日:2000年9月26日)
特開平5−25556号公報(公開日:平成5年2月2日)
製鉄研究第288号(1976年)、9頁
しかしながら、ピソライト鉱石は、上述のように結晶水の含有量が多いため、製鉄用焼結原料の主要鉱石として用いた場合、焼結中の脱水によって鉱石に亀裂が生じやすく、焼結鉱の崩壊あるいは強度低下という問題が発生する。さらに、ピソライト鉱石は、他の鉱石と比較して造粒時に多くの水を必要とするが、操業上の理由により造粒時の水分を増加できない現状の生産工程では、ピソライト鉱石を多量に配合すると造粒性が著しく低下し、生産効率が低下するという問題が生じる。
上記操業上の理由とは、具体的には以下の(1)〜(3)に記載の内容である。
(1)焼結ベッド層内の水分凝縮帯における水分増による通気抵抗の増大や、上記水分凝縮帯の幅の増加による焼結時間の遅れを招いてしまう。
(2)コークス(燃料)の配合割合を増大しなければならず、高コストになってしまう。
(3)造粒物の粘着性が増加し、シューターやベルト、フィーダー等の設備への付着が起こってしまう。
以上のように、現在実用化されている生石灰を用いた造粒処理方法では、例えば、ピソライト鉱石を25質量%以上配合した場合には、造粒性が低下し、良好な生産効率を得ることができない。
また、特許文献2には、ピソライト鉱石40%配合系の造粒処理方法が開示されている。この方法では、砂糖あるいは糖蜜等の添加剤を添加剤として使用しているが、これらは一般に高価であるために製造コストの上昇を招く。さらに、造粒物の強度を大幅に向上できないという欠点がある上、造粒物の周りに付着する微粉粒子の割合(即ち、GI指数)が低いため、生産性を十分に向上させることができない。
一方、特許文献1、または特許文献3に記載の方法に関して、アクリル酸系高分子化合物等のカルボキシル基含有高分子化合物は、微量の使用であっても、造粒性の向上が見られるものの、実用化するためには、まだ改良する必要がある。すなわち、これらの化合物は一般に高価であることから、微量の添加であっても製造コストの上昇を招くことから、実用化のためには、さらに擬似粒化性を向上させる造粒処理方法が望まれている。
以上のように、現在実用化されている生石灰を用いた造粒処理方法や、特許文献2に開示されているような従来の焼結原料の造粒処理方法では、他の鉱石に比べて造粒性が悪いピソライト鉱石を多量に配合した焼結原料への適用は困難であり、実用性は低いものである。また、特許文献1や3で開示されているような従来の焼結原料の造粒処理方法では、生石灰を用いた造粒処理方法や、特許文献2で開示されているような造粒処理方法に比べれば、擬似粒化性の向上効果は高いものの、擬似粒化性をさらに向上させる余地が残されており、コスト上昇に見合った生産性の向上が得られていないというのが現状である。
また、特許文献4、特許文献5に記載の方法では、製鉄原料の造粒性を十分に向上させることが困難であり、十分に生産性を向上させることができない。また、特許文献6に記載の方法では、混合・造粒が多段階で行われているため、装置における制約が大きい上に、結晶水を多く含有するピソライト鉱石を製鉄用原料に対して特定の範囲で使用するということは開示されておらず、やはり生産性を十分に向上させることができない。
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ピソライト鉱石を焼結原料として多量に使用する場合に、特殊な設備を用いた事前造粒等を必要とせずに焼結鉱の製造における成品歩留および生産性を良好に維持できる焼結原料の造粒処理方法を提供することにある。また、擬似粒化性を十分に向上し、生産性を良好に維持できる焼結原料の造粒処理方法を提供することにある。
本発明のピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理方法は、上記課題を解決するために、ピソライト鉱石を含む製鉄用焼結原料の造粒処理方法において、焼結原料中に含まれる焼結新原料の全質量に対する配合割合で25質量%以上、80質量%以下のピソライト鉱石を含む製鉄用焼結原料に、カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物、酸基およびポリアルキレングリコール類を有する化合物、スルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物を含む造粒処理剤を、上記製鉄用焼結原料の全質量に対する固形分換算での添加割合で0.001質量%以上、1質量%以下の範囲で添加して造粒することを特徴としている。
上述のカルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物、酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、スルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物を含む造粒処理剤を添加する造粒処理方法において、原料の配合に関して、ピソライト鉱石を25質量%以上、80質量%以下という高配合にすることによって、造粒性が顕著に増加したことは予想外の結果である。この原因については十分に明確にはなっていないが、造粒処理剤に含まれるカルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物、酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、スルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物と、結晶水を多く含有するピソライト鉱石とが良く親和する。そのため、操業上の理由によって、造粒時に添加する水分を増加できないような状況下、あるいは、従来の水分量よりも低水分量の状況下においても、効率よく造粒を行うことができる。
さらに、上記化合物の存在により、良好に分散したピソライト鉱石の微粒子が、核粒子と微粉(付着粉)をより強固に付着させる。このとき、ピソライトの配合量が増加すれば、分散するピソライト鉱石の微粒子量も増加する。これにより、焼結新原料の全質量に対する配合割合で、25質量%以上、80質量%以下のピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理が可能となり、より強固で良質な擬似粒子を造ることができる。
よって、上記の構成によれば、結晶水含有量が多く、難造粒性のピソライト鉱石を多量に配合しても、その造粒性を低下することなく、さらには造粒性を向上する焼結原料の事前処理ができ、焼結機の生産効率を高め、焼結鉱の製造コストを格段に低減できる。
さらに、上記の造粒方法によれば、安価でかつ資源的にも豊富なピソライト鉱石を焼結原料として多量に使用することによる将来的な原料の安定供給および経済的メリットが得られる。
本発明のピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理方法において、上記カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物は、上記カルボキシル基及び/またはその塩含有単量体を必須とする単量体組成で重合してなる高分子化合物であってもよい。
上記カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物は、結晶水を多く含有するピソライト鉱石と良く親和する。そのため、通常の鉱石よりも効率よく造粒することが可能であると考えられる。また、上記高分子化合物は、鉄鉱石を含有するクレー等の脈石の微粉を分散する効果を有するために、該微粉の凝集物を破壊し、本来該凝集物に吸収され、造粒に寄与できない水を有効に使用することが可能である。従って、操業上の理由によって造粒時に添加する水分を増加できないような状況下、あるいは、従来の水分量よりも低水分量の状況下においても、造粒性を向上させることが可能である。
本発明のピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理方法において、上記単量体組成は、カルボキシル基及び/またはその塩含有単量体を30モル%以上含むことが好ましい。
これによれば、上記カルボキシル基含有単量体を30モル%以上含む単量体組成で重合してなる高分子は、結晶水を多く含有するピソライト鉱石と良く親和する。そのため、通常の鉱石よりも効率よく造粒することが可能であると考えられる。また、上記高分子化合物は、鉄鉱石を含有するクレー等の脈石の微粉を分散する効果を有するために、該微粉の凝集物を破壊し、本来該凝集物に吸収され、造粒に寄与できない水を有効に使用することが可能である。従って、操業上の理由によって造粒時に添加する水分を増加できないような状況下、あるいは、従来の水分より低水分量の状況下においても、造粒性をより向上させることが可能である。
本発明のピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理方法において、上記造粒処理剤および、平均粒径200μm以下の微粒子を添加することが好ましい。すなわち、上記造粒処理剤と平均粒径200μm以下の微粒子を併用することが好ましい。
例えば、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を含む造粒処理剤および、フライアッシュを加えることで、後述の実施例3にも示されるように、得られる擬似粒子のGI指数を効果的に向上させることができ、生産効率の一層の向上につながる。
本発明のピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理方法は、以上のように、ピソライト鉱石を含む製鉄用焼結原料の造粒処理方法において、焼結原料中に含まれる焼結新原料の全質量に対する配合割合で25質量%以上80質量%以下のピソライト鉱石を含む製鉄用焼結原料に、カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物、酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、スルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物を含む造粒処理剤を、上記製鉄用焼結原料の全質量に対する固形分換算での添加割合で、0.001質量%以上1質量%以下の範囲で添加して造粒することを特徴としている。
これによれば、カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物、酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、スルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物と、結晶水を多く含有するピソライト鉱石とが良く親和する。そのため、通常の鉱石よりも効率よく造粒することが可能であると考えられる。また、上記高分子化合物は、鉄鉱石を含有するクレー等の脈石の微粉を分散する効果を有するために、該微粉の凝集物を破壊し、本来該凝集物に吸収され、造粒に寄与できない水を有効に使用することが可能である。従って、操業上の理由によって造粒時に添加する水分を増加できないような状況下、あるいは、従来の水分量よりも低水分量の状況下においても、造粒性を向上させることが可能である。
さらに、上記化合物の存在により、良好に分散したピソライト鉱石の微粒子が、核粒子と微粉(付着粉)をより強固に付着させる。このとき、ピソライトの配合量が増加すれば、分散する微粒子量も増加する。これにより、焼結新原料の全質量に対する割合で、25質量%以上、80質量%以下のピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理が可能となり、より強固で良質な擬似粒子を得ることができる。
本発明のピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理方法において、上記カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物は、上記カルボキシル基及び/またはその塩含有単量体を必須とする単量体組成で重合してなる高分子化合物であってもよい。
上記カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物は、ピソライト鉱石中の結晶水と良く親和する。そのため、操業上の理由によって、造粒時に添加する水分を増加できないような状況下、あるいは、従来の水分量よりも低水分量の状況下においても、より効率よく造粒を行うことができるという効果を奏する。
本発明のピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理方法において、上記単量体組成は、カルボキシル基及び/またはその塩含有単量体を30モル%以上含むことが好ましい。
これによれば、上記カルボキシル基含有単量体を30モル%以上含む単量体組成で重合してなる高分子は、ピソライト鉱石中の結晶水と良く親和する。そのため、操業上の理由によって、造粒時に添加する水分を増加できないような状況下、あるいは、従来の水分量よりも低水分量の状況下においても、結晶水を多く含有するピソライト鉱石と良く親和するため、さらに効率よく造粒を行うことができるという効果を奏する。
そのため、通常の鉱石よりも効率よく造粒することが可能であると考えられる。また、上記高分子化合物は、鉄鉱石を含有するクレー等の脈石の微粉を分散する効果を有するために、該微粉の凝集物を破壊し、本来該凝集物に吸収され、造粒に寄与できない水を有効に使用することが可能である。従って、操業上の理由によって造粒時に添加する水分を増加できないような状況下、あるいは、従来の水分量よりも低水分量の状況下においても、造粒性を一層向上させることが可能である。
本発明のピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理方法において、平均粒径200μm以下の粒子を添加することが好ましい。すなわち、上記造粒処理剤と平均粒径200μm以下の微粒子を併用することが好ましい。
例えば、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を含む造粒処理剤と、平均粒径200μm以下の微粒子とを併用することで、実施例3にも示されているように、得られる擬似粒子のGI指数を効果的に向上させることができ、生産効率の一層の向上につながる。
以下、本発明を実施するための形態について詳述する。
本発明の製鉄用焼結原料の造粒処理方法においては、焼結原料中の新原料の全質量に対するピソライト鉱石の配合割合を25質量%以上80質量%以下に限定する。本造粒方法においては、カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物、酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、スルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物を含む造粒処理剤を添加することによって、ピソライト鉱石の配合割合が25質量%以上という高い割合であっても、造粒性を高めることができる。それゆえ、焼結機ストランド上の焼結ベッドの通気性を向上させ、焼結機の生産効率を向上させることが可能となる。なお、ピソライト鉱石の配合割合は、すべての焼結新原料を乾燥状態の質量換算で計算した数値である。
なお、実施例1と比較例とを比較すれば分かるように、ピソライト鉱石の配合割合が16.5質量%の場合(比較例1)よりも、ピソライト鉱石の配合割合がより高い30質量%の場合(実施例1)の方が、造粒性が向上することが確認されている。これは、ピソライト鉱石中の結晶水と本発明の造粒方法において用いられる造粒処理剤との親和性が良く、造粒時に造粒処理剤がピソライト鉱石に効果的に作用するためであると考えられる。即ち、本発明に係るピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理方法は、従来法と比較して、焼結新原料中により高い配合割合でピソライト鉱石を含ませることを特徴とするとともに、上述の造粒処理剤を添加することによって、造粒性を向上させて焼結鉱を効率よく得ることができるという利点を有している。
ところで、一般に焼結原料の造粒処理方法では、造粒された擬似粒子の周りに付着する微分粒子の割合を示すGI指数を、その造粒効果を示す指標として用いることができる。GI指数は、製鉄研究第288号(1976)9頁に開示されている評価方法であるが、このGI指数が大きいほど、核粒子の周りに付着する微粉粒子の割合が多く、焼結機の生産効率を向上させることができる。なお、後述の実施例、比較例では、造粒後の平均粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数(GI−0.25(%))を、各実施例、比較例の造粒方法における焼結原料の生産性の目安としている。GI−0.25(%)は、以下の式で求められる。
GI−0.25(%)=(造粒前の0.25mm以下の原料の比率−造粒後の0.25mm以下の原料の比率)/(造粒前の0.25mm以下の原料の比率)×100
ここで、上記焼結新原料とは、製鉄用焼結原料中で、高炉原料とすることができない焼結鉱粉(例えば、直径5mm以下)である返鉱、および、コークス粉、無鉛炭などの燃料(炭剤)を除いたもののことを意味する。
また、生産される焼結鉱は、焼結新原料中の副原料の添加量により、含有するSi、Ca、Mg等の成分を調整することが必要であるが、成分調整を容易にするために、本発明では、焼結新原料の全質量に対するピソライト鉱石の配合割合(質量%)の上限値について、80質量%と規定している。
しかしながら、後述の実施例2に示されるように、ピソライト鉱石の配合割合が60質量%の場合において、焼結鉱の生産性に十分なGI指数が得られることが確認されているため、焼結鉱の生産率の向上の点からは上記ピソライト鉱石の配合割合(質量%)の上限は、60質量%であることがより好ましい。
一方、焼結新原料の全質量に対するピソライト鉱石の配合割合(質量%)の下限値は、従来よりも高い配合割合で、かつ従来よりも造粒性を向上させることができる値として、25質量%としている。さらに好ましい造粒性を得るためには、30質量%とするのが良い。
なお、焼結新原料中に配合するピソライト鉱石以外の鉄鉱石は、特に限定する必要はなく、具体的には、例えば、ニューマン鉱石、カラジャス鉱石、ハマスレー鉱石、クドレムクペレットフィールド、リオドセ鉱石等を配合することができる。
また、焼結原料中の焼結新原料の全質量に対する上記鉄鉱石の配合量は、通常、50質量%〜80質量%の範囲内であるが、本発明においては特に限定されるものではない。
また、焼結原料には、一般に、上記鉄鉱石および副原料からなる新原料と、炭剤および返鉱が配合される。ここで、副原料としては、具体的には、例えば、石灰石、ドロマイト、転炉スラグなどの含CaO副原料、蛇紋岩、珪岩、かんらん岩などの含SiO2副原料、ダスト類が挙げられる。また、炭剤は、焼結時の燃料として使用され、具体的には、例えば、粉コークス、無鉛炭等が挙げられる。本発明では、これら鉄鉱石、副原料、炭剤の種類は特に限定されるものではない。
なお、上記ピソライト鉱石として、より具体的には、ローブリバー鉱石や、ヤンディー鉱石などを挙げることができる。
本発明の製鉄用焼結原料の造粒処理方法において、上記のピソライト鉱石を含む製鉄用焼結原料に添加する造粒処理剤を、カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物、酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、スルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物からなる群(以下、「高分子化合物群A」という)より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物を含むものに限定し、かつ、上記焼結原料の全質量に対する上記造粒処理剤の添加量を、造粒処理剤の固形分換算で0.001質量%以上1質量%以下の範囲に限定する。
上記焼結原料の全質量に対する上記造粒処理剤の添加量を、造粒処理剤の固形分換算で0.001質量%未満とした場合、造粒性の向上効果が十分に得られないことがある。
一方、焼結原料の全質量に対する造粒処理剤の添加量を造粒処理剤の固形分換算で、1質量%を超えて造粒処理剤を添加すると、造粒過多となって適正な擬似粒子の形成を阻害し、焼結時の燃料となるコークス粉などの炭剤を内装した焼結原料の塊となってしまい、炭剤の燃焼を阻害し焼結されなくなる等の悪影響が生じる。したがって、本発明では、焼結原料の全質量に対する造粒処理剤の添加割合の上限を1質量%に限定する。さらに好ましくは0.5質量%とするのがよい。
なお、造粒処理剤の添加量の下限値は、焼結原料の鉱石の造粒性や、水分添加量、使用する造粒機等によっても左右されるが、経済性の観点からは、できるだけ少量となるように設計することが望ましい。
上記造粒処理剤に含有される高分子化合物群Aの割合は、100%でも構わないが、該造粒処理剤には水が含有されていることが好ましい。上記造粒処理剤における好ましい水の含有量は、30質量%以上、99.99質量%以下である。それゆえ、上記造粒処理剤に含有される高分子化合物群Aの割合は、上記造粒処理剤に対し、0.01質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。運搬時や保管時のコストを減らすために、この高分子化合物群Aの割合は、できるだけ高濃度にする方が好ましい。一方、造粒時に添加する際、高分子化合物を均一に分散し易くし、造粒性の向上効果を高めるためには、この高分子化合物群Aの割合は、できるだけ低濃度にする方が好ましい。従って、上記高分子化合物群Aの割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上の濃度で運搬、保管を行った後、造粒時に添加する場合に添加水と混合し、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%未満に希釈して用いることが好ましい。上記造粒処理剤を添加水で希釈する際に、スタティックミキサー等のラインミキサーを使用し、連続的に希釈することが作業性の観点から最も好ましい。
上記本発明の造粒処理剤のうち、カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物は、例えば、カルボキシル基及び/またはその塩含有単量体を単独で、あるいは、該カルボキシル基及び/またはその塩含有単量体と共重合可能なその他の単量体をさらに含む単量体組成で、重合開始剤の存在下で(共)重合することにより得ることができる。
上記カルボキシル基及び/またはその塩含有単量体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、アクリルアミドグリコール酸およびこれらの塩等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらカルボキシル基含有単量体は、一種類のみを用いてもよく、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。上記例示のカルボキシル基含有単量体のなかでも、マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびこれらの塩がより好ましく、アクリル酸、およびアクリル酸の塩が特に好ましい。
上記カルボキシル基含有単量体としてカルボキシル基含有単量体の塩を使用する場合、その塩基としては、特に限定されるものではないが、カリウムイオン、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウム、1級〜4級アミン等の窒素含有塩基;等が挙げられる。
上記カルボキシル基及び/またはその塩含有含有高分子化合物のなかでも、アクリル酸及び/またはその塩を(共)重合することによって得られるものが、添加量が少なくても効果が得られる傾向にあることからより好ましく、上記カルボキシル基及び/またはその塩含有含有高分子化合物としては、(a)ポリアクリル酸、(b)ポリアクリル酸が含有するカルボキシル基の一部あるいは全部がナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニアからなる群より選ばれる少なくとも一種で中和されたポリアクリル酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリアクリル酸系ポリマーであることがより好ましい。アクリル酸および/またはアクリル酸塩を全単量体に占める割合が、30モル%以上となるように(共)重合することが好ましく、50モル%〜100モル%とすることがより好ましく、70モル%〜100モル%とすることがさらに好ましく、90モル%〜100モル%とすることが最も好ましい。
カルボキシル基及び/またはその塩含有含有高分子化合物は、上記カルボキシル基及び/またはその塩含有含有単量体に由来する構成単位を含むと共に、上記カルボキシル基及び/またはその塩含有含有単量体と共重合可能なその他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。すなわち、上記単量体組成は、カルボキシル基及び/またはその塩含有含有単量体の他に、必要に応じて、該カルボキシル基及び/またはその塩含有含有単量体と共重合可能なその他の単量体を含んでいてもよい。単量体組成がその他の単量体を含む場合においては、該単量体組成は、カルボキシル基及び/またはその塩含有含有単量体を30モル%以上含んでいることがより好ましい。
上記その他の単量体(以下、共重合性単量体と記す)としては、具体的には、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート等の酸性リン酸エステル基含有単量体;ビニルフェノール等の石炭酸系単量体;等の酸基含有単量体、およびその塩、ポリエチレングリコールモノメタアクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコールモノアクリル酸エステル等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル;3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを付加してなるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテル単量体;アリルアルコールにエチレンオキサイドを付加してなるポリエチレングリコールモノエテニルエーテル単量体;無水マレイン酸にポリエチレングリコールを付加してなるマレイン酸ポリエチレングリコールハーフエステル;等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体が挙げられる。上記ポリアルキレングリコール鎖含有単量体のなかでも、エチレンオキサイド換算で5モル以上、100モル以下、好適には10モル以上、100モル以下の鎖長のポリアルキレングリコール鎖を含有する単量体が、入手が容易であり、また、擬似粒化性を向上させる上でより好ましく、また、重合性の面からも良好である。その他の例として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸(N,N−ジメチルアミノエチル)、(メタ)アクリル酸(N,N−ジエチルアミノエチル)、(メタ)アクリル酸アミノエチル等の、炭素数1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の、(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体;酢酸ビニル;スチレン;(メタ)アクリロニトリル;N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基含有単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の、架橋性を有する(メタ)アクリルアミド系単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン等の、加水分解性を有する基がケイ素原子に直結しているシラン系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルアジリジン等のアジリジン基含有単量体;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基含有単量体;(メタ)アクリル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル化物等の、分子内に不飽和基を複数有する多官能(メタ)アクリル酸エステル;メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の、分子内に不飽和基を複数有する多官能(メタ)アクリルアミド;ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート等の、分子内に不飽和基を複数有する多官能アリル化合物;アリル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら共重合可能な単量体は、必要に応じて、一種類を用いてもよく、また、二種類以上を用いてもよい。
さらに、上記単量体を(共)重合する際には、分子量の調節を目的として、連鎖移動剤を添加することもできる。該連鎖移動剤としては、具体的には、例えば、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプト基含有化合物;四塩化炭素;イソプロピルアルコール;トルエン;次亜リン酸ナトリウム;等の化合物が挙げられる。これら連鎖移動剤は、必要に応じて、一種類を用いてもよく、また、二種類以上を用いてもよい。これら連鎖移動剤の使用量は特に限定されるものではない。
カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物は、例えば、上記単量体を(共)重合させることによって得られる。重合方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の重合方法、例えば、水中油型乳化重合法、油中水型乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈澱重合法、溶液重合法、水溶液重合法、塊状重合法等を採用することができる。上記例示の重合方法のなかでも、生産コストの低減並びに安全性等の観点から、水溶液重合法がより好ましい。
重合方法に用いられる重合開始剤は、熱または酸化還元反応によって分解し、ラジカル分子を発生させる化合物であればよい。また、水溶液重合法を採用する場合においては、水溶性を備えた重合開始剤が好ましい。該重合開始剤としては、具体的には、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解性開始剤;過酸化水素およびアスコルビン酸、t−ブチルハイドロパーオキサイドおよびロンガリット、過硫酸カリウムおよび金属塩、過硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素ナトリウム、等の組み合わせからなるレドックス系重合開始剤;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。尚、重合開始剤の使用量は、単量体の組成や重合反応の条件等に応じて適宜設定すればよい。
反応温度や反応時間等の重合条件は、単量体の組成や、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。水溶液重合法を採用する場合における単量体組成物の反応系への供給方法としては、例えば、一括添加法、分割添加法、成分滴下法、パワーフィード法、多段滴下法等を行うことができるが、特に限定されるものではない。重合反応は常圧下、減圧下、加圧下の何れで行ってもよい。
上記カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物の合成に際し、水溶液重合法を採用した場合に得られるポリマー水溶液中に含まれる、上記カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物を含む不揮発分の濃度は、特に限定されるものではないが、70質量%以下であることがより好ましい。不揮発分の濃度が70質量%を越えるポリマー水溶液は、粘度が高くなり、焼結原料と均一に混ざるまでの時間が長くなってしまう。
本発明に係る上記カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物は、「質量平均分子量(重量平均分子量)/数平均分子量」で表される分散度が、1.2以上、12.0以下の範囲内であることが好ましいが、特に限定されるものではない。分散度が1.2未満であると、造粒後の焼結原料の強度が低下する傾向にある。一方、分散度が12.0より大きくても、十分な造粒効果が得られないおそれがある。なお、高分子化合物の数平均分子量及び質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などで測定することができる。
また、上記カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物における数平均分子量は、500以上、20000以下の範囲内であることが好ましいが、特に限定されるものではない。数平均分子量が500未満あるいは20000より大きい場合、十分な造粒効果が得られないおそれがある。また、好ましい質量平均分子量の下限値は1000であり、さらに好ましくは2000であり、最も好ましくは4000である。好ましい質量平均分子量の上限値は500000であり、さらに好ましくは200000であり、最も好ましくは100000である。
また、上記酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物は、例えば、上記ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体と酸基含有単量体を必須成分とする単量体を(共)重合して得ることができる。酸基含有単量体としては、上記カルボキシル基含有単量体、上記スルホン酸基含有単量体、上記酸性リン酸エステル含有単量体、石油酸系単量体が挙げられる。また、その他の成分として、上記共重合性単量体を含んでいてもよい。また、酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物は、例えば、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物存在下で、上記酸基含有単量体を重合することによっても得ることができる。酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物は、カルボキシル基含有高分子化合物と同様の重合方法で得ることができるが、この際に前述した連鎖移動剤や重合開始剤が使用できる。本発明で酸基とは、酸型の構造のもの及び/または酸が中和された構造のものを示す。従って、本発明で酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物とは、酸基の一部あるいは全部が中和されている構造のものを含む。
上記スルホン酸及び/またはその塩含有の高分子化合物は、具体的には、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩等のスルホン酸及び/またはその塩含有単量体を単独で重合した高分子化合物、上述の共重合性単量体(但し、スルホン酸基及び/またはその塩含有単量体は除く)、カルボキシル基及び/またはその塩含有単量体等と共重合した高分子化合物を挙げることができる。
また、その他のスルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物としては、例えば、β−ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、芳香族アミノスルホン酸ポリマー、及び、リグニンスルホン酸またはその変性物などの何れかに属する高分子化合物などを挙げることができる。ここで例示されたスルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物は、従来公知のものを使用することができ、その製造条件等は、特に限定されるものではない。
後述の実施例4には、上記スルホン酸及び/またはその塩含有高分子化合物の一例である、リグニンスルホン酸を用いて、ピソライト鉱石の造粒処理が行われ、ピソライト鉱石を30質量%の配合割合で含む焼結新原料において良好な造粒性を示す造粒処理剤であることが実際に確認されている。
なお、上記スルホン酸基の塩を含有する高分子化合物の場合、その塩基としては、特に限定されるものではないが、カリウムイオン、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウム、1級〜4級アミン等の窒素含有塩基;等が挙げられる。
上記酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、及び上記スルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物(以下、これらを「高分子化合物群B」という)の数平均分子量は300以上、10万以下であることがより好ましい。また、数平均分子量の下限値は500であることがさらに好ましく、上限値は2万であることがさらに好ましい。上記数平均分子量が300未満の場合、擬似粒化性が低下する傾向にあり、10万を超える場合、粘度が高くなりすぎ、上記高分子化合物群Bに属する高分子化合物が、鉄鉱石に十分に廻らなくなり、擬似粒化性が低下するおそれがある。
本発明によれば、ピソライト鉱石を含む焼結原料を造粒処理する際に、上記高分子化合物群Aに属する高分子化合物を含む造粒処理剤を添加する工程を含むことによって、結晶水を多く含有するピソライト鉱石と上記造粒処理剤とが良く親和する。そのため、通常の鉱石よりも効率よく造粒することが可能であると考えられる。また、上記高分子化合物は、鉄鉱石を含有するクレー等の脈石の微粉を分散する効果を有するために、該微粉の凝集物を破壊し、本来該凝集物に吸収され、造粒に寄与できない水を有効に使用することが可能である。従って、操業上の理由によって造粒時に添加する水分を増加できないような状況下、あるいは、従来の水分より低水分量の状況下においても、造粒性を向上させることが可能である。造粒時、造粒物の水分量の範囲は、通常6〜8%であり、好ましくは、6.5〜7.5%である。また、鉄鉱石、特にピソライト鉱の微粒子を良好に分散し、これらが核粒子と微粉(付着粉)をより強固に付着させる役割を果たすため、崩壊しにくい擬似粒子を製造することが可能である。
もちろん、焼結原料だけではなく、ペレット原料(鉄鉱石、副原料、燃料等)に対する事前処理として本発明を用いることができる。その場合、ペレット原料に対する造粒処理剤の添加量は、特に限定されるものではないが、下限値がより好ましくは0.01質量%であり、さらに好ましくは0.03質量%であり、上限値がより好ましくは5質量%であり、さらに好ましくは1質量%である。5質量%を超えて造粒処理剤を添加すると、造粒過多となってペレット原料の大きな塊ができてしまい、該ペレット原料の粒径のバラツキが大きくなる等の悪影響が出てしまう。また、使用する造粒処理剤の添加量の下限値は、ペレット原料の造粒性や、水分添加量、使用する造粒機等によって左右されるが、できるだけ少量となるように設計することが望ましい。
さらに、上記造粒処理剤は、上記高分子化合物群Aに属する高分子化合物が有する性能、特に、該高分子化合物群Aに属する高分子化合物を、ピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒に用いた場合における擬似粒化性の向上効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて、他の成分、例えば生石灰等の従来公知の、他の造粒添加剤等と併用しても構わない。
さらに、上記高分子化合物群Aに属する高分子化合物が有する造粒性の向上効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、平均粒径200μm以下の微粉を併用してもよい。適当な微粉として、炭酸カルシウム、カオリンクレー、ベントナイト、製鉄所内で発生するダスト、フライアッシュ、シリカフューム、無水石膏、ドロマイト、ペレットフィード等の鉄鉱石、鉄粉等が挙げられる。上記カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物としてポリアクリル酸ナトリウムが使用される場合、上記微粉の中でも、炭カル、カオリンクレー、フライアッシュ、シリカフュームを用いることが好ましい。これによって、造粒物の強度が増し、焼結ベッド等で崩壊するのを抑制することができる。該微粉の好ましい使用量は、0.1%以上、5%以下であり、より好ましい使用量は、0.2%以上、2%以下である。
本発明では、返し鉱やダスト等から混入する生石灰により、高分子化合物Aによる優れた造粒性向上効果が低下することがある。このような場合は、ソーダ石灰や二酸化炭素を併用することが好ましい。より好ましくは、返し鉱および/またはダストをあらかじめソーダ石灰や二酸化炭素等と混合処理してから、他の原料とともに高分子化合物Aの存在下で造粒処理することが好ましい。
本発明は以下に述べる各実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施例にそれぞれ開示された技術手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明
はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例に記載の「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。また、以下に記載の実施例および比較例における焼結原料並びにペレット原料は、全て、絶乾状態のものを使用した。
本実施例、比較例における擬似粒子のGI指数は、下記方法により測定した。
(擬似粒子のGI指数)
造粒操作を行って得られた擬似粒子を80℃のオーブンで1時間乾燥した後、ふるいを用いて分級することにより、その粒度(擬似粒度)を求めた。造粒された擬似粒子のGI指数とは、製鉄研究第288号(1976)9頁に開示されている評価方法の一つであり、核粒子の周りに付着する微粉粒子の割合を示す。この割合が大きいほど、微粉粒子を核粒子の周りに付着させる効果に優れ、焼結機の生産効率を向上させることができる。以下の測定においては、造粒後の粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数を求めた。また、0.25mm以下の擬似粒子のGI指数(擬似粒化指数)は以下の式により計算した。なお、0.25mm以下の擬似粒子のGI指数をGI−0.25(%)と称する。
GI−0.25(%)=(造粒前の0.25mm以下の原料の比率−造粒後の0.25mm以下の原料の比率)/(造粒前の0.25mm以下の原料の比率)×100
また、ポリマー水溶液中のポリマーの質量平均分子量測定には、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算を用いた。
〔実施例1〕
実施例1においては、表2に示す配合割合で焼結新原料中にピソライト鉱石を含有する製鉄用焼結原料を調製した。本実施例においては、焼結新原料の全質量に対するピソライト鉱石の配合割合は30質量%である。ピソライト鉱石としては、ローブリバー粉鉱を使用した。
また、本実施例においては、造粒処理剤として質量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム(PSA)を用いた。ポリアクリル酸ナトリウム(PSA)は、特開平11−31511号公報に記載の方法に基づいて作製された。
上記の製鉄用焼結原料70000部をドラムミキサーに投入し、回転速度24min−1で1分間、予備攪拌した。その後、同回転速度で攪拌しながら、該焼結原料に、予め不揮発分0.4%に調製した本実施例にかかる造粒処理剤(1)(ポリアクリル酸ナトリウム水溶液)5250部を霧吹きを用いて約1.5分間かけて噴霧して添加した。焼結原料に対するカルボキシル基含有高分子化合物の割合は0.03%であった。噴霧後、さらに同回転速度で3分間攪拌することにより、造粒処理(擬似粒化)を行った。
得られたそれぞれの擬似粒子に含まれる水分を測定すると共に、該擬似粒子を乾燥後、ふるいを用いて分級することにより、造粒後の粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数を求めた。これらの結果をまとめて表5に示す。
〔実施例2〕
実施例2においては、表3に示す配合割合で焼結新原料中にピソライト鉱石を含有する製鉄用焼結原料を調製した。本実施例においては、焼結新原料の全質量に対するピソライト鉱石の配合割合は60質量%である。ピソライト鉱石としては、ローブリバー粉鉱を使用した。
また、本実施例においては、造粒処理剤として、実施例1において使用したものと同じ造粒処理剤(1)を用いて、実施例1と同様の操作により造粒を行った。得られた擬似粒子をふるいを用いて分級することにより、造粒後の粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数を求めた。これらの結果をまとめて表5に示す。
〔実施例3〕
実施例3では、実施例1と同様、焼結新原料の全質量に対する配合割合が30質量%となるようにピソライト鉱石が含有された、表2に示すような製鉄用焼結原料を調製した。ピソライト鉱石としては、ローブリバー粉鉱を使用した。
また、本実施例においては、造粒処理剤として、実施例1において使用したものと同じ造粒処理剤(1)を用いることに加えて、製鉄用焼結原料に予め350部のフライアッシュを添加しておいた後、実施例1と同様の操作で造粒を行った。得られた擬似粒子をふるいを用いて分級することにより、造粒後の粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数を求めた。これらの結果をまとめて表5に示す。
〔実施例4〕
実施例4では、実施例1と同様、焼結新原料の全質量に対する配合割合が30質量%となるようにピソライト鉱石が含有された、表2に示すような製鉄用焼結原料を調製した。ピソライト鉱石としては、ローブリバー粉鉱を使用した。
また、本実施例においては、造粒処理剤として、実施例1において使用した造粒処理剤(1)に代えて、不揮発分1.3%に調製したリグニンスルホン酸ナトリウム(アルドリッチ製)水溶液5250部(造粒処理剤(2)とする)を使用した。焼結原料に対するカルボキシル基含有高分子化合物の割合は、0.1%であった。そして、実施例1と同様の操作により造粒を行い、得られた擬似粒子をふるいを用いて分級することにより、造粒後の粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数を求めた。これらの結果をまとめて表5に示す。
〔実施例5〕
実施例5においては、先ず以下の方法によって、造粒処理剤を調製した。
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製の反応容器に、イオン交換水1291部と、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを平均50モル付加してなる、ポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテル単量体1812部と、無水マレイン酸188部とを仕込み、反応溶液とした。次いで、この反応溶液を60℃に昇温した。
続いて、この反応溶液に、「NC−32W」(商品名;日宝化学社製、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩の87%濃度品)の15%水溶液50部を加えて7時間攪拌し、さらに温度を80℃まで上昇した後、1時間攪拌して重合反応を完結させた。その後、この反応液を30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、質量平均分子量が26200、不揮発分の濃度が55.1%であるポリマー水溶液を得た。
このようにして得られたポリマー水溶液を、本実施例においては造粒処理剤(3)として使用した。即ち、本実施例において使用された造粒処理剤(3)は、酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物である。なお、本実施例では、得られたポリマー水溶液を固形分換算で35部となるように採取し、これをイオン交換水で希釈し、5250部にして使用した。焼結原料に対するカルボキシル基含有高分子化合物の割合は、0.05%であった。
その後、この造粒処理剤(3)を用いて実施例1と同様の操作により造粒を行い、得られた擬似粒子をふるいを用いて分級することにより、造粒後の粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数を求めた。これらの結果をまとめて表5に示す。
〔実施例6〕
実施例6では、実施例1における、予め不揮発分0.4%に調製した質量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(造粒処理剤(1))5250部に代えて、予め不揮発分0.8%に調製した質量平均分子量50000のポリアクリル酸ナトリウム水溶液5250部(造粒処理剤(4)とする)を使用した。それ以外は実施例1と同様にして擬似粒子のGI指数を求めた。焼結原料に退位するカルボキシル基含有高分子化合物の割合は、0.06%であった。これらの結果をまとめて表5に示す。上記の質量平均分子量50000のポリアクリル酸ナトリウムは、特許文献3に記載の方法に基づいて作製された。
続いて、比較例を以下に記載する。
〔比較例1〕
比較例1においては、表4に示す配合割合で焼結新原料中にピソライト鉱石を含有する製鉄用焼結原料を調製した。本比較例においては、焼結新原料の全質量に対するピソライト鉱石の配合割合は16.5質量%である。ピソライト鉱石としては、ローブリバー粉鉱を使用した。
本比較例では、上記の製鉄用焼結原料70000部を用いて、実施例1と同様の操作により造粒を行った。すなわち、造粒処理剤としては、実施例1で使用されたものと同じ造粒処理剤(1)を使用した。そして、得られた擬似粒子をふるいを用いて分級することにより、造粒後の粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数を求めた。これらの結果をまとめて表5に示す。
〔比較例2〕
比較例2では、生石灰(CaO)840部と水5600部とを併用し、これを比較用の造粒処理剤(a)として、実施例1の造粒処理剤(1)5250部の代わりに用いる他は実施例1と同様にして造粒を行った。次いで、実施例1と同様の操作により、得られた擬似粒子をふるいを用いて分級することにより、造粒後の粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数を求めた。これらの結果をまとめて表5に示す。
〔比較例3〕
比較例3では、不揮発分5%に調製した砂糖水溶液5526部とし、これを比較用の造粒処理剤(b)として、実施例1の造粒処理剤(1)5250部の代わりに用いる他は実施例1と同様にして造粒を行った。次いで、実施例1と同様の操作により、得られた擬似粒子をふるいを用いて分級することにより、造粒後の粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数を求めた。これらの結果をまとめて表5に示す。
〔比較例4〕
比較例4においては、表4に示す配合割合で焼結新原料中にピソライト鉱石を含有する製鉄用焼結原料を調製した。本比較例においては、焼結新原料の全質量に対するピソライト鉱石の配合割合は16.5質量%である。ピソライト鉱石としては、ローブリバー粉鉱を使用した。
本比較例においては、実施例4で使用した造粒処理剤を使用し、配合を変えた以外は実施例4と同様にして、擬似粒子のGI指数を求めた。これらの結果をまとめて表5に示す。
〔比較例5〕
比較例5においては、実施例1における、予め不揮発分0.4%に調製した質量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(造粒処理剤(1))5250部に代えて、予め不揮発分0.005%に調製した質量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム水溶液5250部(造粒処理剤(c)とする)を使用した。それ以外は実施例1と同様にして擬似粒子のGI指数を求めた。焼結原料に退位するカルボキシル基含有高分子化合物の割合は、0.0004%であった。これらの結果をまとめて表5に示す。
〔比較例6〕
比較例6においては、実施例1における、予め不揮発分0.4%に調製した質量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(造粒処理剤(1))5250部に代えて、予め不揮発分13.8%に調製した質量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム水溶液6090部(造粒処理剤(d)とする)を使用した。それ以外は実施例1と同様にして造粒処理を開始したところ、ドラムミキサーへの造粒物の付着が激しく、造粒処理は不可であった。これらの結果をまとめて表5に示す。
上記実施例1〜6および比較例1〜6で得られた擬似粒子のGI指数を表5にまとめた。
表5に示すように、高分子化合物Aを含む造粒処理剤以外の従来の造粒処理剤を使用し、ピソライト鉱石が、焼結新原料の全質量に対する配合割合で25質量%以上、80質量%以下となるように製鉄用焼結原料の配合を行った系(比較例2、3)では、GI指数が60%台と低い値になっているのに対し、本発明にかかる造粒処理方法、すなわち、カルボキシル基及び/またはその塩含有高分子化合物、酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、スルホン酸基及び/またはその塩含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物(高分子化合物A)を含む造粒処理剤を使用し、ピソライト鉱石が焼結新原料の全質量に対する配合割合で25質量%以上、80質量%以下となるように製鉄用焼結原料の配合を行った系(実施例1〜6)においては、GI指数がいずれも90%台という高い値を示し、焼結原料の造粒性を大きく向上させることができることが分かる。
また、高分子化合物Aを含む造粒処理剤を使用した場合でも、その添加割合が0.001質量%以上、1質量%以下の範囲を逸脱する系(比較例5、6)においては、GI指数が60%台と低い値になることが確認された。
この結果から、本発明に係る造粒処理方法を用いて、ピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒処理を行うと、造粒性が著しく向上することから、生産効率が向上する。また、実施例1と比較例1との結果(GI指数)を比較すると、ピソライト鉱石の焼結新原料の全質量に対する配合割合が、従来の16.5%よりも、本発明に係る30質量%と多い方が、焼結原料の造粒性がむしろ向上し、良質な焼結鉱を得ることができることがわかった。これは、造粒時に、本発明の造粒処理方法における造粒処理剤と、ピソライト鉱石中に多く含まれる結晶水とが、良く親和し、剤が効果的に作用するためであると考えられる。
この結果から、本発明におけるピソライト鉱石と造粒処理剤との組合せは、造粒性向上の観点から相性が良いと言える。このことはまた、本発明に係る造粒処理方法において規定されている造粒処理剤を用いて、ピソライト鉱石を含む焼結原料の造粒を行った、比較例2、3の結果からも考察することができる。
本発明によれば、ピソライト鉱石を焼結原料として多量に使用する場合に、特殊な設備を用いた事前造粒等を必要とせずに焼結鉱の製造における成品歩留および生産性を良好に維持できる焼結原料の造粒処理方法を提供することができる。それゆえ、本発明は鉄鋼産業に利用することができる。