JP4133112B2 - 製鉄用原料の造粒処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製鉄用原料の造粒処理方法に関する。より詳しくは、製鉄用原料となる焼結鉱の製造において粉鉄鉱石等を造粒するための製鉄用原料の造粒処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
製鉄工程は、一般に鉄鉱石を主成分とする製鉄用原料を高炉に装入することにより行われている。製鉄用原料となる鉄鉱石には、塊鉄鉱石と粉鉄鉱石とがあり、このうち5mm以下の粉鉄鉱石が世界で産出される鉄鉱石の約60%を占めているが、このような粉鉄鉱石をそのまま製鉄の高炉に装入すると、通気性の不良や不均一、ガス灰発生量の増加を生じる等、高炉操業に影響を及ぼすこととなる。これらのことから、一般に製鉄工程における高炉装入用原料としては、粉鉄鉱石を塊成化した焼結鉱が用いられている。すなわち現在では、製鉄工程における高炉装入用原料としては焼結鉱が主体である。
【0003】
このような焼結鉱の製造工程においては、鉄鉱石、副原料、燃料等を含む焼結原料を焼結機に特定の高さに充填し、焼結ベッドを形成した後に、表層に点火して焼結工程が行われることとなる。焼結機としては、通常では下方吸引式が採用されている。下方吸引式の焼結機においては、焼結原料の下側から吸引することによって焼結に必要な空気を流通させると共に、焼結原料の上側から下側へ向かって燃料を燃焼させることにより、焼結原料を焼結するようになっている。このため、焼結原料が微粉を多く含んでいると、目詰まりを起こす等して通気性が低下し、燃料であるコークスの燃焼速度が遅くなるので、焼結鉱の生産効率が低下することとなる。
【0004】
そこで焼結原料を焼結させる際の焼結機における通気性を改善するために、焼結原料を造粒して擬似粒子化する等の事前処理が行われている。例えば、焼結原料となる鉄鉱石、副原料、燃料等を混合し、少量の水を添加して造粒機で攪拌する等の造粒操作が行われている。擬似粒子とは、一般的に、0.5mm以下の微粒子が1〜3mmの核粒子に付着している粒子である。このような造粒に際して求められる作用は、微粉粒子が核粒子の周りに付着する擬似粒化性を向上すること、擬似粒子が焼結工程における湿潤帯、乾燥帯等で崩壊しにくくなるようにすること等である。焼結原料をこのように擬似粒子とすることで、焼結機上での焼結原料充填層(焼結ベッド)中の通気性を向上し、焼結工程における生産性向上を図ることができる。
【0005】
このような焼結原料の事前処理において、水だけを用いる造粒操作では、擬似粒化性を向上させる効果が乏しいため、焼結原料に含まれる微粉の量をあまり低減することができない。このために、擬似粒化性を向上させる対策として、焼結原料中に粘結剤としての作用を有する造粒添加剤を添加する方法が提案されている。造粒添加剤としては、例えば、ベントナイト、リグニン亜硫酸塩(パルプ廃液)、澱粉、砂糖、糖蜜、水ガラス、セメント、ゼラチン、コーンスターチ等が検討されているが、現在では、生石灰が広く用いられている。生石灰は、造粒機内での擬似粒子化の促進を図ることができるうえに、焼結工程において、乾燥、加熱する過程で擬似粒子が崩壊することを防止し、焼結層中の均一な風の流れを保つことができるとされている。
【0006】
しかしながら、糖蜜等のバインダーは、一般に比較的高価なものであり、また、生石灰は吸湿しやすく、このとき発熱するため、取り扱いやすいものが求められている。更に、現在使用されている生石灰は、使用量を比較的多くしないと充分な効果が得られないため、コストが上昇することとなる。生石灰を用いる場合には、その使用量を極力減少させて操業しているのが現状である。そして、生石灰を2質量%以上添加しても、その擬似粒化性の向上効果は頭打ちとなる傾向にある。
【0007】
特開昭57−25622号公報には、各種粉鉄鉱石を焼結機により焼結する過程において、原料の事前処理として、原料中の結晶水を含有する褐鉄鉱系鉱石、特定の粒度範囲を主体とする粉鉄鉱、石灰石又は溶剤等の1種以上を0.2mm以下の粒度に微粉砕した後、配合原料を混合、造粒する原料の事前処理による焼結操業法が開示されている。しかしながら、このような焼結操業法においても、焼結鉱の製造において粉鉄鉱石等を造粒する際に、石灰石をバインダーとして有効に利用して擬似粒化性をより向上させるための工夫の余地があった。
【0008】
ところで、焼結原料の事前処理について、特開昭59−50129号公報には、特定濃度の分散剤及び/又は特定濃度の界面活性剤を含有する水を用いる焼結原料の前処理方法に関し、分散剤としては、平均分子量2000〜20000のアクリル酸系重合体、マレイン酸系重合体、スチレンスルホン酸系重合体等が開示されている。また、特開昭61−61630号公報には、平均分子量が500〜300000のマレイン酸重合体等の水溶性高分子化合物を含む焼結鉱製造用粘結剤が開示されている。
【0009】
しかしながら、これらの技術においても焼結原料の擬似粒化性を向上するための工夫の余地があった。すなわち焼結原料を擬似粒子化するためには、造粒添加剤に焼結原料のバインダーとしての作用が要求されることになる。このような要求性能としては、製鉄のコストを抑制するために少量の添加で造粒できて廉価なものであること、輸送時や焼結ベッドの水分凝縮帯で崩壊しないように乾燥後も微粒粉に戻りにくくて焼結強度が落ちにくいこと、焼結鉱の歩留まりをよくして生産効率が向上すること等が挙げられるが、これらの性能をより向上することが求められている。更に、最近では、優良塊鉱の枯渇化と共に、粉鉱石の劣質化も激しく、焼結原料の造粒性が以前よりも悪化している傾向にあることから、焼結原料に含まれる微粉の量を低減させる効果が充分に高く、焼結鉱の生産効率を向上させることができる技術が切望されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、製鉄用原料となる焼結鉱の製造において粉鉄鉱石等の焼結原料を造粒する際のバインダーとなる石灰石の有効成分の割合を高めることにより、焼結原料の造粒に有効である製鉄用原料の造粒処理方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、製鉄用原料を造粒する造粒処理方法について種々検討するうち、粉鉄鉱石等の焼結原料を造粒する際に石灰石をバインダーとして用いる場合には、造粒性を発揮する石灰石の有効成分が1〜10μmの粒子であることを見いだし、更に、この粒子の割合を高めて特定すると、焼結鉱の生産性向上に有効であることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、石灰石をこのように用いる場合において、石灰石の分散剤として、カルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物を併用すると、相乗的に焼結原料の造粒性が向上することも見いだし、本発明に到達したものである。造粒用バインダーとは、通常では水が粉鉄鉱石を造粒する作用を有するため水を加え造粒しているが、水だけでは焼結の際、乾燥すると粉に戻るのでこれを防止して焼結鉱の製造における歩留まり、生産効率の低下を抑制するためのものである。上記高分子化合物は石灰石の分散剤としての効果の他の効果として、通常では粉鉄鉱石の微粉の凝集体が水を吸収して造粒する作用を充分に発揮することができないこととなるが、該高分子化合物を用いると、水を取り込んでいる凝集体を破壊して分散させる作用を発揮し、これにより粉鉄鉱石を造粒する作用を発揮できる水の量が充分となって擬似粒化性が向上し、また、粉鉄鉱石や石灰石を充分に分散させることにより、水が効率よく粉鉄鉱石を造粒する作用を発揮することができることとなる。すなわち通常では造粒用バインダーは、粘結剤としての作用を有するものがよいと考えられていたが、該高分子化合物においては、分散剤としての作用を有することにより造粒用バインダーとしての作用を有することになると考えられる。
すなわち、高分子化合物の造粒性の向上効果と、高分子化合物により1〜10μmの石灰石粒子の分散性を向上し、有効に使用されることにより、得られた擬似粒子が崩壊することを防止する効果がより向上することから、相乗的に焼結鉱の生産性を向上しているものと考えられる。
【0012】
すなわち本発明は、製鉄用原料を造粒処理する工程を含んでなる製鉄用原料の造粒処理方法であって、上記製鉄用原料の造粒処理方法は、全石灰石における1〜10μmの粒子の割合が3〜50質量%となるようにして造粒処理する製鉄用原料の造粒処理方法である。
以下に、本発明を詳述する。
【0013】
本発明の製鉄用原料の造粒処理方法は、製鉄用原料を石灰石により造粒処理することになる。
上記石灰石は、炭酸カルシウムから主に構成される石灰石の成分であって、製鉄用原料を造粒処理する際に製鉄用原料中に含まれることとなる成分である。
本発明においては、全石灰石における1〜10μmの粒子の割合が3〜50質量%となるようにして造粒処理することとなる。すなわち製鉄用原料を造粒処理する際に製鉄用原料中に含まれる石灰石をこのように調整して造粒処理することとなる。なお、製鉄用原料中の石灰石を調整してから造粒処理してもよく、石灰石を調整しながら造粒処理してもよい。
【0014】
上記石灰石の調整において、全石灰石における1〜10μmの粒子の割合が3質量%未満であると、石灰石の有効成分による擬似粒化性が、焼結機上での焼結原料充填層(焼結ベッド)中の通気性を向上し、焼結工程における生産性向上を図ることができるように充分に発揮されず、50質量%を超えると、石灰石をそのように調整しにくく、また、石灰石による擬似粒化性の向上効果は頭打ちとなる傾向にある。好ましくは、4質量%以上であり、また、20質量%以下である。更に好ましくは、5質量%以上であり、また、15質量%以下である。最も好ましくは7質量%以上であり、また、13質量%以下である。なお、全石灰石における1〜10μmの粒子の割合とは、製鉄用原料を造粒処理する際に製鉄用原料中に含まれる全石灰石を100質量%としたときの1〜10μmの粒子の割合(質量%)である。
【0015】
本発明において、上記全石灰石における1〜10μmの粒子の割合は、以下の方法により測定した値を用いることができる。
(粒度分布の測定方法)
2.8mm以上、1〜2.8mm、0.5mm〜1.0mm、0.25mm〜0.5mm、0.25mm以下にふるい分けし、質量を測定することにより、各粒度範囲の石灰石の割合を算出する。
ふるい振とう器はMIC−113−0−02(MARUIN&Co.,LTD)を用い600秒かけて石灰石約300gを分級する。
ふるいはφ200mmの6.5メッシュ、16メッシュ、30メッシュ、60メッシュのものを使用する。
1〜10μmの粒度範囲の石灰石の割合はレーザー回析/散乱式粒度分布測定装置 LA−910(堀場製作所社製)により測定する。測定はフロー式で行い、攪拌モーターの速度は7、循環ポンプの速度は7に設定し、測定前の超音波動作を10分に設定する。分散溶媒には蒸留水を使用し、0.25mm以下にふるい分けした石灰石を測定し、得られた累積ふるい下%のグラフから、1〜10μmの粒度範囲の割合を算出し、全石灰石に対する割合に換算する。
【0016】
本発明の製鉄用原料の造粒処理方法においてはまた、250μm以下の石灰石における1〜10μmの粒子の割合が20〜100質量%であることが好ましい。すなわち250μm以下の石灰石における1〜10μmの粒子の割合が20〜100質量%となるようにして造粒処理することが好ましい。これにより、本発明の作用効果をより充分に発揮することができることになる。より好ましくは、250μm以下の石灰石における1〜10μmの粒子の割合が25質量%以上であり、また、70質量%以下である。
【0017】
上記製鉄用原料における石灰石の含有量としては、製鉄用原料100質量%に対して10質量%以上であることが好ましく、また、25質量%以下であることが好ましい。10質量%未満であると、カルシウム成分の低下により、溶融同化が進まず、成品歩留の低下から、生産性が低下するおそれがあり、25質量%以上であると、スラグ等の副生成物が多くなり、やはり生産性が低下するおそれがある。より好ましくは、12質量%以上であり、また、20質量%以下である。
【0018】
本発明において、石灰石を上記のように調整する方法としては、石灰石を含む製鉄用原料の粉砕を行うことによる方法、製鉄用原料に石灰石の微粉の添加を行うことによる方法が好適である。また、これらを適宜組み合わせて行ってもよい。粉砕の方法としては、ロッドミル、ボールミル等の粉砕機を用いて行うことができる。
【0019】
本発明の製鉄用原料の造粒処理方法はまた、カルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物を必須成分とする製鉄用造粒処理剤を製鉄用原料に添加して造粒処理することが好ましい。上記製鉄用造粒処理剤は、造粒処理する際に製鉄用原料に含まれることになればよく、製鉄用原料中の石灰石を調整する前や後に添加してもよく、調整しながら添加してもよい。これにより、石灰石をバインダーとして有効に利用して擬似粒化性を向上させることと相まって、本発明の作用効果をより発揮することが可能となる。なお、カルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物は、1種用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0020】
上記カルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物としては、特に限定されないが、好ましくはカルボキシル基及び/又はその塩を有する単量体を必須とする単量体成分を重合することにより得ることができるが、重合体を形成することになる単量体成分を構成する全単量体100mol%中、カルボキシル基及び/又はその塩を有する単量体の含有量が10mol%以上であることが好ましい。10mol%未満であると、造粒効果が不充分となるおそれがある。より好ましくは、50mol%以上であり、更に好ましくは、75mol%以上であり、最も好ましくは、90mol%以上である。
【0021】
本発明におけるカルボキシル基及び/又はその塩を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、アクリルアミドグリコール酸等のカルボキシル基を有する単量体やその塩が好適である。これらの中でも、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩が好ましく、より好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩である。また、塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミシ塩が好適である。これらの中でも、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0022】
上記単量体成分は、必要に応じてカルボキシル基及び/又はその塩を有する単量体と共重合可能な他の共重合性単量体1種又は2種以上を含んでいてもよい。
他の共重合性単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホ基を有する単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート等の酸性リン酸エステル基を有する単量体;ビニルフェノール等の石炭酸系単量体等の酸基を有する単量体、及び、その塩が挙げられる。
【0023】
上記他の共重合性単量体としてはまた、ポリエチレングリコールモノメタアクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコールモノアクリル酸エステル等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル;3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを付加してなるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテル単量体;アリルアルコールにエチレンオキサイドを付加してなるポリエチレングリコールモノエテニルエーテル単量体;無水マレイン酸にポリエチレングリコールを付加させたマレイン酸ポリエチレングリコールハーフエステル等のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体が挙げられる。これらのポリアルキレングリコール鎖を有する単量体の中でも、エチレンオキサイド換算で5mol以上、100mol以下の鎖長のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体が、入手が容易であり、また、擬似粒化性の向上、重合性の点から好ましい。より好ましくは、エチレンオキサイド換算で10mol以上、また、100mol以下の鎖長のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体である。
【0024】
上記他の共重合性単量体としては、上述したものの他にも、下記の化合物を用いることができる。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸(N,N−ジメチルアミノエチル)、(メタ)アクリル酸(N,N−ジエチルアミノエチル)、(メタ)アクリル酸アミノエチル等炭素数1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基含有単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の架橋性を有する(メタ)アクリルアミド系単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン等の加水分解性を有する基がケイ素原子に直結しているシラン系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基を有する単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルアジリジン等のアジリジン基を有する単量体;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基を有する単量体;(メタ)アクリル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル化物等の分子内に不飽和基を複数有する多官能(メタ)アクリル酸エステル;メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の分子内に不飽和基を複数有する多官能(メタ)アクリルアミド;ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート等の分子内に不飽和基を複数有する多官能アリル化合物;アリル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン等。
【0025】
上記単量体成分を重合する際には、分子量の調節を目的として、連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプト基を有する化合物;四塩化炭素;イソプロピルアルコール;トルエン;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の連鎖移動係数の高い化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量としては、全単量体成分1molに対し、0.005mol以上とすることが好ましく、また、0.15mol以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.01mol以上であり、また、0.1mol以下である。
【0026】
上記単量体成分を重合する方法としては、従来公知の種々の重合法、例えば、水中油型乳化重合法、油中水型乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈澱重合法、溶液重合法、水溶液重合法、塊状重合法等を採用することができる。これらの中でも、重合コスト(生産コスト)の低減及び安全性等の観点から、水溶液重合法が好ましい。
【0027】
上記重合に用いられる重合開始剤としては、熱又は酸化還元反応によって分解し、ラジカル分子を発生させる化合物であればよい。また、水溶液重合法により重合を行う場合には、水溶性を備えた重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス−(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解性開始剤;過酸化水素及びアスコルビン酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド及びロンガリット、過硫酸カリウム及び金属塩、過硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の組み合わせからなるレドックス系重合開始剤が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量としては、単量体成分の組成や重合条件等に応じて適宜設定すればよい。
【0028】
上記重合における反応温度や反応時間等の重合条件としては、単量体成分の組成や、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、反応温度としては、0〜150℃とすることが好ましく、40〜105℃とすることがより好ましい。また、反応時間としては、3〜15時間程度が好適である。水溶液重合法により重合を行う場合における単量体成分の反応系への供給方法としては、一括添加法、分割添加法、成分滴下法、パワーフィード法、多段滴下法により行うことができる。また、重合は常圧下、減圧下、加圧下の何れで行ってもよい。
【0029】
上記高分子化合物の製造において、水溶液重合法を採用した場合に得られる重合体水溶液中に含まれる、高分子化合物を含む不揮発分の濃度としては、70質量%以下であることが好ましい。70質量%を超えると、粘度が高くなり過ぎるおそれがある。
【0030】
本発明におけるカルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物としては、重量平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。重量平均分子量が1000未満であると、分散剤としての作用が低下するおそれがある。1000000を超えると、高分子化合物の粘度が高くなり過ぎて分散剤としての作用が充分に発揮されるように添加しにくいものとなるおそれがある。より好ましくは、3000以上であり、また、100000以下である。なお、本明細書中、重量平均分子量は、以下の測定条件で測定される値である。
【0031】
(重量平均分子量測定条件)
カラム:水系GPCカラム「GF−7MHQ」(商品名、昭和電工社製)
キャリア液:リン酸水素二ナトリウム十二水和物34.5g及びリン酸二水素ナトリウム二水和物46.2gに超純水を加えて全量を5000gとする。
水溶液流速:0.5ml/min
ポンプ:「L−7110」(商品名、日立製作所社製)
検出器:紫外線(UV)検出器「L−7400」(商品名、日立製作所社製)、波長214nm
分子量標準サンプル:ポリアクリル酸ナトリウム(創和科学社より入手可能な重量平均分子量1300〜1360000のポリアクリル酸ナトリウム)
分析サンプルは、高分子化合物が固形分で0.1質量%となるように上記キャリア液で希釈することにより調整した。
【0032】
上記カルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物としてはまた、分散度が12以下であることが好ましい。分散度が12を超えると、粉鉄鉱石を分散する作用が小さくなることに起因して、擬似粒子化させる作用が低下する傾向にある。より好ましくは、8以下である。なお、分散度とは、重量平均分子量/数平均分子量で算出される値であり、分子量分布を表すものである。数平均分子量は、重量平均分子量と同様の方法で測定される。
【0033】
上記製造方法により得られるカルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物を含む生成物は、そのまま本発明における製鉄用造粒処理剤として用いることができるものであるが、必要に応じて水や生石灰等の従来公知の造粒添加剤等の他の成分1種又は2種以上を添加してもよい。
【0034】
上記カルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物を必須成分とする製鉄用造粒処理剤を用いる製鉄用原料の造粒処理方法は、製鉄用原料となる焼結鉱の製造において粉鉄鉱石等を造粒(擬似粒化)する作用に優れ、製鉄用原料を造粒する際に効率よく造粒することができるものである。また、製鉄用原料となるペレットを製造する場合においても、粉鉄鉱石等をペレット化する作用に優れ、製鉄用原料を造粒する際に効率よく造粒(ペレット化)することができるものである。
【0035】
本発明の製鉄用原料の造粒処理方法により微粉の鉄鉱石を含む焼結原料やペレット原料等の製鉄用原料を造粒(擬似粒化又はペレット化)処理する際に製鉄用造粒処理剤を添加する場合その使用量としては、焼結原料の鉱石(鉄鉱石)の造粒性(種類)や、カルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物の種類、使用する装置の種類等に応じて適宜設定すればよいが、擬似粒化する場合には、焼結原料(鉄鉱石、副原料、燃料等)100重量部に対してカルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物が0.001重量部以上となるようにすることが好ましく、また、2重量部以下となるようにすることが好ましい。0.001重量部未満であると、本発明の作用効果を充分に発揮することができなくなるおそれがあり、2重量部を超えると、焼結原料に対するカルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物の添加量が多くなりすぎ、焼結原料の大きな固まりができ、該焼結原料の固まり内部が焼結されなくなる等の問題が生じるおそれがある。より好ましくは、焼結原料100重量部に対するカルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物が0.005重量部以上となるようにすることであり、また、1重量部以下となるようにすることである。また、ペレット化する場合には、ペレット原料(鉄鉱石、ダスト、炭材等)100重量部に対してカルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物が0.005重量部以上となるようにすることが好ましく、また、5重量部以下となるようにすることが好ましい。0.005重量部未満であると、本発明の作用効果を充分に発揮することができなくなるおそれがあり、5重量部を超えると、ペレット原料に対するカルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物の添加量が多くなりすぎ、造粒過多となってペレット原料の大きな固まりができてしまい、ペレット原料の粒径のバラツキが大きくなる等の悪影響が生じるおそれがある。より好ましくは、0.01重量部以上であり、また、1重量部以下である。
【0036】
本発明の製鉄用原料の造粒処理方法においては、擬似粒子やペレットの崩れ防止剤として平均粒径0.1〜200μmの微粒子を添加することができる。崩れ防止剤は製鉄用原料100重量部に対し、0.1〜10重量部添加することが好ましい。崩れ防止剤として、フライアッシュ、ベントナイト、カオリンクレー、ドロマイト、シリカフューム、無水石膏等が挙げられ、フライアッシュが特に好ましい。崩れ防止剤の添加方法や添加のタイミングは特に限定されない。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は、「重量部」を、「%」は、「質量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0038】
製鉄用副原料としての石灰石A、石灰石Bを、上記方法により、粒度を測定した結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
〔実施例1〕
石灰石Aの0.25mm以下の部分をボールミルで粉砕して、粒径1〜10μmの部分を表1(A−1)のように調整した。また、分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムを固形分換算で21部となるように採取し、これをイオン交換水で希釈し、5250部にすることにより本発明にかかる製鉄用造粒処理剤(1)を得た。
一方、表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調製した。ここで石灰石は表1に示した石灰石A−1で示されるものを使用した。
【0041】
【表2】
【0042】
上記の焼結原料70000部をドラムミキサーに投入し、回転速度24min-1で1分間、予備攪拌した。その後、同回転速度で攪拌しながら、該焼結原料に、予め調製した本発明にかかる製鉄用造粒処理剤(1)5250部を霧吹きを用いて約1.5分間かけて噴霧した。噴霧後、更に同回転速度で3分間攪拌することにより、造粒操作を行った。
得られた擬似粒子を50kgスケールの鍋試験にて焼結を行い、焼結鉱を得た。該試験の条件は、焼結鍋は直径300mm、高さ600mm、層厚550mmとし、吸引負圧を9.8kPa(一定)とした。得られた焼結鉱の生産率、成品歩留、焼結鉱強度を測定した。これらの結果をまとめて表3に示す。
【0043】
(成品歩留、焼結鉱強度、生産率)
成品歩留は、焼結鍋試験において、焼結後の焼結鉱(シンターケーキ)50kgを2mの高さから鉄板上に5回落下させたときの、粒径5mm以上の粒度を有する粒子の割合を測定することにより評価した。
焼結鉱強度は、以下の強度測定方法(SI:シャッターインデックス)により測定した。焼結鉱強度は、上記成品歩留評価後の焼結鉱(粒径5mm以上の粒子)を粒度分布が変わらないように10kg採取し、2mの高さから更に4回鉄板上に落下させたときの、粒径5〜10mmの粒度を有する粒子の割合を測定することにより評価した。
生産率は、以下の式により算出した。
生産率(t/day/m2)=成品歩留評価後の粒径5mm以上の粒度を有する粒子の総質量(t)/焼結時間(day)/焼結機(鍋)の表面積(m2)
【0044】
〔実施例2〕
石灰石Bの0.25mm以下の部分をボールミルで粉砕して、粒径1〜10μmの部分を表1(B−1)のように調整した。表2において、石灰石を表1に示した石灰石A−1で示されるものの代わりに石灰石B−1を使用した他は、実施例1と同様にして、焼結鉱の生産率、成品歩留、焼結鉱強度を測定した。これらの結果をまとめて表3に示す。
【0045】
〔実施例3〕
石灰石Bの0.25mm以下の部分16.4%の内、6.4%分を粒径1〜10μmの部分の割合が97%である重質炭酸カルシウム ナノックス♯30(商品名、丸尾カルシウム社製)に置き換えた。すなわち、全石灰石に占める、石灰石Bの0.25mm以下の部分に由来する割合は10.0%であり、ナノックス♯30に由来する割合は6.4%である(石灰石B−2)。
表2において、石灰石を表1に示した石灰石A−1で示されるものの代わりに石灰石B−1を使用した他は実施例1と同様にして、焼結鉱の生産率、成品歩留、焼結鉱強度を測定した。これらの結果をまとめて表3に示す。
【0046】
〔参考例1〕
表2において、石灰石を表1に示した石灰石A−1で示されるものの代わりに石灰石Aを使用した他は実施例1と同様にして、焼結鉱の生産率、成品歩留、焼結鉱強度を測定した。これらの結果をまとめて表3に示す。
【0047】
〔参考例2〕
表2において、石灰石を表1に示した石灰石A−1で示されるものの代わりに石灰石Bを使用した他は実施例1と同様にして、焼結鉱の生産率、成品歩留、焼結鉱強度を測定した。これらの結果をまとめて表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】
本発明の製鉄用原料の造粒処理方法は、上述の構成からなり、製鉄用原料となる焼結鉱の製造において粉鉄鉱石等の焼結原料を造粒する際のバインダーとなる石灰石の有効成分の割合を高めることにより、焼結原料の造粒に有効である。
Claims (3)
- 製鉄用原料を造粒処理する工程を含んでなる製鉄用原料の造粒処理方法であって、
該製鉄用原料の造粒処理方法は、全石灰石における1〜10μmの粒子の割合が3〜50質量%となるようにして造粒処理する
ことを特徴とする製鉄用原料の造粒処理方法。 - 前記製鉄用原料の造粒処理方法は、カルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物を必須成分とする製鉄用造粒処理剤を製鉄用原料に添加して造粒処理する
ことを特徴とする請求項1記載の製鉄用原料の造粒処理方法。 - 前記製鉄用原料の造粒処理方法は、250μm以下の石灰石における1〜10μmの粒子の割合が20〜100質量%である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の製鉄用原料の造粒処理方法。
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