JP4189850B2 - 線維化病変組織修復剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コラーゲン線維等の病的な蓄積により生じる疾患に有用な線維化病変組織の修復剤及び線維化病変形成の阻止剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
コラーゲン線維等をはじめとする細胞外マトリックスの発現は創傷治癒や組織の修復過程において重要な役割を果たしていることが知られており、この産生及び分解の代謝調整機構に何らかの病的破綻をきたすとコラーゲン線維等の過剰な蓄積が起こり、肝臓、肺、腎臓及び皮膚などの諸臓器の線維化病変組織の形成を伴う疾患を引き起こすことが知られている。しかしながら、現在に至るまで肝線維症、腎線維症、動脈硬化症及びその他のコラーゲン線維等が病的に蓄積することにより生じる線維化の阻止や修復に有効な薬剤は、5−メチル−1−フェニル−2−(1H)―ピリドンが線維化病変組織の修復並びに線維化病変の阻止剤として特開平2−215719号公報に開示されているが他に有効であるという薬剤はない。
この様な現状から、コラーゲン線維等の過剰な蓄積を伴う病的な線維化病変組織形成の阻止や修復に有効で、且つ生体内で優れた治療効果を示す薬剤の開発が望まれていた。
一方、前記式(I)で示されるピラゾロン誘導体の幾つかは既知化合物であり、本発明で用いたピラゾロン誘導体は、例えば、東京化成工業株式会社、ランカスター、シグマ−アルドリッチ、メイブリッジ、バイオネット、ブットパーク及びICNの各社より購入することも出来る。さらに、例えば特開昭62−108814号公報に過酸化脂質生成抑制剤として開示されているものもあるが、線維化病変組織形成の阻止や線維化病変組織の修復に関する記載はない。そして、本発明で用いた前記式(I)で示されるピラゾロン誘導体には、本発明者らの発見までコラーゲン線維等の過剰な蓄積を伴う病的な線維化病変組織形成の阻止や線維化病変組織の修復に関する作用があることは知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、病的にコラーゲン線維等が蓄積することにより生じる疾患、例えば、肝硬変等の肝線維症、肺線維症、腎線維症、動脈硬化症、全身性硬化症(systemic sclerosis)、前立腺肥大症、ケロイド症、心筋症、膠原病、瘢痕等の患者に対し、優れた線維化病変組織の修復及び線維化病変形成の阻止剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、線維化病変組織の修復及び線維化病変形成の阻止に有効な化合物を鋭意検討した結果、ピラゾロン誘導体にコラーゲンの蓄積を抑制させる作用があることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記一般式(I)で示されるピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する線維化病変組織の修復剤。
【化4】
[式中、
R1が置換基を有するフェニル基であり、R2及びR3は共に水素原子であり、及びR4は低級アルキル基、アルコキシ基又は置換基を有していてもよいアミノ基を表すか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2及びR3はともにハロゲン原子であり、及びR4は低級アルキル基であるか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2及びR3はともに水素原子であり、及びR4は炭素数3〜6の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基であるか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2又はR3の一方が水素原子であり他方が低級アルキル基又はアリールメルカプト基であり、及びR4は低級アルキル基であるか、又は
R1は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、R2及びR3は共に水素原子であり、及びR4は低級アルキル基である。]を提供する。
【0005】
本発明はまた、上記一般式(I)で表されるピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する線維化病変形成の阻止剤を提供する。
本発明はまた、上記一般式(I)で表されるピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する、細胞外マトリックスの蓄積により生じる疾患を予防又は治療するための医薬組成物を提供する。
本発明はまた、上記一般式(I)で表されるピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する、肝硬変、肝線維症、肺線維症、腎線維症、心筋線維症、術後の癒着、動脈硬化症、腎硬化症、全身性硬化症、前立腺肥大症、ケロイド症、心筋症、膠原病、瘢痕、虚血又は呼吸機能不全を予防又は治療するための医薬組成物を提供する。
本発明はまた、上記一般式(I)で表されるピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する、しわの形成を予防するか又は形成されたしわを修復するための化粧料を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本明細書において、低級アルキル基とは、炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基等があげられる。これらの構造異性体もまた含まれる。このうち、メチル基、エチル基、n−プロピル基、t−ブチル基が好ましい。
本明細書において、アルコキシとは、炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルコキシを示す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基等があげられる。このうち、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
本明細書において、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子をいう。このうち、フッ素原子及び塩素原子が好ましい。
【0007】
本明細書において、アリール基とは、炭素数6〜10の芳香族炭化水素環基を示す。具体的には、フェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等があげられる。このうち、フェニル基が好ましい。
本明細書において、ヘテロアリール基とは、O、N及びSから選ばれる1〜3個の複素原子を有する炭素数1〜10の芳香族炭化水素環基を示す。具体的には、ピリジニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、イミダゾーリル基、ピローリル基、チエニル基、ピラジル基、ピラゾリル基、ピロリル基、トリアジル基、フリル基、イソキサゾリル基、イソチアゾリル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、トリアゾール、テトラゾール基等が挙げられる。このうち、複素原子として1又は2個のNを有する炭素数4〜10のヘテロアリール基がより好ましい。特に、ピリジニル基及びトリアゾール基が好ましい。
【0008】
アミノ基の置換基としては、低級アルキル基、低級アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、低級アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基等があげられる。置換アミノ基はまた、置換基が一緒になって環を形成してもよい。このような置換アミノ基としては、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリロ基等があげられる。このうち、メチル基、エチル基、ピロリジノ基が好ましい。
アリール基の置換基としては、低級アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、低級アルコキシ基、置換及び無置換アミノ基、ハロゲノ低級アルキル基、ハロゲノ低級アルコキシ基、シアノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、スルホ基、スルホンアミド基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基等があげられる。このうち、メチル基、ハロゲン原子、ニトロ基好ましい。特に、アリール基がフェニル基のとき、ハロゲン原子、ニトロ基が好ましい。また、アリール基がナフチル基のとき、ハロゲン原子が好ましい。置換位置は特に限定されない。
ヘテロアリール基の置換基としては、低級アルキル基、置換及び無置換アミノ基、ハロゲノ低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、ハロゲノ低級アルコキシ基、ハロゲン原子等があげられる。このうち、低級アルキル基、特にメチル基、アミノ基、ハロゲノ低級アルキル基、特にトリフルオロメチル基が好ましい。置換位置は特に限定されない。
【0009】
また、他に特に記載のない限り、上述の基が他の基に含まれる場合も、上述したのと同じ定義を有する。
さらに、低級アルキル基、低級アルケニル基及びアルコキシ等に含まれる一以上の水素原子はまた上記ハロゲン原子により置換されていてもよい。
さらに、上述した置換基が構造異性を有するとき、それらの異性体もまた含むものとする。
【0010】
一般式(I)において、
R1が置換基を有するフェニル基であり、R2及びR3は共に水素原子であり、及びR4は低級アルキル基を表すか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2及びR3はともにハロゲン原子であり、及びR4は低級アルキル基であるか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2及びR3はともに水素原子であり、及びR4は置換基を有していてもよいアリール基であるか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2又はR3の一方が水素原子であり他方がアリールメルカプト基であり、及びR4は低級アルキル基であるか、又は
R1は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、R2及びR3は共に水素原子であり、及びR4は低級アルキル基である、ピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する線維化病変組織の修復剤が好ましい。
【0011】
以下のピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する線維化病変組織の修復剤もまた好ましい。
【化5】
【0012】
以下のピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する線維化病変組織の修復剤もまた好ましい。
【化6】
【0013】
一般式(I)において、R1が置換基を有するフェニル基の場合、置換基の例としてハロゲン原子及びニトロ基等があげられる。その場合、R2及びR3が共に水素原子であり、及びR4がメチル基、エトキシ基又は置換アミノ基であるのが好ましく、置換アミノ基の例としてはピロリジノ基等があげられる。
また、R1が無置換のフェニル基の場合、R2及びR3が共に塩素原子であり、及びR4がメチル基であるか、あるいはR2及びR3が共に水素原子であり、及びR4がn−プロピル基、t−ブチル基又はフェニル基であるのが好ましい。
また、R1が無置換のフェニル基の場合、R2及びR3の一方が水素原子であり、他方がメチル基又はアリールメルカプト基であり、及びR4がメチル基であるのが好ましい。
R1が置換されていてもよいヘテロアリール基の場合、ヘテロアリール基の例としてピリジニル基及びトリアゾール基等があげられ、置換基としてはメチル基、アミノ基及びトリフルオロメチル基等があげられる。
【0014】
一般式(I)で表される化合物は、各種異性体としても存在する。即ち、一般式(I)で表される化合物には、一あるいは複数の不斉中心を有する場合があり、純粋な光学異性体、部分的に精製されている光学異性体、ラセミ混合物、及び純粋なジアステレオマー、部分的に精製されているジアステレオマー、これらの混合物等のすべてが包含される。また、一般式(I)で表される化合物には、互変異性体等の構造異性体が存在し、かかる構造異性体も本発明の範囲内である。
【0015】
医薬的に許容され得る塩とは、前述の一般式(I)で示される化合物とともに形成される無毒性の塩であれば如何なるものであってもよいが、例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸の付加塩;ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、グリコール酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、メチルマレイン酸塩、フマル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、2−アセトキシ安息香酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩等の有機酸の付加塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ヒドロキシベンゼンスルホン酸塩、ジヒドロキシベンゼンスルホン酸塩等の有機スルホン酸の付加塩;アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸の付加塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機塩基の付加塩;リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸の付加塩等を挙げることができる。また、結晶形以外に、場合によっては水やアルコール等との溶媒和物(水和物も含む)であってもよい。
【0016】
前記一般式(I)で表されるピラゾロン誘導体の幾つかは、例えば東京化成工業株式会社、ランカスター、シグマ−アルドリッチ、メイブリッジ、バイオネット、ブットパーク及びICNの各社より購入することが可能であり、あるいは通常の方法で製造することも出来る。
前記一般式(I)で表される化合物は、後述するように、コラーゲン線維の蓄積を抑制させる作用を有することから、コラーゲン線維等の細胞外マトリックスが蓄積することにより生じる疾患、特に肝硬変、肝線維症、肺線維症、腎線維症、動脈硬化症、全身性硬化症、前立腺肥大症、ケロイド症、心筋症、膠原病、瘢痕、虚血又は呼吸機能不全を予防又は治療するのに有用である。
なお、本発明において、細胞外マトリックスとは、コラーゲン線維等の組織の線維化に関連する線維の総称であり、例えば、コラーゲン類、フィブロネクチン、ラミニンを含むものである。
【0017】
ここで、本発明におけるコラーゲン線維に代表される細胞外マトリックス蓄積抑制作用について説明する。本発明におけるコラーゲン線維蓄積抑制作用とは、後述する実施例より明らかなように、既に蓄積されている既存のコラーゲン線維の量をも、減少させるという点で、単なるコラーゲン線維の合成抑制作用とは異なるものである。コラーゲン線維の蓄積は、コラーゲン線維の産生と分解のバランスによってその蓄積量が決定されるものであることから、本発明におけるコラーゲン線維蓄積抑制作用は、コラーゲン線維の蓄積バランスを負の方向、即ちコラーゲン線維の蓄積量を減少させる方向(生産過少)へ導くものであるといえる。
【0018】
例えば、肝硬変、肺線維症、動脈硬化症、前立腺肥大症、ケロイド症、心筋症、膠原病、瘢痕、しわ等に代表されるような線維化を伴う疾患が形成されるときには、コラーゲン線維の産生系の亢進と共に分解系の抑制が生じることが知られており、この結果、各種臓器中にコラーゲン線維等が蓄積し、線維化病変を引き起こすといわれている。すなわち、各種組織中へのコラーゲン線維等の蓄積において、コラーゲン線維の産生系と分解系のトータルバランスが産生過多になると考えられる。実際に、肝硬変等では正常肝に較べてI型コラーゲンの著名な蓄積が認められ(肝硬変と間質. Biomed Perspect 3, 37-45)、この蓄積に伴いコラーゲン産生系が増加するという報告(Hepatology 22, 573-(1995))等やコラーゲン分解系が抑制されるという報告(Hypertention 38, 1217-(2001))等が多数あり、また、汎発性強皮症患者では皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生系が亢進していると報告(Arthritis Rheum 44, 474-(2000))されている。
【0019】
また、この様に各種組織中にコラーゲン線維が病的に過剰に蓄積することにより、例えば、肝硬変のような肝線維症では肝微小循環傷害による虚血及び肝実質細胞の再生抑制や肺線維症では組織の硬化に伴う呼吸機能不全等やその他各種臓器においても過剰な線維化により機能障害が生じることも知られている。
以上のことより、本発明の化合物におけるコラーゲン線維蓄積抑制作用は、上記に示したような肝硬変、肺線維症、動脈硬化症、前立腺肥大症、ケロイド症、心筋症、膠原病、瘢痕、しわ等に代表されるような線維化を伴う疾患において、コラーゲン線維の産生系と分解系のトータルバランスを病的な産生過多の状態から産生過少の状態へバランスを変化させ、さらに各種臓器で生じていた機能障害をも改善するものである。
【0020】
すなわち、本発明の化合物は、線維化病変組織の修復剤又は線維化病変形成の阻止剤として広く有用であると考えられる。
本発明は前記ピラゾロン誘導体を有効成分とする薬剤であるが、他の有効成分(本発明に使用する有効成分と同一の作用でも、異なる作用でも良い。)を併用使用することもできるし、更に製剤上有用な担体を含むこともできる。この発明においては、前記ピラゾロン誘導体を、線維化病変組織の修復剤又は線維化病変形成の阻止剤として有効量含む薬剤であれば、全て本発明の医薬組成物に含まれる。
本発明の医薬組成物を肝硬変、肝線維症、肺線維症、腎線維症、動脈硬化症、全身性硬化症、前立腺肥大症、ケロイド症、心筋症、膠原病、瘢痕、虚血又は呼吸機能不全等を予防又は治療するための医薬組成物に使用する場合、経口投与、静脈内投与、経皮投与等の投与形態が可能である。
投与量は、疾患の種類及び程度、投与する化合物並びに投与経路、患者(投与対象)の年齢、性別、体重等により適宜選択される。通常は、例えば経口投与の場合好ましくは0.001〜10000mg/kg/日程度を採用すればよい。一方、注射投与などの非経口投与の場合、前記経口投与の場合の1/2から1/100程度が採用される。
【0021】
本発明の式(I)で示されるピラゾロン誘導体を線維化病変組織の修復剤又は線維化病変形成の阻止剤としてヒトに投与する場合、一般式(I)で示される本発明化合物、その異性体、溶媒和物若しくは医薬上許容し得る塩を、通常、それ自体公知の薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤、その他の添加剤等と混合して錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、坐剤、注射剤、点眼剤、液剤、カプセル剤、トローチ剤、エアゾール剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の形態により経口又は非経口的に投与することができる。
【0022】
固体製剤とする場合は、添加剤、たとえば、ショ糖、乳糖、セルロース糖、D−マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン類、寒天、アルギネート類、キチン類、キトサン類、ペクチン類、トランガム類、アラビアゴム類、ゼラチン類、コラーゲン類、カゼイン、アルブミン、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グリセリン、ポリエチレングリコール、炭酸水素ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が用いられる。さらに、錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、たとえば糖衣錠、腸溶性コーティング錠、フィルムコーティング錠あるいは二層錠、多層錠とすることができる。
半固体製剤とする場合は、動植物性油脂(オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマシ油等)、鉱物性油脂(ワセリン、白色ワセリン、固形パラフィン等)、ロウ類(ホホバ油、カルナバロウ、ミツロウ等)、部分合成若しくは全合成グリセリン脂肪酸エステル(ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等)等が用いられる。
【0023】
液体製剤とする場合は、添加剤、たとえば塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、グリセリン、オリーブ油、プロピレングリコール、エチルアルコール等が挙げられる。特に注射剤とする場合は、無菌の水溶液、たとえば生理食塩水、等張液、油性液、たとえばゴマ油、大豆油が用いられる。また、必要により適当な懸濁化剤、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、非イオン性界面活性剤、溶解補助剤、たとえば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。さらに、点眼剤とする場合は水性液剤又は水溶液が用いられ、特に、無菌の注射用水溶液が挙げられる。この点眼用液剤には緩衝剤、等張化剤、溶解補助剤、保存剤、粘稠剤、キレート剤、pH調整剤、芳香剤のような各種添加剤を適宜添加してもよい。
また、本発明は人用医薬としての使用は勿論、動物用医薬としても使用可能である。
【0024】
本発明はまた、しわの形成を予防するか又は形成されたしわを修復するための化粧料に関する。この場合、本発明の化粧料中における一般式(I)で示されるピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容し得る塩の配合量は、特に限定するものではないが、0.001〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%であるのが好ましい。本発明の化粧料は、乳液、クリーム、化粧水、パック、洗浄料等のスキンケア化粧料、口紅、ファンデーション等のメーキャップ化粧料、頭皮用化粧料等として使用することができる。本発明の化粧料を調製する場合、化粧料に通常使用される成分を配合することができる。このような成分としては、油脂類、界面活性剤、香料、防腐剤、含量、紫外線吸収剤及び抗酸化剤等があげられる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら制限するものではない。
実施例1
(1)コラーゲン線維蓄積抑制作用
ヒト線維芽細胞を用い、以下の操作手順に従って細胞中に蓄積する線維コラーゲン量を測定した。
(a)細胞調製及び化合物
ヒト線維芽細胞(HFL−1)は常法に従い継代・維持を行い、測定に用いる細胞は非働化牛胎仔血清含有培地を用い細胞懸濁液を調整した。この懸濁液を96穴平底プレートに蒔き、37℃、5%二酸化炭素条件下で培養することで細胞をプレートに付着させ洗浄を行った後、本発明の有効成分(表1実施例化合物)を溶解させた培地をプレートの各ウエルに添加した。
【0026】
(b)コラーゲン蓄積量の測定
上記(a)のように各種化合物で処置した細胞を洗浄後、常法に従って細胞を固定し、過酸化水素水で細胞を処置後にブロッキングを行った。その後、I型コラーゲンに対する抗体を一次抗体として反応させ、洗浄後にペルオキシダーゼで標識された一次抗体に対する抗体を二次抗体として添加し室温で反応させた。尚、各プレートには一次抗体を添加しない二次抗体のみの群も作製した。また、ペルオキシダーゼの発色反応は、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンを基質に用いる方法で行った。すなわち、上記で作製したプレートを洗浄後、ペルオキシダーゼの基質である3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン溶液を添加することで反応を開始させ、硫酸溶液を添加することでこの反応を停止した。この時の450nmでの吸光度を測定し、薬物非添加群に対する百分率でI型コラーゲン量を算出した。I型コラーゲン線維蓄積抑制の結果をIC60値として表1に要約した。
【0027】
【表1】
【0028】
その結果、薬物非添加群に対して、比較対照薬として用いた5−メチル−1−フェニル−2−(1H)―ピリドン処置群のIC60値は1000μM以上であったが、当発明によるピラゾロン誘導体の有効成分である化合物処置群のいくつかで数10μMのIC60値を示す化合物がいくつか発見できた。
【0029】
実施例2
(2)ラット肝星細胞を用いたコラーゲン線維蓄積抑制作用
Wister系雄性ラット(体重約300g)から常法に従って肝星細胞を単離した。単離した星細胞は常法に従い継代・維持を行い、測定に用いる細胞は非働化牛胎仔血清含有培地を用い細胞懸濁液を調整した。この懸濁液を96穴平底プレートに蒔き、37℃、5%二酸化炭素条件下で培養することで細胞をプレートに付着させ洗浄を行った後、本発明の有効成分(表2実施例化合物)を溶解させた培地をプレートの各ウエルに添加した。そして、細胞に蓄積する線維コラーゲン量は上記(b)で記載した方法により測定した。ラット肝星細胞にコラーゲン線維蓄積抑制の結果をIC60値として表2に要約した。
【0030】
【表2】
【0031】
その結果、今回用いた化合物のIC60値は、化合物(1)や(3)では数10μMを示し、ヒト線維芽細胞を用いた時とほぼ同様の値が測定された。このことから、上記(1)で示したヒト線維芽細胞での結果と本実施例での結果がほぼ一致することから本発明で用いたピラゾロン誘導体には肝線維化病変組織の形成に関与することが知られている肝星細胞を用いた場合にも有効であることが本発明により見出された。
【発明の効果】
本発明の線維化病変組織の修復及び線維化病変形成の阻止剤は、肝硬変、腎硬化症、肝線維症、腎線維症、心筋線維症、肺線維症、術後の癒着、動脈硬化症、全身性硬化症、前立腺肥大症、ケロイド症、心筋症、膠原病、瘢痕、虚血又は呼吸機能不全などの病的で過剰の線維蓄積に起因する疾患の治療に有効である。
Claims (7)
- 下記一般式(I)で示されるピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する線維化病変組織の修復剤。
R1が置換基を有するフェニル基であり、R2及びR3は共に水素原子であり、及びR4は低級アルキル基、アルコキシ基又は置換基を有していてもよいアミノ基を表すか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2及びR3はともにハロゲン原子であり、及びR4は低級アルキル基であるか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2及びR3はともに水素原子であり、及びR4は炭素数3〜6の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基であるか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2又はR3の一方が水素原子であり他方が低級アルキル基又はアリールメルカプト基であり、及びR4は低級アルキル基であるか、又は
R1は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、R2及びR3は共に水素原子であり、及びR4は低級アルキル基である。] - 一般式(I)において、
R1が置換基を有するフェニル基であり、R2及びR3は共に水素原子であり、及びR4は低級アルキル基を表すか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2及びR3はともにハロゲン原子であり、及びR4は低級アルキル基であるか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2及びR3はともに水素原子であり、及びR4は置換基を有していてもよいアリール基であるか、又は
R1が無置換のフェニル基であり、R2又はR3の一方が水素原子であり他方がアリールメルカプト基であり、及びR4は低級アルキル基であるか、又は
R1は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、R2及びR3は共に水素原子であり、及びR4は低級アルキル基である、ピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する請求項1記載の線維化病変組織の修復剤。 - 請求項1〜4いずれか1項記載の一般式(I)で示されるピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する線維化病変形成の阻止剤。
- 請求項1〜4いずれか1項記載のピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する、細胞外マトリックスの蓄積により生じる疾患を予防又は治療するための医薬組成物。
- 請求項1〜4いずれか1項記載のピラゾロン誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する、肝硬変、肝線維症、肺線維症、腎線維症、心筋線維症、術後の癒着、動脈硬化症、腎硬化症、全身性硬化症、前立腺肥大症、ケロイド症、膠原病、瘢痕、虚血又は呼吸機能不全を予防又は治療するための医薬組成物。
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