JP4188045B2 - 重金属固定剤及び重金属固定剤の低温安定化方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、工場排水や、産業廃棄物、都市ゴミの焼却プラントにおいて発生する焼却灰や、焼却プラント等から排ガスと共に排出されバグフィルター等で補集された飛灰、溶融炉から排ガスと共に排出されバグフィルター等で補集された溶融飛灰、重金属汚染土壌等に含まれる重金属を固定し、環境への重金属汚染を防止する重金属固定剤に関し、特に、寒冷地においても重金属を含有する飛灰等の処理を効率よく行うことができる重金属固定剤及びその低温安定化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工場排水や、都市ゴミや産業廃棄物等の焼却プラントから排出される焼却灰や、排煙中からバグフィルター等で補集された飛灰及び溶融飛灰や、重金属汚染土壌等を処理するに際し、焼却灰や、飛灰及び溶融飛灰等に含有される鉛、水銀、クロム、カドミウム等の有害金属の環境への放出を阻止するため、焼却灰、飛灰、溶融飛灰等をセメント固化する方法や、焼却灰、飛灰、溶融飛灰等を酸で処理し重金属を抽出する方法があったが、廃棄物の体積の増加や、酸により抽出した重金属の処理の問題があった。このため、特殊な装置を必要とせず、後処理が不要である重金属固定剤による処理が採用されていた。重金属固定剤として、ジチオカルボキシル基を官能基として有するアミン誘導体の液体キレート剤は、重金属の捕集効果も高く、雨水等に不溶出化することができるため多く用いられており、中でも特にピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液が、好適に用いられることが知られている。(特許文献1を参照)
【0003】
また、ジチオカルボキシル基を有する化合物を主成分とする重金属固定剤で重金属含有飛灰を処理するにあたり、その重金属固定剤にその主成分の0.1〜100モル%のアミンを含有させることを特徴とする重金属固定剤の安定化方法が知られている。(特許文献2を参照)
【0004】
また、このような重金属固定剤として使用されるピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液は、窒素雰囲気下、ピペラジンと水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液を混合し、30〜40℃の範囲で攪拌しながら二硫化炭素を滴下して反応させることにより、高濃度のピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩が含有される水溶液として製造されていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−224560号公報
【特許文献2】
特開平9−1110号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法で製造されたピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液からなる重金属固定剤は、ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩が高濃度、例えば、35重量%以上となると、凝固点が上昇し、低温の寒冷地等で使用する場合には、水溶液自体が凝固してしまうため、保管、貯蔵に特別な装置が必要となり、これを用いた作業にも制約がかかり、コストが高くなるのみならず、煩雑な操作を要する等の問題があり、取り扱いが非常に困難であった。
【0007】
本発明は、凝固点を降下させ、寒冷地においても凝固せず安定な状態を保持できる低温安定性を有する重金属固定剤及び寒冷地においても飛灰等の処理を容易とする重金属固定剤の低温安定化方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液からなる重金属固定剤に、所定量のピペラジン又はポリアミンを含有させることにより、低温において凝固しない重金属固定剤を得ることができ、重金属固定剤の安定化をすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液を主成分とする重金属固定剤において、ピペラジンを主成分に対して0.01〜2.5重量%含有し、低温で凝固しないことを特徴とする重金属固定剤に関し、
(2)ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液を主成分とする重金属固定剤において、ポリアミンを主成分に対して0.01〜4.5重量%含有し、低温で凝固しないことを特徴とする重金属固定剤に関し、
(3)ピペラジン、金属水酸化物、二硫化炭素より製造されるピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液を主成分とする重金属固定剤において、用いる二硫化炭素から算出される理論量より0.01〜24重量%過剰のピペラジンを、金属水酸化物、二硫化炭素と反応させて製造した水溶液を主成分とし、低温で凝固しないことを特徴とする重金属固定剤に関し、
(4)低温が、ピペラジンまたはポリアミンを添加しない状態での凝固点よりも低い温度であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の重金属固定剤、
(5)ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を35重量%以上含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の重金属固定剤に関する。
【0010】
さらに、
(6)ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液を主成分とする重金属固定剤に、ピペラジンを主成分に対して0.01〜2.5重量%を添加することを特徴とする重金属固定剤の低温安定化方法に関し、
(7)ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液を主成分とする重金属固定剤に、ポリアミンを主成分に対して0.01〜4.5重量%を添加することを特徴とする重金属固定剤の低温安定化方法に関し、
(8)用いる二硫化炭素から算出される理論量より0.01〜24重量%過剰のピペラジンと金属水酸化物、二硫化炭素とを反応させて製造した水溶液を主成分として用いることを特徴とする重金属固定剤の低温安定化方法に関し、
(9)低温が、ピペラジンまたはポリアミンを添加しない状態での凝固点よりも低い温度であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の重金属固定剤の低温安定化方法、
(10)ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を35重量%以上含有する重金属固定剤を用いることを特徴とする(6)〜(9)のいずれかに記載の重金属固定剤の低温安定化方法に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の重金属固定剤に使用されるピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩としては、重金属を含有する飛灰等と混合されることにより、塩部分が重金属原子と置換して重金属原子とのキレート錯体を容易に形成し、重金属原子の固定を迅速に、且つ、強固に行ない、固定された重金属原子は雨水等により放出されないものであれば、特に制限されないが、具体的には、ピペラジンビスカルボジチオ酸と、カリウム、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属等との塩を好ましく例示することができる。
【0012】
本発明の重金属固定剤の主成分であるピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液として、ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を製造単離し、さらに水溶液に調製して用いることもできるが、ピペラジン、アルカリ金属水酸化物及び二硫化炭素を水溶液中で混合して得られる水溶液を、必要に応じて過剰の二硫化炭素を除去する操作、pH調製操作等を行い、そのまま用いることもできる。また、主成分となる水溶液には、ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩以外に、例えば、ピペラジンジ−N,−モノカルボジチオ酸塩等の化合物を含んでいてもよい。
【0013】
本発明に使用されるピペラジンは、ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液に溶解されて使用されるものであり、ピペラジン無水物又はピペラジン水和物のいずれも適用することができる。ピペラジン無水物又はピペラジン水和物は固体状態のまま、あるいは水溶液として重金属固定剤に添加されて用いられてもよく、また、融点が低いピペラジン水和物は溶融して液状として重金属固定剤に添加されて用いられてもよい。これらのピペラジンの水溶液は塩基性であり、重金属固定剤の凝固点を下降させると共に、二硫化炭素の発生を抑制する作用を有する。
【0014】
ピペラジンの含有量は、主成分となる水溶液に対して、0.01〜2.5重量%の範囲が好ましい。0.01重量%以下では、凝固点を下げるという低温での安定性にほとんど寄与せず、2.5重量%以上では、逆に凝固点が上昇し、低温での安定性が悪くなる。尚、低温とは、使用時、または保存時において、ピペラジン、またはポリアミンを添加しない状態での凝固点よりも低い温度を意味し、添加する時期は、反応前、反応後は問わない。例えば、35重量%濃度のピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩の場合、−10℃以下においても、安定して保存、使用が可能となる。以下本明細書において、低温とは、同様の意義に用いることとする。
【0015】
本発明に使用されるポリアミンは、ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液に溶解されて使用されるものであり、ピペラジンと同様に、水に易溶であり、その水溶液は塩基性であり、重金属固定剤の凝固点を下降させると共に、二硫化炭素の発生を抑制する作用を有する。ポリアミンは、複数のアミノ基を有するものであれば、特に限定されるものではなく、アミノ基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基のいずれであってもよく、また、ポリアミンとしては、ジアミン、トリアミン、テトラミン等複数のアミノ基を有するものを挙げることができるが、脂肪族アミンが好ましく、脂肪族アミンであれば、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン等も適用することができる。
【0016】
上記ポリアミンとしては、第二級アミノ基を分子内に少なくとも一つもった多価アミンが好適であり、具体的には、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N−ブチルエチレンジアミン、N,N´−ジメチルエチレンジアミン、N,N´−ジエチルエチレンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N´−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、ポリエチレンイミン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N´−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、3,3´−イミノビス(N,N´−ジメチルプロピルアミン)、2,2´−イミノジエタノール等を例示することができる。
【0017】
ポリアミンの含有量は、主成分となる水溶液に対して、0.01〜4.5重量%の範囲が好ましい。0.01重量%以下では、凝固点を下げるという低温での安定性にほとんど寄与せず、4.5重量%以上では、逆に凝固点が上昇し、低温での安定性が悪くなる。
【0018】
本発明の重金属固定剤には、これらのポリアミンやピペラジンに加え、水溶液を塩基性に保持するためのpH調整剤を含有させることができる。pH調整剤が含有されたものは、保存期間中の水素イオン濃度を所定の範囲に保持し、副反応生成物であるチオ炭酸塩等から生じる二硫化炭素の発生を防止することができる。水溶液の水素イオン濃度がpH10以上であれば、空気中の二酸化炭素等が混入することにより水溶液が酸性になっても、また、高温に晒された場合でも、ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩が分解され二硫化炭素が発生することを防止することができ、また、副反応生成物のチオ炭酸塩が水溶液中に存在していても、分解されて二硫化炭素が発生することを抑制することができ、更に、重金属固定処理時においても、二硫化炭素の発生を防止することができる。pH調整剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリを適用することができ、後述するピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩の生成に使用したアルカリ金属の水酸化物と同一のアルカリ金属の水酸化物を好適に使用することもでき、添加量はピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩の0.01から200モル%とすることができる。
【0019】
更に、重金属固定剤は他の物質、例えば、水素イオン濃度を調整するためのアルカリや、酸、また、酸化防止剤、又はメタノールやエタノール等の水溶性有機溶媒等を含有するものであってもよい。
【0020】
本発明の重金属固定剤の製造方法は、通常のピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有した水溶液の製造後に、ピペラジン又はポリアミンをそのまま、あるいは水溶液として、あるいは、低融点であるピペラジン水和物は溶融して液状として添加してもよい。
【0021】
また、ピペラジンの場合に、ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩の製造工程において、使用する二硫化炭素に対して理論計算上必要とされる量よりも過剰に用いて製造することにより、同様に低温において凝固しない重金属固定剤を得ることができる。この場合に過剰量は、必要量に対して0.01〜24重量%の範囲が好ましい。0.01重量%以下では、凝固点を下げるという低温での安定性にほとんど寄与せず、24重量%以上では、逆に凝固点が上昇し、低温での安定性が悪くなる。
【0022】
上記ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液の製造は、加熱溶融したピペラジン水和物、又はピペラジン無水物若しくはピペラジン水和物の水溶液に、アルカリ金属水酸化物及び二硫化炭素を混合して製造することができるが、好ましくは、強アルカリ水溶液からのピペラジンの析出を防止するため、加熱溶融したピペラジン水和物、又はピペラジン無水物若しくはピペラジン水和物の水溶液に、アルカリ金属水酸化物と、二硫化炭素とを交互に、又は、連続して同時に滴下して反応させることが好ましい。上記の反応はpH10以上に調整されて行なわれることが好ましい。
【0023】
反応の終点は、例えば水溶液中に分散されている二硫化炭素の粒が消失した時点を目安としてNMR等で確認して決定される。更に、反応終了後、未反応の二硫化炭素を水溶液から除去するため、窒素によるバブリングを行なうことが望ましい。未反応の二硫化炭素等は、重金属固定剤の加熱や、水素イオン濃度の変動等により水溶液中から分離されるため、当初から除去されていることが望ましい。
【0024】
反応終了後、水溶液をpH10以上にして保存すると、保存期間中に二硫化炭素の発生が抑制できるため好ましい。反応生成物の水溶液をpH10以上として保存するには、金属水酸化物を生成ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩の0.01から200モル%添加することができる。
水溶液中のピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩の濃度は、水に溶解できる濃度であれば特に限定されないが、濃度が低い場合に比して、濃度が高い場合に、ピペラジンまたはポリアミンを添加する効果が高く、特に、35重量%以上の濃度の水溶液が好ましい。
【0025】
本発明の重金属固定剤の低温安定化方法は、ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液を主成分とする重金属固定剤に、ピペラジンまたはポリアミンを添加するものであれば、特に限定されるものではなく、好ましくは、ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を35重量%以上含有する水溶液を主成分として用い、このため、低温で重金属固定剤は凝固せず、液状を維持することができ、重金属固定剤の低温における安定化を図ることができる。
【0026】
本発明の重金属固定剤を使用して飛灰等を処理する方法は、重金属固定剤を飛灰、溶融飛灰、焼却灰、排水、又は重金属含有土壌等の被処理体と混合すればよく、低温においても、重金属固定剤は凝固することがなく液体であり、含有されるピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩が晶析することがなく、常温での処理と同様に処理することができる。即ち、重金属固定剤と被処理体を混合することにより、重金属固定剤に含有されるピペラジンビスカルボジチオ酸が被処理体に含有される重金属と結合し、重金属のキレート錯体が形成され、重金属が高精度に固定され、不溶出化される。
【0027】
重金属固定剤の使用量は、被処理体中に含有される重金属の量によるが、都市ゴミ焼却炉の焼却灰や、排煙灰等であれば、例えば、これらの被処理体の1〜5重量%程度を使用することができる。また、被処理体の形態や、あるいは重金属の含有量により、適宜、重金属固定剤に水を添加して、使用することができる。
【0028】
このような重金属固定剤によって処理される被処理体としては、特に限定されるものではなく、重金属が含有されるものであれば、いずれのものに対しても適用することができ、工場排水や、産業廃棄物、都市ゴミの焼却プラントにおいて発生する焼却灰や、焼却プラントから排ガスと共に排出され電気集塵機で捕集されたEP灰やバグフィルターで捕集された灰分等の飛灰、重金属汚染土壌等が挙げられ、これらに含有される重金属は無機化合物、有機化合物のいずれの形態として存在するものも処理対象とされ、重金属固定剤により被処理体に含有される重金属が容易に固定される。
【0029】
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0030】
【実施例】
実施例1
39重量%濃度のピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸カリウム水溶液100gに、粉末状の無水ピペラジン0.3g、0.5g、1.0g、2.0g、5.0gを添加した後、40℃で加熱溶融して、重金属固定剤を調整した。このように調整した重金属固定剤の凝固点を測定した。その結果を、表1及び図1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
参考例1
攪拌棒、温度計、分液ロート2個を付けた1L4口フラスコに水393g、無水ピペラジン107.5gを仕込み、さらに無水ピペラジン3g(溶液全体に対して0.6重量%相当、理論量の無水ピペラジンに対して2.8重量%過剰(以下、カッコ内の数字は同じ意味を表す。))、5g(1.0重量%、4.7重量%)、10g(2.0重量%、9.3重量%)、20g(4.0重量%、18.6重量%)、50g(10.0重量%、46.5重量%)それぞれ仕込み、溶解後、液温を35℃にしこの後、攪拌下で48%水酸化カリウム水溶液309gと二硫化炭素190gを、表2に示すようにそれぞれ4分割仕込みで交互に添加した。反応温度35℃では、液の粘度の増大もなく攪拌は容易であった。そして、反応液中に二硫化炭素の小粒が消失した後、温度35℃から40℃に上昇させて2時間攪拌して未反応の二硫化炭素を反応させた。この後、残存する微量の二硫化炭素を除去するため、窒素で5分間バブリングした。この反応で得られた合成液の収量は99.2%であった。得られた合成液中のピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウムの含量を測定した結果、39.0重量%であった。これらの重金属固定剤の凝固点を測定した。結果を、表3及び図2に示す。
【0033】
【表2】
表2
【0034】
【表3】
【0035】
実施例2
39重量%濃度のピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸カリウム水溶液100gに、テトラエチレンペンタミン(TEPA)0.3g、0.5g、1.0g、2.0g、5.0gを添加して、重金属固定剤を調整した。このようにして調整した重金属固定剤の凝固点を測定した結果を、表4及び図3に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
以上の結果から、所定範囲濃度のピペラジンまたポリアミンを添加した39重量%ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸カリウム水溶液からなる重金属固定剤の凝固点は、無添加の重金属固定剤の凝固点より低いことがわかった。
【0038】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の重金属固定剤は、ピペラジン又はポリアミンの添加により、重金属固定剤の凝固が降下し、低温安定性を有しているため、寒冷地等の低温下でも保持、保管が容易となり、このため、寒冷地での重金属が含有される被処理体の処理を安価、且つ容易に行うことができることから、産業上の利用価値は高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるピペラジン添加量による凝固点の変化を示す図である。
【図2】実施例2におけるピペラジン使用量による凝固点の変化を示す図である。
【図3】実施例3におけるテトラエチレンペンタミン添加量による凝固点の変化を示す図である。
Claims (8)
- ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液を主成分とする重金属固定剤において、ピペラジンを主成分に対して0.01〜1.0未満重量%含有し、低温で凝固しないことを特徴とする重金属固定剤。
- ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液を主成分とする重金属固定剤において、
N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N−ブチルエチレンジアミン、N,N´−ジメチルエチレンジアミン、N,N´−ジエチルエチレンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N´−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、ポリエチレンイミン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N´−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、3,3´−イミノビス(N,N´−ジメチルプロピルアミン)又は2,2´−イミノジエタノール
を主成分に対して0.01〜1.0未満重量%含有し、低温で凝固しないことを特徴とする重金属固定剤。 - 低温が、ピペラジンまたはポリアミンを添加しない状態での凝固点よりも低い温度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の重金属固定剤。
- ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を35重量%以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重金属固定剤。
- ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液を主成分とする重金属固定剤に、ピペラジンを主成分に対して0.01〜1.0未満重量%を添加することを特徴とする重金属固定剤の低温安定化方法。
- ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を含有する水溶液を主成分とする重金属固定剤に、
N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N−ブチルエチレンジアミン、N,N´−ジメチルエチレンジアミン、N,N´−ジエチルエチレンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N´−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、ポリエチレンイミン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N´−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、3,3´−イミノビス(N,N´−ジメチルプロピルアミン)又は2,2´−イミノジエタノール
を主成分に対して0.01〜1.0未満重量%を添加することを特徴とする重金属固定剤の低温安定化方法。 - 低温が、ピペラジンまたはポリアミンを添加しない状態での凝固点よりも低い温度であることを特徴とする請求項5又は6に記載の重金属固定剤の低温安定化方法。
- ピペラジンジ−N,N´−ビスカルボジチオ酸塩を35重量%以上含有する重金属固定剤を用いることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の重金属固定剤の低温安定化方法。
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