JP4187566B2 - 光ディスク用活性エネルギー線硬化性組成物、及び光ディスク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合時の硬化収縮率が低く、低吸水性及び透明性に優れた硬化物層を形成しうる活性エネルギー線硬化型組成物、及び該組成物を硬化させて得られる硬化物層を有する光ディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
情報記録の媒体として、コンパクトディスク(以下、CDと略記)、追記型光ディスク、光磁気ディスク、相変化型光ディスク等の光ディスクが広く用いられるようになってきた。
これらの光ディスクは、ランド、ピット、グルーブ等の微細な凹凸を形成した透明樹脂基板上に、金属薄膜等で記録層を形成し、さらにその劣化を防ぐために紫外線硬化性組成物からなる保護層を該記録層上に設けた構造であることが一般的である。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。
【0003】
近年、記録容量を高めるために、0.6mm厚の光ディスク基板を貼り合わせたデジタルビデオディスク又はデジタルバーサタイルディスク(以下、DVDと略記)が広く、普及しつつある(例えば、特許文献4参照。)
さらにDVDよりも記録容量を向上させ、高品位の動画情報等を長時間録画することが可能な高密度光ディスクが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
この高密度型光ディスクは、プラスチック等で形成される透明又は不透明の支持体基板上に記録層を形成し、次いで記録膜上に約100μmの光透過層を積層したもので、該光透過層側からレーザー光により該記録層に書き込み及び/又は該記録層から読み取りを行うタイプの光ディスクであり、このような光ディスクも実用化されつつある。
かかる高密度光ディスクの透明層の形成に用いる紫外線硬化性組成物としては、上述したCD等の従来の光ディスクの保護層形成用材料を用いればよいと考えられていた。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1〜3に記載される紫外線硬化性組成物を用いて、特許文献5記載の高密度型光ディスクの光透過層を形成すると、得られる光ディスクに、該硬化性組成物の硬化収縮率が高いために大きく反ってしまう、記録及び/又は再生ができない、更には光透過層の短波長光に対する透過率が低い、短波長の記録及び/又は再生光を利用する光ディスクの透明層としては使用できない、等といった不具合が生じてしまうことがわかり、実用上の課題があった。
【0006】
一方、硬化収縮率を低く抑えた柔軟な硬化物層が得られるDVD用接着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献6、特許文献7参照)。
しかしながら、そのような組成物を硬化させて得た光透過層を有する高密度型光ディスクは、低収縮でかつ柔軟であるため記録及び/又は再生の障害になる程度の反りが生じないものの、その光透過層の硬度が低位であり、耐擦傷性にも劣るという課題があった。
【0007】
また、光ディスク用透明基板を形成するために用いられる組成物や、トラッキング用溝を透明基板上に形成するために用いられる組成物が開示されている(例えば、特許文献8、特許文献9参照)。
ところが、そのような組成物を硬化させて得た光透過層を有する前記高密度高密度型光ディスクは、低吸水性で寸法安定性に優れるものの、その組成物中に含まれる芳香族環に起因して光透過層が黄変してしまい、波長400nm程度の短波長レーザーの透過率が低下するという課題があった。そのため、そのような組成物を高密度光ディスクの光透過層形成用としてその組成物を用いることはできないという実用上の課題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−123172号公報
【特許文献2】
特開平3−131605号公報
【特許文献3】
特開平4−264167号公報
【特許文献4】
特開平8−212597号公報
【特許文献5】
特開平8−235638号公報
【特許文献6】
特開平10−245467号公報
【特許文献7】
特開2000−345111号公報
【特許文献8】
特開昭63−87627号公報
【特許文献9】
特開平2−173947号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、硬度、低吸水性及び透明性に優れる硬化物層を形成しうる、重合時の硬化収縮率が低い活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、下記成分(a1)〜(a3)を反応させて得られる、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、
(a1)ポリブタジエングリコール及び/又はポリイソプレングリコール
(a2)脂環式有機ジイソシアネート化合物
(a3)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル
下記一般式(I)で示される化合物(B)、及びその他のエチレン性不飽和化合物(C)を含有する光ディスク用活性エネルギー線硬化性組成物、
【0011】
【化2】
(式中、R1は脂環式ジイソシアネート残基を示し、R2はアルキレン基もしくはシクロアルキレン基、又はエステル結合を含む有機基を示し、R3は水素原子又はメチル基を示す。)
及びそれを硬化させて得られる光ディスクにある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(以下、本発明の組成物と略記)は、硬化収縮率が低く、低吸水性及び透明性に優れ、光ディスクの硬化物層の形成に好適なものである。
本発明の組成物は、特定のウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)(以下成分(A)と略記)、一般式(I)で示される化合物(B)(以下成分(B)と略記)、及びその他のエチレン性不飽和化合物(C)(以下成分(C)と略記)を含有する。
【0013】
本発明に用いる成分(A)は、組成物に低収縮性を付与し、得られる硬化物層に低吸水性を付与する成分である。
この成分(A)は、下記成分(a1)〜(a3)を反応させて得られる。
(a1)ポリブタジエングリコール及び/又はポリイソプレングリコール(以下、成分(a1)と略記)
(a2)脂環式有機ジイソシアネート化合物(以下、成分(a2)と略記)
(a3)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル(以下、成分(a3)と略記)
【0014】
成分(a1)は、本発明の組成物の重合時における低収縮性を維持しつつ、特に低吸水性を向上させるために用いる成分である。
【0015】
成分(a1)の具体例としては、例えばブタジエンやイソプレンをそれぞれ重合して得られるホモポリマーから合成されるポリブタジエングリコールやポリイソプレングリコール等のグリコール系化合物の他、ブタジエン及び/又はイソプレンを主成分として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、4−メチル−ペンテン、1−オクテン等のオレフィン類とのコポリマーから合成されるグリコール系化合物等が挙げられる。
これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0016】
好ましくは、数平均分子量が30000以下のポリブタジエン及び/又はポリイソプレン等のホモポリマーから合成されるグリコール系化合物である。
数平均分子量が30000以下の場合には、得られる組成物の粘度が低く、取り扱い性に優れる傾向にあることから好ましい。
【0017】
成分(a2)は、前記成分(a1)にウレタン結合を導入し、得られる硬化物層に表面硬度を付与するための必須成分であるだけでなく、後述する成分(a3)を付加するためのウレタン(メタ)アクリレートの合成における必須成分である。
成分(a2)は、得られる硬化物層に優れた記録膜の保護性能を付与できることから、加水分解性塩素量が100ppm以下であることが好ましく、その中でも脂環式ジイソシアネート化合物がより好ましい。
【0018】
成分(a2)の中でも脂環式ジイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0019】
それらの中でも、得られる硬化物層の表面硬度に優れることから、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタンが好ましい。
【0020】
成分(a3)は、成分(a1)と成分(a2)を反応させて得られるポリウレタン前駆体の末端に付加することで、成分(A)にラジカル反応性を付与する成分である。
【0021】
成分(a3)としては、分子内に、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであれば、特に限定されるものではない。
【0022】
成分(a3)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンの付加物、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンの付加物、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0023】
それらの中でも、得られる組成物の低粘度化の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
本発明に用いる成分(A)の合成方法としては、特に限定されるものではなく、公知の合成方法が使用可能である。例えば成分(a1)とジラウリン酸ジ−n−ブチル錫等の触媒との混合物中に、成分(a2)を50〜90℃の条件下で滴下して反応させてポリウレタン前駆体を得、それに成分(a3)を反応させることにより製造可能である。また先に成分(a2)と成分(a3)を反応させた後に、成分(a1)を反応させてもよい。
【0025】
成分(A)の合成時における反応の終点は、特に手法が限定されるのではなく、例えばイソシアネート量の定量により判定可能である。成分(A)の合成時における反応率は、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。
また、残存する成分(a3)は、得られる化合物(A)の耐水性の観点から2%以下となるような処方をとることが好ましく、1%以下がより好ましく、成分(a3)が残存しないことが最も好ましい。
【0026】
本発明の組成物において、成分(A)の含有量は特に限定されないが、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量100質量%中、下限値は30質量%以上であり、上限値は90質量%以下の範囲が好ましい。
成分(A)の含有量の下限値が30質量%以上の場合には、組成物の低収縮性と得られる硬化物層の低吸水性が良好となる傾向にあり、その上限値が90質量%以下の場合には、得られる組成物の液粘度が低くなり、塗工作業性が良好となる傾向にある。
【0027】
さらに成分(A)の下限値は30質量%以上であることがより好ましく、上限値は70質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明に用いる成分(B)は、得られる組成物に速硬化性を付与し、得られる硬化物層に表面硬度を付与する成分である。
【0029】
【化3】
【0030】
(式中、R1は脂環式ジイソシアネート残基を示し、R2はアルキレン基もしくはシクロアルキレン基、又はエステル結合を含む有機基を示し、R3は水素原子又はメチル基を示す。)
【0031】
成分(B)は、例えば、脂環式ジイソシアネート化合物に水酸基含有(メタ)アクリレートを付加させることにより合成することができる。
【0032】
脂環式ジイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0033】
それらの中でも、硬化物層の表面硬度が良好であることから、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタンが好ましい。
【0034】
脂環式ジイソシアネート化合物に付加する水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、前述した成分(a3)と同様の化合物が挙げられる。
それらの中でも、得られる組成物の低粘度化の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0035】
本発明に用いる成分(B)の合成方法は特に限定されず、公知のウレタン(メタ)アクリレートの合成方法が使用可能である。具体的には、例えば、フラスコ内に、2〜2.2モルの水酸基含有(メタ)アクリレート及びジブチル錫ジラウレート等の公知の触媒を総仕込量に対して100〜300ppm混合し、フラスコ内温度を40〜60℃に保ちながら、滴下ロートを用いて1モルのジイソシアネートを2〜6時間かけて滴下すればよい。
【0036】
本発明の組成物において、成分(B)の含有量は特に限定されないが、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量100質量%中、下限値は5質量%以上であり、上限値は30質量%以下の範囲が好ましい。
成分(B)の含有量の下限値が5質量%以上の場合には、得られる硬化物層の表面硬度が良好となる傾向にあり、その上限値が30質量%以下の場合には、得られる光ディスクの反りが低減される傾向にある。
さらに成分(B)の下限値は10質量%以上であることがより好ましく、上限値は25質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明において、成分(C)は、本発明の組成物の粘度を調整する成分である。
【0038】
この成分(C)の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性トリメチロールプロパントリアクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類;
【0039】
ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸メチルペンタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチルペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカンジメタノール、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジ(メタ)アクリル酸シクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールA、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、水添ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル等ジ(メタ)アクリル酸エステル類;
【0040】
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタン、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸テトラシクロドデカニル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;
【0041】
酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
アクリルアミド、 N,N−ジメチルアクリルアミド、 N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;
フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール及び(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレート類;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンの縮合反応で得られるビスフェノール型エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させたエポキシ(メタ)アクリレート類;
【0042】
アルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、スピログリコール化合物等の1種又は2種以上の混合物からなるアルコール類の水酸基に有機ジイソシアネート化合物を付加し、残ったイソシアネート基に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基、及び1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させた成分(A)及び成分(B)以外のウレタンポリ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0043】
これらの中でも、耐水性に優れることから、分子内に環状構造を有する化合物が好ましい。
この好ましい化合物の具体例としては、例えば、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノール、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタン、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸テトラシクロドデカニル、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0044】
本発明の組成物において、成分(C)の含有量は特に限定されていないが、成分(A)、(B)及び(C)の合計量100質量%中、5〜40質量%の範囲が好ましく、10〜35質量%の範囲が特に好ましい。
成分(C)の含有量は、得られる組成物の粘度が低く、塗工作業性が良好となることから、5質量%以上が好ましく、組成物の硬化時の収縮率が低いことから、40質量%以下であることが好ましい。
【0045】
以上が本発明の組成物の構成成分であるが、その性能を損なわない範囲であれば、必要に応じて、例えば、重合開始剤、熱可塑性高分子、スリップ剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等、公知の添加剤等を適宜配合して用いてもよい。
【0046】
本発明の組成物に光重合開始剤(D)を添加すると、活性エネルギー照射により効率よく硬化させることができる。
【0047】
成分(D)の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
【0048】
例えば、光ディスクの読み取りに用いるレーザーの波長が380〜800nmの範囲である場合には、読み取りに必要なレーザー光が十分に硬化物層を通過するよう、光重合開始剤の種類及び使用量を適宜選択して用いることが好ましい。この場合、得られる硬化物層が青紫色レーザー光を吸収しない、短波長感光型光重合開始剤を使用することが特に好ましい。
【0049】
この短波長感光型光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0050】
本発明の組成物において、光重合開始剤(D)の添加量は特に限定されないが、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量100質量部に対して、0.001〜10質量部の範囲で添加することが好ましく、0.01〜5質量部の範囲がさらに好ましい。
本発明において、(D)成分の添加量は硬化性の観点から0.001質量部以上が好ましく、深部硬化性と難黄変性の観点から10質量部以下が好ましい。
【0051】
更に、本発明の組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を添加することもできる。
【0052】
また、本発明の組成物には、光ディスクを長期間、加熱状態や太陽光下で保存した際に、硬化物層が変色して、レーザー光の透過率が低下することを防ぐため、酸化防止剤や光安定剤を使用することが好ましい。
【0053】
この具体例としては、例えば、各種市販されている、住友化学(株)製スミライザーBHT、スミライザーS、スミライザーBP−76、スミライザーMDP−S、スミライザーGM、スミライザーBBM−S、スミライザーWX−R、スミライザーNW、スミライザーBP−179、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、スミライザーTNP、スミライザーTPP−R、スミライザーP−16、旭電化工業(株)製アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60AO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ329K、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製チヌビン770、チヌビン765、チヌビン144、チヌビン622、チヌビン111、チヌビン123、チヌビン292、日立化成工業(株)製ファンクリルFA−711M、FA−712HM等が挙げられる。
【0054】
これら酸化防止剤や光安定剤の添加量は特に限定されないが、(A)、(B)及び(C)成分の合計量100質量部に対して、0.001〜2質量部の範囲で添加することが好ましく、0.01〜1質量部の範囲がさらに好ましい。
【0055】
本発明の組成物の粘度は、塗工方法や得られる硬化物層の厚みに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
例えば、スピンコート法により塗工する場合には、本発明の組成物の粘度は、25℃において1000〜20000mPa・sの範囲が好ましい。
その下限値が1000mPa・s以上であれば、塗工作業性や得られる塗膜の表面平滑性が良好となる傾向にある。また、その上限値が20000mPa・s以下であれば、組成物の取り扱い性が良好となる傾向にある。
【0056】
具体的に、例えばスピンコート法により、数秒〜数十秒程度の短時間で硬化膜厚100μmの硬化物層を得る場合には、硬化性組成物の25℃における粘度は2000〜10000mPa・sの範囲であることが特に好ましい。
【0057】
本発明の組成物には、必要に応じて適宜有機溶剤を添加してもよい。
有機溶剤の添加量は、本発明の組成物に対して0.3質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以下がより好ましく、全く用いないことが特に好ましい。
その有機溶剤の添加量が0.3質量部を超えると、得られる硬化物層の記録膜の保護性能が不良となる傾向にあり、記録膜として耐腐食性に劣る銀等の薄膜(膜厚5〜20nm)を使用する場合に、経時的に記録膜の腐食が生じやすい傾向にある。
【0058】
本発明の組成物の塗工方法は特に限定されるものではなく、目的に応じて公知の方法を適宜選択すればよい。
その中でも、光ディスクの生産性の観点から、スピンコート法による塗工方法が好ましい。
【0059】
本発明の組成物は、活性エネルギー線を照射することにより、硬化させることができる。
この活性エネルギー線の種類としては、例えばα,β及びγ線等、公知の活性エネルギー線が挙げられる。
例えば、本発明の組成物を用いて、硬化膜厚が100μm程度の硬化物層を得る場合には、工業的に製造の場合に低コストになるため、活性エネルギー線として紫外線を用いることが特に好ましい。
【0060】
ここでいう紫外線の発生源としては特に限定されないが、実用性や経済性の観点から、一般に使用されている紫外線ランプを用いることが好ましい。
【0061】
紫外線ランプの具体例としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
なお、本発明の組成物を硬化させる際の活性エネルギー線を照射する雰囲気下は、空気中でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよい。
【0062】
次に本発明の光ディスクについて、以下詳細に説明する。
本発明の光ディスクは、本発明の組成物を、硬化させて得られる硬化物層を有する光ディスクである。
ここでいう硬化物層とは、高密度光ディスクの記録層の光透過層や、多層記録型光ディスクの接着剤兼光透過層等、光ディスクに付与する硬化物層全般を意味する。
【0063】
この硬化物層は、外観上、及び記録層のデータの読み取り及び/又は書き込みを行う場合に読み取り障害が生じないよう透明であることが好ましい。
【0064】
本発明の光ディスクを得るには、前記した活性エネルギー線硬化性組成物を用いればよいが、その中でも、記録層のデータの読み取り及び/又は書き込みを行う場合に読み取り障害が生じないよう、光ディスクの反りを抑制するという観点から、硬化収縮率が7.5%以下の活性エネルギー線硬化性組成物を用い、硬化物層を形成することが好ましい。
【0065】
なお、本発明でいう硬化収縮率とは、以下の方法により算出した値を、硬化収縮率として定義する。
即ち、20℃における硬化前の液比重(X1)と、硬化して得られた硬化物層の20℃における比重(X2)をそれぞれ測定し、下記の数式(1)により求めた値を硬化収縮率(%)とする。
【0066】
【数1】
【0067】
硬化物層を形成する組成物の硬化収縮率が7.5%を超えると、記録層との密着性が不良となる傾向にあり、また組成物の硬化時の収縮により光ディスクが大きく反る等の不具合が生じやすく、データの記録及び/又は読み取りが困難になる傾向にある。
【0068】
本発明の光ディスクの反り角は特に限定されないが、その中でも、波長400nm前後の青紫色レーザーを用いて記録及び又は読み取りを行う場合には、光ディスク最外周における半径方向の最大反り角が±0.3度以内であることが好ましい。光ディスク最外周における半径方向の最大反り角が±0.3度を超えると、高密度型光ディスクのデータの記録及び/又は読み取りが困難になる傾向にある。
【0069】
また、本発明の光ディスク中に有する硬化物層は、その表面硬度が鉛筆硬度で2B以上より硬いことが好ましい。
特にその硬化物層上にハードコート層を形成しない光ディスクの場合には、B以上硬いであることがより好ましい。
なお、ここでいう鉛筆硬度とは、JIS K−5400準拠の方法で得られる値である。
この鉛筆硬度が2Bより柔らかい場合には、硬化物層表面に傷がつきやすいため、光ディスクの書き込み及び/又は読み込みエラーの原因となる傾向にある。
【0070】
また、本発明の光ディスクにおいては、読み取り及び/又は書き込みのエラーを防ぐために、光ディスクを構成する光透過層のレーザー光の光線透過率が80%以上であること好ましく、85%以上であることがより好ましい。
ここでレーザー光は、その波長が特に限定されないが、一般に光ディスクの読み取り及び/又は書き込みに使用されている、波長380〜800nmの範囲のレーザー光であることが好ましい。また、光ディスクの記録容量を高密度にできることから、波長400nm前後の青紫色のレーザー光であることがより好ましい。
【0071】
本発明の光ディスクにおいて硬化物層の厚みは、所望する特性が得られる範囲で適宜選択すればよく特に限定されないが、20〜200μmの範囲が好ましい。
硬化物層の厚みの下限値が20μm以上の場合には、光ディスク中の記録層が酸素や水により劣化するのを抑制しやすい傾向にある。またその上限値が200μm以下であれば、得られる光ディスクの反り量を抑制しやすい傾向にある。
より好ましくは、50〜150μmの範囲である。
【0072】
本発明の光ディスクにおいて、硬化物層の形成は、例えば、記録層を有する支持体基板上に、該記録層側に前記した活性エネルギー線硬化性組成物を塗工して均一塗膜を形成し、これに活性エネルギー線を照射して硬化させればよい。
【0073】
本発明の光ディスクにおいて硬化物層のガラス転移温度は、特に限定されないが、車載用途等、耐熱性の要求される環境での使用を考慮すると、Tg50℃以上とすることが好ましく、より好ましくはTg60℃以上である。
【0074】
なお、本発明の光ディスクは、耐候性や表面硬度をさらに向上させる目的で、硬化物層上にハードコート層等を適宜積層してもよい。
このハードコート層の形成方法は特に限定されず、フィルム状物を硬化物層上に貼り合わせてもよいし、アクリル系ハードコート材、シリカ微粒子含有ハードコート材等、公知の各種ハードコート用組成物を塗工しそれを硬化させて形成してもよい。
【0075】
特に、わずかな傷が存在するだけでも、読み取りエラーが増大するような高密度型光ディスクを得る場合には、本発明の光ディスクの硬化物層上に、例えば分子内に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物類20〜60質量%、その他のエチレン性不飽和化合物類40〜80質量%からなるハードコート用組成物(但し、それらの合計量を100質量%とする)を、予め記録膜を形成した光ディスク用基材に塗工しそれを硬させて、膜厚0.1〜7μm程度の範囲のハードコート層を設けることが好ましい。
【0076】
そのハードコート用組成物には、光ディスクのスリップ性が良好となり、傷付き防止性能が向上することから、必要に応じてフッ素系又はポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系のスリップ剤を添加してもよい。
【0077】
本発明の光ディスクにおいて支持体基板は、透明でも非透明であってもよく、その材質としては、ガラス、セラミックス、金属、プラスチック等、公知のものを使用することができる。
中でも、低コスト、軽量、光ディスクのランド及びグルーブを成型する容易性の観点から、プラスチックが好ましい。
プラスチックの材質の具体例としては、例えばポリカーボネート系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、アモルファスポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
本発明において、このようなプラスチック材料の成型品であることが特に好ましい。
【0078】
本発明の光ディスクにおいて、記録層としては、特に限定されず、従来公知の記録用材料を使用すればよい。
例えば、読み取り専用光ディスクの場合、記録層の材質としては、金、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、光の反射率の高い金属であれば使用可能である。
また、例えば書き換え可能な光ディスクの場合、相変化記録層の材質としては、銀・In・Te・Sb合金、銀・In・Te・Sb・Ge合金、Ge・Sb・Te合金、 Ge・Sn・Sb・Te合金、Sb・Te合金等が挙げられ、光磁気記録層の材質としては、Tb・Fe・Co系合金等が挙げられる。
さらに、これらの各種記録層上に、SiN、ZnS、SiO2等の誘電膜を積層してもよい。
これらの記録層を形成するには、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等公知の薄膜形成技術を使用すればよい。
【0079】
【実施例】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。
《合成例1》[ウレタンアクリレート(UA1:成分A)の製造]
5Lの4つ口フラスコにポリブタジエングリコール(日本曹達(株)製、商品名:NISSO PB G−1000、数平均分子量:1360)903質量部、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.2質量部、2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノール0.7質量部を入れ、50℃で攪拌しつつイソホロンジイソシアネート(住友バイエル社(株)製、商品名:デスモジュールI)289質量部を4時間にわたって滴下した。滴下終了後3時間保持した後、さらに2−ヒドロキシエチルアクリレート151質量部を2時間に渡って滴下し、滴下終了後70℃で5時間反応を続行し、ポリブタジエンウレタンアクリレート(UA1)を得た。
【0080】
《合成例2》[ウレタンアクリレート(UA2:成分A)の製造]
(1) 5Lの4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート1332g、及びジブチル錫ジラウレート0.3gを仕込んでウオーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
(2) 2−ヒドロキシエチルアクリレート936gと2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノール1.1gを均一に混合溶解させた液を側管付きの滴下ロートに仕込み、この滴下ロート内の液を、上記(1)のフラスコ中の内容物を撹拌しつつ、フラスコ内温を65〜75℃に保ちながら6時間等速滴下により滴下し、同温度で4時間撹拌して反応させて、ウレタンアクリレート前駆体を製造した。
(3)5Lの4つ口フラスコに、ポリイソプレングリコール(クラレ(株)製、商品名:クラプレンLIR506、数平均分子量:25000)1059質量部、イソボルニルアクリレート353質量部、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.4質量部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.4質量部を入れて50℃で攪拌しつつ、そこにさらに保温滴下ロートを用いて、上記(2)で得られたウレタンアクリレート前駆体352gを4時間にわたって滴下した。滴下終了後70℃で5時間反応を続行し、ポリイソプレンウレタンアクリレート(UA2)の割合が80質量%、イソボルニルアクリレートの割合が20質量%の溶液を得た。
【0081】
《合成例3》[ウレタンアクリレート(UA3:成分B)の製造]
(1) 攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積5リットルの三つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート1110g、及びジブチル錫ジラウレート0.34gを仕込んで、ウオーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
(2) 2−ヒドロキシエチルアクリレート1172gとハイドロキノンモノメチルエーテル1.1gを均一に混合溶解させた液を側管付きの滴下ロートに仕込み、この滴下ロート内の液を、上記(1)で調製したフラスコ中の内容物を撹拌しつつ、フラスコ内温を65〜75℃に保ちながら、6時間等速滴下により滴下し、同温度で6時間撹拌して反応させて、ウレタンジアクリレートを製造した。反応の終点は残存イソシアネート当量の測定により、1%未満であることを確認し、ウレタンジアクリレート(UA3)を得た。
【0082】
《合成例4》[ウレタンアクリレート(UA4:成分B)の製造]
(1) 合成例1と同様のフラスコに、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン1324g、及びジブチル錫ジラウレート0.37gを仕込んで、ウオーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
(2) 2−ヒドロキシエチルアクリレート1172gとハイドロキノンモノメチルエーテル1.2gを均一に混合溶解させた液を側管付きの滴下ロートに仕込み、この滴下ロート内の液を、上記(1)で調製したフラスコ中の内容物を撹拌しつつ、フラスコ内温を65〜75℃に保ちながら、6時間等速滴下により滴下し、同温度で6時間撹拌して反応させて、ウレタンジアクリレートを製造した。反応の終点は残存イソシアネート当量の測定により、1%未満であることを確認し、ウレタンジアクリレート(UA4)を得た。
【0083】
《合成例5》[ウレタンアクリレート(UA5:成分C)の製造]
(1) 攪拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積5リットルの三つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート867g、及びジブチル錫ジラウレート0.5gを仕込んでウオーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
(2) ポリブチレングリコール(n=12;数平均分子量:850)1651gを側管付きの滴下ロートに仕込み、この滴下ロート内の液を、上記(1)のフラスコ中の内容物を撹拌しつつ、フラスコ内温を65〜75℃に保ちながら4時間等速滴下により滴下し、同温度で2時間撹拌して反応させた。
(3) 次いで、フラスコ内容物の温度を60℃に下げた後、別の滴下ロートに仕込んだ2-ヒドロキシエチルアクリレート456gとハイドロキノンモノメチルエーテル1.5gを均一に混合溶解させた液をフラスコ内温を55〜65℃に保ちながら2時間等速滴下により滴下した後、フラスコ内容物の温度を75〜85℃に保って4時間反応させて、ウレタンアクリレート(UA5)を製造した。
【0084】
以下、合成例1〜5で得られたウレタンアクリレートを使用して、実施例を行った。
なお、実施例中の反り角とは、光ディスク最外周における硬化物層側への半径方向の最大反り角を意味する。また、負(−)の値の場合は、硬化物層とは反対側に反った場合の最大反り角を意味する。
【0085】
実施例及び比較例において得られた、活性エネルギー線硬化性組成物及び光ディスクについて、以下の評価を行った。
【0086】
〔評価項目及び評価方法〕
1.組成物について
<粘度>
得られた組成物について、25℃における粘度をE型粘度計(東機産業(株)製、TVE−20)を測定する。
<硬化収縮率>
得られた組成物の20℃における液比重と20℃における硬化物層の比重を各々測定し、上述した定義に基づいて硬化収縮率を算出した。また、下記基準に基づいて評価する。
○:7.5%以下
×:7.5%超
【0087】
<吸水率>
得られた組成物を用い、高圧水銀灯(出力160W/cm)で光エネルギーを照射して、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験板を得る。得られた試験板について、23℃の水中に24時間放置し、JIS K7209に準拠して吸水率を測定する。
○:0.4%以下
×:0.4%を超
【0088】
2.硬化物層について
<表面硬度>
得られた光ディスクから剥離した硬化物層についてJIS K−5400に準拠し、鉛筆硬度を測定し、下記基準に基づいて評価する。
○:2B以上硬い
×:2Bより柔らかい
【0089】
<光線透過率>
得られた光ディスクから剥離した硬化物層について、日立製作所(株)製分光光度計U−3400を用いて、初期の波長400nmにおける光線透過率を測定する。
次いで、その剥離した硬化物層を60℃、90%RHの環境条件下に96時間放置した後、取り出した直後に初期の光線透過率と同様にして、再度環境試験後の波長400nmにおける光線透過率を測定する。
なお、初期及び環境試験後の光線透過率については、下記基準に基づいて評価を行う。
○:80%以上
×:80%未満
【0090】
3.光ディスクについて
<反り角>
得られた光ディスクについて、ジャパンイーエム(株)製DLD−3000光ディスク光学機械特性測定装置を用いて、20℃、相対湿度50%の環境下にて、初期の反り角を測定する。
次いで、得られた光ディスクを60℃、相対湿度90%の環境下に100時間放置し、取り出した直後に、初期の反り角と同様にして、再度反り角を測定する。
なお、初期及び環境試験後の反り角については、下記基準に基づいて評価を行う。
○:±0.3度以内
×:±0.3度超
【0091】
<記録膜の保護性能>
微分干渉顕微鏡(ニコン(株)社製、商品名:OPTIPHOT)を用い800倍の倍率でアルミ合金反射膜面を観察する。その評価結果を、下記基準に基づき評価を行う。
○:腐食なし
×:白化及び/又はピンホールあり
【0092】
[実施例1]
(1)硬化性組成物の調製
(A)成分として合成例1で得られたUA1を55質量部、(B)成分として合成例3で得られたUA3を15質量部、(C)成分として、テトラヒドロフルフリルアクリレートを30質量部、(D)成分として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン3質量部を混合溶解し、硬化性組成物を得た。
得られた組成物の粘度は、25℃において約4100mPa・sであり、淡黄色透明で粘稠な液体であった。
また、得られた硬化性組成物の硬化収縮率は6.7%であり、許容範囲である7.5%以下であった。
【0093】
(2)硬化物層を有する光ディスクの作製及び評価
評価用光ディスク基材の作製:
帝人化成(株)製パンライトAD9000TG(ポリカーボネート樹脂)を射出成型して得た光ディスク形状を有する透明円盤状鏡面基板(直径12cm、板厚1.1mm、反り角0度)の片面に、バルザース(株)製スパッタリング装置CDI−900により、アルミニウム合金を膜厚50nmとなるようにスパッタリングし、鏡面にアルミ合金反射膜を有する評価用光ディスク基材(以下、基材と略記)を得た。
光ディスクの作成及び評価:
得られた基材のアルミ合金反射膜上に、上記(1)で得られた硬化性組成物を、スピンコーターを用いて平均硬化膜厚が100μmとなるように塗工した。得られた塗膜を、ランプ高さ10cmの高圧水銀灯(120W/cm)により、積算光量1000mJ/cm2のエネルギー量で硬化させて、硬化物層を有する光ディスクを得た。
得られた光ディスクの各種評価結果は、表1に示す。
【0094】
[実施例2〜4、比較例1〜4]
表1の実施例2〜5及び比較例1〜4の欄に示す硬化性組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、基材に硬化物層を形成した光ディスクを得た。
また、得られた組成物及び光ディスクについて、実施例1と同様に評価した結果を表1の評価結果欄にそれぞれ示した。
【0095】
[比較例5]
特開平3−131605号公報の実施例1記載の組成物を用いる以外は、前記実施例1と同様にして基材に硬化物層を形成してなる光ディスクを得た。
また、得られた組成物及び光ディスクについて、実施例1と同様に評価した結果を表1の評価結果欄にそれぞれ示した。
【0096】
【表1】
注1:反り角が測定装置の測定可能範囲(±1度)を大きく超え、測定不可能
【0097】
なお、表1中の略号は、以下の通りである。
UA1:合成例1で得られたウレタンアクリレート
UA2:合成例2で得られたウレタンアクリレート
UA3:合成例3で得られたウレタンアクリレート
UA4:合成例4で得られたウレタンアクリレート
UA5:合成例5で得られたウレタンアクリレート
TE2000:TDI系ポリブタジエンウレタンメタクリレート(日本曹達(株)製)
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
TAIC:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
TCDA:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
NPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
BPAEA:ビスフェノールA型エポキシアクリレート
HCPK:1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン
BNP:ベンゾフェノン
EPA:4−ジメチルアミノ安息香酸エチル
【0098】
[比較例の考察]
比較例1は、本発明に用いる成分(B)を含まない組成物である。そのため、得られた硬化物層の硬度が不良であった。
比較例2〜4は、本発明に用いる成分(A)を含まない組成物である。
そのため、比較例2では、組成物の硬化収縮率が非常に高く、その重合硬化時に円盤状光ディスク基板に反りが発生し、環境試験後にはさらにその反り量が大きくなり測定不可能となり、また比較例3は、環境試験後の光線透過率が不良となった。
一方、比較例4は、硬化物層の吸水率が高く、また硬化物層の反りも大きかった。
比較例5は、先行文献記載の組成物を用いて、本発明との違いを明確にするために挙げた例である。この組成物は、硬化収縮率が高いため得られる光ディスクの反り角が大きかった。このことから、この組成物で硬化物層を形成しても、記録及び/又は再生が可能な高密度型光ディスクは得られないことがわかった。
【0099】
【発明の効果】
以上示した通り、本発明は、優れた低吸水性及び透明性を有し、かつ優れた硬度を有する硬化物層を形成することを可能とする活性エネルギー線硬化性組成物を用いて膜厚100μm程度の光透過層を形成しても、光ディスク最外周における半径方向の最大反り角が±0.3度以内で耐久性に優れる光ディスクが得られるという効果を見出したものである。
そのため、青紫色レーザーを用いて読み取り及び/又は書き込みを行う際にもエラーが生じない、実用可能な高密度型光ディスクが得ることを可能としたものであり、本発明の産業上の利用度は大である。
Claims (3)
- ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の含有量が30〜90質量%、一般式(I)で表されるウレタンジ(メタ)アクリレート化合物(B)の含有量が5〜30質量%、その他のエチレン性不飽和化合物(C)の含有量が5〜40質量%である(但し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量を100質量%とする)請求項1記載の光ディスク用活性エネルギー線硬化性組成物。
- 請求項1又は2記載の組成物を硬化させて得られる硬化物層を有する光ディスク。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003095354A JP4187566B2 (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 光ディスク用活性エネルギー線硬化性組成物、及び光ディスク |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003095354A JP4187566B2 (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 光ディスク用活性エネルギー線硬化性組成物、及び光ディスク |
Publications (3)
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