JP4186316B2 - 車両用交流発電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題対策として車両エンジンのアイドル回転数の低減により、車両用交流発電機(以下オルタネータ)には、より低速回転からの出力供給が求められるようになった。また、電力を要する環境対策装置の搭載などにより、その要求出力も増加している。一方、燃費向上のための軽量化や、車室空間の確保のために、エンジンルーム内に搭載される部品への小型化要求も年々強まっている。しかも、コスト低減要求は、いうまでもない。
【0003】
これら要求に応えるべく、発電機において、発電を誘起する巻線である電機子巻線の抵抗値を下げて損失を減らすため、特開昭63−194543号公報に示されるように、スロット内の巻線断面を平角状に成形し、スロット内の占積率を上げようとするものがある。しかし、スロット内の占積率を上げるのみで、スロット外のコイルエンドにおいて、各相(一般に3相)の巻線どうしが径方向において干渉するので、コイルエンドが膨らみ、小型化要求には対応できない。
【0004】
そこで、国際公開92/06527号公報には、ヘアピン状に成形した複数の導体セグメントで電機子コイルを構成し、そのコイルエンドどうしが互いに径方向に干渉せずに巻線を形成し、その結果、小型化要求に対応する巻線技術が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開昭63−194543号公報と国際公開92/06527号公報の技術を組み合わせても、高出力化の為には、電機子コイルで損失を下げる冷却性能の問題がある。
【0006】
オルタネータでは一般に回転子鉄心(71、72)の軸方向両端に冷却ファン(12、11)が設けられ、回転子(7)の回転に伴い前記冷却ファンが回転し冷却風を電機子のコイルエンド( 31a 、31b) に吹き付けて電機子巻線を冷却する構造をとっている。
【0007】
又、前記冷却ファンが回転することでその入口側空間(120)に負圧を生じオルタネータ後方より内部にフレッシュエアを導入しリア側電気部品(5、130、140)、回転子コイル(8)、電機子コイルを冷却している。
【0008】
従って前記ファンが電機子コイルに吹き付けた冷却風が効率よく電機子コイルの外側に抜けていかなければ電機子コイルエンド周辺(2、3)に滞留し、オルタネータ内部に新たなフレッシュエアが導入されず、温度上昇の原因になる。これを解決するには冷却ファンの能力を増大し冷却風の吐出抵抗が高くても十分に吐き出されるファンを設計するのが一般的であるが、そのようなファンは大型であり、小型化要求に反するとともに、さらに高速回転域まで使用されるオルタネータにとっては騒音増大という新たな問題も生ずる。
【0009】
国際公開92/06527号公報に示されたオルタネータでは、図9に示す如く、スロットの異なる導体どうしでは隙間(38)が確保されているが、同一スロットに挿入されている導体どうしは密着しており全く隙間が確保出来ないので、この導体間には通風できず、電機子コイルエンドの冷却は不十分であった。
【0010】
つまり、これらヘアピン状導体を一つのスロット内に複数挿入した電機子では導体を十分に冷却出来ないばかりか、オルタネータとしての通風抵抗(特に吐出抵抗)が増大し、ファンの能力を増加しないと吸入風量自体が減少してしまい、他部品の冷却にも影響を及ぼしてしまうという問題があった。このような問題は極数(2p)が多くなればなるほど、あるいはスロット当たりの巻数が増えれば増えるほど深刻となる。
【0011】
一方、国際公開92/06527号公報においては、1つのスロット内に内層側導体と外層側導体とを配置し、異なるスロット内の内層側導体と外層側導体とを交互に順次接続して、1つの相で2回巻回した巻線の構成が示されている。しかし、同層どうし(内層と内層または外層と外層)を接続する渡り部では、渡り部とコイルエンドとの干渉を防止するために、渡り部はコイルエンドの先端よりもさらに軸方向端部側に延ばされた後、周方向に延びて接続されている。よって、コイルエンドの実質的な軸方向の最大高さがこの渡り部によって決定され、オルタネータの小型化の阻害要因となっている。
【0012】
本発明は、小型で高出力な性能を達成すべく、高占積率で且つ冷却性能を確保でき、しかも安価なオルタネータを提供することを目的としている。
【0013】
また、本発明は、小型で立ち上がり回転数の低いオルタネータを安価に提供することを他の目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、p対のNS磁極を持つ回転子鉄心と、m相の巻線を構成する電機子巻線と、電機子巻線を保持する複数のスロットを有する電機子鉄心とを備える車両用交流発電機において、各スロット内に、巻線を構成する略長方形の断面を持つ導体が、周方向よりも径方向が長くなるようにして内層側と外層側に配置され、導体は、スロット内に位置する内部導体部と、この内部導体部からスロット外に延びるコイルエンド部とを有して、異なるスロットに配置された導体のコイルエンド部が接続され、内層側と外層側のうち同層どうしで接続されるコイルエンド部の径方向長さを、内部導体部の径方向長さよりも短くし、隣接するn個(n≧2の自然数)のスロットに各2本収納された導体が接続されて1つの位相の巻線が形成され、スロットは2pmn個形成されていることを特徴としている。
【0023】
これによると、各スロットに導体を2本配置し、かつ2個以上の隣接するスロット内の導体を接続しているため、見かけ上のターン数(2nターン/相)が多くなり、立ち上がり回転数を低くすることができる。また、同層どうしで接続されるコイルエンド部の径方向長さを、内部導体部の径方向長さよりも短くしているので、同層接続部を含む複数の接続部間の径方向の干渉を防止でき、従って、同層接続部を異層接続部の先端よりもさらに軸方向端部側に突出させる必要がなくなり、コイルエンドの実質高さを低く抑えることができる。よって、小型で立ち上がり回転数の低いオルタネータを実現できる。
【0024】
請求項2に記載の発明のように、同層どうしで接続されるコイルエンド部の径方向長さを、内部導体部の径方向長さの略半分にすることにより、同層接続部を含む複数の接続部を径方向に重ねて配置することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明のように、同層どうしで接続されるコイルエンド部の径方向の一端側を他端側に折り曲げることにより、同層どうしで接続されるコイルエンド部は、導体の断面積を保持したまま、径方向長さを略半分にできる。
【0026】
請求項4に記載の発明のように、同層どうしで接続されるコイルエンド部を、内部導体部の周方向側面と連続する面が径方向を向くように捻ることにより、同層どうしで接続されるコイルエンド部は、導体の断面積を保持したまま、径方向長さを短くできる。
【0027】
請求項5に記載の発明のように、異層どうしで接続される標準形状の導体とは異なる形状の導体、すなわち各相の巻線の出力端を有する導体および同層どうしで接続される導体を、隣接するスロットの数の合計がn×(2m+1)個の範囲内に集中配置することにより、標準形状の導体と異形状の導体との混在組み付け防止を容易とし、ひいては製造コストの低減につなげることができる。
【0028】
請求項6に記載の発明では、導体は略S字状に成形されたセグメント導体であり、このセグメント導体が接続されて巻線を形成することを特徴としている。これにより、導体の製造やスロットへの挿入を容易にして、製造コストを低減できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
(第一実施形態)
図1から図4は第一実施形態を示しており、2p=12、m=3(X相、Y相、Z相)、n=3の例を示したものである。なお、nは2以上とすることができ、3以上が望ましい。
【0030】
図1はオルタネータの断面図、図2〜6は本発明の巻線仕様に関する説明図である。
【0031】
電機子鉄心(32)に設けられるスロットの数は108、スロットピッチは18となる。
つまり第kスロットの内側導体と第(k±9)スロットの外側導体が第kスロットと第(k±9)スロットの間の任意の位置で半径方向に転移する様に繋がっている。但し(k+9)>108の場合、及び(k−9)<1の場合は、第100スロットと第1、第101スロットと第2スロット、…………、第107スロットと第8スロット、第108スロットと第9スロットが繋がる。
【0032】
図2にX相を抜き出して巻線方法について説明する。
【0033】
図3は図2の巻線仕様を構成する導体の一部(第1スロットと第10スロットに挿入される導体)の斜視図である。図3に示すクランク状に整形された導体を1つのスロットから出る2つのコイルエンド部の曲げ方向が互いに逆向きになるように挿入する。図2の巻線仕様図にて外側導体を実線、内側導体を波線で記述する。数字はスロットの番号を示す。
【0034】
第10スロットの外側導体の一方の斜行部(31a 11)が第1スロットの内側導体の一方の斜行部(31a 12)とコイルエンド部A側端部(31a 15)で半田付けや溶接等で接続することで半径方向に導体が転移して繋がる。同様に第10スロットの外側導体の他方の斜行部(31b11)が第19スロットの内側の一方の斜行部(31b12)がコイルエンド部B側端部(31b15)で半田付けや溶接等で接続することで半径方向に導体が転移して繋がる。更に第19スロットの内側導体の他方の端部は第28スロットの外側導体の端部とコイルエンド部A側で半田付けや溶接等で接続されている(図示せず)。同じルールで順次挿入接続してゆく。但し第100スロットの外側導体(31a 13)と第1スロットの外側導体(31a 14)をコイルエンド部A側で接続しなければならない(31a 16)。この様に挿入接続された第(1+9k)スロットの導体群は1つのループ状となり電機子電機子鉄心(32)を2回巻回することになる。つまり2ターン/スロットの巻線が形成される。この導体群がX相の巻線を構成する1つのコイルx1である。
【0035】
ここでこの導体群を1つのユニットとすると1つのユニットに内側と外側の導体を繋げる部分が22箇所(31a 15、31b15等)、外側どうしを繋げる部分が1箇所(31a 16)出来ることになる。
【0036】
同様に(2+9k)のスロットに挿入されるコイル群はX相の巻線を構成するコイルx2であり、(3+9k)のスロットに挿入されるコイル群はX相の巻線を構成するコイルx3である。
【0037】
これらコイルx1とx2を(31a 18)の如く接続し、x2とx3(31a 17)に示す如く接続するとx1、x2、x3は直列に接続され6ターン/相の巻線を構成することが可能となる。
【0038】
つまり1相中に内側と外側の導体を接続する部分が66箇所、外側どうしを接続する部分が3箇所出来ることになる。
【0039】
これらはp、m、nを一般まで拡張した場合に外側導体と内側導体が転移して繋がる部分は1相当たり2n(2p−1)箇所、外側導体どうしが繋がる部分は1相当たりn箇所存在することになる。
【0040】
同様に(4+9k)、(5+9k)、(6+9k)のスロットに挿入される導体を上記と同じルールで接続するとx1、x2、x3とは電気的に240度位相のずれたコイルz1、z2、z3が形成されこれらを直列に接続するとZ相コイルを得る。
【0041】
同様に(7+9k)、(8+9k)、(9+9k)のスロットに挿入される導体を上記と同じルールで接続するとx1、x2、x3とは電気的に120度位相のずれたコイルy1、y2、y3が形成され、これらを直列に接続するとY相コイルを得る。
【0042】
このようにして出来た電機子のコイルエンド部を展開した形状を図4に示す。
【0043】
それぞれのスロットからでた隣接した導体間には隙間があり、従って全ての導体間の隙間を均一に冷却風が通過してゆくため効率的に導体を冷却出来る。
【0044】
更に前記隙間は冷却風の出口にもなるが、この部分の通風抵抗は増大しないためファン自体を大きくする必要なくオルタネータ内部に十分なフレッシュエアを取り入れることができ、回転子コイルやリア側に配置される電気部品の冷却性を損ねることもないので、小型高出力でかつ信頼性の高いオルタネータを提供できる。
【0045】
尚 ここに記載した例で外側導体と内側導体を入れ替えても同様の効果を得ることが出来る。 この場合第100スロットの内側導体と第1スロットの内側導体どうしを接続することになる。
【0046】
又、極対数p、相数m、分割nは任意の自然数でも同様の効果を呈するが、極対数p、分割nが大きければ大きいほどその効果は大きなものになる。
(第二実施形態)
第二実施形態を図5、6に示す。図5、6は図2の巻線仕様を構成するセグメント導体の一部の斜視図である。ここで示すのもやはり2p=12、m=3、n=3の例である。
【0047】
第一実施形態ではコイルエンドの両側で接続するのに対し、第二実施形態ではコイルエンド部A側の導体どうしの接続のみで巻線を形成する。具体的には、第kスロットの内側導体と第(k+9)スロットの外側導体をヘアピン状の連続導体で構成することで接続箇所を第1実施例の約半分に低減出来る。更にこのヘアピン部は導体を接続する必用がないため皮膜を剥がす必要もなくよって絶縁処理も不要となり大幅な工数の低減が可能である。
【0048】
先ず導体をヘアピン状に整形した後(図5)、矢印方向に所望のスロットピッチ分開き、更に他端を互いに反対方向にクランク状に整形したもの(図6)を電機子鉄心の内周側よりスロットに挿入する。
【0049】
ここで第一実施形態に示した半径方向への転移部(31a 15)に相当する部分はヘアピンの屈曲部(31a 25)であり、この部分は導体が皮膜をかぶったままであるのでコイルエンドA側は絶縁処理不要である。
【0050】
コイルエンド部B側の接続ルールは実施例1に記載した通りである。
【0051】
このようにして得られた電機子のコイルエンド部も図4と同様なコイルエンドを形成すので、冷却風を通過させるのに十分な隙間を確保出来る。
【0052】
尚、図6の如くヘアピンの他端を予めクランク状に整形せずに、まっすぐのまま電機子鉄心(32)の軸方向よりスロットに挿入した後に、所望のピッチ分折り曲げて整形してもよい。
(第三実施形態)
第一、第二実施形態では、セグメント導体を使用したが、図7に示す第三実施形態のように、連続線を用いて各相の巻線を形成してもよい。セグメント間の接続工数が無くなり、製造工数を低減できる。
(第四実施形態)
図8は第四実施形態を示すもので、導体の半径方向長さをa 、周方向長さをb としたときa >b の長さ関係とすることで、同一断面積の丸形導体や略正方形導体を使用した場合に比べて、コイルエンド内を通過して径方向へ流れる冷却風に対し、通風路断面積を確保して冷却性能を向上できる。また、n値を増加させた場合、周方向の長さを大幅に低減でき電機子鉄心の内径、外径長さを抑えることが出来る。つまりはオルタネータ自身の体格を小型出来るのでる。
【0053】
また、図8に示すように、スロット壁面は径方向に並行としてもよい。この場合、電気導体の断面形状がスロット形状に沿った平角形状であるので、高占積率化が容易である。導体のスロットへの挿入工程も、位置が決まりやすくなるので挿入しやすくなる。
(第五実施形態)
図10から図15は第五実施形態を示すもので、図10はオルタネータの断面図、図11〜15は電機子に関する説明図である。本実施形態は、各相の巻線の出力端を有する導体および同層どうしで接続される導体の形状や配置を変更して、オルタネータの軸方向寸法の小型化を図ったもので、本例のオルタネータは磁極対p=6(磁極数=12)、位相数m=3(X相、Y相、Z相)、1つの位相の巻線を構成する導体が隣接して配置されるスロットの数n=3である。
【0054】
図10に示すように、オルタネータ1は、界磁として働く界磁回転子2と、この回転子2からの回転磁束によって起電力を発生する電機子3と、回転子2と電機子3を支持するフレ−ム4と、電機子3の巻線31の出力線が接続されて交流電力を直流に変換する整流器5等から構成されている。
【0055】
回転子2は、ランデル型磁極鉄心(回転子鉄心)71、72、界磁コイル8、スリップリング9、10を備えている。ランデル型磁極鉄心71、72は、シャフト6に組付られたボス部から径方向外方に向かってディスク部が延び、ディスク部からそれぞれ6個の爪状磁極部73が軸方向に延びている。また、スリップリング9、10を介して励磁電流が流れる界磁コイル8は、磁極鉄心71、72に取り囲まれるように配置されている。
【0056】
回転子2は、シャフト6と一体になって回転するもので、シャフト6はプーリ20に連結され、自動車に搭載された走行用のエンジン(図示せず)によりベルトを介して回転駆動される。なお、各磁極鉄心71、72の軸方向両側面には冷却ファン11、12が、溶接やかしめなど適宜な手段によって固定されており、冷却ファン11、12は回転子2と一体となって回転して冷却風の流れを生じさせる。
【0057】
フレ−ム4の軸方向両端側には、冷却風吸入のための吸気孔41が設けられている。また、フレ−ム4には、電機子巻線31の第一コイルエンド31aおよび第二コイルエンド31bにそれぞれ対向した外周部分に、冷却風排出のための排気孔42が設けられている。
【0058】
図11に示すように、電機子鉄心32には、多相の電機子巻線31を収容できるように、複数のスロット35が形成されている。本実施形態では、回転子2の磁極数(12極)に対応して、3相の電機子巻線31を収納するように、108個のスロット35が周方向に等間隔に配置されている。電機子鉄心32のスロット35に装備された電機子巻線31は、1本1本の電気導体として把握することができ、スロット35のそれぞれの中には、例えば銅よりなる2本の電気導体が収容され、2本の電気導体とスロット35の内壁との間はインシュレータ34によって絶縁してある。なお、電気導体の断面は、スロット深さ方向(径方向)長さをa、スロット幅方向(周方向)長さをbとすると、a>bである扁平な長方形であり、2本の電気導体はスロット深さ方向に1列に配置されている。
【0059】
次に、図12〜15にて、巻線仕様および導体の形状や配置等について詳述する。図12は3相の電機子巻線31のうち1相のみを抜き出した巻線仕様図であり、外層側導体を実線、内層側導体を破線で示している。また、図12中の数字はスロットの番号を示し、スロット数は108個、NS磁極ピッチは9個のスロットに対応する。
【0060】
本実施形態の巻線仕様は、第1実施形態と同じであり、第(1+9k)スロットの導体群は1つのループ状となり電機子鉄心32を2回巻回して、2ターン/スロットの巻線が形成される。そして、第(1+9k)スロットの導体群と、第(2+9k)スロットの導体群と、第(3+9k)スロットの導体群とを直列接続して、6ターン/相の巻線を構成している。
【0061】
図13は図12の巻線仕様を構成する導体の一部(第1スロットと第10スロットに挿入される導体)の斜視図である。導体は略S字状に折り曲げられたセグメント導体であり、この導体は、スロット35内に収納される内部導体部31cと、この内部導体部31cの両側からスロット35外に延びる第一、第二コイルエンド31a、31bを有する。また、第一、第二コイルエンド31a、31bは、内部導体部31cから延びる斜行部を有し、この斜行部の先端部において異なるスロット35からの導体を接続している。なお、内部導体部31cから両側に延びる2つの斜行部が互いに逆向きになるように、また内層側導体の斜行部と外層側導体の斜行部とは逆の周方向に向くように、配置されている。
【0062】
そして、第10スロットの外層側導体の一方の斜行部31a11と、第1スロットの内層側導体の一方の斜行部31a12とが、第一コイルエンド31aの先端部31a15において半田付けや溶接等で接合されている。また、第10スロットの外層側導体の他方の斜行部31b11と、第19スロットの内層側導体の一方の斜行部31b12とが、第二コイルエンド31bの先端部31b15で半田付けや溶接等で接合されている。
【0063】
同様に、第10スロットの内層側導体の一方の斜行部31a10は第19スロットの外層側導体の一方の斜行部と接合され、第10スロットの内層側導体の他方の斜行部31b10は第1スロットの外層導体の一方の斜行部と接合される。以上の接合を繰り返すことにより、基本パターンとなる巻線を形成する。
【0064】
一方、図12において、巻線が反転する第100スロットと第1スロットからの第一コイルエンド31a側の先端部31a16は外層側導体どうしの接合であり、同様に、第101スロットと第2スロット、および、第102スロットと第3スロットの、それぞれの第一コイルエンド31a側は外層側導体どうしの接合となる。
【0065】
図14は、この反転する第100スロットと第1スロットに配置される導体の斜視図である。第100スロットに挿入された外層側導体の第一コイルエンド31a側斜行部31a13は、外層側が切断等にて削除され、内部導体部31cの径方向長さaの半分の径方向長さcを内層側に持ち、第1スロットに挿入された外層側導体の第一コイルエンド31a側斜行部31a14は、内部導体部31cの径方向長さaの半分の径方向長さcを外層側に持ち、これらの斜行部31a13、31a14はその先端部31a16において径方向に重ねられて半田付けや溶接等で接合されている。また、第101スロットと第2スロット、および、第102スロットと第3スロットの、それぞれの外層側導体は、第100スロットと第1スロットに配置される外層側導体と同様の構成である。なお、半分の径方向長さcの径方向位置を、逆にしてもよい。
【0066】
さらに、図12に示すように、第91スロットと第101スロットの第一コイルエンド31a側、および、第92スロットと第102スロットの第一コイルエンド31a側は、それぞれの内層側導体どうしが接合される。また、第93スロットと第100スロットの内層側導体は、第一コイルエンド31a側に出力端31aa’、31aaを有する。
【0067】
図15は、内層どうしが接合される導体、および出力端31aa、31aa′を持つ導体の斜視図であり、3つの導体群を直列接続した状態を示している。第91スロットに挿入された内層側導体の第一コイルエンド31a側斜行部31a19は、内部導体部31cの径方向長さaの半分の径方向長さcを内層側に持ち、第101スロットに挿入された内層側導体の第一コイルエンド31a側斜行部31a20は、内部導体部31cの径方向長さaの半分の径方向長さcを外層側に持つ。そして、これらの斜行部31a19、31a20は、その先端部31a18において径方向に重ねられて半田付けや溶接等で接合されている。また、第92スロットと第102スロットの、それぞれの内層側導体は、第91スロットと第101スロットに配置される内層側導体と同様の構成である。
【0068】
第93スロットに挿入された内層側導体の第一コイルエンド31a側斜行部31a21は、内部導体部31cの径方向長さaの半分の径方向長さcを内層側に持ち、かつ、径方向長さcが一定のまま先端部31a17、31a18よりも軸方向(図1の右方向)に突出した出力端31aa’を有する。また、第100スロットに挿入された内層側導体の第一コイルエンド31a側斜行部31a22は、内部導体部31cの径方向長さaの半分の径方向長さcを外層側に持ち、かつ、径方向長さcが一定のまま先端部31a17、31a18よりも軸方向(図1の右方向)に突出した出力端31aaを有する。
【0069】
位相数m=3、直列接続される導体群数n=3である本実施形態では、第一コイルエンド31a側斜行部の径方向長さcを内部導体部31cの径方向長さaの半分にした導体は、図12において第91スロットから第3スロットまでの連続して隣接する全21スロットに集中して配置してある。一般式としては、n×(2m+1)スロットに集中配置される。
【0070】
以上のように、各スロット35に導体を2本配置し、かつ隣接する3つのスロット内の導体群を直列接続しているため、見かけ上のターン数は6ターン/相と多くなり、立ち上がり回転数を低くすることができる。また、同層どうしで接続されるコイルエンドの径方向長さcを、内部導体部31cの径方向長さaの半分にしているので、同層どうし(内層と内層または外層と外層)が接合されるコイルエンドを径方向に重ねて配置しても干渉することがない。従って、従来は同層どうしを接続する場合、他のコイルエンドとの干渉を防止するために他のコイルエンドの先端よりもさらに軸方向端部側に延ばした渡り部が必要であったが、本実施形態によればそのような渡り部が不要である。よって、コイルエンドの実質高さを低くできるので、小型化が可能となる。
【0071】
ところで、従来のように渡り部を有するオルタネータにおいて、導体がさらに扁平化された場合、導体の機械強度が低下し、渡り部の振動が大きくなるので、フレーム4や他のコイルエンドとの干渉防止のための距離の拡大が必要となり、オルタネータの小型化に反する。また、渡り部の振動低下のために、別途、固着処理などを行うと、工数が増えるため、製造コストが上昇する。これに対し、本実施形態では、さらに立ち上がり回転数を低くするために直列接続される導体群数nを増し、それに伴って導体がさらに扁平になっても、同層どうしの渡り部が無いので、渡り部の振動対策(干渉防止や固着処理)が不要となり、小型化やコスト低減の効果を得ることができる。
【0072】
また、異層どうしで接続される標準形状の導体とは異なる形状の導体、すなわち各相の巻線の出力端31aa、31aa’を有する導体、および同層どうしで接続される導体(コイルエンドの径方向長さcを、内部導体部31cの径方向長さaの半分にした導体)を、隣接するスロットの数の合計がn×(2m+1)個の範囲内に配置することにより、標準形状の導体と異形状の導体との混在組み付け防止を容易とし、ひいては製造コストの低減につなげることができる。
(第六実施形態)
図16は第六実施形態を示すもので、同層どうしで接続されるコイルエンドの径方向長さを小さくするための具体的構成が、第五実施形態と異なる。
【0073】
図16は、第100スロットと第1スロットに配置される導体を示すもので、第100スロットに挿入された外層側導体の第一コイルエンド31a側斜行部31a13は、径方向中央部が稜線となるように、径方向の一端側(外層側)が他端側(内層側)に略180°折り曲げられ、これにより、斜行部31a13の径方向長さcは、内部導体部31cの径方向長さaの半分になっている。一方、第1スロットに挿入された外層側導体の第一コイルエンド31a側斜行部31a14は、径方向中央部が稜線となるように、径方向の内層側が外層側に折り曲げられ、これにより、斜行部31a14の径方向長さcは、内部導体部31cの径方向長さaの半分になっている。そして、これらの斜行部31a13、31a14は、その先端部31a16において径方向に重ねられて半田付けや溶接等で接合されている。
【0074】
本実施形態によれば、第五実施形態と同様の効果が得られるとともに、内部導体部31cと同じ断面積を保持したまま、斜行部31a13、31a14の径方向長さcを略半分にできる。
【0075】
なお、同層どうしで接続される他の導体も、上記した第100スロットと第1スロットに配置される導体と同様の構成にすることができる。
(第七実施形態)
図17は第七実施形態を示すもので、同層どうしで接続されるコイルエンドの径方向長さを小さくするための具体的構成が、第五実施形態と異なる。
【0076】
図17は、第100スロットと第1スロットに配置される導体を示すもので、第100スロットに挿入された外層側導体の第一コイルエンド31a側斜行部31a13は、この斜行部31a13の中間位置(ただし、内部導体部31cに近い位置)から斜行部31a13の先端にかけて略90°捻られて、内部導体部31cの周方向側面31c1と連続する面が径方向を向くようになっている。一方、第1スロットに挿入された外層側導体の第一コイルエンド31a側斜行部31a14も、この斜行部31a14の中間位置から斜行部31a14の先端にかけて略90°捻られて、内部導体部31cの周方向側面31c1と連続する面が径方向を向くようになっている。そして、これらの斜行部31a13、31a14は、その先端部31a16において内部導体部31cの周方向側面31c1と連続する面が径方向に重ね合わされて、半田付けや溶接等で接合されている。
【0077】
本実施形態によれば、第五実施形態と同様の効果が得られるとともに、内部導体部31cと同じ断面積を保持したまま、斜行部31a13、31a14の径方向長さを小さくできる。ここで、内部導体部31cの径方向長さaを内部導体部31cの周方向長さbの二倍以上にすれば、斜行部31a13、31a14の径方向長さを内部導体部31cの径方向長さaの半分以下にすることができる。従って、導体の偏平率が高い場合に、本実施形態は特に有効である。
【0078】
なお、同層どうしで接続される他の導体も、上記した第100スロットと第1スロットに配置される導体と同様の構成にすることができる。
(他の実施形態)
セグメント導体は、一方のコイルエンドの斜行部のみ所定の形状に成形しておき、スロットの軸方向の開口部から挿入した後、他方のコイルエンドの斜行部を成形しても良いし、あるいは、あらかじめ両側のコイルエンドを所定形状に成形しておき、スロットの内周側の開口部から導体を挿入し、その後にこの開口部を狭めるように塑性加工してスロット内の導体を固定してもよい。なお、後者の場合、セグメント導体ではなく、連続導体を使うこともできる。この場合、各セグメント導体の接合工程がほとんど不要となるので、大幅な組み付け工数の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態の車両用交流発電機の断面図である。
【図2】図1の交流発電機の巻線仕様図である。
【図3】図2の巻線仕様を構成するセグメント導体の一部の斜視図である。
【図4】図1の交流発電機のコイルエンド部の径方向側面図である。
【図5】第二実施形態のセグメント導体の斜視図である。
【図6】第二実施形態のセグメント導体の斜視図である。
【図7】第三実施形態の導体の一部の斜視図である。
【図8】第四実施形態の電機子の部分的断面図である。
【図9】従来技術のコイルエンド部の径方向側面図である。
【図10】本発明の第五実施形態の車両用交流発電機の断面図である。
【図11】図11の電機子の部分的断面図である。
【図12】図11の交流発電機の巻線仕様図である。
【図13】図12の巻線仕様を構成するセグメント導体の一部の斜視図である。
【図14】図12の巻線仕様を構成するセグメント導体の一部の斜視図である。
【図15】図12の巻線仕様を構成するセグメント導体の一部の斜視図である。
【図16】第六実施形態のセグメント導体の斜視図である。
【図17】第七実施形態のセグメント導体の斜視図である。
【符号の説明】
11、12…冷却ファン、31…電機子巻線、
31a、31b…コイルエンド、32…電機子鉄心、
35…スロット、71、72…回転子鉄心。

Claims (6)

  1. p対のNS磁極を持つ回転子鉄心と、m相の巻線を構成する電機子巻線と、前記電機子巻線を保持する複数のスロットを有する電機子鉄心とを備える車両用交流発電機において、前記各スロット内に、前記電機子巻線を構成する略長方形の断面を持つ導体が、周方向よりも径方向が長くなるようにして内層側と外層側に配置され、前記導体は、前記スロット内に位置する内部導体部と、この内部導体部から前記スロット外に延びるコイルエンド部とを有して、異なる前記スロットに配置された前記導体の前記コイルエンド部が接続され、内層側と外層側のうち同層どうしで接続される前記コイルエンド部の径方向長さを、前記内部導体部の径方向長さよりも短くし、隣接するn個(n≧2の自然数)の前記スロットに各2本収納された前記導体が直列接続されて1つの位相の巻線が形成され、前記スロットは2pmn個形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。
  2. 同層どうしで接続される前記コイルエンド部の径方向長さは、前記内部導体部の径方向長さの略半分であることを特徴とする請求項1に記載の車両用交流発電機。
  3. 同層どうしで接続される前記コイルエンド部は、径方向の一端側が他端側に折り曲げられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用交流発電機。
  4. 同層どうしで接続される前記コイルエンド部は、内部導体部の周方向側面と連続する面が径方向を向くように捻られていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用交流発電機。
  5. 前記各相の巻線の出力端を有する前記導体および同層どうしで接続される前記導体は、隣接する前記スロットの数の合計がn×(2m+1)個の範囲内に配置されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用交流発電機。
  6. 前記導体は略S字状に成形されたセグメント導体であり、このセグメント導体が接続されて前記巻線を形成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用交流発電機。
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