JP3635971B2 - 車両用交流発電機 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は乗り物の内燃機関により駆動される車両用交流発電機に関し、例えば乗用車、トラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両走行抵抗の低減のためのスラントノーズ化や、車室内居住空間の確保のニーズからエンジンルームが近年ますます狭小化する中で、車両用交流発電機の搭載スペースに余裕がなくなってきている。 一方、燃費向上のためエンジン回転は下げられ車両用交流発電機の回転も下がっている。しかしその一方で、安全制御機器等の電気負荷の増加が求められ、ますます発電能力の向上が求められている。即ち小型で高出力の車両用交流発電機を安価に提供することが求められている。
【0003】
また車外騒音低減の社会的要請や、車室内静粛性向上による商品性向上の狙いから近年ますますエンジン騒音が低下してきており、比較的高速で回転する補機、とりわけ車両用交流発電機のファン騒音や、磁気的騒音が耳につきやすい状況となってきた。
【0004】
従来、車両用交流発電機に一般的に用いられている固定子巻線は、連続線を固定子鉄心に装着する構成が採用されており、かかる固定子巻線の構成の下では、小型高出力低騒音といった互いに相反する要求に応えることが困難であった。
【0005】
一方、一般の大型の誘導機型などの発電機では、例えば固定子スロット内導体を2本とし、径方向に2層化し、その内外層の導体を交互に接続することで異なる相のコイルエンドの干渉を無くしているものがある。
【0006】
しかし、このようなものは車両用発電機にはそのまま使えないという問題点があった。すなわち、車両用交流発電機は、エンジンが最も低速のアイドル回転、すなわち発電機回転数で約1500rpm近辺で車両電気負荷に電力を供給しなければならない。このためには前記回転数、即ち約1500rpm以下でバッテリ電圧とダイオードドロップ分を加えた電圧である約15Vを発生しなければならない。しかし、一般の乗用車、トラック用などの1〜2kwクラスの車両用交流発電機においては、主としてその体格から決まるところの磁束量の制約に起因して、上述の一般大型発電機に見られるような構造では、上記低回転時の出力を得ることができない。特に、上述の一般大型発電機に見られる2本程度の少ない導体数では低回転時の出力を得ることが困難であった。更に、近年の燃費向上の為にアイドル回転数は低減される傾向であり、上述の一般大型発電機の構造ではますます対応できない状況となっている。
【0007】
また、低回転での出力向上のためのひとつの手段として、多極化により高周波で作動させることが考えられるが、上述の一般大型発電機の構造では、固定子鉄心と略同一軸長のセーレント型回転子が用いられており、かかるセーレント型回転子では磁極数を増すと回転子内の巻線スペ−スが減少するため各磁極の起磁力が低下するので、出力向上が難しい。すなわち、上述の車両用交流発電機に要求される性能を満たすことが困難であった。
【0008】
さらに、セーレント型回転子では、回転子内部に隙間を設けることが困難なため、固定子の内周面に向けての冷却風の導入や回転子内に設けられた界磁コイルへの冷却風の導入ができないという冷却上の問題があった。
【0009】
さらに、導体バーなどと呼ばれるU字型の電気導体を用いて車両用交流発電機の固定子巻線を構成するものとして、特開昭62−272836号、特開昭63−274335号、特開昭64−5340号が提案されている。しかし、かかる構成では、固定子鉄心が周方向に沿って積層されて円筒形に形成されるため、磁束通過方向に関して磁気的な抵抗が増加し、所要の性能を実現できない。また、実用的な強度の確保など解決すべき多くの課題を抱えている。
【0010】
また、WO92/06527にも車両用交流発電機の固定子に導体バーを用いた構成が提案されている。ここに示された構成によれば、1つのスロット内に4本の電気導体がスクエアに配置されている。
【0011】
かかる構成では、高出力化のために電気抵抗値を下げるべく電気導体断面積を増やすと、コイルエンドの間に隙間を設けることができない。さらに、周方向に並ぶ1つのスロット内の2本の電気導体のコイルエンドの先端において、他のスロットからの電気導体との各々の接合部の間に隙間を形成することも難しく、接合部どうしが短絡しやすいという問題も生ずる。
【0012】
また、車両用交流発電機の冷却のためには、古くは冷却ファンをフレ−ム外部に持ち軸方向に冷却風を流す通風構造が採用されており、近年はフレ−ム内部に冷却ファンを持ち、冷却風を直接コイルエンドに当てる構成が主流となっている。このような冷却構造の下では、上記のような従来技術の電気導体の構造では、高出力化のために電気導体の断面積を大きくすると高い冷却性を得ることができないという問題点があった。
【0013】
すなわち、WO92/06527に示された構成では、電気導体の断面積が制約されるため、高出力のための固定子の高占積率化が困難である。
【0014】
一方、隙間を形成するために1つのスロット内の電気導体を2本にする構成も考えられるが、かくのごとき少ない導体数では、アイドル回転すなわち低回転での出力を得ることが不可能であり、車両用交流発電機としては使うことができない。
【0015】
さらに、USP2928963には、固定子に導体バーを用い、ランデル型の界磁回転子を持った交流発電機が提案されている。しかし、この従来技術においても高出力と高い冷却性とを実現するための固定子巻線の構成は開示されていない。しかも、この従来技術に開示される構成は、軸方向の通風構造、あるいは冷却ファンを持たない構成であり、小型・高出力化のための冷却性向上に関する改良は、講じられていない。さらに、ここに開示された構成では、スロットあたりの導体数は2本であり、前述と同様に低回転での出力を得ることが困難である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のごとき従来技術の問題点に鑑み、今日の車両用交流発電機に要求される性能を満足しうる高い実用性を備えた改良された車両用交流発電機を提供することを目的とする。
【0017】
本発明の他の目的は、小型、高出力、低騒音を兼ね備えた車両用交流発電機を提供することである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、車両用交流発電機に要求される低速回転からの出力を確保できる回転子と固定子巻線の構造、および固定子巻線のコイルエンドにおける新規な冷却のための構成を提供することにより、車両用交流発電機に要求される高出力を確保でき、しかも発熱による効率低下、出力低下を抑えた車両用交流発電機を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、固定子巻線のスロット内における占積率を向上させ、その一方でスロットの外においては、回転子との共働により高い冷却性と低騒音とを発揮しうる車両用交流発電機を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、回転周方向に沿って交互にNS極を形成する界磁回転子と、該回転子と対向配置された固定子鉄心、及びこの固定子鉄心に装備された多相固定子巻線を備える固定子と、前記回転子と固定子とを支持するフレームとを有する車両用交流発電機において、
前記界磁回転子は、前記N極および前記S極を提供する複数の爪状磁極を有するランデル型鉄心を備え、前記固定子鉄心は、積層板を貫いて延びる複数のスロットが形成された積層鉄心を備え、前記多相固定子巻線は、複数の導体セグメントを備え、
これら複数の導体セグメントは、前記スロット内においては、前記スロットの深さ方向に関して内層導体および外層導体として二対以上の対をなして前記スロットの深さ方向にのみ配列され、前記スロット内に互いに絶縁して収納されており、前記スロット外においては、前記固定子鉄心の端面側に延び出して配置されており、前記界磁回転子のNS極の磁極ピッチに対応して離間する異なるスロット内の異なる層の導体を直列接続する接続パターンによってコイルエンドを形成しており、その結果前記固定子鉄心の端面側には前記接続パターンを主として繰り返すコイルエンド群が形成されており、さらに、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントは、前記フレーム内における冷却風の通風方向と交差して延びるよう配置され、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントを横切って冷却風が流れる構成が提供されるという構成を採用することで達成される。
【0021】
複数の導体セグメントは、スロット内においては、スロットの深さ方向に関して内層導体および外層導体として二対以上の対をなしてスロットの深さ方向にのみ配列される。かかる構成によると、スロットの外において、電気導体のすべてを固定子の径方向に関して離間させることができるので、コイルエンド群内において複数のコイルエンドが互いに密着することを防止でき、コイルエンド群内への通風を容易にして冷却性を高め、冷却風とコイルエンドとの干渉による騒音の低減を図ることができる。
【0022】
複数の導体セグメントは、スロット外においては、前記固定子鉄心の端面側に延び出して配置されており、前記界磁回転子のNS極の磁極ピッチに対応して離間する異なるスロット内の異なる層の導体を直列接続する接続パターンによってコイルエンドを形成している。これによれば、固定子鉄心の各軸方向側面のコイルエンドの並びが同一方向となり、異なる相のコイルエンドの干渉を回避することができる。よって、導体はスロット奥まで挿入することができ、占積率を向上することにより出力向上が可能となる。また、コイルエンドに凹凸が無く、一様な繰り返し紋様を形成しているので、冷却風との間で生ずる騒音も低減できる。
【0023】
これにより、各相のコイルエンドの干渉を抑止でき、固定子巻線の高占積化を図ることができるので、出力を向上する効果がある。また、コイルエンド内を冷却風が横切るので、従来の固定子巻線のコイルエンドに対して格段に有効表面積が増し、この部分の導体セグメントの冷却を飛躍的に向上させることができ、高出力化が可能となる。また、導体のスロット内の位置に起因する各相の固定子巻線の導体長さ、漏れインダクタンスは均一化されるので、固定子巻線に流れる電流が均一化され、各相の発熱量も同じとなる。よって、局部的な固定子巻線の発熱や起磁力アンバランスを防止でき、温度低減、低騒音化を図ることができる。更に、コイルエンドに凹凸が無く、一様な繰り返し紋様が形成されること、及びコイルエンド内を冷却風が横切るので、冷却風との間で生ずる騒音も低減できる。また、ランデル型回転子との組合せであるので、鉄心(以下ポールコアと称す)の成形形状を変えるのみで極数の変更、多極化が容易である。また、爪状磁極の耐遠心剛性もあり、加えて界磁コイルをポールコア内央部のボス部に確実に装着できるから回転子の耐遠心性が確保でき、エンジン回転数の2〜3倍の回転比で運転できることになる。
【0024】
即ち、一般誘導機等と異なり、高周波で作動できるため、スロットあたりの電気導体数が少なくても、車両アイドル回転数に対応する1500rpmよりも低い回転数、例えば1000rpmなどの低速から発電を開始できる。
【0025】
また、ランデル型回転子との組合せであるので、磁極間に空間を設けることができ、界磁コイルの冷却上の利点を得ることができる。さらに、磁極自身が回転により冷却風を送風する構成とすることもできる。かかる構成は、軸方向への送風、あるいは径方向への送風に利用できる。よって、一般誘導機等に使われている、磁極間に空間の無い、中実円柱形状であるセ−レント型回転子に比べて、効率的に固定子内周面、固定子巻線、界磁コイルなどを冷却できる。なお、ランデル型回転子の磁極間は非磁性材料で埋められてもよい。
【0026】
すなわち、かかる構成を採用することで、スロット内における導体の占積率を高めることができる。しかも、コイルエンドにおける複数の導体セグメントを横切って冷却風が流れるので、コイルエンドにおいて高い放熱性が得られ、高出力化に伴う熱的な問題を回避することができる。特に、フレーム内に形成される空気流を利用して高出力化に伴う熱的な問題を回避することができる。このように、従来の車両用交流発電機にない構成が採用されることで、ランデル型界磁回転子を用いた実用的な構成の下で、高出力化に伴う熱的な問題を回避することができるという利点が得られる。
【0027】
なお、固定子および前記回転子は、前記回転子を駆動するエンジンの回転数がアイドリング回転数の領域内にあるときに、前記巻線端に15(V)以上の電圧を出力するように設定されていることが望ましい。
【0028】
これによれば、市街地での走行で最も発生頻度の高いアイドリング回転の時にも必要最低限の車両の電気負荷に電力を供給できる。よって、アイドリング回転の時に供給可能電力以上の要求のある場合バッテリからも電力が供給されるが、これをできるだけ少なく抑え、車両が走行している時には発電機の出力が増えてバッテリを充電して元通りの状態に早期に復帰させることができる。また、アイドリング回転数を下げた場合でも上記の発電性能を持つので、燃費向上が可能となる。
【0029】
また、前記ランデル型鉄心の爪状磁極の外径をL1とし、回転軸方向の長さをL2として、これらの比率を、L1/L2≧1.5とすることが望ましい。
【0030】
かかる構成は、セーレント型回転子が界磁コイルなどの耐遠心性の問題からL1が制限され、高出力化のための磁気抵抗低減手段としてL2を大きくし、比率L1/L2が比較的小さく設定されるのに対し、ランデル型回転子では前記セーレント型回転子に対し耐遠心性が勝り、比率L1/L2は1.5以上に設定されることによる。また、この場合、回転に伴う軸方向外部からの冷却風取り込みの面積が拡大し、冷却風量を増加させることができ、冷却性能を向上できるという効果もある。
【0031】
また、前記スロット内において電気的に絶縁されたすべての導体セグメントは、前記固定子鉄心の端部に形成されたコイルエンドにおいて空間的に離間して配置されていることが望ましい。
【0032】
かかる構成によると、すべての導体セグメントは、コイルエンドにおいて良好に冷却され、導体の間での冷却性のばらつきがなく、均等な冷却を得ることができる。
【0033】
また、前記スロットの両側に位置する鉄心歯先部の少なくとも一部を塑性変形させて、前記スロットの内周側の開口の巾を前記スロット内の内壁間距離より狭く形成してなるという構成を採用してもよい。
【0034】
かかる構成によると、鉄心歯先部の塑性変形の時にスロット内の導体セグメントを更に径方向内周側からスロット奥に押し込むので、より高占積率化を達成できる。更に、固定子鉄心の歯部が十分固定できるため、鉄心の剛性が上がりステータ鉄心の振動を抑制することができるので、磁気騒音を低減できる。また入口部を内壁間距離より狭くすることによりウエッジ等係止部材を廃止できるので、コスト低減が可能である。更に歯先部を塑性加工させることにより加工硬化するため、剛性の高い電気導体を使っても径方向内側に飛び出すことがない。なお、かかる構成は、スロット内の断面形状にかかわりなく採用することができる。ただし、スロットの断面形状を、深さ方向に関して巾が一定な平行スロットとすることが望ましい。これにより、内層導体と外層導体との形状を同じにしてもスロット内の隙間が不均一にあくことなく、高占積率化が可能である。
【0035】
また、導体セグメントは、前記スロット内における断面形状が前記スロット形状に沿った略矩形状であるという構成を採用することが望ましい。
【0036】
かかる構成によると、スロット内における導体の占積率を高めることが容易になる。また、スロット形状に沿った略矩形状であるため、導体から固定子鉄心への伝熱を向上できる効果もある。なお、略矩形状としては、スロット内の形状に沿った断面形状であることが重要であり、正方形、長方形といった形状の他、4辺の平面と丸い角とで構成された形状、長方形の短辺を円形とした長円形などを用いることができる。なお、正方形、長方形を用いることで、スロット内における占積率を向上することができる。また、断面積の小さい導体にあっては、長円形を用いてもよい。かかる断面形状の導体セグメントは、円形断面の導体を、プレスして形成することができる。
【0037】
また、複数の前記導体セグメントは、裸の金属部材よりなり、前記スロット内において複数の前記導体セグメントの相互間と、複数の前記導体セグメントと前記スロットの内壁面との間とに介装されて電気的な絶縁を提供する電気絶縁部材を備え、複数の前記導体セグメントは、前記スロット外においては、互いに空間的に離間して配置されているという構成を採用してもよい。
【0038】
これによれば、導体セグメントの絶縁皮膜を廃止でき、素材費を大幅に低減できる。更に絶縁皮膜の破損に配慮することなく、プレス加工できるなど生産工程が大幅に簡略化でき、低コスト化を図ることができる。また、従来耐熱温度が最も低かった絶縁皮膜の廃止により、固定子巻線の耐熱温度を上げることができるので、発熱に対する信頼性が向上する効果もある。
【0039】
また、前記固定子鉄心と該スロットに収納された導体セグメントとからなる固定子の軸方向全長が、前記ランデル型回転子の軸方向全長と同等以下である構成を採用してもよい。
【0040】
かかる構成によると、回転子に対して軸方向に短い固定子が配置されるため、これらの配置を卵形にすることができる。このため、フレームを含めて卵形の発電機外殻を提供でき、搭載スペ−スの狭小化に対応できると共に、機械的強度の向上による磁気騒音の低減を図ることができる。
【0041】
また、前記導体セグメントのスロット外に位置する部分の少なくとも一部が略扁平形状である構成を採用してもよい。
【0042】
かかる構成によると、コイルエンド部における導体セグメントからの放熱面積を大きくすることができる。さらに、複数のコイルエンドのそれぞれに扁平形状を採用し、それらを径方向と平行に配置することで、コイルエンド間の隙間を確保でき、さらには径方向への通風抵抗を低減できる。なお、導体セグメントは部分的に扁平形状に成形する他、スロット外においてはその全体を扁平形状としてもよい。さらには、スロット内も含めて全体を扁平な断面形状をもって形成してもよい。なお、扁平形状としては、長方形断面、長楕円断面などを採用することができる。
【0043】
また、前記界磁回転子の磁極間には磁石を介在し、界磁磁束に磁石磁束を加え前記固定子に向かわせる構成を採用してもよい。
【0044】
かかる構成によると、ランデル型界磁回転子の性能向上による高出力、高効率といった効果を得ることができる。しかもかかる効果を、固定子側における損失によって失うことなく、固定子巻線の改良による放熱性向上の効果によって十分に引き出すことができる。
【0045】
また、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントは、それらの表面の殆ど全体が前記冷却風にさらされている構成を採用することが望ましい。
【0046】
かかる構成によると、高い冷却性を、すべての導体セグメントに対して均等に発揮させることができる。
【0047】
なお、かかる構成は、導体セグメントをスロット内において径方向にのみ配列した構成、あるいは導体セグメントを裸線としてそれらを空間的に離間させて絶縁した構成、あるいはスロット外においても矩形の導体セグメントを採用した構成との組合せの下で、比較的簡単に実現できるという製造上の利点と、より高い冷却性を実現できるという利点とを発揮する。
【0048】
また、前記コイルエンド群が、前記固定子鉄心の両端にそれぞれ形成されており、前記フレーム内にはそれぞれの前記コイルエンド群に対応して2つの冷却風の通風経路が形成されているという構成を採用することが望ましい。
【0049】
かかる構成によると、2つのコイルエンド群がそれぞれの通風経路によって確実に冷却される。しかも、その冷却は、コイルエンド群内の導体セグメントが、そこを横切る冷却風によって冷却されるため、熱に起因する損失上、効率上の問題点を低減し、さらには騒音上の問題点を低減する。また、前記フレーム内における冷却風を生じさせる送風手段を備えることが望ましい。
【0050】
かかる構成によると、フレーム内に確実に冷却風の流れを作り出すことができ、コイルエンドを確実に冷却することができる。なお、送風手段としては、専用の冷却ファンを設ける他、ランデル型界磁回転子の形状を利用するなどの構成を採用することができる。
【0051】
さらに、前記送風手段は、前記界磁回転子の軸方向端部に設けられており、前記界磁回転子の回転により遠心方向外側に向けて送風し、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントを横切って流れる冷却風を生じさせる送風手段を備える構成を採用することが望ましい。
【0052】
かかる構成によると、固定子のコイルエンド群の内側に近接して送風手段が配置され、しかも、遠心方向外側へ向かう冷却風はコイルエンド群内を横切って流れた後フレームに形成された通気口から排出されるため、コイルエンド群へ強力かつ大量の冷却風を提供することができる。しかも、コイルエンド群内においては導体セグメントの形状が改良されているため、低騒音で高い冷却性、放熱性が得られる。なお、ここにいう「遠心方向外側に向けて送風」は、遠心方向成分のみによる送風の他、いくらかの軸方向成分を含んだ送風であってもよい。かかる送風方向の設定は、界磁回転子の冷却などの要求に応じて適宜選択することができる。
【0053】
また、前記送風手段は、前記界磁回転子の軸方向の両端部に設けられているという構成を採用することが望ましい。
【0054】
かかる構成によると、界磁回転子の軸方向の両側において冷却風を得ることができる。なお、固定子の両側にコイルエンド群を形成した構成と併用することで、2つのコイルエンド群のそれぞれを、対応する送風手段で冷却することができる。
【0055】
また、前記送風手段は、複数のブレードを有する送風ファンを備えるという構成を採用することができる。かかる構成によると、冷却風を確実に得ることができる。
【0056】
また、前記送風手段は、前記複数の爪状磁極に対応して形成された前記ランデル型鉄心の形状により提供されるという構成を採用してもよい。
【0057】
かかる構成によると、ランデル型鉄心が本来的に有する複数の爪状磁極に対応した形状によって冷却風を得ることができる。なお、かかる構成では、ランデル型鉄心のみで送風する構成を採用した場合には、専用の送風ファンを不要とでき、部品点数、加工工数を低減できる。また、送風ファンと併用して共同して送風する構成を採用した場合には、送風風量を増加することができる。
【0058】
なお、前記ランデル型鉄心の軸方向端部と、前記フレームの内壁面とを近接して対向させて配置してなる構成を採用することができる。
【0059】
かかる構成によると、フレームの内壁面をシュラウドとして機能させて、ランデル型鉄心の軸方向端部の形状を利用して送風することができる。なお、シュラウドとしてのフレームの内壁面とは、フレームとしての金属製部材の内壁面の他、フレームに装備された部品であってもよい。
【0060】
また、前記フレームには、前記界磁回転子を駆動するプーリの装着端に面して前記送風手段のための吸気口が形成され、前記吸気口の最外径は、そこに装着されるべきプーリの最外径より小さいという構成を採用することができる。
【0061】
かかる大直径のプーリを採用する場合でも実用的な車両用交流発電機を提供できる。すなわち、小型高出力化を図る場合、トルク増加によりベルト寿命が低下する問題があるため、プーリ径を大型化してベルトに加わるストレスを低減する必要がある。ところが、かかる構成では、プーリがフレ−ムの吸入孔をふさいでしまい、通風抵抗が増すため冷却風量が減少する。しかし、本案では固定子の改良により冷却性を向上しているため、冷却風量が減少してもコイルエンドを冷却でき、ベルト寿命を確保しつつ、小型高出力化を達成できる。
【0062】
さらに、送風手段を採用する構成においては、前記コイルエンドに対応して、前記フレームには前記導体セグメントを横切って流れる冷却風の通風孔が形成されているという構成を採用することが望ましい。
【0063】
かかる構成によると、導体セグメントを横切って流れる冷却風を効率よく流すことができる。なお、かかる構成は、固定子鉄心の両側にそれぞれコイルエンド群を構成する場合には、それぞれのコイルエンド群に対応して通風孔が設けられることが望ましい。
【0064】
また、前記コイルエンドは、前記スロットから延び出す前記導体セグメントの端部を接合して構成されており、一方の導体セグメントの端部が、前記磁極ピッチの半分の距離を少なくとも周回する角度と長さとを持っているという構成を採用することができる。
【0065】
これによれば、導体セグメントをスロット内から延び出して配置し、他の導体セグメントと接合することでコイルエンドが形成される。かかる接合により形成されたコイルエンドが、そこを横切って流れる冷却風によって冷却される。このような接合を伴う構成を採用することにより、導体セグメントを採用できる。なお、接合とは、超音波溶接、ア−ク溶接、ろう付けなどによる電気的接続をいう。
【0066】
また、導体セグメントは、それぞれが異なるスロット内に収容される2本の直線部を有する略U字状セグメントであって、第1のU字状セグメントの端部と、第2のU字状セグメントの端部との接合を、前記接続パターンとして前記コイルエンドが形成されているという構成を採用することが望ましい。
【0067】
かかる構成によると、部品点数及び接合箇所が半減でき製造工程が容易となる。また、接合部を固定子の軸方向片側にそろえることからも、生産工程が容易となる効果がある。
【0068】
また、複数の前記U字状セグメントのターン部は、コイルエンドとして前記固定子鉄心の一方の端面側から軸方向に突出して配置され、しかも互いに離間して配列されて第1コイルエンド群を形成し、複数の前記U字状セグメントの端部は、前記固定子鉄心の他方の端面側から軸方向に突出して配置され、前記コイルエンドを形成するように所定の接続パターンで接合され、しかもこれらコイルエンドが互いに離間するように配列されて第2コイルエンド群を形成しているという構成を採用することができる。
【0069】
また、前記導体セグメントは、スロットの両側から突出する2つの端部をもったセグメントであり、前記固定子鉄心の一方の端部において、第1セグメントの一方の端部と、第2セグメントの一方の端部との接合を前記接続パターンとして一方のコイルエンドが形成され、前記固定子鉄心の他方の端部において、前記第1セグメントの他方の端部と、第3セグメントの他方の端部との接合を前記接続パターンとして他方のコイルエンドが形成されているという構成を採用してもよい。
【0070】
これによれば、導体セグメントは一方向に延びる単純形状にできるので、導体セグメント自体の製造工程が容易となる。また、あらかじめ成形した導体セグメントを径方向内周側からスロットへ押し込むことができるので、軸方向から挿入する場合に比べコイルエンド部の加工が不要となり製造工程が容易になるとともに、さらに高占積率化が可能となる。
【0071】
また、前記導体セグメントの両方の端部の周回長さの合計が、前記磁極ピッチに対応しているという構成を採用することが望ましい。
【0072】
これによれば、一定形状のセグメントを利用して固定子上を周回する固定子巻線を形成することができる。従って、導体セグメントの形状を統合し、種類を低減でき、導体セグメントを製造するためのプレス型などの製造設備を安価にできる。また、接合部を固定子鉄心の両側面に配置し、しかも同じ形状とすることで接続部の生産工程が容易となる。
【0073】
また、さらに整流器を備え、前記導体セグメントの一部が前記整流器の整流素子の電極に直接接続されている構成を採用してもよい。
【0074】
これによれば、整流回路を構成するための端子台等の接合部材が不要であり、簡単な構成の低コストで小型の整流器を提供できる。なお、かかる整流素子との直接接続のためのセグメントは、他のセグメントより長いなど、所定の接続パターンを繰り返して接合される他のセグメントとは異なる形状とすることが望ましい。
【0075】
また、前記整流素子の電極に接続される前記導体セグメントは、前記固定子と前記整流素子電極との間において変形しやすい部分を有するという構成を採用してもよい。
【0076】
これによれば、導体セグメントの変形で振動などを吸収でき、整流素子の破損を防止する事ができ高信頼性を実現できる。なお、変形しやすい部分としては、電気導体の一部を細くした形状などを採用することができる。
【0077】
また、前記U字状セグメントのターン部側に整流器を配置して前記固定子巻線の巻線端と接続したという構成を採用してもよい。
【0078】
かかる構成によると、巻線を形成するためにU字状セグメントの端部を接合する時に、整流素子の電極に接続される導体が邪魔にならず、同一パタ−ンの繰り返し接合が可能となるので、製造工程が容易となり、コスト低減が可能となる。
【0079】
また、前記U字状セグメントのターン部とは反対側に整流器を配置して前記固定子巻線の巻線端と接続したという構成を採用してもよい。
【0080】
かかる構成によると、U字状セグメントのタ−ン部形状を同一にできるため、セグメントの製作工数を短縮でき、コスト低減が可能となる。
【0081】
また、前記固定子は、相互に短絡して中性点となす引き出し配線を有するという構成を採用することができる。
【0082】
かかる構成によると、固定子上において中性点接続を実現できる。
【0083】
なお、導体セグメントを延長して敷設し、複数の導体セグメントを直接に接続して中性点接続を得ることが望ましい。特に、断面形状が矩形の導体セグメントを採用した場合には、十分な強度が得られ、他のコイルエンドとの間にも空間を確保しながら敷設することができる。また、放熱面積を増加し、固定子コイルの冷却性を向上することもできる。
【0084】
なお、前記導体セグメントは、断面形状が長方形状の電気導体により構成されており、前記コイルエンドにおいては、その断面の長手方向を径方向に配列して配置されていることが望ましい。
【0085】
かかる構成を採用することで、コイルエンド群の通風抵抗を低減でき、低騒音化を図ることができる。なお、長方形状の断面形状としては、長方形のほか、長方形の短辺を曲面とした形状や、長楕円形などを用いることができる。
【0086】
なお、複数の前記導体セグメントは、前記コイルエンド群において互いに他の導体セグメントと接合されて複数の接合部を形成しており、複数の前記接合部は、多重の環状に配列されており、前記コイルエンド群内において周方向並びに径方向に関して互いに離間して配置されているという構成が採用されることが望ましい。
【0087】
かかる構成によると、接合部は、複数の導体セグメントの配置、すなわちスロットの配置に対応して、周方向に沿って環状に配列される。しかも、スロット内には、複数の導体セグメントを径方向にのみ配列して収容しているため、接合部の環状の配列を、同心状の多重に配置することができる。このため、複数の接合部を、周方向ならびに径方向へも離間させて配置することができ、複数の接合部の間に確実に隙間を形成できる。また、接合部間の短絡を容易に回避できる結果、接合工程における利点が提供される。
【0088】
【実施の形態】
次に、この発明を適用した車両用交流発電機を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0089】
(第一実施例の構成)
図1から図8はこの発明の第一実施例を示したものである。図1は特に自動車用に適合された車両用交流発電機の主要部を示した図である。図2から図8は本実施例の固定子の説明図である。
【0090】
この車両用交流発電機1は、電機子として働く固定子2、界磁として働く回転子3、回転子3と固定子2とを支持するフレ−ム4、および固定子2に生じる交流電力を直流電力に変換する整流器5を有している。この整流器5の出力は12Vのバッテリに接続されている。回転子3は、シャフト6と一体になって回転するもので、一対のランデル型ポールコア7、冷却ファン11、界磁コイル8、スリップリング9、10、および16個の永久磁石51によって構成されている。永久磁石51は、図示せぬ磁石保持器によって連結されている。
【0091】
ポールコア爪間に介在された永久磁石51は、直方体のフェライト磁石を使用している。その寸法は、磁極間幅を8mm、軸方向長さを24mm、径方向長さを9mmに設定してある。また、界磁コイルは、平角導体を使用し、抵抗値を1.8Ω、ターン(T)数を330Tに設定してある。また、永久磁石51には、湿式異方性磁石を用い、−30°C下でフル励磁した際に5%以下の減磁特性に抑制できる磁石材を用いている。
【0092】
また、ポールコアのボス部の径はφ50mmであり、シャフト6の径はφ17mmに設定している。このポールコアのボス部の断面積よりシャフト6の断面積を引いた断面積を極対数で割ったものを基準として、略同一となるように各部磁極断面積を設定している。
【0093】
シャフト6の端部には、プーリが固定されている。プーリは、自動車に搭載された走行用のエンジン(図示せず)により回転駆動される。
【0094】
ランデル型コア7は、一対のポールコアにより構成されている。コア7は、シャフト6に組付られたボス部71、ボス部の両端より径方向に延びる2つのディスク部72、及びディスク部72の先端に配列された16個の爪状磁極73を有する。
【0095】
フレーム4には、その軸方向の両端に、冷却空気の吸入孔41、42が開設されている。さらに、フレーム4には、その外周部に、冷却空気の吐出孔43、44が開設されている。吐出孔43、44は、コイルエンド31に対向して2列の環状に配列されている。また、プーリの外径はフレ−ム4の軸方向端面の吸入孔41の外径よりも大きく設定されている。
【0096】
固定子2は、固定子鉄心32、固定子巻線を構成する複数の導体セグメント33、及び固定子鉄心32と導体セグメント33との間を電気絶縁するインシュレータ34で構成され、フレ−ム4により支えられている。固定子鉄心32は、薄い鋼板を重ね合わせた積層型のもので、その内周面には複数のスロット35が形成されている。
【0097】
ひとつのスロット35内には、2本の矩形状の電気導体が、内層導体、外層導体として挿入されている。これら電気導体は、導体セグメント33によって提供されている。導体セグメント33は、U字状、あるいはV字状と呼び得る形状である。
【0098】
固定子巻線は電気接続された多数の導体セグメント33により構成されている。固定子鉄心32の軸方向端面の一方に導体セグメント33のターン部33cが配置され、その他方に接合部33dが配置されている。接合部33dは、異なる導体セグメント33の端部を接続して形成されている。導体セグメント33は、固定子鉄心32の両端に突出して、それぞれコイルエンド31を形成している。そして、複数の導体セグメント33が、固定子鉄心32上に環状に配列される結果、環状のコイルエンド群が形成されている。
【0099】
導体セグメント33のうち、固定子鉄心32から延び出す稜線部33eは外層、内層で逆方向に傾斜している。コイルエンド群の中で隣接する導体セグメント33の間には電気絶縁が確保できる所定の隙間が設けられている。
【0100】
コイルエンド31には、回転子3のポールコア7のディスク部72が対向している。
【0101】
なお、この導体セグメント33の絶縁皮膜はあっても無くとも良い。
【0102】
またインシュレータ34は図4に示されるように、固定子鉄心32と導体セグメント33との間、スロット内の各電気導体の間を絶縁すべくS字形状に配置されている。
【0103】
また、固定子鉄心32の先端歯部は固定子鉄心32の製作時又は導体セグメント33挿入後の押し曲げ等により加工硬化を加えている。
【0104】
上記固定子巻線は、X、Y,Zの3相巻線を有している。各相の一方の巻線端33fは、軸方向に延び出しており、整流器5に設けられた整流素子52の電極部53に直接、ヒュージング溶接等により電気接続されている。巻線端33fには、振動を吸収し、応力の伝達を緩和するために、断面積を狭めた部分33gが形成されている。
【0105】
各相の他方の巻線端は図22に示すように中性点33kとして直接又は導体を介して電気接続されている。
【0106】
固定子巻線の製造工程を説明する。
【0107】
U字状の導体セグメント33は、図3に示すように、内層側導体部33aと外層側導体部33bとターン部33cとで構成されている。このセグメント33は銅平板から折り曲げ、プレス等で製作される。
【0108】
複数の導体セグメント33は、固定子鉄心32の軸方向端面の同一側に複数のターン部33cが揃うように重ねられる。そして、図4に示すように外層側導体部33bがスロット35の深さ方向の奥側に、内層側導体部33aがスロット35の深さ方向の手前側に位置するように挿入される。その結果、略平行なスロット35の側壁に、電気導体の両側面がインシュレータ34を介して対向するように圧入される。
【0109】
一方、固定子鉄心32の他端側には、複数の導体セグメント33の端部が、内層、外層として突出して配列される。そして、図5に示すように、内層と外層とが周方向に反対方向に曲げられる。内層と外層とは所定のスロット数だけ曲げられる。その後、異なる層の異なる導体セグメント33の端部どうしが接合され、接合部33dが形成される。この接合部33dとしては、電気導通するように超音波溶着、アーク溶接、ろう付け等を採用できる。
【0110】
本実施例では回転子3の磁極数を16に設定してあり、固定子鉄心32のスロット数を96に設定し、固定子巻線は3相巻線を構成している。ステータ外径はφ130mmであり、内径はφ102mmに設定してある。この固定子鉄心23の積厚は34mmであり、板厚0.5mmのSPCC材を積層し、レーザ溶接等で固着している。スロットは電気角で30°ピッチに相当する3.75°ピッチで等間隔で設定している。その形状は、側面を平行とした略矩形状であり、その側面幅は1.8mm、奥行きは10mm、背厚は3.5mm、開口幅は0.8mmに設定されている。また、先端歯先部の径方向厚さは0.5mmに設定されている。
【0111】
このスロット内に挿入される電気導体は、厚さ1.6mm、幅4.5mmであり、角部には0.6mm以下のRが取ってある。スロットと電気導体との間には、約100μmの厚さのインシュレータ34が介在している。
【0112】
具体的結線例を図6、図7、図8を使用して説明する。図6、図7の下側の渡り線部はセグメントのターン部33cであり、上側が接合部33dである。図中実線は内層の電気導体、一点鎖線は外層の電気導体を示す。
【0113】
まず、3相巻線のうちのX相について説明する。スロット番号の4番から6スロットおきに94番まで(4番、10番、16番……94番)が第1のスロット群を成している。これらに隣接する5番から6スロットおきに95番まで(5番、11番、17番……95番)が第2のスロット群を成している。
【0114】
第1スロット群に収容された複数の導体セグメント33によって形成される第1巻線は、2本の波巻巻線を含んでいる。また、第2スロット群に収容された複数の導体セグメント33によって形成される第2巻線は、2本の波巻巻線を含んでいる。
【0115】
これら第1巻線と第2巻線とは、2つの結線部102と、1つの結線部103とを経由して直列接続されている。第2巻線の2本の波巻巻線は、結線部103によって反転して直列接続されている。そして、その両端それぞれに、結線部102によって第1巻線の波巻巻線が直列接続されている。そして、第1巻線の2つの端部が、巻線端Xと、巻線端X’として引き出される。
【0116】
なお、結線部102は、5スロット離れたスロット内に収容された内層電気導体と外層電気導体とを接続している。結線部103は、6スロット離れたスロット内に収容された同じ層の電気導体を接続している。
【0117】
この結果、X相は、電気角で30°位相がずれた第1巻線と第2巻線とが直列接続されて構成される。そして、第1巻線が2T、第2巻線が2Tであることから、4Tの固定子巻線が構成される。同様にして、電気角120°ピッチでY相、Z相が形成され、図8に示すようにこれらの3相が星形結線されている。
【0118】
なお上記実施例では、X相の第1スロット群と、Y相の第1スロット群と、Z相の第1スロット群とが第1スロット組に属し、X相の第2スロット群と、Y相の第2スロット群と、Z相の第2スロット群とが第2スロット組に属する。そして、これらスロット組に装備された巻線は、コイルエンドにおいてすべてが均等に外部に露出しており、均等に冷却風にさらされる。そして、電気的に隣接する2つの巻線が直列接続されて交流として合成されており、2組のスロット組により提供される6つの巻線が、3相結線されている。また、これら巻線はコイルエンド間に隙間をもっているため、風下側に配置されるコイルエンドであっても十分に風にさらされる。このため、巻線毎の放熱に寄与する表面積の差がほとんどない。つまり、3相の多相交流発電機として、2倍の相数である6相に相当する巻線を含むにもかかわらず、すべての巻線が均等な冷却条件に置かれる。
【0119】
なお、図5、図6、図7に示した固定子巻線では、導体セグメント33のターン部33cが固定子鉄心32の一方の端面側に配列され、整流器5に接続される巻線端33fが固定子鉄心32の他方の端面側から引き出されている。
【0120】
(実施例の作用効果)
上記構成とすることにより、内層に位置する複数の導体セグメント33の稜線部33eの傾斜方向を同一方向とすることができ、しかも外層に位置する複数の導体セグメント33の稜線部33eの傾斜方向を同一方向とすることができる。このため、多相の固定子巻線をコイルエンドで干渉無く配置できる。よって、スロット内における電気導体の占積率を向上して高出力化できる。しかも、コイルエンドにおいて隣接する電気導体の間には、電気絶縁が確保できる隙間が設けられるので温度上昇が大幅に抑制される。特に本実施例では、ランデル型回転子の軸方向端部に内扇ファンとしての冷却ファン11を設け、コイルエンド31の外周側に対応してフレーム4に通気孔としての吐出孔43、44を設けているため、コイルエンド群内を通ってフレーム外周部に向けて抜ける冷却風の通風抵抗を極端に低減でき、冷却性を大きく向上させることができる。
【0121】
また、隣接するスロット群の巻線を直列接続して固定子巻線とすることで、スロットあたりの電気導体数を少なくしてコイルエンドでの導体間の隙間を確保しつつ、車両用発電機に必要なT数を得ることができる。
【0122】
回転子の磁極数の3倍のスロット数で固定子を設計する従来方式の場合、スロット内の電気導体数以上のT数を得ることはできない。一般に、車両用交流発電機では、定格0.5〜2.5kwのものが使用される。このような出力を、車載可能な所定の体格の制限、エンジン回転数の制限の下で実現しようとした場合、少なくとも固定子巻線は3T以上必要である。これより小さいT数を設定した場合、図9の破線に示されるように低速回転では出力が出ず、高速のみ出力が大きく出てしまい車両用交流発電機として不適切な特性となってしまう。
【0123】
例えば、スロット数を回転子の磁極数の3倍とし、スロットあたり電気導体数を2本として、固定子巻線のT数を2Tとした比較例と、本実施例の出力特性を図9の破線と実線に示す。従来方式では回転頻度の高い車両アイドル回転数付近での低下が著しく車両用発電機として成立しない。必然的に、スロットあたりの電気導体数を増加させなければならない。しかし、1本の電気導体の断面積が同じである限り、コイルエンドの隙間減少による通風性の悪化、冷却性の悪化という問題が生じる。また、電気導体の組み付け工数の増加にともなう製造コストの増加の問題がある。逆に、1本の電気導体の断面積を下げてT数を増すと、巻線のインピ−ダンスが高くなるので高出力化が不可能となる。
【0124】
これに対し、本実施例では、スロット数を極数の3倍以上とし、隣接するスロットの導体を直列に接続する部分を設けているので、スロットあたりの導体数は最少である2本とすることができる。具体的には、16極の磁極数に対して3相発電機として必要な3倍の48個のスロット数だけでなく、さらに倍の96個のスロット数を確保している。例えば、12極に対しては3相で、72個のスロットを採用してもよい。これにより、コイルエンドに隙間を形成して通風による冷却性を確保でき、製造コストを増加することなくスロット内の占積率を向上させ、低回転から車両に必要な出力特性を得ることができる。
【0125】
また電気角が30°ずれた第1巻線と第2巻線とを直列接続しているので、起磁脈動力を低減できるため磁気騒音の大幅な低減ができる効果もある。
【0126】
しかも、第1巻線と第2巻線とは、コイルエンドにおいては均等に外部に露出しており、均等に冷却風にさらされている。しかも、コイルエンド間には、そこを横切る通風を可能とするための隙間が確保されているため、高い冷却性が得られる。この関係は、6つのスロット群に収容された6つの巻線のすべてについて実現されており、すべての巻線が均等に冷却される。
【0127】
また、図6、図7の結線方法では、2層化した内層側電気導体と外層側電気導体を交互に接続するため、各相の渡り線部分の長さは結果的に同一とすることができるので各相の巻線の電気抵抗値は均一となる。加えて、固定子巻線のインダクタンスはスロット内の位置によって異なるが本実施例では内層側電気導体の数と外層側電気導体の数とが各相で同一であるため、インダクタンスは略同一とすることができる。即ち、インピーダンスが均一化できることにより局部的な発熱を防止できる。
【0128】
またコイルエンドの軸方向高さも飛躍的に低減でき、結果的に従来の固定子巻線に対し抵抗値を略半減できる。これにより、低インピーダンス化によって小型高出力化を図ることができると共に、発熱量低減による温度低減、高効率化をも達成できる。
【0129】
更にコイルエンド高さの低減にともない、固定子2の軸方向長さを抑制できる。この結果、フレーム4の角部の丸みを大きくできる。この結果、体格が丸い車両用交流発電機を構成でき、機械的剛性の向上を図ることができる。さらに、車載時に、他の部品との干渉を回避することができるという効果がある。
【0130】
また、コイルエンドの冷却性が大幅に向上することから、ファンの小型化が実現できる。さらに、コイルエンド群としては、表面の凹凸が平滑化されること、一様な繰り返し紋様が形成されること、及びコイルエンド内を冷却風が横切ることで、冷却風との間で生ずるファン騒音を大幅に低減することができる。
【0131】
また、導体セグメント33のターン部33cと反対側から巻線端33fを取り出しているので、ターン部33cは同一形状とすることができる。このため、ターン部33c以外の直線部の長さを変えて巻線端33fや結線部102、103の形成に対応できる。よって直線部の長さのみ異なる導体セグメント33を製作すればよいので、生産工数を大巾に下げることができ、安価な設備で対応できる。
【0132】
また電気導体の断面形状の矩形化により、高占積率化が可能であると共に、プレス等での導体セグメントの作成も可能であり、素材、加工コストの低減を図ることができる。
【0133】
また、電気導体と固定子鉄心との間の対向面積が大きくなるので、伝熱が良好となり電気導体の温度が更に低減できる効果がある。また、固定子全体の剛性が高まることから磁気音を抑える効果もある。また、電気導体自体の剛性があがることから、コイル間の隙間の管理が容易である。その結果、電気導体の絶縁皮膜の廃止、電気導体の固着材の廃止が可能となり、高信頼性で低コストの発電機が提供できる。また、巻線端部の剛性も高まることから、従来必要であった整流器5の端子台を廃止でき、直接、整流素子52に接続することも可能になるので、更にコスト低減効果がある。
【0134】
また、スロット内を、単線の電気導体を、内外に2層化して収容しているため、組付が容易となる。しかも、接合箇所は径方向に1ヶ所であるから他の接合箇所との重なりがなくなり、溶接等の工程が容易になり、生産性が向上する。よって低コストの発電機を提供できる。更に、1組の整流器で構成できるため、電気部品が簡素化でき、低コスト化できる効果もある。
【0135】
また、ランデル型回転子であることから、冷却ファンに鉄材が使用できるので、高速回転に対する耐久性がセ−レント型回転子よりも優れる。セ−レント型回転子では、軸方向端面に磁極が並ぶので、この軸方向端面に設ける部材は、磁束短絡防止のためにアルミや樹脂などの非磁性材を使用しなければならないからである。このような高速耐久性の高さにより、プ−リ比を高く設定することができるので、エンジンのアイドリング回転時の回転子の回転数を高くして出力を向上できる。また、ファンの材料費や加工費が安く、さらにポ−ルコアとの接合手段にも安価なヒュ−ジング溶接などが採用できることにより、製造コストの低減効果もある。
【0136】
(第二実施例)
図10から図12に第二実施例を示す。第一実施例では、固定子鉄心32の端面の片側に導体セグメント33のターン部33cを設けていたが、第二実施例ではターン部33cで分離された導体セグメントを用いる。そして、固定子鉄心32の両側に接合部を配置した点が異なる。
【0137】
図11に図示されるように、導体セグメント33は、スロット35内に挿入される略直線状部分である内部導体33hと、この内部導体の両側おいて固定子鉄心32の軸方向両側に延びる略直線状部分である外部導体33iを有してなる。この外部導体33iは磁極ピッチの約半分の距離を周回する角度と長さを持っている。外部導体33iは図10に示すようにコイルエンド31としての稜線部を形成している。そして、内層、外層の稜線部33iの傾きが逆になるように複数の導体セグメント33がスロット内に挿入されている。また、固定子鉄心32は、図12に示されるように歯先先端部32aをU字状またはJ字状とした半製品から製造される。固定子鉄心32は、複数の導体セグメント33をスロット内に挿入した後、径方向から歯先先端部32aに加工治具を押し当てるなどして歯先先端部32aに塑性加工を加えて、スロットの内周側開口を狭めて製造される。このようにすることで、径方向内側からの導体セグメント33の挿入が可能となり、予め導体セグメントを最終形状に加工することができ、組付けが容易となる。
【0138】
また、導体セグメントを挿入した後、導体セグメントを径方向内側から圧縮してスロット形状に合わせて変形させることで、更に高い占積率を得ることができる。また、塑性加工により歯先先端部が加工硬化するため、導体セグメント33のスプリングバックによる歯先変形を防止できる効果もある。
【0139】
なお、導体セグメント33は予め加工することとしたが、スロット内に収納した後折り曲げ加工しても良い。
【0140】
(第三実施例)
第一、第二実施例では内外層の電気導体を一対のみ、即ちスロットあたりの電気導体数を2Tとしたが、導体セグメントの挿入工程を繰り返すなどの手段により、電気導体を二対以上としてもよい。この場合も、図13に示すように、異なる相のコイルエンド間の干渉は、第一実施例と同様に回避できる。このため、上記実施例と同様に高い占積率、高い冷却効率、低い騒音などの効果が得られる。更にスロットあたりの電気導体数が増えるので、低いエンジン回転数から発電を開始でき、低速回転時の発電量を増加させることができる。
【0141】
図14には、内外層の電気導体を二対、つまりスロットあたりの導体数が4Tの場合のインシュレータの配置を示す。
【0142】
更に、内外層の電気導体を二対以上設けることで、スロット数の設定、結線箇所等を変えることにより、任意のT数を構成することができる。
【0143】
(第四実施例)
第一から第三実施例では、電気角で30°の位相差をもつ2つのスロット群に収容された巻線を直列接続することにより、スロットあたりのT数を増やすとともに、磁気音の主成分である極対数の6倍次数成分をキャンセルして騒音低減を図っている。つまり、交流の状態で、2つの巻線の出力を合成している。
【0144】
これに対し、図15、16の固定子巻線展開図、および図17の回路図に示すように、電気角で30°の位相差をもつ2組の三相巻線をそれぞれの整流器で整流した後、合成して出力する点が異なる。つまり、直流の状態で、2つの巻線の出力を合成している。
【0145】
具体的結線例を図15、図16、図17を使用して説明する。図15、図16の下側の渡り線部はセグメントターン部33cとなり、上側が結線部33dとなる。図中実線は内層電気導体、一点鎖線は外層電気導体を示す。
【0146】
まず、X相の第1巻線と第2巻線について説明する。スロット番号の4番から6スロットおきに94番まで(4番、10番、16番……94番)が第1のスロット群を成している。これらに隣接する5番から6スロットおきに95番まで(5番、11番、17番……95番)が第2のスロット群を成している。
【0147】
第1スロット群に形成される第1巻線は、図15に示す巻線端X1と、X1’とを有する。第1巻線は、巻線端X1と、X1’との間に敷設された反転結線部で直列接続された2本の波巻巻線を含んでいる。
【0148】
第2スロット群に形成される第2巻線は、図16に示す巻線端X2と、X2’とを有し、第1巻線と同様に形成されている。
【0149】
さらに、同様にして、電気角で120°離れてY相、Z相が形成されている。これら各相についても、第1巻線と第2巻線が形成されている。
【0150】
そして、これら6本の巻線は、図17に示すように結線される。X、Y、Z相の3つの第1巻線が星型結線されて第1整流器に接続される。X、Y、Z相の3つの第2巻線が星型結線されて第2整流器に接続される。第1整流器の直流出力と、第2整流器の直流出力とは並列に接続され、直流出力が合成される。
【0151】
これにより、2Tの3相巻線の直流出力を合計して取り出すので、低回転域での出力不足を改善することができる。更に、内外層電気導体を二対以上配置する第三実施例と組み合わせることで、4T以上を実現でき、低回転域での発電不足の問題を解消できる。また、電気角が異なる2つの巻線を直列接続することが不要であるから、導体セグメントの形状を同一にすることができ、導体セグメントの生産効率が更に向上できる。磁気音の主成分である極対数の6倍次数成分をキャンセルして騒音低減が達成される効果も得られる。
【0152】
なお上記実施例では、X相の第1スロット群と、Y相の第1スロット群と、Z相の第1スロット群とが第1スロット組に属し、X相の第2スロット群と、Y相の第2スロット群と、Z相の第2スロット群とが第2スロット組に属する。そして、これらスロット組に装備された巻線がそれぞれ異なる多相固定子巻線として多相結線され、それぞれ別々に整流されて、その後直流として並列接続されて合成されている。
【0153】
(その他の実施例)
上記第一実施例では、固定子2の端面の片側でのみ導体セグメントを接合したが、両側で接合してもよい。例えば、複数の導体セグメントのターン部を、固定子鉄心32の両側に分散して配置することができる。この場合、接合部の間隔を広くでき、溶接等の接合工程が容易になる効果がある。
【0154】
上記第二実施例で採用した図12に図示される固定子鉄心32と、第一実施例で採用した図3に図示される導体セグメント33とを組み合わせることができる。
【0155】
また、図12の固定子鉄心32を採用する場合には、導体セグメントをスロットに挿入しつつ、挿入が完了したスロットから順番に塑性加工を実施することができる。これにより、生産効率を飛躍的に向上できる。
【0156】
電気導体としては、複数の素線からなる矩形断面の電気導体を採用できる。
【0157】
上記の実施例では、電気導体は銅製である。これに代えて、アルミ、鉄等を用いることができる。かかる材質の選定により、素材コストの低減、鋳物、ダイカストで導体セグメントを製造でき、生産工程が容易となる効果がある。
【0158】
また、電気導体の断面は、矩形としたが、丸断面であってもよい。また、矩形と丸との複合でもよい。たとえば、スロット内を矩形とし、スロット外を丸とすることができる。この場合、高い占積率、高い冷却性能の効果が得られる。また逆に、スロット内を丸とし、スロット外を矩形とすれば、コイルエンドにおける電気導体間の隙間を十分確保でき、冷却風の通風抵抗を低減して冷却性能を大幅に向上できる。なお、矩形断面の電気導体は、扁平形状と言い得る形状である。
【0159】
導体セグメント33に絶縁皮膜を設け、インシュレータをスロットの内壁に沿ってU字型に配置しても良い。この場合、インシュレータ形状が単純化できる効果がある。また、固定子鉄心32を絶縁処理してインシュレータを廃止しても良い。この場合、導体セグメント33をスロットに挿入する時に、インシュレータがずれて絶縁不良を起こすことを防止できる。
【0160】
固定子巻線は、3相以上の多相巻線であっても良い。多相巻線であっても、固定子鉄心32に規則的に巻線を形成でき、巻線形状を複雑にすることがない。3相以上とすることで、出力電圧のさらなる低ノイズ化、低リップル化を図ることができる。
【0161】
固定子巻線は、三角結線されてもよい。これは車両が必要とする発電量の特性に応じて、適宜、選択できる。
【0162】
回転子として、永久磁石を持たない回転子を採用してもよい。また、永久磁石の励磁のみによる回転子であってもよい。
【0163】
回転子の両端面に冷却ファンを設けてもよい。例えば図18に示す構成を採用できる。この実施例では、回転子のフロント側端面にも冷却ファン12が装備される。かかる構成によると、良好な冷却特性が得られる。なお、ランデル型回転子では、ポールコアのディスク部で風を発生するため、図1に示す片方の冷却ファン11だけでも必要な冷却性が得られるが、両側に冷却ファンを設けた場合、更に車両用交流発電機としての体格を小型化できる効果がある。
【0164】
また、図19に示す構成を採用してもよい。回転子3の冷却ファンが設置されていない端面に、フレーム4の吸入孔41の外周部の内壁面45を近接させて対向させている。これにより、ポールコア7のディスク部72をファンと見立てて、内壁面45がシュラウドの役割を担う。このため、ディスク部72の送風能力が増す。従って、冷却ファンを両側に設ける場合に比べて、部品点数、加工工数を増やすことなく、同等の冷却性能を達成でき、更に小型化できる。
【0165】
図23に示すように、巻線端33fを、ターン部33cと同じ側に設けてもよい。これにより、接合部での溶接などによる接合工程において、巻線端33fが邪魔にならず、しかも同一パターンの繰り返し接合となるから、生産工程が容易となる。
【0166】
以上に述べた実施例では、回転子の磁極数の6倍の数のスロットを設けている。そして、隣接する2つのスロットに収容された電気導体を直列接続する箇所を設けることで、一連の巻線のターン数を4Tとした。これは、3相の2倍スロット直列巻線と呼ぶことができる。これに代えて、例えばスロット数を磁極数の9倍としてもよい。そして、隣接する3つのスロットに収容された電気導体を直列接続する箇所を設けることで、6Tとすることができる。これは、3相の3倍スロット直列巻線と呼ぶことができる。また、同一スロット内の導体を直列接続しないで、並列接続させる箇所を設けることにより、5Tとするなど奇数のターン数に設定することもできる。スロット数の増加によりさらに多いターン数に設定してもよい。
【0167】
また、固定子鉄心32に設けるスロット数は、上記倍スロット構成よりさらに1スロットだけ多くしてもよい。例えば、97本のスロットを固定子鉄心32に形成してもよい。この場合の結線を説明する展開図を図20、図21に示す。図中、実線は内層電気導体、一点鎖線は外層電気導体を示す。この構成によると、結線部104、105の形状、特に高さを他のコイルエンドを同じにすることができる。図6、図7に図示される結線では、結線部102、103は、他のコイルエンドとは異なる高さを持っており、異なる形状の電気導体を必要とするとともに、接合工程の複雑化を招く。
【0168】
隣接するスロットの異なる層をなす電気導体を接続する結線部104は、他のコイルエンドと同じ傾斜と高さを持っている。このため、U字状の導体セグメントの製作にあたって、直線部の長さを統一でき、導体セグメントの生産工程が容易になる。更に、同じ層の電気導体を接続するための結線部105は、通常の繰り返しと同じ形状とすることができるので、結線工程が容易になる。
【0169】
この構成では、図20、図21の巻線端Xなどの引出し側に、U字状の導体セグメントのターン部を配置してもよい。ターン部の広がりがすべてスロット6本分に統一化されるため、セグメントの生産工程が容易になる効果もある。
【0170】
また、固定子には、電気絶縁を確保するための絶縁性樹脂をコーティングをしてもよい。かかる樹脂は、含浸樹脂とも呼ばれる。かかる樹脂は、巻線の電気絶縁性を高めるため、あるいは固定子状のセグメント等を相互に固着して固定するために有効である。なお、樹脂のコーティングにあたっては、コイルエンド群内への通風性を損なわないように付与することが望ましい。ただし、樹脂によってコイルエンド間の隙間がいくぶん塞がれることがあってもよい。かかる構成にあっても、コイルエンド群において各セグメントの間に隙間が維持されることで、放熱に寄与する表面積を広く確保することができ高い冷却性を得ることができる。
【0171】
以上に説明した実施例によると、コイルエンドの干渉を抑制でき、固定子巻線の高占積率化が図れ、出力を向上する効果がある。更に、異なるスロットの内外層に位置する導体を直列に接続しているのでスロット内位置に起因する各相巻線の導体長さ、漏れインダクタンスは各相で均一化される。このためコイルを流れる電流が均一化され、各相の発熱量も同じとなるため、局部的な固定子巻線の発熱や起磁力アンバランスを防止でき、温度低減、低騒音化が図れる。また、隣接するスロットを直列接続する固定子巻線とすることで、スロットあたりの導体数を少なくしてコイルエンドでの導体間の隙間を確保しつつ車両用発電機に必要な低回転時の出力を得るためのターン数を得ることができる。特に、上述の実施例では、電気角が30度異なる2組の三相固定子巻線を構成しているから、電気磁気的な騒音を抑制する効果があるとともに、実質的には電気的な位相が異なる6つの巻線の出力を合成しているので、整流後の直流電力に含まれるリップル成分が少なく、高品質の電力を供給できる。しかも、セグメントを用いて固定子巻線を構成し、スロット内においては深さ方向にのみ電気導体を積層して収容している。このため、一様な形状をもった複数のコイルエンドを一様に配列することができ、電気的に位相が異なる複数の巻線を、コイルエンドにおいてはそれぞれ均等に外部に露出させ、冷却風に対して均等にさらすことができる。しかも、コイルエンドにおいては複数の導体セグメントが互いに離間しているので、放熱のための十分な表面積が確保される。さらには冷却風が横切って流れることで優れた放熱性が実現される。これらの作用により、複数の巻線毎の冷却性のばらつきをなくしながら、高い放熱性、冷却性を実現することができ、電気導体の断面積向上に伴う電気抵抗の低下と相まって、小型化、高出力化に適合可能な車両用交流発電機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の第一実施例の縦断面図である。
【図2】図2は第一実施例の固定子の外観図である。
【図3】図3は第一実施例の導体セグメント33の斜視図である。
【図4】図4は第一実施例の固定子の部分的な断面図である。
【図5】図5は第一実施例の固定子の両端面のコイルエンドを示す斜視図である。
【図6】図6は固定子巻線の結線状態を示す展開図であって、1番目から48番目のスロットを示している。
【図7】図7は固定子巻線の結線状態を示す展開図であって、49番目から96番目のスロットを示している。図6と図7は、V−V線、VI−VI線で環状に接続されて一連の固定子巻線を示している。
【図8】図8は車両用交流発電機の回路図である。
【図9】図9は車両用交流発電機の出力特性を示すグラフである。
【図10】図10は第二実施例の固定子の部分的な外観図である。
【図11】図11は第二実施例の導体セグメント33の斜視図である。
【図12】図12は第二実施例の固定子の部分的な断面図である。
【図13】図13は第三実施例の固定子のコイルエンドを示す斜視図である。
【図14】図14は第三実施例の固定子の部分的な断面図である。
【図15】図15は第四実施例の固定子巻線の結線状態を示す展開図である。
【図16】図16は第四実施例の固定子巻線の結線状態を示す展開図である。図15と図16とは、VII−VII線、VIII−VIII線で環状に接続されて一連の固定子巻線を示している。
【図17】図17は第四実施例の車両用交流発電機の回路図である。
【図18】図18は、その他の実施例の縦断面図である。
【図19】図19は、その他の実施例の縦断面図である。
【図20】図20は他の実施例の固定子巻線の結線状態を示す展開図である。
【図21】図21は他の実施例の固定子巻線の結線状態を示す展開図である。図20と図21とは、IX−IX線、X−X線で環状に接続されて一連の固定子巻線を示している。
【図22】図22は第一実施例の固定子巻線端を示す斜視図である。
【図23】図23はその他の実施例の固定子巻線端を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 固定子
3 回転子
31 コイルエンド
32 固定子鉄心
33 導体セグメント
34 インシュレータ
35 スロット
4 フレーム
5 整流器
6 シャフト
7 ポールコア
8 界磁コイル
【発明が属する技術分野】
本発明は乗り物の内燃機関により駆動される車両用交流発電機に関し、例えば乗用車、トラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両走行抵抗の低減のためのスラントノーズ化や、車室内居住空間の確保のニーズからエンジンルームが近年ますます狭小化する中で、車両用交流発電機の搭載スペースに余裕がなくなってきている。 一方、燃費向上のためエンジン回転は下げられ車両用交流発電機の回転も下がっている。しかしその一方で、安全制御機器等の電気負荷の増加が求められ、ますます発電能力の向上が求められている。即ち小型で高出力の車両用交流発電機を安価に提供することが求められている。
【0003】
また車外騒音低減の社会的要請や、車室内静粛性向上による商品性向上の狙いから近年ますますエンジン騒音が低下してきており、比較的高速で回転する補機、とりわけ車両用交流発電機のファン騒音や、磁気的騒音が耳につきやすい状況となってきた。
【0004】
従来、車両用交流発電機に一般的に用いられている固定子巻線は、連続線を固定子鉄心に装着する構成が採用されており、かかる固定子巻線の構成の下では、小型高出力低騒音といった互いに相反する要求に応えることが困難であった。
【0005】
一方、一般の大型の誘導機型などの発電機では、例えば固定子スロット内導体を2本とし、径方向に2層化し、その内外層の導体を交互に接続することで異なる相のコイルエンドの干渉を無くしているものがある。
【0006】
しかし、このようなものは車両用発電機にはそのまま使えないという問題点があった。すなわち、車両用交流発電機は、エンジンが最も低速のアイドル回転、すなわち発電機回転数で約1500rpm近辺で車両電気負荷に電力を供給しなければならない。このためには前記回転数、即ち約1500rpm以下でバッテリ電圧とダイオードドロップ分を加えた電圧である約15Vを発生しなければならない。しかし、一般の乗用車、トラック用などの1〜2kwクラスの車両用交流発電機においては、主としてその体格から決まるところの磁束量の制約に起因して、上述の一般大型発電機に見られるような構造では、上記低回転時の出力を得ることができない。特に、上述の一般大型発電機に見られる2本程度の少ない導体数では低回転時の出力を得ることが困難であった。更に、近年の燃費向上の為にアイドル回転数は低減される傾向であり、上述の一般大型発電機の構造ではますます対応できない状況となっている。
【0007】
また、低回転での出力向上のためのひとつの手段として、多極化により高周波で作動させることが考えられるが、上述の一般大型発電機の構造では、固定子鉄心と略同一軸長のセーレント型回転子が用いられており、かかるセーレント型回転子では磁極数を増すと回転子内の巻線スペ−スが減少するため各磁極の起磁力が低下するので、出力向上が難しい。すなわち、上述の車両用交流発電機に要求される性能を満たすことが困難であった。
【0008】
さらに、セーレント型回転子では、回転子内部に隙間を設けることが困難なため、固定子の内周面に向けての冷却風の導入や回転子内に設けられた界磁コイルへの冷却風の導入ができないという冷却上の問題があった。
【0009】
さらに、導体バーなどと呼ばれるU字型の電気導体を用いて車両用交流発電機の固定子巻線を構成するものとして、特開昭62−272836号、特開昭63−274335号、特開昭64−5340号が提案されている。しかし、かかる構成では、固定子鉄心が周方向に沿って積層されて円筒形に形成されるため、磁束通過方向に関して磁気的な抵抗が増加し、所要の性能を実現できない。また、実用的な強度の確保など解決すべき多くの課題を抱えている。
【0010】
また、WO92/06527にも車両用交流発電機の固定子に導体バーを用いた構成が提案されている。ここに示された構成によれば、1つのスロット内に4本の電気導体がスクエアに配置されている。
【0011】
かかる構成では、高出力化のために電気抵抗値を下げるべく電気導体断面積を増やすと、コイルエンドの間に隙間を設けることができない。さらに、周方向に並ぶ1つのスロット内の2本の電気導体のコイルエンドの先端において、他のスロットからの電気導体との各々の接合部の間に隙間を形成することも難しく、接合部どうしが短絡しやすいという問題も生ずる。
【0012】
また、車両用交流発電機の冷却のためには、古くは冷却ファンをフレ−ム外部に持ち軸方向に冷却風を流す通風構造が採用されており、近年はフレ−ム内部に冷却ファンを持ち、冷却風を直接コイルエンドに当てる構成が主流となっている。このような冷却構造の下では、上記のような従来技術の電気導体の構造では、高出力化のために電気導体の断面積を大きくすると高い冷却性を得ることができないという問題点があった。
【0013】
すなわち、WO92/06527に示された構成では、電気導体の断面積が制約されるため、高出力のための固定子の高占積率化が困難である。
【0014】
一方、隙間を形成するために1つのスロット内の電気導体を2本にする構成も考えられるが、かくのごとき少ない導体数では、アイドル回転すなわち低回転での出力を得ることが不可能であり、車両用交流発電機としては使うことができない。
【0015】
さらに、USP2928963には、固定子に導体バーを用い、ランデル型の界磁回転子を持った交流発電機が提案されている。しかし、この従来技術においても高出力と高い冷却性とを実現するための固定子巻線の構成は開示されていない。しかも、この従来技術に開示される構成は、軸方向の通風構造、あるいは冷却ファンを持たない構成であり、小型・高出力化のための冷却性向上に関する改良は、講じられていない。さらに、ここに開示された構成では、スロットあたりの導体数は2本であり、前述と同様に低回転での出力を得ることが困難である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のごとき従来技術の問題点に鑑み、今日の車両用交流発電機に要求される性能を満足しうる高い実用性を備えた改良された車両用交流発電機を提供することを目的とする。
【0017】
本発明の他の目的は、小型、高出力、低騒音を兼ね備えた車両用交流発電機を提供することである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、車両用交流発電機に要求される低速回転からの出力を確保できる回転子と固定子巻線の構造、および固定子巻線のコイルエンドにおける新規な冷却のための構成を提供することにより、車両用交流発電機に要求される高出力を確保でき、しかも発熱による効率低下、出力低下を抑えた車両用交流発電機を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、固定子巻線のスロット内における占積率を向上させ、その一方でスロットの外においては、回転子との共働により高い冷却性と低騒音とを発揮しうる車両用交流発電機を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、回転周方向に沿って交互にNS極を形成する界磁回転子と、該回転子と対向配置された固定子鉄心、及びこの固定子鉄心に装備された多相固定子巻線を備える固定子と、前記回転子と固定子とを支持するフレームとを有する車両用交流発電機において、
前記界磁回転子は、前記N極および前記S極を提供する複数の爪状磁極を有するランデル型鉄心を備え、前記固定子鉄心は、積層板を貫いて延びる複数のスロットが形成された積層鉄心を備え、前記多相固定子巻線は、複数の導体セグメントを備え、
これら複数の導体セグメントは、前記スロット内においては、前記スロットの深さ方向に関して内層導体および外層導体として二対以上の対をなして前記スロットの深さ方向にのみ配列され、前記スロット内に互いに絶縁して収納されており、前記スロット外においては、前記固定子鉄心の端面側に延び出して配置されており、前記界磁回転子のNS極の磁極ピッチに対応して離間する異なるスロット内の異なる層の導体を直列接続する接続パターンによってコイルエンドを形成しており、その結果前記固定子鉄心の端面側には前記接続パターンを主として繰り返すコイルエンド群が形成されており、さらに、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントは、前記フレーム内における冷却風の通風方向と交差して延びるよう配置され、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントを横切って冷却風が流れる構成が提供されるという構成を採用することで達成される。
【0021】
複数の導体セグメントは、スロット内においては、スロットの深さ方向に関して内層導体および外層導体として二対以上の対をなしてスロットの深さ方向にのみ配列される。かかる構成によると、スロットの外において、電気導体のすべてを固定子の径方向に関して離間させることができるので、コイルエンド群内において複数のコイルエンドが互いに密着することを防止でき、コイルエンド群内への通風を容易にして冷却性を高め、冷却風とコイルエンドとの干渉による騒音の低減を図ることができる。
【0022】
複数の導体セグメントは、スロット外においては、前記固定子鉄心の端面側に延び出して配置されており、前記界磁回転子のNS極の磁極ピッチに対応して離間する異なるスロット内の異なる層の導体を直列接続する接続パターンによってコイルエンドを形成している。これによれば、固定子鉄心の各軸方向側面のコイルエンドの並びが同一方向となり、異なる相のコイルエンドの干渉を回避することができる。よって、導体はスロット奥まで挿入することができ、占積率を向上することにより出力向上が可能となる。また、コイルエンドに凹凸が無く、一様な繰り返し紋様を形成しているので、冷却風との間で生ずる騒音も低減できる。
【0023】
これにより、各相のコイルエンドの干渉を抑止でき、固定子巻線の高占積化を図ることができるので、出力を向上する効果がある。また、コイルエンド内を冷却風が横切るので、従来の固定子巻線のコイルエンドに対して格段に有効表面積が増し、この部分の導体セグメントの冷却を飛躍的に向上させることができ、高出力化が可能となる。また、導体のスロット内の位置に起因する各相の固定子巻線の導体長さ、漏れインダクタンスは均一化されるので、固定子巻線に流れる電流が均一化され、各相の発熱量も同じとなる。よって、局部的な固定子巻線の発熱や起磁力アンバランスを防止でき、温度低減、低騒音化を図ることができる。更に、コイルエンドに凹凸が無く、一様な繰り返し紋様が形成されること、及びコイルエンド内を冷却風が横切るので、冷却風との間で生ずる騒音も低減できる。また、ランデル型回転子との組合せであるので、鉄心(以下ポールコアと称す)の成形形状を変えるのみで極数の変更、多極化が容易である。また、爪状磁極の耐遠心剛性もあり、加えて界磁コイルをポールコア内央部のボス部に確実に装着できるから回転子の耐遠心性が確保でき、エンジン回転数の2〜3倍の回転比で運転できることになる。
【0024】
即ち、一般誘導機等と異なり、高周波で作動できるため、スロットあたりの電気導体数が少なくても、車両アイドル回転数に対応する1500rpmよりも低い回転数、例えば1000rpmなどの低速から発電を開始できる。
【0025】
また、ランデル型回転子との組合せであるので、磁極間に空間を設けることができ、界磁コイルの冷却上の利点を得ることができる。さらに、磁極自身が回転により冷却風を送風する構成とすることもできる。かかる構成は、軸方向への送風、あるいは径方向への送風に利用できる。よって、一般誘導機等に使われている、磁極間に空間の無い、中実円柱形状であるセ−レント型回転子に比べて、効率的に固定子内周面、固定子巻線、界磁コイルなどを冷却できる。なお、ランデル型回転子の磁極間は非磁性材料で埋められてもよい。
【0026】
すなわち、かかる構成を採用することで、スロット内における導体の占積率を高めることができる。しかも、コイルエンドにおける複数の導体セグメントを横切って冷却風が流れるので、コイルエンドにおいて高い放熱性が得られ、高出力化に伴う熱的な問題を回避することができる。特に、フレーム内に形成される空気流を利用して高出力化に伴う熱的な問題を回避することができる。このように、従来の車両用交流発電機にない構成が採用されることで、ランデル型界磁回転子を用いた実用的な構成の下で、高出力化に伴う熱的な問題を回避することができるという利点が得られる。
【0027】
なお、固定子および前記回転子は、前記回転子を駆動するエンジンの回転数がアイドリング回転数の領域内にあるときに、前記巻線端に15(V)以上の電圧を出力するように設定されていることが望ましい。
【0028】
これによれば、市街地での走行で最も発生頻度の高いアイドリング回転の時にも必要最低限の車両の電気負荷に電力を供給できる。よって、アイドリング回転の時に供給可能電力以上の要求のある場合バッテリからも電力が供給されるが、これをできるだけ少なく抑え、車両が走行している時には発電機の出力が増えてバッテリを充電して元通りの状態に早期に復帰させることができる。また、アイドリング回転数を下げた場合でも上記の発電性能を持つので、燃費向上が可能となる。
【0029】
また、前記ランデル型鉄心の爪状磁極の外径をL1とし、回転軸方向の長さをL2として、これらの比率を、L1/L2≧1.5とすることが望ましい。
【0030】
かかる構成は、セーレント型回転子が界磁コイルなどの耐遠心性の問題からL1が制限され、高出力化のための磁気抵抗低減手段としてL2を大きくし、比率L1/L2が比較的小さく設定されるのに対し、ランデル型回転子では前記セーレント型回転子に対し耐遠心性が勝り、比率L1/L2は1.5以上に設定されることによる。また、この場合、回転に伴う軸方向外部からの冷却風取り込みの面積が拡大し、冷却風量を増加させることができ、冷却性能を向上できるという効果もある。
【0031】
また、前記スロット内において電気的に絶縁されたすべての導体セグメントは、前記固定子鉄心の端部に形成されたコイルエンドにおいて空間的に離間して配置されていることが望ましい。
【0032】
かかる構成によると、すべての導体セグメントは、コイルエンドにおいて良好に冷却され、導体の間での冷却性のばらつきがなく、均等な冷却を得ることができる。
【0033】
また、前記スロットの両側に位置する鉄心歯先部の少なくとも一部を塑性変形させて、前記スロットの内周側の開口の巾を前記スロット内の内壁間距離より狭く形成してなるという構成を採用してもよい。
【0034】
かかる構成によると、鉄心歯先部の塑性変形の時にスロット内の導体セグメントを更に径方向内周側からスロット奥に押し込むので、より高占積率化を達成できる。更に、固定子鉄心の歯部が十分固定できるため、鉄心の剛性が上がりステータ鉄心の振動を抑制することができるので、磁気騒音を低減できる。また入口部を内壁間距離より狭くすることによりウエッジ等係止部材を廃止できるので、コスト低減が可能である。更に歯先部を塑性加工させることにより加工硬化するため、剛性の高い電気導体を使っても径方向内側に飛び出すことがない。なお、かかる構成は、スロット内の断面形状にかかわりなく採用することができる。ただし、スロットの断面形状を、深さ方向に関して巾が一定な平行スロットとすることが望ましい。これにより、内層導体と外層導体との形状を同じにしてもスロット内の隙間が不均一にあくことなく、高占積率化が可能である。
【0035】
また、導体セグメントは、前記スロット内における断面形状が前記スロット形状に沿った略矩形状であるという構成を採用することが望ましい。
【0036】
かかる構成によると、スロット内における導体の占積率を高めることが容易になる。また、スロット形状に沿った略矩形状であるため、導体から固定子鉄心への伝熱を向上できる効果もある。なお、略矩形状としては、スロット内の形状に沿った断面形状であることが重要であり、正方形、長方形といった形状の他、4辺の平面と丸い角とで構成された形状、長方形の短辺を円形とした長円形などを用いることができる。なお、正方形、長方形を用いることで、スロット内における占積率を向上することができる。また、断面積の小さい導体にあっては、長円形を用いてもよい。かかる断面形状の導体セグメントは、円形断面の導体を、プレスして形成することができる。
【0037】
また、複数の前記導体セグメントは、裸の金属部材よりなり、前記スロット内において複数の前記導体セグメントの相互間と、複数の前記導体セグメントと前記スロットの内壁面との間とに介装されて電気的な絶縁を提供する電気絶縁部材を備え、複数の前記導体セグメントは、前記スロット外においては、互いに空間的に離間して配置されているという構成を採用してもよい。
【0038】
これによれば、導体セグメントの絶縁皮膜を廃止でき、素材費を大幅に低減できる。更に絶縁皮膜の破損に配慮することなく、プレス加工できるなど生産工程が大幅に簡略化でき、低コスト化を図ることができる。また、従来耐熱温度が最も低かった絶縁皮膜の廃止により、固定子巻線の耐熱温度を上げることができるので、発熱に対する信頼性が向上する効果もある。
【0039】
また、前記固定子鉄心と該スロットに収納された導体セグメントとからなる固定子の軸方向全長が、前記ランデル型回転子の軸方向全長と同等以下である構成を採用してもよい。
【0040】
かかる構成によると、回転子に対して軸方向に短い固定子が配置されるため、これらの配置を卵形にすることができる。このため、フレームを含めて卵形の発電機外殻を提供でき、搭載スペ−スの狭小化に対応できると共に、機械的強度の向上による磁気騒音の低減を図ることができる。
【0041】
また、前記導体セグメントのスロット外に位置する部分の少なくとも一部が略扁平形状である構成を採用してもよい。
【0042】
かかる構成によると、コイルエンド部における導体セグメントからの放熱面積を大きくすることができる。さらに、複数のコイルエンドのそれぞれに扁平形状を採用し、それらを径方向と平行に配置することで、コイルエンド間の隙間を確保でき、さらには径方向への通風抵抗を低減できる。なお、導体セグメントは部分的に扁平形状に成形する他、スロット外においてはその全体を扁平形状としてもよい。さらには、スロット内も含めて全体を扁平な断面形状をもって形成してもよい。なお、扁平形状としては、長方形断面、長楕円断面などを採用することができる。
【0043】
また、前記界磁回転子の磁極間には磁石を介在し、界磁磁束に磁石磁束を加え前記固定子に向かわせる構成を採用してもよい。
【0044】
かかる構成によると、ランデル型界磁回転子の性能向上による高出力、高効率といった効果を得ることができる。しかもかかる効果を、固定子側における損失によって失うことなく、固定子巻線の改良による放熱性向上の効果によって十分に引き出すことができる。
【0045】
また、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントは、それらの表面の殆ど全体が前記冷却風にさらされている構成を採用することが望ましい。
【0046】
かかる構成によると、高い冷却性を、すべての導体セグメントに対して均等に発揮させることができる。
【0047】
なお、かかる構成は、導体セグメントをスロット内において径方向にのみ配列した構成、あるいは導体セグメントを裸線としてそれらを空間的に離間させて絶縁した構成、あるいはスロット外においても矩形の導体セグメントを採用した構成との組合せの下で、比較的簡単に実現できるという製造上の利点と、より高い冷却性を実現できるという利点とを発揮する。
【0048】
また、前記コイルエンド群が、前記固定子鉄心の両端にそれぞれ形成されており、前記フレーム内にはそれぞれの前記コイルエンド群に対応して2つの冷却風の通風経路が形成されているという構成を採用することが望ましい。
【0049】
かかる構成によると、2つのコイルエンド群がそれぞれの通風経路によって確実に冷却される。しかも、その冷却は、コイルエンド群内の導体セグメントが、そこを横切る冷却風によって冷却されるため、熱に起因する損失上、効率上の問題点を低減し、さらには騒音上の問題点を低減する。また、前記フレーム内における冷却風を生じさせる送風手段を備えることが望ましい。
【0050】
かかる構成によると、フレーム内に確実に冷却風の流れを作り出すことができ、コイルエンドを確実に冷却することができる。なお、送風手段としては、専用の冷却ファンを設ける他、ランデル型界磁回転子の形状を利用するなどの構成を採用することができる。
【0051】
さらに、前記送風手段は、前記界磁回転子の軸方向端部に設けられており、前記界磁回転子の回転により遠心方向外側に向けて送風し、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントを横切って流れる冷却風を生じさせる送風手段を備える構成を採用することが望ましい。
【0052】
かかる構成によると、固定子のコイルエンド群の内側に近接して送風手段が配置され、しかも、遠心方向外側へ向かう冷却風はコイルエンド群内を横切って流れた後フレームに形成された通気口から排出されるため、コイルエンド群へ強力かつ大量の冷却風を提供することができる。しかも、コイルエンド群内においては導体セグメントの形状が改良されているため、低騒音で高い冷却性、放熱性が得られる。なお、ここにいう「遠心方向外側に向けて送風」は、遠心方向成分のみによる送風の他、いくらかの軸方向成分を含んだ送風であってもよい。かかる送風方向の設定は、界磁回転子の冷却などの要求に応じて適宜選択することができる。
【0053】
また、前記送風手段は、前記界磁回転子の軸方向の両端部に設けられているという構成を採用することが望ましい。
【0054】
かかる構成によると、界磁回転子の軸方向の両側において冷却風を得ることができる。なお、固定子の両側にコイルエンド群を形成した構成と併用することで、2つのコイルエンド群のそれぞれを、対応する送風手段で冷却することができる。
【0055】
また、前記送風手段は、複数のブレードを有する送風ファンを備えるという構成を採用することができる。かかる構成によると、冷却風を確実に得ることができる。
【0056】
また、前記送風手段は、前記複数の爪状磁極に対応して形成された前記ランデル型鉄心の形状により提供されるという構成を採用してもよい。
【0057】
かかる構成によると、ランデル型鉄心が本来的に有する複数の爪状磁極に対応した形状によって冷却風を得ることができる。なお、かかる構成では、ランデル型鉄心のみで送風する構成を採用した場合には、専用の送風ファンを不要とでき、部品点数、加工工数を低減できる。また、送風ファンと併用して共同して送風する構成を採用した場合には、送風風量を増加することができる。
【0058】
なお、前記ランデル型鉄心の軸方向端部と、前記フレームの内壁面とを近接して対向させて配置してなる構成を採用することができる。
【0059】
かかる構成によると、フレームの内壁面をシュラウドとして機能させて、ランデル型鉄心の軸方向端部の形状を利用して送風することができる。なお、シュラウドとしてのフレームの内壁面とは、フレームとしての金属製部材の内壁面の他、フレームに装備された部品であってもよい。
【0060】
また、前記フレームには、前記界磁回転子を駆動するプーリの装着端に面して前記送風手段のための吸気口が形成され、前記吸気口の最外径は、そこに装着されるべきプーリの最外径より小さいという構成を採用することができる。
【0061】
かかる大直径のプーリを採用する場合でも実用的な車両用交流発電機を提供できる。すなわち、小型高出力化を図る場合、トルク増加によりベルト寿命が低下する問題があるため、プーリ径を大型化してベルトに加わるストレスを低減する必要がある。ところが、かかる構成では、プーリがフレ−ムの吸入孔をふさいでしまい、通風抵抗が増すため冷却風量が減少する。しかし、本案では固定子の改良により冷却性を向上しているため、冷却風量が減少してもコイルエンドを冷却でき、ベルト寿命を確保しつつ、小型高出力化を達成できる。
【0062】
さらに、送風手段を採用する構成においては、前記コイルエンドに対応して、前記フレームには前記導体セグメントを横切って流れる冷却風の通風孔が形成されているという構成を採用することが望ましい。
【0063】
かかる構成によると、導体セグメントを横切って流れる冷却風を効率よく流すことができる。なお、かかる構成は、固定子鉄心の両側にそれぞれコイルエンド群を構成する場合には、それぞれのコイルエンド群に対応して通風孔が設けられることが望ましい。
【0064】
また、前記コイルエンドは、前記スロットから延び出す前記導体セグメントの端部を接合して構成されており、一方の導体セグメントの端部が、前記磁極ピッチの半分の距離を少なくとも周回する角度と長さとを持っているという構成を採用することができる。
【0065】
これによれば、導体セグメントをスロット内から延び出して配置し、他の導体セグメントと接合することでコイルエンドが形成される。かかる接合により形成されたコイルエンドが、そこを横切って流れる冷却風によって冷却される。このような接合を伴う構成を採用することにより、導体セグメントを採用できる。なお、接合とは、超音波溶接、ア−ク溶接、ろう付けなどによる電気的接続をいう。
【0066】
また、導体セグメントは、それぞれが異なるスロット内に収容される2本の直線部を有する略U字状セグメントであって、第1のU字状セグメントの端部と、第2のU字状セグメントの端部との接合を、前記接続パターンとして前記コイルエンドが形成されているという構成を採用することが望ましい。
【0067】
かかる構成によると、部品点数及び接合箇所が半減でき製造工程が容易となる。また、接合部を固定子の軸方向片側にそろえることからも、生産工程が容易となる効果がある。
【0068】
また、複数の前記U字状セグメントのターン部は、コイルエンドとして前記固定子鉄心の一方の端面側から軸方向に突出して配置され、しかも互いに離間して配列されて第1コイルエンド群を形成し、複数の前記U字状セグメントの端部は、前記固定子鉄心の他方の端面側から軸方向に突出して配置され、前記コイルエンドを形成するように所定の接続パターンで接合され、しかもこれらコイルエンドが互いに離間するように配列されて第2コイルエンド群を形成しているという構成を採用することができる。
【0069】
また、前記導体セグメントは、スロットの両側から突出する2つの端部をもったセグメントであり、前記固定子鉄心の一方の端部において、第1セグメントの一方の端部と、第2セグメントの一方の端部との接合を前記接続パターンとして一方のコイルエンドが形成され、前記固定子鉄心の他方の端部において、前記第1セグメントの他方の端部と、第3セグメントの他方の端部との接合を前記接続パターンとして他方のコイルエンドが形成されているという構成を採用してもよい。
【0070】
これによれば、導体セグメントは一方向に延びる単純形状にできるので、導体セグメント自体の製造工程が容易となる。また、あらかじめ成形した導体セグメントを径方向内周側からスロットへ押し込むことができるので、軸方向から挿入する場合に比べコイルエンド部の加工が不要となり製造工程が容易になるとともに、さらに高占積率化が可能となる。
【0071】
また、前記導体セグメントの両方の端部の周回長さの合計が、前記磁極ピッチに対応しているという構成を採用することが望ましい。
【0072】
これによれば、一定形状のセグメントを利用して固定子上を周回する固定子巻線を形成することができる。従って、導体セグメントの形状を統合し、種類を低減でき、導体セグメントを製造するためのプレス型などの製造設備を安価にできる。また、接合部を固定子鉄心の両側面に配置し、しかも同じ形状とすることで接続部の生産工程が容易となる。
【0073】
また、さらに整流器を備え、前記導体セグメントの一部が前記整流器の整流素子の電極に直接接続されている構成を採用してもよい。
【0074】
これによれば、整流回路を構成するための端子台等の接合部材が不要であり、簡単な構成の低コストで小型の整流器を提供できる。なお、かかる整流素子との直接接続のためのセグメントは、他のセグメントより長いなど、所定の接続パターンを繰り返して接合される他のセグメントとは異なる形状とすることが望ましい。
【0075】
また、前記整流素子の電極に接続される前記導体セグメントは、前記固定子と前記整流素子電極との間において変形しやすい部分を有するという構成を採用してもよい。
【0076】
これによれば、導体セグメントの変形で振動などを吸収でき、整流素子の破損を防止する事ができ高信頼性を実現できる。なお、変形しやすい部分としては、電気導体の一部を細くした形状などを採用することができる。
【0077】
また、前記U字状セグメントのターン部側に整流器を配置して前記固定子巻線の巻線端と接続したという構成を採用してもよい。
【0078】
かかる構成によると、巻線を形成するためにU字状セグメントの端部を接合する時に、整流素子の電極に接続される導体が邪魔にならず、同一パタ−ンの繰り返し接合が可能となるので、製造工程が容易となり、コスト低減が可能となる。
【0079】
また、前記U字状セグメントのターン部とは反対側に整流器を配置して前記固定子巻線の巻線端と接続したという構成を採用してもよい。
【0080】
かかる構成によると、U字状セグメントのタ−ン部形状を同一にできるため、セグメントの製作工数を短縮でき、コスト低減が可能となる。
【0081】
また、前記固定子は、相互に短絡して中性点となす引き出し配線を有するという構成を採用することができる。
【0082】
かかる構成によると、固定子上において中性点接続を実現できる。
【0083】
なお、導体セグメントを延長して敷設し、複数の導体セグメントを直接に接続して中性点接続を得ることが望ましい。特に、断面形状が矩形の導体セグメントを採用した場合には、十分な強度が得られ、他のコイルエンドとの間にも空間を確保しながら敷設することができる。また、放熱面積を増加し、固定子コイルの冷却性を向上することもできる。
【0084】
なお、前記導体セグメントは、断面形状が長方形状の電気導体により構成されており、前記コイルエンドにおいては、その断面の長手方向を径方向に配列して配置されていることが望ましい。
【0085】
かかる構成を採用することで、コイルエンド群の通風抵抗を低減でき、低騒音化を図ることができる。なお、長方形状の断面形状としては、長方形のほか、長方形の短辺を曲面とした形状や、長楕円形などを用いることができる。
【0086】
なお、複数の前記導体セグメントは、前記コイルエンド群において互いに他の導体セグメントと接合されて複数の接合部を形成しており、複数の前記接合部は、多重の環状に配列されており、前記コイルエンド群内において周方向並びに径方向に関して互いに離間して配置されているという構成が採用されることが望ましい。
【0087】
かかる構成によると、接合部は、複数の導体セグメントの配置、すなわちスロットの配置に対応して、周方向に沿って環状に配列される。しかも、スロット内には、複数の導体セグメントを径方向にのみ配列して収容しているため、接合部の環状の配列を、同心状の多重に配置することができる。このため、複数の接合部を、周方向ならびに径方向へも離間させて配置することができ、複数の接合部の間に確実に隙間を形成できる。また、接合部間の短絡を容易に回避できる結果、接合工程における利点が提供される。
【0088】
【実施の形態】
次に、この発明を適用した車両用交流発電機を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0089】
(第一実施例の構成)
図1から図8はこの発明の第一実施例を示したものである。図1は特に自動車用に適合された車両用交流発電機の主要部を示した図である。図2から図8は本実施例の固定子の説明図である。
【0090】
この車両用交流発電機1は、電機子として働く固定子2、界磁として働く回転子3、回転子3と固定子2とを支持するフレ−ム4、および固定子2に生じる交流電力を直流電力に変換する整流器5を有している。この整流器5の出力は12Vのバッテリに接続されている。回転子3は、シャフト6と一体になって回転するもので、一対のランデル型ポールコア7、冷却ファン11、界磁コイル8、スリップリング9、10、および16個の永久磁石51によって構成されている。永久磁石51は、図示せぬ磁石保持器によって連結されている。
【0091】
ポールコア爪間に介在された永久磁石51は、直方体のフェライト磁石を使用している。その寸法は、磁極間幅を8mm、軸方向長さを24mm、径方向長さを9mmに設定してある。また、界磁コイルは、平角導体を使用し、抵抗値を1.8Ω、ターン(T)数を330Tに設定してある。また、永久磁石51には、湿式異方性磁石を用い、−30°C下でフル励磁した際に5%以下の減磁特性に抑制できる磁石材を用いている。
【0092】
また、ポールコアのボス部の径はφ50mmであり、シャフト6の径はφ17mmに設定している。このポールコアのボス部の断面積よりシャフト6の断面積を引いた断面積を極対数で割ったものを基準として、略同一となるように各部磁極断面積を設定している。
【0093】
シャフト6の端部には、プーリが固定されている。プーリは、自動車に搭載された走行用のエンジン(図示せず)により回転駆動される。
【0094】
ランデル型コア7は、一対のポールコアにより構成されている。コア7は、シャフト6に組付られたボス部71、ボス部の両端より径方向に延びる2つのディスク部72、及びディスク部72の先端に配列された16個の爪状磁極73を有する。
【0095】
フレーム4には、その軸方向の両端に、冷却空気の吸入孔41、42が開設されている。さらに、フレーム4には、その外周部に、冷却空気の吐出孔43、44が開設されている。吐出孔43、44は、コイルエンド31に対向して2列の環状に配列されている。また、プーリの外径はフレ−ム4の軸方向端面の吸入孔41の外径よりも大きく設定されている。
【0096】
固定子2は、固定子鉄心32、固定子巻線を構成する複数の導体セグメント33、及び固定子鉄心32と導体セグメント33との間を電気絶縁するインシュレータ34で構成され、フレ−ム4により支えられている。固定子鉄心32は、薄い鋼板を重ね合わせた積層型のもので、その内周面には複数のスロット35が形成されている。
【0097】
ひとつのスロット35内には、2本の矩形状の電気導体が、内層導体、外層導体として挿入されている。これら電気導体は、導体セグメント33によって提供されている。導体セグメント33は、U字状、あるいはV字状と呼び得る形状である。
【0098】
固定子巻線は電気接続された多数の導体セグメント33により構成されている。固定子鉄心32の軸方向端面の一方に導体セグメント33のターン部33cが配置され、その他方に接合部33dが配置されている。接合部33dは、異なる導体セグメント33の端部を接続して形成されている。導体セグメント33は、固定子鉄心32の両端に突出して、それぞれコイルエンド31を形成している。そして、複数の導体セグメント33が、固定子鉄心32上に環状に配列される結果、環状のコイルエンド群が形成されている。
【0099】
導体セグメント33のうち、固定子鉄心32から延び出す稜線部33eは外層、内層で逆方向に傾斜している。コイルエンド群の中で隣接する導体セグメント33の間には電気絶縁が確保できる所定の隙間が設けられている。
【0100】
コイルエンド31には、回転子3のポールコア7のディスク部72が対向している。
【0101】
なお、この導体セグメント33の絶縁皮膜はあっても無くとも良い。
【0102】
またインシュレータ34は図4に示されるように、固定子鉄心32と導体セグメント33との間、スロット内の各電気導体の間を絶縁すべくS字形状に配置されている。
【0103】
また、固定子鉄心32の先端歯部は固定子鉄心32の製作時又は導体セグメント33挿入後の押し曲げ等により加工硬化を加えている。
【0104】
上記固定子巻線は、X、Y,Zの3相巻線を有している。各相の一方の巻線端33fは、軸方向に延び出しており、整流器5に設けられた整流素子52の電極部53に直接、ヒュージング溶接等により電気接続されている。巻線端33fには、振動を吸収し、応力の伝達を緩和するために、断面積を狭めた部分33gが形成されている。
【0105】
各相の他方の巻線端は図22に示すように中性点33kとして直接又は導体を介して電気接続されている。
【0106】
固定子巻線の製造工程を説明する。
【0107】
U字状の導体セグメント33は、図3に示すように、内層側導体部33aと外層側導体部33bとターン部33cとで構成されている。このセグメント33は銅平板から折り曲げ、プレス等で製作される。
【0108】
複数の導体セグメント33は、固定子鉄心32の軸方向端面の同一側に複数のターン部33cが揃うように重ねられる。そして、図4に示すように外層側導体部33bがスロット35の深さ方向の奥側に、内層側導体部33aがスロット35の深さ方向の手前側に位置するように挿入される。その結果、略平行なスロット35の側壁に、電気導体の両側面がインシュレータ34を介して対向するように圧入される。
【0109】
一方、固定子鉄心32の他端側には、複数の導体セグメント33の端部が、内層、外層として突出して配列される。そして、図5に示すように、内層と外層とが周方向に反対方向に曲げられる。内層と外層とは所定のスロット数だけ曲げられる。その後、異なる層の異なる導体セグメント33の端部どうしが接合され、接合部33dが形成される。この接合部33dとしては、電気導通するように超音波溶着、アーク溶接、ろう付け等を採用できる。
【0110】
本実施例では回転子3の磁極数を16に設定してあり、固定子鉄心32のスロット数を96に設定し、固定子巻線は3相巻線を構成している。ステータ外径はφ130mmであり、内径はφ102mmに設定してある。この固定子鉄心23の積厚は34mmであり、板厚0.5mmのSPCC材を積層し、レーザ溶接等で固着している。スロットは電気角で30°ピッチに相当する3.75°ピッチで等間隔で設定している。その形状は、側面を平行とした略矩形状であり、その側面幅は1.8mm、奥行きは10mm、背厚は3.5mm、開口幅は0.8mmに設定されている。また、先端歯先部の径方向厚さは0.5mmに設定されている。
【0111】
このスロット内に挿入される電気導体は、厚さ1.6mm、幅4.5mmであり、角部には0.6mm以下のRが取ってある。スロットと電気導体との間には、約100μmの厚さのインシュレータ34が介在している。
【0112】
具体的結線例を図6、図7、図8を使用して説明する。図6、図7の下側の渡り線部はセグメントのターン部33cであり、上側が接合部33dである。図中実線は内層の電気導体、一点鎖線は外層の電気導体を示す。
【0113】
まず、3相巻線のうちのX相について説明する。スロット番号の4番から6スロットおきに94番まで(4番、10番、16番……94番)が第1のスロット群を成している。これらに隣接する5番から6スロットおきに95番まで(5番、11番、17番……95番)が第2のスロット群を成している。
【0114】
第1スロット群に収容された複数の導体セグメント33によって形成される第1巻線は、2本の波巻巻線を含んでいる。また、第2スロット群に収容された複数の導体セグメント33によって形成される第2巻線は、2本の波巻巻線を含んでいる。
【0115】
これら第1巻線と第2巻線とは、2つの結線部102と、1つの結線部103とを経由して直列接続されている。第2巻線の2本の波巻巻線は、結線部103によって反転して直列接続されている。そして、その両端それぞれに、結線部102によって第1巻線の波巻巻線が直列接続されている。そして、第1巻線の2つの端部が、巻線端Xと、巻線端X’として引き出される。
【0116】
なお、結線部102は、5スロット離れたスロット内に収容された内層電気導体と外層電気導体とを接続している。結線部103は、6スロット離れたスロット内に収容された同じ層の電気導体を接続している。
【0117】
この結果、X相は、電気角で30°位相がずれた第1巻線と第2巻線とが直列接続されて構成される。そして、第1巻線が2T、第2巻線が2Tであることから、4Tの固定子巻線が構成される。同様にして、電気角120°ピッチでY相、Z相が形成され、図8に示すようにこれらの3相が星形結線されている。
【0118】
なお上記実施例では、X相の第1スロット群と、Y相の第1スロット群と、Z相の第1スロット群とが第1スロット組に属し、X相の第2スロット群と、Y相の第2スロット群と、Z相の第2スロット群とが第2スロット組に属する。そして、これらスロット組に装備された巻線は、コイルエンドにおいてすべてが均等に外部に露出しており、均等に冷却風にさらされる。そして、電気的に隣接する2つの巻線が直列接続されて交流として合成されており、2組のスロット組により提供される6つの巻線が、3相結線されている。また、これら巻線はコイルエンド間に隙間をもっているため、風下側に配置されるコイルエンドであっても十分に風にさらされる。このため、巻線毎の放熱に寄与する表面積の差がほとんどない。つまり、3相の多相交流発電機として、2倍の相数である6相に相当する巻線を含むにもかかわらず、すべての巻線が均等な冷却条件に置かれる。
【0119】
なお、図5、図6、図7に示した固定子巻線では、導体セグメント33のターン部33cが固定子鉄心32の一方の端面側に配列され、整流器5に接続される巻線端33fが固定子鉄心32の他方の端面側から引き出されている。
【0120】
(実施例の作用効果)
上記構成とすることにより、内層に位置する複数の導体セグメント33の稜線部33eの傾斜方向を同一方向とすることができ、しかも外層に位置する複数の導体セグメント33の稜線部33eの傾斜方向を同一方向とすることができる。このため、多相の固定子巻線をコイルエンドで干渉無く配置できる。よって、スロット内における電気導体の占積率を向上して高出力化できる。しかも、コイルエンドにおいて隣接する電気導体の間には、電気絶縁が確保できる隙間が設けられるので温度上昇が大幅に抑制される。特に本実施例では、ランデル型回転子の軸方向端部に内扇ファンとしての冷却ファン11を設け、コイルエンド31の外周側に対応してフレーム4に通気孔としての吐出孔43、44を設けているため、コイルエンド群内を通ってフレーム外周部に向けて抜ける冷却風の通風抵抗を極端に低減でき、冷却性を大きく向上させることができる。
【0121】
また、隣接するスロット群の巻線を直列接続して固定子巻線とすることで、スロットあたりの電気導体数を少なくしてコイルエンドでの導体間の隙間を確保しつつ、車両用発電機に必要なT数を得ることができる。
【0122】
回転子の磁極数の3倍のスロット数で固定子を設計する従来方式の場合、スロット内の電気導体数以上のT数を得ることはできない。一般に、車両用交流発電機では、定格0.5〜2.5kwのものが使用される。このような出力を、車載可能な所定の体格の制限、エンジン回転数の制限の下で実現しようとした場合、少なくとも固定子巻線は3T以上必要である。これより小さいT数を設定した場合、図9の破線に示されるように低速回転では出力が出ず、高速のみ出力が大きく出てしまい車両用交流発電機として不適切な特性となってしまう。
【0123】
例えば、スロット数を回転子の磁極数の3倍とし、スロットあたり電気導体数を2本として、固定子巻線のT数を2Tとした比較例と、本実施例の出力特性を図9の破線と実線に示す。従来方式では回転頻度の高い車両アイドル回転数付近での低下が著しく車両用発電機として成立しない。必然的に、スロットあたりの電気導体数を増加させなければならない。しかし、1本の電気導体の断面積が同じである限り、コイルエンドの隙間減少による通風性の悪化、冷却性の悪化という問題が生じる。また、電気導体の組み付け工数の増加にともなう製造コストの増加の問題がある。逆に、1本の電気導体の断面積を下げてT数を増すと、巻線のインピ−ダンスが高くなるので高出力化が不可能となる。
【0124】
これに対し、本実施例では、スロット数を極数の3倍以上とし、隣接するスロットの導体を直列に接続する部分を設けているので、スロットあたりの導体数は最少である2本とすることができる。具体的には、16極の磁極数に対して3相発電機として必要な3倍の48個のスロット数だけでなく、さらに倍の96個のスロット数を確保している。例えば、12極に対しては3相で、72個のスロットを採用してもよい。これにより、コイルエンドに隙間を形成して通風による冷却性を確保でき、製造コストを増加することなくスロット内の占積率を向上させ、低回転から車両に必要な出力特性を得ることができる。
【0125】
また電気角が30°ずれた第1巻線と第2巻線とを直列接続しているので、起磁脈動力を低減できるため磁気騒音の大幅な低減ができる効果もある。
【0126】
しかも、第1巻線と第2巻線とは、コイルエンドにおいては均等に外部に露出しており、均等に冷却風にさらされている。しかも、コイルエンド間には、そこを横切る通風を可能とするための隙間が確保されているため、高い冷却性が得られる。この関係は、6つのスロット群に収容された6つの巻線のすべてについて実現されており、すべての巻線が均等に冷却される。
【0127】
また、図6、図7の結線方法では、2層化した内層側電気導体と外層側電気導体を交互に接続するため、各相の渡り線部分の長さは結果的に同一とすることができるので各相の巻線の電気抵抗値は均一となる。加えて、固定子巻線のインダクタンスはスロット内の位置によって異なるが本実施例では内層側電気導体の数と外層側電気導体の数とが各相で同一であるため、インダクタンスは略同一とすることができる。即ち、インピーダンスが均一化できることにより局部的な発熱を防止できる。
【0128】
またコイルエンドの軸方向高さも飛躍的に低減でき、結果的に従来の固定子巻線に対し抵抗値を略半減できる。これにより、低インピーダンス化によって小型高出力化を図ることができると共に、発熱量低減による温度低減、高効率化をも達成できる。
【0129】
更にコイルエンド高さの低減にともない、固定子2の軸方向長さを抑制できる。この結果、フレーム4の角部の丸みを大きくできる。この結果、体格が丸い車両用交流発電機を構成でき、機械的剛性の向上を図ることができる。さらに、車載時に、他の部品との干渉を回避することができるという効果がある。
【0130】
また、コイルエンドの冷却性が大幅に向上することから、ファンの小型化が実現できる。さらに、コイルエンド群としては、表面の凹凸が平滑化されること、一様な繰り返し紋様が形成されること、及びコイルエンド内を冷却風が横切ることで、冷却風との間で生ずるファン騒音を大幅に低減することができる。
【0131】
また、導体セグメント33のターン部33cと反対側から巻線端33fを取り出しているので、ターン部33cは同一形状とすることができる。このため、ターン部33c以外の直線部の長さを変えて巻線端33fや結線部102、103の形成に対応できる。よって直線部の長さのみ異なる導体セグメント33を製作すればよいので、生産工数を大巾に下げることができ、安価な設備で対応できる。
【0132】
また電気導体の断面形状の矩形化により、高占積率化が可能であると共に、プレス等での導体セグメントの作成も可能であり、素材、加工コストの低減を図ることができる。
【0133】
また、電気導体と固定子鉄心との間の対向面積が大きくなるので、伝熱が良好となり電気導体の温度が更に低減できる効果がある。また、固定子全体の剛性が高まることから磁気音を抑える効果もある。また、電気導体自体の剛性があがることから、コイル間の隙間の管理が容易である。その結果、電気導体の絶縁皮膜の廃止、電気導体の固着材の廃止が可能となり、高信頼性で低コストの発電機が提供できる。また、巻線端部の剛性も高まることから、従来必要であった整流器5の端子台を廃止でき、直接、整流素子52に接続することも可能になるので、更にコスト低減効果がある。
【0134】
また、スロット内を、単線の電気導体を、内外に2層化して収容しているため、組付が容易となる。しかも、接合箇所は径方向に1ヶ所であるから他の接合箇所との重なりがなくなり、溶接等の工程が容易になり、生産性が向上する。よって低コストの発電機を提供できる。更に、1組の整流器で構成できるため、電気部品が簡素化でき、低コスト化できる効果もある。
【0135】
また、ランデル型回転子であることから、冷却ファンに鉄材が使用できるので、高速回転に対する耐久性がセ−レント型回転子よりも優れる。セ−レント型回転子では、軸方向端面に磁極が並ぶので、この軸方向端面に設ける部材は、磁束短絡防止のためにアルミや樹脂などの非磁性材を使用しなければならないからである。このような高速耐久性の高さにより、プ−リ比を高く設定することができるので、エンジンのアイドリング回転時の回転子の回転数を高くして出力を向上できる。また、ファンの材料費や加工費が安く、さらにポ−ルコアとの接合手段にも安価なヒュ−ジング溶接などが採用できることにより、製造コストの低減効果もある。
【0136】
(第二実施例)
図10から図12に第二実施例を示す。第一実施例では、固定子鉄心32の端面の片側に導体セグメント33のターン部33cを設けていたが、第二実施例ではターン部33cで分離された導体セグメントを用いる。そして、固定子鉄心32の両側に接合部を配置した点が異なる。
【0137】
図11に図示されるように、導体セグメント33は、スロット35内に挿入される略直線状部分である内部導体33hと、この内部導体の両側おいて固定子鉄心32の軸方向両側に延びる略直線状部分である外部導体33iを有してなる。この外部導体33iは磁極ピッチの約半分の距離を周回する角度と長さを持っている。外部導体33iは図10に示すようにコイルエンド31としての稜線部を形成している。そして、内層、外層の稜線部33iの傾きが逆になるように複数の導体セグメント33がスロット内に挿入されている。また、固定子鉄心32は、図12に示されるように歯先先端部32aをU字状またはJ字状とした半製品から製造される。固定子鉄心32は、複数の導体セグメント33をスロット内に挿入した後、径方向から歯先先端部32aに加工治具を押し当てるなどして歯先先端部32aに塑性加工を加えて、スロットの内周側開口を狭めて製造される。このようにすることで、径方向内側からの導体セグメント33の挿入が可能となり、予め導体セグメントを最終形状に加工することができ、組付けが容易となる。
【0138】
また、導体セグメントを挿入した後、導体セグメントを径方向内側から圧縮してスロット形状に合わせて変形させることで、更に高い占積率を得ることができる。また、塑性加工により歯先先端部が加工硬化するため、導体セグメント33のスプリングバックによる歯先変形を防止できる効果もある。
【0139】
なお、導体セグメント33は予め加工することとしたが、スロット内に収納した後折り曲げ加工しても良い。
【0140】
(第三実施例)
第一、第二実施例では内外層の電気導体を一対のみ、即ちスロットあたりの電気導体数を2Tとしたが、導体セグメントの挿入工程を繰り返すなどの手段により、電気導体を二対以上としてもよい。この場合も、図13に示すように、異なる相のコイルエンド間の干渉は、第一実施例と同様に回避できる。このため、上記実施例と同様に高い占積率、高い冷却効率、低い騒音などの効果が得られる。更にスロットあたりの電気導体数が増えるので、低いエンジン回転数から発電を開始でき、低速回転時の発電量を増加させることができる。
【0141】
図14には、内外層の電気導体を二対、つまりスロットあたりの導体数が4Tの場合のインシュレータの配置を示す。
【0142】
更に、内外層の電気導体を二対以上設けることで、スロット数の設定、結線箇所等を変えることにより、任意のT数を構成することができる。
【0143】
(第四実施例)
第一から第三実施例では、電気角で30°の位相差をもつ2つのスロット群に収容された巻線を直列接続することにより、スロットあたりのT数を増やすとともに、磁気音の主成分である極対数の6倍次数成分をキャンセルして騒音低減を図っている。つまり、交流の状態で、2つの巻線の出力を合成している。
【0144】
これに対し、図15、16の固定子巻線展開図、および図17の回路図に示すように、電気角で30°の位相差をもつ2組の三相巻線をそれぞれの整流器で整流した後、合成して出力する点が異なる。つまり、直流の状態で、2つの巻線の出力を合成している。
【0145】
具体的結線例を図15、図16、図17を使用して説明する。図15、図16の下側の渡り線部はセグメントターン部33cとなり、上側が結線部33dとなる。図中実線は内層電気導体、一点鎖線は外層電気導体を示す。
【0146】
まず、X相の第1巻線と第2巻線について説明する。スロット番号の4番から6スロットおきに94番まで(4番、10番、16番……94番)が第1のスロット群を成している。これらに隣接する5番から6スロットおきに95番まで(5番、11番、17番……95番)が第2のスロット群を成している。
【0147】
第1スロット群に形成される第1巻線は、図15に示す巻線端X1と、X1’とを有する。第1巻線は、巻線端X1と、X1’との間に敷設された反転結線部で直列接続された2本の波巻巻線を含んでいる。
【0148】
第2スロット群に形成される第2巻線は、図16に示す巻線端X2と、X2’とを有し、第1巻線と同様に形成されている。
【0149】
さらに、同様にして、電気角で120°離れてY相、Z相が形成されている。これら各相についても、第1巻線と第2巻線が形成されている。
【0150】
そして、これら6本の巻線は、図17に示すように結線される。X、Y、Z相の3つの第1巻線が星型結線されて第1整流器に接続される。X、Y、Z相の3つの第2巻線が星型結線されて第2整流器に接続される。第1整流器の直流出力と、第2整流器の直流出力とは並列に接続され、直流出力が合成される。
【0151】
これにより、2Tの3相巻線の直流出力を合計して取り出すので、低回転域での出力不足を改善することができる。更に、内外層電気導体を二対以上配置する第三実施例と組み合わせることで、4T以上を実現でき、低回転域での発電不足の問題を解消できる。また、電気角が異なる2つの巻線を直列接続することが不要であるから、導体セグメントの形状を同一にすることができ、導体セグメントの生産効率が更に向上できる。磁気音の主成分である極対数の6倍次数成分をキャンセルして騒音低減が達成される効果も得られる。
【0152】
なお上記実施例では、X相の第1スロット群と、Y相の第1スロット群と、Z相の第1スロット群とが第1スロット組に属し、X相の第2スロット群と、Y相の第2スロット群と、Z相の第2スロット群とが第2スロット組に属する。そして、これらスロット組に装備された巻線がそれぞれ異なる多相固定子巻線として多相結線され、それぞれ別々に整流されて、その後直流として並列接続されて合成されている。
【0153】
(その他の実施例)
上記第一実施例では、固定子2の端面の片側でのみ導体セグメントを接合したが、両側で接合してもよい。例えば、複数の導体セグメントのターン部を、固定子鉄心32の両側に分散して配置することができる。この場合、接合部の間隔を広くでき、溶接等の接合工程が容易になる効果がある。
【0154】
上記第二実施例で採用した図12に図示される固定子鉄心32と、第一実施例で採用した図3に図示される導体セグメント33とを組み合わせることができる。
【0155】
また、図12の固定子鉄心32を採用する場合には、導体セグメントをスロットに挿入しつつ、挿入が完了したスロットから順番に塑性加工を実施することができる。これにより、生産効率を飛躍的に向上できる。
【0156】
電気導体としては、複数の素線からなる矩形断面の電気導体を採用できる。
【0157】
上記の実施例では、電気導体は銅製である。これに代えて、アルミ、鉄等を用いることができる。かかる材質の選定により、素材コストの低減、鋳物、ダイカストで導体セグメントを製造でき、生産工程が容易となる効果がある。
【0158】
また、電気導体の断面は、矩形としたが、丸断面であってもよい。また、矩形と丸との複合でもよい。たとえば、スロット内を矩形とし、スロット外を丸とすることができる。この場合、高い占積率、高い冷却性能の効果が得られる。また逆に、スロット内を丸とし、スロット外を矩形とすれば、コイルエンドにおける電気導体間の隙間を十分確保でき、冷却風の通風抵抗を低減して冷却性能を大幅に向上できる。なお、矩形断面の電気導体は、扁平形状と言い得る形状である。
【0159】
導体セグメント33に絶縁皮膜を設け、インシュレータをスロットの内壁に沿ってU字型に配置しても良い。この場合、インシュレータ形状が単純化できる効果がある。また、固定子鉄心32を絶縁処理してインシュレータを廃止しても良い。この場合、導体セグメント33をスロットに挿入する時に、インシュレータがずれて絶縁不良を起こすことを防止できる。
【0160】
固定子巻線は、3相以上の多相巻線であっても良い。多相巻線であっても、固定子鉄心32に規則的に巻線を形成でき、巻線形状を複雑にすることがない。3相以上とすることで、出力電圧のさらなる低ノイズ化、低リップル化を図ることができる。
【0161】
固定子巻線は、三角結線されてもよい。これは車両が必要とする発電量の特性に応じて、適宜、選択できる。
【0162】
回転子として、永久磁石を持たない回転子を採用してもよい。また、永久磁石の励磁のみによる回転子であってもよい。
【0163】
回転子の両端面に冷却ファンを設けてもよい。例えば図18に示す構成を採用できる。この実施例では、回転子のフロント側端面にも冷却ファン12が装備される。かかる構成によると、良好な冷却特性が得られる。なお、ランデル型回転子では、ポールコアのディスク部で風を発生するため、図1に示す片方の冷却ファン11だけでも必要な冷却性が得られるが、両側に冷却ファンを設けた場合、更に車両用交流発電機としての体格を小型化できる効果がある。
【0164】
また、図19に示す構成を採用してもよい。回転子3の冷却ファンが設置されていない端面に、フレーム4の吸入孔41の外周部の内壁面45を近接させて対向させている。これにより、ポールコア7のディスク部72をファンと見立てて、内壁面45がシュラウドの役割を担う。このため、ディスク部72の送風能力が増す。従って、冷却ファンを両側に設ける場合に比べて、部品点数、加工工数を増やすことなく、同等の冷却性能を達成でき、更に小型化できる。
【0165】
図23に示すように、巻線端33fを、ターン部33cと同じ側に設けてもよい。これにより、接合部での溶接などによる接合工程において、巻線端33fが邪魔にならず、しかも同一パターンの繰り返し接合となるから、生産工程が容易となる。
【0166】
以上に述べた実施例では、回転子の磁極数の6倍の数のスロットを設けている。そして、隣接する2つのスロットに収容された電気導体を直列接続する箇所を設けることで、一連の巻線のターン数を4Tとした。これは、3相の2倍スロット直列巻線と呼ぶことができる。これに代えて、例えばスロット数を磁極数の9倍としてもよい。そして、隣接する3つのスロットに収容された電気導体を直列接続する箇所を設けることで、6Tとすることができる。これは、3相の3倍スロット直列巻線と呼ぶことができる。また、同一スロット内の導体を直列接続しないで、並列接続させる箇所を設けることにより、5Tとするなど奇数のターン数に設定することもできる。スロット数の増加によりさらに多いターン数に設定してもよい。
【0167】
また、固定子鉄心32に設けるスロット数は、上記倍スロット構成よりさらに1スロットだけ多くしてもよい。例えば、97本のスロットを固定子鉄心32に形成してもよい。この場合の結線を説明する展開図を図20、図21に示す。図中、実線は内層電気導体、一点鎖線は外層電気導体を示す。この構成によると、結線部104、105の形状、特に高さを他のコイルエンドを同じにすることができる。図6、図7に図示される結線では、結線部102、103は、他のコイルエンドとは異なる高さを持っており、異なる形状の電気導体を必要とするとともに、接合工程の複雑化を招く。
【0168】
隣接するスロットの異なる層をなす電気導体を接続する結線部104は、他のコイルエンドと同じ傾斜と高さを持っている。このため、U字状の導体セグメントの製作にあたって、直線部の長さを統一でき、導体セグメントの生産工程が容易になる。更に、同じ層の電気導体を接続するための結線部105は、通常の繰り返しと同じ形状とすることができるので、結線工程が容易になる。
【0169】
この構成では、図20、図21の巻線端Xなどの引出し側に、U字状の導体セグメントのターン部を配置してもよい。ターン部の広がりがすべてスロット6本分に統一化されるため、セグメントの生産工程が容易になる効果もある。
【0170】
また、固定子には、電気絶縁を確保するための絶縁性樹脂をコーティングをしてもよい。かかる樹脂は、含浸樹脂とも呼ばれる。かかる樹脂は、巻線の電気絶縁性を高めるため、あるいは固定子状のセグメント等を相互に固着して固定するために有効である。なお、樹脂のコーティングにあたっては、コイルエンド群内への通風性を損なわないように付与することが望ましい。ただし、樹脂によってコイルエンド間の隙間がいくぶん塞がれることがあってもよい。かかる構成にあっても、コイルエンド群において各セグメントの間に隙間が維持されることで、放熱に寄与する表面積を広く確保することができ高い冷却性を得ることができる。
【0171】
以上に説明した実施例によると、コイルエンドの干渉を抑制でき、固定子巻線の高占積率化が図れ、出力を向上する効果がある。更に、異なるスロットの内外層に位置する導体を直列に接続しているのでスロット内位置に起因する各相巻線の導体長さ、漏れインダクタンスは各相で均一化される。このためコイルを流れる電流が均一化され、各相の発熱量も同じとなるため、局部的な固定子巻線の発熱や起磁力アンバランスを防止でき、温度低減、低騒音化が図れる。また、隣接するスロットを直列接続する固定子巻線とすることで、スロットあたりの導体数を少なくしてコイルエンドでの導体間の隙間を確保しつつ車両用発電機に必要な低回転時の出力を得るためのターン数を得ることができる。特に、上述の実施例では、電気角が30度異なる2組の三相固定子巻線を構成しているから、電気磁気的な騒音を抑制する効果があるとともに、実質的には電気的な位相が異なる6つの巻線の出力を合成しているので、整流後の直流電力に含まれるリップル成分が少なく、高品質の電力を供給できる。しかも、セグメントを用いて固定子巻線を構成し、スロット内においては深さ方向にのみ電気導体を積層して収容している。このため、一様な形状をもった複数のコイルエンドを一様に配列することができ、電気的に位相が異なる複数の巻線を、コイルエンドにおいてはそれぞれ均等に外部に露出させ、冷却風に対して均等にさらすことができる。しかも、コイルエンドにおいては複数の導体セグメントが互いに離間しているので、放熱のための十分な表面積が確保される。さらには冷却風が横切って流れることで優れた放熱性が実現される。これらの作用により、複数の巻線毎の冷却性のばらつきをなくしながら、高い放熱性、冷却性を実現することができ、電気導体の断面積向上に伴う電気抵抗の低下と相まって、小型化、高出力化に適合可能な車両用交流発電機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の第一実施例の縦断面図である。
【図2】図2は第一実施例の固定子の外観図である。
【図3】図3は第一実施例の導体セグメント33の斜視図である。
【図4】図4は第一実施例の固定子の部分的な断面図である。
【図5】図5は第一実施例の固定子の両端面のコイルエンドを示す斜視図である。
【図6】図6は固定子巻線の結線状態を示す展開図であって、1番目から48番目のスロットを示している。
【図7】図7は固定子巻線の結線状態を示す展開図であって、49番目から96番目のスロットを示している。図6と図7は、V−V線、VI−VI線で環状に接続されて一連の固定子巻線を示している。
【図8】図8は車両用交流発電機の回路図である。
【図9】図9は車両用交流発電機の出力特性を示すグラフである。
【図10】図10は第二実施例の固定子の部分的な外観図である。
【図11】図11は第二実施例の導体セグメント33の斜視図である。
【図12】図12は第二実施例の固定子の部分的な断面図である。
【図13】図13は第三実施例の固定子のコイルエンドを示す斜視図である。
【図14】図14は第三実施例の固定子の部分的な断面図である。
【図15】図15は第四実施例の固定子巻線の結線状態を示す展開図である。
【図16】図16は第四実施例の固定子巻線の結線状態を示す展開図である。図15と図16とは、VII−VII線、VIII−VIII線で環状に接続されて一連の固定子巻線を示している。
【図17】図17は第四実施例の車両用交流発電機の回路図である。
【図18】図18は、その他の実施例の縦断面図である。
【図19】図19は、その他の実施例の縦断面図である。
【図20】図20は他の実施例の固定子巻線の結線状態を示す展開図である。
【図21】図21は他の実施例の固定子巻線の結線状態を示す展開図である。図20と図21とは、IX−IX線、X−X線で環状に接続されて一連の固定子巻線を示している。
【図22】図22は第一実施例の固定子巻線端を示す斜視図である。
【図23】図23はその他の実施例の固定子巻線端を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 固定子
3 回転子
31 コイルエンド
32 固定子鉄心
33 導体セグメント
34 インシュレータ
35 スロット
4 フレーム
5 整流器
6 シャフト
7 ポールコア
8 界磁コイル
Claims (29)
- 回転周方向に沿って交互にNS極を形成する界磁回転子と、該回転子と対向配置された固定子鉄心、及びこの固定子鉄心に装備された多相固定子巻線を備える固定子と、前記回転子と固定子とを支持するフレームとを有する車両用交流発電機において、
前記界磁回転子は、前記N極および前記S極を提供する複数の爪状磁極を有するランデル型鉄心を備え、
前記固定子鉄心は、積層板を貫いて延びる複数のスロットが形成された積層鉄心を備え、
前記多相固定子巻線は、複数の導体セグメントを備え、
これら複数の導体セグメントは、
前記スロット内においては、前記スロットの深さ方向に関して内層導体および外層導体として二対以上の対をなして前記スロットの深さ方向にのみ配列され、前記スロット内に互いに絶縁して収納されており、
前記スロット外においては、前記固定子鉄心の端面側に延び出して配置されており、前記界磁回転子のNS極の磁極ピッチに対応して離間する異なるスロット内の異なる層の導体を直列接続する接続パターンによってコイルエンドを形成しており、その結果前記固定子鉄心の端面側には前記接続パターンを主として繰り返すコイルエンド群が形成されており、
さらに、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントは、前記フレーム内における冷却風の通風方向と交差して延びるよう配置され、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントを横切って冷却風が流れる構成が提供され、
前記界磁回転子の軸方向端部に設けられており、前記界磁回転子の回転により遠心方向外側に向けて送風し、前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントを横切って流れる冷却風を生じさせる送風手段を備え、
前記コイルエンド群に対応して、前記フレームには前記導体セグメントを横切って流れる冷却風の通風孔が形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1記載の車両用交流発電機において、
前記多相固定子巻線の出力としての巻線端を有し、前記固定子および前記回転子は、前記回転子を駆動するエンジンの回転数がアイドリング回転数の領域内にあるときに、前記巻線端に15(V)以上の電圧を出力するように設定されていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1または2に記載の車両用交流発電機において、
前記ランデル型鉄心の爪状磁極の外径をL1とし、回転軸方向の長さをL2として、これらの比率が、L1/L2≧1.5とされていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から3のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記スロット内において電気的に絶縁されたすべての前記導体セグメントは、前記固定子鉄心の端部に形成されたコイルエンドにおいて空間的に離間して配置されていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から4のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記スロットの両側に位置する鉄心歯先部の少なくとも
一部を塑性変形させて、前記スロットの内周側の開口の巾を前記スロット内の内壁間距離より狭く形成してなることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から5のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記導体セグメントは、前記スロット内における断面形状が前記スロット形状に沿った略矩形状であることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から6のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
複数の前記導体セグメントは、裸の金属部材よりなり、
前記スロット内において複数の前記導体セグメントの相互間と、複数の前記導体セグメントと前記スロットの内壁面との間とに介装されて電気的な絶縁を提供する電気絶縁部材を備え、
複数の前記導体セグメントは、前記スロット外においては、互いに空間的に離間して配置されていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から7のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記固定子鉄心と前記スロットに収納された前記導体セグメントとからなる前記固定子の軸方向全長が、前記界磁回転子の軸方向全長と同等以下であることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から8のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記導体セグメントのスロット外に位置する部分の少なくとも一部が略扁平形状であることを特徴とする。 - 請求項1から9のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記界磁回転子の磁極間には磁石を介在し、界磁磁束に磁石磁束を加え前記固定子に向かわせることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から10のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記コイルエンドにおける複数の前記導体セグメントは、それらの表面の殆ど全体が前記冷却風にさらされていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から11のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記コイルエンド群が、前記固定子鉄心の両端にそれぞれ形成されており、
前記フレーム内にはそれぞれの前記コイルエンド群に対応して2つの冷却風の通風経路が形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1ないし請求項12記載のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記送風手段は、前記界磁回転子の軸方向の両端部に設けられていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1ないし請求項13記載のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記送風手段は、複数のブレードを有する送風ファンを備えることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1ないし請求項14記載のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記送風手段は、前記複数の爪状磁極に対応して形成された前記ランデル型鉄心の形状により提供されることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1ないし請求項15記載のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記ランデル型鉄心の軸方向端部と、前記フレームの内壁面とを近接して対向させて配置してなることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1ないし請求項16記載のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記フレームには、前記界磁回転子を駆動するプーリの装着端に面して前記送風手段のための吸気口が形成され、前記吸気口の最外径は、そこに装着されるべきプーリの最外径より小さいことを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から17のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記コイルエンドは、前記スロットから延び出す前記導体セグメントの端部を接合して構成されており、一方の導体セグメントの端部が、前記磁極ピッチの半分の距離を少なくとも周回する角度と長さとを持っていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項18記載の車両用交流発電機において、
前記導体セグメントは、それぞれが異なるスロット内に収容される2本の直線部を有する略U字状セグメントであって、
第1のU字状セグメントの端部と、第2のU字状セグメントの端部との接合を前記接続パターンとして前記コイルエンドが形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項19に記載の車両用交流発電機において、
複数の前記U字状セグメントのターン部は、前記コイルエンドとして前記固定子鉄心の一方の端面側から軸方向に突出して配置され、しかも互いに離間して配列されて第1コイルエンド群を形成し、
複数の前記U字状セグメントの端部は、前記固定子鉄心の他方の端面側から軸方向に突出して配置され、前記コイルエンドを形成するように所定の接続パターンで接合され、しかもこれらコイルエンドが互いに離間するように配列されて第2コイルエンド群を形成していることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項18記載の車両用交流発電機において、
前記導体セグメントは、スロットの両側から突出する2つの端部をもったセグメントであり、
前記固定子鉄心の一方の端部において、第1セグメントの一方の端部と、第2セグメントの一方の端部との接合を前記接続パターンとして一方のコイルエンドが形成され、
前記固定子鉄心の他方の端部において、前記第1セグメントの他方の端部と、第3セグメントの他方の端部との接合を前記接続パターンとして他方のコイルエンドが形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項21記載の車両用交流発電機において、
前記導体セグメントの両方の端部の周回長さの合計が、前記磁極ピッチに対応していることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から22のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
整流素子を備え、前記導体セグメントの一部が前記整流素子の電極に直接に接続されていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項23に記載の車両用交流発電機において、
前記整流素子の電極に接続される前記導体セグメントは、前記固定子と前記整流素子電極との間において変形しやすい部分を有することを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項19または20に記載の車両用交流発電機において、
前記U字状セグメントのターン部側に配置され、前記多相固定子巻線の巻線端と接続される整流器を備えることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項19または20に記載の車両用交流発電機において、
前記U字状セグメントのターン部とは反対側に配置さ
れ、前記多相固定子巻線の巻線端と接続される整流器を備えることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から26のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記固定子は、相互に短絡して中性点となす引き出し配線を有することを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から27のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
前記導体セグメントは、断面形状が長方形の電気導体により構成されており、前記コイルエンドにおいては、その断面の長手方向を径方向に配列して配置されていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1から27のいずれかに記載の車両用交流発電機において、
複数の前記導体セグメントは、前記コイルエンド群において互いに他の導体セグメントと接合されて複数の接合部を形成しており、
複数の前記接合部は、多重の環状に配列されており、前記コイルエンド群内において周方向並びに径方向に関して互いに離間して配置されていることを特徴とする車両用交流発電機。
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