JP3815674B2 - セグメント順次接合ステータコイル型回転電機 - Google Patents

セグメント順次接合ステータコイル型回転電機 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セグメント順次接合ステータコイル型回転電機の改良、特にセグメント順次接合ステータコイル型車載回転電機の改良に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、採用されつつあるアイドルストップシステムでは頻繁なエンジン始動が必要であるので、ブラシを必要とする直流スタータに代えてそれを必要としない交流モータが要望されている。しかし、従来の直流直巻スタータに匹敵する大始動電流を通電可能な交流モータは従来のオルタネータなどに比較して大型化してしまうため、エンジンルーム内のスペース拡大やレイアウトの大幅変更が必要となり、車重増大も招いてしまう。この対策として、大電流通電可能とするには、ステータコイルを分割して径方向直列コイル構成とするが好適であることが知られている。
【0003】
一方、車両用交流発電機として、本出願人の開発になるセグメント順次接合ステータコイル型回転電機が採用されている。このセグメント順次接合ステータコイル型回転電機は、従来の巻き線ステータコイルに比較してコイルエンドの導体配列構造が簡単であり、スロット占積率も大きくできるので、小型軽量でステータコイルの放熱性にも優れ、一時的に大始動電流を流す必要があるアイドルストップ用交流モータに適している。しかし、この場合、エンジン始動を考えると更なる大電流化が必要である。その他、ハイブリッド車用や燃料電池車用、更には電池駆動フォークリフトを含む二次電池車用の走行モータとしては、上記セグメント順次接合ステータコイルをもつ車両用交流発電機に比較して更なる格段の大電流化が必要となる。
【0004】
回転電機における大電流化には、当然、セグメント断面積増大が最も有効であるが、セグメント順次接合ステータコイルにおけるこの手法の採用は、セグメントの曲げ加工の困難化のために一定の限界がある。
【0005】
他の手法として、従来の巻き線型ステータコイル技術と同様に、ステータコイルを分割して径方向直列コイル構成とすることが考えられるが、上記径方向直列コイル構成においては循環電流を防止するために各径方向直列コイルの起電圧を均一化する必要がある。しかし、セグメント順次接合ステータコイルでは径方向に隣接する一対のセグメントの一端部同士を一方のコイルエンド側で順次接続するという独特の手法を採用するために配線変更自由度が小さいために、コイルエンドにおける配線引き回しを簡素化し、各径方向直列コイルの起電圧のばらつきを減らしつつ、径方向直列コイル数を3以上に増加することは困難であると考えられていた。
【0006】
また、車載回転電機の出力増大と配線損失低減のために、上記大電流化とともに高電圧化すなわちターン数の増大も要求されているが、上記したようにセグメント順次接合ステータコイルでは配線変更自由度が小さいために、径方向直列コイル化とターン数の増大とを同時に実現することは更に困難となる。
【0007】
特に、このようなターン数の増大と径方向直列コイル数の増大とを同時に行うことは、コイルエンドにおける配線接続構造の複雑化、並びに、この複雑な配線接続構造を収容するための体格、重量の増大を招き、更に、この複雑となる配線接続構造における引き回し線の延長距離の増大に伴う抵抗損失及び発熱の増大も問題となる。
【0008】
つまり、従来のセグメント順次接合ステータコイルでは、セグメント配置パターンの制限から並列回路構成による大電流通電が困難であるうえ、ターン数増加の制約から高電圧対応が困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、セグメント間相互接続パターンの複雑化を抑止し、並列回路間の起電圧ばらつきを抑止可能な大電流通電可能な多ターン構成のセグメント順次接合ステータコイルを提供することをその目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のセグメント順次接合ステータコイル型回転電機は、p(pは2以上の自然数)対の磁極を有する回転子と、径方向へs個(sは6以上の偶数)の導体収容位置をそれぞれ有する多数のスロットを有する固定子鉄心と、多数のU字状のセグメントを順次接続してそれぞれ構成されるm(mは3以上の奇数)相の相巻線からなる電機子巻線とを備え、前記セグメントは、頭部側コイルエンドをなすU字状の頭部と、所定スロットピッチ離れた一対のスロットに個別に収容される一対のスロット導体部と、前記スロットから飛び出して端部側コイルエンドを構成する一対の飛び出し端部を備え、前記一対の飛び出し端部の先端は、径方向に隣接する他の前記飛び出し端部の先端に個別に接合されるセグメント順次接合ステータコイル型回転電機において、
同一相の前記相巻線を構成するスロット導体部がそれぞれ収容される前記スロットを意味する同相スロットを磁極ごとに周方向へ連続してそれぞれ複数有してなる同相スロット群を前記磁極ごとに有し、前記スロットの各導体収容位置は、径方向に連続するt(tは整数)個の前記導体収容位置からそれぞれなるr(r=s/t)個の導体収容位置セットに区分され、前記同相スロット群の周方向一方側から数えて同一順位の前記同相スロットは、前記導体収容位置セットごとにそれぞれ部分コイルを収容し、前記相巻線は、互いに異なる前記導体収容位置セットの前記部分コイルを層間接続線により直列接続して構成された径方向直列コイルを、前記同相スロット群の前記同相スロットの個数に等しい数だけ並列接続して構成されることを特徴としている。
【0011】
すなわち、この発明では、径方向においてそれぞれ異なる導体収容位置セットに属する各部分コイルをひとつづつ直列接続することにより、径方向直列コイルを同相スロット群の同相スロット数だけ形成し、これらの径方向直列コイルを並列接続することをその特徴としている。
【0012】
このようにすれば、同相スロット群中の周方向所定順位の同相スロットの径方向に連続する複数の導体収容位置からなる導体収容位置セットに収容した部分コイルを、部分コイル間の接続を煩雑化することなく直並列接続することができるので、部分コイルを周方向又は径方向に増加することにより、簡単にセグメント順次接合ステータコイルの大電流化、高電圧化を実現することができる。その結果、従来、容易ではないと考えられていた高電圧、大電流に対応可能なセグメント順次接合ステータコイルを実現することができる。
【0013】
更に要約すると、従来のセグメント順次接合ステータコイルでは、セグメント配置パターンの制限から並列回路構成による大電流通電が困難であるうえ、ターン数増加の制約から高電圧対応が困難であるという問題があった。これに対して、本発明は、それぞれ単純なセグメント順次接合コイルからなる多数の部分コイルを周方向、径方向に順次接続して各部分コイルの直並列接続回路である相巻線を完成するので、大電流通電、高電圧対応が実現できるとともに、各部分コイル間の接続線の配列が単純となり、かつ、これら接続線同士の相互干渉も容易に回避することができる。その結果、頭部側コイルエンドに配置されるこれら接続線の占有スペースの縮小、それに伴う回転電機全体の体格の縮小及び重量の低減、更に接続線の抵抗損失、発熱の低減を実現することが可能となる。
【0014】
したがって、この発明のセグメント順次接合ステータコイル型回転電機は、従来の14Vの車両用バッテリを更に高電圧化(たとえば42V)する場合において、特に有効である。また、たとえば、相巻線の径方向直列コイルを構成する3つの部分コイルの直列接続を並列接続に変更すれば、従来の14Vの車両用回転電機に転用することも容易である。
【0015】
好適には、径方向直列コイルを構成する各部分コイル間の直列接続は、専用の接続セグメントを用いて実現することができる。この接続セグメントの一対のスロット導体部は、径方向に隣接する(周方向にずれてもよい)2つの部分コイルの先頭スロット導体部と、最終スロット導体部とを兼ねることができる。
【0016】
好適な態様において、前記相巻線の各径方向直列コイルを構成する前記部分コイルの組み合わせは、前記各径方向直列コイルの理論ベクトル起電力合計が等しくなるように決定される。
【0017】
上記説明した部分コイル直並列接続型セグメント順次接合ステータコイルにおける問題点は、各径方向直列コイルを構成する部分コイルが周方向にずれているために、各部分コイル間の理論ベクトル起電力に位相差が生じ、その結果として、各径方向直列コイルの理論ベクトル起電力合計に差が生じてしまうことである。この理論ベクトル起電力合計の差は、相巻線を構成する2つの径方向直列コイルを循環する循環電流を発生させ、回転電機の発熱、損失、騒音の増大と効率、出力の低下を招く。
【0018】
そこで、この態様では、径方向直列コイルの部分コイルの理論ベクトル起電力のベクトル和が各径方向直列コイルごとに一致するように、径方向直列コイルを構成する部分コイルのセットを選定する。
【0019】
これにより、径方向直列コイル間で循環電流が流れることがなく、上記問題点を解消することができる。
【0020】
好適な態様において、前記各径方向直列コイルの前記層間接続線のうち、径方向において同一位置に配置される前記各層間接続線は、周方向に異なる同相スロット群に別々に配置される。
【0021】
つまり、部分コイルは、同一の導体収容位置セットにおいて周方向に1磁極ピッチごとに存在する特定の同相スロットに収容される各スロット導体部を直列接続して構成される。この時、電流通電方向が同じであれば、これらスロット導体部のうち、周方向どの位置のスロット導体部をこの部分コイルの先頭スロット導体部としても電磁気的には等価である。
【0022】
そこで、この態様では、各径方向直列コイルの層間接続線が空間的に重なるのを防止するために、各径方向直列コイルの周方向同一位置の層間接続線が周方向にずらしている。なお、径方向同一位置の各層間接続線は、後での周方向渡り線の配線距離の短縮のために1磁極ピッチづつずらせられるのが好適である。これにより、層間接続線占有スペースの軸方向長、層間接続線の全長を短縮することができ、前記で説明した本発明の効果を一層向上することができる。
【0023】
好適な態様において、前記部分コイルは、前記導体収容位置セットの径方向に数えて1層、4層を挿通する前記セグメントである波巻セグメントと、2層、3層を挿通する前記セグメントである重ね巻セグメントとを交互に接続して略一周する第1周回コイル及び第2周回コイルと、前記第1周回コイルの最終の前記スロット導体部と前記第2周回コイルの先頭の前記スロット導体部とを構成する異形波巻セグメントとを直列接続して構成され、前記同相スロット群の周方向所定順位の一つの同相スロットに収容される。
【0024】
このようにすれば、層間接続線をなす径方向接続セグメントを、重ね巻セグメントや波巻セグメントとの空間的干渉を回避しつつ、容易に配置することができる。また、コイルエンド構成の複雑化を回避しつつ多ターンの部分コイルを構成することができるとともに、層間接続線を構成する径方向接続セグメントの一対のスロット導体部が各部分コイルの先頭又は最終のスロット導体部を構成するので、各部分コイル間の接続作業を、他のセグメントの接合工程にて連続実施することができ、工程を簡素化することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用したセグメント順次接合ステータコイル型回転電機を実施例を参照して以下に説明する。
(全体構成の説明)
図1において、セグメント順次接合ステータコイル型回転電機1は、ロータ2、ステータ3、ハウジング4、整流器5、出力端子6、回転軸7、ブラシ8、スリップリング9を有する車両用交流発電機であり、ステータ3は、ステータコイル31とステータコア32からなる。ステータコア32はハウジング4の周壁内周面に固定され、ステータコイル31はステータコア32の各スロットに巻装されている。ロータ2は、ハウジング4に回転自在に支持された回転軸7に固定されたランデルポール型ロータであり、ステータコア32の径内側に配置されている。ステータコイル31は三相電機子巻線であって、図2に示すセグメントセット330を図3に示すようにステータコア32に設けた所定数のスロット350に絶縁紙340を介して軸方向一方側から挿通し、軸方向他方側にて、径方向に隣接する先端同士を順次接続してなる。ステータコイル31は、軸方向他方側にて端部側コイルエンド311を、軸方向一方側にて頭部側コイルエンド312を有している。このような構成のセグメント順次接合ステータコイル自体はもはや公知である。
【0026】
(セグメントセット330の説明)
セグメントセット330を図2を参照して更に詳しく説明する。
【0027】
セグメントセット330は、略U字状の頭部と、この頭部の両端から直線的に伸びてスロットに収容されている一対のスロット導体部と、両スロット導体部の先端からそれぞれ伸びる一対の飛び出し端部とをそれぞれ有する一つの大セグメント331と一つの小セグメント332とからなる。
【0028】
各頭部は、ステータコア32の軸方向一側に全体としてリング状に存在する頭部側コイルエンド312(図1参照)を構成し、各飛び出し端部は、ステータコア32の軸方向他側に全体としてリング状に存在する端部側コイルエンド311(図1参照)を構成する。
【0029】
セグメントセット330は、大きい大セグメント(大回りセグメントともいう)331と、小さい小セグメント(小回りセグメントともいう)332とを有している。この大セグメント331とこの大セグメント331が囲む小セグメント332とをセグメントセットと称する。
【0030】
大セグメント331において、331a、331bはスロット導体部、331cは頭部、331f、331gは飛び出し端部である。飛び出し端部331f、331gの先端部331d、331eは接合部分であるので端部先端部又は接合部とも称する。スロット導体部331aを1層のスロット導体部と称し、スロット導体部331bを4層のスロット導体部と称する。
【0031】
小セグメント332において、332a、332bはスロット導体部、332cは頭部、332f、332gは飛び出し端部である。飛び出し端部332f、332gの先端部332d、332eは接合部分であるので端部先端部又は接合部とも称する。スロット導体部332aを2層のスロット導体部と称し、スロット導体部332bを3層のスロット導体部と称する。
【0032】
符号’は、図示しない大セグメント又は小セグメントの符号’がない部分と同じ部分を示す。したがって、図2では、互いに径方向に隣接する接合部331dと接合部332d’とが溶接され、互いに径方向に隣接する接合部332dと接合部331d’とが溶接され、互いに径方向に隣接する接合部332eと接合部331e’とが溶接されている。
【0033】
図2では、1層のスロット導体部331aと2層のスロット導体部332aが、所定のスロットに収容される場合、同一のセグメントセット331、332の4層のスロット導体部331bと3層のスロット導体部332bはこの所定のスロットから所定ピッチ離れたスロットに収容される。小セグメント332の頭部332cは大セグメント331の頭部331cに囲まれるようにして配置されている。大セグメント331は、本発明で言う波巻セグメントを構成し、小セグメント332は、本発明で言う重ね巻セグメントを構成している。
【0034】
(スロット内のセグメントセット配置)
スロット350内のスロット導体部の配置状態を図3に示す。
【0035】
スロット350には径方向へs(この実施例ではsは16)の導体収容位置が設定され、径方向に隣接する4個の導体収容位置は、導体収容位置セットと呼ばれ、径方向内側から順番に1層、2層、3層、4層と呼称される。これら導体収容位置セットの1〜4層の導体収容位置には、図2で説明されたセットのセグメントセットの4種類のスロット導体部が挿入され、結局、スロット350には4セットのセグメントセットが径方向に配置されることになる。ただし、同一のスロットの1層、4層に収容される2本のスロット導体部は、異なる大セグメント(波巻セグメント)331に属し、同一のスロットの2層、3層に収容される2本のスロット導体部は、異なる小セグメント(重ね巻セグメント)332に属することは当然である。
【0036】
各導体収容位置セットの1層〜4層の導体収容位置には図3に示すように、スロット導体部331a、332a、332b’、331b’が径方向順番に収容されている。つまり、1層のスロット導体部331aは径方向内側から数えて1層の導体収容位置に、2層のスロット導体部332aは2層の導体収容位置に、3層のスロット導体部332b’は3層の導体収容位置に、4層のスロット導体部331b’は4層の導体収容位置に収容されている。
【0037】
図3において、スロット350には径方向最内側のセグメントセット330が収容されている状態が示されているが、スロット350には、図4に示すように、更に3つのセグメントセット330が径方向に配置されている。図4において、隣接する3つのスロットに収容されるセグメントには同一相の相電圧が印加される。この実施例のステータコイルは、U、V、Wの三つの相巻線が星形結線される三相巻線であるので、磁極対数をpとすれば、18pのスロットが形成されている。以下、同相の相巻線が収容されて互いに周方向に隣接する3つのスロット351〜353をそれぞれ同相スロットと呼称し、この三つの同相スロットを同相スロット群と称する。また、同相スロット351を第1同相スロット、同相スロット352を第2同相スロット、同相スロット353を第3同相スロットとも呼ぶ。各スロット351〜353は、それぞれ1層〜4層の導体収容位置をもつ4セットの導体収容位置セット101〜104を有している。
(三相ステータコイルの構成の説明)
この実施例の星形結線セグメント順次接合ステータコイル31のうち、U相巻線の巻線接続図を図5に示す。他相の相巻線は周方向へシフトするのみで同じ構造であることは当然である。
【0038】
U相巻線は、同一の導体収容位置セットで同一の同相スロットに個別に収容され、互いに異なる導体収容位置セット又は互いに異なる同相スロットに収容される合計12個の部分コイルC1〜C12を直並列接続して構成されている。部分コイルC1〜C4は直列接続されて第1径方向直列コイルU1を構成し、部分コイルC5〜C8は直列接続されて第2径方向直列コイルU2を構成し、部分コイルC9〜C12は直列接続されて第3径方向直列コイルU3を構成している。径方向直列コイルU1、U2、U3は並列接続されている。
【0039】
部分コイルC1、C5、C9は、径方向最内側の導体収容位置セット101の各同相スロット群の一つの同相スロットに収容されるセグメントセットL1により構成され、部分コイルC2、C6、C10は、径内側から数えて2番目の導体収容位置セット102の各同相スロット群の他の一つの同相スロットに収容されるセグメントセットL2により構成され、部分コイルC3、C7、C11は、径内側から数えて3番目の導体収容位置セット103の各同相スロット群の他の一つの同相スロットに収容されるセグメントセットL3により構成され、部分コイルC4、C8、C12は、径内側から数えて4番目の導体収容位置セット104の各同相スロット群の他の一つの同相スロットに収容されるセグメントセットL4により構成されている。つまり、部分コイルC1〜C12のうちの任意のひとつは、同じ導体収容位置セットで、かつ、同相スロット群の内、周方向同一順位の同相スロットに収容されている。なお、図2では、図示を簡素化するために、1セットの導体収容位置セットに収容された1層分のコイルだけが示されている。
【0040】
部分コイルC1〜C12はそれぞれ、図6、図7に示すように、第1周回コイル211と第2周回コイル212とを異形波巻セグメント213で接続してなる。第1周回コイル211、第2周回コイル212は、波巻セグメントと重ね巻セグメントとを交互に接続して略一周する形状を有する。ここで言う波巻セグメントとは、一対の飛び出し端部が互いは遠ざかる向きに曲がったセグメントからなり、1層、4層の導体収容位置に収容されるスロット導体部を有している。ここで言う重ね巻セグメントは、一対の飛び出し端部が互いは向かい合う向きに曲がったセグメントからなり、2層、3層の導体収容位置に収容されるスロット導体部を有している。異形波巻セグメント213は、互いに1磁極ピッチ離れた2層、4層を一対のスロット導体部が個別に挿通されたセグメントである。したがって、第1周回コイル211の最終スロット導体部と、第2周回コイルの先頭スロット導体部とは、異形波巻セグメント213の一対のスロット導体部を構成している。図7において、部分コイルC1の両端は径方向セグメント400となっている。
【0041】
径方向に隣接する二つの部分コイルC3、C4を径方向接続セグメント400により構成される層間接続線により接続した例を図8に示す。この層間接続線としての径方向接続セグメント400の一対のスロット導体部は、部分コイルC4側にて3層目のスロット導体部(部分コイルC4の第2周回コイルの最終スロット導体部)となり、部分コイルC3側にて1層目のスロット導体部(部分コイルC3の第1周回コイルの先頭スロット導体部)となっている。
【0042】
一つの導体収容位置セットに配置される各部分コイルの頭部側コイルエンド311の一部を図9に示し、一つの導体収容位置セットに配置される各部分コイルの端部側コイルエンド312の一部を図10に示す。
(層間接続線をなす径方向接続セグメント400の配置の説明)
図5を参照して既に説明したように、径方向直列コイルU1、U2、U3は、それぞれ、径方向に並ぶ各セグメントセットL1〜L4の各一つの同相スロットに収容された部分コイルを一つづつ選択して接続されている。しかし、同相スロット351、352、353(図4参照)は、順次周方向に1スロットピッチずれているため、このずれに応じて、同相スロット351の部分コイルの起電圧(起電力とも言う)は、同相スロット352のそれよりもたとえば1スロットピッチに相当する位相だけ進み、同相スロット353の部分コイルの起電圧(起電力とも言う)は、同相スロット352のそれよりもたとえば1スロットピッチに相当する位相だけ遅れる。
【0043】
したがって、たとえば、径方向直列コイルU1を構成する各部分コイルC1〜C4をすべて同相スロット351に収容し、径方向直列コイルU2を構成する各部分コイルC5〜C8をすべて同相スロット352に収容し、径方向直列コイルU3を構成する各部分コイルC9〜C12をすべて同相スロット353に収容すると、径方向直列コイルU1の起電力は径方向直列コイルU2のそれよりも1スロットピッチに相当する位相だけ進み位相となり、径方向直列コイルU3の起電力は径方向直列コイルU2のそれよりも1スロットピッチに相当する位相だけ遅れ位相となる。その結果、径方向直列コイルU1〜U3内に循環電流が流れ、かつ、この循環電流に応じて無用なトルクリップルが生じてしまう。
【0044】
これを解決するには、図11に示すように、径方向直列コイルU1〜U3の理論ベクトル起電力合計を一致するように、径方向直列コイルU1〜U3を構成する部分コイルの組み合わせを選択すればよい。すなわち、各部分コイルC1〜C12が収容される同相スロットを調整すればよい。
【0045】
図11を用いて更に具体的に説明すると、VU1は径方向直列コイルU1の理論ベクトル起電力、VU2は径方向直列コイルU2の理論ベクトル起電力、VU3は径方向直列コイルU3の理論ベクトル起電力である。V1は部分コイルC1の理論ベクトル起電力、以下同様に、V12は部分コイルC12の理論ベクトル起電力である。
【0046】
部分コイルC1、C10、C3、C12は同相スロット351に収容され、部分コイルC5〜C8は同相スロット352に収容され、部分コイルC9、C2、C11、C4は同相スロット353に収容される。このようにすれば、径方向直列コイルU1〜U3の各理論ベクトル起電力合計は一致する。すなわち、径方向直列コイルU1の起電力は径方向直列コイルU2のそれと同一位相となり、径方向直列コイルU3の起電力は径方向直列コイルU2のそれと同一位相となり、上記した循環電流が径方向直列コイルU1〜U3内を循環することを防止することができる。
【0047】
このように複数の同相スロットごとに異なる部分コイルを配置し、これら部分コイルを直並列接続する場合には、各径方向直列コイルの理論ベクトル起電力合計が一致するように、各径方向直列コイルを構成する部分コイルの組み合わせを調節すればよい。このような部分コイルの組み合わせには多くのバリエーションが考えられる。好適には、径方向直列コイルの径方向に隣接する部分コイル間を接続する層間接続線(径方向接続セグメント400)の配置が径方向直列コイル対ごとに線対称となるようにすればよい。なお、この時、この線対称は、同相スロット群の周方向中心点を通って径方向に延設される線を中心線として生じるべきである。
【0048】
層間接続線の一構成例を図12を参照して説明する。
【0049】
径方向直列コイルU2を構成する部分コイルC5〜C8は、すべて位相の遅れが無い、言い換えれば、部分コイルC5〜C8は同相スロット群を構成する3つの同相スロット351〜352のうち、常に周方向中央の同相スロット352に収容されるために位相の進み遅れは生じない。
【0050】
径方向直列コイルU1を構成する部分コイルC1〜C4において、C1、C3は1スロットピッチに相当する電気角だけ進み位相となり(同相スロット351に収容され)、C2、C4は1スロットピッチに相当する電気角だけ遅れ位相となる(同相スロット353に収容される)ので、全体として位相の進み、遅れはキャンセルされる。径方向直列コイルU3を構成する部分コイルC9〜C12において、C10、C12は1スロットピッチに相当する電気角だけ進み位相となり(同相スロット351に収容され)、C9、C11は1スロットピッチに相当する電気角だけ遅れ位相となる(同相スロット353に収容される)ので、全体として位相の進み、遅れはキャンセルされる。
【0051】
結局、図12においては、径方向に隣接する3対の部分コイルを接続する層間接続線400は、所定の中心点を基準として点対称となっている。
【0052】
図13は図11の変形例を示すが、作用は同じである。図14は同相スロットが4つの同相スロット351〜354をもつ例を示す。
【0053】
この場合、相巻線は、図5に示す径方向直列コイルU1〜U3の他に径方向直列コイルU4を有し、この径方向直列コイルU4は、部分コイルC13〜C16を直列接続してなる。図14は、各部分コイルC1〜C16の径方向断面における配置を示す。この場合においても、各径方向直列コイルU1〜U4の理論ベクトル起電力合計はそれぞれ一致する。L100は、同相スロット群の周方向中心点を径方向に延びる線であり、各部分コイル間を接続する各層間接続線の配置は、この線を中心として線対称となる。
【0054】
(変形例)
上記実施例では、各径方向直列コイルU1〜U3の層間接続線400が互いに交差する配置となっていた。このような層間接続線400の交差は、頭部側コイルエンド311の軸方向への膨らみを必要とするなどの理由で好ましくない。
【0055】
図15に示すこの変形例では、各径方向直列コイルの層間接続線を周方向へ2磁極ピッチずらせている。以下、図12を参照して更に詳細に説明する。
【0056】
図5に示されるように、径方向直列コイルU1は部分コイルC1〜C4を直列接続して構成され、径方向直列コイルU2は部分コイルC5〜C8を直列接続して構成され、径方向直列コイルU3は部分コイルC9〜C12を直列接続して構成されている。図15において、44、53、62、71、8、17は同相スロット群の第1同相スロット351である。45、54、63、72、9、18は同相スロット群の第2同相スロット352である。46、55、64、73、10、19は同相スロット群の第3同相スロット353である。径方向直列コイルU1〜U3の各部分コイルの理論ベクトル起電力は、図11に示す配置となるので、径方向直列コイルU1〜U3の間の理論ベクトル起電力合計の位相差は解消される。
【0057】
更に、図15では、径方向直列コイルU1の層間接続線401〜403はスロット44〜55の間の領域に配置され、径方向直列コイルU2の層間接続線404〜406はスロット63〜72の間の領域に配置され、径方向直列コイルU3の層間接続線407〜409はスロット8〜19の間の領域に配置される。すなわち、径方向直列コイルU1の層間接続線401〜403は径方向直列コイルU2の層間接続線404〜406に対して略2磁極ピッチシフトされ、同じく、径方向直列コイルU2の層間接続線404〜406は径方向直列コイルU3の層間接続線407〜409に対して略2磁極ピッチシフトされる。これにより、図12に示す配置に比較して層間接続線の重なりを防止することができ、頭部側コイルエンド311が軸方向に嵩張ることがなく、層間接続線も短小化することができる。なお、上記した層間接続線401〜403、407〜409のシフトに伴い、中性点引き出し位置及びU相端子用引き出し位置もシフトされることは当然である。
【0058】
(実験結果)
図11、図12に示す層間接続線400をクロス配線した場合と、クロス配線しなかった場合(部分コイルC1〜C4のグループと部分コイルC5〜C8のグループとが互いに1スロットピッチに相当する位相差をもつ起電力を発生する場合)における径方向直列コイルU1、U2間に流れる循環電流を図16に示す。図16において、Aはクロス配線しなかった場合の循環電流波形であり、Bはクロス配線した場合の循環電流波形を示す。回転速度は500rpm、無負荷運転で駆動した場合である。クロス配線した場合の循環電流は、しなかった場合に比較して実効電流比で1/10未満(ほとんど観測できないレベル)に低減することができる。
【0059】
〔実施例の作用効果〕
以上説明した上記実施例によれば、径方向接続セグメント400を用いて、各部分コイル間の直並列配線をほぼ実現することができるので、頭部側コイルエンド311の構造を簡素化しつつ、並列回路を実現することができる。
(変形態様)
上記実施例では、径方向に連続する4つの導体収容位置を占有するセグメントセットを用いて各部分コイルを構成したが、径方向に連続する2つの導体収容位置を占有するセグメントセットを用いて各部分コイルを構成してもよく、あるいは、両者を混在してもよい。相巻線は、星形接続されてもよく、Δ接続(多角形接続)されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の車両用セグメント順次接合ステータコイル型回転電機の軸方向断面図である。
【図2】セグメントセットの斜視図である。
【図3】スロット内の導体配置図である。
【図4】スロット配置を示す模式図である。
【図5】相巻線の回路図である。
【図6】部分コイルの回路図である。
【図7】一つの部分コイルの部分巻線展開図である。
【図8】径方向に隣接する二つの部分コイルの接続を示す部分巻線展開図である。
【図9】頭部側コイルエンドの一部を示す図である。
【図10】端部側コイルエンドの一部を示す図である。
【図11】3つの径方向直列コイルの理論ベクトル起電力の位相を一致させる例を示す起電力ベクトル図である。
【図12】3つの径方向直列コイルの理論ベクトル起電力の位相を一致させる場合の頭部側コイルエンドにおける層間接続線(径方向接続セグメント)のクロス配置を示す説明図である。
【図13】3つの径方向直列コイルの理論ベクトル起電力の位相を一致させる変形例を示す起電力ベクトル図である。
【図14】4つの径方向直列コイルの理論ベクトル起電力の位相を一致させる場合の頭部側コイルエンドにおける層間接続線(径方向接続セグメント)のクロス配置を示す説明図である。
【図15】3つの径方向直列コイルの理論ベクトル起電力の位相を一致させるとともに頭部側コイルエンドにおける層間接続線(径方向接続セグメント)のクロス配置を回避する変形態様を示す模式層間接続線配置図である。
【図16】径方向直列コイル間において理論ベクトル起電力合計の一致を図る場合と図らない場合とにおける循環電流波形を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
31 ステータコイル
32 固定子鉄心
C1〜C12 部分コイル
U1〜U3 径方向直列コイル
400 層間接続線
401〜412 層間接続線

Claims (4)

  1. p(pは2以上の自然数)対の磁極を有する回転子と、径方向へs個(sは6以上の偶数)の導体収容位置をそれぞれ有する多数のスロットを有する固定子鉄心と、多数のU字状のセグメントを順次接続してそれぞれ構成されるm(mは3以上の奇数)相の相巻線からなる電機子巻線とを備え、
    前記セグメントは、頭部側コイルエンドをなすU字状の頭部と、所定スロットピッチ離れた一対のスロットに個別に収容される一対のスロット導体部と、前記スロットから飛び出して端部側コイルエンドを構成する一対の飛び出し端部を備え、
    前記一対の飛び出し端部の先端は、径方向に隣接する他の前記飛び出し端部の先端に個別に接合されるセグメント順次接合ステータコイル型回転電機において、
    同一相の前記相巻線を構成するスロット導体部がそれぞれ収容される前記スロットを意味する同相スロットを磁極ごとに周方向へ連続してそれぞれ複数有してなる同相スロット群を前記磁極ごとに有し、
    前記スロットの各導体収容位置は、互いに径方向に隣接するt(tは整数)個の前記導体収容位置からそれぞれ構成されるr(r=s/t)個の導体収容位置セットに区分され、
    前記同相スロット群の周方向一方側から数えて同一順位の前記同相スロットは、前記導体収容位置セットごとにそれぞれ部分コイルを収容し、
    前記相巻線は、
    互いに異なる前記導体収容位置セットの前記部分コイルを層間接続線により直列接続して構成された径方向直列コイルを、前記同相スロット群の前記同相スロットの個数に等しい数だけ並列接続して構成されることを特徴とするセグメント順次接合ステータコイル型回転電機。
  2. 請求項1記載のセグメント順次接合ステータコイル型回転電機において、
    前記相巻線の各径方向直列コイルを構成する前記部分コイルの組み合わせは、前記各径方向直列コイルの理論ベクトル起電力合計が等しくなるように決定されることを特徴とするセグメント順次接合ステータコイル型回転電機。
  3. 請求項2記載のセグメント順次接合ステータコイル型回転電機において、
    前記各径方向直列コイルの前記層間接続線のうち、径方向において同一位置に配置される前記各層間接続線は、互いに周方向に異なる同相スロット群に別々に配置されて重ならないことを特徴とするセグメント順次接合ステータコイル型回転電機。
  4. 請求項3記載のセグメント順次接合ステータコイル型回転電機において、
    前記部分コイルは、
    前記導体収容位置セットの径方向に数えて1層、4層を挿通する前記セグメントである波巻セグメントと、2層、3層を挿通する前記セグメントである重ね巻セグメントとを交互に接続して略一周する第1周回コイル及び第2周回コイルと、前記第1周回コイルの最終の前記スロット導体部と前記第2周回コイルの先頭の前記スロット導体部とを構成する異形波巻セグメントとを直列接続して構成され、前記同相スロット群の周方向所定順位の一つの同相スロットに収容されることを特徴とするセグメント順次接合ステータコイル型回転電機。
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