JP4185319B2 - レーザーマーキング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真フィルム等の多層体にレーザービームを照射してマーキングパターンを形成するレーザーマーキング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザー光を利用して、材料の表面に文字や記号等をマーキングする技術として、例えば特開平10−305377号公報(以下、先行技術という)がある。
【0003】
この先行技術では、例えば包装袋などに易開封性を付与するために一部の層のみを溶融させるハーフカット加工などのように、レーザー吸収性の異なる樹脂フィルムを組み合わせた多層フィルムの一部分の層に対してレーザー加工を行う場合、多層フィルム上のレーザー光の照射部分において、最表層が十分に溶融し、かつ、その下の層に溶融が生じない強度でレーザー光を照射することを必要としている。
【0004】
先行技術では、このようなレーザー光の強度を実現するために、多層フィルムの表面の温度を非接触で検出し、この検出温度に応じてレーザー光の出力を適切に制御するようにしている。
【0005】
ところで、このような先行技術を用いて、PET等の支持体となるベース層に乳剤層を重ねて形成した写真フィルム等の感光材料に、文字や記号等を形成するマーキングを行うときには、表面層となる乳剤層に十分な吸収性があり、その下の層であるベース層での吸収性の低い発振波長のレーザービームを選択する必要がある。
【0006】
すなわち、最表層に十分な吸収性のあるレーザー光を用いることにより、このレーザー光によって最表層を選択的に溶融させて加工することが可能となる。
【0007】
しかしながら、最表層の材料に十分なエネルギー吸収性のあるレーザー光を照射できない場合、多層フィルムの最表層だけを選択的に溶融することは不可能であり、レーザー光を用いて意図する加工形状が得られないという問題がある。
【0008】
また、光エネルギーに反応して発色する記録材料、特に写真フィルムなどの感光材料に、レーザー光を用いて、文字や記号等をマーキングする場合、表層である乳剤層が十分に溶融してしまうレーザー光の強度では、不要な熱被りや塵埃の燃焼による発光被りを起こすことがある。また、レーザー光を照射することにより飛散物が生じると、この飛散物が、写真フィルムの表面に付着することによる白抜けなどのスポット故障や、フィルム表面への擦過傷故障を生じさせるなどの、二次トラブルの発生が懸念される。
【0009】
また、先行技術で例示している包装材料においては、表面の温度測定以外にも、最終的な加工状態の良し悪しを目視によって確認することが可能であるが、写真フィルムなどの感光材料においては、材料の性質上、可視光下で目視検査が不可能である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、写真感光材料等の多層フィルムなどの多層体にドットパターンで文字や記号等を形成するマーキング処理を行うときに、適正なマーキング処理が可能となるマーキング方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、ポリエチレンテレフタレートをベース層とし、該ベース層の少なくとも一方の面に乳剤を塗布した乳剤層が表面層として形成された写真感光材料にレーザービームを照射して、該レーザービームの熱エネルギーによって前記表面層をドット状に加工し、該ドットの配列によるマーキングパターンを形成するレーザーマーキング方法であって、レーザービームに対する前記ベース層のエネルギーの吸収係数と前記表面層のエネルギーの吸収係数から、前記表面層での吸収係数より前記ベース層での吸収係数が高い発振波長のレーザービームを設定し、該設定したレーザービームを前記表面層側から前記写真感光材料に照射して、照射した前記レーザービームのエネルギーで前記表面層の内部が溶融する過程で生じる多数の気泡によって前記表面層が凸状となるように加工することにより前記ドットを形成する。
【0012】
この発明によれば、多層体である写真感光材料にレーザービームを照射して、写真感光材料のベース層の少なくとも一方の面に形成されている表面層を熱エネルギーによって溶融して加工する。このときに、レーザービームとしてベース層での吸収係数が高く、表面層での吸収係数の低い発振波長のレーザービームを用いる。
【0013】
吸収係数は、照射したエネルギーが試料の厚み方向で減衰されている程度を示す係数であり、吸収係数が小さければ、エネルギーが深くまで伝達する。この吸収係数は、透過率に関係し、透過率が試料に照射したエネルギーに対して試料の抜け出たエネルギーの比であることから、吸収係数をα(cm-1)、試料の厚みd(cm)、試料の透過率Tとしたときに、
T=Exp(−α・d)
となる。
【0014】
このように発振波長を設定したレーザービームを表面層側から照射することにより、レーザービームは、表面層とベース層の境界面で吸収されて、発熱、蒸散を発生させる。このときに、発生する熱が表面層に溶融及び破壊を生じさせる。
【0015】
したがって、効率的に、表面層に破壊を生じさせて、マーキング加工を施すことができ、多層体に良好な加工形状を形成することが可能となる。
【0016】
すなわち、本発明では、ベース層での吸収係数の高い発振波長のレーザービームを、表面層側から照射することにより、ベース層と表面層の境界面で、熱エネルギーを吸収させ、ベース層側から表面層にレーザービームによる蒸散や溶融が生じるようにする。これにより、表面層を選択的にレーザー加工を行うことができる。
【0017】
このような本発明では、前記ベース層でのレーザービームのエネルギーの吸収係数が1000cm‐1以上であり、かつ、前記表面層でのレーザービームのエネルギーの吸収係数が前記ベース層の吸収係数の1/3以下である発振波長のレーザービームを用いる。
【0018】
この発明によれば、写真感光材料(写真フィルム)のベース層での吸収係数が1000cm‐1以上であり、かつ、乳剤層の吸収係数がベース層の吸収係数の1/3以下である発振波長のレーザービームを用いる。
【0019】
これにより、写真感光材料にレーザーマーキングを行うときに、ベース層から加熱してベース層と乳剤層の加工を行うことができる。
【0020】
このような本発明では、前記ベース層と前記表面層の前記吸収係数及び、前記ベース層上の前記表面層の厚さに基づいて前記レーザービームの発振波長を設定することが好ましい。
【0021】
この発明によれば、ベース層と表面層の吸収係数に加えて表面層の厚さを含めて、レーザービームの発振波長を設定する。
【0022】
表面層は、吸収係数が低くても、厚さが大きいと、レーザービームの吸収量が多くなる。ここから、乳剤層が比較的厚い写真感光材料にレーザーマーキングを施すときには、乳剤層が薄い写真感光材料にレーザーマーキングを施すときよりも、ベース層の吸収係数に対して、より表面層の吸収係数が低い発振波長のレーザービームを用いるようにする。
【0023】
これにより、ベース層と表面層の境界面で吸収されるエネルギー量を多くすることができるので、表面層の的確な加工が可能となる。
【0024】
このような本発明では、レーザービームの発振波長を、9μm帯とすることができ好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1には本実施の形態に係るマーキング装置10の概略構成を示している。 このマーキング装置10は、ロール状に巻き取られた長尺のXレイフィルム12を被印字体として、このXレイフィルム12を搬送する過程で、その表面にレーザービーム(光ビーム)LBを照射して、文字や記号等のマーキングパターンを形成するマーキング加工を施す。
【0026】
図2(A)に示すように、本実施の形態に多層体として用いているXレイフィルム12は、支持体であるベース層14に、PET(ポリエチレンテレフタレート)を用い、このベース層14の少なくとも一方の面に塗布された乳剤層16とで構成された多層フィルムの写真感光材料となっている。
【0027】
図1に示すように、Xレイフィルム12は、乳剤層16が外向きとなって巻芯18にロール状に巻かれており、マーキング装置10は、このXレイフィルム12を最外層から引出す。
【0028】
最外層から引出されたXレイフィルム12は、パスロール20に巻き掛けられて、進行方向(図1の矢印A方向)から上方(図1の紙面上方)へ略直角に方向転換されてパスロール22に巻き掛けられる。また、Xレイフィルム12は、パスロール22に巻き掛けられて、進行方向へ略直角に方向転換され、プリントロール24へと至るようになっている。
【0029】
マーキング装置10では、プリントロール24に巻き掛けられる位置が、レーザービームLBの照射位置として設定されており、このプリントロール24により進行方向から下方へ略直角に方向転換されたXレイフィルム12は、対で配置されたロール26に挟持され、かつ進行方向へ略直角に方向転換され、小ロール28、30ヘ向けて送り出される。
【0030】
小ロール28、30の間には、サクションドラム32が配置されており、このサクションドラム32によって、小ロール28、30の間に略U字状の搬送路が形成され、Xレイフィルム12が、小ロール28、30の間で、サクションドラム32に巻き付けられる。
【0031】
サクションドラム32は、外周面に複数の小孔(図示省略)が設けられ、周面に巻き付けられるXレイフィルム12を、エア吸引によって吸着保持し、かつ自重又は図示しない付勢手段の付勢力で、図1の紙面下方へ移動可能となっている。これにより、Xレイフィルム12には、バックテンションが付与されるため、前記プリントロール24を通過するときに、プリントロール24と緊密に密着された状態が維持されるようになっている。
【0032】
ロール26から送り出されるXレイフィルム12は、一対の小ロール28、30の間を略U字状に搬送されて小ロール30から送り出され、小ロール30を通過したXレイフィルム12は、巻芯34に巻き取られる。
【0033】
一方、マーキング装置10には、巻取り制御装置36が設けられており、前記巻芯18、34及びサクションドラム32は、巻取り制御装置36からの駆動信号で所定の回転速度で回転するモータ等の駆動手段(図示省略)の駆動力によって回転駆動し、Xレイフィルム12を搬送する。
【0034】
マーキング装置10では、基本的に、同一の線速度でXレイフィルム12を搬送するように、巻芯18、34が回転駆動されると共に、サクションドラム32がXレイフィルム12を吸着保持しながら回転するため、サクションドラム32の回転速度がXレイフィルム12のプリントロール24での搬送速度(ライン速度)と一致するようになっている。
【0035】
前記サクションドラム32には、ロータリエンコーダ38が取り付けられており、このサクションドラム32の回転角に応じたパルス信号を出力する。
【0036】
また、マーキング装置10には、レーザービームLBを射出するマーキングヘッド42及びレーザービームLBの射出を制御するレーザー制御装置40が設けられており、ロータリエンコーダ38の出力信号(パルス信号)がレーザー制御装置40へ入力されるようになっている。
【0037】
図1及び図3に示すように、マーキングヘッド42は、その先端部であるレーザービームLB出射口が前記プリントロール24に対向して配設されている。また、マーキングヘッド42は、レーザー発振器44と、図示しない集光レンズを含むビーム偏向器46とを備えており、レーザー発振器44から発せられるレーザービームLBを、プリントロール24に巻き掛けられているXレイフィルム12へ向けて射出する。
【0038】
本実施の形態に適用したレーザー発振器44は、レーザー制御装置40(図3では図示省略)からの駆動信号に基づいて、所定のタイミングで一定の発振波長のレーザービームLBを一定の時間幅(パルス幅)で出射する。
【0039】
ビーム偏向器46は、例えば、AOD(音響光学装置)を備えており、レーザー制御装置40からの偏向信号によりレーザービームLBをXレイフィルム12の搬送方向と直交する方向に走査する機能を有している。なお、走査された各レーザービームLBは集光レンズによってXレイフィルム12上で所定のスポット径の焦点を結ぶように結像される。
【0040】
レーザー制御装置40には、前記Xレイフィルム12に記録すべきマーキングパターン(文字や記号)に対応したパターン信号が巻取り制御装置36から入力される。また、レーザー制御装置40は、ロータリーエンコーダ38からXレイフィル12の搬送に応じて出力されるパルス信号に基づいてXレイフィルム12の搬送長を監視しながら、パターン信号に応じてレーザー発振器(CO2レーザー)44に駆動信号を出力すると共に、ビーム偏向器46に偏向信号を出力する。
【0041】
これにより、マーキングヘッド42は、マーキングパターンMPに応じてレーザービームLBがオン/オフされながらXレイフィルム12上に走査される。
【0042】
このとき、図3に示すように、マーキングヘッド42は、ビーム偏向器46によるレーザービームLBの走査方向を主走査方向とし、Xレイフィルム12の搬送方向(図3の矢印方向)を副走査方向として、Xレイフィルム12にマーキングパターン(ここでは、アルファベット)MPを形成する。
【0043】
図3及び図4に示すように、マーキングパターンMPとしては、例えば1文字が5×5ドットなどの所定のドット配列で形成される文字や記号、キャラクター等を用いることができる。また、マーキングパターンMPとしては、ドット配列によって形成した複数の文字や記号等を用いるなど、任意の構成で形成することができる。
【0044】
このようなマーキング装置10では、Xレイフィルム12が長手方向にカット(カットライン48を鎖線で示す)されて小幅のロール状又はシート状に加工されるときには、、このカットライン48を挟んで両サイドに天地の向きが逆となったマーキングパターンMPを形成することも可能である。
【0045】
なお、図1及び図3に示すように、マーキングヘッド42は、Xレイフィルム12がプリントロール24に巻き掛けられるときに、プリントロール24の周面から僅かに浮いた位置で、Xレイフィルム12に対向するようになっており、これにより、Xレイフィルム12を透過したレーザービームLBが、プリントロール24の周面に付着している塵や埃等を加熱して、Xレイフィルム12に被りを生じさせてしまうのを防止している。
【0046】
このように構成されているマーキング装置10では、巻取り制御装置36から出力する駆動信号によって、巻芯18に巻き取られているXレイフィルム12の引出しを開始すると共に、このXレイフィルム12の搬送及び巻芯34への巻取りを開始する。
【0047】
一方、サクションドラム32は、巻取り制御装置36に制御されて、回転しながらエア吸引を開始することにより、周面に巻き掛けられるXレイフィルム12を、吸着保持する。これにより、Xレイフィルム12は、所定のライン速度で、引き入れられながら送り出される。このときに、サクションドラム32は、自重又は付勢手段の付勢力でXレイフィルム12に所定のテンションを付与している。
【0048】
これにより、サクションドラム32の回転速度(周速度)が、Xレイフィルム12の搬送系の基準となるライン速度となり、プリントロール24上でのXレイフィルム12のライン速度がサクションドラム32の周速度と一致する。
【0049】
レーザー制御装置40は、このサクションドラム32の回転状態をロータリーエンコーダ38によって検出している。
【0050】
一方、レーザー制御装置40は、巻取り制御装置36から前記Xレイフィルム12に記録すべきマーキングパターンMPに応じたパターン信号が入力されると、前記ロータリーエンコーダ38から出力されるパルス信号に基づいてXレイフィルム12の搬送長を監視し、例えばXレイフィルム12の搬送長が予め設定している長さに達すると、パターン信号に基づいてレーザー発振器(CO2レーザー)44に駆動信号を出力すると共に、ビーム偏向器46に偏向信号を出力する。
【0051】
これにより、レーザー発振器44から発せられるレーザービームLBが、プリントロール24に巻き掛けられているXレイフィルム12に走査されながら照射されて、Xレイフィルム12に、パターン信号に応じたドット状のマーキングパターンMPが形成される。
【0052】
ところで、マーキング装置10では、マーキングヘッド42にCO2レーザーを発するレーザー発振器44を用いている。また、マーキング装置10では、レーザー発振器44の発振波長を、Xレイフィルム12のベース層14及び乳剤層16でのレーザービームLBの吸収係数に基づいて設定している。
【0053】
ドットの配列で表現されるマーキングパターンMPを高品質で形成するためには、個々のドットの直径をほぼ一定に揃え、またXレイフィルム12の搬送速度(ライン速度)が一定に保たれる位置でレーザービームLBを照射する必要がある。
【0054】
そこで、マーキング装置10では、Xレイフィルム12をサクションドラム32によって吸着保持し、ロータリーエンコーダー38から出力されるサクションドラム32の回転角に応じたパルス信号に基づいて、レーザービームLBを照射するようにしている。
【0055】
図2(B)に示すように、Xレイフィルム12は、レーザービームLBが照射されると、乳剤層16がこのレーザービームLBの熱エネルギーによって溶融、蒸散する過程で、膨張した内部に複数の微細な気泡16Bが生じてドット16Aが形成される。
【0056】
本実施の形態では、このときに乳剤層16に形成されるドット16Aの凸量を10μm以下、各気泡16Bの大きさ(直径)を1〜5μmとするようにしている。
【0057】
一方、Xレイフィルム12上でマーキングパターンMPを形成するドット16Aの視認性は、Xレイフィルム12の乳剤層16が蒸散して生じる微小な気泡16Bによって向上する。すなわち、乳剤層16内に多数の気泡16Bが生じることにより、気泡16B間の境界膜で光の乱反射が助長されて、ドット16Aの内外とで、反射光量が大きく変化する。これにより、Xレイフィルム12の未現像/現像済み、或いは濃度の濃淡に無関係に、ドット16Aの視認性が高くなる。
【0058】
しかし、レーザービームLBの照射時間を長くするなどして、必要以上に熱エネルギーを与えると、乳剤層16が溶融して、ベース層14と乳剤層16の間に空間が生じる。このベース層14と乳剤層16の境界に生じる空間は、Xレイフィルム12が未現像であれば、ドット16Aの視認性を向上させることができるが、現像済みのXレイフィルム12では、ドット16Aの視認性を低下させてしまう。
【0059】
また、レーザービームLBが必要以上に照射されることにより、乳剤層16が溶融すると、乳剤層16の飛散が生じ、ドット16Aが崩れたり、このレーザービームLBが周囲の塵や埃に当たって発熱させたり不純物を加熱して、Xレイフィルム12に被りを生じさせ、ドット16Aの視認性の低下と共に、Xレイフィルム12の品質低下をまねいてしまう。
【0060】
ここから、マーキング装置10に設けているレーザー制御装置40は、Xレイフィルム12にレーザービームLBを照射する時間を、少なくともXレイフィルム12に被りが生じることなく、適正な形状のドット16Aが生じる時間に設定している。
【0061】
一方、ドット16Aは、乳剤層16側のベース層14の面に緩やかな凹部(くぼみ)が生じることにより、視認性が向上する。このとき、ベース層14に生じるくぼみの深さが3μm〜10μmの範囲であれば、被りの発生を防止することができる。
【0062】
すなわち、ベース層14の乳剤層16側の面に生じるくぼみが10μmを越えるように熱エネルギーが与えられると、ベース層14内の不純物によってXレイフィルム12に被りが生じることがあり、また、くぼみが3μm以下では、くぼみが乳剤層16に形成するドット16Aの視認性に影響することがない。したがって、ベース層14に適正なくぼみを形成することにより、ドット16Aの視認性の向上を図ることができる。
【0063】
ここから、マーキング装置10では、レーザービームLBに対するベース層14及び乳剤層16の吸収係数に基づいてレーザー発振器44の発振波長を設定する。このときに、ベース層14での吸収係数が大きく、乳剤層16での吸収係数の小さい発振波長に設定する。
【0064】
吸収係数は、照射したエネルギーが試料の厚み方向で減衰されている程度を示す係数であり、吸収係数が小さければ、エネルギーが深くまで伝達する。なお、吸収係数は、透過率に関係し、透過率が試料に照射したエネルギーに対して試料の抜け出たエネルギーの比であることから、吸収係数をα(cm-1)、試料の厚みd(cm)、試料の透過率Tとしたときに、
T=Exp(−α・d)
となる。
【0065】
この発振波長のレーザービームLBを、Xレイフィルム12に照射することにより、レーザービームLBは、ベース層14での吸収係数が大きいために、主に、乳剤層16との境界面で吸収され、このときの熱エネルギーが、乳剤層16に溶融、蒸着を生じさせると共に、ベース層14の乳剤層16側の面にくぼみを生じさせる。
【0066】
すなわち、Xレイフイルム12は、ベース層14での吸収係数の高い発振波長のレーザービームLBを、ベース層14と乳剤層16の境界面で吸収する。
【0067】
また、Xレイフィルム12は、一定のテンションが付与されながら搬送されて、プリントロール24に巻き掛けられることにより、乳剤層16がベース層14へ向けて加圧された状態となる。
【0068】
これにより、ベース層14と乳剤層16の境界面で吸収されたレーザービームLBの熱エネルギーが、乳剤層16に加わり、乳剤層16に溶融、蒸散による多数の気泡16Bを生じさせて、ドット16Aを形成するようになっている。
【0069】
このように、マーキング装置10では、ベース層14での吸収係数が高く、乳剤層16での吸収係数の低い波長のレーザービームLBを発するレーザー発振器44を用い、マーキングパターンMPを形成するドット16Aの視認性の向上を図るようにしている。
【0070】
表1には、発振波長(レーザービームLBの波長)に対するベース層14及び乳剤層16の光吸収係数を示している。
【0071】
【表1】
【0072】
表1で明らかなように、PETによって形成しているベース層14は、レーザービームLBの発振波長が、9.8μmを越える10μm帯(表1では10.6μmを例示)では、吸収係数が大きく低下して、発振波長が10.6μmでは、1000cm-1を切ってしまう。
【0073】
これに対して、ベース層14は、発振波長が9μm帯のレーザービームLBに対して、吸収係数が1000cm-1以上となっている。
【0074】
また、乳剤層16の吸収係数は、9μm帯及び10μm帯の何れにおいても、ベース層14の吸収係数の1/3以下であり、9.3μmや、9.8μmなどの9μm帯における特定の発振波長では、乳剤層16の吸収係数がベース層14の1/10以下となっている。
【0075】
表2には、レーザービームLBの発振波長に対するXレイフィルム12の加工状態の評価結果を示している。この表2では、175μmのPETで形成したベース層14を用い、このベース層14に形成する乳剤層16を、厚さが0.5μm〜20.0μmの範囲で変化させたXレイフィルム12(評価サンプル)にマーキング装置10でマーキングパターンMP(ドット16A)を形成して、視認性を評価している。
【0076】
このとき、レーザービームLBの照射時間を10μsec、レーザービームLBのスポット径を0.2mmとした。
【0077】
なお、表2に示す評価は、
◎・・・ベース層14の表層及びその上の乳剤層16が蒸散し、ドットの視認性が優良。
【0078】
○・・・ベース層14の表層及びその上の乳剤層16の一部が蒸散し、残りは溶融して、視認性は比較的良好。
【0079】
△・・・ベース層14及び乳剤層16が溶融し、視認性はやや悪い。
【0080】
×・・・乳剤層が変色または部分的に溶融し、視認性は悪い。
としている。
【0081】
【表2】
【0082】
表2で明らかなように、ベース層14の吸収係数が1000cm-1以下である発振波長が10.6μmのレーザービームLBでは、乳剤層16の厚さが1.0μmと極めて薄いときにのみ、比較的良好な視認性が得られる。
【0083】
これに対して、ベース層14の吸収係数が1000cm-1である発振波長が9.6μmのレーザービームLBでは、少なくとも乳剤層16の厚さが4.5μmまで、比較的良好な視認性が得られ、4.0μm以下であれば良好な視認性が得られる。
【0084】
また、ベース層14の吸収係数の高い9.3μm及び9.8μmの発振波長のレーザービームLBでは、乳剤層16の厚さが5.5μm、6.0μmまで比較的良好な視認性が得られる。
【0085】
したがって、PETによって形成したベース層14を用いたXレイフィルム12では、少なくとも、ベース層14の吸収係数が1000cm-1以上で、かつ、乳剤層16の吸収係数がベース層14の吸収係数の1/3以下である9μm帯の波長のレーザービームLBを用いることにより、乳剤層16の厚さが4.5μmまでのXレイフィルム12のマーキングに用いることができる。
【0086】
特に、Xレイフィルム12においては、乳剤層16を選択的に溶融、蒸散させるために、ベース層14の吸収係数が3000cm-1以上であることが好ましく、ベース層14の吸収係数が1000cm-1以下では、レーザービームLBのエネルギー吸収が不足して、発熱による変色のみが生じたり、変化が生じないという結果に終わることが多く、好ましくない。
【0087】
また、ベース層14の吸収係数が大きく、ベース層14の吸収係数に比較して、乳剤層16の吸収係数の小さい9.3μmや9.8μmの発振波長のレーザービームLBを用いることにより、乳剤層16の厚さが6.0μmまでのXレイフィルム12に視認性の高い高品質のマーキングパターンMPを形成するようにXレイフィルム12のマーキング加工を施すことができるので、Xレイフィルム12のマーキング加工には、より好ましい。
【0088】
以上説明したように、本実施の形態では、Xレイフィルム12上にレーザービームLBを走査して形成するドット16Aが所定の配列となるマーキングパターンMPを得るときに、レーザー発振器44としてベース層14での吸収係数が高く、乳剤層16での吸収係数が低い発振波長のレーザービームLBを発するようにする。このとき、ベース層14での吸収係数が1000cm-1以上であり、少なくとも乳剤層16の吸収係数がベース層14の吸収係数の1/3以下、好ましくは、乳剤層16の吸収係数がベース層14の1/10以下である発振波長のレーザー発振器44を用いることにより、Xレイフィルム12に被り等の品質低下を生じさせることなく、視認性の高いマーキングパターンMPを形成することができる。
【0089】
なお、本実施の形態では、レーザー発振器(CO2レーザー)44を主走査しながら、Xレイフィルム12を副走査する系を例に挙げたが、前記主走査方向に複数のレーザー発振器(CO2レーザー)を配列し、これを同時に照射した状態でXレイフィルム12を搬送する系においても適用可能である。
【0090】
また、以上説明した本実施の形態では、多層体として、PETをベース層として、このベース層の少なくとも一方の面に、表面層として乳剤層を形成した写真感光材料であるXレイフィルム12を例に説明したが、本発明は、これに限らず、ベース層の少なくとも一方の面に表面層を形成した任意の構成の多層フィルムなどの多層体に対する表面層のレーザー加工に適用することができる。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ベース層での吸収係数が高く、表面層での吸収係数の低い発振波長のレーザービームを用いることにより、このレーザービームによってベース層側から表面層を溶融させて適切なマーキングパターンを形成することができるという優れた効果が得られる。
【0092】
これにより、例えば、PETによって形成した支持体をベース層として、このベース層に乳剤層を設けた写真フィルムに対して、乳剤層を的確にレーザー加工して、視認性の高いマーキングパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に適用したマーキング装置の概略構成図である。
【図2】(A)はXレイフィルムの概略構成図、(B)はドットが形成された状態を示すXレイフィルムの概略構成図である。
【図3】プリントロール近傍を示す概略斜視図である。
【図4】マーキングパターンを形成したXレイフィルムの概略平面図である。
【符号の説明】
10 マーキング装置
12 Xレイフィルム(多層体、写真感光材料)
14 ベース層
16 乳剤層(表面層)
16A ドット
16B 気泡
24 プリントロール
32 サクションドラム
36 巻取り制御装置
40 マーキング制御装置
42 マーキングヘッド
44 レーザー発振器
46 ビーム偏向器
LB レーザービーム
MP マーキングパターン
Claims (4)
- ポリエチレンテレフタレートをベース層とし、該ベース層の少なくとも一方の面に乳剤を塗布した乳剤層が表面層として形成された写真感光材料にレーザービームを照射して、該レーザービームの熱エネルギーによって前記表面層をドット状に加工し、該ドットの配列によるマーキングパターンを形成するレーザーマーキング方法であって、
レーザービームに対する前記ベース層のエネルギーの吸収係数と前記表面層のエネルギーの吸収係数から、前記表面層での吸収係数より前記ベース層での吸収係数が高い発振波長のレーザービームを設定し、
該設定したレーザービームを前記表面層側から前記写真感光材料に照射して、照射した前記レーザービームのエネルギーで前記表面層の内部が溶融する過程で生じる多数の気泡によって前記表面層が凸状となるように加工することにより前記ドットを形成するレーザーマーキング方法。 - 前記ベース層でのレーザービームのエネルギーの吸収係数が1000cm-1以上であり、かつ、前記表面層でのレーザービームのエネルギーの吸収係数が前記ベース層の吸収係数の1/3以下である発振波長のレーザービームを用いる請求項1に記載のレーザーマーキング方法。
- 前記ベース層と前記表面層の前記吸収係数及び、前記ベース層上の前記表面層の厚さに基づいて前記レーザービームの発振波長を設定している請求項2に記載のレーザーマーキング方法。
- 前記レーザービームの発振波長を、9μm帯としている請求項2又は請求項3に記載のレーザーマーキング方法。
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