JP4184834B2 - フッ素含有ポリイミドフィルムの製造方法および製造装置 - Google Patents

フッ素含有ポリイミドフィルムの製造方法および製造装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板表面にフッ素含有ポリイミド前駆体を均一に塗布する際、余剰のフッ素含有ポリイミド前駆体が基板上に付着するのを防止して品質を向上させるフッ素含有ポリイミド前駆体被膜の製造方法、および該方法に好ましく使用できるスピンコーターなどに関する。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロニクス時代の産業・技術の進展を支えてきた高分子材料として、ポリイミドがあり、光導波路、多層プリント基板、液晶の配向膜、LSIのα線保護コート、パッシベーション膜等に使用されている。特に、耐熱性、その他の優れた機能を有するものとしてフッ素含有ポリイミドがあり、例えば、炭素−水素結合(C−H結合)の代わりに炭素−フッ素結合(C−F結合)のみを含む繰り返し単位から構成される全フッ素化ポリイミドも開示されている(特許文献1)。該全フッ素化ポリイミドは、光電子集積回路を作製するに十分な耐熱性があり、近赤外域光、特に光通信波長域(1.0〜1.7μm)における光透過損失が極めて少ない、というものである。
【0003】
対象物上にフィルムを形成する方法として、コーティング液をスピンコーティングする方法がある。一般的なスピンコーティング法に使用される装置を図2(A)(B)に示す。基板3は、図示しない真空発生装置からの真空によって支持テーブル5上に吸着保持され、コーティング液30がノズル20を介して基板3上に滴下される。支持テーブル5の周囲には支持テーブル5の周囲を覆うようにスピンカップ40が設けられている。このスピンカップ40は、支持テーブル5の周縁上方から側方へと広がり、支持テーブル5の側方下部に至り、内側にすぼまっている。スピンカップの内部には、気体排出口50が設けられ、装置内の雰囲気を下方に排出している(図2(A)参照)。次いで、スピンモーター7を駆動させて回転させ、支持テーブル5および該基板3を一体的に回転させると、基板3上の前駆体30が遠心力によって基板3上に広がり塗膜10を形成し、同時にコーティング液のミスト状物質60が飛散する。大半のコーティング液のミスト状物質60は、スピンカップ40の上部に設けられた開口部から気体排出口50に向かう気流に乗って排出されるが、支持テーブル5と基板3との高速回転によって支持テーブル40の外周縁近傍部にスピンカップ内壁に沿って上昇気流が発生し、スピンカップ40の上部からコーティング液のミスト状物質60が被膜10上に落下し、またはスピンカップ40から跳ね返ったコーティング液のミスト状物質60が基板上に落下する場合がある(図2(B)参照)。
【0004】
これを防止するものとして、支持テーブルの上部を開口させて支持テーブルとその回転駆動部の周囲を覆っている外壁部の開口部内縁に鍔部を形成するか、支持テーブルを下方に向かって拡幅する円錐台状に構成したスピンコーターが開示されている(特許文献2)。支持テーブル外縁部近傍の乱気流によって舞い上がる液状物が、外壁部の上部開口部の内縁に設けられた鍔部によって遮られ、コーティング中のディスク表面にまで至ることがない、というものである。
【0005】
また、支持テーブル上方の雰囲気を吸引し、スピンカップ外に排気する排気口をスピンカップ外周に設けたスピンコーター(特許文献3)、支持テーブルの回転方向と同方向にスピンカップを回転させ、支持テーブルの外周からの飛散薬液がカップの側壁に到達する地点でカップの側壁の接線方向速度と、飛散薬液のカップの側壁の接線方向と同方向の分速度がほぼ等しくなる回転数させるスピンコーターもある(特許文献4)。また、支持テーブルの下方に支持テーブルと同期回転する羽根を設け、この羽根の回転によって下方に向く空気流を発生させ、コーティング液のミスト状物質を強制的に羽根の下方に流動させるスピンコーターもある(特許文献5)。
【0006】
また、基板上にポリイミド膜を形成する方法としては、前駆体であるポリアミド酸をスピンコーティングし、その後に焼成する方法が行なわれている。感光性ポリイミドフィルムを対象としたものであるが、現像した後にクラックが発生する不都合を防止する方法および、同時に製膜環境の空気中で浮遊しているパーティクルが形成される膜上に落下して膜中に混入することを防止するために、製膜中に製膜環境中に気体を導入させかつ排出させる、感光性ポリイミドフィルムの製造方法もある(特許公報6)。該方法は、支持テーブル上部から支持テーブルと平行方向に気体を導入し、支持テーブルの側方からスピンコーター外部に気体を排出する、というものである。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−1148号公報
【特許文献2】
特開平6−320100号公報
【特許文献3】
特開平10−43665号公報
【特許文献4】
特開2002−177857号公報
【特許文献5】
特開2002−239443号公報
【特許文献6】
特開平8−8170号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリアミド酸のなかでもフッ素を含有するポリイミド前駆体を用いてフッ素含有ポリイミドフィルムを形成する場合には、特に均一な厚さのポリイミド前駆体被膜を得ることが困難な場合が多く、更に、焼成後のフッ素含有ポリイミドフィルムに梨状のスポットやスクラッチといった斑点が形成される場合もある。フッ素含有ポリイミドフィルムは、耐熱性、耐薬品性、誘電特性、電気特性、光学特性等に優れるため各種の光材料の用途に使用されており、該ポリイミドフィルムの歩留まりの低下は、単に該フィルムの製造コストという意味に限られず、上記プリント基板、LSI用層間絶縁膜、半導体部品用封止材料、光学部品、光電子集積回路(OEIC)、光電子混載実装配線板における光導波路など、様々な光学材料の歩留まりの低下を意味し、価格の上昇に直結する。このような状況下、信頼性の高いフッ素含有ポリイミドフィルムの製造方法、品質の向上のために、製膜条件を最適化する方法が求められる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記諸目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、炭素−フッ素結合(C−F結合)を含みかつ特定の繰り返し単位からなるフッ素含有ポリイミド前駆体は水分に非常に弱く、特に吸水性率の高い溶媒を用いたワニスを用いるとコーティング中に不均一に吸水し局所的に粘度が低下し、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質が発生しやすいこと、このため均一な厚さのポリイミド前駆体被膜が形成しづらく、結果的に得られたフッ素含有ポリイミドフィルムの膜厚が不均一となりやすいこと、一方、スピンコーティングの際、被膜に気体を吹き付けつつ被膜を形成するとフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の被膜上への落下を回避でき、スピンカップから跳ね返る該ミスト状物質の基板への再付着も防止できるため、均一な厚さのポリイミド前駆体被膜が得られことを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、基板上にフッ素含有ポリイミド前駆体を滴下し、該フッ素含有ポリイミド前駆体をスピンコーティングするフッ素含有ポリイミド前駆体被膜の製造方法において、スピンコーティングの際に該被膜に気体を吹き付けつつ被膜を形成させる、フッ素含有ポリイミド前駆体被膜の製造方法である。フッ素含有ポリイミド前駆体は水による加水分解を受けやすく、このため被膜形成の際の雰囲気によって吸湿すると容易に加水分解して重合度が低下し、部分的に粘度が低下する。この部分的な粘度の低下によってフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質が容易に発生し、スピンコーティング雰囲気内に滞留して被膜に再付着し、または該雰囲気中で液滴化して被膜上に落下し、被膜の均一性を損なう場合がある。しかしながら、被膜に気体を吹き付ると被膜上にエアーカーテンが形成され、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の被膜への再付着を防止することができ、均一な膜厚のポリイミド前駆体被膜が製造される。本発明の好ましい態様の一例を、図1を参照しながら説明する。
【0011】
図1は本発明で好ましく使用できるスピンコーターの断面図である。支持テーブルの外周を覆うようにスピンカップ40が設けられている。このスピンカップ40は、支持テーブル5の周縁上方から側方へと広がり、その広がりを維持したまま支持テーブル5の側方下部に至っている。スピンカップ40の上部には蓋部70が載置され、該蓋部70の中央には気体供給口73が設けられ、該蓋部の内側には気体の通気孔75を設けた通気板77がガイド71を介して固定されている。なお、基板3は支持テーブル5上に載置することができる。
【0012】
スピンコーターを用いて被膜を形成するには、基板3を図示しない真空発生装置からの真空によって支持テーブル5上に吸着保持させ、該基板3上に、フッ素含有ポリイミド前駆体を滴下する。本発明の特徴は、蓋部70の気体供給口73から気体を導入し、該気体が通気板77に設けた通気孔75を通して被膜10上に供給させる点にある。該気体の供給によって被膜10の上部から垂下する気流層が形成され、スピンコーティングの際にフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質が発生しても、該気流層がバリヤーの役目を果たして基板3上のポリイミド前駆体被膜への接触を回避できる。従って、本発明では、基板3にポリイミド前駆体を滴下した後に、まず気体供給口73から気体を導入して該気流層を形成させ、次いでスピンモーター7を回転させて該前駆体の被膜10を形成する。
【0013】
気体供給口73から供給する気体としては、ポリイミド前駆体と反応しないことが必要であり、空気のほかに窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などによる不活性ガスを使用することができる。より好ましくは、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスを、相対湿度50RH%以下、より好ましくは45RH%以下、特に好ましくは40RH%以下に調整したものである。フッ素含有ポリイミド前駆体は水による加水分解を受けやすく、吸湿により容易に加水分解して重合度が低下し部分的に粘度が低下する。この吸湿によるフッ素含有ポリイミド前駆体の加水分解は、該前駆体と雰囲気との接触面から開始されるため、特に該前駆体の液滴を薄く広げる工程においてフッ素含有ポリイミド前駆体と接触する気体の相対湿度を50RH%以下に制御することが好ましい。これにより上記した粘度の低下を防止でき、この結果、粘度低下によるフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の発生を回避でき、焼成後の梨状のスポットやスクラッチを防止できる。なお、被膜形成は、一般に温度20〜70℃で行なわれ、上記範囲の相対湿度の空気は、除湿機によって簡便に調製できる。
【0014】
該吹き付ける気流層の厚さに制限はないが、好ましくは1〜50mm、より好ましくは2〜30mm、特に好ましくは5〜10mmである。気流層の厚さは、基板3と通気板77との平均距離で近似できる。気流層の厚さが50mmを超えると気流層を形成するための気体量が多くなり、またスピンコーターも大きくなり不利である。一方、1mmを下回る場合には、基板3上に載置すべきポリイミド前駆体の載置量が制限され、所望の厚さのポリイミドフィルムが製造できない場合がある。なお、気流層の厚さは、ガイド71に固定した通気板77の位置を上下させて容易に調整することができる。
【0015】
供給する気体の流速は、1.5×10-4〜1m/secの範囲で、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の発生量によって適宜好ましい範囲に選択することができ、ポリイミド前駆体の粘度が高く、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の発生量が多い場合には速くし、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の発生量が少ない場合には、流速を遅くさせればよい。一般に、気体の流速が1.5×10-4m/secを下回ると、基板やスピンコーターのサイズにもよるが、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の基板への再接触を回避するのに十分でなく、一方、1m/secを超えると、基板上の被膜が風圧で変形する場合があり、好ましくない。なお、本発明において、「スピンコーティングの際」とは、基板上に載置されたフッ素含有ポリイミド前駆体をスピンモーターの回転によって所望の厚さの被膜に処理する工程を意味する。
【0016】
このような気体は、気体の供給圧による被膜の変形を防止するため、被膜10上に均一に供給されることが好ましい。従って、通気板に設けた通気孔から気体を均一に供給するには、通気孔が通気板中に均一に分散して配置していることが好ましく、通気孔のサイズも被膜への気体の供給が均一にできる程度の均一性を有することが好ましい。
【0017】
本発明の方法によれば、スピンコーティングの際に被膜上に気流層が形成されるため、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の被膜上の再接触が回避できるが、気体を供給する通気板77にもフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質60が付着することがない。このため、スピンコーティング終了時に、通気板77からポリイミド前駆体が落下するのを構造上回避することができる。しかも、本発明では、スピンコーター内の雰囲気を排気しなくてもよい。スピンコーティングは一回の処理が2〜5分で終了するため、排気しなくても供給気体による過剰の加圧などの弊害がないからである。また、従来の方法は、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の気流を変化させて被膜とミストとの接触を防止する方法であり、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の気流を一定方向に制御するために開放口と排気口とを設けていた。しかしながら、本発明は、被膜自体に積極的に気体を供給して被膜上に気流層を形成させるものであるから、気流を制御するための排気口がなくてもよい。
【0018】
本発明では、スピンモーター7の回転によって被膜10が所望の厚さに形成された後、スピンモーター7の回転を停止する。なお、モーターを停止した後も気体を供給すると、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の蓋部への付着を防止することができ、同様に被膜へのフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の落下を回避することができる。
【0019】
本発明で使用するフッ素含有ポリイミド前駆体としては特に制限はないが、耐熱性、耐薬品性、撥水性、誘電特性、電気特性、光学特性に優れる点で、下記式(1)で示すフッ素含有ポリアミド酸を好ましく使用することができる。
【0020】
【化1】
Figure 0004184834
【0021】
(式中、Xは4価の有機基、Yは2価の有機基であり、Xおよび/またはYのいずれかに少なくとも1個のフッ素原子を含む。)
Xは4価の有機基であり、該4価の有機基としては、環状アルキル、鎖状アルキル、オレフィン、グリコールなど由来の、4価の脂肪族有機基;ベンゼンビフェニル、ビフェニルエーテル、ビスフェニルベンゼン、ビスフェノキシベンゼンなど由来の、4価の芳香族有機基;ならびにこれらの含ハロゲン脂肪族および芳香族有機基などが挙げられる。これらのうち、4価の芳香族有機基、より好ましくは4価の含ハロゲン芳香族有機基が、上記(1)における「X」として好ましい。これらのうち、上記(1)における「X」として特に好ましい4価の有機基の例としては、下記式:
【0022】
【化2】
Figure 0004184834
【0023】
で示される4価の基が挙げられる。
【0024】
上記式(1)におけるXの好ましい構造を示す式において、R1及びR2は、ハロゲン原子、即ち、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を表わし、好ましくはフッ素または塩素原子、最も好ましくはフッ素原子を表わす。この際、R1及びR2は、同一であってもまたは異なるものであってもよく、また、R1及びR2がそれぞれの相当するベンゼン環中で複数個存在する(即ち、m及びm’が2または3である)場合には、R1及びR2は、それぞれ、各ベンゼン環中で同一であってもまたは異なるものであってもよい。また、m及びm’は、それぞれ、相当するベンゼン環へのR1及びR2の結合数を表わし、0〜3の整数であり、耐熱性、耐薬品性、撥水性及び低誘電性を考慮すると、C−H結合が存在しないことが好ましいため、好ましくは3である。この際、m及びm’は、同一の数であってもまたは異なる数であってもよい。
【0025】
また、上記式において、Zは結合子または下記式:
【0026】
【化3】
Figure 0004184834
【0027】
で示される2価の基である。これらのうち、Zは、結合子または下記式:
【0028】
【化4】
Figure 0004184834
【0029】
で示される2価の基であることが好ましい。
【0030】
上記「Z」を表わす式において、Y’及びY”は、ハロゲン原子、即ち、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を表わし、好ましくはフッ素または塩素原子、最も好ましくはフッ素原子を表わす。上記「Z」を表わす式において、Y’及びY”双方が存在する際には、Y’及びY”は、同一であってもまたは異なるものであってもよく、また、Y’及びY”がそれぞれの相当するベンゼン環中で複数個存在する(即ち、r及びr’が2〜4の整数である)場合には、Y’及びY”は、それぞれ、各ベンゼン環中で同一であってもまたは異なるものであってもよい。また、r及びr’は、それぞれ、相当するベンゼン環へのY’及びY”の結合数を表わし、0〜4、好ましくは2〜4の整数であり、耐熱性、耐薬品性、撥水性及び低誘電性を考慮すると、C−H結合が存在しないことが好ましいため、最も好ましくは4である。この際、r及びr’は、同一の数であってもまたは異なる数であってもよい。
【0031】
上記式(1)において、Yは2価の有機基であり、▲1▼炭素−水素結合のみからなる直鎖または分岐、環を含んでいてもよい2価の脂肪族基、芳香族機、2以上の該脂肪族基や芳香族基が酸素原子、窒素原子、硫黄原子などの炭素原子以外の異種原子で結合した2価のハロゲン不含有機基のほか、▲2▼上記▲1▼の有機基に含まれる炭素−水素結合の一部の水素原子がハロゲン原子で置換された2価の部分ハロゲン有機基、▲3▼上記▲1▼の有機基に含まれる炭素−水素結合の全の水素原子がハロゲン原子で置換された2価の全ハロゲン有機基であることが好ましい。なお、部分ハロゲン有機基や全ハロゲン有機基に含まれるハロゲン原子としては、全て同一である必要はなく、「Y」中に異なるハロゲン原子を含んでいてもよい。上記▲1▼のハロゲン不含有機基としては、環状アルキル、鎖状アルキル、オレフィン、グリコールなど由来の2価の脂肪族有機基;ベンゼンビフェニル、ビフェニルエーテル、ビスフェニルベンゼン、ビスフェノキシベンゼンなど由来の2価の芳香族有機基、芳香族有機基がある。また、▲2▼の部分ハロゲン有機基や▲3▼の全ハロゲン有機基としては、▲1▼のハロゲン不含有機基の一部または全部の水素原子がハロゲン原子で置換されたものが例示できる。
【0032】
上記(1)における「Y」としてより好ましい2価の有機基の例としては、下記に示す▲1▼〜▲3▼のいずれかの2価の有機基であることが好ましく、耐熱性、耐薬品性、撥水性及び低誘電性を考慮すると、最も好ましいのは▲3▼である。
【0033】
【化5】
Figure 0004184834
【0034】
本発明において、上記式(1)で示すポリアミド酸はフッ素原子を含むことを必須とする。また、上記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミド酸は、この繰り返し単位の存在によってこれから形成されるポリイミドの所望の屈折率(即ち、既存の全ハロゲン化ポリイミドに対する屈折率差Δn)が達成できる。該ポリアミド酸は、近赤外域光、特に光通信波長域(1.0〜1.7μm)における光透過損失を考慮すると、炭素−水素結合(C−H結合)が存在しないことが好ましい。この点から、上記式(1)を構成する炭素に結合する水素原子の全てがハロゲン原子に置換されたもの(以下、「全ハロゲン化ポリアミド酸」とも称する。)であることが好ましい。すなわちこれによって、耐熱性、耐薬品性、撥水性、誘電特性、電気特性及び光学特性に優れるフッ素含有ポリイミドフィルムの原料となり得る。
【0035】
なお、上記式(1)で示すポリアミド酸の製造方法については以下に詳述するが、この記載から、該ポリアミド酸の末端は、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸誘導体の添加量(モル比)によって異なるものの、アミン末端または酸誘導体末端のいずれかであると考えられる。なお、該ポリアミド酸は、同一の繰り返し単位からなるものであってもまたは異なる繰り返し単位からなるものであってもよく、後者の場合には、その繰り返し単位はブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。
【0036】
該ポリアミド酸は、公知の技術の組み合わせによって製造でき、その製造方法は、特に制限されるものではない。一般的には、有機溶媒中で、下記式(2)で示されるジアミン化合物を、下記式(3)で示すテトラカルボン酸、その酸無水物もしくは酸塩化物、またはそのエステル化物等と反応させる方法が好ましく使用される。なお、下記式(2)における「Y」、ならびに下記式(3)における「X」は、上記式(1)における定義と同様である。
【0037】
【化6】
Figure 0004184834
【0038】
【化7】
Figure 0004184834
【0039】
上記(2)で示すジアミン化合物としては、上記(3)で示すテトラカルボン酸等と反応して上記(1)で示すポリアミド酸が製造できるような構造を有するものであれば、特に制限されるものではない。したがって好ましいポリアミド酸の構造から、
▲1▼:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
▲2▼:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、
▲3▼:5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン、2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ジアミノベンゼン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、4,5,6−トリクロロ−1,3−ジアミノ−2―フルオロベンゼン、5−ブロモ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン、2,4,5,6−テトラブロモ−1,3−ジアミノベンゼンが好ましく、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼンが好ましい。これらの中でも、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼンが特に好ましい。なお、これらのジアミン化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0040】
一方、上記(3)で示すテトラカルボン酸、その酸無水物もしくは酸塩化物としては、特に制限されるものではなく、特開平11−147955号公報に記載の方法など、公知の技術またはその組み合わせによって製造できる。具体的には、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサクロロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ヘキサクロロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェニル)スルフィド、ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェニル)スルフィド、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、3,6−ジフルオロピロメリット酸、3,6−ジクロロピロメリット酸、3−クロロ−6−フルオロピロメリット酸等の、上記式(3)のハロゲン化テトラカルボン酸;対応する酸二無水物;対応する酸塩化物;メチルエステル、エチルエステル等の対応するエステル化物などが挙げられる。これらのうち、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、ならびにこれらの対応する酸二無水物及び酸塩化物が好ましく、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、およびこれらの酸二無水物が特に好ましい。なお、これらのハロゲン化テトラカルボン酸誘導体は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0041】
有機溶媒中で、上記(2)で示されるジアミン化合物を上記式(3)のテトラカルボン酸等と反応させる方法によって、所望のポリアミド酸が製造できる。
【0042】
該ジアミン化合物の添加量は、テトラカルボン酸等と効率よく反応できる量であればよく特に制限されない。具体的には、該ジアミン化合物の添加量は、化学量論的には、該テトラカルボン酸誘導体と等モルであるが、好ましくは該テトラカルボン酸等の全モル数を1モルとした場合に、0.8〜1.2モル、より好ましくは0.9〜1.1モルである。この際、ジアミン化合物の添加量が0.8モル未満であると、該テトラカルボン酸等が多量に残存してしまい精製工程が複雑になる恐れがあり、また、重合度が大きくならない場合があり、逆に1.2モルを超えると、該ジアミン化合物が多量に残存してしまい精製工程が複雑になる恐れがあり、また、重合度が大きくならない場合がある。
【0043】
反応は有機溶媒中で行なうことができ、該ジアミン化合物及び該テトラカルボン酸等との反応が効率よく進行でき、かつこれらの原料に対して不活性であれば、特に制限されるものではない。例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどの極性有機溶媒が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、有機溶媒の量は、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸等との反応が効率よく進行できる量であれば特に制限されないが、有機溶媒中のジアミン化合物の濃度が1〜80質量%、より好ましくは5〜50質量%となるような量であることが好ましい。
【0044】
ジアミン化合物及びテトラカルボン酸等との反応条件は、これらの反応が十分進行できる条件であれば特に制限されるものではない。例えば、反応温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃である。また、反応時間は、通常、1〜72時間、好ましくは2〜48時間である。また、反応は、加圧下、常圧下または減圧下のいずれの圧力下で行なってもよいが、好ましくは常圧下で行われる。また、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸等との反応は、反応効率及び重合度などを考慮すると、乾燥した不活性ガス雰囲気下で行なわれることが好ましく、この際の反応雰囲気における相対湿度は、好ましくは10RH%以下、より好ましくは1RH%以下であり、不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが使用できる。
【0045】
本発明で使用するフッ素含有ポリイミド前駆体は、溶媒中に溶解したものであってもよい。このような溶媒として、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン、ジメチルスルフォキシド、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトンおよびメタノール等の極性溶媒やトルエンやキシレン等の非極性溶媒などが挙げられる。これらのうち好ましくは、N−メチル−2−ピロリジノン及びN,N−ジメチルアセトアミドが使用される。また、これらの溶媒は、単独でまたは2種類以上の混合物の形態で使用されてよい。なお、該溶媒中の該前駆体濃度は、10〜50質量%であることが好ましい。また、被膜形成はフッ素含有ポリイミド前駆体の粘度にも関連し、10ポイズ〜1000ポイズであることが好ましく、より好ましくは25ポイズ〜150ポイズである。
【0046】
本発明の第二は、上記で得たフッ素含有ポリイミド前駆体被膜に対し、更に熱処理を行い基板上にフッ素含有ポリイミドフィルムを形成する、フッ素含有ポリイミドフィルムの製造方法である。
【0047】
該前駆体の加熱処理条件は特に制限されるものではなく、該前駆体が効率良く閉環されて、所望のポリイミドフィルムが製造できる条件であればよい。具体的には、加熱処理は、通常、空気中、好ましくは、窒素、ヘリウム、アルゴンなどによる不活性ガス雰囲気中で、70〜350℃程度で2〜5時間程度行なわれ、該熱処理は、段階的に行なってもあるいは連続的に行なってもよい。好ましい実施態様によれば、該前駆体は、70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、及び350℃で1時間、段階的に加熱処理が行なわれることが好ましい。
【0048】
該ポリアミド酸を加熱処理すると対応するポリイミドが得られる。この際、ポリアミド酸の加熱処理は、溶剤中で行なわれても、あるいは溶剤の不存在下で行なわれてもよいが、反応効率などを考慮すると、溶剤中で行なわれることが好ましい。この際、ポリアミド酸は、上述したポリアミド酸の製造工程によりジアミン化合物とテトラカルボン酸等との反応で得られた溶液の形態で加熱処理されても、またはこれからポリアミド酸を固体として分離した後、溶剤に再溶解して加熱処理されてもよい。
【0049】
上記ポリアミド酸を熱処理して得たポリイミドフィルムは、耐熱性、耐薬品性、撥水性、誘電特性、電気特性及び光学特性に優れるため、該フィルムは、プリント基板、LSI用層間絶縁膜、半導体部品用封止材料、光学部品、光電子集積回路(OEIC)、光電子混載実装配線板における光導波路など、様々な光学材料に有用である。
【0050】
本発明の第三は、容器内に収納されてコーティング液が塗布される基板と該基板を上面に支持する支持テーブルと、該基板上に配設される容器蓋部とを備えているスピンコーターにおいて、前記蓋部が該基板に気体を供給する気体供給口を備えることを特徴とする、スピンコーターである。本発明のスピンコーターは上記第一の発明に好ましく使用できるものであり、具体的な態様は図1に示すように、スピンコーター100が蓋部70を有すること、該蓋部70に気体供給口73が設けられている点である。従って、従来のスピンコーターに気体供給口を備える蓋部を加えると本発明のスピンコーターとなり得る。
【0051】
本発明で使用する気体供給口を備える蓋部とは、好ましくは、ガイド71を介して通気板77が固定され、該通気板77には複数の通気孔75が設けられているものである。被膜10への気体の供給は通気孔75を介して行なうことができ、これによって被膜10上に均一に気体を供給できるからである。通気板77と基板3との距離を1〜50mm、より好ましくは2〜30mm、特に好ましくは5〜10mmに調整できることを基準に、支持テーブルと蓋部70との距離から算出する。
【0052】
本発明のスピンコーターは、スピンコーティングの際に、被膜上に気流層を形成してコーティング液のミスト状物質の再付着を回避するため、流速が1.5×10-4〜1m/secの気体を供給できることが好ましく、しかも気体は被膜に均一に供給されることが好ましい。このため、上記気流量が確保できれば通気板77に設けられた通気孔75の形状、数、サイズなどに制限はない。例えば、図3(A)に示すように、通気板77の内周に等間隔の円孔が均一に配置されたものや、図3(B)に示すように内周に沿って1/4弧の貫通孔が4個配置されたもの、図3(C)に示すように該通気板77が網状のものであってもよい。図3(C)の構成は、基板3に均一に気体を供給するものであるが、図3(A)、(B)の態様のように基板3の外周部近傍にのみ気体を供給しても該ミスト状物質の被膜への再接触を防止するに十分な遮断流を形成することができるからである。なお、本発明においては、気体の吹き付けにより該ミスト状物質の被膜への再接触を防止できれば、上記態様に限られるものではない。従って、通気孔75は、通気板77を垂直に貫通するように設けてもよいが、図4に示すように、通気板77の中心部は垂直に、外周部は気体流入側から排出側に向かって外周部に傾斜するようにしてもよい。図4は、通気板77と、通気孔75、被膜10、基板3、支持テーブル5との関係を示すものであるが、外側に傾斜する通気孔が存在すると、通気板77の面積が基板3の面積より小さい場合であっても被膜10の外周部にも気体を供給することができ、蓋部をコンパクトにすることができる。なお、図4中の矢印は気体の流れを示す。
【0053】
本発明では、基板3に気体が供給でき、これによって基板3上に気流層が形成できればよいため、基板3の面積、基板3が載置される支持テーブル5の面積、通気板77の面積、などは特に制限されるものではない。しかしながら、支持テーブル5上に基板3が載置されること、および通気板77の面積はほぼ気流層の断面積を示すことから、一般には支持テーブル面積1mm2に対して、通気板面積は0.8〜2mm2であることが好ましい。0.8mm2を下回ると、被膜上に気流層が形成されない部分ができ、スピンコーティングの際のフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の再接触を回避することが困難な場合があり、スピンコーティング終了後に蓋部70に付着したポリイミド前駆体が被膜10上に落下する場合がある。一方、2mm2を超えると装置が大きくなり過ぎて不利である。
【0054】
同様に、通気板77の下部に支持テーブルが配置されることが好ましい。スピンコーティング終了後に放置したスピンコーター内で蓋部近傍から落下するフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質またはその凝縮物の支持テーブル、基板または被膜への付着を防止するためである。
【0055】
上記のように、本発明では被膜10とフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質との接触を回避するために被膜10上に気流層を形成させるものである。従って、上記と相違して、気体が蓋部70にガイド71を介して固定された通気板77を通過してから被膜10に到達する必要はなく、例えば、蓋部70に複数の通気孔が設けられ、該通気孔を介して気体がスピンコーター内に供給でき、被膜上に気体を吹き付けることができる場合には、図2に示すガイドや通気板はなくてもよい。また、気体供給口を有する蓋部が上部に配設できれば、スピンカップ40の形状も特に制限されるものでない。
【0056】
更に、本発明では、スピンコーターの内部の雰囲気を外部に排出させる排気口はなくてもよい。従来は、スピンコーターの上部を開放し、スピンコーター内の雰囲気を排気する排気口を設けることで該開放部から排気口へ向かうように気流を制御し、これによってフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の被膜への付着を防止していた。しかしながらこのような気流では風圧が弱く、フッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の再付着を完全に回避することは困難であった。本発明では積極的に被膜10に気体を供給し、被膜上に気流層によるバリヤーを形成することでフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の付着、スピンコーターに付着したポリイミド前駆体の落下による被膜の汚染をより高度に回避することができる。この趣旨から、スピンコーター内の雰囲気を外部に排出させる排気口がなくても本発明を実施することができる。その一方、被膜上の気流層が形成されれば、排気口による雰囲気の排出を行なってもよい。
【0057】
なお、ガイド71は、気体供給口73から導入された気体を効率的に通気孔75から排出させるためには、通気孔などは設ける必要はない。但し、ガイドに通気孔を設けると蓋部に平行に気流が形成されるため、蓋部へのフッ素含有ポリイミド前駆体のミスト状物質の付着をより効率的に防止できる利点がある。
【0058】
また、本発明のスピンコーターはコーティング液を供給するためのノズルを配設してもよいが、コーティング液はマニュアルでも基板上に載置できるため、コーティング液供給ノズルはなくてもよい。
【0059】
本発明のスピンコーターによれば、高品質のフッ素含有ポリイミド前駆体被膜を、簡便に製造することができる。しかも、上記蓋部を取り付ければ従来のスピンコーターを本発明のスピンコーターとすることができ、改良も容易である。
【0060】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0061】
合成例1
50ml容の三ツ口フラスコに、1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン 1.80g(10ミリモル)、下記式:
【0062】
【化8】
Figure 0004184834
【0063】
で示される4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物)5.82g(10ミリモル)、及びN,N−ジメチルアセトアミド 10.3gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中で、室温で、2日間、撹拌することによって、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸42.5質量%溶液)を得た。
【0064】
合成例2
50ml容の三ツ口フラスコに、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン 1.97g(10ミリモル)、合成例1で使用した4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物) 5.82g(10ミリモル)、及びN,N−ジメチルアセトアミド 11.7gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中で、室温で、2日間、攪拌することによって、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸40.0質量%溶液)を得た。
【0065】
合成例3
50ml容の三ツ口フラスコに、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン3.49g(10ミリモル)、合成例1で使用した4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物) 5.82g(10ミリモル)、及びN,N−ジメチルアセトアミド 21.7gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中で、室温で、2日間、攪拌することによって、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸30.0質量%溶液)を得た。
【0066】
合成例4
50ml容の三ツ口フラスコに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニル 3.2g(10ミリモル)、合成例1で使用した4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物) 5.82g(10ミリモル)、及びN,N−ジメチルアセトアミド 21.0gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中で、室温で、2日間、攪拌することによって、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸30.0質量%溶液)を得た。
【0067】
実施例1
図1で示す被膜形成室内に設置したスピンコーターを用いて被膜を形成した。まず、合成例1で得たポリアミド酸42.5質量%溶液をシリコンウェハの基板上に滴下し、加熱後の膜厚が15μmになるように2分かけてスピンコートした。スピンコーティングの際は、スピンコーターの気体供給口から窒素ガスを流速1.0×10-3m/sec出供給し、吹き付ける気流層の厚さを10mmとした。なお、スピンコート内の温度は25℃であった。
【0068】
次いで、該被膜を窒素雰囲気中で70℃で2時間、160℃で1時間、259℃で30分、350℃で1時間熱処理した。焼成して得たポリイミド膜はボツボツ状の異物等が存在せず、平滑であった。
【0069】
実施例2
合成例2で得たポリアミド酸40.0質量%溶液を用いた以外は、実施例1と同様に操作して焼成膜を得た。該焼成膜にはボツボツ状の異物等が存在せず、平滑であった。
【0070】
実施例3
流速を1.0×10-2m/secとし、吹き付ける気流層の厚さを5mmに変更し、合成例3で得たポリアミド酸30.0質量%溶液を用いた以外は、実施例1と同様に操作して焼成膜を得た。該焼成膜にはボツボツ状の異物等が存在せず、平滑であった。
【0071】
実施例4
流速を1.0×10-1m/secとし、吹き付ける気流層の厚さを5mmに変更し、合成例4で得たポリアミド酸30.0質量%溶液を用いた以外は、実施例1と同様に操作して焼成膜を得た。該焼成膜にはボツボツ状の異物等が存在せず、平滑であった。
【0072】
比較例1
スピンコーターから気体を供給せずに実施例1と同様に操作して焼成膜を得た。該焼成膜にはボツボツ状の異物が多数発生していた。
【0073】
比較例2
流速を1.0×10-3m/secとし、吹き付ける気流層の厚さを70mmに変更した以外は実施例1と同様に操作して焼成膜を得た。該焼成膜にはボツボツ状の異物が多数発生していた。
【0074】
比較例3
流速を2.0m/secとし、吹き付ける気流層の厚さを10mmに変更した以外は実施例1と同様に操作して焼成膜を得た。該焼成膜には凹凸が発生していた。
【0075】
【発明の効果】
本発明は、スピンコーティングの際に、フッ素含有ポリイミド前駆体の被膜上に気体を供給することで、簡便にコーティング液のミスト状物質の再付着を回避し、高品質のフッ素含有ポリイミド前駆体を製造することができる。該気体が相対湿度50RH%以下に調整したものであれば、フッ素含有ポリイミド前駆体の吸湿、吸湿による加水分解、加水分解による重合度および粘度の部分的な低下を防止することができ、これによって、得られたフィルムに対する梨状スポットの発生やスクラッチも防止することができる。
【0076】
特にフッ素含有ポリイミド前駆体が全ハロゲン化ポリアミド酸である場合に効果的に加水分解を防止することができ、有効である。
【0077】
該ポリイミドフィルムは、通信波長全域における高い光透過性と耐熱性を同時に満足できるものであり、また、耐薬品性、撥水性、誘電特性、電気特性及び光学特性に優れるため、プリント基板、LSI用層間絶縁膜、半導体部品用封止材料、光学部品、光電子集積回路(OEIC)、光電子混載実装配線板における光導波路など、様々な光学材料に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明のスピンコーティング法によって基板上にフッ素含有ポリイミド前駆体からなる被膜を形成する好ましい態様の1例を示す模式図である。
【図2】 図2は、従来のスピンコーターを示す図である。
【図3】 図3(A)、(B)、(C)は、本発明のスピンコーターに取り付けた通気板の通気孔の形態を示す平面図である。
【図4】 図4は、本発明のスピンコーターの蓋部に取り付けた、通気板、被膜、基板、支持テーブルの位置関係を示す模式図である。
【符号の説明】
3…基板、5…支持テーブル、7…スピンモーター、10…被膜、20…ノズル、30…コーティング液、40…スピンカップ、50…気体排出口、60…ミスト状物質、70…蓋部、71…ガイド、73…気体供給口、75…通気孔、77…通気板、100…スピンコーター、

Claims (6)

  1. 容器内に収納されてフッ素含有ポリイミド前駆体が塗布される基板と、該基板を上面に支持する支持テーブルと、該基板上に配設され、該基板に気体を供給する気体供給口を有する蓋部と、ガイドを介して該蓋部に固定され、通気孔を有する通気板と、を有するスピンコーターを用い、該基板上に該フッ素含有ポリイミド前駆体を滴下した後に、該気体供給口から流速1.5×10 −4 〜1m/sec、相対湿度40RH%以下の気体を供給し、次いでスピンモーターを回転させるフッ素含有ポリイミド前駆体被膜の製造方法であり、該気体の供給時には該通気板と該基板との距離を5〜10mmに調整する、フッ素含有ポリイミド前駆体被膜の製造方法。
  2. 該フッ素含有ポリイミド前駆体が全ハロゲン化ポリアミド酸である、請求項に記載の製造方法。
  3. 請求項1または2のいずれかで得たフッ素含有ポリイミド前駆体被膜に対し、更に熱処理を行い基板上にフッ素含有ポリイミドフィルムを形成する、フッ素含有ポリイミドフィルムの製造方法。
  4. 該スピンコーターは排気口を有さない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 該通基板が、通基板の内周に等間隔の円孔が均一に配置された形態、または通基板
    の内周に沿って1/4弧の貫通孔が4個配置された形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 容器内に収納されてフッ素含有ポリイミド前駆体が塗布される基板と該基板を上面に支持する支持テーブルと、該基板上に配設される容器蓋部とを備えているスピンコーターにおいて、前記蓋部が該基板に気体を供給する気体供給口を備え、前記気体供給口を有する蓋部には、ガイドを介して通気孔を有する通気板が固定され、前記通気板と基板との距離が5〜10mmであるスピンコーターであることを特徴とする、フッ素含有ポリイミド前駆体被膜製造装置。
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