JP4183797B2 - ゴキブリの飛翔行動阻害方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアゾールをゴキブリに噴射して噴射後のゴキブリの飛翔行動を阻害する方法並びにノックダウン時間を短縮してゴキブリを防除する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
ゴキブリを防除するために従来よりエアゾールが広く知られており、その使用が簡単であることから商品としても多くが上市されている。そしてその防除効力を高めるための手段について様々な検討がなされている。例えば、殺虫効力の強い殺虫剤を有効成分として用いたり、殺虫剤を含む原液組成について検討したり、噴射量を調製するなどが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ゴキブリは、俊敏性が高く、更に殺虫剤に対する抵抗性が発生しやすまたエアゾールを噴射しても飛翔してしまうことがある。これに対して多くの使用者は、飛翔したゴキブリに対して繰り返しエアゾールを噴射することになる。このように繰り返し噴射すると、エアゾールを無駄に浪費するだけでなく、室内の空気中に殺虫剤が充満し、室内に充満した殺虫液が目などに入るなど衛生上の問題があった。
【0004】
本発明の目的は、エアゾールの無駄な浪費を減らし、衛生的に好ましいエアゾールにおける噴射後のゴキブリの飛翔行動の阻害方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討した結果、下記の特定の構成のエアゾールによって上記の目的を達成することを見い出し、本発明に到達した。
(1)エアゾール全量の0.01〜2.0重量/容量%の割合で占める殺虫剤と、エアゾール全量の10〜90容量/容量%を占める割合の溶剤とを含む原液及び噴射剤を含有するエアゾールを、ゴキブリに向けて1回、溶剤の噴射量が0.5〜1.2mlとなる量を1秒以内に噴射して、噴射後のゴキブリの飛翔行動を阻害することを特徴とするゴキブリの飛翔行動阻害方法。
(2)エアゾール全量の0.01〜2.0重量/容量%の割合で占める殺虫剤と、エアゾール全量の10〜90容量/容量%を占める割合の溶剤とを含む原液及び噴射剤を含有するエアゾールを、ゴキブリに向けて1回、溶剤の噴射量が0.5〜1.2mlとなる量を1秒以内に噴射して、噴射後のゴキブリを47秒以内にノックダウンさせて該ゴキブリを防除することを特徴とするゴキブリの防除方法。
【0006】
本発明は、エアゾールにおいて原液に含まれる溶剤を1秒以内に0.5〜1.2ml噴射することにより、ゴキブリの噴射処理した場所からの飛翔移動を顕著に阻害する効果を有するエアゾールを提供することができる。
【0007】
よって、従来のエアゾールでは、噴射処理をしてもその場所からゴキブリが飛翔し、そのゴキブリが落ちるまでエアゾールの噴射を続けてしまう。しかしながら、本発明においては、短時間の噴射処理で、ゴキブリの飛翔行動を阻害することができるので、エアゾールの無駄な浪費を減らすことができる。また、空間中に大量の殺虫が噴射され、それが目に入ることを抑制でき、生活環境で安全に使用できるという有用性がある。
【0008】
殺虫剤と溶剤を含む原液及び噴射剤を含有する害虫防除エアゾールにおいて、原液中の溶剤を1秒以内という瞬時に0.5〜1.2ml噴射することにより、素早くゴキブリに作用して飛翔行動を阻害させることができたものと考えられる。本発明の効果である、上記エアゾール噴射後のゴキブリの飛翔行動の阻害効果は、殺虫効果とは異なるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のエアゾールは、主に溶剤と殺虫剤を含む原液と噴射剤とからなり、これらを加圧充填できる容器と、ここから上記規定量を所望の空域にスプレーするための手段(バルブ、操作ボタンなど)とを具備しているものである。そして原液中の溶剤の噴射が、1秒以内に0.5〜1.2mlとなるように調整すればよい。の溶剤の噴射量は、噴射後のゴキブリの飛翔行動の阻害効果を得るために必要な量であり、エアゾールを1秒間噴射し、その間に噴射された溶剤の量を測定することにより達成できる。このような噴射を可能とするための手段としては噴射径0.3〜5.0mmであるボタン及びバルブ(内径0.3〜4.0mmであるステム、内径0〜2.0mmであるベーパータップ、内径0.3〜7.0mmであるアンダータップなどで構成される)を調整したり、エアゾール缶内のチューブ内径(1.0〜8.0mm)を調整したり、噴射剤の種類や量を調整するなどが挙げられるが、大量噴射が可能となる手段を選べばよい。また、ボタン形状としては、押しボタンタイプの他に、トリガータイプのものであってもよく、大量噴射を行う場合であればその操作性からトリガータイプのものが好適な手段として挙げられる。
【0010】
本発明のエアゾールにおける原液とは、殺虫剤と溶剤を含み、更にこれらの他に、必要に応じて界面活性剤などを含む組成物である。
殺虫剤としては、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤等を挙げることができる。
ピレスロイド系殺虫剤としては、フラメトリン、シフェノトリン、フェノトリン、ペルメトリン、レスメトリン、アレスリン、フタルスリン、エムペントリン、テフルスリン、プラレトリン、イミプロトリン、トランスフルスリン等が挙げられる。
有機リン系殺虫剤としては、フェニトロチオン、クロルピリホス、マラソン、ジクロルボス、ピリダフェンチオン、トリクロルホン等が挙げられる。
カーバメイト系殺虫剤としては、カルバリル、ベンフラカルブ、プロポクスル等を挙げることができる。
そして、上記ピレスロイド系殺虫剤の殺虫効力を増強する化合物(共力剤)としては、例えばピペロニルブトキサイド、オクタクロロジプロピルエーテル、N−(2−エチルヘキシル)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ〔2,2,2〕オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、イソボルニルチオシアノアセテートおよびN−(2−エチニル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどが挙げられる。
【0011】
本発明においてこの他の殺虫剤としては、ヒノキ、スギ及びヒバの精油、メントール、キハダ類の抽出物、柑橘類の果皮及び種子からの抽出物、芳香族スルホンアミド誘導体、水酸化トリシクロヘキシル錫、4,4’−ジブロムベンジル酸イソプロピル、2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾ〔b〕フラニルニ−N−ジブチルアミノチオ−N−メチルカーバメイト、シラン化合物、ケイ皮酸誘導体、酢酸シンナミル、ブフロフェジン、イソプロチオラン、パラオキシ安息香酸エステル、ヨウ素化ホルマール、フェノール類、フタル酸エステル、3−ブロモ−2,3−ヨード−2−プロペニル−エチルカルボナート、モノテルペン系ケトン類、モノテルペン系アルデヒド類、モノテルペン系エポキサイド類、サリチル酸ベンジル、サリチル酸フェニルなどが挙げられる。
【0012】
また、殺虫剤としては、メトプレンなどの昆虫幼若ホルモン剤、プレコセンなどの抗幼若ホルモン剤、エクダイソンなどの脱皮ホルモン剤等の害虫のホルモン剤、あるいは抗ホルモン剤も挙げることができる。
【0013】
本発明において使用される殺虫剤の添加量としては、従来のエアゾールにおいて用いられている量を使用することができるが、エアゾール全量の0.01〜2.0wt/v%(重量/容量%)とする
【0014】
そして、上記殺虫剤以外にも各種の薬剤が添加できる。例えば、害虫忌避剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤、芳香剤、着色料などを配合することもできる。
害虫忌避剤として2,3,4,5−ビス(δ−ブチレン)−テトラヒドロフルフラール、N,N−ジエチル−m−トルアミド、ジ−n−プロピルイソシンコロメート、ジ−n−ブチル酢酸、2−ハイドロキシエチルオクチル硫酸、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、シクロヘキシミド、β−ニトロスチレンシアノアクリルニトリル、トリブチル錫塩酸塩、トリニトロベンゼン−アニリン複合体、ナフタリンなど、殺菌剤あるいは防黴剤としては、2,4,4’−トリクロロ−2’−ハイドロキシジフェニルエーテル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルメチル−{2−〔2−(p−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェノキシ)エトキシ〕エチル}アンモニウムクロライド、4−イソプロピルトロポロン、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルフォンアミド、2−(4’−チアゾリル)ベンズイミダゾール、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、6−アセトキシ−2,4−ジメチル−m−ジオキシン、イソプロピルメチルフェノール、o−フェニルフェノール、p−クロロ−m−キシレノール等が用いられ、消臭剤としては、ラウリル酸メタアクリレートなど、そして、芳香剤としては、イグサの精油成分、ヒノキの精油成分、シトロネラ、レモン、レモングラス、オレンジ、ユーカリ、ラベンダーなどが配合できる。
【0015】
本発明において用いることができる溶剤としては、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エーテル類、エステル類、界面活性剤等を挙げることができる。これら溶剤としては、例えば、ヘキサン、ケロシン(灯油)、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素類:ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類:ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類:エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブチルジグリコール等のアルコール類:アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル等のエーテル類:酢酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類を挙げることができる。この他にもアセトニトリルなどのニトリル類:ジメチルホルムアミドなどのアミド類:大豆油、綿実油等の植物油、及び水などを使用することができる。さらにはこれらの混合溶剤であってもよい。更に、例えば、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、デカグリセリンモノオレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤も使用することができる。また、界面活性剤は、主に溶剤と共に併用され、殺虫剤を乳化、分散もしくは可溶化するために使用できる。その添加量としては、溶剤と殺虫剤との親和性に影響されるが、例えば、原液中0.5〜10wt/v%程度を加えればよい。本発明においては、溶剤の含有量としては、エアゾール全量の10〜90v/v%とする
【0016】
本発明において噴射剤としては、例えば、液化石油ガス(LPG)、プロパン、イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、n−ペンタン、シクロペンタン、ジメチルエーテル(DME)、窒素ガス、液化炭酸ガス、圧縮空気、塩素を含まないフロンガス(代替フロンと呼ばれているガス、例えばHFC−125、HFC−134a、HFC−143a、HFC−152a、HFC−32など)、及びこれらの混合物などが挙げられる。
本発明において、エアゾール中の噴射剤の配合量としては、上記溶剤噴射量を満たすことができれば特に制限されないが、目安として10〜90容量%が好ましい。
【0017】
本発明における防除対象であるゴキブリとしては、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ等を例示できる
【0018】
【実施例】
以下に示す実施例によって、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
害虫の噴射後の飛翔行動の試験
(1)試験サンプルの作成
〔本発明のサンプル〕
エアゾール(全量300ml)として、殺虫剤1.0g(イミプロトリン:住友化学工業株式会社製)を含む原液(溶剤:ミリスチン酸イソプロピル30gを含む1号灯油)67.5mlと、噴射剤(LPG+DME)232.5mlをエアゾール容器に充填した。
ここで、溶剤の噴射量としては0.73ml/1秒である。
【0019】
〔比較例のサンプル1〕
エアゾール(全量300ml)として、殺虫剤2.0g(イミプロトリン:住友化学工業株式会社製)を含む原液(溶剤:ミリスチン酸イソプロピル60gを含む1号灯油)135.0mlと、噴射剤(LPG+DME)165.0mlをエアゾール容器に充填した。
ここで、溶剤の噴射量としては0.43ml/1秒である。
【0020】
〔比較例のサンプル2〕
エアゾール(全量300ml)として、殺虫剤2.0g(d−T80−フタルスリン1.0g、ペルメトリン1.0g)を含む原液(溶剤:1号灯油)150.0mlと、噴射剤(LPG+DME)150.0mlをエアゾール容器に充填した。
ここで、溶剤の噴射量としては0.30ml/1秒である。
【0021】
〔比較例のサンプル3〕
エアゾール(全量300ml)として、殺虫剤0.666g(d−T80−フタルスリン0.333g、ペルメトリン0.333g)を含む原液(溶剤として1号灯油)50.0mlと、噴射剤(LPG+DME)250.0mlをエアゾール容器に充填した。
ここで、溶剤の噴射量としては0.30ml/1秒である。
【0022】
(2)供試虫
ワモンゴキブリ (Periplaneta americana)羽化後3〜5日の雌成虫を試験に用いた。
【0023】
(3)試験方法
図1のとおり、外径4mm、内径3mmの厚みのポリエチレン製のリング1を2個用意し、上記供試虫2の胸部背面に一方のリング1を水平に固定する。
そして、同様に供試虫2に垂直に固定したリング1に糸の付いたフックをひっかけ、斜めに設置した台3の斜面上に乗せる。
供試虫2から0.5m離れたところから、噴霧装置4を用いて上記の各サンプルを1秒間噴射する。そしてサンプルの噴射と同時に、台3をはずして供試虫2を糸5で吊り下げると共に、供試虫2の前面から衝立7を通してファン6で風を送り、上記の噴射後直ちに衝立7を取り除き、強制的に飛翔行動を促す。
その後、飛翔した供試虫2の数を測定した。また飛翔した供試虫2の飛翔時間について、試験を撮影したビデオテープにより測定した。
飛翔行動の観察後、供試虫2を板の上にのせてサンプルの噴射からノックダウンするまでの時間を測定した。
【0024】
各供試虫のノックダウン時間(秒)、飛翔時間(秒)及び飛翔率(%)の測定結果を第1表に示した。なお、無処理とは、噴霧せずに行った飛翔時間(秒)の結果である。
【表1】
Figure 0004183797
【0025】
(4)試験結果
第1表において、本発明のエアゾールであるサンプル1は、飛翔率0%であり、ノックダウンするまでの時間も短く、比較サンプル2〜4よりも優れていた。また比較サンプル2は、本発明より殺虫剤量が2倍であるにも係らず、飛翔率が悪いという結果となり、これにより本発明の有用性が判る。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、噴射後のゴキブリの飛翔行動を阻害し、ノックダウン時間が短い。また、従来のエアゾールのようにゴキブリが飛翔をやめるまで噴射するという無駄な浪費を軽減することができ、環境衛生上でも好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】供試虫へのリング固定の概略図である。
【図2】試験の概略図である。
【符号の説明】
1 リング
2 供試虫
3 台
4 噴射装置
5 糸
6 ファン
7 衝立

Claims (2)

  1. エアゾール全量の0.01〜2.0重量/容量%の割合で占める殺虫剤と、エアゾール全量の10〜90容量/容量%を占める割合の溶剤とを含む原液及び噴射剤を含有するエアゾールを、ゴキブリに向けて1回、溶剤の噴射量が0.5〜1.2mlとなる量を1秒以内に噴射して、噴射後のゴキブリの飛翔行動を阻害することを特徴とするゴキブリの飛翔行動阻害方法。
  2. エアゾール全量の0.01〜2.0重量/容量%の割合で占める殺虫剤と、エアゾール全量の10〜90容量/容量%を占める割合の溶剤とを含む原液及び噴射剤を含有するエアゾールを、ゴキブリに向けて1回、溶剤の噴射量が0.5〜1.2mlとなる量を1秒以内に噴射して、噴射後のゴキブリを47秒以内にノックダウンさせて該ゴキブリを防除することを特徴とするゴキブリの防除方法。
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