JP4182242B2 - 光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体、中間体、製造法および用途 - Google Patents
光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体、中間体、製造法および用途 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不飽和有機化合物の不斉化触媒として有用な光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体、光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン誘導体、その製造法および用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
下記一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体としては、マーチンスら(Synlett., 1998, Vol. 10, pp1162)が知られているが、これはR1、R2が水素原子であるものに限られかつその不斉化触媒としての能力もきわめて低いものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
不飽和有機化合物の不斉化触媒として、工業的規模での製造に適しかつ高性能な触媒開発が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、工業的に入手容易な光学活性なアゼチジンカルボン酸エステル類を原料として用い、有用かつ新規な不飽和有機化合物の不斉化触媒を開発すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0005】
すなわち本発明は、一般式(1)
(式中、R1、R2は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示し、Ar1,Ar2はそれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基またはアリールオキシ基を示し、Mは遷移金属を示し、X−は対イオンを示し、mは0〜4の整数を示し、L1,L2はそれぞれ独立にまたは一体となって配位子を示し、*は不斉炭素を示す。さらにAr1,Ar2は互いに結合を形成していてもよい。)
で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体;
一般式(2)
(式中、R1、R2は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示し、Ar1,Ar2はそれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基またはアリールオキシ基を示す。さらにAr1,Ar2は互いに結合を形成していてもよい。*は不斉炭素を示す。)
で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン誘導体;
一般式(3)
(式中、R1、R2はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基をそれぞれ示す。*は不斉炭素を示す)
で示される光学活性なアゼチジンメタノール誘導体と一般式(4)
PXAr1Ar2 (4)
(式中、Xはハロゲン原子、Ar1,Ar2はそれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基またはアリールオキシ基を示す。Ar1,Ar2は互いに結合を形成していてもよい)
で示されるホスフィン類を反応させることを特徴とする一般式(2)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン誘導体の製造法;および用途を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体は、不飽和有機化合物の不斉化方法において、触媒として用いることができる。
【0007】
本発明の原料化合物となる一般式(3)で示される光学活性なアゼチジンメタノール類は、一般式(6)
(式中、R3は水素原子またはエステルを構成するアルコール残基を示す。Zは水素原子またはアミノ基の保護基を示す。*は不斉炭素を示す。)
で示される光学活性なアゼチジンカルボン酸エステル類を、Grignard試薬等の有機金属アルキル化剤で、一挙にもしくは逐次的にアルキル化し、その後、Zがアミノ基の保護基である場合には脱保護することにより、一般式(3)で示される光学活性なアゼチジンメタノール誘導体を得ることができる。
【0008】
本発明に用いられる一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体および一般式(2)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン誘導体の置換基においてR1、R2で示される置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フリル基、チエニル基など、置換基を有していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基などが、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−ナフチルエチル基、ジフェニルメチル基などがそれぞれ例示される。
これらの基がさらに置換されている場合の置換基としては、本発明の効果を阻害しないものであれば特に制限されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシル基、フェノキシ基などのアリールオキシ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基などの低級アルキル基、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基などの低級アルキルチオ基、フェニルチオ基などのアリールチオ基、ニトロ基、スルホン酸基などが例示される。
【0009】
Ar1,Ar2で示される置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フリル基、チエニル基など、置換基を有していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基、その他、3,3’−ビフェニル2価残基などがそれぞれ例示される。また、アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基などが例示される。
これらの基がさらに置換されている場合の置換基としては、本発明の効果を阻害しないものであれば特に制限されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシル基、フェノキシ基などのアリールオキシ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基などの低級アルキル基、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基などの低級アルキルチオ基、フェニルチオ基などのアリールチオ基、ニトロ基、スルホン酸基などが例示される。
【0010】
Mで示される遷移金属の例としては、好ましくはロジウム、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、白金などが挙げられる。
【0011】
X−で示される対イオンの例としては、好ましくはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸根、ヘキサフルオロ燐酸根、テトラフロオロ硼酸根、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸根、トリフルオロメタンスルホン酸根などがあげられる。
【0012】
L1、L2で示される配位子としては、遷移金属に配位するものであればよく、一酸化炭素、一酸化窒素、NH2なども含め、塩素、臭素等のハロゲン、オレフィン類配位子、アセチレン類配位子、芳香族化合物配位子、有機含酸素化合物配位子、有機含硫黄化合物配位子、有機含窒素化合物配位子などが挙げられる。
【0013】
上記オレフィン類配位子としては、例えば、エチレン、アリール、ブタジエン、シクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、ノルボルナジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、などが例示される。また一般に配位子としてよく用いられる5員環化合物として、下記一般式で示される5員環化合物が挙げられる。
【0014】
(式中、Ra〜Reは同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基またはアルキルオキシカルボニル基をそれぞれ示す。具体的には、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが、アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基などが、アラルキル基としてはベンジル基、2−フェニルエチル基、2−ナフチルエチル基、ジフェニルメチル基などが、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フリル基、チエニル基、などが、アルケニル基としては2−メチル−1−プロペニル基、2−ブテニル基、トランス−β−スチリル基、3−フェニル−1−プロペニル基、1−シクロヘキセニル基などが、アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基などが、アリールオキシ基としてはフェノキシ基などが、アルキルオキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などが、アリールオキシカルボニル基としてはフェニルオキシカルボニル基などがそれぞれ例示される。これらの基がさらに置換基で置換されている場合の置換基としては、前記したと同様のハロゲン原子、前記したと同様のアルコキシル基、前記したと同様のアリールオキシ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基などの低級アルキル基、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基などの低級アルキルチオ基、フェニルチオ基などのアリールチオ基、ニトロ基、水酸基などが例示される。置換基はその数は1〜5の任意の数であり、置換位置は任意の位置を選ぶことができる。
【0015】
アセチレン類配位子としては、アセチレン、1,2−ジメチルアセチレン、1,4−ペンタジイン、1,2−ジフェニルアセチレンなどが例示される。
【0016】
芳香族化合物配位子としては、ベンゼン、p−シメン、メシチレン、ヘキサメチルベンゼン、ナフタレン、アントラセンなどが例示されるが、一般に配位子としてよく用いられる芳香族化合物としては、下記一般式で示される環式芳香族化合物が挙げられる。
(式中、Rfは、同一または相異なり、水素原子、飽和または不飽和炭化水素基、アリール基、異原子を含む官能基を示し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、ベンジル、ビニル、アリール、フェニル、ナフチルなどの不飽和炭化水素等の基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等の異原子を含む官能基を示すことができる。置換基の数は1〜6の任意の数であり、置換位置は任意である。)
【0017】
有機含酸素化合物配位子としては、例えば、アセテート、ベンゾエート、アセチルアセトナートなどが例示される。有機含硫黄化合物配位子としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルフィド、チオフェン、二硫化炭素、硫化炭素、チオフェノールなどが例示される。有機含窒素化合物配位子としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル、t−ブチルイソシアニド、ピリジン、1,10−フェナントロリン、2,2’−ビピリジルなどが例示される。
【0018】
一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体は、一般式(2)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィンと下記一般式
MYpLs
(式中、Mは前記の遷移金属を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子、無機又は有機酸残基、アルコキシ基またはヒドロキシ基を示し、Lは上記で説明した配位子L1またはL2を示し、pおよびsはそれぞれ0〜6の整数を示す。)
で示される遷移金属錯体あるいはそのダイマーとを反応させることにより製造することができる。
【0019】
上記遷移金属錯体としては、例えば、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、シクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジヨード二ロジウム(I)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフルオロメタンスルホネート、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ルテニウム(II)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(エチレン)イリジウム(I)、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)ダイマー、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、トランス−[クロロ(エチル)ビス(トリエチルホスフィン)白金(II)]、シス−[ジエチルビス(トリエチルホスフィン)白金(II)]、ジクロロ(ノルボルナジエン)白金(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)などが例示される。もちろん本発明に用いられる錯体はこれらに何ら限定されるものではない。
【0020】
一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体は、一般には、例えば以下の方法で製造することができる。
一般式(2)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン誘導体を溶媒に溶解し、上記の遷移金属錯体を加える。得られた反応溶液を濃縮することにより一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体が得られる。反応生成物が沈殿として得られる場合はそのまま固形物を単離してもよい。上記操作は通常、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて実施される。かかる反応で使用される溶媒としては、本反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、たとえば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルのごときエーテル類、トルエン、ベンゼンのごとき不飽和炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサンのごとき炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンのごときハロゲン化炭化水素である。さらに好ましくはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルのごときエーテル類である。
【0021】
次に、一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体を用いた不飽和有機化合物の不斉水素添加還元方法について述べる。
一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体の使用量は反応条件や経済性によって異なるが反応基質である不飽和有機化合物に対するモル比で、通常、1/10〜1/100,000程度用いることができ、好ましくは1/50〜1/10,000程度の範囲である。
【0022】
かかる水素添加還元反応においては、特に使用される金属がイリジウムの場合には、収率および選択率(生成物の光学純度)を向上させるため通常使われる添加剤を加えることが望ましい。このような添加剤の具体的な例としては、ベンジルアミン、ノルマルブチルアミン、トリエチルアミン、などのアミン化合物、テトラノルマルブチルアンモニウムヨード、トリヨウ化ビスマス、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物、フタルイミドなどのイミド化合物が例示される。これらの添加剤の使用量は、一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体1モルに対して0.1〜20モル程度、好ましくは1〜5モル程度用いられる。
【0023】
また本水素添加還元反応では通常、溶媒が用いられる。かかる溶媒としては、反応原料、触媒系を可溶化するものが好ましく用いられる。具体例としては例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アルコール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、ピリジン、DMSOなどヘテロ原子を含む有機溶媒を用いることができる。これら溶媒は単独で用いることも、混合溶媒として用いることもできる。
溶媒の使用量は反応基質の溶解度および経済性により適宜決めることができる。
【0024】
本反応における水素の圧力は、通常、1〜200気圧程度の範囲で、好ましくは3〜100気圧程度の範囲が望ましい。
【0025】
反応温度は、通常、−40〜120℃程度の範囲で行うことができるが、経済性を考慮して、15〜100℃程度で実施され、さらに好ましくは、25〜40℃付近で反応を実施することができる。
反応時間は反応基質濃度、温度、圧力等の反応条件によって異なるが通常、数分から30時間程度で反応は完結する。
また本発明における反応は反応形式がバッチ式においても連続式においても実施することができる。
【0026】
本発明における一般式(2)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン誘導体の具体的な例としては、例えばN,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−α,α−ジメチル(アゼチジン−2−イル)メタノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−α,α−ジエチル(アゼチジン−2−イル)メタノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−α,α−ジイソプロピル(アゼチジン−2−イル)メタノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−α,α−ジベンジル(アゼチジン−2−イル)メタノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−α,α−ジフェニル(アゼチジン−2−イル)メタノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−α,α−ジメチル(アゼチジン−2−イル)メタノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−α,α−ジエチル(アゼチジン−2−イル)メタノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−α,α−ジイソプロピル(アゼチジン−2−イル)メタノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−α,α−ジベンジル(アゼチジン−2−イル)メタノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−α,α−ジフェニル(アゼチジン−2−イル)メタノールなどが挙げられる。
ここで、アリールとはフェニル、o−トリル、1−ナフチルなどであり、アルキルとはメチル、エチル、シクロヘキシル、t−ブチルなどである。
【0027】
一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体は、上記一般式(2)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン誘導体から誘導される遷移金属錯体などを挙げることができる。
【0028】
一般式(3)で示される光学活性なアゼチジンメタノール誘導体から一般式(2)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン誘導体は以下のようにして合成することができる。
一般式(3)で示される光学活性なアゼチジンメタノール誘導体と一般式(4)で示されるホスフィン類とを通常、塩基存在化、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテルのような炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル等の有機溶媒中で反応させることにより製造することができる。
塩基としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、好ましくは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、キノリン等の有機アミンである。これらの塩基を使用するときに、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジンなどを添加することにより反応を促進させることができる。
反応温度は通常−20℃〜150℃であるが特に好ましくは0℃〜50℃程度である。
反応時間は、通常、30分〜20時間であるが特に好ましくは1時間〜5時間程度である。
反応終了後、反応混合物から濃縮等により溶媒を除去し得られた生成物は、濾過や必要に応じカラムクロマトグラフィーや再結晶でさらに精製することができる。
一般式(4)で示されるホスフィン類としては、例えばクロロジフェニルホスフィン、クロロジシクロヘキシルホスフィン、クロロシクロヘキシルフェニルホスフィン、クロロジトリルホスフィン、クロロ(メトキシフェニル)ホスフィン、クロロジ(3、5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンなどを例示することができる。これの使用量は特に制限されないが、一般式(3)で示される光学活性なアゼチジンメタノール誘導体に対して、通常、2〜5倍モル、好ましくは2〜3倍モル程度用いられる。
なお、一般式(5)
(式中、R1、R2はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基をそれぞれ示す。*は不斉炭素を示す。)
で示される光学活性なアゼチジンメタノール類は、新規化合物である。
【0029】
【発明の効果】
本発明の一般式(1)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体は、不飽和有機化合物の高性能な不斉化触媒として、工業的規模での製造に有用である。
【0030】
【実施例】
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
(参考例1)
アルゴン雰囲気下、(S,S)−2−(N−α−メチルベンジル)アゼチジンカルボン酸エチルエステル10.0g(45.6ミリモル)をジエチルエーテル100mlに溶解し、3Mメチルマグネシウムブロミドジエチルエーテル溶液46ml(137ミリモル)を徐々に滴下していく。滴下終了後2時間加熱還流攪拌した。冷却後得られた反応混合物に塩化アンモニウム飽和水溶液200mlを加え、水層はジエチルエーテルで抽出するとともに得られた有機層を水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。この有機層を濃縮し(S,S)−α、α−ジメチルー2−(N−α−メチルベンジル)アゼチジンメタノール9.24g(収率92%)を黄色油状物質として得た。
ここで得た(S,S)−α、α−ジメチルー2−(N−α−メチルベンジル)アゼチジンメタノール4.0g(18.2ミリモル)をメタノール100ml、水10mlおよび酢酸2mlの混合溶媒に溶解し、活性炭担持の水酸化パラジウム350mgを加え、水素気流化室温にて10時間反応した。得られた反応混合物は、セライト濾過後、反応混合物を減圧下濃縮し得られた残渣を1N塩酸50mlに溶解させジエチルエーテルで洗浄した。洗浄後の残渣を水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にした後、クロロホルム30mlで2回抽出し、得られた有機層を水及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮することにより、(S)−α、α−ジメチル−2−アゼチジンメタノール1.55g(収率74%)を白色固体として得た。融点49〜50℃。
【0032】
(参考例2)
参考例1において、メチルマグネシウムブロミドの代わりにエチルマグネシウムブロミドを用いる以外は同様に反応、後処理して、(S)−α、α−ジエチル−2−アゼチジンメタノールを白色固体として得た。融点54〜55℃。
【0033】
(参考例3)
参考例1において、メチルマグネシウムブロミドの代わりにイソプロピルマグネシウムブロミドを用いる以外は同様に反応、後処理して、(S)−α、α−ジイソプロピル−2−アゼチジンメタノールを白色固体として得た。300MHzNMR(重クロロホルム、δ(ppm)):0.8−1.0(12H、d、イソプロピルCH3)、1.8−1.85(2H、m、イソプロピルCH)、1.85−2.0(1H、m)、2.4−2.5(1H、m)、3.0−3.1(1H、m)、3.5−3.6(1H、m)、4.2−4.3(1H、t、−CHN−)
【0034】
(参考例4)
アルゴン雰囲気下、(S,S)−2−(N−α−メチルベンジル)アゼチジンカルボン酸メチルエステル5.0g(22.8ミリモル)をジエチルエーテル50mlに溶解し、1MフェニルマグネシウムブロミドTHF溶液68.4ml(68.4ミリモル)を徐々に滴下していく。滴下終了後2時間加熱還流攪拌した。冷却後得られた反応混合物に塩化アンモニウム飽和水溶液200mlを加え、水層はジエチルエーテルで抽出するとともに得られた有機層を水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。この有機層を濃縮し粗(S,S)−α、α−ジフェニルー2−(N−α−メチルベンジル)アゼチジンメタノール10.0g(粗収率128%)を黄色油状物質として得た。
ここで得た(S,S)−α、α−ジフェニルー2−(N−α−メチルベンジル)アゼチジンメタノール4.6g(13.4ミリモル)をメタノール100ml、水10mlおよび酢酸2.5mlの混合溶媒に溶解し、活性炭担持の水酸化パラジウム500mgを加え、水素気流化室温にて10時間反応した。得られた反応混合物は、セライト濾過後、反応混合物を減圧下濃縮し得られた残渣を2M水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にした後、クロロホルム30mlで2回抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮した。得られた3.06gの白色固体をヘキサンから2回再結晶する
ことにより、(S)−α、α−ジフェニル−2−アゼチジンメタノール2.0g(収率62%)を白色固体として得た。
【0035】
(実施例1)
参考例1で得た(S)−α、α−ジメチル−2−アゼチジンメタノール200mg(1.74ミリモル)、トリエチルアミン457mg(4.5ミリモル)および4−ジメチルアミノピリジン42mg(0.35ミリモル)を窒素雰囲気下、無水テトラヒドロフラン5mlに溶解し、クロロジフェニルホスフィン996mg(4.5ミリモル)のテトラヒドロフラン3ml溶液を滴下し、室温で19時間反応した。得られた反応混合物は、ジエチルエーテルで希釈後、不溶物を除去し、減圧濃縮した。得られた残渣をトルエンでシリカゲルおよび塩基性アルミナでカラム精製し、(S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−α、α−ジメチル−2−アゼチジンメタノール679mg(収率81%)を無色油状物質として得た。300MHzNMR(重クロロホルム、δ(ppm)):1.4(3H、s、CH3)、1.54(3H、s、CH3)、1.9−2.0(1H、m)、2.1−2.3(1H、m)、2.9−3.1(1H、m)、3.4−3.5(1H、m)、4.0−4.1(1H、m、−CHN−)、7.2−7.6(20H、m、フェニル)
【0036】
(実施例2)
実施例1で得た(S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−α、α−ジメチル−2−アゼチジンメタノール150mg(0.31ミリモル)をアルゴン雰囲気下、無水テトラヒドロフラン1mlに溶解し、ロジウムトリフレートシクロオクタジエン錯体(Rh(COD)2OTf)121mg(0.26ミリモル)を加え、得られた赤色溶液を1時間攪拌した。その後、無水ジエチルエーテル5mlを加えたところ、オレンジ色微粉末として(S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−α、α−ジメチル−2−アゼチジンメタノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩154mg(収率70%)で得た。
【0037】
(実施例3)
参考例4で得た(S)−α、α−ジフェニル−2−アゼチジンメタノール300mg(1.25ミリモル)、トリエチルアミン330mg(3.25ミリモル)および4−ジメチルアミノピリジン42mg(0.35ミリモル)を窒素雰囲気下、無水テトラヒドロフラン5mlに溶解し、クロロジフェニルホスフィン720mg(3.25ミリモル)のテトラヒドロフラン3ml溶液を滴下し、室温で72時間反応した。得られた反応混合物は、濃縮した後、ジエチルエーテルで希釈後、シリカゲルおよび塩基性アルミナで濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣を脱気したベンゼンに溶かし、シリカゲルおよび塩基性アルミナでカラム精製し、(S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−α、α−ジフェニル−2−アゼチジンメタノール581mg(収率77%)を白色固体として得た。300MHzNMR(重クロロホルム、δ(ppm)):1.9−2.1(1H、m)、2.2−2.4(1H、m)、2.8−3.0(2H、m)、5.1−5.2(1H、m、)、7.1−7.6(30H、m、フェニル)
【0038】
(実施例4)
実施例3で得た(S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−α、α−ジフェニル−2−アゼチジンメタノール150mg(0.25ミリモル)をアルゴン雰囲気下、無水テトラヒドロフラン1mlに溶解し、ロジウムトリフレートシクロオクタジエン錯体(Rh(COD)2OTf)96mg(0.21ミリモル)を加え、得られた赤色溶液を1時間攪拌した。その後、無水ジエチルエーテル5mlを加え溶液を穏やかに濃縮し、残滓に無水ジエチルエーテルを加え、表面に浮かんだ油状物を除去し、残滓に無水ジエチルエーテルを加えたところ、オレンジ色微粉末が生成した。溶媒を除去し、得られた固体を減圧下乾燥したところ(S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−α、α−ジフェニル−2−アゼチジンメタノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩60mg(収率30%)で得た。
【0039】
(実施例5)
α−アセチルアミノ−4−クロロスチレン100mgと実施例2で得た(S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−α、α−ジメチル−2−アゼチジンメタノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩2.2mgをアルゴン雰囲気下でイソプロパノール3mlに溶解する。オートクレーブ中水素圧10atm、40℃にて6時間反応させた。反応終了後、反応混合物を濃縮し残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製して、目的物である光学活性なN−アセチル−(4−クロロ)−α−フェネチルアミン90mg(収率90%)で得た。生成物の光学純度は、光学活性な固定相を有するHPLCにて分析し、71%eeであった。
【0040】
(実施例6〜13)
実施例5に従い、反応触媒、反応基質、反応溶媒、反応温度としてそれぞれ表1に示した条件を使用する以外は同様に行った。結果を表1に示す。
【表1】
Claims (4)
- 一般式(3)
(式中、R1、R2はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基をそれぞれ示す。*は不斉炭素を示す)
で示される光学活性なアゼチジンメタノール誘導体と一般式(4)
PXAr1Ar2 (4)
(式中、Xはハロゲン原子、Ar1,Ar2はそれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基またはアリールオキシ基を示すし。Ar1,Ar2は互いに結合を形成していてもよい)で示されるホスフィン類とを反応させることを特徴とする前記一般式(2)で示される光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン誘導体の製造法。 - 請求項1記載の光学活性なアゼチジンメタノールホスフィン配位遷移金属錯体の存在下に不飽和有機化合物を不斉還元する方法。
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