JP2004067514A - 2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体およびその製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体を提供すること。
【解決手段】一般式(1)
(式中、ベンゼン環AおよびBの少なくとも一方が存在しているか、またはベンゼン環AおよびBの両者が存在していなくてもよく、Rは低級アルキル基、Arは同一または相異なり、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、Mは遷移金属を示し、X−は対イオンを示し、mは0〜4の整数を示し、L1、L2はそれぞれ独立にまたは一体となって配位子を示し、同一りん原子に結合しているArは同一または相異なり、また互いに結合していてもよく、*は不斉炭素を示す。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体。
【選択図】 なし
【解決手段】一般式(1)
(式中、ベンゼン環AおよびBの少なくとも一方が存在しているか、またはベンゼン環AおよびBの両者が存在していなくてもよく、Rは低級アルキル基、Arは同一または相異なり、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、Mは遷移金属を示し、X−は対イオンを示し、mは0〜4の整数を示し、L1、L2はそれぞれ独立にまたは一体となって配位子を示し、同一りん原子に結合しているArは同一または相異なり、また互いに結合していてもよく、*は不斉炭素を示す。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不飽和有機化合物の不斉化を行なうにあたり、反応用不斉触媒として有用な光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体を提供しようとするものである。ここで、不飽和有機化合物の不斉化において、不斉還元反応としては、オレフィン部位の水素添加還元、ケトンから水酸基、イミン、オキシムからアミンへの還元などが挙げられる。また、不斉オレフィン異性化反応としては、オレフィン部位の官能基の移動や異性化反応などがあげられる。
【0002】
【従来の技術】
一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体および一般式(2)で示される光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン誘導体は、知られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
不飽和有機化合物の不斉化触媒として、工業的規模での製造に適しかつ高性能な触媒開発が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、合成もしくは入手可能な光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノール誘導体を原料として用い、有用かつ新規な不飽和有機化合物の不斉化触媒を開発すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、一般式(1)
(式中、ベンゼン環AおよびBの少なくとも一方が存在しているか、またはベンゼン環AおよびBの両者が存在していなくてもよく、ここでベンゼン環AおよびBは、それぞれZで置換されていてもよい。Zは低級アルキル基もしくはハロゲン原子を示す。Rは低級アルキル基、Arは同一または相異なり、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、Mは遷移金属を示し、X−は対イオンを示し、mは0〜4の整数を示し、L1、L2はそれぞれ独立にまたは一体となって配位子を示し、同一りん原子に結合しているArは同一または相異なり、また互いに結合していてもよく、*は不斉炭素を示す。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体;および一般式(2)
(式中、R、ベンゼン環A、B、Arおよび*は前記と同じ意味を表わす。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン誘導体と遷移金属化合物とを反応させることを特徴とする一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体の製造法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体および一般式(2)で示される光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン誘導体の置換基においてRで示される置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が例示される。
Arで示される置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フリル基、チエニル基、3,3’−ビフェニル2価残基などが挙げられ、置換基を有していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基などが挙げられる。また、置換気を有していてもよいアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基などが、置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
これらの基がさらに置換基で置換されている場合の置換基としては、本発明の効果を阻害しないものであれば特に制限されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシル基、フェノキシ基などのアリールオキシ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基などの低級アルキル基、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基などの低級アルキルチオ基、フェニルチオ基などのアリールチオ基、ニトロ基、スルホン酸基などが例示される。
【0006】
Mで示される遷移金属の例としては、好ましくはロジウム、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、白金などが挙げられる。特に、不飽和有機化合物の不斉還元反応、不飽和有機化合物の不斉オレフィン異性化反応では、ロジウムやルテニウムが好ましく用いられる。
【0007】
X−で示される対イオンの例としては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸根、ヘキサフルオロ燐酸根、テトラフロオロ硼酸根、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸根、トリフルオロメタンスルホン酸根などがあげられる。
【0008】
L1、L2で示される配位子としては、遷移金属に配位するものであればよく、一酸化炭素、一酸化窒素、NH2なども含め、塩素、臭素等のハロゲン、オレフィン類配位子、アセチレン類配位子、芳香族化合物配位子、有機含酸素化合物配位子、有機含硫黄化合物配位子、有機含窒素化合物配位子などが挙げられる。
【0009】
上記オレフィン類配位子としては、例えば、エチレン、アリル、ブタジエン、シクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、ノルボルナジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、などが例示される。また一般に配位子としてよく用いられる5員環化合物として、下記一般式で示される5員環化合物が挙げられる。
【0010】
(式中、Ra〜Reは同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基またはアルキルオキシカルボニル基をそれぞれ示す。具体的には、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが、アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基などが、アラルキル基としてはベンジル基、2−フェニルエチル基、2−ナフチルエチル基、ジフェニルメチル基などが、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フリル基、チエニル基などが、アルケニル基としては2−メチル−1−プロペニル基、2−ブテニル基、トランス−β−スチリル基、3−フェニル−1−プロペニル基、1−シクロヘキセニル基などが、アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基などが、アリールオキシ基としてはフェノキシ基などが、アルキルオキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などが、アリールオキシカルボニル基としてはフェニルオキシカルボニル基などがそれぞれ例示される。これらの基がさらに置換基で置換されている場合の置換基としては、前記したと同様のハロゲン原子、前記したと同様のアルコキシル基、前記したと同様のアリールオキシ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基などの低級アルキル基、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基などの低級アルキルチオ基、フェニルチオ基などのアリールチオ基、ニトロ基、水酸基などが例示される。置換基の数は1〜5の任意の数であり、置換位置は任意の位置を選ぶことができる。
【0011】
アセチレン類配位子としては、アセチレン、1,2−ジメチルアセチレン、1,4−ペンタジイン、1,2−ジフェニルアセチレンなどが例示される。
【0012】
芳香族化合物配位子としては、ベンゼン、p−シメン、メシチレン、ヘキサメチルベンゼン、ナフタレン、アントラセンなどが例示されるが、一般に配位子としてよく用いられる芳香族化合物としては、下記一般式で示される芳香族化合物が挙げられる。
(式中、Rfは、同一または相異なり、水素原子、飽和または不飽和炭化水素基、アリール基、異原子を含む官能基を示し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、ベンジル、ビニル、アリール、フェニル、ナフチルなどの不飽和炭化水素等の基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等の異原子を含む官能基を示すことができる。置換基の数は1〜6の任意の数であり、置換位置は任意である。)
【0013】
有機含酸素化合物配位子としては、例えば、アセテート、ベンゾエート、アセチルアセトナートなどが例示される。有機含硫黄化合物配位子としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルフィド、チオフェン、二硫化炭素、硫化炭素、チオフェノールなどが例示される。有機含窒素化合物配位子としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル、t−ブチルイソシアニド、ピリジン、1,10−フェナントロリン、2,2’−ビピリジルなどが例示される。
【0014】
一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体は、一般式(2)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィンと下記式で示される遷移金属化合物とを反応させることにより製造することができる。
MYpLs
(式中、Mは上記で示された遷移金属を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシ基またはヒドロキシ基を示し、Lは上記で説明した配位子L1もしくはL2を示し、pおよびsはそれぞれ0〜6の整数を示す。)
【0015】
上記遷移金属化合物としては、例えば、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、シクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、ビス(シクロオクタジエン)ジヨード二ロジウム(I)、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ルテニウム(II)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(エチレン)イリジウム(I)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、トランス−[クロロ(エチル)ビス(トリエチルホスフィン)白金(II)]、シス−[ジエチルビス(トリエチルホスフィン)白金(II)]、ジクロロ(ノルボルナジエン)白金(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)などが例示される。もちろん本発明に用いられる遷移金属化合物はこれらに何ら限定されるものではない。
【0016】
一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体は、一般には以下の方法で製造することができる。
一般式(2)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン誘導体を溶媒に溶解し、上記の遷移金属錯体を加え、得られた反応溶液を濃縮し一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体を得る。反応生成物が沈殿として得られる場合はそのまま固形物を単離してもよい。上記操作は通常、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて実施される。かかる反応で使用される溶媒としては、本反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、たとえば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルのごときエーテル類、トルエン、ベンゼンのごとき不飽和炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサンのごとき炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンのごときハロゲン化炭化水素が挙げられる。さらに好ましくはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルのごときエーテル類が挙げられる。
【0017】
次に、一般式(1)で示される光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体を用いた不飽和有機化合物の不斉化方法について述べる。
ここで、不飽和有機化合物としては、プロキラルな不飽和結合を有するものであれば特に制限されないが、例えば、プロキラルな二重結合を有する不飽和化合物、プロキラルなカルボニル化合物などがあげられる。さらに具体的には、前者の具体例としてN−アセチル−α−デヒドロフェニルアラニン、N−t−ブチルオキシカルボニル−α−デヒドロフェニルアラニン、N−アセチル−α−デヒドロナフチルアラニン、N−t−ブチルオキシカルボニル−α−デヒドロナフチルアラニン誘導体のごときデヒドロアミノ酸誘導体あるいはそのエステル誘導体、1−(N−アセチルアミノ)スチレン、3−メトキシ−1’−(N−アセチルアミノ)スチレン、2,4−ジクロロ−1’−(N−アセチルアミノ)スチレン、3−メトキシ−1’−(N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ)スチレン、2,4−ジクロロ−1’−(N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ)スチレン等のエナミン誘導体、2−ベンジリデン琥珀酸、2−エチリデン琥珀酸などのα不飽和カルボン酸誘導体などである。後者の具体例としては、下記一般式(5)で示されるケトン化合物などのカルボニル化合物があげられる。
(ここで、R3、R4は相異なり置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。またR3とR4が一緒になって全体で非対称環式ケトンを形成していてもよい。)
上記一般式(5)で示されるケトン化合物のR3、R4のアルキル基としては例えば、メチル、エチル、ブチル、オクチルなどのアルキル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニルなどが挙げられ、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、クロロメチルフェニルケトン、ブロモメチルフェニルケトン、2−アセチルピリジン、3−アセチルピリジン、(o―メトキシ)アセトフェノン、(o−プロポキシ)アセトフェノン、(o−ベンジルオキシ)アセトフェノン、α−アセトナフトン、p−クロロフェニルメチルケトン、p−ブロモフェニルメチルケトン、p−シアノフェニルメチルケトン、フェニルベンジルケトン、フェニル(トリルメチル)ケトン、2−ブタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキシルメチルケトン、シクロヘキシルエチルケトン、シクロヘキシルベンジルケトン、t−ブチルメチルケトン、3−キヌクリジノン、1−インダノン、2−インダノン、1−テトラロン、2−テトラロン、ベンジル(2−ピリジル)ケトン、ベンジル(3−ピリジル)ケトン、ベンジル(2−チアゾリル)ケトン等が挙げられる。
【0018】
一般式(1)で示される光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体の使用量は反応条件や経済性によって異なるが反応基質である不飽和有機化合物に対するモル比で、通常、1/10〜1/100,000程度用いることができ、好ましくは1/50〜1/10,000程度の範囲である。
【0019】
かかる不斉化反応においては、反応基質である不飽和有機化合物の水素添加還元反応で、特に使用される金属がイリジウムの場合には、収率および選択率(生成物の光学純度)を向上させるため通常使われる添加剤を加えることが望ましい。このような添加剤の具体的な例としては、ベンジルアミン、ノルマルブチルアミン、トリエチルアミン、などのアミン化合物、テトラノルマルブチルアンモニウムヨード、トリヨウ化ビスマス、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物、フタルイミドなどのイミド化合物が例示される。これらの添加剤の使用量は、一般式(1)で示される光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体1モルに対して0.1〜20モル程度、好ましくは1〜5モル程度用いられる。
【0020】
また本水素添加還元反応では通常、溶媒が用いられる。かかる溶媒としては、反応原料、触媒系を可溶化するものが好ましく用いられる。具体例としては例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、ピリジン、ジメチルスルオキシドなどヘテロ原子を含む有機溶媒を用いることができる。これら溶媒は単独で用いることも、混合溶媒として用いることもできる。
溶媒の使用量は反応基質の溶解度および経済性により適宜決めることができる。
【0021】
本反応における水素の圧力は、通常、1〜200気圧程度の範囲で、好ましくは3〜100気圧程度の範囲が望ましい。
反応温度は、通常、−40〜120℃程度の範囲で行うことができるが、経済性を考慮して、15〜100℃程度で実施され、好ましくは、25〜40℃付近で反応を実施することができる。
反応時間は反応基質濃度、温度、圧力等の反応条件によって異なるが通常、数分から30時間程度で反応は完結する。
また本発明における反応は反応形式がバッチ式においても連続式においても実施することができる。
【0022】
本発明における一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体の具体的な例としては、例えば、
N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−シス−1−メチルアミノ−2−シクロペンタノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−トランス−1−メチルアミノ−2−シクロペンタノール、
N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−シス−1−プロピルアミノ−2−シクロペンタノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−トランス−1−プロピルアミノ−2−シクロペンタノール、
N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−シス−1−メチルアミノ−2−インダノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−トランス−1−メチルアミノ−2−インダノール、
N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−シス−2−メチルアミノ−1−インダノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−トランス−2−メチルアミノ−1−インダノール、
N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−シス−2−メチルアミノ−1−アセナフテノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−トランス−2−メチルアミノ−1−アセナフテノール、
N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−シス−1−メチルアミノ−2−シクロペンタノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−トランス−1−メチルアミノ−2−シクロペンタノール、
N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−シス−1−プロピルアミノ−2−シクロペンタノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−トランス−1−プロピルアミノ−2−シクロペンタノール、
N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−シス−1−メチルアミノ−2−インダノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−トランス−1−メチルアミノ−2−インダノール、
N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−シス−2−メチルアミノ−1−インダノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−トランス−2−メチルアミノ−1−インダノール、
N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−シス−2−メチルアミノ−1−アセナフテノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−トランス−2−メチルアミノ−1−アセナフテノールから誘導される遷移金属錯体などを挙げることができる。ここで、アリールとはフェニル基、o−トリル基、1−ナフチル基、フリル基、チエニル基、3,3’−ビフェニル2価残基フェニル、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、アルキルとはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0023】
一般式(2)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン誘導体は、一般式(3)
(式中、R、ベンゼン環A、Bおよび*は前記と同じ意味を表わす。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノール誘導体と一般式(4)
P(W)Ar2
(式中、Arは前記と同じ意味を表わし、Wはハロゲン原子を示す。)
で示されるホスフィン類とを反応させることにより得られる。
【0024】
ここで、一般式(3)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノール誘導体は、一般式(6)
(式中、A、Bおよび*は前記と同じ意味を表わす。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノール類のアミノ−基を、低級カルボン酸誘導体でアミド化したのちアミド基を還元することで得られる。
より具体的には、一般式(3)におけるRがメチル基の場合には、アミノ基をホルミルアミノ基に誘導した後、水素化リチウムアルミニウムのような還元剤で還元する方法があげられる。
【0025】
一般式(3)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノール誘導体と一般式(4)で示されるホスフィン類との反応においては、通常、塩基存在化、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテルのような炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル等の有機溶媒中で行われる。
塩基としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、好ましくは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、キノリン等の有機アミンが挙げられる。これらの塩基の使用時に、反応促進のための触媒を加えても良い。該触媒としては、4−ジメチルアミノ−ピリジン、4−ピロリジノピリジンなどが例示される。
反応温度は通常−20℃〜150℃の範囲であるがより好ましくは0℃〜50℃程度の範囲である。
反応時間は、通常、30分〜20時間であるがより好ましくは1時間〜5時間程度である。
反応混合物から濃縮等により溶媒を除去し得られた生成物は、濾過や必要に応じカラムクロマトグラフィーや再結晶でさらに精製することができる。
【0026】
一般式(4)で示されるホスフィン類として、例えば、クロロジフェニルホスフィン、クロロジシクロヘキシルホスフィン、クロロシクロヘキシルフェニルホスフィン、クロロジトリルホスフィン、クロロ(メトキシフェニル)ホスフィン、クロロジ(3、5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンなどを例示することができる。この使用量は特に制限されないが、一般式(3)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノール誘導体に対して、2〜5倍モル、好ましくは2〜3倍モル程度用いられる。
【0027】
【発明の効果】
本発明により、不飽和有機化合物の不斉化触媒として、工業的規模での製造に適しかつ高性能な触媒である一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体を得ることができる。
【0028】
【実施例】
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
窒素雰囲気下、(1S,2S)−2−N−メチルアミノ−1−インダノール250mg(1.53ミリモル)、トリエチルアミン403mg(3.98ミリモル)およびジメチルアミノ−ピリジン37mg(0.31ミリモル)をテトラヒドロフラン5mlに溶解し、ジフェニルクロロホスフィン878mg(3.98ミリモル)のテトラヒドロフラン3ml溶液を徐々に滴下した。室温で19時間反応した後、反応混合物をシリカゲルと塩基性アルミナでろ過したのち、ろ液を濃縮した。つぎにトルエンに溶解後、シリカゲルと塩基性アルミナでろ過したのち、有機層を濃縮し(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノール400mg(収率49%)を無色粘稠油状物質として得た。1H−NMR(ppm、CDCl3)5.20−5.27(1H、m)、4.75−4.85(1H、m)、2.86−3.24(2H、m)、2.35(3H、s)、7.0−7.6(24H、m)
【0029】
実施例2
実施例1において、(1S,2S)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールに代えて(1R,2R)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノール(1.53ミリモル)を用いる以外は、実施例1と同様に反応させ、(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノールを収率69%で無色粘稠油状物質として得た。1H−NMR(ppm、CDCl3)5.94−5.99(1H、d)、5.63−5.68(1H、d)、2.26(3H、s)、7.1−7.8(26H、m)
【0030】
実施例3
実施例1において、(1S,2S)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールに代えて(1R,2R)−2−N−メチルアミノ−1−シクロペンタノール(1.53ミリモル)を用いる以外は、実施例1と同様に反応させて、(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−シクロペンタノール(無色粘稠油状物質)を収率83%で得た。1H−NMR(ppm、CDCl3)4.45−4.49(1H、m)、3.82−3.88(1H、m)、2.39(3H、s)、7.2−7.5(20H、m)、1.6−2.1(6H、m)
【0031】
実施例4
実施例1で得た(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノール78.5mg(0.15ミリモル)をアルゴン雰囲気下、無水テトラヒドロフラン1mlに溶解し、ロジウムトリフレートシクロオクタジエン錯体(Rh(COD)2OTf)を加え、得られた赤色溶液を1時間攪拌した。その後、乾燥ジエチルエーテル5mlを加えたところ、析出した赤色沈殿をさらに乾燥ジエチルエーテルで洗浄し、オレンジ色微粉末として(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩100mg(収率93%)を得た。元素分析の結果、calc.:C、57.92;H、4.86;N、1.57;P、6.95、found:C、58.3;H、4.9;N、1.6;P、7.46であり、目的物を支持した。
【0032】
実施例5
実施例4において、(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールを(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノール(78.5mg)に代える以外は、実施例4と同様に反応して、(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩を収率72%で得た。
【0033】
実施例6
実施例4において、(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールを(1R,2R)−2−N−メチルアミノ−1−シクロペンタノール(78.5mg)に代える以外は、実施例4と同様に反応させて、(1R,2R)−2−N−メチルアミノ−1−シクロペンタノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩を収率87%で得た。
【0034】
実施例7
N−アセチル−α−デヒドロフェニルアラニンメチルエステル100mgと実施例4で得た(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩2mgをアルゴン雰囲気下でメタノール5mlに溶解する。オートクレーブ中水素圧3MPa、室温にて3時間反応させた。反応終了後、反応混合物を濃縮し残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製して、目的物である光学活性な(R)−N−アセチルフェニルアラニンメチルエステル90mg(収率90%)で得た。生成物の光学純度は、光学活性な固定相を有するHPLCにて分析し、50%eeであった。
【0035】
実施例8
実施例7に従い、(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールの代わりに、(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩2mgを用いる以外は同様に行い、(S)−N−アセチルフェニルアラニンメチルエステル(光学純度53%ee)を得た。
【0036】
実施例9
実施例7のN−アセチル−α−デヒドロフェニルアラニンメチルエステル100mgに代えてN−アセチル−α−デヒドロ−(2−ナフチル)アラニンメチルエステル100mgを用いる以外は実施例7と同様に行い、(R)−N−アセチル−2−ナフチルアラニンメチルエステル93mgを得た。生成物の光学純度は、光学活性な固定相を有するHPLCにて分析し、55%eeであった。
【0037】
実施例10
実施例7のN−アセチル−α−デヒドロフェニルアラニンメチルエステル100mgに代えてN−アセチル−α−デヒドロ−(2−ナフチル)アラニンメチルエステル100mgを用い、(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールを(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノール(78.5mg)に代える以外は実施例7と同様に行い、(S)−N−アセチル−2−ナフチルアラニンメチルエステル92mgを得た。生成物の光学純度は、光学活性な固定相を有するHPLCにて分析し、65%eeであった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、不飽和有機化合物の不斉化を行なうにあたり、反応用不斉触媒として有用な光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体を提供しようとするものである。ここで、不飽和有機化合物の不斉化において、不斉還元反応としては、オレフィン部位の水素添加還元、ケトンから水酸基、イミン、オキシムからアミンへの還元などが挙げられる。また、不斉オレフィン異性化反応としては、オレフィン部位の官能基の移動や異性化反応などがあげられる。
【0002】
【従来の技術】
一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体および一般式(2)で示される光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン誘導体は、知られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
不飽和有機化合物の不斉化触媒として、工業的規模での製造に適しかつ高性能な触媒開発が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、合成もしくは入手可能な光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノール誘導体を原料として用い、有用かつ新規な不飽和有機化合物の不斉化触媒を開発すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、一般式(1)
(式中、ベンゼン環AおよびBの少なくとも一方が存在しているか、またはベンゼン環AおよびBの両者が存在していなくてもよく、ここでベンゼン環AおよびBは、それぞれZで置換されていてもよい。Zは低級アルキル基もしくはハロゲン原子を示す。Rは低級アルキル基、Arは同一または相異なり、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、Mは遷移金属を示し、X−は対イオンを示し、mは0〜4の整数を示し、L1、L2はそれぞれ独立にまたは一体となって配位子を示し、同一りん原子に結合しているArは同一または相異なり、また互いに結合していてもよく、*は不斉炭素を示す。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体;および一般式(2)
(式中、R、ベンゼン環A、B、Arおよび*は前記と同じ意味を表わす。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン誘導体と遷移金属化合物とを反応させることを特徴とする一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体の製造法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体および一般式(2)で示される光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン誘導体の置換基においてRで示される置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が例示される。
Arで示される置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フリル基、チエニル基、3,3’−ビフェニル2価残基などが挙げられ、置換基を有していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基などが挙げられる。また、置換気を有していてもよいアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基などが、置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
これらの基がさらに置換基で置換されている場合の置換基としては、本発明の効果を阻害しないものであれば特に制限されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシル基、フェノキシ基などのアリールオキシ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基などの低級アルキル基、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基などの低級アルキルチオ基、フェニルチオ基などのアリールチオ基、ニトロ基、スルホン酸基などが例示される。
【0006】
Mで示される遷移金属の例としては、好ましくはロジウム、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、白金などが挙げられる。特に、不飽和有機化合物の不斉還元反応、不飽和有機化合物の不斉オレフィン異性化反応では、ロジウムやルテニウムが好ましく用いられる。
【0007】
X−で示される対イオンの例としては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸根、ヘキサフルオロ燐酸根、テトラフロオロ硼酸根、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸根、トリフルオロメタンスルホン酸根などがあげられる。
【0008】
L1、L2で示される配位子としては、遷移金属に配位するものであればよく、一酸化炭素、一酸化窒素、NH2なども含め、塩素、臭素等のハロゲン、オレフィン類配位子、アセチレン類配位子、芳香族化合物配位子、有機含酸素化合物配位子、有機含硫黄化合物配位子、有機含窒素化合物配位子などが挙げられる。
【0009】
上記オレフィン類配位子としては、例えば、エチレン、アリル、ブタジエン、シクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、ノルボルナジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、などが例示される。また一般に配位子としてよく用いられる5員環化合物として、下記一般式で示される5員環化合物が挙げられる。
【0010】
(式中、Ra〜Reは同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基またはアルキルオキシカルボニル基をそれぞれ示す。具体的には、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが、アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基などが、アラルキル基としてはベンジル基、2−フェニルエチル基、2−ナフチルエチル基、ジフェニルメチル基などが、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フリル基、チエニル基などが、アルケニル基としては2−メチル−1−プロペニル基、2−ブテニル基、トランス−β−スチリル基、3−フェニル−1−プロペニル基、1−シクロヘキセニル基などが、アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基などが、アリールオキシ基としてはフェノキシ基などが、アルキルオキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などが、アリールオキシカルボニル基としてはフェニルオキシカルボニル基などがそれぞれ例示される。これらの基がさらに置換基で置換されている場合の置換基としては、前記したと同様のハロゲン原子、前記したと同様のアルコキシル基、前記したと同様のアリールオキシ基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基などの低級アルキル基、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基などの低級アルキルチオ基、フェニルチオ基などのアリールチオ基、ニトロ基、水酸基などが例示される。置換基の数は1〜5の任意の数であり、置換位置は任意の位置を選ぶことができる。
【0011】
アセチレン類配位子としては、アセチレン、1,2−ジメチルアセチレン、1,4−ペンタジイン、1,2−ジフェニルアセチレンなどが例示される。
【0012】
芳香族化合物配位子としては、ベンゼン、p−シメン、メシチレン、ヘキサメチルベンゼン、ナフタレン、アントラセンなどが例示されるが、一般に配位子としてよく用いられる芳香族化合物としては、下記一般式で示される芳香族化合物が挙げられる。
(式中、Rfは、同一または相異なり、水素原子、飽和または不飽和炭化水素基、アリール基、異原子を含む官能基を示し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、ベンジル、ビニル、アリール、フェニル、ナフチルなどの不飽和炭化水素等の基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等の異原子を含む官能基を示すことができる。置換基の数は1〜6の任意の数であり、置換位置は任意である。)
【0013】
有機含酸素化合物配位子としては、例えば、アセテート、ベンゾエート、アセチルアセトナートなどが例示される。有機含硫黄化合物配位子としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルフィド、チオフェン、二硫化炭素、硫化炭素、チオフェノールなどが例示される。有機含窒素化合物配位子としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル、t−ブチルイソシアニド、ピリジン、1,10−フェナントロリン、2,2’−ビピリジルなどが例示される。
【0014】
一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体は、一般式(2)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィンと下記式で示される遷移金属化合物とを反応させることにより製造することができる。
MYpLs
(式中、Mは上記で示された遷移金属を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシ基またはヒドロキシ基を示し、Lは上記で説明した配位子L1もしくはL2を示し、pおよびsはそれぞれ0〜6の整数を示す。)
【0015】
上記遷移金属化合物としては、例えば、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、シクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、ビス(シクロオクタジエン)ジヨード二ロジウム(I)、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ルテニウム(II)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(エチレン)イリジウム(I)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、トランス−[クロロ(エチル)ビス(トリエチルホスフィン)白金(II)]、シス−[ジエチルビス(トリエチルホスフィン)白金(II)]、ジクロロ(ノルボルナジエン)白金(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)などが例示される。もちろん本発明に用いられる遷移金属化合物はこれらに何ら限定されるものではない。
【0016】
一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体は、一般には以下の方法で製造することができる。
一般式(2)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン誘導体を溶媒に溶解し、上記の遷移金属錯体を加え、得られた反応溶液を濃縮し一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体を得る。反応生成物が沈殿として得られる場合はそのまま固形物を単離してもよい。上記操作は通常、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて実施される。かかる反応で使用される溶媒としては、本反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、たとえば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルのごときエーテル類、トルエン、ベンゼンのごとき不飽和炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサンのごとき炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンのごときハロゲン化炭化水素が挙げられる。さらに好ましくはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルのごときエーテル類が挙げられる。
【0017】
次に、一般式(1)で示される光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体を用いた不飽和有機化合物の不斉化方法について述べる。
ここで、不飽和有機化合物としては、プロキラルな不飽和結合を有するものであれば特に制限されないが、例えば、プロキラルな二重結合を有する不飽和化合物、プロキラルなカルボニル化合物などがあげられる。さらに具体的には、前者の具体例としてN−アセチル−α−デヒドロフェニルアラニン、N−t−ブチルオキシカルボニル−α−デヒドロフェニルアラニン、N−アセチル−α−デヒドロナフチルアラニン、N−t−ブチルオキシカルボニル−α−デヒドロナフチルアラニン誘導体のごときデヒドロアミノ酸誘導体あるいはそのエステル誘導体、1−(N−アセチルアミノ)スチレン、3−メトキシ−1’−(N−アセチルアミノ)スチレン、2,4−ジクロロ−1’−(N−アセチルアミノ)スチレン、3−メトキシ−1’−(N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ)スチレン、2,4−ジクロロ−1’−(N−t−ブチルオキシカルボニルアミノ)スチレン等のエナミン誘導体、2−ベンジリデン琥珀酸、2−エチリデン琥珀酸などのα不飽和カルボン酸誘導体などである。後者の具体例としては、下記一般式(5)で示されるケトン化合物などのカルボニル化合物があげられる。
(ここで、R3、R4は相異なり置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。またR3とR4が一緒になって全体で非対称環式ケトンを形成していてもよい。)
上記一般式(5)で示されるケトン化合物のR3、R4のアルキル基としては例えば、メチル、エチル、ブチル、オクチルなどのアルキル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニルなどが挙げられ、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、クロロメチルフェニルケトン、ブロモメチルフェニルケトン、2−アセチルピリジン、3−アセチルピリジン、(o―メトキシ)アセトフェノン、(o−プロポキシ)アセトフェノン、(o−ベンジルオキシ)アセトフェノン、α−アセトナフトン、p−クロロフェニルメチルケトン、p−ブロモフェニルメチルケトン、p−シアノフェニルメチルケトン、フェニルベンジルケトン、フェニル(トリルメチル)ケトン、2−ブタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキシルメチルケトン、シクロヘキシルエチルケトン、シクロヘキシルベンジルケトン、t−ブチルメチルケトン、3−キヌクリジノン、1−インダノン、2−インダノン、1−テトラロン、2−テトラロン、ベンジル(2−ピリジル)ケトン、ベンジル(3−ピリジル)ケトン、ベンジル(2−チアゾリル)ケトン等が挙げられる。
【0018】
一般式(1)で示される光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体の使用量は反応条件や経済性によって異なるが反応基質である不飽和有機化合物に対するモル比で、通常、1/10〜1/100,000程度用いることができ、好ましくは1/50〜1/10,000程度の範囲である。
【0019】
かかる不斉化反応においては、反応基質である不飽和有機化合物の水素添加還元反応で、特に使用される金属がイリジウムの場合には、収率および選択率(生成物の光学純度)を向上させるため通常使われる添加剤を加えることが望ましい。このような添加剤の具体的な例としては、ベンジルアミン、ノルマルブチルアミン、トリエチルアミン、などのアミン化合物、テトラノルマルブチルアンモニウムヨード、トリヨウ化ビスマス、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物、フタルイミドなどのイミド化合物が例示される。これらの添加剤の使用量は、一般式(1)で示される光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体1モルに対して0.1〜20モル程度、好ましくは1〜5モル程度用いられる。
【0020】
また本水素添加還元反応では通常、溶媒が用いられる。かかる溶媒としては、反応原料、触媒系を可溶化するものが好ましく用いられる。具体例としては例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、ピリジン、ジメチルスルオキシドなどヘテロ原子を含む有機溶媒を用いることができる。これら溶媒は単独で用いることも、混合溶媒として用いることもできる。
溶媒の使用量は反応基質の溶解度および経済性により適宜決めることができる。
【0021】
本反応における水素の圧力は、通常、1〜200気圧程度の範囲で、好ましくは3〜100気圧程度の範囲が望ましい。
反応温度は、通常、−40〜120℃程度の範囲で行うことができるが、経済性を考慮して、15〜100℃程度で実施され、好ましくは、25〜40℃付近で反応を実施することができる。
反応時間は反応基質濃度、温度、圧力等の反応条件によって異なるが通常、数分から30時間程度で反応は完結する。
また本発明における反応は反応形式がバッチ式においても連続式においても実施することができる。
【0022】
本発明における一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体の具体的な例としては、例えば、
N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−シス−1−メチルアミノ−2−シクロペンタノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−トランス−1−メチルアミノ−2−シクロペンタノール、
N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−シス−1−プロピルアミノ−2−シクロペンタノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−トランス−1−プロピルアミノ−2−シクロペンタノール、
N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−シス−1−メチルアミノ−2−インダノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−トランス−1−メチルアミノ−2−インダノール、
N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−シス−2−メチルアミノ−1−インダノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−トランス−2−メチルアミノ−1−インダノール、
N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−シス−2−メチルアミノ−1−アセナフテノール、N,O−ビス(ジアリールホスフィノ)−トランス−2−メチルアミノ−1−アセナフテノール、
N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−シス−1−メチルアミノ−2−シクロペンタノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−トランス−1−メチルアミノ−2−シクロペンタノール、
N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−シス−1−プロピルアミノ−2−シクロペンタノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−トランス−1−プロピルアミノ−2−シクロペンタノール、
N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−シス−1−メチルアミノ−2−インダノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−トランス−1−メチルアミノ−2−インダノール、
N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−シス−2−メチルアミノ−1−インダノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−トランス−2−メチルアミノ−1−インダノール、
N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−シス−2−メチルアミノ−1−アセナフテノール、N,O−ビス(ジアルキルホスフィノ)−トランス−2−メチルアミノ−1−アセナフテノールから誘導される遷移金属錯体などを挙げることができる。ここで、アリールとはフェニル基、o−トリル基、1−ナフチル基、フリル基、チエニル基、3,3’−ビフェニル2価残基フェニル、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、アルキルとはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0023】
一般式(2)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン誘導体は、一般式(3)
(式中、R、ベンゼン環A、Bおよび*は前記と同じ意味を表わす。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノール誘導体と一般式(4)
P(W)Ar2
(式中、Arは前記と同じ意味を表わし、Wはハロゲン原子を示す。)
で示されるホスフィン類とを反応させることにより得られる。
【0024】
ここで、一般式(3)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノール誘導体は、一般式(6)
(式中、A、Bおよび*は前記と同じ意味を表わす。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノール類のアミノ−基を、低級カルボン酸誘導体でアミド化したのちアミド基を還元することで得られる。
より具体的には、一般式(3)におけるRがメチル基の場合には、アミノ基をホルミルアミノ基に誘導した後、水素化リチウムアルミニウムのような還元剤で還元する方法があげられる。
【0025】
一般式(3)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノール誘導体と一般式(4)で示されるホスフィン類との反応においては、通常、塩基存在化、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテルのような炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル等の有機溶媒中で行われる。
塩基としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、好ましくは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、キノリン等の有機アミンが挙げられる。これらの塩基の使用時に、反応促進のための触媒を加えても良い。該触媒としては、4−ジメチルアミノ−ピリジン、4−ピロリジノピリジンなどが例示される。
反応温度は通常−20℃〜150℃の範囲であるがより好ましくは0℃〜50℃程度の範囲である。
反応時間は、通常、30分〜20時間であるがより好ましくは1時間〜5時間程度である。
反応混合物から濃縮等により溶媒を除去し得られた生成物は、濾過や必要に応じカラムクロマトグラフィーや再結晶でさらに精製することができる。
【0026】
一般式(4)で示されるホスフィン類として、例えば、クロロジフェニルホスフィン、クロロジシクロヘキシルホスフィン、クロロシクロヘキシルフェニルホスフィン、クロロジトリルホスフィン、クロロ(メトキシフェニル)ホスフィン、クロロジ(3、5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンなどを例示することができる。この使用量は特に制限されないが、一般式(3)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノール誘導体に対して、2〜5倍モル、好ましくは2〜3倍モル程度用いられる。
【0027】
【発明の効果】
本発明により、不飽和有機化合物の不斉化触媒として、工業的規模での製造に適しかつ高性能な触媒である一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体を得ることができる。
【0028】
【実施例】
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
窒素雰囲気下、(1S,2S)−2−N−メチルアミノ−1−インダノール250mg(1.53ミリモル)、トリエチルアミン403mg(3.98ミリモル)およびジメチルアミノ−ピリジン37mg(0.31ミリモル)をテトラヒドロフラン5mlに溶解し、ジフェニルクロロホスフィン878mg(3.98ミリモル)のテトラヒドロフラン3ml溶液を徐々に滴下した。室温で19時間反応した後、反応混合物をシリカゲルと塩基性アルミナでろ過したのち、ろ液を濃縮した。つぎにトルエンに溶解後、シリカゲルと塩基性アルミナでろ過したのち、有機層を濃縮し(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノール400mg(収率49%)を無色粘稠油状物質として得た。1H−NMR(ppm、CDCl3)5.20−5.27(1H、m)、4.75−4.85(1H、m)、2.86−3.24(2H、m)、2.35(3H、s)、7.0−7.6(24H、m)
【0029】
実施例2
実施例1において、(1S,2S)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールに代えて(1R,2R)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノール(1.53ミリモル)を用いる以外は、実施例1と同様に反応させ、(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノールを収率69%で無色粘稠油状物質として得た。1H−NMR(ppm、CDCl3)5.94−5.99(1H、d)、5.63−5.68(1H、d)、2.26(3H、s)、7.1−7.8(26H、m)
【0030】
実施例3
実施例1において、(1S,2S)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールに代えて(1R,2R)−2−N−メチルアミノ−1−シクロペンタノール(1.53ミリモル)を用いる以外は、実施例1と同様に反応させて、(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−シクロペンタノール(無色粘稠油状物質)を収率83%で得た。1H−NMR(ppm、CDCl3)4.45−4.49(1H、m)、3.82−3.88(1H、m)、2.39(3H、s)、7.2−7.5(20H、m)、1.6−2.1(6H、m)
【0031】
実施例4
実施例1で得た(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノール78.5mg(0.15ミリモル)をアルゴン雰囲気下、無水テトラヒドロフラン1mlに溶解し、ロジウムトリフレートシクロオクタジエン錯体(Rh(COD)2OTf)を加え、得られた赤色溶液を1時間攪拌した。その後、乾燥ジエチルエーテル5mlを加えたところ、析出した赤色沈殿をさらに乾燥ジエチルエーテルで洗浄し、オレンジ色微粉末として(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩100mg(収率93%)を得た。元素分析の結果、calc.:C、57.92;H、4.86;N、1.57;P、6.95、found:C、58.3;H、4.9;N、1.6;P、7.46であり、目的物を支持した。
【0032】
実施例5
実施例4において、(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールを(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノール(78.5mg)に代える以外は、実施例4と同様に反応して、(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩を収率72%で得た。
【0033】
実施例6
実施例4において、(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールを(1R,2R)−2−N−メチルアミノ−1−シクロペンタノール(78.5mg)に代える以外は、実施例4と同様に反応させて、(1R,2R)−2−N−メチルアミノ−1−シクロペンタノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩を収率87%で得た。
【0034】
実施例7
N−アセチル−α−デヒドロフェニルアラニンメチルエステル100mgと実施例4で得た(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩2mgをアルゴン雰囲気下でメタノール5mlに溶解する。オートクレーブ中水素圧3MPa、室温にて3時間反応させた。反応終了後、反応混合物を濃縮し残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製して、目的物である光学活性な(R)−N−アセチルフェニルアラニンメチルエステル90mg(収率90%)で得た。生成物の光学純度は、光学活性な固定相を有するHPLCにて分析し、50%eeであった。
【0035】
実施例8
実施例7に従い、(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールの代わりに、(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノールのロジウムシクロオクタジエン錯体のトリフレート塩2mgを用いる以外は同様に行い、(S)−N−アセチルフェニルアラニンメチルエステル(光学純度53%ee)を得た。
【0036】
実施例9
実施例7のN−アセチル−α−デヒドロフェニルアラニンメチルエステル100mgに代えてN−アセチル−α−デヒドロ−(2−ナフチル)アラニンメチルエステル100mgを用いる以外は実施例7と同様に行い、(R)−N−アセチル−2−ナフチルアラニンメチルエステル93mgを得た。生成物の光学純度は、光学活性な固定相を有するHPLCにて分析し、55%eeであった。
【0037】
実施例10
実施例7のN−アセチル−α−デヒドロフェニルアラニンメチルエステル100mgに代えてN−アセチル−α−デヒドロ−(2−ナフチル)アラニンメチルエステル100mgを用い、(1S,2S)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−インダノールを(1R,2R)−N,O−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−N−メチルアミノ−1−アセナフテノール(78.5mg)に代える以外は実施例7と同様に行い、(S)−N−アセチル−2−ナフチルアラニンメチルエステル92mgを得た。生成物の光学純度は、光学活性な固定相を有するHPLCにて分析し、65%eeであった。
Claims (6)
- 一般式(1)
(式中、ベンゼン環AおよびBの少なくとも一方が存在しているか、またはベンゼン環AおよびBの両者が存在していなくてもよく、ここでベンゼン環AおよびBは、それぞれZで置換されていてもよい。Zは低級アルキル基もしくはハロゲン原子を示す。Rは低級アルキル基、Arは同一または相異なり、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、Mは遷移金属を示し、X−は対イオンを示し、mは0〜4の整数を示し、L1、L2はそれぞれ独立にまたは一体となって配位子を示し、同一りん原子に結合しているArは同一または相異なり、また互いに結合していてもよく、*は不斉炭素を示す。)
で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体。 - 一般式(1)で示される2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体が、光学活性体である請求項1記載の遷移金属錯体。
- 請求項2記載の光学活性な2−アミノ−1−シクロペンタノールホスフィン配位遷移金属錯体を使用することを特徴とする不飽和有機化合物の水素添加還元不斉化方法。
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-
2002
- 2002-07-15 JP JP2002205208A patent/JP2004067514A/ja active Pending
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