JP4162441B2 - 新規貴金属−ホスフィン錯体および不斉還元用触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種有機合成ならびに不斉合成、すなわち不斉水素化反応、不斉還元反応、不斉異性化などに工業的触媒として用いられる新規貴金属−ホスフィン錯体および不斉還元用触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、多くの遷移金属錯体が有機合成反応の触媒として使用されている。特に貴金属錯体は高価であるが、安定で取り扱いが容易であるため、これを触媒として使用する多くの合成研究がなされており、特に不斉合成すなわち不斉水素化反応などに用いられる不斉触媒について多くの報告がなされている。
【0003】
一般的にニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの金属錯体に、光学活性な配位子として第3級ホスフィンを供与したものがよい結果を与えており、たとえば不斉水素化触媒として、特開昭55−61937号公報には、キラルなホスフィンをロジウムに配位させたロジウム−ホスフィン錯体およびそれを用いた選択還元の技術が開示されており、特開昭64−68387号公報には、キラルなホスフィンをルテニウムに配位させたルテニウム−ホスフィン錯体およびそれを用いた選択還元の技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、これらに開示されたホスフィン錯体を用いても、単純ケトンの不斉還元においては、わずかの光学収率を得るのみであった。したがって、単純ケトンの不斉還元触媒としては不十分であり、改善が求められていた。
【0005】
また、特開平9−194480号公報には、ロジウム−ホスフィン錯体による単純ケトンの一種である3−キヌクリジノンの還元例が開示されている。しかしながら同技術開示においても3−キヌクリジノンを特定の誘導体に転換しない場合には、開示技術を用いても、その光学収率が1%以下しか得られず、また3−キヌクリジノンを特定の誘導体に転換した場合にも、煩雑な製造工程が必要とされており、簡便でしかも単純ケトンの不斉還元に関して高性能な触媒の開発が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、単純ケトン類においても煩雑な製造工程せず高選択率で選択還元可能な新規貴金属−ホスフィン錯体を提供することである。
【0007】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、選択還元触媒に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する貴金属−ホスフィン錯体が還元触媒として優れていることを見出した。特に3−キヌクリジノンをはじめとする単純ケトンの不斉還元においても、高い不斉収率が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するための第1の発明は、一般式(1)
[M(L1)(L2 p)m(L3 q)n]abs(A-n)Y (1)
(ただし式中、Mはロジウム、イリジウム、ルテニウムから選ばれる貴金属原子を表し、L1 は一般式(2)
【0009】
【化4】
【0010】
(ただし式中、R1 、R2 は互いに独立に水素原子または炭素数1ないし10の炭化水素基を表す。)
または一般式(3)
【0011】
【化5】
【0012】
(ただし式中、R1 、R2 は前記定義に同じ。)
【0013】
で示されるジホスフィン型2座配位子を表す。L2は中性配位子を表し、pは中性配位子の配位座数を表し、mは中性配位子の配位子数を表す。L3はアニオン性配位子を表し、qはアニオン性配位子の配位座数を表し、nはアニオン性配位子の配位子数を表す。
【0014】
式中、Mがロジウムまたはイリジウムのとき、m×p+n×q=2であり、A=1である。
【0015】
式中、Mがルテニウムのとき、m×p+n×q=4であり、A=2である。
式中、abs(A−n)はA−nの絶対値を示す。このとき、A−nが0より大きいときはYは貴金属錯体の電荷に対するカウンターアニオンである。また、
A−nが0のときYは必要とせず、A−nが0より小さい場合Yは貴金属イオンの電荷に対するカウンターカチオンである。)
で示される貴金属−ホスフィン錯体に関するものである。
【0016】
上記課題を解決するための第2の発明は、上記第1の発明であって、前記一般式(1)において、L2が、アミン、ホスフィン、モノオレフィンの単座配位子またはジホスフィン(前記一般式(2)または(3)のジホスフィンを含む)、ジオレフィン等の2座配位子から選ばれ、L3がアセチルカルボキシレート、メタクリレート等のカルボキシレートまたはハロゲン類であることを特徴とするものである。
【0017】
上記課題を解決するための第3の発明は、前記一般式(1)のYにおいて、カウンターアニオンがBF4 -、PF6 -、Cl-、ClO4 -およびBPh- 4から選ばれ、カウンターカチオンがNa+またはK+であることを特徴とするものである。
【0018】
上記課題を解決するための第4の発明は、上記第1ないし第3の発明であって、前記一般式(2)または一般式(3)のR1またはR2の炭化水素基が、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または置換基を有してもよいベンジル基を表すことを特徴とするものである。
【0019】
上記課題を解決するための第5の発明は、上記第1の発明であって、前記一般式(1)で表される貴金属−ホスフィン錯体が、化学式(4)又は(21)
【0020】
【化6】
【0021】
で表される化合物であることを特徴とするものである。
【0022】
上記課題を解決するための第6の発明は、上記第1ないし第5の発明の貴金属−ホスフィン錯体を含むことを特徴とする不斉還元用触媒に関するものである。
【0023】
【発明実施の形態】
本発明の新規貴金属−ホスフィン錯体は前記一般式(1)で表される化合物であるが、中心金属の選択により4座配位または6座配位をとり得る。中心金属がロジウムまたはイリジウムの場合は4座配位型であり、前記一般式(1)の貴金属−ホスフィン錯体は、配位子がすべて電荷を持たないとき、以下の一般式(5)または一般式(6)で表される。
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
式中、Mはロジウムもしくはイリジウムを表わす。
【0027】
式中、R1 、R2 は各々独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示すが、より好ましくは触媒の溶解性の理由により水素またはメチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基の低級アルキル基、或いはシクロヘキシル基の様なシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基または置換基を有してもよいベンジル基がより好ましい。
【0028】
一部のR1 およびR2 が水素又は炭素数10以下の炭化水素であれば、異なっても良いが、製造法上R1 グループとR2 グループはそれぞれ同一である場合がより好ましい。
【0029】
式中、配位子1および配位子2は、配位子が有する非共有電子対を中心金属と共有する形で配位する単座配位子であっても、配位子1および配位子2がひとつの分子を形成し座数が2である2座配位子であってもよく、配位子自体が配位する際、負電荷を有するアニオン性配位子であってもよい。
【0030】
単座配位子としては、例えばアミン、ホスフィンが挙げられる。
【0031】
また2座配位子として、配位子が所有するπ電子を共有する形で配位するオレフィン、ジオレフィン類であってもよい。非共有電子対による配位配位子と同様に配位子1および配位子2は、別々の分子から提供されても良く、単一分子中の2つの2重結合で配位しても良い。別々の分子が2分子配位する場合の好適例は、エチレンであり、一分子中の2つの二重結合が配位する場合の好適例は、1,3−ブタジエン、ノルボルナジエン、1,5−シクロオクタジエンを挙げることができる。
【0032】
式中Yは、本発明錯体のカウンターイオンである。配位子の所有する電荷と錯体への配位子数により金属錯体がカチオン性になればカウンターアニオンであり、金属錯体がアニオン性になればカチオンカウンターとなる。錯体に対するカウンターイオンの付加数(前記一般式(1)でのA−n)は錯体の電荷数の絶対値により変化する。
【0033】
カウンターアニオンとしては、例えばBF- 4、PF- 6、Cl-、ClO- 4およびBPh- 4を挙げることができ、より好ましくは取扱の点で、Cl-およびBF- 4が望ましい。
【0034】
カウンターカチオンとしては、例えばNa+またはK+が挙げられる。
【0035】
中心金属がルテニウムの場合6座配位型であるから、前記一般式(1)の貴金属−ホスフィン錯体は、配位子がすべて電荷を持たないとき、下記一般式(7)または一般式(8)で示される。
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
(但し、式中Mは、ルテニウムを示し、R1 、R2 およびYの詳細は前述と同じ)
配位子3および配位子4は、前述の配位子1および配位子2と同等なものである。
【0039】
本発明の新規貴金属−ホスフィン錯体の具体例として、下記化学式(4)に示すように、一般式(1)における中心貴金属がロジウムであり、一般式(2)のジホスフィン配位子を有し、R1 をメチル基、R2 をフェニル基、配位子1および配位子2が、1,5−シクロオクタジエン、YがBF4 -である化合物を挙げることができる。
【0040】
【化11】
【0041】
一般式(1)で示される新規な貴金属−ホスフィン錯体は、公知の方法を用いて以下の方法で製造することができる。
【0042】
ジホスフィン配位子の製法
ジホスフィン配位子は、イノシトール類を出発物質として数段階の化学反応を行うことにより得る事ができる。前記一般式(2)のジホスフィンは、2−O−メチル−D−chiro−イノシトール或いはD−chiro−イノシトールを用いて製造できる。また前記一般式(3)のジホスフィンは、出発物質を2−O−メチル−L−chiro−イノシトール或いはL−chiro−イノシトールとすることで、同様の製造工程で製造することができる。
【0043】
以下に一般式(2)のジホスフィンの製造方法を2−O−メチル−D−chiro−イノシトールを出発物質として詳細に説明する。
【0044】
【化12】
【0045】
出発原料である化学式(9)で示される2−O−メチル−D−chiro−イノシトールを、例えば塩酸、硫酸、硝酸、沃化水素酸のような強酸の水溶液中で脱メチルし、冷却後、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系溶媒を用いて晶析することによって化学式(10)で示されるD−chiro−イノシトールを得る。
【0046】
次に化学式(10)で示されるD−chiro−イノシトールを例えばp−トルエンスルホン酸のような酸触媒の存在下に例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトンのような単一、もしくは2種類以上の有機溶媒中で、2,2' −ジメトキシプロパンと反応させ、酸触媒を例えば苛性ソーダ、苛性カリ、トリエチルアミンのようなアルカリで中和し、生成した塩を濾別後、溶媒を留去することによって化学式(11)の化合物を得ることができる。
【0047】
【化13】
【0048】
次に化学式(11)の化合物を例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸のような酸の水溶液中で加熱せしめ、その後例えばトルエン、ヘキサン、塩化メチレン、クロロホルムのような有機溶媒を用いて結晶化させることにより化学式(12)の化合物を得ることができる。
【0049】
この時、イノシトール平面に対してトランス状に保護を掛けていた2−2’−ジメトキシプロパンのみを脱プロテクトさせる。
【0050】
次に化学式(12)の化合物を例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール 、トルエン、THF、DMF、DMSO、DMIのような有機溶媒中で、例えばナトリウムアルコキシド、ナトリウムハイドライドのような縮合剤の存在下、脱離可能な例えばハロゲン化ベンジルを反応させ、溶媒を留去させることによって、化学式(13)の化合物を得る。
【0051】
【化14】
【0052】
次に、化学式(13)の化合物を例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸のような酸の水溶液と反応せしめ、溶媒を留去することに化学式(14)の化合物を得ることができる。
【0053】
次に化学式(14)の化合物を例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、THF、DMF、DMSO、DMIのような有機溶媒中で、例えばナトリウムアルコキシド、ナトリウムハイドライドのような縮合剤の存在下、下記一般式(16)で示されるハロゲン化アルキルを反応させ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール溶媒でクエンチし、溶媒を留去することによって一般式(15)の化合物を得ることができる。尚、一般式(2)或いは一般式(5)或は一般式(7)においてR1 が水素原子であるジホスフィン配位子を合成する場合は、一般式(15)への変換は行わない。
【0054】
R1 −X (16)
(R1 は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)
【0055】
【化15】
【0056】
次に一般式(15)の化合物をメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、THF、DMF、DMSO、DMIのような有機溶媒中、またはこれらに塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸のような酸を添加した溶液中で、例えばパラジウム炭素、パラジウムアルミナ、白金炭素、酸化白金のような還元触媒の存在下、常圧〜10MPaの水素圧下、0〜150℃の反応温度にて水素化反応を行い、触媒を濾別後、溶媒を留去することにより一般式(17)の化合物を得ることができる。
【0057】
次に一般式(17)の化合物をメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、THF、DMF、DMSO、DMIのような有機溶媒中、一般式(19)の化合物で示されるハロゲン化ジアルキルホスフィンを反応させ、反応後溶媒を留去することにより、一般式(18)の化合物のジホスフィン型配位子を得ることができる。
【0058】
【化16】
【0059】
(但し式中R2 は互いに独立に水素または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Xはハロゲン、より好ましくは塩素、臭素、沃素を表す。]
【0060】
また、一般式(3)で示されるジホスフィン配位子に関しては、前述の製造方法において、出発物質を2−O−メチル−L−chiro−イノシトール或いはL−chiro−イノシトールに変更することにより、同様の方法で一般式(20)のジホスフィン配位子を得ることができる。
【0061】
【化17】
【0062】
(式中、R1 およびR2 は各々独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
【0063】
錯体の製法
前述の方法で得られた一般式(18)のジホスフィン型配位子を用いることにより一般式(5)または一般式(7)で示される新規貴金属−ホスフィン錯体が合成され、一般式(20)のジホスフィン型配位子を用いることにより一般式(6)または一般式(8)で示される新規貴金属−ホスフィン錯体が公知の方法で合成される。
【0064】
以下に一般式(5)の貴金属−ホスフィン錯体の製造方法に関して、配位子1および配位子2がオレフィンである場合の製造方法に関して詳細に述べる。
【0065】
例えば中心金属がロジウムの場合一般式(18)のジホスフィン配位子をメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、THF、DMSO、DMIのような有機溶媒中、公知の方法で選得られるロジウム−オレフィン配位錯体に不活性雰囲気中に反応させた後、必要に応じてカウンターイオンにより錯塩を作り、本発明の新規ロジウム−ホスフィン錯体を合成する。
【0066】
この時、貴金属−オレフィン錯体の中心金属モル数に対して一般式(18)のジホスフィン配位子の添加量はホスフィンの一部が酸化を受ける場合があるので1.0〜1.2倍モル、より好ましくは1.05〜1.1倍モル使用することが望ましい。
【0067】
本発明に用いられるロジウム−オレフィン配位錯体としては、一般式(5)および一般式(6)のオレフィン配位子の選択よって種々取り扱う事が可能であるが、入手の容易性より、1,5−シクロオクタジエンのロジウム錯体である[Rh(COD)Cl]2 (式中CODは1,5−シクロオクタジエンを示す)やノルボルナジエンのロジウム錯体である[Rh(NBD)Cl]2 (式中NBDは2,5−ノルボルナジエンを示す)が特に好ましい。
【0068】
錯塩化の工程においては例えば4−フルオロホウ酸銀と反応させて、BF4 -塩とするのが、取り扱いの面で特に好ましい。
【0069】
配位子1および配位子2がアミン、ジアミン等の求核性がオレフィンに比較して強い配位子の新規貴金属−ホスフィン錯体の調製は、前述の配位子1および配位子2がオレフィンである新規貴金属−ホスフィン錯体を調製後、導入したい配位子を反応させることにより調製できる。
【0070】
一般式(5)または(6)で示されるロジウム−ホスフィン錯体において配位子1あるいは配位子2に、ジアミン、ジホスフィンを配位させた錯体の調製法に関して詳細に述べる。
【0071】
先述した方法により得たロジウム−ホスフィン錯体(オレフィン)の錯塩と種々のジアミン配位子をメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、のような溶媒中、不活性ガス雰囲気下で反応させることで合成される。
【0072】
ジアミンとしては、エチレンジアミンおよび光学活性なエチレンジアミン類が挙げられる。具体的なものとしては、1,2−ジフェニルエチレンジアミン、1,1−ビス(p−メトキシフェニル)−2−イソプロピル−1,2−ジアミン等が挙げられる。
【0073】
中心金属がルテニウムである場合即ち、一般式(7)または一般式(8)の構造を有する新規貴金属−ルテニウム錯体の製造方法に関しても同様の操作で、一般式(18)または一般式(20)に示されるジホスフィン配位子とルテニウム−オレフィン錯体との反応および、目的とする配位子とオレフィン配位子の交換反応により、容易に調製できる。本発明に用いられるルテニウム−オレフィン配位錯体として、1,5−シクロオクタジエンのルテニウム錯体であるRuCl2 (COD)(式中CODは1,5−シクロオクタジエンを示す)を用いることが好ましい。
【0074】
不斉水素化反応への使用
本発明の新規貴金属−ホスフィン錯体は不斉還元用触媒として、公知の方法により選択水素化反応に利用できる。
【0075】
反応温度は基質の相違により異なるが、例えば0〜150℃の範囲で水素化することができる。水素圧としては0.1〜15MPaの範囲で水素化することができる。必要があれば溶媒を1種乃至は2種以上混合して使用することも可能であり、好適例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、MIBK、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、THF、DMF、DMSO、DMIなどがあげられる。触媒量は、基質に対して1/100000〜1/100モル濃度の範囲で水素化することができる。触媒量が基質に対して1/100000モル濃度未満の添加では、触媒としての効果が発現しないので好ましくなく、1/100モル濃度以上加えても触媒効果の上昇が無く経済的に不利になり好ましくない。
【0076】
特に本発明の新規貴金属−ホスフィン錯体は、従来の貴金属−ホスフィン触媒では困難とされた単純ケトンの不斉還元を高収率で実現できる他、各種不斉還元に触媒作用を有する有用な物質である。
【0077】
以下に参考例および実施例を挙げるが、本発明はこれら参考例、実施例により何ら制約を受けるものではない。
【0078】
【実施例】
以下の方法により化学式(21)で示され、中心金属がロジウムである新規ロジウム−ホスフィン錯体を合成した。
【0079】
【化18】
【0080】
以後の表記において、一般式(1)におけるR1 がメチル基であり、R2 がフェニル基であるジホスフィン配位子をL−CandyPhos (Me−Ph)、と称することにする。従って、化学式(21)による物質は、[Rh(D−CandyPhos (Me−Ph))(COD)]BF4 と簡便に表記する。
【0081】
製造例1
55%の沃化水素酸水溶液50ml中に、2−O−メチル−L−chiro−イノシトール20gを加えて加熱還流を4時間行った後、冷却した。エタノール中に加え、終夜結晶化させた。結晶を濾別した後エタノールで洗浄し、乾燥させ、1L−chiro−イノシトールを得た(収量15.9 g、収率86%)。
mp:240−242 ℃
1 H NMR(D2 O):d 4.06 (br. s, 2 H, H-1 および H-6), 3.79 (m, 2 H, H-2および H-5), 3.63 (m, 2 H, H-3および H-4); 13C NMR (D2O): d 75.6 (C-3 および C-4), 74.5 (C-1および C-6), 73.3 (C-2および C-5) 。
【0082】
製造例2
アセトン150ml、DMF 100mlと2,2’−ジメトキシプロパン80ml中に、1L−chiro−イノシトール12gとp−トルエンスルホン酸2.2gを加え、室温で終夜撹拌した。
【0083】
溶液のpHをトリエチルアミンを用いて7とした後、濾別して溶媒を留去し、1L−1,2:3,4:5,6−tri−O−イソプロピリデン−chiro−イノシトールを得た(収量15.2g,収率78%)。
mp:215−216 ℃,lit.216.5 ℃
[a]+38°(c 0.98,CHCl3 ),lit. +35.96° 1 H NMR(CDCl3 ): d 4.45-4.33 (m, 4 H, H-1, H-6 and H-2, H-5), 3.66 (m, 2 H, H-3,H-4), 1.51 (s, 3 H, CH3); 1.45 (s, 3 H, CH3), 1.35 (s, 3 H, CH3)
13C NMR(CDCl3 ): d 113.9, 111.1 (4°C), 79.8 (C-1 および C-6), 78.5 (C-3および C-4), 76.9 (C-2および C-5), 27.6 (CH3), 27.4 (CH3), 24.9 (CH3).
【0084】
製造例3
酢酸65mlおよび水3.3ml中に、1L−1,2:3,4:5,6−tri−O−イソプロピリデン−chiro−イノシトール12gを加えて75℃で1時間加熱撹拌した。冷却後、溶媒を留去した。ジクロロメタン250mlを加えて加温し、濾別後濾過液を留去した。トルエン200mlを加え、終夜室温下放置した。
【0085】
析出した結晶を濾別し、乾燥させて1L−1,2: 5,6−ジ−O−イソプロピリデン−chiro−イノシトールを得た(収量11.1g,収率80%)。
mp:157−158℃,lit. 153.2℃
[a]−14 ° (c, CHCl3 ), lit. −258 °
1 H NMR(CDCl3 ): 4.37 (m, 2 H, H-1 および H-6), 4.18 (m, 2 H, H-2および H-5), 3.57 (m, 2 H, H-3および H-4), 2.74 (s, 2 H , OH), 1.51 (s, 6 H, CH3), 1.30 (s, 6 H, CH3)
13C NMR(CDCl3 ): d 110.0 (iPr), 79.0, 76.6, 72.9 (C-1 and C-6, C-2 and C-5, C-3 and C-4), 20.1 (CH3), 25.5 (CH3).
【0086】
製造例4
DMF150ml中に1L−1,2:3,4:5,6−tri−O−イソプロピリデン−chiro−イノシトールを加えて0℃まで冷却した。アルゴン雰囲気下、この溶液に60%水素化ナトリウム2.95gを加えた後にベンジルブロマイド8.8mlを加えた。
【0087】
室温に戻した後、5日間撹拌を続けた。エタノール50mlを加えた後、溶媒を留去させ、カラムを用いて精製し(酢酸エチル:ヘキサン=1:4)、1L−3,4−ジ−O−ベンジル−1,2: 5,6−ジ−O−イソプロピリデン−chiro−イノシトールを得た(収量12.5g,収率92%)。
[a]−14.5 °(c 1.2, CHCl3 )
1 H NMR (CDCl3 ): 7.39-7.04 (m, 10 H, Ar), 4.83 (dd, 4 H, CH2), 4.29 (m, 2 H, H-2 および H-5), 4.25 (m, 2 H , H-1 および H-6), 3.58 (dd, JHH 2.4, 4.3, H-3および H-4), 1.48 (s, 6 H, iPr), 1.35 (s, 6 H, iPr)
13C NMR(CDCl3 ): d 138.9 (4 OBn), 128.6, 128.3, 127.9 (Ar), 109.9 (iPr), 80.3 (C-3 and C-4), 79.7 (C-2 and C-5), 76.9 (C-1 and C-6), 74.2 (CH2), 28.2 (CH3), 25.8 (CH3)
FAB+-MS (NBA/DCM): Calcd for C26H31O6
(M−H)+439.2121 m/z. Found: 439.2118
Anal. Calcd for C26H32O6 : C 70.89% H 7.32%.
Found: C 70.97% H 7.29%.
【0088】
製造例5
50%トリフルオロ酢酸水溶液100ml中に1L−3,4−di−O−ベンジル−1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−chiro−イノシトール12.3gを加えて、室温下3時間撹拌した。溶媒を留去し、カラム精製を行い、酢酸エチル−ヘキサンより結晶化させ、1L−3,4−ジ−O−ベンジル−chiro−イノシトールを得た(収量7.9g,収率78%);
mp:138−140℃
[a]+3.6° (c 1.0, MeOH)
1 H NMR(CD3 OD): d 7.38-7.22 (m, 10 H, Ar), 4.89 (d, 2 H, J 11.0 Hz, CH'H), 4.79 (d, 2 H, J 11.1 Hz, CH'H), 3.93 (obsc., 2 H, H-1 および H-6), 3.90 (dd, 2 H, J 5.1, 2.2 Hz, H-2,H-5 もしくは H-3,H-4), 3.66 (dd, 2 H, J 6.6, 2.7 Hz, H-3,H-4 もしくは H-2,H-5)
13C NMR(CD3 OD): d 141.0, 129.6, 129.4, 128.8 (Ar), 83.9 (C-3,C-4 もしくは C-2,C-5), 76.6 (CH2), 74.3 (C-1 および C-6), 73.1 (C-2,C-5もしくは C-3,C-4)
FAB+-MS (NBA/MeOH): Calcd for C20H25O6 (M+H)+ 361.1651 m/z. Found: 361.1641
Anal. Calcd for C20H24O6 : C 66.65% H 6.71%.
Found: C 65.93% H 6.62%.
【0089】
製造例6
DMF200mlにアルゴン雰囲気下1L−3,4−ジ−O−ベンジル−chiro−イノシトール10gを加え、0℃に冷却した。60%水素化ナトリウム2.99gを加え、その後沃化メチル5.18mlを加えた。徐々に室温に戻し、1時間室温で撹拌した。溶液を0℃に冷却し、60%水素化ナトリウム2.99gを加え、その後沃化メチル5.18mlを加えた。徐々に室温に戻し、終夜室温で撹拌した。エタノール100mlを加えてクエンチした後、溶媒を留去し、カラム精製にて1L−3,4−ジ−O−ベンジル−1,2,5,6−tetra −O−メチル−chiro−イノシトールを得た(収量7.5g,収率95%)。
[a]+20.3° (c 1.1, CHCl3 )
1 H NMR(CDCl3 ): d 7.36-7.7.22 (m, 10 H, Ar), 4.85 (d, 2 H, J 10.8 Hz, CHH’), 4.79 (d, 2 H, J 10.8 Hz, CHH ’), 3.75 (d, 2 H, J 2.6 Hz, H-1 および H-6), 3.73 (dd, 2 H, J 7.1, 2.6 Hz, H-2 および H-5), 3.53 (s, 6 H, CH3), 3.51 (obsc., 2 H, H-3 および H-4), 3.49 (s, 6 H, CH3)
13C NMR(CDCl3): d 139.2, 128.6, 128.3, 127.7 (Ar), 82.3 (C-2 and C-5), 82.2 (C-3 and C-4), 76.2 (C-1 and C-6), 76.1(CH2), 59.5 (CH3), 59.4 (CH3)
FAB+-MS (NBA/DCM): Calcd for C24H31O6
(M−H+) 415.2121 m/z. Found: 415.2111;
Anal. Calcd for C24H32O6 : C 69.21%, H 7.74%. Found: C 68.82%; H 7.75%.
【0090】
製造例7
エタノール64mlおよびトリフルオロ酢酸7ml中に1L−3,4−ジ−O−ベンジル−1,2,5,6−tetra −O−メチル−chiro−イノシトール7.5g、5%パラジウム炭素触媒2.3gを加え、水素雰囲気下24時間室温で撹拌した。触媒を濾別後、溶媒を留去し、残渣をカラム精製により1L−1,2,5,6−tetra −O−メチル−chiro−イノシトールを得た(収量3.8g, 収率89%)。
[a]−67° (c 1.4, CHCl3 )
1 H NMR(CDCl3 ): d 3.82 (d, 2 H, J 2.1 Hz, H-1 and H-6), 3.78 (dd, 2 H, J 6.8, 2.1 Hz, H-3 and H-4), 3.49 (s, 6 H, Me), 3.51 (s, 6 H, Me), 3.38 (br. s, 2 H, H-2 および H-5)
13C NMR(CDCl3 ): d 81.5 (C-2 および C-5), 75.4 (C-1 および C-6), 72.6 (C-3 および C-4), 59.7 (CH3), 58.5 (CH3)
FAB+-MS (MeOH/Glycerol): Calcd for C24H33O6
(M−H)+ 237.1338 m/z. Found: 237.1335Anal. Calcd for C24H32O6 : C 50.84% H 8.53%.
Found: C 49.94% H 8.41%.
【0091】
製造例8
アルゴン雰囲気下、十分に乾燥させた1L−1,2,5,6−tetra −O−メチル−chiro−イノシトール536mgに、乾燥THF3.5mlに蒸留したクロロジフェニルホスフィン827 mlを加えた溶液を加えた。この溶液を室温下終夜撹拌し、濾別後溶媒を留去し、残渣を乾燥トルエンで洗浄し、乾燥させて1L−3,4−ビス(O−ジフェニルホスフィノ)−1,2,5,6−tetra −O−メチル−chiro−イノシトール(L−CandyPhos (Me−Ph))を得た(収量1.30g,収率95%)。
1 H NMR(CDCl3 ): d 7.55-6.96 (m, 20 H, Ar), 4.35 (m, 2 H, H-3 and H-4), 3.67 (d, 2 H, J 1.7 Hz, H-1 および H-6), 3.46 (s, 6 H, CH3), 3.38 (m, 2 H, H-2 および H-5), 2.67 (s, 6 H, CH3)
13C NMR(CDCl3 ): d 131.2, 130.9, 129.5, 129.2, 129.0, 128.3, 128.2, 127.9 (Ar), 83.0, 82.8 (C-3 および C-4), 81.4 (C-2 および C-5), 74.5 (C-1 および C-6), 59.8 (CH3), 56.6 (CH3)
31P NMR(CDCl3 ) 113.4.
【0092】
製造例9
THF5mlに1L−3,4−ビス(O−ジフェニルホスフィノ)−1,2,5,6−tetra−O−メチル−chiro−イノシトール(L−CandyPhos (Me−Ph))122mgを加え、THF5mlに[Rh(COD)Cl]2 49mgを滴下した。室温下、17時間撹拌した後、AgBF4 0.039gを加えて更に2時間撹拌した。濾過後溶媒を留去し、CHCl3 /ペンタンより再結晶して
[Rh(L−CandyPhos (Me−Ph))(COD)]BF4 のCHCl3 溶液として得た(収量0.078g,収率76%)。
31P NMR(CDCl3 ) 134.8,J=20Rh−P =3D 178 Hz.
Anal. Calcd. for C43H51BCl3 F4 O6 P2 Rh: C 50.54% H 5.03%. Found: C =50.44% H 5.00%.
【0093】
製造例10
2−O−メチル−D−chiro−イノシトールを出発原料として、製造例1〜9に準じて、[Rh(D-CandyPhos(Me-Ph))(COD)]BF4を製造した。
【0094】
製造例11
2−O−メチル−D−chiro−イノシトールより、製造例1〜7に準じて、1D−1,2,5,6−テトラ−O−メチル−chiro−イノシトールを製造した。1D−1,2,5,6−テトラ−O−メチル−chiro−イノシトール0.42g及びビス(3,5−ジメチルフェニル)クロロホスフィン1.11gより、製造例8に準じて、1D−3,4−ビス(O−3,5−ジメチルホスフィノ)−1,2,5,6−テトラ−O−メチル−chiro−イノシトールを得た(収量0.74g、収率57%)。
13C NMR(CDCl3) :144.8,142.8,137.4,136.8,136.7,130.8,219.5,129.2,128.8,126.6,126.3,83.6,83.4,81.5,74.7,59.7,56.8,21.6,21.5
31P NMR(CDCl3) :116.2
【0095】
製造例12
2−O−メチル−D−chiro−イノシトールより、製造例1〜5に準じて、1D−3,4−ジ−O−ベンジル−chiro−イノシトールを製造し、1D−3,4−ジ−O−ベンジル−chiro−イノシトール及び沃化エチルより、製造例6〜8に準じて、1D−3,4−ビス(O−ホスフィノ)−1,2,5,6−テトラ−O−エチル−chiro−イノシトールを得た。
13C NMR(CDCl3) :130.7,130.4,129.6,129.3,128.8,128.1,127.8,83.5,79.4,74.2,67.5,64.8,16.2,15.2
31P NMR(CDCl3) :110.7
【0096】
製造例1〜9を通して製造した[Rh(L−CandyPhos (Me−Ph))(COD)]BF4 を用いて、従来のロジウム−ホスフィン型錯体では選択還元困難な単純ケトンの一種3−キヌクリジノンの選択還元を同物質の誘導体化を行わない選択還元として、以下の方法にしたがっておこなった。
【0097】
比較例としては、従来の貴金属−ホスフィン型錯体としてはBINAP配位子を有する貴金属−ホスフィン錯体即ち、ロジウム−BINAP錯体およびルテニウム−BINAP錯体を用いた。実験の結果、本発明新規貴金属−ホスフィン錯体は、従来の触媒に比較して、優れた触媒作用、選択率を示した。
【0098】
実施例1
100mLオートクレーブに、3-キヌクリジノン1gとTHF10gを仕込み、ここに[Rh(L-CandyPhos(Me-Ph))(COD)]BF4 0.003gを含むTHF溶液1mLをアルゴン下で仕込み、オートクレーブ内に水素を導入し、水素圧を5MPaとし、室温で終夜水素化を行った。触媒を濾別後、残渣に水及びトルエンをそれぞれ10ml加えて水層を分取して濃縮乾固させた。収量0.85 g、旋光度 +10.5 (C=2, 1mol/L HCl)。
【0099】
実施例2
100mLオートクレーブに、3-キヌクリジノン1gとエタノール9mLを仕込み、ここに[Rh(L-CandyPhos(Me-Ph))(COD)]BF4 0.003gを含むTHF溶液1mLをアルゴン下で仕込み、オートクレーブ内に水素を導入し、水素圧を3.5MPaとし、室温で終夜水素化を行った。触媒を濾別後、残渣に水及びトルエンをそれぞれ10ml加えて水層を分取して濃縮乾固させた。収量0.85 g、旋光度 +10.5 (C=2, 1mol/L HCl)。
【0100】
実施例3
実施例2の方法に準じて、エタノールの代わりにメタノール9mLを仕込み、水素圧2.0MPa、30℃の条件で、3−キヌクリジノールの製造を行った。
【0101】
実施例4
実施例2の方法に準じて、反応温度40℃の条件で、3−キヌクリジノールの製造を行った。
【0102】
実施例5
100mLオートクレーブに、3-キヌクリジノン1gとエタノール9mLを仕込み、ここに[Rh(COD)Cl]2 0.002g及びL−CandyPhos(Me-Ph) 0.005 gを溶解したTHF溶液1mLをアルゴン下で仕込み、オートクレーブ内に水素を導入し、水素圧を3.5MPaとし、30℃で終夜水素化を行い、3−キヌクリジノールの製造を行った。
【0103】
実施例6
100mLオートクレーブに、3-キヌクリジノン1gとエタノール9mLを仕込み、ここにクロロノルボルナジエンロジウム(I)ダイマー 0.002g及びL−CandyPhos(Me-Ph) 0.005 gを溶解したTHF溶液1mLをアルゴン下で仕込み、反応温度30℃の条件下で、実施例2の方法に準じて3−キヌクリジノールの製造を行った。
【0104】
実施例7
200mLオートクレーブに、3-キヌクリジノン1gとエタノール9mLを仕込み、ここに[Rh(D-CandyPhos(Me-Ph))(COD)]BF4 0.003gを含むTHF溶液1mLをアルゴン下で仕込み、反応温度30℃の条件下で、実施例2の方法に準じて3−キヌクリジノールの製造を行った。
【0105】
実施例8
100mLオートクレーブに、[Rh(D-CandyPhos(Me-Ph))(COD)]BF4 30mgを含むTHF1mL溶液に、アルゴン雰囲気下で、(1R,2R)−(+)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン7mg、3-キヌクリジノン0.50g、エタノール9mLを仕込み、25℃の条件下において、実施例2の方法に準じて3−キヌクリジノールの製造を行った。
【0106】
実施例9
100mLオートクレーブに、[Rh(D-CandyPhos(Me-Ph))(COD)]Cl 30mgを含むTHF1mL溶液に、アルゴン雰囲気下で、(R)−1,1−ビス(p−メトキシフェニル)−2−イソプロピルエタン−1,2−ジアミン10 mg、3-キヌクリジノン0.50g、エタノール9mLを仕込み、実施例2の方法に準じて3−キヌクリジノールの製造を行った。
【0107】
実施例10
200mLオートクレーブに、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー 6.0mg及びD-CandyPhos(Me-Ph) 12.8mgを溶解したTHF1mL溶液に、アルゴン雰囲気下で、(1R,2R)−(+)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン7mg、3-キヌクリジノン0.50g、エタノール9mLを仕込み、実施例2の方法に準じて3−キヌクリジノールの製造を行った。
【0108】
実施例11
100mLオートクレーブに、3-キヌクリジノン1gとエタノール9mLを仕込み、ここに[Rh(COD)Cl]2 0.002g及びL−CandyPhos(Me-3,5-Ph) 0.0055 gを溶解したTHF溶液1mLをアルゴン下で仕込み、反応温度30℃の条件で、実施例2の方法に準じて3−キヌクリジノールの製造を行った。
【0109】
実施例12
100mLオートクレーブに、3-キヌクリジノン1gとエタノール9mLを仕込み、ここに[Rh(COD)Cl]2 0.002g及びD−CandyPhos(Et-Ph) 0.0055 gを溶解したTHF溶液1mLをアルゴン下で仕込み、反応温度30℃の条件で、実施例2の方法に準じて3−キヌクリジノールの製造を行った。
【0110】
比較例 1
200mLオートクレーブに、3-キヌクリジノン25gとメタノール75gを仕込み、ここに[RhCl(BINAP)]2 0.028gを仕込み、オートクレーブ内をアルゴンで置換した。更に、オートクレーブ内を水素で置換した後に、水素圧を8.0MPa、80℃で終夜水素化を行った。反応後、溶媒を減圧下で留去し、残渣に水及びトルエンをそれぞれ120ml加え、抽出後、水層を濃縮乾固させた。収量 25.21 g。旋光度 +1.3 (C=2, 1mol/L HCl)。
【0111】
比較例2
200mlオートクレーブに、3-キヌクリジノン25gとメタノール75gを仕込み、ここに[RuCl2(BINAP)] 0.028gを仕込み、比較例1の方法に準じて、3−キヌクリジノールを製造した。
【0112】
実施例13
200mLオートクレーブに、N,N-ジメチルアミノアセトン1.02gとエタノール9mLを仕込み、ここに[Rh(COD)Cl]2 5.0mg、D-CandyPhos(Me-Ph) 12.6mgを溶解したTHF溶液1mLをアルゴン雰囲気下で仕込み、オートクレーブ内に水素を導入し、水素圧を3.5MPaとし、40℃で終夜水素化を行った。反応終了後、触媒を濾した残渣に水及びトルエンをそれぞれ10ml加えて水層を分取して濃縮乾固させた。収量 0.89g。旋光度+13.1(C=4,エタノール)。
【0113】
比較例3
200mLオートクレーブに、N,N-ジメチルアミノアセトン1.02gをエタノール9mLに溶解し、ここに [Ru((R)-BINAP)((R,R)-DPEN)]Cl2 20mgのTHF溶液1mLをアルゴン雰囲気下で仕込み、オートクレーブ内に水素を導入し、水素圧を5.0MPaとし、80℃での条件下で実施例13の方法に準じて、N,N-ジエチルアミノ−2−プロパノールを製造した。
【0114】
【表1】
【0115】
【発明の効果】
本発明の新規な貴金属−ホスフィン錯体は、不斉還元用の触媒として有用である。
【0116】
また、本発明の不斉還元用触媒は、単純ケトン類においても煩雑な製造工程せず高選択率で不斉還元が可能である。
Claims (6)
- 一般式(1)
[M(L1)(L2 p)m(L3 q)n] abs(A-n)Y (1)
(ただし式中、Mはロジウム、イリジウムおよびルテニウムから選ばれる貴金属原子を表し、L1は一般式(2)
または一般式(3)
で示されるジホスフィン型2座配位子を表す。L2 は中性配位子を表し、pは中性配位子の配位座数を表し、mは中性配位子の配位子数を表す。L3はアニオン性配位子を表し、qはアニオン性配位子の配位座数を表し、nはアニオン性配位子の配位子数を表す。
式中、Mがロジウムまたはイリジウムのとき、m×p+n×q=2であり、A=1である。
式中、Mがルテニウムのとき、m×p+n×q=4であり、A=2である。
式中、abs(A−n)はA−nの絶対値を示す。このとき、A−nが0より大きいときはYは貴金属錯体の電荷に対するカウンターアニオンである。また、A−nが0のときYは必要とせず、A−nが0より小さい場合Yは貴金属イオンの電荷に対するカウンターカチオンである。)
で示される貴金属−ホスフィン錯体。 - 前記一般式(1)において、L2 が、アミン、ホスフィン、モノオレフィンの単座配位子またはジホスフィン(前記一般式(2)または(3)のジホスフィンを含む)、ジオレフィン等の2座配位子から選ばれ、L3がアセチルカルボキシレート、メタクリレート等のカルボキシレートまたはハロゲン類であることを特徴とする請求項1に記載の貴金属−ホスフィン錯体。
- 前記一般式(1)のYにおいて、カウンターアニオンがBF4 -、PF6 -、Cl-、ClO4 -およびBPh- 4から選ばれ、カウンターカチオンがNa+またはK+であることを特徴とする請求項1または2に記載の貴金属−ホスフィン錯体。
- 前記一般式(2)または一般式(3)のR1 またはR2 の炭化水素基が、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または置換基を有してもよいベンジル基を表すことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の貴金属−ホスフィン錯体。
- 前記請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の貴金属−ホスフィン錯体を含むことを特徴とする不斉還元用触媒。
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