JP4181386B2 - ビーム加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルスレーザービーム等のパルス状のエネルギービームを用いて樹脂、セラミック、金属等の加工対象物を加工するビーム加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のビーム加工装置として、Qスイッチを有するYAGレーザ装置から出射されるパルス状のレーザービームを用い、加工対象物であるワークを切断したり穴開けしたりする加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このビーム加工装置では、XYテーブル上にワークをセットし、パルス状のレーザービームの照射方向と交差する方向にワークを移動させながら、所定の繰り返し周波数のパルス状のレーザビームをワークに連続的に照射する。このようなビーム加工装置では、ワーク上の各照射スポットが一定のピッチで並ぶようにパルス状のレーザビームが照射される。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−226773号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のビーム加工装置では、YAGレーザ装置を構成するランプや光学部品の劣化等により、レーザービームの繰り返し周波数やYAGレーザ装置のランプ電流等の駆動条件を一定に保持したとしてもYAGレーザ装置から出射されるレーザービームのパワーが経時的に変化する場合があった。このようにレーザービームのパワーが変化すると、ワーク加工が不十分になったり、逆に過剰な加工によってワークに損傷を与えたりするおそれがあるという問題があった。
【0005】
また、上記従来のビーム加工装置で加工するワークの種類が変わった場合、そのワークに最適なレーザービームの繰り返し周波数やランプ電流等のYAGレーザ装置の駆動条件も変わってしまう場合があった。従来、このような各ワークについて最適なYAGレーザの駆動条件を見出すために、作業者がYAGレーザ装置の駆動条件の設定を変化させながらワーク加工を行なうという煩雑な作業を伴うという問題があった。
【0006】
なお、上記問題は、パルス状のエネルギービームとしてレーザービームを用いるビーム加工装置において発生するものであるが、電子ビームや荷電粒子ビームなどの他のエネルギービームを用いるビーム加工装置においても発生し得る。
また、上記問題は、パルス状のエネルギービームの照射ポイントを固定した状態でワークを移動させる場合だけでなく、ワークを固定配置した状態でパルス状のエネルギービームの照射ポイントを走査するように移動させる場合や、パルス状のエネルギービームの照射ポイント及びワークの両者を移動させる場合にも発生し得る。
【0007】
本発明は以上の背景の下でなされたものであり、その第1の目的は、予め設定された複数組の駆動条件それぞれについてエネルギービームの照射パワーを経時においても適正な値にすることができるビーム加工装置を提供することである。
また、第2の目的は、加工対象物の種類が変わった場合でも、その加工対象物に最適なビーム源の最適な駆動条件を容易に見出すことが可能となるビーム加工装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1の発明は、パルス状のエネルギービームを繰り返し出射するビーム源と、該ビーム源から出射されたエネルギービームを加工対象物に案内して照射するビーム照射手段と、該加工対象物と該加工対象物に対する該エネルギービームの照射ポイントとを相対移動させる相対移動手段と、加工制御データに基づいて該ビーム源及び該相対移動手段を制御する制御手段とを備えたビーム加工装置において、該加工対象物に照射される該エネルギービームの照射パワーを測定するパワー測定手段と、該エネルギービームの照射パワーが所定の目標範囲内に入るように予め求められた、該エネルギービームの繰り返し周波数と該ビーム源に供給する電流との組からなる複数組の駆動条件を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶されている該複数組の駆動条件のすべてについて該駆動条件を自動的に切り換えながら該パワー測定手段で該エネルギービームの照射パワーを測定するパワー測定用動作モードと、該複数組の駆動条件から選択された駆動条件に基づいて該ビーム源を制御して該加工対象物を加工する通常の加工動作モードとを選択的に実行する動作モード選択実行手段と、該パワー測定用動作モードが実行されたとき、該複数組の駆動条件のすべてについて該照射パワーの測定値が該目標範囲に入っているか否かを判定し、該照射パワーの測定値が該目標範囲から外れている判定された場合には、該照射パワーが該目標範囲に入るように、該当する駆動条件における該ビーム源に供給する電流の設定値を補正する駆動条件補正手段と、を設けたことを特徴とするものである。
なお、上記「加工対象物」には、エネルギービームが照射される面が平面のものだけでなく、エネルギービームが照射される面が円筒面などの曲面であるものも含まれる。
請求項1のビーム加工装置においては、動作モード選択実行手段でパワー測定用動作モードを選択して実行することにより、記憶手段に記憶されている複数組の駆動条件のすべてについて駆動条件を自動的に切り換えながらパワー測定手段でエネルギービームの照射パワーを測定する。この測定結果により、上記複数組の駆動条件それぞれについて照射パワーの測定値が目標範囲に入っているか否か判定し、照射パワーの測定値が目標範囲から外れている判定された場合には、照射パワーが目標範囲に入るように、該当する駆動条件におけるビーム源に供給する電流の設定値を補正する。これにより、上記複数組の駆動条件それぞれについてエネルギービームの照射パワーを経時においても適正な値にすることができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1のビーム加工装置において、上記エネルギービームの繰り返し周波数の範囲は、上記加工対象物と上記エネルギービームの照射ポイントとの相対移動の速度に基づいて設定されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2のビーム加工装置において、上記パワー測定用動作モードの実行時における上記パワー測定手段の測定結果に基づいて上記エネルギービームの照射パワーが予め設定した基準範囲から外れたときに警報を発する警報手段を設けたことを特徴とするものである。
請求項3のビーム加工装置においては、パワー測定用動作モードの実行時におけるパワー測定手段の測定結果に基づいて、エネルギービームのパワーが予め設定した基準範囲から外れたときに警報を発することにより、ビーム源を構成する部品の劣化等を作業者に知らせて部品交換や修理等を促すことができる。
【0011】
更に、上記第2の目的を達成するために、請求項4の発明は、請求項1、2又は3のビーム加工装置において、上記動作モード選択実行手段は、上記パワー測定用動作モードと、上記通常の加工動作モードと、上記ビーム源の複数の駆動条件を自動的に切り換えながら各駆動条件について上記加工対象物に加工条件設定用の加工パターンを形成する加工条件設定用動作モードを選択的に実行することを特徴とするものである。
請求項4のビーム加工装置においては、加工対象物の種類が変わった場合に動作モード選択実行手段で加工条件設定用動作モードを実行することにより、ビーム源の複数の駆動条件を自動的に切り換えながら各駆動条件について加工対象物に加工条件設定用の加工パターンを形成することにより、ビーム源の駆動条件の条件出しのための作業者の負担を軽減する。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4のビーム加工装置において、上記加工条件設定用動作モードの実行時に形成された上記加工対象物上の加工パターンを撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像された該加工パターンの画像に基づいて加工の良否を判定し、その判定結果に基づき必要に応じて通常の加工動作モードで用いる上記ビーム源の駆動条件を自動的に切り換える駆動条件切り換え手段とを設けたことを特徴とするものである。
請求項5のビーム加工装置においては、上記加工条件設定用動作モードの実行時に形成された加工条件設定用の加工パターンを撮像手段で撮像する。そして、撮像手段で撮像された加工パターンの画像に基づいて加工の良否を判定し、その判定結果に基づき必要に応じて通常の加工動作モードで用いる上記ビーム源の駆動条件を自動的に切り換えることにより、作業者による加工の良否の判定作業及びビーム源の駆動条件の切り換え作業の負担を軽減する。
【0013】
請求項6の発明は、請求項4又は5のビーム加工装置において、上記加工対象物の種類に関連付けて上記加工条件設定用動作モードで形成する上記加工条件設定用の加工パターンの形成条件を予め記憶しておくデータ記憶手段と、加工対象物の種類のデータを入力するデータ入力手段とを備え、上記動作モード選択実行手段を、該データ入力手段で入力された該加工対象物の種類のデータに対応する該加工パターンの形成条件を該データ記憶手段から読み出し、この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンを形成するように構成したことを特徴とするものである。
請求項6のビーム加工装置においては、作業者がデータ入力手段から加工対象物の種類のデータを入力すると、その加工対象物の種類のデータに対応した加工パターンの形成条件がデータ記憶手段から自動的に読み出される。この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンが形成される。よって、作業者が加工対象物の種類に基づいて上記加工パターンの形成条件を設定する作業が不要となる。したがって、上記加工条件設定用動作モードを実行するときの作業者の負担を軽減できるとともに、加工条件の設定のための時間を短縮することができる。更に、加工対象物の種類が変わるたびに作業者が判断して上記加工パターンの形成条件を設定する場合に比して、加工パターンの形成条件の誤設定の危険性が少なくなる。
【0014】
請求項7の発明は、請求項4又は5のビーム加工装置において、上記加工条件設定用の加工パターンの形成条件のデータを記憶するデータ記憶手段と、上記加工条件設定用動作モードで使用した該加工条件設定用の加工パターンの形成条件が新規な場合にその新規な形状条件を該データ記憶手段に蓄積していくデータ処理手段と、該データ記憶手段から選択する該加工パターンの形成条件を指定する条件指定手段とを備え、上記動作モード選択実行手段を、該条件指定手段で指定された該加工パターンの形成条件を該データ記憶手段から読み出し、この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンを形成するように構成したことを特徴とするものである。
請求項7のビーム加工装置においては、上記加工条件設定用動作モードで使用した加工条件設定用の加工パターンの形成条件が新規な場合にその新規な形状条件がデータ記憶手段に蓄積されていく。そして、上記加工条件設定用動作モードを実行する際に、作業者が、データ記憶手段に蓄積されている過去に使用された複数の加工パターンの形成条件から適切な形成条件を選択できる。よって、加工対象物の種類が変わるたびに作業者が判断して加工対象物に適した条件のデータを入力する場合に比して、加工パターンの形成条件の設定作業の時間を短くできるとともに、その設定作業の負担を軽減できる。
【0015】
請求項8の発明は、請求項7のビーム加工装置において、上記加工対象物の種類のデータを入力するデータ入力手段を備え、上記データ処理手段を、上記加工対象物の種類に関連付けて上記加工条件設定用の加工パターンの形成条件を蓄積していき、該データ入力手段で入力された該加工対象物の種類のデータに対応する該加工パターンの形成条件を該データ記憶手段から読み出し、この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンを形成するように構成したことを特徴とするくように構成したことを特徴とするものである。
請求項8のビーム加工装置においては、上記加工対象物の種類に関連付けて上記加工条件設定用の加工パターンの形成条件を蓄積している。そして、作業者がデータ入力手段から加工対象物の種類のデータを入力すると、その加工対象物の種類のデータに対応した加工パターンの形成条件がデータ記憶手段から自動的に読み出される。この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンが形成される。よって、作業者が加工対象物の種類に基づいて上記加工パターンの形成条件を設定する作業が不要となる。したがって、上記加工条件設定用動作モードを実行するときの作業者の負担を更に軽減できるとともに、加工条件の設定のための時間を短縮することができる。更に、加工対象物の種類が変わるたびに作業者が判断して上記加工パターンの形成条件を設定する場合に比して、加工パターンの形成条件の誤設定の危険性が少なくなる。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8のビーム加工装置において、上記パワー測定用動作モード又は上記加工条件設定用動作モードにおいて上記ビーム源の駆動条件の設定を変更したとき、該ビーム源から出射されるエネルギービームのパワーが安定するビーム安定化時間が経過した後に、上記エネルギービームのパワーの測定又は上記加工条件を見出すための加工を開始するように、上記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
請求項9のビーム加工装置においては、ビーム源の駆動条件の設定を変更したとき、ビーム源から出射されるエネルギービームのパワーが安定する安定化時間が経過した後に、上記エネルギービームのパワーの測定又は上記加工条件を見出すための加工を開始する。これにより、ビーム源の各駆動条件下で、エネルギービームのパワーが安定した状態でパワーの測定したり加工条件設定を行なったりすることができる。
【0017】
請求項10の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9のビーム加工装置において、上記加工対象物が、絶縁性基板上に形成された透明導電膜であり、該透明導電膜の一部をスリット状に除去する加工を行うことを特徴とするものである。
請求項10のビーム加工装置においては、絶縁性基板上の透明導電膜の一部をスリット状に除去する加工の際に、絶縁性基板とエネルギービームの照射ポイントとの間の相対移動の速度が変化する場合でも、上記相対移動の方向においてエネルギービームの各照射スポットが一定間隔で絶縁性基板上の透明導電膜に照射される。これにより、上記エネルギービームで透明導電膜が除去されたスリットの形状が均一になる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、ハイブリッド型のタッチパネルの絶縁性透明基板上に形成された透明導電膜の一部を、スリット状に除去して透明電極を形成する透明導電膜のビーム加工装置に適用した実施形態について説明する。
【0019】
図2は、本発明に係るビーム加工装置の概略構成図である。本ビーム加工装置は、パルス状のエネルギービームとしてのパルスレーザ光を繰り返し出射するビーム源としてのYAGレーザ装置1と、YAGレーザ装置1から出射されたパルスレーザ光を加工対象物に案内して照射するビーム照射手段2と、加工対象物と加工対象物に対する該エネルギービームの照射ポイントとを相対移動させる相対移動手段としてのXYテーブル5と、加工制御データに基づいてYAGレーザ装置1及びXYテーブル5等を制御する制御手段しての制御システム6とを備えている。
【0020】
上記YAGレーザ装置1は、YAGロッド101a、Qスイッチ101b、励起光源としてのランプ101c、ミラー101d,101e等を内蔵したレーザヘッド101と、Qスイッチ101bを駆動するQスイッチ駆動部102と、レーザヘッド101のランプ101cに電流(以下「ランプ電流」という。)を供給するレーザ電源103とを有している。上記Qスイッチ駆動部102は、制御システム6から送られてきたレーザ制御信号に基づいて、レーザヘッド101内のQスイッチ101bを駆動する。Qスイッチ101bをオンすると、レーザヘッド101から近赤外光(波長λ=1064nm)からなるパルスレーザ光が出射される。上記Qスイッチ駆動部102に入力するパルス状のレーザ制御信号の繰り返し周波数は20Hz〜20kHz(周期=50msec〜0.05msec)の範囲で変化させることができ、また、上記レーザ制御信号のパルス幅は80〜500nsecの範囲で変化させることができる。このQスイッチ駆動部102でレーザヘッド101内のQスイッチ101bを駆動することにより、上記繰り返し周波数が1kHz〜10kHzの範囲内で、レーザヘッド101からパルスレーザ光を出射することができる。
【0021】
上記レーザヘッド101内のYAGロッド101aは、希土類元素のNd(ネオジウム)をドープしたYAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)結晶であり、励起光源としてのランプ101cで励起される。励起光源としては、ランプのほか半導体レーザなどを使用することもできる。YAGロッド101aは、希土類元素のNd(ネオジウム)をドープしたYAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)結晶であり、ランプ101cはレーザ電源103からランプ電流Idが供給されることにより点灯する。このレーザ電源103からランプ101cに供給されるランプ電流Idは、制御システム6からレーザ電源103に送られてくる制御指令に基づいて変更することができ、これにより、YAGレーザ装置1から出射されるパルスレーザ光の出力を変更することができる。
【0022】
図3は、上記YAGレーザ装置1から出射されるパルスレーザ光の出力変化の一例を示す図である。ここで、上記レーザヘッド101のレーザ出射端で計測されたパルスレーザ光の平均出力Pa[W]とし、パルスレーザ光のレーザ出力波形の繰り返し周波数をFr[Hz]とし、同レーザ出力波形のパルス幅をτ[nsec]とすると、同レーザ出力波形のピーク出力Ppeak[W]は次式で与えられる。
【数1】
Ppeak={Pa/(Fr×τ)}×106
【0023】
上記ビーム照射手段2は、パルスレーザ光をガイドするステップインデックス型の光ファイバ201と、光ファイバ201でガイドされてきたパルスレーザ光を結像して加工対象物に照射するレーザ照射ヘッド202とを用いて構成されている。
【0024】
ITO(インジウム酸化スズ)からなる加工対象物としての透明導電膜4が表面に形成された透明ガラスや透明プラスチック材(例えばPET、ポリカーボネート)からなる透明絶縁性基板3は、XYテーブル5のリニアモータ502(例えば、サーボモータやステッピングモータ)で駆動される載置台501上に、図示しない吸引及び機械的なクランプ機構等によって固定される。この透明絶縁性基板3が固定された載置台501を駆動するリニアモータ502を制御システム6で制御することにより、上記透明導電膜4が形成された透明絶縁性基板3を、上記パルスレーザ光の照射方向に垂直な仮想面内で互いに直交するX方向及びY方向(図中の紙面に垂直な方向)に2次元的に移動させることができる。
【0025】
また、加工速度、XYテーブルの加速度、加工精度をより向上させるために、XYテーブル5については、発泡チタン、マグネジウム、酸化アルミナ系、アルミ合金系の超軽量素材で形成することが好ましい。
【0026】
また、載置台501の内部に貫通孔を形成して軽量化を図ってもよい。この貫通孔は、絶縁性透明基板3と透明導電膜4との一体物がシート状のものである場合の真空チャック用の気流経路を兼ねることもできる。
載置台501については、絶縁性透明基板3の少なくともパルスレーザ光が照射される部分の下側に凹部を形成し、絶縁性透明基板3の下面と載置台501の上面との間の距離をできるだけ長くするように構成することが好ましい。かかる構成により、絶縁性透明基板3を通過して載置台501の表面で反射したレーザー光が透明導電膜4にあたることによってその加工に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態では、上記XYテーブル5に、移動距離検出パルス信号生成手段としてのリニアスケール503が取り付けられている。このリニアスケール503は、X方向及びY方向の2方向のそれぞれについて設けられ、上記透明絶縁性基板3が載置された載置台501のX方向及びY方向の一定距離の移動ごとに移動距離検出パルス信号を生成する。この移動距離検出パルス信号をカウントすることにより、上記透明絶縁性基板3が載置された載置台501の移動距離がわかる。本実施形態では、この移動距離検出パルス信号に基づいて、上記透明絶縁性基板3が載置された載置台501の移動距離に同期させて各パルスレーザ光の照射タイミングを制御している。
【0028】
本実施形態では、上記リニアスケール503としては、目盛格子が互いに形成されたスケールと走査板とを非接触対向させて組み合わせることにより0.5μm〜1.0μm程度の分解能が得られるもの(例えば、ハイデンハイン株式会社製のオープンタイプ測長システム:商品名)を用いている。ここで、例えばリニアスケール503の分解能が1μmのときは1μmごとに1パルス出力されるので、上記透明絶縁性基板3が載置された載置台501の移動速度が1m/secの場合は、1MHzの周波数(周期=1μsec)で移動距離検出パルス信号が出力される。
なお、上記リニアスケール503は、加工精度や加工速度等の条件に応じて最適なものを適宜選択して用いられる。また、上記移動距離検出パルス信号生成手段は、X方向及びY方向の2方向のそれぞれについて上記透明絶縁性基板3が載置された載置台501の一定距離の移動ごとに移動距離検出パルス信号を生成するものであればよく、上記特定のリニアスケールに限定されるものではない。
【0029】
上記制御システム6は、ビーム加工装置全体を監視するとともに加工制御データとしてのCAM(Computer Aided Manufacturing)データに基づいて各部に制御指令を出すパーソナルコンピュータ等からなる上位コンピュータ装置601と、テーブル駆動制御装置(シーケンサ)602と、同期連動型運転用の制御回路基板603とを用いて構成されている。
【0030】
上記CAMデータは、CAD(Computer Aided Design)のデータに基づいてビーム加工装置の装置パラメータを考慮して生成され、例えば線分形状の各加工要素について▲1▼照射ポイントのピッチと▲2▼加工開始点の座標と▲3▼加工終了点の座標とが1組となったデータ構造となっている。
【0031】
上位コンピュータ装置601は、ユーザが加工速度Voのデータを入力するための加工速度入力手段、及びユーザが入力した加工速度Voのデータに基づいてXYテーブル5の載置台501の駆動条件とパルスレーザ光の照射条件とを設定する加工条件設定手段としても用いられる。
上位コンピュータ装置601に上記CAMデータが保存されたFDなどの記録媒体がセットされCAMデータが読み込まれる。このCAMデータの読み込みとともに、ユーザが希望する加工速度のデータが上位コンピュータ装置601に入力される。
なお、上記載置台501の最大移動速度である加工速度については、予め実験などで求められたデータに基づいて、図4に示すように上限値Vmaxが設定されており、ユーザが入力した加工速度Voの値が上限値Vmaxを超えている場合は、上位コンピュータ装置601のディスプレイ上に、入力値が上限値Vmaxを超えている旨の警告メッセージと、加工速度データの再入力を促すメッセージが表示される。
【0032】
上記上位コンピュータ装置601では、上記CAMデータとユーザが入力した加工速度Voとに基づき、各加工要素ごとに、▲1▼XYテーブル5の載置台501の移動開始点及び移動終了点の座標、▲2▼載置台501の加速領域における正の加速度α及び減速領域における負の加速度β(図4参照)、▲3▼載置台501の最大移動速度(=加工速度)、▲4▼上記パルスレーザ光の照射条件としてのレーザ電源103から供給されるランプ電流Id、などのデータが算出され、所定の記憶領域に記憶される。これらのデータの算出には、予め実験などで求められた最適範囲を含むデータテーブルが用いられる。
【0033】
表1は、本実施形態のビーム加工装置でランプ電流Id[A]と繰り返し周波数Fr[Hz]を変化させて加工品質を調べた実験で求められた最適範囲のデータテーブルの一例を示している。表1は、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる透明絶縁性基板3上に形成されたITO(インジウム酸化スズ)からなる透明導電膜4にスリットを形成する加工を行った実験の結果である。
【表1】
【0034】
上記表1の符号「A」で示した白抜きの部分は、良好なスリット加工ができた条件範囲を示している。一方、表1の符号「B」で示した部分は、パルスレーザ光の出力が不足してスリットにおける透明導電膜4が十分に除去されず絶縁不良が発生した条件範囲を示している。また、表1の符号「C」で示した部分は、パルスレーザ光の出力が強すぎてスリットが形成されている部分の透明絶縁性基板3や透明導電膜4にダメージが発生した条件範囲を示している。
ここで、パルスレーザ光の繰り返し周波数Frの範囲は、載置台501の駆動条件によって決定され、この繰り返し周波数Frの範囲において良好なスリット加工ができるように、上記表1に基づいて符号「A」で示した最適範囲に入るランプ電流Idが設定される。
なお、加工対象物に照射するパルスレーザ光のパワーをチェックするためのパワー測定用動作モードや、加工対象物の種類が変わったときのランプ電流Idの条件出し用の動作モードについては、後述する。
【0035】
上記テーブル駆動制御装置602は、上位コンピュータ装置601から送られてきた制御指令に基づいて、リニアモータ502の駆動を制御するものである。このテーブル駆動制御部602は、例えばリニアモータ502がサーボモータのときはサーボコントローラを用いて構成され、またリニアモータ502がパルスモータのときはパルスコントローラを用いて構成される。
【0036】
図5は、上記制御回路基板603の一構成例を示すブロック図である。この制御回路基板603は、CPU603aと、I/Oインタフェース603b、パルスカウンタ603cと、比較回路603dと、パルス幅整形回路603eと、スイッチ回路603fと、図示しないメモリ(RAM、ROM等)を用いて構成されている。
【0037】
上記I/Oインタフェース603bは、CPU603aと外部の上位パーソナルコンピュータ装置601との間でデータ通信を行うための信号処理を行う。
【0038】
上記パルスカウンタ603cは、リニアスケール503で生成された移動距離検出パルス信号Smのパルス数をカウントする。このパルスカウンタ603cによるカウント値Nmは、比較回路603dにおいてCPU603aから送られてきた基準値Nrefと比較され、両方の値が一致したとき比較回路603dからパルス信号が出力される。上記基準値Nrefは、加工条件に応じて任意に設定することができる。また、上記パルスカウンタ603cに入力される移動距離検出パルス信号Smは、上記XYテーブル5の載置台501の移動方向に応じて切り替えられる。例えば、載置台501をX方向に移動させるときは、X方向用のリニアスケール503から出力される
【0039】
上記パルス幅整形回路603dは、上記比較回路603cから出力された移動距離検出パルス信号Spのパルス幅を上記Qスイッチが動作可能なパルス幅まで広げる回路である。このパルス幅整形回路603dを調整することにより、YAGレーザ装置1から出射されるパルスレーザ光のパルス幅を変更することができる。
【0040】
上記スイッチ回路603eは、CPU603aからの制御指令に基づいて、連続加工と断続加工とを適宜切り替えて実行できるように、パルス幅整形回路603dから上記Qスイッチ駆動部102に出力されるレーザ制御信号をオン/オフ制御する回路である。
【0041】
図6及び図7は、上記制御回路基板603の各部の信号の一例を示すタイムチャートである。これらの図は、上記透明導電膜4上に照射されるパルスレーザ光の照射スポットのピッチを330μmに設定し、上記リニアスケール503の分解能が0.5μmであって0.5μmごとに一つのパルス信号Spを出力する場合について示している。上記基準値Nrefは660(=330μm/0.5μm)に設定し、上記XYテーブル5の載置台501の移動速度は、2m/secに設定している。
図6に示すように、上記XYテーブル5の載置台501の移動に伴ってリニアスケール503から繰り返し周波数f=4MHz(周期=0.25μsec)で移動距離検出パルス信号Smが出力される。この移動距離検出パルス信号Smがパルスカウンタ603cでカウントされる。そして、660個の移動距離検出パルス信号Smがカウントされるたびに、すなわち上記載置台501が330μm移動するたびに、比較器603dからパルス状のレーザ制御信号Spが出力される。そして、パルス幅整形器603eにより、比較器603dから出力されたレーザ制御信号Spの幅が、上記YAGレーザ装置1のQスイッチ101bの駆動に必要な幅まで広げられる。
次に、図7に示すように、所定のパルス幅に整形されたレーザ制御信号Sp'は、CPU603aで制御されるスイッチ回路603fにより、加工制御データに基づいてオン/オフ制御される。このスイッチ回路603fでオン/オフ制御されたレーザ制御信号Sp"が、Qスイッチ駆動部102に入力され、これにより、透明絶縁性基板3の移動距離に同期した所定のタイミングで、上記YAGレーザ装置1からパルスレーザ光が出射し、透明絶縁性基板3上の透明導電膜4に照射される。
このようにXYテーブル5の載置台501に固定された透明絶縁性基板3の移動距離に同期するように制御されたパルスレーザ光が、透明絶縁性基板3上の透明導電膜4に照射されることにより、図8(a)に示すように、透明導電膜4に照射されるパルスレーザ光の照射スポットLp(X)がX軸方向に一定のピッチで並ぶ。これにより、図8(b)に示すように透明導電膜4が均一な加工幅でスリット状に除去される。図8の例では、照射スポットLpが10個分並んだ長さのスリット4a(X)が2つ連続して形成されている。
【0042】
また、上記制御システム6は、上位コンピュータ装置601のデータ入力手段としてのキーボード等を使ってオペレータが入力したモード選択データに基づいて、通常の加工動作モード(以下、「通常加工モード」という。)と、パワー測定用動作モード(以下、「パワーチェックモード」という。)と、加工条件設定用動作モード(以下、「加工条件出しモード」という。)とを選択的に実行する動作モード選択実行手段としても機能している。さらに、この制御システム6は、パワー測定用動作モードの実行時におけるパワーメータの測定結果に基づいてパルスレーザ光の照射パワーが予め設定した基準範囲から外れたときに警報を発する警報手段としても機能している。この警報は、上位コンピュータ装置601のディスプレイに表示したり、上位コンピュータ装置601のスピーカから音情報を出力したりすることができ、この警報の態様は特に限定されない。
【0043】
図1は、上記構成のビーム加工装置のメイン制御のフローチャートである。まず、オペレータが上位PC装置601を操作し、通常の加工動作モード(以下、「通常加工モード」という。)、パワー測定用動作モード(以下、「パワーチェックモード」という。)、及び加工条件設定用動作モード(以下、「加工条件出しモード」という。)の3つの動作モードから、いずれか一つの動作モードを選択する。ここで、通常加工モードを選択すると、前述のように加工制御データに基づいて透明絶縁性基板3上の透明導電膜4をスリット状に除去して透明電極を形成する加工を実行するように制御される。一方、オペレータがパワーチェックモードや加工条件出しモードを選択すると、次に示すように制御される。
【0044】
図10はパワーチェックモードのフローチャートである。オペレータがパワーチェックモードを選択すると、図11に示すようにレーザ照射ヘッド202のレーザ出射口202a近傍に配置されたパワー測定手段としてのパワーメータ203を、図示しない駆動機構によって退避位置(実線の位置)から測定位置(一点鎖線の位置)へ移動させる(ステップ1)。
次に、レーザ駆動条件(繰り返し周波数Fr、ランプ電流Id)を、上記通常加工モードで用いるレーザ駆動条件の範囲から予め選ばれた複数のパワーチェック用のレーザ駆動条件の一つに初期設定される(ステップ2)。
次に、励起安定時間(本実施形態では10秒)が経過してレーザ発振が安定した後(ステップ3)、レーザ照射ヘッド202から出射されるパルスレーザ光の平均出力Pa[W]を照射パワーとして測定する(ステップ4)。この測定時間は例えば30秒程度に設定する。
次に、照射パワーの測定値が予め決められている許容下限値と比較され(ステップ5)、照射パワーの測定値が許容下限値よりも小さいときは、YAGレーザ装置1を構成するフラッシュランプ等の構成部品が劣化している旨をオペレータに報知する警報を発するように制御される(ステップ6)。この警報により、YAGレーザ装置1を構成するフラッシュランプ等の構成部品の劣化等をオペレータに知らせて部品交換や修理等を促すことができる。
一方、照射パワーの測定値が許容下限値以上のときは、その測定値が日常管理用の履歴データとして上位PC装置の記憶装置(例えばハードディクス)に保存される(ステップ7)。
次に、予め決められている複数のパワーチェック用のレーザ駆動条件についてパワーチェックが終了したか否かが判断され(ステップ8)、パワーチェックが済んでいないレーザ駆動条件があったときは、次のレーザ駆動条件(繰り返し周波数Fr、ランプ電流Id)に設定し(ステップ9)、上記ステップ3〜8を繰り返す。
すべてのパワーチェック用のレーザ駆動条件についてパワーチェックが終了すると、パワーメータ203を退避位置(図11の実線の位置)に移動させ、次の動作モードに備えられる。
【0045】
図12は加工条件出しモードのフローチャートである。オペレータは加工条件出しモードを選択するとともに、実際の加工と同じ材料で作成された加工条件出し用の加工素材をXYテーブル5の載置台501上にセットする(ステップ1)。
次に、パルスレーザ光の繰り返し周波数Frを、上記通常加工モードで用いることができる繰り返し周波数Frの範囲(例えば1kHz〜10kHz)から予め選ばれた複数の繰り返し周波数Frの一つ(例えば1kHz)に初期設定される(ステップ2)。
次に、実際の加工で用いる移動速度でXYテーブル5の載置台501をX方向に移動させながらパルスレーザ光を照射することにより、図13に示すように上記加工素材上の透明導電膜に横方向のスリット4a(X)を形成する。この横方向(X方向)のスリット形成を、レーザのランプ電流Id(20A〜30A)の設定を変更しつつ縦方向(Y方向)にずらしながら行なう。同様に、縦方向(Y方向)のスリット形成を、YAGレーザ装置のランプ電流Id(20A〜30A)の設定を変更しつつ横方向(X方向)にずらしながら行なう。以上の加工により、図13に示すように、ランプ電流Idが異なるスリットからなる格子状のパターンが形成される(ステップ3)。ここで、ランプ電流Idの設定を変えたときは、励起安定時間(本実施形態では10秒)が経過してレーザ発振が安定した後に、スリット加工を開始する。
次に、予め決められている複数の条件出し用のパターン加工が終了したか否かが判断され(ステップ4)、条件出し用のパターン加工が済んでいない繰り返し周波数があったときは、次の繰り返し周波数Frに設定し(ステップ5)、上記ステップ3を繰り返す。
すべての繰り返し周波数について条件出し用のパターン加工が終了すると、オペレータが加工素材上の加工パターンを目視して、スリットの幅の寸法、スリット内の白い輝点の存在、スリット交差部の損傷の有無等を判断パラメータとして、すべての繰り返し周波数について所望の加工パターンを形成することができる最適なランプ電流Idを決定する。図13の例では、黒丸の位置で示すように21Aを最適なランプ電流Idとして決定している。この決定した最適条件(ランプ電流Id)のデータがオペレータによって上位PC装置601から入力され、上位PC装置の記憶装置(例えばハードディクス)に保存され(ステップ6)、通常加工モードの実行時に用いられる。
【0046】
以上、本実施形態によれば、上記パワーチェックモードを実行することにより、YAGレーザ装置1の駆動条件(繰り返し周波数Fr、ランプ電流Id)を実際の加工時の条件に設定した状態で加工対象物に照射されるパルスレーザ光の照射パワーを測定し、パルスレーザ光の照射パワーが適正な値になっているか否かを容易に確認することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、上記加工条件出しモードを実行することにより、オペレータによる条件出しのための加工作業の負担を軽減し、加工対象物に最適なYAGレーザ装置1の駆動条件(ランプ電流Id)を容易に見出すことができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、XYテーブル5の載置台501の移動距離に同期するようにパルスレーザ光の照射タイミングを制御しているので、載置台501の加速域及び減速域においても上記均一なスリット加工が可能となる。
【0049】
なお、上記実施形態のパワーチェックモードでは、パワーメータ203によるパルスレーザ光の照射パワーの測定結果に基づいてYAGレーザ装置1のランプ電流Idを自動補正するように制御してもよい。このランプ電流Idを自動補正する駆動条件補正手段としては、上記制御システム6を用いることができる。そして、例えば、図14のフローチャートに示すように、各レーザ駆動条件(繰り返し周波数Fr、ランプ電流Id)でのパワー測定が終了した後(ステップ1〜9)、各測定値が予め設定した目標範囲内に入っているか否かを判定し(ステップ10)、目標範囲から外れているときはすべての繰り返し周波数Frについて照射パワーが目標範囲に入るようにランプ電流Idを補正する(ステップ11)。
【0050】
また、上記実施形態の加工条件出しモードでは、上記加工条件設定用の格子状の加工パターンの画像に基づいて加工の良否を判定し、その判定結果に基づいき、YAGレーザ装置1のランプ電流Idを必要に応じて切り換えて加工対象物に最適な値に設定するように制御してもよい。この加工パターンの加工の良否に対する判定結果に基づく駆動条件切り換え手段としては、上記制御システム6を用いることができる。そして、例えば、図15に示すように、条件出し用のパターン加工が終了した後(ステップ1〜5)、加工素材上に形成された格子状の加工パターンをCCDカメラ等の撮像手段で撮像し(ステップ6)、撮像された加工パターンの画像に基づいて加工の良否を判定し、その判定結果に基づいてYAGレーザ装置1のランプ電流Idをその加工対象物に最適な値を自動的に決定して必要に応じて切り換えて設定する(ステップ7)。
【0051】
また、上記実施形態において、加工条件設定用の加工パターンの形成条件を記憶しておくデータ記憶手段と、作業者が加工対象物の種類のデータを入力するためのデータ入力手段とを設けてよい。上記データ記憶手段は、ビーム加工装置で加工する加工対象物の種類に関連付けて上記加工条件出しモードで形成する加工条件設定用の加工パターンの形成条件をライブラリー化して予め記憶しておくものである。このデータ記憶手段としては、上記上位コンピュータ装置601のハードディクス等の記憶装置を用いることができる。また、上記データ入力手段しては、上位コンピュータ装置601のキーボードなどを用いることができる。そして、上記動作モード選択実行手段としての制御システム6は、上記データ入力手段で入力された加工対象物の種類のデータに対応する加工パターンの形成条件を上記データ記憶手段から読み出す。この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンが形成される。ここで、上記加工対象物の種類は、例えば加工対象物の基材の種類や加工面に形成された膜の厚みで分類される。
この場合は、作業者がデータ入力手段から加工対象物の種類のデータを入力すると、その加工対象物の種類のデータに対応した加工パターンの形成条件がデータ記憶手段から自動的に読み出される。この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンが形成される。よって、作業者が加工対象物の種類に基づいて上記加工パターンの形成条件を設定する作業が不要となる。したがって、上記加工条件設定用動作モードを実行するときの作業者の負担を軽減できるとともに、加工条件の設定のための時間を短縮することができる。更に、加工対象物の種類が変わるたびに作業者が判断して上記加工パターンの形成条件を設定する場合に比して、加工パターンの形成条件の誤設定の危険性が少なくなる。
【0052】
また、上記実施形態において、上記加工条件設定用の加工パターンの形成条件のデータを記憶するデータ記憶手段と、加工パターンの形成条件を蓄積していくデータ処理手段と、作業者が加工パターンの形成条件を指定する条件指定手段とを設けてもよい。上記データ処理手段は、上記加工条件設定用動作モードで使用した加工条件設定用の加工パターンの形成条件が新規な場合にその新規な形状条件を該データ記憶手段に蓄積していくものである。また、上記条件指定手段は、上記データ記憶手段から選択する加工パターンの形成条件を作業者が指定するためのものである。上記データ記憶手段としては、上記上位コンピュータ装置601のハードディクス等の記憶装置を用いることができる。また、上記データ処理手段としては、上位コンピュータ装置601を用いることができ、上記条件指定手段としては、上位コンピュータ装置601のキーボードなどを用いることができる。そして、上記動作モード選択実行手段としての制御システム6は、上記条件指定手段で作業者が指定した加工パターンの形成条件を上記データ記憶手段から読み出す。この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンが形成される。
この場合は、上記加工条件設定用動作モードを実行する際に、作業者が、データ記憶手段に蓄積されている過去に使用された複数の加工パターンの形成条件から適切な形成条件を選択できる。よって、加工対象物の種類が変わるたびに作業者が判断して加工対象物に適した条件のデータを入力する場合に比して、加工パターンの形成条件の設定作業の時間を短くできるとともに、その設定作業の負担を軽減できる。
【0053】
ここで、上記新規な加工条件設定用の加工パターンの形成条件は、その形成条件を用いた加工対象物の種類に関連付けてライブラリー化して蓄積していってもよい。この場合は、作業者が上記上位コンピュータ装置601のキーボードなどからなるデータ入力手段で加工対象物の種類のデータを入力したときは、その加工対象物の種類のデータに対応する加工パターンの形成条件が上記データ記憶手段から読み出される。この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンが形成される。よって、作業者が加工対象物の種類に基づいて上記加工パターンの形成条件を設定する作業が不要となる。したがって、上記加工条件設定用動作モードを実行するときの作業者の負担を更に軽減できるとともに、加工条件の設定のための時間を短縮することができる。更に、加工対象物の種類が変わるたびに作業者が判断して上記加工パターンの形成条件を設定する場合に比して、加工パターンの形成条件の誤設定の危険性が少なくなる。
【0054】
また、上記実施形態において、上記透明絶縁性基板3上の透明導電膜4に格子状のスリットを形成する場合は、まず、上記図8(a)に示すように交差点Pcをさけながら透明絶縁性基板3をX軸方向に移動しつつパルスレーザ光を照射することにより、所定長のX軸方向のスリット4a(X)を複数形成する。その後、上記交差点Pcを通過するように、透明絶縁性基板3をY軸方向に移動しつつパルスレーザ光を照射する。これにより、図16(a)に示すように、透明導電膜4に照射されるパルスレーザ光の照射スポットLp(Y)がY軸方向に一定のピッチで並ぶ。その結果、図16(b)に示すようにY軸方向においても透明導電膜4が均一な加工幅でスリット状に除去され、X軸方向のスリット4a(X)とY軸方向のスリット4a(Y)とが交差した格子状のスリットを形成することができる。
特に、図16で示した格子状のスリットの加工例では、上記交差点Pcにおいても他の照射ポイントと同様に、パルスレーザ光が1回しか照射されないので、上記交差点Pcにおける過剰なレーザ照射による損傷の発生などの不具合を防止することができる。
なお、図16の加工例では、X軸方向のスリット4a(X)のほうを上記交差点Pcを避けながら形成し、Y軸方向のスリット4a(Y)のほうを連続的に形成しているが、X軸方向のスリット4a(X)のほうを連続的に形成するようにしてもよい。
【0055】
図17は、本ビーム加工装置での透明導電膜4の加工によって電極パターンが形成されるタッチパネル基板を用いて構成されたタッチパネルの断面図である。また、図18(a)及び(b)はそれぞれ、同タッチパネルの分解斜視図及び平面図である。
図17に示すように、タッチパネルは、各透明導電膜4からなる透明電極が通常状態で接触しないように1組の上下タッチパネル基板7、8を所定の高さ(例えば9〜12μm)のスペーサ9を介して対向させた構造になっている。そして、このタッチパネルを図17中の上方から押圧すると、上タッチパネル基板7が2点鎖線で示すように変形し、上下のタッチパネル基板7、8の透明電極同士が接触する。この接触による上下透明電極間の抵抗の変化から、押圧されたか否か及び押圧された位置を知ることができる。また、このタッチパネルは、図18(a)及び(b)に示すように上下のタッチパネル基板7、8のそれぞれに、互いに直交するスリット7a、8aが各透明導電膜4に形成されている。
【0056】
本実施形態のビーム加工装置は、図18(a)及び(b)に示すスリット7a、8aを、透明導電膜4に形成するものである。真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等によって表面に透明導電膜4(厚さ=約500オングストローム)が形成された絶縁性透明基板3は、透明導電膜4側の上方に向けて載置台501上にセットされる。セットされた絶縁性透明基板3上の透明導電膜4は、所定のスポット径に絞られたパルスレーザ光が照射されながらXYテーブル5によって一方向に移動させられる。この移動の過程で、幅500〜1000[μm]程度のパルスレーザ光の照射部分が蒸発して透明導電膜4から除去され、各電極領域を絶縁するスリット7a、8aが形成される。
【0057】
本実施形態のビーム加工装置では、エッチング処理を伴うフォトリソグラフィー法を用いることなく、透明導電膜4を加工して絶縁性透明基板3上に複数の透明電極を形成することができる。このため、フォトレジストの現像液やエッチング液の廃液によって環境を汚すことなく、上下のタッチパネル基板7、8を製造することができる。また、透明電極のパターン形状を変える場合でも、フォトリソグラフィー用の遮光マスクを用いることなくCAMデータで透明導電膜4を加工してパターンに応じた複数の透明電極を形成することができる。このため、異なった電極パターンのタッチパネル基板7、8についてそれぞれ専用の遮光パターンの遮光マスクを用意しなければならず他品種少量生産が困難になったり、残留レジスト液によってワークを汚したりなどフォトリソグラフィー法による不具合が起こらず、リードタイムを短縮化してオンデマンドの要求に対しても十分に対応することができる。
【0058】
一方、フォトリソグラフィー法を用いた電極加工では、フォトレジストの現像液やエッチング液等の廃液が発生して環境を汚してしまうという不具合がある。また、透明電極のパターンを変える場合は、フォトリソグラフィー用の遮光マスクを新規に作成しなければならないため、加工効率が悪く、他品種少量生産への対応及び低コスト化が難しかった。特に、アナログ方式のタッチパネルのように透明導電膜4に数本のスリットを形成するような場合でも、数百本のスリットを形成するデジタル方式のタッチパネルの場合と同じフォトリソグラフィー工程が必要になってくるため、加工部分が少ないにもかかわらず廃液の低減及び低コスト化を図ることが難しかった。
【0059】
なお、上記実施形態では、XYテーブル5の載置台501をX軸方向あるいはY軸方向に移動させながら加工する場合について説明したが、本発明は、X軸方向及びY軸方向に交差する斜め方向に載置台501を移動させながら加工する場合にも適用できるものである。この斜め移動の場合は、CPU603aから比較器603dに送る基準値として、下記の数2に示す基準値Nref(X)又は数3に示す基準値Nref(Y)を用いる。式中の演算子「INT」は、かっこ内の数値に最も近い整数を求める演算子である。また、式の右辺の「Nref」はX軸方向あるいはY軸方向に移動する場合の基準値である。また、式中の「θ」は、図19に示すように移動方向とX軸方向とのなす角度であり、加工制御データから求められる。
【数2】
Nref(X)=INT(Nref×cosθ)
【数3】
Nref(Y)=INT(Nref×sinθ)
【0060】
ここで、例えばX軸方向のリニアスケール503から出力された移動距離検出パルス信号Sm(X)を用いる場合は、上記基準値として数1に示す基準値Nref(X)を用いる。一方、Y軸方向のリニアスケール503から出力された移動距離検出パルス信号Sm(Y)を用いる場合は、上記基準値として数2に示す基準値Nref(y)を用いる。
なお、上記載置台501の移動距離を精度よく検出するという観点から、載置台501の移動方向がX軸に近い場合は、上記X軸方向のリニアスケール503からの移動距離検出パルス信号Sm(X)と上記基準値Nref(X)とを組み合わせて用い、載置台501の移動方向がY軸に近い場合は、上記Y軸方向のリニアスケール503からの移動距離検出パルス信号Sm(Y)と上記基準値Nref(Y)とを組み合わせて用いのが好ましい。このような組み合わせを切り替えて用いることにより、上記パルスレーザ光の照射スポットのピッチに対応した移動距離検出パルス信号の数が極端に少なくなることがないので、上記載置台501の斜め方向の移動距離をX軸方向あるいはY軸方向に移動させる場合と同様に精度よく検出することができる。
【0061】
また、上記実施形態においては、透明絶縁性基板3上の透明導電膜4の一部を除去する加工を行なう場合について説明したが、本発明は、このような加工に限定されることなく適用することができるものである。
例えば、図20に示すように透明絶縁性基板3上の透明導電膜4の表面に形成された導電性ペースト(例えば銀ペースト)からなる配線パターン13の周囲に配線間絶縁用のスリット14を形成する場合にも用いることができ、同様な効果が得られるものである。
【0062】
また、本発明は、樹脂板にハーフエッチング加工や穴開け加工を行う場合にも適用できるものである。この場合は、加工部の深さも均一にすることができる。さらに、本発明は、上記スリット形成加工、ハーフエッチング加工、穴開け加工だけでなく、樹脂、セラミック、金属、フォトリソ用の感光層などの加工対象物に表面処理加工、フォトレジストへの露光を行う場合にも適用できるものである。
【0063】
また、上記実施形態では、リニアスケール503から出力される移動距離検出パルス信号を用いて、載置台501に載置された透明絶縁性基板3の移動距離に同期させてパルスレーザ光の照射タイミングを制御しているが、リニアスケールやリニアエンコーダ等の出力を用いて透明絶縁性基板3を載置した載置台501の移動速度を求め、この移動速度に同期するようにパルスレーザ光の照射タイミングを制御してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、Qスイッチを有するNd:YAGレーザから出射されたパルス状の近赤外レーザビーム(波長λ=1064nm)を用いた場合について説明したが、本発明は、このレーザビームに限定されることなく適用できるものである。例えば、Qスイッチを有する、Nd:YLFレーザ(波長λ=1047nm)、Nd:YVO4レーザ(波長λ=1064nm)、CO2レーザ、銅蒸気レーザ等のパルスレーザを用いる場合にも適用することができる。
また、本発明は、非線形光学結晶を用いて上記各種レーザの出力を波長変換したレーザビームを用いる場合にも適用することができる。例えば、Nd:YAGレーザと、LiB3O5(LBO)、KTiOPO4、β−BaB2O4(BBO)、CsLiB6O10(CLBO)等の非線形光学結晶とを組み合わせると、波長が355nm、266nmの紫外領域のレーザビームを得ることができる。また、上記透明導電膜を主にアブレーションで除去する紫外領域のレーザビームとしては、KrFエキシマレーザー等から出射されるパルス状の紫外光レーザビームを用いることもできる。
さらに、本発明は、レーザ光以外のパルス状の光ビーム、荷電粒子ビーム等の他のパルス状のエネルギービームを用いた場合にも適用が可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、パルスレーザ光の照射経路をレーザ照射ヘッド202で固定し、加工対象物を互いに直交するX方向及びY方向に移動させる場合について説明したが、本発明は、加工対象物を固定してセットし、レーザ等のエネルギービームをX方向及びY方向に移動させる場合や、エネルギービーム及び加工対象物の両方を移動させる場合にも適用できるものである。
【0066】
【発明の効果】
請求項1乃至10の発明によれば、パワー測定用動作モードを実行することにより、記憶手段に記憶されている複数組の駆動条件のすべてについて駆動条件を自動的に切り換えながらパワー測定手段でエネルギービームの照射パワーを測定する。この測定結果により、上記複数組の駆動条件それぞれについて照射パワーの測定値が目標範囲に入っているか否か判定し、照射パワーの測定値が目標範囲から外れている判定された場合には、照射パワーが目標範囲に入るように、該当する駆動条件におけるビーム源に供給する電流の設定値を補正する。これにより、上記複数組の駆動条件それぞれについてエネルギービームの照射パワーを経時においても適正な値にすることができるという効果がある。
特に、請求項3の発明によれば、ビーム源を構成する部品の劣化等を作業者に知らせて部品交換や修理等を促すことができるという効果がある。
請求項4乃至10の発明によれば、加工対象物の種類が変わった場合に加工条件設定用動作モードを実行することにより、ビーム源の駆動条件の条件出しのための作業者の負担を軽減し、加工対象物に最適なビーム源の駆動条件を容易に見出すことができるという効果がある。
特に、請求項5の発明によれば、作業者による加工の良否の判定作業及びビーム源の駆動条件の切り換え作業の負担を軽減することができるという効果がある。
特に、請求項6の発明によれば、上記加工条件設定用動作モードを実行するときの作業者の負担を軽減できるとともに、加工条件の設定のための時間を短縮することができる。しかも、加工対象物の種類が変わるたびに作業者が判断して上記加工パターンの形成条件を設定する場合に比して、加工パターンの形成条件の誤設定の危険性が少なくなるという効果がある。
特に、請求項7及び8の発明によれば、加工対象物の種類が変わるたびに作業者が判断して加工対象物に適した条件のデータを入力する場合に比して、加工パターンの形成条件の設定作業の時間を短くできるとともに、その設定作業の負担を軽減できるという効果がある。
特に、請求項8の発明によれば、上記加工条件設定用動作モードを実行するときの作業者の負担を更に軽減できるとともに、加工条件の設定のための時間を短縮することができる。しかも、加工対象物の種類が変わるたびに作業者が判断して上記加工パターンの形成条件を設定する場合に比して、加工パターンの形成条件の誤設定の危険性が少なくなるという効果がある。
特に、請求項9の発明によれば、ビーム源の各駆動条件下で、エネルギービームのパワーが安定した状態でパワーを測定したり加工条件設定を行なったりすることができるので、パワー測定や加工条件設定の精度の精度を高めることができるという効果がある。
特に、請求項10の発明によれば、導電性薄膜が形成された透明基板とエネルギービームとの間の相対移動の速度が変化する場合でも、エネルギービームで導電性薄膜が除去されたスリットの形状が均一になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るビーム加工装置のメイン制御のフローチャート。
【図2】同ビーム加工装置の概略構成図。
【図3】各パルスレーザ光の出力の時間変化を示す説明図。
【図4】透明絶縁性基板が載置された載置台の移動距離と移動速度との関係を示すグラフ。
【図5】同ビーム加工装置に用いる制御回路基板のブロック図。
【図6】リニアスケールの出力、比較器の出力及びパルス整形回路の出力を示すタイムチャート。
【図7】パルス整形回路の出力、スイッチ回路のオン/オフ制御及び出力を示すタイムチャート。
【図8】(a)は、透明絶縁性基板上の透明導電膜に照射されるパルスレーザ光の照射スポットの説明図。
(b)は、パルスレーザ光の照射によって形成された透明導電膜のスリットの説明図。
【図9】透明絶縁性基板が載置された載置台の移動距離と移動速度との関係を示すグラフ。
【図10】パワーチェックモードのフローチャート。
【図11】パワーメータの移動の様子を示した説明図。
【図12】加工条件出しモードのフローチャート。
【図13】加工条件出しに用いる格子状の加工パターンの説明図。
【図14】変形例に係るパワーチェックモードのフローチャート。
【図15】変形例に係る加工条件出しモードのフローチャート。
【図16】(a)は、透明絶縁性基板上の透明導電膜に照射されるY軸方向のパルスレーザ光の照射スポットの説明図。
(b)は、パルスレーザ光の照射によって形成された透明導電膜の格子状のスリットの説明図。
【図17】タッチパネルの拡大断面図。
【図18】(a)はタッチパネルの分解斜視図。
(b)は同タッチパネルの平面図。
【図19】透明絶縁性基板が載置された載置台の移動方向の傾き角度θの説明図。
【図20】タッチパネルの周端部の配線パターン及びその周囲のスリットの説明図。
【符号の説明】
1 YAGレーザ装置
2 ビーム照射手段
3 透明絶縁性基板
4 透明導電膜
5 XYテーブル
6 制御システム
101 レーザヘッド
101a YAGロッド
101b Qスイッチ
102 Qスイッチ駆動部102
103 レーザ電源
201 光ファイバ
202 レーザ照射ヘッド
203 パワーメータ
501 載置台
502 リニアモータ
503 リニアスケール
601 上位コンピュータ装置
602 テーブル駆動制御装置
603 制御回路基板
Claims (10)
- パルス状のエネルギービームを繰り返し出射するビーム源と、該ビーム源から出射されたエネルギービームを加工対象物に案内して照射するビーム照射手段と、該加工対象物と該加工対象物に対する該エネルギービームの照射ポイントとを相対移動させる相対移動手段と、加工制御データに基づいて該ビーム源及び該相対移動手段を制御する制御手段とを備えたビーム加工装置において、
該加工対象物に照射される該エネルギービームの照射パワーを測定するパワー測定手段と、
該エネルギービームの照射パワーが所定の目標範囲内に入るように予め求められた、該エネルギービームの繰り返し周波数と該ビーム源に供給する電流との組からなる複数組の駆動条件を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶されている該複数組の駆動条件のすべてについて該駆動条件を自動的に切り換えながら該パワー測定手段で該エネルギービームの照射パワーを測定するパワー測定用動作モードと、該複数組の駆動条件から選択された駆動条件に基づいて該ビーム源を制御して該加工対象物を加工する通常の加工動作モードとを選択的に実行する動作モード選択実行手段と、
該パワー測定用動作モードが実行されたとき、該複数組の駆動条件のすべてについて該照射パワーの測定値が該目標範囲に入っているか否かを判定し、該照射パワーの測定値が該目標範囲から外れている判定された場合には、該照射パワーが該目標範囲に入るように、該当する駆動条件における該ビーム源に供給する電流の設定値を補正する駆動条件補正手段と、
を設けたことを特徴とするビーム加工装置。 - 請求項1のビーム加工装置において、
上記エネルギービームの繰り返し周波数の範囲は、上記加工対象物と上記エネルギービームの照射ポイントとの相対移動の速度に基づいて設定されることを特徴とするビーム加工装置。 - 請求項1又は2のビーム加工装置において、
上記パワー測定用動作モードの実行時における上記パワー測定手段の測定結果に基づいて上記エネルギービームの照射パワーが予め設定した基準範囲から外れたときに警報を発する警報手段を設けたことを特徴とするビーム加工装置。 - 請求項1、2又は3のビーム加工装置において、
上記動作モード選択実行手段は、上記パワー測定用動作モードと、上記通常の加工動作モードと、上記ビーム源の複数の駆動条件を自動的に切り換えながら各駆動条件について上記加工対象物に加工条件設定用の加工パターンを形成する加工条件設定用動作モードを選択的に実行することを特徴とするビーム加工装置。 - 請求項4のビーム加工装置において、
上記加工条件設定用動作モードの実行時に形成された上記加工対象物上の加工パターンを撮像する撮像手段と、
該撮像手段で撮像された該加工パターンの画像に基づいて加工の良否を判定し、その判定結果に基づき必要に応じて通常の加工動作モードで用いる上記ビーム源の駆動条件を自動的に切り換える駆動条件切り換え手段とを設けたことを特徴とするビーム加工装置。 - 請求項4又は5のビーム加工装置において、
上記加工対象物の種類に関連付けて上記加工条件設定用動作モードで形成する上記加工条件設定用の加工パターンの形成条件を予め記憶しておくデータ記憶手段と、加工対象物の種類のデータを入力するデータ入力手段とを備え、
上記動作モード選択実行手段を、該データ入力手段で入力された該加工対象物の種類のデータに対応する該加工パターンの形成条件を該データ記憶手段から読み出し、この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンを形成するように構成したことを特徴とするビーム加工装置。 - 請求項4又は5のビーム加工装置において、
上記加工条件設定用の加工パターンの形成条件のデータを記憶するデータ記憶手段と、上記加工条件設定用動作モードで使用した該加工条件設定用の加工パターンの形成条件が新規な場合にその新規な形状条件を該データ記憶手段に蓄積していくデータ処理手段と、該データ記憶手段から選択する該加工パターンの形成条件を指定する条件指定手段とを備え、
上記動作モード選択実行手段を、該条件指定手段で指定された該加工パターンの形成条件を該データ記憶手段から読み出し、この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンを形成するように構成したことを特徴とするビーム加工装置。 - 請求項7のビーム加工装置において、
上記加工対象物の種類のデータを入力するデータ入力手段を備え、
上記データ処理手段を、上記加工対象物の種類に関連付けて上記加工条件設定用の加工パターンの形成条件を蓄積していき、該データ入力手段で入力された該加工対象物の種類のデータに対応する該加工パターンの形成条件を該データ記憶手段から読み出し、この読み出された形成条件で上記加工条件設定用の加工パターンを形成するように構成したことを特徴とするビーム加工装置。 - 請求項1、2、3、4、5、6、7又は8のビーム加工装置において、
上記パワー測定用動作モード又は上記加工条件設定用動作モードにおいて上記ビーム源の駆動条件の設定を変更したとき、該ビーム源から出射されるエネルギービームのパワーが安定するビーム安定化時間が経過した後に、上記エネルギービームの照射パワーの測定又は上記加工条件設定用の加工パターンの形成を開始することを特徴とするビーム加工装置。 - 請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9のビーム加工装置において、
上記加工対象物が、絶縁性基板上に形成された透明導電膜であり、
該透明導電膜の一部をスリット状に除去する加工を行うことを特徴とするビーム加工装置。
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