図1は、本発明の実施の形態によるレーザマーカの概略構成の一例を示した斜視図であり、加工対象物に文字などを印字するレーザマーカ100が示されている。このレーザマーカ100は、レーザ光を生成するレーザ発振器が内蔵されたヘッドユニット10と、伝送ケーブル20と、コントローラユニット30と、動作状態を表示するコンソール40により構成される。
ヘッドユニット10は、例えば、製造ライン上に配置され、励起光によるレーザ媒質の励起によって生成されたレーザ光が加工対象物に向けて出射される。このレーザ光は、ヘッドユニット10の筐体に設けられた出射口11から出射される。
伝送ケーブル20は、レーザ発振器内のレーザ媒質を励起するための励起光を伝送する光ファイバからなる。コントローラユニット30は、励起光を生成する光源装置及びその制御装置からなる。コンソール40は、動作状態を表示するための表示画面41と、操作入力を行うためのタッチパネルとからなるユーザインターフェースである。
このレーザマーカ100では、レーザ発振器や励起光の光源装置の経年劣化によるレーザ出力の低下を検知するために、レーザ光の強度(パワー)を計測するレーザパワーの計測器がヘッドユニット10内に設けられている。この計測器は、レーザ光の一部を受光してレーザパワーの計測を行っている。
ここでは、パワーモニタ200を用いてレーザ出力が検査されるものとする。このパワーモニタ200は、ヘッドユニット10から出射されたレーザ光を受光してレーザパワーを計測する計測部210と、計測結果を表示する表示部220とからなる外部モニタ装置である。
計測部210は、サーモパイル(熱電堆)などの感熱素子からなり、受光量に応じた電気信号が出力される。表示部220では、計測部210により計測されたレーザパワーが表示エリア221内に表示される。ここでは、計測部210がヘッドユニット10直下の印字点に配置されるものとする。
図2は、図1のレーザマーカ100の要部における構成例を示したブロック図であり、ヘッドユニット10及びコントローラユニット30内の構成が示されている。このヘッドユニット10は、出射口11、レーザ発振器12、分光器13、レーザパワー計測器14、増幅回路15及びシャッタ16からなる。
レーザ発振器12は、コントローラユニット30からの励起光によってレーザ光を生成するレーザ光の生成装置であり、レーザ出力をオン又はオフするためのQスイッチが設けられている。このQスイッチは、レーザ光の光路上に配置され、高周波信号が供給されると、レーザ光を遮断し、レーザ出力がオフされる。一方、直流信号(周波数0Hz)が供給されると、レーザ光を通過させ、レーザ出力がオンされる。
ここでは、Qスイッチに高周波信号を供給することによりレーザ光が遮断された状態を閉鎖状態と呼び、レーザ光の通過状態をQスイッチの開放状態と呼ぶことにする。また、レーザ発振器12は、Y(イットリウム)及びV(バナジウム)の酸化物であるYVO4をレーザ媒質として有し、電場ベクトルの振動方向に偏りを有する直線偏光が生成されるものとする。
分光器13は、レーザ発振器から出射されたレーザ光の一部を分岐させるための光学素子であり、レーザ発振器12から出射口11までの光路上に配置されている。例えば、平板形状の透明ガラスからなるハーフミラーが分光器13として用いられ、レーザ発振器12からのレーザ光に対して、そのP偏光成分が約45度の角度で入射するように配置されている。すなわち、この分光器13は、レーザ光の光路に対して概ね45度、好ましくは、45度傾けて配置されている。P偏光成分は、分光器13における反射面に関して、入射光線及び反射光線を含む平面に対して電場ベクトルの振動方向が常に平行となる成分である。
ここでは、分光器13を構成する平板形状のガラスが、材質BK7又は石英からなるものとする。また、上記平板形状のガラスは、均質に形成されているものとする。
一般に、分光器13で分岐されるレーザ光のレーザパワーが低いと、温度変化や分光器13の経年劣化によって分岐の比率が変化してしまうことが考えられる。従って、レーザパワーの計測精度を向上させるという観点から、分光器13で分岐されるレーザ光は、レーザパワーが高いほうが好ましい。一方、分岐されるレーザ光のレーザパワーを高くすると、損失が大きくなるので、出射口から出射されるレーザ光のレーザパワーが低下してしまう。このため、分光器13では、1〜5%程度を分岐させるのが良いと考えられる。
また、一般に、平板形状のガラスにおける反射率は、その屈折率によって定められる。BK7の屈折率は、1.507、石英ガラスの屈折率は、1.453である。YVO4をレーザ媒質とするレーザ発振器12から出力されるレーザ光は、直線偏光であるので、そのP偏光成分を分光器13の反射面に概ね45度の角度で入射させると、入射レーザ光の数%程度を分岐させることができる。ここで、P偏光成分を45度の角度で入射させる場合の分光器13における光学ガラスの反射率は、0.88%であり、ガラス板の両方の面で反射させることにより、トータルで入射レーザ光の1.76%を分岐させることができる。
また、分光器13としてBK7や石英からなるガラスを用いることにより、温度特性が向上するので、温度変化によって分岐の比率が変化するのを抑制することができる。
ここでは、この様な分光器13により分岐されたレーザ光をレーザ分岐光と呼ぶことにする。分光器13を透過した残りのレーザ光は、直進して出射口11に達することとなる。なお、レーザ光を走査させるための光学素子は省略されているものとする。
レーザパワー計測器14は、分光器13により分岐されたレーザ分岐光を受光してレーザパワーを計測する計測装置である。このレーザパワー計測器14は、サーモパイル(熱電堆)などの感熱素子からなり、受光量に応じた電気信号を生成する動作が行われる。サーモパイルは、異なる金属を組み合わせて構成される熱電対を複数個直列に接続して出力電圧を高くした素子である。
増幅回路15は、レーザパワー計測器14からの電気信号を電力増幅してコントローラユニット30へ出力する動作を行っている。
ここでは、レーザパワー計測器14により単位時間当たりのエネルギーがレーザパワーとして計測されるものとする。
シャッタ16は、レーザ光の遮断装置であり、分光器13と、出射口11との間に配置されている。このシャッタ16は、レーザ光を遮断するための遮光板16aが設けられており、回転軸16bを中心として回転させることにより、分光器13を透過したレーザ光を必要に応じて遮断することができる。遮光板16aは、例えば、アルミニウムなどの金属からなる。
ここでは、シャッタ16を回転させることによりレーザ光が遮断された状態を閉鎖状態と呼び、レーザ光の通過状態をシャッタ16の開放状態と呼ぶことにする。シャッタ16は、通常、開放状態となっているものとする。
コントローラユニット30は、LD31、駆動回路32、制御部33及びA/Dコンバータ34からなる。LD(レーザダイオード)31は、励起光を生成する光源装置である。駆動回路32は、LD31に電流を供給して励起光を生成させる動作を行っている。ここでは、LD31に供給される電流をLD電流と呼ぶことにする。このLD電流の大きさが励起光の強度を定めることから、LD電流を制御することによってレーザパワーを調整することができる。
A/Dコンバータ34は、増幅回路15からの電気信号を所定の周期でサンプリングしてデジタル化し、レーザパワーの計測データとして制御部33へ出力する動作を行っている。制御部33は、駆動回路32を制御してレーザパワーの調整を行うとともに、A/Dコンバータ34からの計測データに基づいてレーザ出力を監視する動作を行っている。
ここでは、レーザ発振器12が最大約14W(ワット)のレーザ光を生成し、その1.76%がレーザパワー計測器14で受光されるものとする。従って、レーザパワー計測器14では、最大約0.25Wのレーザ励起光を受光することとなる。
図3は、図1のレーザマーカ100における制御部33の構成例を示したブロック図であり、制御部33内の機能構成の一例が示されている。この制御部33は、出力調整部21、表示調整データ指定部1、パワー変換テーブル調整部2、パワー変換テーブル記憶部3、パワー変換部4、パワー積分処理部5、表示処理部6、警報閾値記憶部7、警報報知部8及びレーザパワー履歴保持部9により構成される。
出力調整部21は、出力調整用テーブル校正部22、出力調整用テーブル記憶部23及びLD駆動制御部24からなり、レーザパワーを調整するためのLD電流指令を駆動回路32へ出力するとともに、A/Dコンバータ34からの計測データに基づいて出力調整用テーブルを更新する動作を行っている。
出力調整用テーブルは、LD電流の値がレーザパワーのパワーレベルに対応づけて保持されたデータである。出力調整用テーブル記憶部23は、この様な出力調整用テーブルを保持するための不揮発性のメモリである。LD駆動制御部24は、出力調整用テーブル記憶部23内の出力調整用テーブルに基づいて、LD電流指令を生成する動作を行っている。
出力調整用テーブル校正部22は、経年劣化によるレーザ出力の低下を補正するために、計測データに基づいて出力調整用テーブル記憶部23内の出力調整用テーブルを更新する動作を行っている。
ここでは、出力調整部21が、異なるパワーレベルのレーザ光を順に生成させながら計測データを取得し、取得した計測データに基づいて出力調整用テーブルを自動的に校正する機能(レーザパワーのオートキャリブレーション機能)を有するものとする。このレーザパワーのオートキャリブレーション処理では、出力調整用テーブルにおけるLD電流値が計測データに基づいて補正される。
また、出力調整用テーブル記憶部23には、出力調整用テーブルとして、予め定められた書き換え不可能な第1調整用テーブルと、レーザパワーのキャリブレーションにより書き換え可能な第2調整用テーブルとが保持されているものとする。
ここでは、計測データが示すレーザパワーを計測パワーと呼ぶことにし、コンソール40上に表示させるレーザパワーを表示パワーと呼ぶことにする。
表示調整データ指定部1は、表示調整用の表示パワーをユーザが指定するための手段である。パワー変換テーブル調整部2は、パワーモニタ200によるレーザパワーの表示とのずれを補正するために、パワー変換テーブルを更新する動作を行っている。
パワー変換テーブルは、計測パワーを表示パワーに変換するためのテーブルであり、計測パワー及び表示パワーの対応関係を示すデータからなる。ここでは、パワー変換テーブルが複数組の計測パワー及び表示パワーからなるものとする。パワー変換テーブル記憶部3は、この様なパワー変換テーブルを保持するための不揮発性のメモリである。
具体的には、ユーザの表示調整指示に基づいてレーザパワー計測器14により計測された計測パワーを所定の表示パワーに対応づけるように、パワー変換テーブルが更新される。ここでは、表示調整指示に基づいて計測された計測パワーをユーザが指定した表示調整用の表示パワーに対応づけるように、パワー変換テーブルが更新されるものとする。
また、この様なパワー変換テーブルの更新処理をパワーモニタ調整と呼ぶことにする。このパワーモニタ調整処理では、計測パワー及び表示パワーからなるデータセットが計測パワー及び表示調整用の表示パワーにより補正される。
また、パワー変換テーブル記憶部3には、パワー変換テーブルとして、予め定められた書き換え不可能な第1変換テーブルと、パワーモニタ調整により書き換え可能な第2変換テーブルとが保持されているものとする。
パワー変換部4は、パワー変換テーブル記憶部3内のパワー変換テーブルを用いて、レーザパワー計測器14により求められた計測パワーを表示パワーに変換する処理を行っている。計測パワーがパワー変換テーブル上にない場合には、線形補間により当該計測パワーに対応する表示パワーが求められる。
パワー積分処理部5は、レーザ照射期間及び照射終了後の所定期間における計測パワーを時間積分し、マーキングエネルギーとしてパワー変換部4へ出力する動作を行っている。表示処理部6は、パワー変換部4により求められた表示パワーを表示するための表示データを生成し、コンソール40へ出力する動作を行っている。
ここでは、ユーザが選択したパワー変換テーブルを用いて計測パワーから表示パワーが求められ、ユーザによるパワー変換テーブルの選択結果が表示されるものとする。また、表示処理部6により、表示パワーとして単位時間当たりのエネルギーが表示され、或いは、ユーザが指定する基準表示パワーに対する比率が表示されるものとする。
また、パワー積分処理部5により積分された計測パワー、すなわち、マーキングエネルギーが必要に応じて表示パワーに変換され、表示パワーとしてレーザ照射のエネルギーが表示されるものとする。
警報閾値記憶部7は、ユーザにより指定された警報閾値を保持する不揮発性メモリである。この警報閾値は、表示パワーの異常を検知するための閾値データであり、書き換え可能に保持される。警報報知部8は、レーザパワー計測器14により計測されパワー変換部4により求められた表示パワーを警報閾値記憶部7内の警報閾値と比較し、その比較結果に基づいて警報報知を行っている。
ここでは、パワー変換テーブルを更新する際に、警報閾値が更新後のパワー変換テーブルに応じた値となるように、警報閾値記憶部7に保持されている警報閾値も更新するか否かが選択可能であるものとする。
レーザパワー履歴保持部9は、表示パワーの最小値及び最大値を保持するレーザパワーの履歴保持手段である。ここでは、パワー変換テーブルを更新する際に、表示パワーの最小値及び最大値が更新後のパワー変換テーブルに応じた値となるように、レーザパワー履歴保持部9が保持している最小値及び最大値が更新されるものとする。
図4は、図1のレーザマーカ100の構成例を示した図であり、第1調整用テーブルA1及び第2調整用テーブルA2が示されている。第1調整用テーブルA1は、例えば、レーザマーカ100の製造時に書き込まれるLD電流データからなるテーブルである。一方、第2調整用テーブルA2は、製造時には第1調整用テーブルA1と同じデータが書き込まれているが、レーザパワーのキャリブレーションにより書き換え可能なテーブルとなっている。
この例では、異なる7つのパワーレベルのそれぞれに対応づけてLD電流の値が保持されている。レーザ照射を行う際には、これらのパワーレベルの1つを指定することにより、LD電流が決定される。ここでは、この様なレーザパワーのパワーレベルを制御パワーと呼ぶことにする。
第1調整用テーブルA1では、制御パワーが出力レンジの上限値に対する比率により表され、制御パワー0,20,40,60,80及び100%(パーセント)のそれぞれに対応づけて、LD電流10,20,30,40,50及び60A(アンペア)が保持されている。第2調整用テーブルA2には、キャリブレーション後のLD電流が保持されている。
図5は、図1のレーザマーカ100における制御部33の動作の一例を示した図であり、計測データとして用いるD値が一定時間ごとに得られる様子が示されている。A/Dコンバータ34が一定時間ごとにサンプリングしたサンプリングデータは、バラツキが大きい。そこで、制御部33では、このサンプリングデータを平均化する処理が行われる。
具体的には、A/Dコンバータ34からのサンプリングデータを所定時間について平均し、その区間平均値をD値として一定時間ごとに生成する処理が行われる。この例では、時刻t1からt2までのサンプリングデータを時間(t2−t1)で平均して第1のD値が求められ、時刻t2からt3までのサンプリングデータを時間(t3−t2=t2−t1)で平均して第2のD値が求められている。また、時刻t3からt4までのサンプリングデータを時間(t4−t3=t3−t2)で平均して第3のD値が求められている。ここでは、1ms(ミリ秒)ごとにサンプリングデータが得られるものとする。
図6は、図1のレーザマーカ100における制御部33の動作の一例を示した図であり、印字開始直後のD値の様子が示されている。時刻T0に印字が開始されるとすると、D値は、印字開始直後から単調に増加し、やがて飽和に達する。D値は、通常、印字開始から3秒程度で飽和に達し、安定状態となる。この時刻をT1とする。
ここで、時刻T1以降の時刻tにおけるD値の時間平均を安定D値と呼ぶことにし、この安定D値を次式により定めるものとする。
この様にして定められる安定D値は、時刻T1から所定時間(通常、2秒程度)が経過した時刻T2(T2>T1)以降にはほぼ一定値となることが予想される。そこで、印字開始から5秒程度経過した時刻T2以降に安定D値が生成されるものとする。安定D値は、この様にして求めても良いが、印字終了時におけるレーザ光出射終了前の所定期間、例えば、2秒間のD値を安定D値としても良い。
制御部33では、この様にして得られる安定D値が必要に応じて計測データとして用いられる。ここでは、平均化する前の計測データ、D値及び安定D値が計測パワーに含まれるものとする。
図7は、図1のレーザマーカ100の構成例を示した図であり、第1変換テーブルB1及び第2変換テーブルB2が示されている。第1変換テーブルB1は、例えば、レーザマーカ100の製造時に書き込まれる複数組の安定D値及び表示パワーからなるテーブルである。一方、第2変換テーブルB2は、製造時には第1変換テーブルB1と同じデータが書き込まれているが、パワーモニタ調整により書き換え可能なテーブルとなっている。
この例では、4つの組の安定D値及び表示パワーが保持されている。この表示パワーは、単位時間当たりのエネルギーとなっている。レーザパワーをコンソール40上に表示する際には、これらのパワー変換テーブルが参照され、パワー変換テーブルに基づいて計測パワーを表示パワーに変換してレーザパワーの表示値が決定される。
出力調整用テーブルが、制御パワーごとのLD電流値からなるのに対して、パワー変換テーブルは、計測パワー及び表示パワーからなるデータセットにより構成される。
第1変換テーブルB1では、安定D値361,480,730及び1040のそれぞれに対応づけて、表示パワー0,2.6,7.8及び13W(ワット)が保持されている。第2変換テーブルB2には、表示調整後の安定D値及び表示パワーが保持されている。具体的には、安定D値360,477,774及び1052のそれぞれに対応づけて、表示パワー0,2.61,7.85及び13.05W(ワット)が保持されている。
レーザ分岐光を計測して得られた安定D値から表示パワーを求める際、当該安定D値がパワー変換テーブル上になければ、パワー変換テーブルに基づく線形補間により表示パワーが求められる。
例えば、第2変換テーブルB2が選択されている場合、安定D値=555であれば、表示パワーは、2.61+(7.85−2.61)×(555−477)÷(774−477)=3.99Wとなる。
一般に、シャッタ16が閉まっている場合には、シャッタ16による反射光が受光されることによって、開いている場合に比べて計測パワーが大きくなることが考えられる。そこで、ここでは、シャッタ16が閉まっている場合には、反射光による誤差を補正するために、補正処理が行われるものとする。また、制御部33では、必要に応じて表示パワーをレーザ照射のエネルギーに変換する処理が行われるものとする。
<ユーザインターフェース>
図8は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、点検モードにおいてコンソール40上に表示される設定画面50の一例が示されている。この設定画面50は、レーザパワーを計測してレーザ出力を点検する際の画面表示である。この設定画面50には、上段に、ゼロ点補正の開始ボタン52が配置されている。この開始ボタン52は、パワー変換テーブルのゼロ点補正(後述)を実行させるためのアイコンである。
設定画面50の中段には、制御パワーの入力ボックス53a、Qスイッチ周波数の入力ボックス53b、チェックボックス53c及びレーザパワー測定の開始ボタン54が配置されている。入力ボックス53aは、レーザパワー測定(後述)時における制御パワーを指定するための入力欄であり、出力レンジの上限値に対する比率を指定することができる。入力ボックス53bは、レーザパワー測定時におけるQスイッチの周波数を指定するための入力欄である。チェックボックス53cは、レーザパワー測定時にレーザ光を印字点に照射するか否かを選択するための入力欄である。
設定画面50の下段には、キャリブレーション方法の入力ボックス55a、決定ボタン55b、更新日の表示欄56及びキャリブレーションの開始ボタン57が配置されている。入力ボックス55aは、レーザパワーのキャリブレーションを実行する際のキャリブレーション方法を指定するための入力欄である。決定ボタン55bは、入力ボックス55aで指定されたキャリブレーション方法でキャリブレーションを実行させるためのアイコンである。
表示欄56には、レーザパワーのキャリブレーションにより出力調整用テーブルの更新が行われた最後の日付が表示される。開始ボタン57は、レーザパワーのキャリブレーションを実行させるためのアイコンである。この設定画面50は、クローズボタン51又は58を操作することにより閉じられ、通常の運転モードに復帰する。
<スタートアップルーチン>
図9及び図10のステップS101〜S117は、図1のレーザマーカ100におけるスタートアップ時の動作の一例を示したフローチャートである。レーザマーカ100は、電源が投入されると、まず、パワー変換テーブルのゼロ点補正を実行する(ステップS101)。制御部33は、ゼロ点補正処理が終了すると、シャッタ16及びQスイッチを閉鎖し、所定の制御パワーを指定してレーザ光を生成させる(ステップS102,S103)。
次に、制御部33は、レーザ光の生成開始から所定時間が経過すると、D値から安定D値を求めて表示パワーを算出する(ステップS104〜S106)。このとき、表示パワーが所定値を下回っていなければ、Qスイッチの動作不良としてエラー出力を行い、この処理を終了する(ステップS107,S108)。
一方、表示パワーが所定値を下回っていれば、Qスイッチは正常に動作していると判断して次の処理手順に移行する。表示パワーの閾値は、制御パワーが80%出力であれば、0.65W程度であり、表示パワーが0.65W以上の場合に、Qスイッチに動作不良が生じていると判断される。
制御部33は、Qスイッチが正常に動作していると判断すると、Qスイッチを開放し、そして、所定時間が経過すると、D値から安定D値を求めて表示パワーを算出する(ステップS109〜S112)。このとき、表示パワーが所定値を上回っていなければ、出力低下のエラー警告を行う(ステップS113,S116)。
一方、表示パワーが所定値を上回っていれば、レーザパワーは正常であると判断して次の処理手順に移行する。表示パワーの閾値は、制御パワーが80%出力であれば、6.5W程度であり、表示パワーが6.5W以下の場合に、レーザパワーが低下していると判断される。
制御部33は、レーザパワーが正常であると判断し、或いは、出力低下のエラー警告を行うと、レーザパワーのキャリブレーションを実行するか否かを判断する(ステップS114)。レーザパワーのキャリブレーションを実行する場合には、キャリブレーション処理を実行し(ステップS117)、キャリブレーション処理が終了すると、シャッタ16を開放してこの処理を終了する(ステップS115)。
レーザパワーのキャリブレーションを実行しない場合には、直ちにシャッタ16を開放してこの処理を終了する(ステップS115)。
図11(a)及び(b)は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、スタートアップ動作時に画面表示されるエラーダイアログが示されている。図11(a)には、Qスイッチの動作不良が検出された場合に表示されるエラーダイアログ61が示され、図11(b)には、レーザパワーの低下が検出された場合に表示されるエラーダイアログ62が示されている。
エラーダイアログ61は、Qスイッチの動作不良が検出された場合にコンソール40の表示画面41上に表示されるウィンドウ表示であり、メッセージ及びクローズボタン61aが配置されている。この例では、メッセージ「Qスイッチの動作不良です。」が配置されている。このエラーダイアログ61は、クローズボタン61aを操作することにより閉じられ、元の画面表示に復帰することができる。
エラーダイアログ62は、レーザパワーの低下が検出された場合にコンソール40の表示画面41上に表示されるウィンドウ表示であり、メッセージ及びクローズボタン62aが配置されている。この例では、メッセージ「レーザ出力が低下しています。」が配置されている。このエラーダイアログ62は、クローズボタン62aを操作することにより閉じられ、元の画面表示に復帰することができる。
<レーザパワー測定>
図12のステップS201〜S207は、図1のレーザマーカ100におけるレーザパワー測定時の動作の一例を示したフローチャートである。制御部33は、レーザパワー測定の開始ボタン54が操作されると、まず、シャッタ16を閉鎖し、制御パワー及びQスイッチ周波数を指定してレーザ光を生成させる(ステップS201,S202)。
次に、制御部33は、キャンセルボタンの操作によって測定終了が指示されているか否かを判断する(ステップS203)。このとき、測定終了が指示されていなければ、D値から安定D値を求めて表示パワーを算出する(ステップS204,S205)。そして、表示処理部6は、算出された表示パワーをコンソール40の表示画面41上に表示する(ステップS206)。
一方、測定終了が指示されている場合には、シャッタ16を開放してこの処理を終了する(ステップS207)。
図13は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、レーザパワー測定時に画面表示される計測中ダイアログ71が示されている。この計測中ダイアログ71は、レーザパワーの測定中にコンソール40の表示画面41上に表示されるウィンドウ表示であり、メッセージ及びキャンセルボタン72が配置されている。
この例では、メッセージ「レーザパワー出力値」と共に、測定された計測パワーに対応する表示パワー「9.3W」が配置されている。キャンセルボタン72を操作すると、レーザパワー測定処理が終了される。この様なレーザパワー測定処理により、レーザパワーをリアルタイムに表示することができる。
<パワーモニタ調整>
図14は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、点検モードにおいてコンソール40上に表示される設定画面80の一例が示されている。この設定画面80は、パワーモニタ調整を実行させる際の画面表示である。この設定画面80には、上段に、パワー変換テーブルの選択ボックス82a及び82bが配置されている。
選択ボックス82aは、パワー変換テーブルとして、第1変換テーブルを指定するための入力欄であり、選択ボックス82bは、第2変換テーブルを指定するための入力欄である。ユーザは、第1又は第2変換テーブルのいずれかを選択指定することができる。
設定画面80の中段には、入力ボックス83a〜83d及びレーザ照射ボタン84a〜84cが配置されている。入力ボックス83a〜83dは、制御パワーに対応づけて表示調整用の表示パワーを指定するための入力欄である。ここでは、制御パワー100,60,20,0%のそれぞれに対応づけて表示調整用の表示パワーを指定することができる。この例では、表示調整用の表示パワーとして、単位時間当たりのエネルギーを指定することができる。
レーザ照射ボタン84a〜84cは、制御パワーを指定してレーザ照射を実行させるためのアイコンである。ここでは、制御パワー100,60,20%のいずれかを指定してレーザ照射を実行させることができる。
設定画面80の下段には、パワーモニタ調整処理を実行させるための決定ボタン85が配置されている。
ユーザは、レーザ照射ボタン84a〜84cを操作した際に得られるレーザ光をパワーモニタ200で計測し、パワーモニタ200上の表示値を入力ボックス83a〜83dに入力することとなる。その際、操作したレーザ照射ボタンに対応する制御パワーの入力ボックスに表示値を入力する必要がある。この設定画面80は、クローズボタン81又は86を操作することにより閉じられ、通常の運転モードに復帰する。
図15は、図1のレーザマーカ100における制御部33の動作の一例を示した図であり、安定D値及び表示パワーの対応関係が示されている。第1変換テーブルの場合、傾きが一定の直線C1上に安定D値及び表示パワーからなるサンプル点が配置される。この例では、制御パワーが0,20,60及び100%出力である場合にそれぞれ得られた4つのサンプル点が配置されている。
制御パワーが20,60及び100%出力である場合に得られた各サンプル点の安定D値は、それぞれd1〜d3となっている。
曲線C2は、表示調整後の第2変換テーブルを示しており、レーザパワーのキャリブレーションが完全であれば、各制御パワーのサンプル点における安定D値は、直線C1上のサンプル点に一致することとなる。ここでは、0%出力時の表示パワーは、C1及びC2いずれも0Wとなっている。
曲線C上のサンプル点により定められるパワー変換テーブルを用いて、計測パワーを表示パワーに変換する際、サンプル点以外の計測パワー、すなわち、安定D値は、線形補間により求められる。従って、ユーザに表示調整用の表示パワーとして指定させるサンプル点の数を増やすほど、パワーモニタ(外部モニタ装置)の特性が正しく反映されたパワー変換テーブルを得ることができるが、複雑化を避けるという観点から、ここでは、4つのサンプル点を指定させている。この程度のサンプル数であっても、パワーモニタの特性はもともと線形性が高いことから、パワーモニタの特性が十分に正しく反映されたパワー変換テーブルを得ることができる。
ここでは、異なる4つの制御パワーに対応するサンプル点に基づいてパワー変換テーブルの補正が行われる場合の例について説明したが、他の構成であっても良い。例えば、0%出力時のサンプル点を固定とし、ユーザが指定する1つのサンプル点によって0%出力時のサンプル点を通る直線の傾きを定めるようなものであっても良い。この場合、この様にして定められた直線に基づいてパワー変換テーブルが補正されることとなる。
或いは、傾き一定の直線をユーザが指定する1つのサンプル点によって定め、この様にして定められた直線に基づいてパワー変換テーブルを補正するようなものであっても良い。
図16は、図1のレーザマーカ100における制御部33の動作の一例を示した図であり、経年劣化によるレーザパワーの低下が生じた場合が示されている。制御パワー及び表示パワーは、経年劣化によるレーザパワーの低下の影響を受けることから、一意的な対応関係はない。このため、出荷時などに定められる第1変換テーブル上の安定D値と、ユーザの表示調整指示に基づいて得られる安定D値とは、通常、異なっている。
経年劣化によりレーザパワーが低下した場合、表示調整後の第2変換テーブルを示す曲線C4では、各制御パワーのサンプル点における安定D値は、直線C3(C3=C1)上のサンプル点に比べて左方にシフトすることとなる。ここでは、0%出力時の表示パワーは、C4及びC3いずれも0Wとなっている。
図17は、図1のレーザマーカ100における制御部33の動作の一例を示した図であり、エイジングによりレーザパワーが増大した場合が示されている。エイジングによりレーザ結晶(レーザ媒質)内の格子欠陥が減少するなどの理由によってレーザパワーが出荷時に比べて増大した場合には、表示調整後の第2変換テーブルを示す曲線C6では、各制御パワーのサンプル点における安定D値は、直線C5(C5=C1)上のサンプル点に比べて右方にシフトすることとなる。ここでは、0%出力時の表示パワーは、C4及びC3いずれも0Wとなっている。
図18は、図1のレーザマーカ100における制御部33の動作の一例を示した図であり、3回のパワーモニタ調整で得られた安定D値及び表示パワーの対応関係が示されている。LD31やレーザ発振器12の経年劣化によりパワーモニタ調整でサンプルされるサンプル点は、通常、測定ごとに変化する。しかし、レーザ出力の測定に使用されるパワーモニタ(外部モニタ装置)が同じであれば、各測定のサンプル点は同じ特性曲線上に配置されることとなる。
このため、各測定で求められるパワー変換テーブルはほぼ同じものとなるので、1度、表示調整処理を実行してパワー変換テーブルを更新しておけば、経年劣化によりレーザ出力が低下した場合であっても、パワーモニタ調整を新たに実行する必要はない。
図19のステップS301〜S309は、図1のレーザマーカ100におけるパワーモニタ調整時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、制御部33は、レーザ照射ボタンが押下されると、押下されたレーザ照射ボタンに割り当てられている制御パワーでレーザ光を生成させる(ステップS301,S302)。
次に、制御部33は、キャンセルボタンの操作によって出力停止が指示されるまでレーザ照射を継続し、出力停止が指示されると、レーザ光の生成を停止させる(ステップS303)。このとき、計測時間が短くてD値から安定D値が求められなければ、エラー出力を行う(ステップS304,S309)。
次に、制御部33は、安定D値取得後、表示調整用の表示パワーが入力されると(ステップS305)、サンプル点の入力が終了するまで、ステップS301からステップS305までの処理手順を繰り返す(ステップS306)。
制御部33は、サンプル点の入力が終了すると、0%出力時のオフセット量を指定し、計測パワー及び表示調整用の表示パワーからなるサンプル点に基づいてパワー変換テーブルを更新する(ステップS307,S308)。
図20(a)及び(b)は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、図20(a)には、パワーモニタ調整時に画面表示されるレーザ照射中ダイアログ91が示され、図20(b)には、エラー出力時に画面表示されるエラーダイアログ93が示されている。
レーザ照射中ダイアログ91は、パワーモニタ調整処理の実行中にコンソール40の表示画面41上に表示されるウィンドウ表示であり、メッセージ及びキャンセルボタン92が配置されている。
この例では、メッセージ「5秒以上計測して下さい。ボタンを押すとレーザ出力を停止します。」が配置されている。キャンセルボタン92を操作すると、レーザ光の生成が停止する。
エラーダイアログ93は、計測時間が短くて安定D値が求められなかった場合にコンソール40の表示画面41上に表示されるウィンドウ表示であり、メッセージ及びOKボタン94が配置されている。この例では、メッセージ「計測時間が不足しています。もう一度計測して下さい。」が配置されている。このエラーダイアログ93は、OKボタン94を操作することにより閉じられ、元の画面表示に復帰することができる。
<マーキングエネルギーチェック>
図21は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、運転モードにおいてコンソール40上に表示される運転監視画面101の一例が示されている。この運転監視画面101は、通常の運転モードにおける画面表示である。この運転監視画面101には、左側に、印字内容を表示する表示領域103が配置されている。
運転監視画面101の右側には、表示パワーの表示領域104、リセットボタン105、警報閾値入力ボックス106及び決定ボタン107が配置されている。表示領域104には、現在の表示パワー、表示パワーの最大値及び最小値が表示される。ここでは、表示パワーとして、レーザ照射のエネルギーが表示されている。
リセットボタン105は、表示パワーの最大値及び最小値をリセットするためのアイコンである。警報閾値入力ボックス106は、現在の表示パワーの異常検知用の警報閾値を入力するための入力欄である。決定ボタン107は、入力された警報閾値に基づいてマーキングエネルギーチェック処理を実行させるためのアイコンである。
この例では、表示調整後のパワー変換テーブルによって求められた表示パワーが「換算後の表示」として表示されている。
図22は、図1のレーザマーカ100における制御部33の動作の一例を示した図であり、印字開始直後の表示パワーの様子が示されている。時刻t11に印字開始が指示されるとすると、表示パワーは、短い時間のタイムラグを経て、時刻t12から単調に増加し、やがて飽和に達する。その後、時刻t13に印字終了が指示されると、短い時間のタイムラグを経て、時刻t14から単調に減少し、やがて初期値0J(ジュール)に達する。
マーキングエネルギーチェック処理では、この様な印字開始トリガ及び印字終了トリガに対する応答遅れを考慮して、印字開始から印字終了までの期間と、印字終了から所定時間が経過するまでの期間とにおける表示パワーの総和からレーザ照射のエネルギーを求めている。例えば、印字終了から2〜5秒後までの期間についてマーキングエネルギーが求められる。
図23のステップS401〜S408は、図1のレーザマーカ100におけるマーキングエネルギーチェック時の動作の一例を示したフローチャートである。制御部33は、印字開始トリガが入力すると、まず、レーザ光を生成させ、レーザ出力の計測を開始する(ステップS401,S402)。
次に、制御部33は、印字終了トリガが入力すると、レーザ光の生成を停止させて所定時間が経過するまで待機する(ステップS403)。このとき、次の印字開始トリガが入力すると、ステップS401からステップS403の処理手順を繰り返す(ステップS404,S407)。
制御部33は、印字終了から所定時間が経過すると、表示パワーにおける現在値、最大値及び最小値を更新し、現在値を警報閾値と比較する(ステップS404〜S406)。このとき、表示パワーの現在値が警報閾値を上回っていなければ、マーキングエネルギー不足と判断して警告を行う(ステップS408)。
図24は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、マーキングエネルギーチェック時に画面表示されるエラーダイアログ111が示されている。このエラーダイアログ111は、表示パワーが警報閾値以下となってマーキングエネルギーが不足している場合にコンソール40の表示画面41上に表示されるウィンドウ表示であり、メッセージ及びクローズボタン111aが配置されている。
この例では、メッセージ「マーキングエネルギーが不足しています。」が配置されている。このエラーダイアログ111は、クローズボタン111aを操作することにより閉じられ、元の画面表示に復帰することができる。
この様なエラー出力を行わせることにより、LD31やレーザ発振器12の経年劣化、或いは、不具合によりレーザ出力が低下して正常に印字できなくなったのを検知することができる。
<レーザパワーキャリブレーション>
図25は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、レーザパワーキャリブレーション時に作成される制御パワー、LD電流及び安定D値からなるキャリブレーションテーブルの一例が示されている。このキャリブレーションテーブルは、制御パワー、LD電流値、LD電流に割り当てられる電流記号、安定D値及びこの安定D値に割り当てられるD値記号からなる。
ここでは、制御パワーに対応する7つのLD電流値のそれぞれに電流記号I0〜I6が割り当てられ、また、制御パワーに対応する7つの安定D値のそれぞれにD値記号D0〜D6が割り当てられている。
図26は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、LD電流及び安定D値の対応関係が示されている。出荷時におけるLD電流及び安定D値の対応関係を示す特性曲線D1に比べて、経年劣化によりレーザ出力が低下した場合の特性曲線D2は、LD電流値ごとの安定D値が低下している。
そこで、レーザパワーのキャリブレーション処理では、所定の安定D値が得られるようにLD電流値が補正される。例えば、安定D値としてD1が得られるように、LD電流値「新I1」が決定される。また、安定D値としてD2が得られるように、LD電流値「新I2」が決定される。また、安定D値としてD3が得られるように、LD電流値「新I3」が決定される。
図27のステップS501〜S509は、図1のレーザマーカ100におけるレーザパワーキャリブレーション時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、制御部33は、所定の制御パワーを指定してレーザ光を生成させ、レーザ照射開始から所定時間が経過すると、D値から安定D値を求める(ステップS501〜S503)。
制御部33は、安定D値の取得が終了するまで、レーザ出力を変更しながらステップS501からステップS503の処理手順を繰り返す(ステップS504,S508)。制御部33は、安定D値取得が終了すると、キャリブレーションが正常に行われたか否かを判断する(ステップS505)。
このとき、取得した各安定D値が単調増加の特性となっていなかった場合、或いは、100%出力時のLD電流値が入力レンジの上限値を越えていた場合には、キャリブレーションが正常に行われなかったものと判断して、エラー出力を行う(ステップS509)。
次に、制御部33は、キャリブレーションが正常に行われた場合に、取得した安定D値により出力調整用テーブルを更新し、更新日データを保存する(ステップS506,S507)。
図28は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、レーザパワーキャリブレーション時に画面表示されるキャリブレーション中ダイアログ121が示されている。このキャリブレーション中ダイアログ121は、レーザパワーのキャリブレーション中にコンソール40の表示画面41上に表示されるウィンドウ表示であり、メッセージ及びキャンセルボタン122が配置されている。
この例では、メッセージ「ボタンを押すと中断します。」が配置されている。キャンセルボタン122を操作すると、レーザパワーのキャリブレーション処理が終了される。
図29は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、機器設定モードにおいてコンソール40上に表示される設定画面131の一例が示されている。この設定画面131は、機器設定を行う際の画面表示である。この設定画面131には、下段に、レーザパワーキャリブレーションによる出力調整用テーブルの更新周期を指定するための選択ボックス133a〜133c及び入力ボックス134が配置されている。
選択ボックス133aは、レーザパワーのオートキャリブレーション機能を使用しないことを選択するための入力欄である。選択ボックス133bは、レーザパワーのオートキャリブレーション機能を電源投入時に実行することを選択するための入力欄である。選択ボックス133cは、レーザパワーのオートキャリブレーション機能を所定期間ごとに実行することを選択するための入力欄である。
入力ボックス134は、オートキャリブレーション機能を実行させる期間を指定するための入力欄である。ユーザは、選択ボックス133a〜133cのいずれかを選択指定することがきる。OKボタン135を操作すると、選択指定された情報に基づいて、オートキャリブレーションが行われる。この設定画面131は、クローズボタン132又は136を操作することにより閉じられ、通常の運転モードに復帰する。
ここでは、出力調整用テーブル校正部22による出力調整用テーブルの更新周期が指定される場合の例について説明したが、パワー変換テーブルについても出力調整用テーブルと同様に定期的に更新させても良い。例えば、ユーザにより指定された更新周期でパワーモニタ調整用の設定画面を表示させ、ユーザにパワーモニタ調整を促すようなものであっても良い。
<ゼロ点補正>
図30は、図1のレーザマーカ100における制御部33の動作の一例を示した図であり、0%出力時の安定D値を用いて行われるゼロ点補正の様子が示されている。スタートアップ時などに実行されるゼロ点補正は、レーザマーカ100内のサーモパイル、すなわち、レーザパワー計測器14の劣化によって計測データに生じるずれを補正するための処理である。このゼロ点補正処理では、ゼロ点補正実行時における0%出力の安定D値を用いてパワー変換テーブルの安定D値が補正される。
例えば、ゼロ点補正処理の実行時における0%出力の安定D値=345の場合、第1変換テーブルB11の各安定D値は、0%出力時の安定D値と、上記安定D値とを比較して、その比較結果に基づいてオフセットされる。
第1変換テーブルB11の場合、安定D値350,450,800及び1050のそれぞれに対応づけて、表示パワー0.00,2.60,7.80及び13.00W(ワット)が保持されている。このとき、0%出力について、345−350=−5なので、表示調整後の第1変換テーブルB21では、安定D値345,445,795及び1045となる。
第2変換テーブルB12の場合、安定D値330,420,790及び1100のそれぞれに対応づけて、表示パワー0.00,2.80,7.90及び13.20W(ワット)が保持されている。このとき、0%出力について、345−330=+15なので、表示調整後の第2変換テーブルB22では、安定D値345,435,805及び1115となる。
図31のステップS601〜S604は、図1のレーザマーカ100におけるゼロ点補正時の動作の一例を示したフローチャートである。制御部33は、ゼロ点補正が指示されると、まず、制御パワー0%を指定してQスイッチを開放するとともに、シャッタ16を閉鎖する(ステップS601)。
次に、制御部33は、計測開始から所定時間が経過すると、D値から安定D値を求め、求められた安定D値に基づいてパワー変換テーブルを更新する(ステップS602〜S604)。
本実施の形態によれば、計測パワーを表示パワーに変換するためのパワー変換テーブルが所望のタイミングで得られた計測パワーに基づいて更新されるので、レーザマーカ100において表示されるレーザパワーの表示値と外部モニタ装置における表示値との間にずれが生じるのを抑制することができる。また、パワー変換テーブルを用いた補間演算により計測パワーが表示パワーに変換されるので、パワー変換テーブルのデータ量を増大させることなく、レーザパワーを正しく表示することができる。
なお、本実施の形態では、表示調整用の表示パワーとして、単位時間当たりのエネルギーが指定される場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、表示調整用の表示パワーとして、ユーザが指定する基準表示パワーに対する比率を指定するものであっても良い。
図32は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、点検モードにおいてコンソール40上に表示される設定画面141の他の一例が示されている。この設定画面141は、図14の設定画面80と比較すれば、表示調整用の表示パワーの入力ボックス142a〜142dにおいて、基準表示パワーに対する比率を指定させる点で異なっている。
また、本実施の形態では、運転監視画面101上にレーザ照射のエネルギーが表示される場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、運転監視画面とは異なるウィンドウ画面にレーザ照射のエネルギーを表示させても良い。
図33は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、点検モードにおいてコンソール40上に表示される運転監視画面151の他の一例が示されている。この運転監視画面151は、図21の運転監視画面101と比較すれば、表示パワーの表示領域104、リセットボタン105、警報閾値入力ボックス106及び決定ボタン107に代えて、マーキングエネルギーボタン152が配置されている点で異なる。
マーキングエネルギーボタン152は、レーザ照射のエネルギーを表示させるためのアイコンである。このマーキングエネルギーボタン152を操作することにより、マーキングエネルギーウィンドウ153が表示される。
このマーキングエネルギーウィンドウ153には、表示パワーの表示領域155及びマーキングエネルギーチェック領域156が設けられている。表示領域155内には、表示パワーの最大値の表示エリア155a、現在の表示パワーの表示エリア155b、最小値の表示エリア155c及びリセットボタン157が配置されている。
マーキングエネルギーチェック領域156内には、チェックボックス156a及び警報閾値の入力ボックス156bが配置されている。OKボタン158を操作すると、入力された警報閾値に基づいてマーキングエネルギーチェック処理が実行される。また、クローズボタン154又は159を操作すれば、ウィンドウ153は閉じられ、元の運転監視画面151に復帰することができる。
また、本実施の形態では、レーザ照射のエネルギーがマーキングエネルギーとして表示される場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、ユーザが指定した基準表示パワーに対する比率でレーザ照射のエネルギーを表示させても良い。
図34は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、点検モードにおいてコンソール40上に表示される運転監視画面161のその他の一例が示されている。この運転監視画面161は、図21の運転監視画面101と比較すれば、マーキングエネルギーが基準表示パワーに対する比率により表示されている点で異なる。
この例では、現在の表示パワー、表示パワーの最大値、最小値及び警報閾値が比率で表示されている。表示パワーの表示領域162には、現在の表示パワー、表示パワーの最大値及び最小値が基準表示パワーに対する比率で表示される。
また、警報閾値入力ボックス163には、現在の表示パワーの異常検知用の警報閾値が基準表示パワーに対する比率で指定される。
図35は、図1のレーザマーカ100の動作例を示した図であり、点検モードにおいてコンソール40上に表示される運転監視画面164のその他の一例が示されている。この運転監視画面164は、図34の運転監視画面161と比較すれば、表示パワーの最大値及び最小値に代えて、過去10回の印字における表示パワーの平均値が表示されている点で異なる。
なお、本実施の形態では、パワーモニタ調整時に、レーザ照射ごとに表示調整用の表示パワーを指定させる場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、制御パワーの異なる複数回のレーザ照射の後に、表示調整用の表示パワーを順に指定させても良い。この場合、表示調整用の表示パワーは、制御パワーに対応づけて指定され、異なる制御パワーにそれぞれ対応づけられた複数の表示パワーからなる表示調整用テーブルが作成保持されることとなる。そして、パワー変換テーブル調整部2は、レーザ光の生成中に計測された計測パワーを上記表示調整用テーブルにおいて制御パワーに対応づけられた表示調整用の表示パワーに対応づけるように、パワー変換テーブルを更新することとなる。